【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、技術的課題を解決するために以下の技術態様を採用する。
【0011】
先ず、本発明は、改善された位置変位法に基づく行列の三角分解の求解モジュールであって、境界要素取得ユニット、内部要素取得ユニット、上三角行列分解ユニットおよび下三角行列分解ユニットを備え、
前記境界要素取得ユニットは、分解しようとする行列
【数1】
の縮小係数行列Nの境界要素を取得するために用いられ、前記分解しようとする行列Aは、各次の主小行列式が0でないことを満たすM次正方行列であり、a
jiは、第j行第i列の要素を表し、i,j=1,2,3,・・・,Mであり、
前記内部要素取得ユニットは、分解しようとする行列Aの縮小係数行列Nの内部要素を取得するために用いられ、これにより縮小係数行列Nを取得し、
前記上三角行列分解ユニットは、分解しようとする行列Aの上三角行列を分解するために用いられ、
前記下三角行列分解ユニットは、分解しようとする行列Aの下三角行列を分解するために用いられる、改善された位置変位法に基づく行列の三角分解の求解モジュールを提供する。
【0012】
本発明に記載の改善された位置変位法に基づく行列の三角分解の求解モジュールは、
前記境界要素取得ユニットは、分解しようとする行列Aに基づいて、式(1)により縮小係数行列Nの境界要素
【数2】
および
【数3】
を取得し、
【数4】
前記内部要素取得ユニットは、式(2)により縮小係数行列Nの対角要素
【数5】
を取得し、
【数6】
式(2)において、k=2,3,・・・i−1であり、
前記内部要素取得ユニットは、式(3)により縮小係数行列Nの下三角要素
【数7】
を取得し、
【数8】
式(3)において、i=2,3,・・・,M−1;j=i+1,i+2,・・・,Mであり、
前記内部要素取得ユニットは、式(4)により縮小係数行列Nの上三角要素
【数9】
を取得し、
【数10】
式(4)において、i=j+1,j+2,・・・,M;j=2,3,・・・,M−1であり、
これにより取得される縮小係数行列Nは
【数11】
であり、
前記下三角行列分解ユニットは、前記縮小係数行列Nに基づいて、式(5)により前記分解しようとする行列Aを下三角行列
【数12】
に分解し、
【数13】
前記上三角行列分解ユニットは、前記縮小係数行列Nに基づいて、式(6)により前記分解しようとする行列Aを上三角行列
【数14】
に分解することを特徴とする。
【数15】
【0013】
一方、本発明は、工学計算における行列の三角分解の求解方法であって、
分解しようとする行列
【数16】
の縮小係数行列Nの境界要素を取得するステップであって、前記分解しようとする行列Aは、各次の主小行列式が0でないことを満たすM次正方行列であり、a
jiは、第j行第i列の要素を表し、i,j=1,2,3,・・・,Mであるステップ1と、
分解しようとする行列Aの縮小係数行列Nの内部要素を取得し、これにより縮小係数行列Nを取得するステップ2と、
分解しようとする行列Aの下三角行列を分解するステップ3と、
分解しようとする行列Aの上三角行列を分解するステップ4とを含むことを特徴とする、工学計算における行列の三角分解の求解方法を提供する。
【0014】
好ましい一実現形態において、
前記ステップ1は、式(1)により縮小係数行列Nの境界要素
【数17】
および
【数18】
を取得することを含み、
【数19】
前記ステップ2は、
式(2)により縮小係数行列Nの対角要素
【数20】
を取得するステップ2.1と、
【数21】
式(2)において、k=2,3,・・・i−1であり、
式(3)により縮小係数行列Nの下三角要素
【数22】
を取得するステップ2.2と、
【数23】
式(3)において、i=2,3,・・・,M−1;j=i+1,i+2,・・・,Mであり、
式(4)により縮小係数行列Nの上三角要素
【数24】
を取得し、
【数25】
式(4)において、i=j+1,j+2,・・・,M;j=2,3,・・・,M−1であり、
これにより取得される縮小係数行列Nは
【数26】
であるステップ2.3とを含み、
前記ステップ3は、前記縮小係数行列Nに基づいて、式(5)により前記分解しようとする行列Aを下三角行列
【数27】
に分解することを含み、
【数28】
