(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空間干渉アライメントを実行することが、スケーラブルな多重化利得を提供し、前記スケーラブルな多重化利得が、各クライアントの自由度または空間ディメンションを表す、請求項1に記載の方法。
前記複数のアップリンククライアントと前記複数のダウンリンククライアントとの間でチャネル状態情報を取得して、前記プリコーダおよび前記受信フィルタを適切に選択することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
前記空間干渉アライナが、空間干渉アライメントを実行して、スケーラブルな多重化利得を提供するように構成され、前記スケーラブルな多重化利得が、各クライアントの自由度または空間ディメンションを表す、請求項11に記載の干渉アライメントシステム。
前記複数のアップリンククライアントと前記複数のダウンリンククライアントとの間でチャネル状態情報を取得するように構成されたチャネル状態情報推定器を、さらに有する、請求項14に記載の干渉アライメントシステム。
前記空間干渉アライメントを実行することが、スケーラブルな多重化利得を提供し、前記スケーラブルな多重化利得が、各クライアントの自由度または空間ディメンションを表す、請求項17記載のプログラム。
前記複数のアップリンククライアントと前記複数のダウンリンククライアントとの間でチャネル状態情報を取得して、前記プリコーダおよび前記受信フィルタを適切に選択することをさらに含む、請求項19に記載のプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
好ましい実施態様の詳細な説明
本原理は、空間干渉アライメントを用いてマルチセルネットワークにおける無線全2重をスケーリングすることを対象とする。ネットワークにおける全2重(FD)システムの展開の主な課題の1つは、マルチセルネットワークを考慮する場合の無線全2重動作のスケーリングである。一態様では、本明細書に開示された方法、システム、およびコンピュータプログラム製品は、全2重アクセスポイントを備えた単一のセルまたは複数のセルからなる無線システムにおけるこの課題を解決する実用的な方式を有利に提供する。一実施態様では、空間干渉アライメントは、送信機の協同が可能な半2重(HD)ネットワーク(例えば、ネットワークMIMOなど)上でのマルチセル全2重通信ネットワークにおけるFDの多重化利得のスケーラビリティを特徴づけてもよい。
【0010】
自己干渉の相殺を可能にすることが、全2重(FD)の機能を実現するための基本である。しかし、全2重通信ネットワークのシステム全体の展開は、同じ周波数帯で動作する他のクライアントのダウンリンク受信におけるアップリンククライアントの送信のために生じる、新しい形態の干渉、すなわちアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)を基本的に抱え込むことになる。これに関連して、本明細書に開示された方法、システム、およびコンピュータプログラム製品は、アップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)を処理するために、有効かつスケーラブルな技術として空間干渉アライメント(IA)を利用してもよく、したがって、これらネットワークにおいて全2重(FD)が可能である。本開示はまた、この考えを組み込んだ解決策およびシステムを提供する。いくつかの実施態様では、本明細書に開示された方法、システム、およびコンピュータプログラム製品は、M個のセルのネットワークにおける全2重の多重化利得のスケーラビリティを特徴づけ、M個のセルのネットワークにおける全2重(FD)の多重化利得の最良のスケーリングを達成する空間干渉アライメント(IA)の構成を提供する。
【0011】
本明細書に記載の実施態様は、全体がハードウェアであってもよく、または、ハードウェア要素とソフトウェア要素の両方を含んでもよく、このソフトウェア要素には、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどが含まれるが、それには限定されないことを理解されたい。
【0012】
実施態様は、コンピュータもしくは任意の命令実行システムが使用するか、またはそれとともに使用するためのプログラムコードを提供する、コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体からアクセスできるコンピュータプログラム製品を含んでもよい。コンピュータ使用可能またはコンピュータ可読媒体は、命令実行のシステム、機器、もしくは装置で使用する、またはそれらと関連したプログラムを記憶、通信、伝搬、または送信する任意の装置を有してもよい。この媒体は、磁気、光、電子、電磁気、赤外線、もしくは半導体システム(もしくは半導体装置もしくは半導体デバイス)、または伝搬媒体とすることができる。この媒体は、半導体または固体の記憶装置、磁気テープ、取外し可能なコンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、硬質磁気ディスク(rigid magnetic disk)、光ディスクなどの、コンピュータ可読記憶媒体を含んでもよい。
【0013】
プログラムコードを記憶および/または実行するのに適したデータ処理システムは、システムバスを介してメモリ素子に直接または間接に結合された、少なくとも1つのプロセッサ、たとえばハードウェアプロセッサを備えてもよい。メモリ素子は、プログラムコードを実際に実行する際に使用されるローカルメモリ、大容量記憶装置、および、実行中に大容量記憶装置からコードを取り出す回数を減らすために、少なくとも何らかのプログラムコードを一時的に記憶するキャッシュメモリを含むことができる。入出力、すなわち、I/O装置(キーボード、表示装置、ポインティングデバイスなどを含むが、それらには限定されない)は、直接に、またはI/O制御装置を介してシステムに結合されてもよい。
【0014】
「全2重通信システム」は、双方向で互いに通信することができる、接続された二者または2つの装置からなるポイントツーポイントシステムである。一般に、2重通信システムには、2つのタイプ、すなわち全2重(FD)通信システムと半2重(HD)通信システムがある。全2重通信システムでは、両者(たとえばクライアントデバイス)が、同時に、他方と通信してもよい。これに対して、半2重通信システムでは、各者(たとえばクライアント装置)は他方と通信してもよいが、同時には通信できない。したがって、半2重通信システムでは、クライアント装置間の通信は、一度に1方向である。
【0015】
