(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388725
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】通気口
(51)【国際特許分類】
B41J 2/19 20060101AFI20180903BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
B41J2/19
B41J2/175
【請求項の数】13
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-540540(P2017-540540)
(86)(22)【出願日】2015年1月22日
(65)【公表番号】特表2017-530891(P2017-530891A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】US2015012462
(87)【国際公開番号】WO2016118143
(87)【国際公開日】20160728
【審査請求日】2017年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】オーチス,デイヴィッド,アール
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,シラム,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】スワイヤー,ケヴィン,イー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジュウチン
【審査官】
村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−049629(JP,A)
【文献】
特開2010−058323(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0233418(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 〜 2/215
B01D 19/00 〜 19/04
B01D 53/22
B01D 61/00 〜 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各部品が気体の通過に対して異なる抵抗を有する複数の部品を含み、前記部品は、当該部品が前記気体に対して透過性を有している限り、前記気体が、全部品を同時に通過することができるように配置され、各部品が、気体を通過させるが、液体を通過させないように構成されている、通気口。
【請求項2】
前記通気口が前記液体に最初にさらされた後、前記部品が協働して、第1の持続期間にわたって第1の速度で、及びその後、前記第1の速度よりも遅い第2の速度で気体を通過させる、請求項1に記載の通気口。
【請求項3】
前記複数の部品は、
前記第1の持続期間にわたって第1の空気抵抗を有する第1の低空気抵抗部品と、
前記第1の持続期間よりも長い第2の持続期間にわたって前記第1の空気抵抗よりも大きい第2の空気抵抗を有する第2の高空気抵抗部品と
を含む、請求項2に記載の通気口。
【請求項4】
前記気体は空気であり、前記液体はインクである、請求項1〜3の何れか一項に記載の通気口。
【請求項5】
前記複数の部品のうちの1つの気体抵抗は、前記複数の部品のうちの別のものよりも速い速度で増加する、請求項1〜4の何れか一項に記載の通気口。
【請求項6】
通気口の両側に圧力差があるときに、気体を通過させるが、液体を通過させないように構成された通気口であって、当該通気口が前記液体に最初にさらされた後、第1の持続期間にわたって第1の速度で、及びその後、前記第1の速度よりも遅い第2の速度で前記気体を通過させるように構成された通気口。
【請求項7】
少なくとも前記第1の持続期間の全体を通じて前記気体が両方の部品を同時に通って抜け出ることができるように互いに配置された初期低抵抗部品、及び初期高抵抗部品を含む、請求項6に記載の通気口。
【請求項8】
各部品は、少なくとも前記第1の持続期間の全体を通じて前記気体が両方の膜を同時に通過することができるように互いに配置された個別の膜からなる、請求項7に記載の通気口。
【請求項9】
第1の膜は、前記第1の持続期間にわたって第1の気体抵抗を有し、第2の膜は、前記第1の持続期間よりも長い第2の持続期間にわたって第2の気体抵抗を有する、請求項8に記載の通気口。
【請求項10】
印刷液を保持するための室と、
空気を保持するためのタンクと、
通気口の両側の圧力差がある範囲内であるときに、前記通気口を通って前記室から前記タンクへと、空気は移動することができるが、液体は移動することができない、通気口と、
からなるシステムであって、前記通気口が、
第1の持続期間にわたって第1の空気抵抗を有する第1の膜と、
前記第1の膜と同時に空気を通過させるように構成された第2の膜であって、前記第1の持続期間にわたって前記第1の空気抵抗よりも大きい第2の空気抵抗を有する第2の膜と
を含むシステム。
【請求項11】
前記圧力差は、12水柱インチから80水柱インチまでの範囲内である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記通気口が前記印刷液に最初にさらされた後、前記膜が協働して、前記第1の持続期間にわたって第1の速度で、及びその後、前記第1の速度よりも遅い第2の速度で空気を通過させる、請求項10または請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の膜の空気抵抗は、前記第2の膜の空気抵抗よりも速い速度で増加する、請求項10〜12の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