前記ステップ4は、前記縮小係数行列Nに基づいて、式(6)により前記分解しようとする行列Aを上三角行列
【数29】
に分解することを含む。
【数30】
【0015】
一方、本発明は、デジタル信号処理装置において、信号受信装置、データ演算装置および信号出力装置を備え、前記データ演算装置は、上記の改善された位置変位法に基づく行列の三角分解の求解モジュールを含み、かつ、前記データ演算装置がデジタル信号処理過程において行列に対して三角分解を行う必要がある場合には、前記データ演算装置は、前記改善された位置変位法に基づく行列の三角分解の求解モジュールを呼び出して、分解しようとする行列に対して三角分解演算を行うことを特徴とする、デジタル信号処理装置を提供する。
【0016】
好ましい実施形態において、前記信号処理装置は、通信信号または画像信号を処理するために用いられる。
【0017】
他の好ましい一実現形態において、前記デジタル信号処理装置は、FPGAに基づくハードウェア回路により実現され、宇宙船プラットフォームの使用寿命の残りの予測などを行うための情報処理アプリケーションに用いられる。
【0018】
他の好ましい実現形態において、前記デジタル信号処理装置は、電子透かしなどのアプリケーションのように、ソフトウェアのプログラミングにより実現されて、デジタル画像信号を処理および暗号化するために用いられる。
【0019】
本発明は、従来技術に比べ、以下の有益な効果を有する。
【0020】
1.本発明で提案される行列分解モジュールは、原位置変位法による行列の三角分解の求解方法を基礎として、その求解方法を修正および改善し、改善された高効率の行列分解の求解方法をもたらしている。本発明で提案される行列分解モジュールは、改善された位置変位法による行列分解の求解方法に基づき、演算の適用範囲を広げるだけでなく、演算過程も大いに簡略化されており、演算の複雑さをさらに低くしている。
【0021】
2.本発明で提案される行列分解モジュールは、演算過程全体において、内部要素取得ユニット、下三角行列分解ユニットおよび上三角行列分解ユニットにおいてのみ、縮小係数行列の対角要素に対して開方または逆数(除算)を行う必要があり、分解モジュール全体の残りの部分は、簡単な乗算および加算演算過程のみに関わり、従来技術における大量の開方、平方、ノルム計算、除算等の演算を回避して、演算過程を簡略化している。さらに、上三角分解ユニットおよび下三角分解ユニットの演算形式が同じであり、ソフトウェアのプログラミングおよびハードウェアの設計が容易になり、プラットフォームの設計演算リソースおよび記憶リソースの消耗が低減される。
【0022】
3.本発明で提案される行列分解モジュールでは、境界要素取得ユニットと内部要素取得ユニットにおいて、縮小係数行列を取得して作成することにより、逐次反復過程を分解して、縮小係数行列の行列要素を取得しながら、上三角行列分解ユニットおよび下三角行列分解ユニット内部において、前段で得られた縮小係数行列の行列要素により上三角行列、下三角行列の行列要素を同期して並行して求めることができ、従来の行列分解における、反復逐次演算を用いて上三角行列、下三角行列の行列要素を交互に計算することに起因する並行性が強くないという問題を克服している。
【0023】
4.本発明で提案される行列分解モジュールは、位置変位法に基づき、モジュール全体において、分解しようとする行列を入力する際に占有する記憶空間以外に、大量の余分な記憶空間を占有する必要がない。従来の行列分解の技術では、大量の記憶空間を占有するので、超大規模の行列分解の工学的応用には一定の制限があるが、本発明はこの問題を解決している。
【0024】
5.本発明で提案される行列分解モジュールは、各ユニット内部において、演算過程の演算の複雑さが低く、かつ各ユニット内部において、演算過程を上三角、下三角毎に個別に並行して実行することができる。工学的応用における固定次数がMである行列分解モジュールについて、M次以下の任意の次数の非特異行列分解は、0を補うことによって拡張して実現することができる。従来のソフトウェア/ハードウェアの工学的設計における、固定次数の分解モジュールの拡張性が強くないという問題(従来の技術態様において、Matlabのような分解関数および固定分解次数Mを持つFPGA回路モジュールは、演算条件に厳密に従う必要があり、0を補うと演算ができなくなるため拡張性が高くない)を解決している。