無線全2重(FD)ネットワークは、ノード(たとえばクライアント装置)に同じ周波数帯で同時に送受信させ、したがってリンクの容量が2倍になる。全2重(FD)ノードを実現する上での主要課題は、ノードでの全2重(FD)通信中に生成される、同時送受信データ経路(たとえばデータストリーム)間の自己干渉を処理することである。アクセスポイント(AP)または基地局(BS)で自己干渉(SI)の相殺に必要な処理を組み込んでもよいが、エネルギーの制約があるクライアント装置では可能でない。したがって、実施態様によっては、全2重(FD)通信ネットワークを広く採用できるようにするために、半2重(HD)クライアントでの全2重(FD)通信ネットワークを実現することが重要であり、これは、分散型全2重と呼ばれるプロセスである。
【0016】
同じ符号が、同じまたは同様の要素を表す各図面を参照する。初めに
図1を参照すると、全2重(FD)通信システム100のアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)が説明的に示してあり、一実施態様では、本原理を適用することができる。たとえば、アップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)は、第1の全2重アクセスポイント(AP)110、第2の全2重アクセスポイント(AP)120、第1の全2重(FD)クライアント130、および第2の全2重(FD)クライアント140を含む。この例では、第1の全2重アクセスポイント(AP)110および第1の全2重(FD)クライアント130が第1のMセル、すなわちM
nを形成する。ここで、nはMセルの数を表す。同様に、第2の全2重アクセスポイント(AP)120、および第2の全2重(FD)クライアント140が第2のMセル、すなわちM
n+1を形成し、このセルを隣接セルと呼んでもよい。したがって、この複数のMセルが、マルチセルネットワークを形成する。
【0017】
図1に示すように、マルチセルネットワークでは、あるセル内の第1の全2重(FD)クライアント130からのアップリンク(UL)送信が、マルチセル全2重通信システム100の隣接セル内の、第2の全2重(FD)クライアント140を含む、他の全2重(FD)クライアントのダウンリンク(DL)送信に干渉し、もしかすると各セル内の全2重の利点を無効にする。異なるおよび/または隣接するセルのクライアント間のこの干渉は、「セル間干渉」と呼ばれる。
【0018】
さらに、単一のMセル内、たとえば、クライアント装置が半2重(HD)である場合でも、そのようなアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)は生じることがある(「セル内干渉」と呼ばれる)。ここで
図2を参照すると、全2重(FD)通信システム200の半2重(HD)クライアントでのアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)が説明的に示してあり、一実施態様では、本原理を適用することができる。たとえば、アップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)は、第1の全2重アクセスポイント(AP)210、第2の全2重アクセスポイント(AP)220、第1のダウンリンク(DL)クライアント230および第1のアップリンク(UL)クライアント240を含む第1の半2重(HD)クライアント、および第2のダウンリンク(DL)クライアント250および第2のアップリンク(UL)クライアント260を含む第2の半2重(HD)クライアントを含む。
【0019】
基地局(BS)またはアクセスポイント(AP)とは異なり、エネルギーの制約があるクライアント装置に全2重(FD)の処理(たとえば自己干渉の相殺)を負わせることができない場合が多い。そのような場合、全2重アクセスポイント210(たとえばAP(FD))に加えて、少なくとも2つの半2重(HD)クライアント、すなわちアップリンク(UL)クライアント230およびダウンリンク(DL)クライアント240が、全2重(FD)通信セッションを可能にするために必要である。しかし、
図2に示すように、全2重(FD)通信セッションにおいて少なくとも2つの半2重(HD)クライアントを使用可能にすると、その結果、全2重セッション200に同時に参加している、隣接セル内のダウンリンク(DL)クライアント(たとえば、ダウンリンク(DL)クライアント250)と同様、同じセル(たとえば、M
n、セル間干渉)内のダウンリンク(DL)クライアント230にアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)を生じさせることになる(たとえば、M
n+1、セル内干渉)。自己干渉(SI)の情報が全2重(FD)ノード(たとえば、アクセスポイント(AP)またはクライアントデバイス)で局所的に利用可能なので、最近の研究は、このSIを取り扱っていることに留意されたい。しかし、帯域幅リソースを犠牲にすることなくデータ情報を共有することのできない分散したクライアント間に存在するので、アップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)は難易度がはるかに高い。
【0020】
半2重(HD)ネットワークでは、性能制限因子はセル間干渉である。ネットワーク多入力多出力(MIMO)などの協調的方式は、単一方向において(たとえば、ダウンリンクまたはアップリンク別々での)アクセスポイント(AP)間の干渉を軽減してもよく、それにより、(たとえば自由度に関する)ネットワーク容量が、MNとして、協調しているAP(M)の数とそれらのアンテナ能力(N)に比例して変化可能である。MIMO方式では、チャネルまたはリンクの容量は、複数の送受信アンテナを使用して増大し、マルチパス伝搬を活用して、同じチャネル上で同時に1つを超えるデータ信号を送受信してもよい。
【0021】
しかし、アクセスポイント(AP)で全2重(FD)が可能である場合、アクセスポイントが協調すると双方向のUDIを避けることができない。
図1に示すように、マルチセルネットワークでは双方向のUDIの影響が増幅され、各ダウンリンク(DL)クライアントは、自セル内のアップリンク(UL)クライアントからUDIを受信するだけでなく(たとえば、各クライアントが半2重であるときのセル内干渉)、同時に全2重セッションに参加している、隣接セルのアップリンク(UL)クライアントからもUDIを受信する(たとえばセル間干渉)。したがって、協調的ネットワークにセルMをさらに追加することで、HDの容量をMとともに変化することができるが、FDが可能な場合にUDIが悪化するだけである。
