(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の製造方法について詳細に説明する。なお、本発明は、発明を実施するための形態の記載に限定されるものではなく、当業者に周知された範囲で適宜設計変更等することが可能である。
【0011】
[繊維強化複合材料成形品の製造方法について]
本明細書において、繊維強化複合材料成形品は、繊維織布、例えば、カーボンファイバー、カラスファイバー等の繊維織布を、2枚の樹脂シートで挟み込み、加熱及び加圧することで得られるものである。本発明の製造方法によって製造された繊維強化複合材料成形品は、繊維織布の繊維中に樹脂シートの樹脂の少なくとも一部又は全部が浸透している、繊維と樹脂との複合体である。本発明の繊維強化複合材料成形品は、加熱及び加圧により硬化し、一定の形状に形作られるものであるが、選択する樹脂の硬化性又は柔軟性によっては、加熱及び加圧しても硬化しないもの(このようなものは、製品の表面材料として使用する)も、包含するものとする。
【0012】
また、本発明の製造方法で得られる繊維強化樹脂複合材料成形品には、樹脂及び繊維織布からなる繊維強化樹脂複合材料と、アルミ、鉄、チタン等の金属とを加熱及び加圧して接合させた繊維強化樹脂複合材料・金属一体化成形品を含むものとする。
【0013】
繊維強化複合材料成形品は、使用する樹脂の種類を適宜選択することにより、航空機、自動車等の部品や、自動車の内装部品、障害者用の福祉機器、車椅子、PC及びタブレット等の筐体、バック、財布等に使用することができる。
【0014】
本実施例の製造方法は、
図1のようなプレス成形機1により、積層体2を加熱及び加圧することにより成形することができる。
図1における積層体2の構成は、
図2に示される。
【0015】
図2の積層体2について説明する。積層体2をプレス成形機1により、加熱及び加圧することで、繊維強化樹脂複合材料成形品を製造することができる。
【0016】
積層体2は、下から第一アルミニウム板21、第一離形フィルム22、第一樹脂シート23、繊維織布24、第二樹脂シート25、第二離形フィルム26、第二アルミニウム板27の順で配置されている。
【0017】
積層体2を形成するために、まず、プレス成形機1に備えられた下金型4の上に、金属板である、第一アルミニウム板21を配置する。第一アルミニウム板21の代わりに、鉄、ステンレス等の金属板を用いることができる。第一アルミニウム板21を設けることで、プレス成形機1により加熱・加圧した直後の積層体2の温度が高い状況でも脱型することができるようになる。また、第一アルミニウム板21の材料であるアルミニウムは、熱伝導率が高いため、加熱装置によって出された熱を樹脂シートに伝えることができる。第一アルミニウム板21の厚さは5mm程度を用いるが、本発明を阻害しない範囲で適宜変更することができる。
【0018】
次に、第一アルミニウム板21の上に第一離形フィルム22を配置する。第一離形フィルム22の種類は、加熱及び加圧することにより製造される繊維強化複合材料成形品を上金型3又は下金型4から容易に取り外すことができるようにするものである。第一離形フィルム22は、上記の目的が達成できれば、特に限定されるものではなく、具体的には、東レ株式会社製のトレファン(登録商標)を第一離形フィルム22として使用することができる。
【0019】
次に、第一離形フィルム22の上に、第一樹脂シート23を配置する。第一樹脂シート23は、加熱及び加圧により軟化し、繊維織布24に含浸できるものであれば、特に限定されるものではないが、第一樹脂シート23は、加熱及び加圧により繊維織布24に浸透し、かつ密着できるものが好ましい。第一樹脂シート23は、樹脂がシート状である必要がある。第一樹脂シート23がシート状でなければ、炭素繊維織布24の全体的に均一に浸透することができないためである。なお、本明細書、請求の範囲、図面等で用いられる「含浸」とは、加熱及び加圧により、第一樹脂シート23、第二樹脂シート25のいずれか一方又は両方の、一部又は全部が繊維織布に入り込んでいる状態である。
【0020】
