(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388658
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】アンテナ・システムにおけるダイポール据付け
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20180903BHJP
H01Q 9/28 20060101ALI20180903BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
H01Q1/12 Z
H01Q9/28
H01Q19/10
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-544146(P2016-544146)
(86)(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公表番号】特表2017-501643(P2017-501643A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】CN2014093234
(87)【国際公開番号】WO2015101137
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年8月22日
(31)【優先権主張番号】201310752207.X
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515353143
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント シャンハイ ベル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】ブ,アンタオ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,チェンガン
(72)【発明者】
【氏名】フ,リン
【審査官】
橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0007571(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0201537(US,A1)
【文献】
特表2012−519990(JP,A)
【文献】
特表2012−510229(JP,A)
【文献】
特開2013−062603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクタ(2)にダイポール(1)を固定するためのアンテナ・システムにおけるダイポール据付け装置であって、
前記リフレクタ(2)の穴を通って前記リフレクタ(2)に前記ダイポール(1)を固定する固定部材(3)と、
前記ダイポール(1)と前記リフレクタ(2)との間に配置された第1の非電導性部材(4)と、
前記固定部材(3)と前記リフレクタ(2)との間に配置された第2の非電導性部材(5)と
を備え、
前記第2の非電導性部材(5)は、非電導性処理を施した非金属ワッシャまたは金属ワッシャである、
ダイポール据付け装置。
【請求項2】
前記固定部材(3)は、金属固定部材である、請求項1に記載のダイポール据付け装置。
【請求項3】
前記第1の非電導性部材(4)は、非電導性処理を施した非金属膜または金属膜である、請求項1に記載のダイポール据付け装置。
【請求項4】
前記第1の非電導性部材(4)および/または前記第2の非電導性部材(5)は、前記リフレクタ(2)の前記穴の中に軸方向に延びる膨らみ(8)を備える、請求項1に記載のダイポール据付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、通信技術に関し、より詳細には、アンテナ・システムにおけるダイポール据付け(dipole fixation)に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局アンテナは、無線通信システムにとって不可欠な装置であり、基地局アンテナの相互変調ひずみ(PIM:passive intermodulation)性能は、良好な通信品質に極めて重大である。したがって、アンテナ・アレイの設計は、PIM性能の改善に充てられる。
【0003】
アンテナ・システムでは、ダイポール(dipole)は、リフレクタ(reflector)に固定されることが必要とされる。すでにある最良のダイポール据付け法は、
図1乃至
図2に示すように、金属ねじ3を用いてリフレクタ2上にダイポール1を固定することである。このような点で、ダイポールのPIMは、ダイポール1とリフレクタ2の間の接触抵抗に影響されやすく、この接触抵抗は、ねじ3が緩んでいる場合は圧力減少時に変化する。一方、基地局アンテナは通常外で稼働するので、よってダイポール1(金属A)とリフレクタ2(金属B)の接続箇所には、空気中の湿気によりいくらかの酸化生成物が存在し、このことはPIM性能に不利に影響する。
【0004】
上記据付け法を改善するために、今のところ、ねじ接続接地法は静電結合接続接地に変わり、
図3および
図4に示すように、ダイポール1はプラスチック・クリップ(plastic clip)4またはねじによってリフレクタ2に固定される。PIMは、このようにしてかなり改善されたが、プラスチック・クリップ4またはねじが、例えば、強い振動があったときに破損し得るという問題がいまだに存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記据付け法におけるすでにある課題を解決することであり、すなわち、可能性あるPIMの問題を防ぐために新しいダイポール据付けを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明は、リフレクタにダイポールを固定するためのアンテナ・システムにおけるダイポール据付けであって、リフレクタの穴を通ってリフレクタにダイポールを固定する固定部材と、ダイポールとリフレクタの間に配置された第1の非電導性部材と固定部材とリフレクタの間に配置された第2の非電導性部材とを備えるダイポール据付けを提供する。そのような構成に関しては、非電導性部材は、直接金属が接触するのを防ぐために、ダイポールとリフレクタの間に設けられているだけでなく、固定部材とリフレクタの間にも設けられている。さらに、静電結合接続接地法(capacitive coupling connecting ground way)がダイポールとリフレクタの間に採用され、これによりアンテナ・システムのPIM信頼性を有効に確実にする。