【0022】
図3を参照すると、半2重(HD)無線ネットワーク300におけるアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)を処理して、セル内およびセル間の干渉を最小にするための従来の干渉アライメント方式が示されており、一実施態様において、本原理を適用することができる。
図3では、Mは、1組または複数のアクセスポイント310と、対応する1組または複数のクライアント装置320とを含むセルネットワークである。また、アクセスポイント310(たとえば、AP、送信機(TX))およびクライアント装置320(たとえば、クライアント、受信機(RX))のそれぞれは、Nアンテナを備えてもよい。いくつかの実施態様では、基準となる半2重(HD)モデルでは、全てのMセルが、ネットワークMIMOを介して連携し、ダウンリンクとアップリンクの両方でそれらのセル間干渉をMNの多重化利得に完全に変換してもよい。バックホール上での(たとえば、ネットワークMIMOを使用可能にするための)情報共有の量は、アップリンク(UL)とダウンリンク(DL)の間で著しく異なっていてもよいことに留意されたい。
【0023】
図3では、たとえば、2つのNアンテナをそれぞれ有する3つのアクセスポイント310(AP)が、単一のデータストリームx
1、x
2、x
3をそれぞれそのクライアント320に送信させたい場合で、各クライアントは2つのNアンテナを備える。クライアント装置320で2つのアンテナに制限され(たとえば、2つの空間ディメンションまたは自由度)、送信機の連携がないと仮定すると、データストリームのうちの2つだけが、空間干渉アライメント(IA)なしにこのネットワークにおいて配信されてもよい。しかし、空間IAによって、3つのストリームx
1、x
2、x
3を全て配信できるようにしてもよい。いくつかの実施態様においては、クライアント装置の各々での2つの干渉ストリームが、単一の空間ディメンション(たとえば自由度(DoF))を占有するために調整され、それにより、その所望のストリームについて、他のディメンションを使用可能にすることができる。
【0024】
たとえば、2つの干渉ストリームのアライメントは、プリコーディングによって実現してもよく、それにより、送信機(たとえばAP)でのデータストリームにプリコーディングベクトル(V)を乗算して、次式のようにNアンテナを介してチャネル上に伝送される前にプリコーディングされた信号を生成する。
【数1】
ここで、
【数2】
は、送信機iと受信機jの間のチャネル行列、kは送信機および/または受信機の総数、
【数3】
は、オペレータのサイドの一方における行例で定義されたベクトル空間が同じであることを示す。異なる送信機(TX)での適切なプリコーダは、所望のアライメントを実現するように前述の制約条件に基づいて選択されてもよく、受信機(RX)での受信フィルタは、所望のストリームを受信するために、干渉の空間に直交するように選択してもよい。
【0025】
次に、
図4を参照すると、本明細書に開示された方法、システム、およびコンピュータプログラム製品は、空間干渉アライメント(IA)を利用して、マルチセル全2重(FD)ネットワークにおけるアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)問題を処理してもよい。
図4では、マルチセル全2重(FD)無線ネットワーク400における半2重(HD)クライアントでアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)を処理して、セル内およびセル間の干渉を最小にするための空間干渉アライメント(IA)の一例が、説明的に示されている。たとえば、アップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)は、第1の全2重アクセスポイント(AP)410と、第2の全2重アクセスポイント(AP)420と、複数の第1のダウンリンク(DL)クライアント430および複数の第1のアップリンク(UL)クライアント440を含む複数の第1の半2重(HD)クライアント装置と、複数の第2のダウンリンク(DL)クライアント450および複数の第2のアップリンク(UL)クライアント460を含む複数の第2の半2重(HD)クライアント装置と含む。一実施態様では、たとえば、
図4に示すように、アップリンククライアントおよびダウンリンククライアントで利用可能な複数のNアンテナで、複数の半2重(HD)アップリンク(UL)クライアント440、460は、その空間ディメンション(たとえば自由度)を効果的に使用して、自セルと隣接セルの両方における全2重(FD)セッションの複数の半2重(HD)ダウンリンク(DL)クライアント430、450に向うそれらの干渉データストリーム(たとえば、全2重(FD)アクセスポイント(AP)410、420への伝送)を調整してもよい。
【0026】
さらなる実施態様では、空間干渉アライメント(IA)をマルチセル全2重通信ネットワークに適用して、マルチセルネットワークのFDからスケーラブルな多重化利得を提供してもよい。以下で、考察するように、本開示では、O(MN)個のノード(たとえばクライアント装置)を使用してマルチセル全2重ネットワークにおける全2重多重化利得の最適なスケーリングを達成するために、全2重通信ネットワークの干渉構造を利用することが可能な空間干渉アライメント(IA)の解決策を提供する。ネットワークMIMOのような方式は、アクセスポイントの連携を可能にする際にバックホールのオーバヘッドを招くが、(たとえば、UDIを処理するための)空間干渉アライメントは、アップリンク(UL)クライアントとダウンリンク(DL)クライアントの間のさらなるチャネル状態情報(CSI)のオーバヘッドを要求するかもしれない。無線通信では、チャネル状態情報(CSI)は、送信機から受信機まで信号がどのように伝搬するのかを含め、通信リンクの既知のチャネル特性を参照する。いくつかの実施態様において、ULおよびDLのクライアント間のチャネル状態情報(CSI)を使用し、(たとえば、ULクライアント−送信機TXでの)適切なプリコーダ、および(たとえば、DLクライアント−受信機RXでの)受信フィルタは、そのようなアライメントを可能にし、アップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)を最小、および/または、除去してもよい。