第一樹脂シート23の種類は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂でもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。具体的な樹脂の種類は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂等が挙げられるが、なかでも、プレス成形により含浸しやすい樹脂である、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂が好ましく、ウレタン樹脂が最も好ましい。ウレタン樹脂等は、柔軟性を有するため、それを使用する繊維強化複合材料成形品も柔軟性を有することになるため、これらの樹脂を使用した場合は、自動車の内装、かばん、財布、PCの筐体、などに使用することが好ましい。また、含浸時の金型温度である130℃〜300℃にて、軟化して繊維織布に含浸する樹脂であることが好ましい。
【0021】
第一樹脂シート23として、ポリウレタン樹脂シートを選択する場合は、柔軟性と剛性とを兼ねそろえたポリウレタン樹脂シートであることが好ましい。特に、柔軟性のある繊維強化樹脂複合材料成形品を製造する場合は、このポリウレタン樹脂シートが、5〜70MPの引張強度(DIN53504)を有することが好ましい。また、80〜550%の引張伸度を有するポリウレタン樹脂シートを用いることが好ましい。
【0022】
本発明の製造方法に使用できるポリウレタン樹脂シートのポリウレタンを形成するポリイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;1,2−エチレンジイソシアネート、1,3−プロピレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
ポリウレタン樹脂シートのポリウレタンを形成するポリオールとしては、特に限定されるものではないが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられ、応力緩和性や本発明の合わせガラス用中間膜および有機ガラス板に対する接着性等の観点から、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
ポリウレタン樹脂シートのポリウレタンを形成する鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、アルカン(C7〜20)ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコール、ビスフェノールA等のジオール類;エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,3−または1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコール等のアミノアルコール類等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ポリウレタン樹脂シートは、ショアA硬度が70〜100であることが好ましい。
【0026】
また、ポリウレタン樹脂シートは、意匠性の観点から、透明性の高いものであることが好ましい。
【0027】
ポリウレタン樹脂シートとしては、市販品を用いてもよく、例えば、シーダム株式会社製ポリウレタンフィルム「ハイグレスDUS451」、「ハイグレスDUS605」、「ハイグレスDUS701」、ハンツマン社製熱可塑性ポリウレタンフィルム「KrystalFlexPE192」、「KrystalFlexPE193」、「KrystalFlexPE399」、バイエルマテリアルサイエンス社製熱可塑性ポリウレタンフィルム「A4700」等が挙げられる。ポリウレタン樹脂シートの引張強度は、40〜60Maが好ましく、引張伸度は、350〜500%が好ましい。
【0028】
次に第一樹脂シート23の上に繊維織布24(実施例では炭素繊維織布24)を配置する。繊維織布24は、3〜30μmの断面直径を有する長繊維の集合体であり、密度1.74〜1.95g/cm
3程度である。また、フィラメント数は特に限定されるものではないが、1k(1000フィラメント)、3k(3000フィラメント)、6k(6000フィラメント)が好ましい。
【0029】