【0007】
一実施形態によれば、固定部材は、ねじまたは鋲などの金属固定部材であり、ダイポーがルリフレクタに安定して固定できることを確実にするようになっている。
【0008】
一実施形態によれば、第1の非電導性部材は、非電導性処理を施した非金属膜または金属膜である。
【0009】
一実施形態によれば、第2の非電導性部材は、非電導性処理を施した非金属ワッシャ(washer)または金属ワッシャである。
【0010】
一実施形態によれば、第1の非電導性部材および/または第2の非電導性部材は、リフレクタの穴の中に軸方向に延びる膨らみを備え、直接金属が接触することをさらに防ぐようになっており、したがって金属ねじなどの固定部材は、リフレクタの前側および後側に触れ得ない。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアンテナ・システムにおける提案したダイポール据付けの適用は、少なくとも下記の利点をもたらす。
【0012】
1.静電結合接続接地が採用され、かつ、膨らみを有する非電導性処理を施した非導電性金属または金属ワッシャにより金属固定部材とリフレクタの間に金属接触もないので、その結果、とても良好なPIM性能を得ることができる。
【0013】
2.据付け法は、プラスチック構成部品の代わりに金属固定部材を採用してダイポールをリフレクタにしっかり締めるので、強い振動への余裕が十分な強さである。
【0014】
3.ダイポールとリフレクタは直接接続せず、非電導性処理を施した非金属膜または金属膜および非電導性処理を施した非金属ワッシャまたは金属ワッシャを用いて互いから隔離されるので、アンテナ・システムが長期間外で稼働してもダイポールとリフレクタの間には酸化物生成物がなく、それによって長期間のPIMの信頼性を確実にする。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下詳細に説明される好ましい実施形態によってよりよく理解されよう。図において、同じ参照番号は、同じまたは類似する部材を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来技術におけるダイポール据付けの概略図である。
【
図2】
図1のリフレクタの底部を示す概略図である。
【
図3】従来技術における別のダイポール据付けの概略図である。
【
図4】
図3のリフレクタの底部を示す概略図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態によるダイポール据付けを概略的に示す分解斜視図である。
【
図6】
図5のダイポール据付けによって組み立てたダイポールおよびリフレクタを概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、特定の各実施形態を参照して、本発明のダイポール据付けを詳細に説明する。詳細な説明において、上、下、左、および右などの方向を示す用語は、図に示された方向を参照することによって一例として使用されるが、保護範囲を限定するために使用されない。例示した構造設計および後述の実施形態は、本発明の特定の技術的解決策を例示的に説明するのに使用されるにすぎず、本発明の保護範囲を限定するために使用することはできない。
【0018】
次に、
図5および
図6を参照すると、
図5および
図6は、本発明の好ましい実施形態による、リフレクタ2上にダイポール1を固定するダイポール据付けを概略的に示す。このダイポール据付けは、金属ねじなどの固定部材を備えており、この固定部材は、リフレクタ2の穴を通過しダイポール1の導体9にねじ込むことができ、それによってダイポール1は、リフレクタ2にしっかりと固定することができる。ダイポール据付けは、ダイポール1と非電導性処理を施した非金属膜または金属膜などのリフレクタ2との間に配置された第1の非電導性部材4をさらに備える。第1の非電導性部材4は、PCBに電気的に接続された別の導体10(
図6)が通過できる開口と、金属ねじが通過できる貫通孔とを備える。そのような構成の場合、ダイポール1およびリフレクタ2は、非電導性処理を施した非金属膜または金属膜4によって互いに隔離することができ、それによってダイポール1は、静電結合接続を介して接地される。さらに、第2の非電導性部材5は、固定部材3と非電導性処理を施した非金属ワッシャまたは金属ワッシャなどのリフレクタ2との間に配置されることが有利である。ワッシャ5は、金属ねじが通過する貫通孔も備えている。また、本発明によれば、好ましくは、膨らみ8が、直接金属が接触するのを防ぐために金属ねじ3の接続部分をリフレクタ2から隔離するように組立て中にリフレクタ2の穴の中に軸方向に延びることによってワッシャ5に形成される。上記の膨らみは、ワッシャ5を形成することに限定されず、ダイポール1とリフレクタ2の間に配置された膜4に形成することもできることに留意されたい。適宜、膜4とワッシャ5の両方は、逆に延びた膨らみを備えてもよい。配置および組立ての後、良好なPIM性能を有する安定したダイポール据付け法を受ける。そして、この据付け法は、組立てが容易であり、ダイポールの電気的性能に悪い影響を与えない。
【0019】
より強い振動を受けてプラスチック・クリップが容易に破壊される、またはダイポールが金属ねじを用いてリフレクタに直接固定されるときにPIMが悪くなる既存の最良の解決策に比較して、本発明のダイポール据付け法は、安定している。同時に、良好なPIM性能を得ることができる。さらに、本発明の据付けでは、部材は、単純な構造で構成され、容易に製造することができる。従来技術におけるクリップなどの変わった部材(strange member)を避けることができ、膜およびワッシャは、ワン・ステップ(one−step)の形成および切断で得ることができ、それにより費用対効果が実質的に改善される。
【0020】
本発明によるPIMの課題についての技術的解決策は、幅広い応用可能性を有する。PIMを解決する解決策の思想は、直接金属が接触するのを防ぐために静電結合接続接地法を採用し、膨らみを備えた膜および/またはワッシャは金属の非接触を確実にする一方、金属ねじは安定した接続を確実にし、その結果、本発明は、他の種のBSAアンテナ、または衛星アンテナ、レーダ・アンテナなどの他の分野に幅広く応用され得る。
【0021】
本発明の特定の実施形態の技術的内容および技術的特徴を開示したが、本発明の教示による原理を逸脱することなく、当業者は、本発明の修正および変更をいくらか行うことができ、これは本発明の保護範囲の一部とみなすことができることに留意されたい。上記実施形態の説明は、例示的であるが制限的ではなく、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。