【0027】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示された方法、システム、およびコンピュータプログラム製品は、クライアントの制限された数と、連携している各アクセスポイント(AP)間で共有する情報の制約とで、実際的な設定での多重化利得を特徴づけてもよい。たとえば、本明細書に開示された方法、システム、およびコンピュータプログラム製品は、ネットワークMIMOがダウンリンク(DL)のみで利用可能であり、ダウンリンク(DL)とアップリンク(UL)のトラフィックが平衡状態にあるとき、全2重(FD)通信システムが、大規模な協調的ネットワーク(たとえば、大きいM)向けの2つ以上の半2重(HD)通信システムの多重化利得を提供してもよいことを示すことがある。FDとHDの両方は、アップリンクネットワークMIMOがない場合に絶対的性能がでないことがあるが、FDにおける比較的少ない損失は、大規模ネットワークにおいてさえ、その全多重化利得を達成することができる。さらに、本原理は、
【数4】
の漸近スケーリング利得(asymptotic scaling gain)が、
【数5】
のノードで実現されてもよく、O(MN)のノードを必要としないことを示してもよく、このことは、M<<N(たとえば、大規模なアンテナアレイ)のときに有用である。
【0028】
本明細書に開示された方法、システム、およびコンピュータプログラム製品の寄与のうちのいくつかは、マルチセルの分散型全2重通信ネットワークにおいてUDIを処理してセル内およびセル間の干渉を最小にするための有効なアプローチとして空間干渉アライメントを提供することと、閉形式でマルチセルネットワークのFD多重化利得のスケーラビリティを特徴づけることと、マルチセルネットワークにおいて最適なスケーラビリティを達成し、また、その結果を、クライアントの制限された数と連携している各アクセスポイント(AP)間で共有する情報とで実際的な設定にまで拡張する助けとなるように、空間干渉アライメント(IA)の解決策を構成することとを含む。
【0029】
一実施態様では、空間干渉アライメント(IA)は、多くの干渉ストリームを少ないリソースディメンション(resource dimension)で収容することを可能にし、それにより、多くの所望のストリームを収容するように空間を残す。リソースディメンションは、時間、周波数(たとえば、周波数拡張もしくはシンボル拡張)、または空間(たとえばアンテナ)でのそれらに対応してもよい。いくつかの実施態様において、理論的構成概念としてのある種の実現困難なチャネル推定(たとえば、因果関係のないCSI)に依存する前者の手法とは異なり、空間IAがMIMOシステムの実用化を可能にしてもよい。
【0030】
次に
図5を参照すると、半2重(HD)干渉チャネル500の一例が示してあり、一実施態様において本原理をこの干渉チャネルに適用することができる。従来の半2重(HD)干渉チャネル500の一例は、各受信機(RX)520と通信する各送信機(TX)510の間のリンク530を含み、各送信機(TX)510と各受信機(RX)520はNアンテナを含む。たとえば、
図5は、それぞれ2つのアンテナを有する、各送信機510および各受信機520を示すが、各送信機510および各受信機520でさらなるアンテナが本原理に従って考えられる。
【0031】
図5の参照に続き、
図6を参照すると、半2重(HD)通信ネットワーク600において自由度(DoF)d
1、d
2、...d
kが示されており、一実施態様において本原理をこの自由度に適用することができる。
図6では、半2重(HD)通信ネットワーク600が、複数の受信機(RX)620と通信する複数の送信機(TX)610とともに説明的に示されており、各送信機610および各受信機620はN個のアンテナを有する。空間干渉アライメント(IA)では、この干渉チャネルにおける半2重(HD)通信リンク(たとえば、
図6のd
i)のそれぞれでの自由度(DoF)が、次式のようなプリコーディング行列
【数6】
および受信フィルタ
【数7】
のランク(Rank)に基本的に対応する。
【数8】
ここで、
【数9】
は受信点での受信フィルタを表し、
【数10】
は送信点でのプリコーダを表す。一実施態様では、
【数11】
および
【数12】
は、それぞれd
j×NおよびN×d
iのサイズであり、
【数13】
は、受信機jと送信機iの間のチャネルであり、そのサイズはN×Nである。第1の制約条件は、受信機の零空間において干渉ストリームが整列されることを保証し、第2の制約条件は、リンクiの受信機における所望の(通信)ストリームについてd
iDoFが利用可能であることを保証する。一般的なチャネル行列
【数14】
について、制約条件の第1の組(たとえばIA)を満たすことが十分であり、これが制約条件の第2の組を満足させることに自動的につながることが示されていた。
【0032】
上記の制約条件に基づいて、所望のDoF(d
i,∀
i)をサポートするために、所与のネットワークに関して、次式の条件が必要になるかもしれない。
【数15】
ここで、
【数16】
である。第1の条件は、リンクでのDoFが、通信リンクの両端におけるアンテナの数の最小値によって制限されることを示す。第2の条件は、実現可能なIA解決策を得るため、干渉制約条件(たとえばS)の任意のサブセット(ε)で定義されたシステムを過剰に制約してはいけないことを示す。行列
【数17】
および
【数18】
は、それぞれd
iベクトルおよびd
jベクトルからなることに留意されたい。したがって、送信機iと受信機jの間の式(2)の単一の干渉制約条件はd
id
jの式からなり、送信機および受信機は、変数d
j(N−d
j)をもたらす。この条件は、ディメンションカウンティング引数(dimension counting argument)と呼んでもよい。
【0033】
以下の記述では、マルチセル全2重(FD)ネットワークでの空間干渉アライメント(IA)の原理を説明する。
図5に示すように、半2重(HD)干渉チャネル500では、他のリンクの送信機510からの干渉(たとえば干渉データストリーム)を受けやすい(たとえば、所望のストリームを受信する)受信機520毎に、DoF(たとえば、データストリームの数)が各リンクベースで定義される。送信機510のそれぞれは、それ自体がマルチセルネットワークのAPになると仮定することができる。しかし、ネットワークMIMOが存在する場合(たとえばAP連携)、半2重(HD)ネットワークにおいて、ダウンリンク(DL)およびアップリンク(UL)でのセル間干渉を除去してもよい。
図7に示すように、これは、分散型マルチセル全2重(FD)ネットワークにも適用されるが、同じセル内及び隣接セルを跨ぐ、各クライアント間で生じるアップリンク/ダウンリンク干渉(UDI)が、依然として2セルネットワークに関して残る。
【0034】
次に