気泡は、インクジェットプリンターにおいて吐出ノズルへのインクその他の印刷液の適切な給送を阻害することがある。気泡は、例えば吐出ノズルやシステム接続を通って、及び大きな温度変化や圧力変化の際のガス放出によって、外部から印刷液供給系に入ることがある。そのため、インクジェットプリンターは通常、印刷液供給系から気泡を除去するためのある種の機構を有している。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】多部品通気口の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示した通気口のような通気口の動作特性の一例を示すグラフである。
【
図3】多部品通気口の一例を実施するインクジェットプリンターを示す図である。
【
図4】
図3に示した通気口に使用されることがある多部品液体−空気間分離膜の一例を示す図である。
【
図5】
図3に示した通気口に使用される場合があるような多部品液体−空気間分離膜の一例を示す図である。
【0003】
全図面を通じて、同じ部品符号は、同一または類似の部品を示している。
【発明を実施するための形態】
【0004】
説明
一部のインクジェットプリンターでは、空気を通過させるが液体を通過させない通気膜を使用して、インクその他の印刷液からの気泡の除去を促進している。通気膜の乾燥した側における低い圧力によって、印刷液中の気泡は膜の濡れた側から乾燥した側へと引き込まれ、空気は倉庫に保管され、または大気中に放出されることができる。めったに(または、まったく)交換されない長持ちするプリント・バーに使用される膜材料は、印刷液にさらされる長い時間にわたって良好な通気率(空気透過率)を維持しなければならない。適当な膜材料は通常、印刷液にさらされた後あっという間に大半の通気率を失うことがある高通気率の材料に比べて低い通気率を有し、したがって低いガス抜き速度を有している。低通気率材料によれば、通常印刷動作時に十分なガス抜きが可能となるが、運転開始時に空気または出荷時の流体を印刷液に交換する場合、プリント・バーを充填するプロセスは遅くなる。
【0005】
多部品通気口は、印刷液にさらされる長時間にわたって良好な通気率を
依然として維持しつつ、運転開始時のより高速なガス抜きを実現するために開発された。一例において、通気口は、両方の膜を通して同時のガス抜きを行うために、互いに平行に配置された2つの膜を含む。一方の膜は、高い通気率(低い抵抗)を有し、他方の膜は低い通気率(高い抵抗)を有している。二重膜通気口によれば、印刷液にさらされた後直ぐに低い方の抵抗を有する膜材料が故障した場合(ガス抜きできなくなった場合)でも、長期的性能を損なうことなく、運転開始時により高速な充填を行うための高いガス抜き能力を実現するコスト効率に優れた解決手段が得られる。
【0006】
図面に示され、本明細書において説明される種々の例は、例示であり、特許請求の範囲に記載した事項の範囲を制限するものではなく、当該範囲は、この説明の後に続く特許請求の範囲に規定される。種々の例が、インクによる印刷に制限されることはなく、他の液体のインクジェット様式の吐出、及び/又は、印刷以外の使用も含まれる。
【0007】
図1は、新規な多部品気体通気口10の一例を示すブロック図である。
図2は、
図1に示した通気口10のような気体通気口の動作特性の一例を示すグラフである。まず
図1を参照すると、通気口10は、「高」抵抗部品14に対して平行に配置された第1の「低」抵抗部品12を含み、それによって、両方の部品が気体に対して透過性である限り、空気その他の気体が、部品12及び14の両方を同時に通って抜け出ることができるように配置されている。この文脈における「低」及び「高」とは、2つの部品がインクその他の液体に最初にさらされたときの2つの部品の当初の相対透過率を意味している。以下で説明されるように、部品の相対透過率は、液体に最初にさらされた後、変化することがある。各部品12、14は、例えば空気のような気体に対して透過性であって、かつ例えばインクのような液体に対して不透過性である膜として構成される場合がある。この構成では、通気口10は、気体−液体間分離器としても機能する。
【0008】
現在のところ、インクジェットプリンターにおいてインクから空気を抜く際の使用に適した膜材料の耐用寿命は、材料の抵抗によって決まり、材料の抵抗は、インクにさらされた後、変化することがある。当初高い空気抵抗(低い通気率)を有する材料の性能は、インクに露出された長期間にわたってずっと不変であるのに対し、当初低い空気抵抗(高い通気率)を有する一部の膜材料の性能は、インクジェット印刷に一般的に使用されるインクに露出された後、急速に劣化することがあることが、試験から分かっている。高抵抗の膜材料ほど長い耐用寿命を有し、低抵抗の膜材料ほど、短い耐用寿命を有することが多い。
【0009】
図2のグラフは、多部品通気口10の動作特性の一例を示すものであり、グラフにおいて、第1の低抵抗部品12は、高抵抗部品14に比べて短い耐用寿命を有している。
図2を参照すると、ライン16は、例えば空気ーインク間分離膜として実施される
図1に示した通気口部品12、14がインクに露出される時間の全体を通じての通気口10の総抵抗を経時的に表している。ライン16は、ライン15で示した第1の膜12の抵抗と、ライン17で示した通気膜14の抵抗との結合抵抗を表している。初期期間18では、膜12及び14が気体を有効に通過させるにしたがって、通気口10の抵抗は、ライン部分20で示されるように、一定速度で徐々に増加している。遷移期間22では、低抵抗の膜12の性能が急速に劣化するにしたがって、通気口10の抵抗は、ライン部分24で示されるように急激に増加している。低抵抗の膜12の性能は、通気口10の耐用寿命の残りの部分の全体を通じて、通気口10の抵抗値をライン部分26で示されるような長い方の寿命の膜のものに対応する値とみなさせるまで劣化する。