炭素の繊維織布24としては、得られる繊維強化樹脂成形品の意匠性を向上させるため、織られている繊維織布が好ましく、織り方としては、平織、綾織が挙げられる。具体的には、東レ株式会社製トレカ(登録商標)のクロス、三菱レイヨン株式会社製パイロフィル(登録商標)のクロスなどが挙げられる。
【0030】
また、繊維織布24は一枚でも使用できるが、必要により、複数枚、具体的には2枚〜5枚重ねて使用することもできる。また、繊維織布24の素材は、炭素に限定されるものではなく、ガラス繊維織布、高分子材料等の繊維織布も使用することができる。
【0031】
次に繊維織布24の上に、第二樹脂シート25を配置する。第二樹脂シート25は、第一樹脂シート23と同一のものでも、異なったものでもよい。第二樹脂シート25として使用できる樹脂は、第一樹脂シート23と同様のものが挙げられ、第二樹脂シート25としては、第一樹脂シート23と同様に、ポリウレタン樹脂シートが好ましい。
【0032】
次に第二樹脂シート25の上に、第二離形フィルム26を配置する。第二離形フィルム26は、第一離形フィルム22と同じであっても、異なっていてもよいが、第一離形フィルム22と同一のものを用いることが好ましい。第二離形フィルム26の種類としては、第一離形フィルム22と同じものが挙げられ、適宜選択して用いることができる。
【0033】
次に第二離形フィルム26の上に、第二アルミニウム板27を配置する。第二アルミニウム板27は、第一アルミニウム板21と同じであっても、異なっていてもよいが、第一アルミニウム板21と同一のものを用いることが好ましい。第二アルミニウム板27の種類としては、第一アルミニウム板21と同じものが挙げられ、適宜選択して用いることができる。
【0034】
このように、積層体2は、第一アルミニウム板21、第一離形フィルム22、第一樹脂シート23、炭素繊維織布24、第二樹脂シート25、第二離形フィルム26、第二アルミニウム板27により構成され、下金型4の上に配置されている(
図1参照)。なお、上記した説明のように、積層体2は、構成物を下金型4の上に順に配置してもよいし、積層体2を形成してから、その積層体2を下金型4の上に配置してもよい。
【0035】
本発明の製造方法によれば、接着剤及び接着シートを用いなくても、第一樹脂シート23及び第二樹脂シート25が十分に繊維織布24に浸透することができるため、得られる繊維強化樹脂複合材料成形品は、高い接着力を有し、繊維織布24から第一樹脂シート23及び第二樹脂シート25が剥がれにくい。しかし、接着剤又は接着シートの使用を排除するものではなく、必要により接着剤又は接着シートを使用してもよい。接着剤又は接着シートを使用する場合は、第一樹脂シート23と炭素繊維織布24の間、及び、炭素繊維織布24と、第二樹脂シート25との間に、接着剤を塗布するか、接着シートを配置することができる。
【0036】
次にプレス成形機1による、プレスについて説明する。プレス成形は、上金型3及び下金型4を備えるプレス成形機1を使用する。プレス成形機1は、上金型3を上下可動でき、上金型3と、下金型4との間にある物を圧縮(プレス)することができる。プレス成形機1は、上金型加熱部6、下金型加熱部7を備え、上金型3、下金型4をそれぞれ加熱することができる。
【0037】
まず、積層体2を配置した下金型4、及び上金型3を、それぞれ130℃〜300℃程度に加熱する。なお、繊維強化樹脂複合材料成形品ではなく、繊維強化複合材料・金属一体化成形品を製造する場合は、積層体2の下に、シート状の鉄、アルミニウム、チタン等の金属を配置させる。加熱及び加圧は、通常、空気中で行うことができるが、窒素等の不活性ガス中でも行うことができる。
【0038】
そして、上金型3を下方に移動させて、積層体2を上金型3のプレス面と、下金型4のプレス面とで挟み込み、加圧する。材料から直接、繊維強化樹脂複合材料成形品を製造する場合は、圧力は20MPa〜40MPa程度である。プレス時間は10分〜60分程度である。なお、この時の状態を
図3で示す。
【0039】
上記の加圧及び加熱により、第一樹脂シート23及び第二樹脂シート25が軟化し、炭素繊維織布24に含浸され、繊維強化複合材料成形品が製造される。
【0040】
加熱・加圧後は、上金型3を退避させ、加熱・加圧済の積層体2を脱型することができる。
【0041】
[金型について]