図7を参照すると、本原理による2セル全2重(FD)干渉チャネル700が説明的に示されている。2セル全2重(FD)干渉チャネル700(FDIC)では、複数の送信機(TX)710、および複数の受信機(RX)720が示されている。
図8を参照すると、本原理による全2重(FD)通信ネットワーク800が説明的に示されている。全2重(FD)通信ネットワーク800では、複数の送信機(TX)810、および複数の受信機(RX)820が示されている。
図8では、
【数19】
は、送信機810でのノードごとの自由度(DoF)を表し、
【数20】
は、受信機820でのノードごとの自由度(DoF)を表す。いくつかの実施態様において、本明細書に開示された方法、システム、およびコンピュータプログラム製品は、
図7および
図8に示すような、全2重干渉チャネル(FDIC)と呼ばれる、干渉および通信のネットワークを提供してもよい。
【0035】
FDIC干渉ネットワークでは、全2重(FD)アクセスポイント(AP)は、自己干渉(たとえばセル内干渉)およびセル間干渉に遭遇することに留意されたい。いくつかの実施態様において、
図7に示すように、FDIC干渉ネットワークは、一方の側の(全てのセルからの)ダウンリンク(DL)受信機と、他方の側の(全てのセルからの)アップリンク(UL)送信機との間の、完全な2部グラフとして表してもよい。2部グラフは、その頂点を2つの素集合(たとえば独立集合)に分割でき、エッジごとに、一方の集合内の頂点を他方の集合の頂点に接続するようにしたグラフである。
【0036】
一実施態様では、
図7および8に示すように、全2重干渉チャネル(FDIC)は、所望の/通信ストリームネットワークから分離してもよい(たとえば、APへの送信を取り止めてもよい)。干渉ネットワークの各ノード(たとえばクライアント)間で所望のストリームが交換されない場合、自由度の概念を各ノードベースで適用できるようになり、アップリンク(UL)およびダウンリンク(DL)のクライアントが、互いに異なる自由度で動作する可能性がある。したがって、FDICの空間IAの制約条件を次式で表してもよい。
【数21】
ここで、添え字0
jは、クライアントjに関連するアクセスポイント(AP)を表す。第1の制約条件によって、アップリンク(UL)のクライアントとダウンリンク(DL)のクライアントの「全ての」対の間での干渉が確実に除去されるが、最後の2つの制約条件によって、各ノードにおいてDoFを変更できるようになり、
【数22】
および
【数23】
はそれぞれ、それらのアクセスポイント(AP)に対する、ダウンリンククライアント(受信機)j、およびアップリンククライアント(送信機)iに関するDoFである。
【0037】
図9を参照すると、本原理の一実施態様による、無線ネットワークにおけるマルチセル全2重通信システムでのセル内およびセル間の干渉900を最小にする方法が、説明的に示してある。たとえば、
図12のシステム1200および/または
図13のシステム1300のいずれによっても、この方法900を実行することができる。
【0038】
一実施態様では、ステップ902で複数のクライアントを選択してもよい。複数のクライアントは、複数のアップリンククライアントおよび複数のダウンリンククライアントを含んでもよい。マルチセル全2重通信システムの各セルにおいて、複数のデータストリームを介して、信号を送信するように複数のアップリンククライアントが構成され、信号を受信するように複数のダウンリンククライアントが構成されてもよい。
【0039】
ステップ904で、干渉するデータストリーム(たとえば、干渉データストリーム)に空間干渉アライメントを実行して、(たとえば、セル内干渉を最小にするために)自セル内のダウンリンククライアント及び(たとえば、セル間干渉を最小にするために)隣接セル内のダウンリンククライアントに向かう、アップリンククライアントの干渉データストリームを整えてもよい。一実施態様では、ステップ904は、以下でさらに詳細に説明するステップ906、908、または910のうち、1つ以上のステップを含んでもよい。
【0040】
一実施態様では、ステップ906に示すように、干渉グラフのバランスのとれた向きを使用して、空間干渉アライメントを実行してもよい。たとえば、各kノード(たとえばクライアント装置)の自由度が1のとき、干渉グラフのバランスのとれた向きを使用してもよい。ここで、各kノードは、送信機ノード(TX)または受信機ノード(RX)のいずれかを表す。次に
図10を参照すると、本原理による、干渉グラフ1000のバランスのとれた向きの一例が説明的に示されている。この例では、K=MNのダウンリンクノード、および
【数24】
のアップリンクノードでは、各ノードが、単一のストリーム(d=1)を送信または受信する。ここで、各送信機および各受信機はノードであり、各ノードにN個のアンテナが存在する。たとえば、この実施態様では、左側のK個の送信機を接続する(たとえばFDICでの)干渉グラフのエッジは、右側のL個の受信機にバランスよく配向されてもよい。
図10に示すように、左側のk個のノードを右側のノードに接続する干渉グラフのエッジでの向きは、各kノードにおいて、(この向きから)各ノードに入射するディメンションと、そのノードのディメンションの合計がN以下である場合、平衡状態にあると呼ばれる。
図10で、in_edge(k)は、他のkノードを表す。FDICでは、各ノードのDoFがdに等しいとき、Nがdの倍数であり、d(L+K)(N−d)−d
2LK≧0である場合には、このようなバランスのとれた向きが存在することを示すことができる。したがって、エッジのバランスのとれた向きが存在することは、空間干渉アライメントを実現可能にするための十分条件である。
【0041】
次に、
図11を参照すると、一実施態様によれば、エッジを配向するバランスのとれた方法を使用し、いくつかの
【数25】
から
【数26】
まで配向されたエッジを探すことによって、
【数27】
に直交する
【数28】
を、(受信機ベクトル
【数29】
を有する)各受信機ノードjで見つけることができる。全ての受信機ノードにおいて、これを繰り返してもよい。したがって、送信機(UL)から受信機(DL)まで延びるエッジをなくしてもよい。同様に、
図11に示すように、受信機(DL)から送信機(UL)まで延びるエッジについて、これを繰り返してもよい。したがって、エッジによって与えられる全ての式を排除して、
【数30】
のみに関する最終セットの式を得てもよい。これら最終セットの式は、他のいくつかの
【数31】
について、送信機側での各
【数32】
を表す。これらの最終式を解いて、
【数33】
と、それに続いて
【数34】
を見つけてもよい。
【0042】