【0010】
図3は、多部品気体通気口10を実施するインクジェットプリンター30を示している。
図4、及び
図5は、プリンター30における通気口10の一例を詳細に示している。まず
図3を参照すると、プリンター30は、インクその他の印刷液34を一または複数のプリントヘッド36へと運ぶ液体供給系32と、印刷液34から気泡40を除去するための空気管理系38とを含む。(本文書において「液体」とは、気体または複数の気体から主に構成されていない流体を意味している。)プリントヘッド36は、一以上の開口部から例えば液滴42のような液体を吐出するためのプリンター30の部品を一般に表しており、例えば、プリントヘッド・ダイ、プリントヘッド・アセンブリ、及び/又はプリント・バーと時々呼ばれることがあるものも、これに含まれる。プリンター30、及びプリントヘッド36が、インクによる印刷に限定されることはなく、他の液体のインクジェット様式の吐出、及び/又は印刷以外の使用も含まれる。
【0011】
液体供給系32は、印刷液34の供給源44と、供給源44からプリントヘッド36への印刷液34の流れを調節するための流量調節器46とを含む。図示の例では、調節室48への印刷液34の流れは、弁50によって制御される。エアバッグ52が膨張・収縮すると、結合部54を介して弁50が開閉される。エアバッグ52は、大気に対して開放されており、または、他の適当な気圧源に接続されている。室48内を所望の圧力に維持するために、偏位バネ56が所定の力をエアバッグ52に加えている。プリンターが休止中にプリントヘッド36からの液垂れを防止するために、室48内の所望の圧力は、通常、僅かに負圧(ゲージ)になっている。フィルタ58は一般に、不純物を除去するために使用される。
【0012】
空気管理系38は、液室48からの通気口10と、各通気口10に有効に接続されたエアポンプ60とを含む。エアポンプ60は、各通気口10の乾燥した側から空気を吸い込み、圧力を低下させ、印刷液34中の気泡が通気膜62を通過できるようにする。膜62は、少なくとも供給系32の通常動作条件内で、気泡40を乾燥した側へ通過させるが、印刷液34は遮断する。
【0013】
図示の例では、各通気口10が、所望の範囲内の低圧に維持された真空タンク64を通して、エアポンプ60に接続されている。気泡40が通気口10を通って移動するにしたがって、タンク64内の圧力は上昇(すなわち、真空度は低下)することになるため、制御弁66を開き、ポンプ60を作動させることによって、真空を定期的に回復させなければならない。また、図示の例では、2つの空気通気口10を使用して、液室48から空気を除去している。一方の通気口10は、(室48を通る液流の方向において)フィルタ58の上流にあり、もう一方の通気口10は、フィルタ58の下流にある。
【0014】
図4、及び
図5は、通気口10の一例の詳細を示している。
図4、及び
図5を参照すると、通気口10は、室ハウジング70に設けられた開口部68と、開口部68を覆っている膜62とを含む。図示の例において、膜62は、開口部68の第1の部分72を覆っている第1の低空気抵抗(高通気率)部品12、及び開口部68の第2の部分74を覆っている第2の高空気抵抗(低通気率)部品14を含む。部品12及び14は、空気が部品12と部品14の両方を同時に通って抜け出ることができるように、互いに平行に配置されている。
【0015】
適当な低抵抗、すなわち通気率の通気口材料としては、約2マイクロメートル(ミクロン)の特徴的細孔寸法を有するGOREのD10 SF0 ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)や、日東電工のTEMISH(登録商標)S−NTF2122A−S06、不織布媒体に撥油性処理を施したePTFE材料が挙げられる。適当な高抵抗、すなわち低通気率の通気口材料としては、ePTFEの厚い(例えば25マイクロメートル(ミクロン)の)層の上に非多孔性PTFEの薄い(例えば1−2マイクロメートル(ミクロン)の)層を備えた、インフューザ・ブランドであるポールの種々の膜材料が挙げられる。他の適当な通気口材料も可能である。例えば、現在入手可能なPTFEその他の「通気性」織物の一部に変更を加えることによって、各通気口部品12、14のための望ましい動作特性を得ることができるものと予想される。
【0016】
ページ幅プリント・バー36を実施する
図1に示したプリンター10のようなインクジェットプリンターの一例において、各通気口10の両側の圧力差が12水柱インチから80水柱インチまでの範囲内であるとき、プリント・バーにインクを充填するために少なくとも10cm
3/分の速度で、及びその後、プリント・バーの寿命全体を通じて少なくとも0.5cm
3/週の速度で、空気を通過させることができるものと予想される。各通気口の実際の通気能力、及び所望の容量を運ぶためのサイズは具体的実施形態によって変わるが、十分なガス抜きを行うためには、プリント・バーを充填するために0.35水柱インチ/(cm/分)未満の総抵抗、及び、通気口の有効寿命の全体を通じて150,000水柱インチ/(cm/分)未満の総抵抗が期待される。
【0017】
他の構成または配置の通気口部品12、14も可能である。一例として、3以上の通気口部品が使用される場合があり、及び/又は、流速及び寿命の両方について特性が変更される場合がある。別の例として、通気口部品12、14について、例えば円盤や円環のような他の形状も可能である。
【0018】
図面に示され、上で説明された種々の例は、例示であり、特許の範囲を制限するものではない。特許の範囲は、下記の特許請求の範囲に規定される。