下金型4及び上金型3は、それぞれプレス面を有しており、プレス面で積層体2を挟み込み、加熱及び加圧することにより、繊維強化複合材料成形品が製造される。下金型4及び上金型3の材料は特に限定されるものではないが、鉄又は鉄を含む合金が好ましく、特にステンレスが好ましい。
【0042】
下金型4及び上金型3は、初めて使用する際には、800℃〜1200℃で焼き入れする方が好ましい。焼き入れをすることで、線膨張率を抑えることができる。線膨張率を抑えることで、炭素繊維織布24の意匠性を維持しながら、繊維強化複合材料成形品を製造することができる。
【0043】
また、本発明の製造方法によれば、繊維強化複合材料成形品は、板状の繊維強化複合材料成形品だけではなく、波状や折れ曲がった繊維強化複合材料成形品も制作することが可能である。
【実施例】
【0044】
図1で説明したプレス成形機の下金型4の上に、5mmの厚さを有する第一アルミニウム板21、第一離形フィルム22として東レ株式会社製トレファン(登録商標)、第一樹脂シート23としてシーダム株式会社製ポリウレタンフィルム「ハイグレスDUS701CR」、繊維織布24として、炭素繊維織布である、東レ株式会社製トレカ(登録商標)のクロス、第二樹脂シート25としてシーダム株式会社製ポリウレタンフィルム「ハイグレスDUS701CR」、そして、第二離形フィルム26として東レ株式会社製トレファン(登録商標)、そして5mmの厚さを有する第二アルミニウム板27をこの順に配置し、上金型3及び下金型4の温度を140℃にし、圧力30MPに設定し、上金型3と下金型4とで積層体を挟み込み、加圧する。雰囲気は、空気中であった。3分間保持後、上金型3を上昇させた。下金型4の温度が80℃になった時点で、積層体である繊維強化複合材料成形品を取り除いた。室温にまで冷却した積層体2は、繊維強化複合材料成形品になっており、ポリウレタン樹脂シートは、接着剤又は接着シートがなくても、炭素繊維織布に十分に接着していた。
【0045】
以下、本実施例の効果について説明する。
[1]繊維強化複合材料成形品のプレス成形により製造する方法であって、第一樹脂シート、繊維織布、及び第二樹脂シートをこの順で重ねた積層体を下金型の上に配置する工程と、上金型と、前記下金型とを接近させて、前記積層体を挟み込む工程と、挟み込まれた前記積層体を加熱及び加圧することにより、前記シートの樹脂を繊維織布に含浸させる工程とを含む、方法は、樹脂シートを加熱及び加圧することにより、簡便に樹脂を繊維織布に含浸することができる。その上、樹脂シート及び繊維織布という繊維強化複合材料成形品の材料から、直接繊維強化複合材料成形品を製造することもできる。
【0046】
[2]前記[1]の方法において、第一樹脂シート、繊維織布、及び第二樹脂シートをこの順で重ねた積層体を下金型の上に配置する工程において、第一樹脂シートの下に第一離形シート、及び第二樹脂シートの上に第二離形シートをそれぞれ配置する場合は、加熱及び加圧工程の後に、容易に金型から加熱及び加圧済の積層体を取り除くことができる。
【0047】
[3]前記[2]の方法において、第一離形シートの下、及び第二離形シートの上にそれぞれ金属板を配置する場合は、加熱及び加圧工程の後に、さらに容易に金型から加熱及び加圧済の積層体を取り除くことができる。すなわち、上記のように金属板を使用することで、離形シートは金属板に貼りつくことがないため、加熱及び加圧した直後の温度が高い状態でも、脱型することができる。
【0048】
[4]前記[3]の方法において、前記金属板がいずれもアルミニウム板である場合は、熱伝導率が高い上に、軽量でしかも安価であるため、経済的価値が高い。
【0049】
[5]前記[1]乃至[4]の方法において、前記シートの樹脂を繊維織布に含浸させる工程は、130℃〜300℃の温度で、20MPa〜40MPaの圧力で、10分〜60分間加熱及び加圧することにより、行われる場合は、樹脂シートを適切な温度及び圧力にすることにより、簡便に樹脂を繊維織布に含浸することができる。
【0050】
[6]前記[1]乃至[5]の方法において、前記上金型及び前記下金型は、いずれも800℃〜1200℃で焼き入れされている場合は、金型の線膨張率を抑えることができる。線膨張率を抑えることで、炭素繊維織布の意匠性を維持しながら、繊維強化複合材料成形品を製造することができる。