図9を参照すると、ステップ908で、プリコーダを使用して、複数のアップリンククライアントで信号をプリコーディングして、プリコーディングされた信号を提供すること、および受信フィルタを使用して複数のダウンリンククライアントでそのプリコーディングされた信号をフィルタリングすることとによって、空間干渉アライメントを実行してもよい。ステップ910で、空間干渉アライメントを実行することは、複数のアップリンククライアントと複数のダウンリンククライアントの間でチャネル状態情報(CSI)を取得および受信して、プリコーダおよび受信フィルタを適切に選択することを含んでもよい。先に述べた通り、チャネル状態情報(CSI)は、送信機から受信機まで信号がどのように伝搬するのかを含め、通信リンクの既知のチャネル特性を指す。
【0043】
ステップ912で、スケーラブルな多重化利得を使用して、本原理が適用された、最小化干渉を測定してもよい。一実施態様では、このスケーラブルな多重化利得は、閉形式の式を使用して表してもよい。以下の段落では、FDICタイプのチャネルでの干渉アライメントにおける多重化利得への制限のいくつかの例が提供されている。たとえば、多重化利得を見つけるために、各ノードでのアンテナの数N、全てのMセルからの送信機の総数、たとえばL、受信機の総数、たとえばK、ならびに、全ての送信機および受信機それぞれでの、ノードごとのDoF
【数35】
および
【数36】
によって、FDICをパラメータで表してもよい。このFDICは、(K,L)FDICと呼んでもよい。FDICでは、異なるセル内の全ての送信機(または受信機)を同じように扱ってもよい。なぜなら、これら送信機または受信機のどれもこれも、(たとえば、任意の送信ノードから)任意の受信ノードにおいて干渉を生成する(または受信する)からであることに留意されたい。
【0044】
一実施態様では、対称的なFDICを利用してもよく、ここで、たとえば受信機の総数Kは、送信機の総数Lに等しい(たとえば、K=L)。したがって、アップリンクおよびダウンリンクでのストリームの最大数は、大きいKの限界において4Nに制限されてもよい。これらの環境の下で、対称的なFDICを使用して、HDを介してFDによって提供される多重化利得は、2を越えるMについてMとともに変化することができない。上記に鑑み、各ノードで対称的な自由度d及びN個のアンテナを有する、(K,K)FDICチャネルでの合計DoFの最大値は、
【数37】
である。この結論は、補助定理1と呼んでもよい。この例では、変数の数は、実現可能な解をもつために、制約条件の数以上でなければならない。
【数38】
で、以下の式3が与えられる。
【数39】
したがって、それぞれDoFが2N+2以下である2Kのノードは、結局
【数40】
になる。
【0045】
したがって、Mセル間の送信および受信ノードが分離している場合、十分に大きいK=LでのHDにわたるFDの多重化利得は、次式のようになるはずである。
【数41】
上式は、M>2に関し、対称のFDICを使用すると、HDにわたるFDの多重化利得を制限する場合があることを意味する。
【0046】
一実施態様では、非対称なFDICを利用してもよい。自由度(DoF)の数を非対称にして、ある一方向(UL/DL)と比較して他方向で大きくしてもよいが、Mセルの組合せによって使用してもよい最大DoFが、アップリンクまたはダウンリンクにおいてMN以下であることに留意されたい。以下の例では、非対称のFDICが利用される場合に、DoFの合計を制限しなくてもよいことを示す。非対称のFDICにおいてDoFが無制限であることは、一方向、たとえば受信機または送信機でのみ、ノードをさらに追加することによってDoFの合計が任意の大きさになってもよいという事実から生じる。しかし、Mセル内のM個のアクセスポイントの組合せによって使用してもよい最大DoFは、アップリンクまたはダウンリンクにおいてMN以下であることに留意されたい。したがって、非対称のFDICは限界性能を提供してもよい。
【0047】
上記に鑑み、各ノードにおいて最大N個のアンテナを有する任意の大きさのFDICでの最大自由度(DoF)は、4Nに制限されなくてもよく、任意の大きさにしてもよいことが分かる。この結論は、補助定理2と呼んでもよい。たとえば、合計のアップリンク自由度がN−1に制限される場合の(K,K)FBICを考えてみると、次式になる。
【数42】
したがって、ダウンリンクにおける各ノードは、少なくとも1つの自由度を残していてもよい。したがって、システムの自由度の総数は、少なくともN−1+Kと同じ大きさにすることができる。したがって、ダウンリンクユーザの数を増やすことによって、たとえばKを増やすことによって、システムの合計の自由度は、無制限かつアンテナの数Nに関係なく増やすことができる。アップリンクユーザの総数は、Kが増えるとともに増加する必要はなく、N−1以下のアップリンクユーザが所望の結果に至るだけで十分であることに留意されたい。
【0048】
補助定理2によって、利得が一定の(K,K)FDICは、K/2で制限され、時間拡張された干渉チャネル(送信機においてチャネル状態情報(CSI)で時間変化するチャネル)よりもはるかに良好な自由度のスケーリングを有することが明らかになることにさらに留意されたい。補助定理2は、合計の自由度についてNに対する任意のスケーリングが存在することを示すが、このスケーリングは、ダウンリンクおよびアップリンクで同時に達成することはできない。したがって、マルチセル全2重システム対半2重システムのスケーリング利得が制限され、上限の2に達することができない。
【0049】
上記に鑑み、ノードごとにNアンテナを有するFDICを考えると、アップリンクまたはダウンリンクのDoFのいずれかが、アンテナの数Nとともに(1+α)Nのように変化する場合、他方は、
【数43】
を越える計数逓減率(scaling factor)で変化することができない。ここで、αは負でない実数である。これにより、アップリンクとダウンリンクのDoFは両方とも、同時に2N以上にすることができない。この結論は、補助定理3と呼んでもよい。
【0050】
一実施態様では、アップリンクおよびダウンリンクでのスケーリングは、(1+α)Nおよび(1+β)Nによって制限されてもよい。ここで、βは
【数44】
で示される、負でない実数である。上記に鑑み、HDにわたるFDでの多重化利得の計数逓減率
【数45】
は、多重化利得を最大化してもよいαおよびβの値を見つけることによって、セルの数Mに対して決定してもよい。したがって、一実施態様では、ノードごとに最大N個のアンテナを有するMセル全2重システムにおける、HDにわたるFDの多重化利得は、セルの数Mに対して
【数46】
よりもスケーリングが良好でなくてもよい。この結論は、補助定理4と呼んでもよい。この結果により、スケーリングへの制限が相対的に低くなるだけでなく、Mの関数としてFD対HDの多重化利得のスケーリングに対して上限に余裕がないことも明らかになる。
【0051】
一方の方向にMN個のノード(クライアント)を使用し、他方の方向にN−1個のノードを使用する簡略な方式は、次式のスケーリングを達成することができることに留意されたい。
【数47】
一実施態様では、ノードおよびアクセスポイントごとにN個の最大数のアンテナを有するMセル全2重システムでのN(M+1)−1に等しい合計DoFが達成可能である。これは、半2重アクセスポイント対全2重アクセスポイントを使用するための
【数48】
の利得に対応する。この結論は、補助定理5と呼んでもよい。
【0052】
上述の実施態様では、APは、DLとULの両方において、協調的MIMOまたはマルチポイント送信機(協調型マルチポイント伝送(coordinated multi-point transmission)COMPと呼ばれる)を実行できるものと仮定してもよい。しかし、実際には、ダウンリンクCoMPよりもアップリンクCoMPを達成する方がはるかに難しい。なぜなら、UL信号の(シンボルレベルでの)受信と復号両方のための処理オーバヘッドおよびバックホール帯域幅が、DLと比較して圧倒的に大きくなるからである。
【0053】
一実施態様では、アップリンク(UL)クライアントとダウンリンク(DL)クライアントの間の負荷率パラメータを使用してもよい。この負荷率は、トラフィックのダウンリンク方向(たとえば、基地局からクライアントまで)と、アップリンク方向(たとえば、クライアントから基地局まで)との間の、トラフィック負荷および/またはスループット負荷の概算比に対応する。一実施態様では、ダウンリンクの協調型マルチポイント伝送(CoMP)のみが利用可能であるとき、スケーラブルな多重化利得は、関連のある負荷率パラメータに依存してもよい。アップリンクCoMPが実現不可能なとき、全ての協調セル内のアップリンクストリームの最大数は、(ノードでの)アンテナの数で制限されてもよく、また、HDにおけるN以下であってもよい。HDにおけるダウンリンクCoMPのために、ダウンリンクの多重化利得は、依然としてMNである。アップリンクCoMPが存在しない場合、FDに関し、同じ構成を使用でき、すなわち、DL CoMPとUL CoMPの両方で同時に、(大きいNでの)DL上のMN個のストリーム、およびUL上の
【数49】
個のストリームを使用することができるが、ULストリームはNに制限され、その結果、UL CoMPは必要とされない。UL CoMPが存在しない場合、UL CoMPなしで、関連のある負荷率αに応じたHDを上回るFDのスケーリングを次式で表してもよい。
【数50】
上式で、ηは、DLトラフィックとULトラフィックの相対的割合(relative fraction)であり、
【数51】
である。
【0054】
一実施態様では、DLトラフィックとULトラフィックのバランスがとれているとき、たとえば
【数52】
のとき、スケーリング利得はFDに関して最大である。よって、最良のスケーリング利得は、(大きいMにおいて)
【数53】
と表してもよい。したがって、(DL CoMPのみを有する)大規模なセルにおいても、FDの多重化利得2を実現することができる。UL CoMPが存在しない場合に利得が大きくなるが、それはFDの性能が増すからではなく、代わりに(UL CoMPが存在しないことによる)性能低下が、FDの場合(ULにおいて
【数54】
からNのストリームまで延びる)よりも、HDの場合(ULにおいてMNからNのストリームまで延びる)ではるかに大きくなるからである。
【0055】
次に、引き続き
図9を参照しながら
図12を参照すると、本原理による別の実施態様では、本原理を適用してもよい例示的な処理システム1200が、本原理の一実施態様に従って説明的に示してある。処理システム1200は、システムバス802を介して、適切に動作するよう他の構成部品に結合された、少なくとも1つのプロセッサ(「CPU」)1204を備える。キャッシュ1206、読出し専用メモリ(「ROM」)1208、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)1210、入出力(「I/O」)アダプタ1220、サウンドアダプタ1230、ネットワークアダプタ1240、ユーザインターフェースアダプタ1250、および表示アダプタ1260が、適切に動作するようシステムバス1202に結合されている。
【0056】
記憶装置1222および第2の記憶装置1224が、I/Oアダプタ1220によって、適切に動作するようシステムバス1202に結合されている。この記憶装置1222および1224は、ディスク記憶装置(たとえば、磁気ディスク記憶装置または光ディスク記憶装置)、固体磁気装置などのいずれとすることもできる。記憶装置1222および1224は、同じタイプの記憶装置または互いに異なるタイプの記憶装置とすることができる。
【0057】
スピーカ1232は、サウンドアダプタ1230によってシステムバス1202に動作可能に結合されている。送受信機1242は、ネットワークアダプタ1240によってシステムバス1202に動作可能に結合されている。表示装置1262は、表示アダプタ1260によってシステムバス1202に動作可能に結合されている。
【0058】
第1のユーザ入力装置1252、第2のユーザ入力装置1254、および第3のユーザ入力装置1256が、ユーザインターフェースアダプタ850によってシステムバス1202に動作可能に結合されている。ユーザ入力装置1252、1254、および1256は、キーボード、マウス、キーパッド、画像キャプチャ装置、動作検知装置、マイクロホン、これら装置のうち少なくとも2つの装置の機能を組み込んだ装置などのいずれかのものとすることができる。もちろん、他のタイプの入力装置も使用することができる。ユーザ入力装置1252、1254、および1256は、同じタイプのユーザ入力装置または異なるタイプのユーザ入力装置とすることができる。ユーザ入力装置1252、1254、および1256を使用して、システム1200に情報を入力、または、システム1200から情報を出力する。
【0059】
もちろん、処理システム1200は、当業者が容易に思いつくような他の要素(図示せず)を備えてもよく、またある要素を省略してもよい。たとえば、当業者が容易に理解できるような、他の様々な入力装置および/または出力装置は、それらの具体的な実装形態に応じて、処理システム1200内に備えることができる。たとえば、様々なタイプの無線および/または有線の、入力装置および/または出力装置を使用することができる。さらに、当業者が容易に理解できるような、様々な構成での追加のプロセッサ、制御装置、メモリなどを利用することもできる。処理システム1200の上記及びその他の変形形態は、本明細書において提示された本原理の教示を与えられた当業者が容易に思いつく。
【0060】
また、
図13を参照して以下に述べるシステム1300は、本原理のそれぞれの実施態様を実装するシステムであることを理解されたい。処理システム1200の一部またはその全ては、システム1300の要素の1つ以上で実装してもよい。
【0061】
さらに、処理システム1200は、たとえば
図9の方法900の少なくとも一部を含む、本明細書に記載の方法の少なくとも一部を実行してもよいことを理解されたい。同様に、システム1300の一部またはその全てを使用して、
図9の方法900の少なくとも一部を実行してもよい。
【0062】
図13は、本原理の一実施態様による、無線ネットワークにおけるマルチセル全2重通信システムでのセル内およびセル間の干渉を最小にして、スケーラブルな多重化利得を提供するための、干渉アライメントシステム用の例示的なシステム1300を示す。説明して明らかにするため、システム1300の多くの態様が単数形で説明されているが、これらの態様は、システム1300の説明に関して述べたアイテムのうち複数のアイテムに適用することができる。システム1300は、クライアントセレクタ1310、送信機1320、受信機1330、空間干渉アライナ940、プリコーダ1350、およびチャネル状態情報判定器1360を備えてもよい。
【0063】
クライアントセレクタ1310は、複数のクライアントを選択するように構成してもよい。複数のクライアントは、複数のアップリンククライアントおよび複数のダウンリンククライアントを含んでもよい。マルチセル全2重通信システムの各セルにおいて、複数のデータストリームを介して、信号を送信するように複数のアップリンククライアントを構成してもよく、信号を受信するように複数のダウンリンククライアントを構成してもよい。
【0064】
送信機1320は、N個のアンテナを介して、複数のアップリンククライアントから複数のダウンリンククライアント(すなわち受信機)に信号を伝送するように構成してもよい。一実施態様では、送信機1320は、N個のアンテナを介して複数のアップリンククライアントから複数のダウンリンククライアントに干渉信号を送信してもよい。
【0065】
受信機1330は、N個のアンテナを介して、複数のダウンリンククライアントで、複数のアップリンククライアントからの信号を受信するように構成してもよい。一実施態様では、受信機1330は、N個のアンテナを介して、複数のダウンリンククライアントからの干渉信号を受信するように構成してもよい。
【0066】
空間干渉アライナ1340は、干渉するデータストリーム(たとえば、干渉データストリーム)に空間干渉アライメントを実行して、自セル内のダウンリンククライアントと隣接セル内のダウンリンククライアントとに向かうアップリンククライアントの干渉データストリームを整えるように構成してもよい。一実施態様では、空間干渉アライナ940は、干渉グラフのバランスのとれた向きを使用することによって、空間干渉アライメントを実行するように構成してもよい。一実施態様では、空間干渉アライナ1340は、チャネル状態情報判定器1360からチャネル状態情報(CSI)を受信して、プリコーダおよび受信フィルタを適切に選択するように構成してもよい。
【0067】
プリコーダ1350は、プリコーダを使用して複数のアップリンククライアントで信号をプリコーディングして、プリコーディングされた信号を生成するように構成してもよい。プリコーダ1350はさらに、受信フィルタを使用して複数のダウンリンククライアントで、プリコーディングされた信号をフィルタリングするように構成してもよい。チャネル状態情報判定器1360は、複数のアップリンククライアントと複数のダウンリンククライアントとの間でチャネル状態情報(CSI)を取得して、プリコーダおよび受信フィルタを適切に選択するように構成してもよい。たとえば、チャネル状態情報判定器1360は、通信リンクのチャネル特性を評価、推定、および/または測定するように構成してもよい。一実施態様では、チャネル状態情報判定器1360は、既知のチャネル特性を含む、通信リンクのチャネル特性を取得するように構成してもよく、またそのような特性に基づいてチャネル状態情報を判定することができる。
【0068】
クライアントセレクタ1310、送信機1320、受信機1330、空間干渉アライナ1340、プリコーダ1350、およびチャネル状態情報判定器1360の機能についての詳細を、
図1〜11を参照してさらに上記に提供してきた。システム1300は、スケーラブルな多重化利得を含む、入力データを受信しかつ/または出力データを生成してもよく、一実施態様では、この出力データを
図12の表示装置1262上に表示してもよい。上記構成が説明的に示してあるが、本原理による他の種類の構成を利用してもよいことが考慮されることに留意されたい。構成間の上記及びその他の変形形態は、本明細書に提供された本原理の教示を与えられた当業者が容易に思いつき、同時に本原理を維持する。
【0069】
図13に示した実施態様では、各要素がバス1301によって相互接続されている。しかし、他の実施態様では、他のタイプの接続を使用することもできる。また、一実施態様では、システム1300の各要素のうち少なくとも1つはプロセッサベースである。さらに、1つまたは複数の要素は別々の要素として示してもよいが、他の実施態様では、これらの要素を1つの要素として組み合わせることができる。1つまたは複数の要素が別の要素の一部でもよいが、他の実施態様では、1つまたは複数の要素を独立型の要素として実装してもよい場合、その逆も当てはまる。システム1300の各要素の上記及びその他の変形形態は、本明細書に提供された本原理の教示を与えられた当業者が容易に思いつく。
【0070】
前述の説明は、あらゆる点で説明的かつ例示的なものであるが、限定的なものではないと理解すべきであり、本明細書に開示された本発明の範囲は、詳細な説明から判断すべきではなく、むしろ特許請求の範囲から、特許法によって許された範囲全体に従って解釈されるものである。「追加情報」と題する本出願の付属書類に追加情報が提供されており、この追加情報のタイトルは「マルチセルネットワークにおける無線全2重のスケーリング」である。本明細書に示し又は記載した実施態様は、本原理を例示するものにすぎず、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な修正形態を当業者が実施してもよいことを理解されたい。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者は、他の様々な特徴の組合せを実施することもできる。