特許第6388767号(P6388767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388767温度センサーの配列を有する、灌注カテーテル先端部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388767
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】温度センサーの配列を有する、灌注カテーテル先端部
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-258868(P2013-258868)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2014-117617(P2014-117617A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2016年11月8日
(31)【優先権主張番号】13/716,578
(32)【優先日】2012年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】アタナシオス・パパイオアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ローワン・オルンド・ヘテル
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−239915(JP,A)
【文献】 特開2012−139502(JP,A)
【文献】 特表平11−504539(JP,A)
【文献】 特表2010−505596(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0224667(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0312756(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0161797(US,A1)
【文献】 米国特許第05957961(US,A)
【文献】 米国特許第06312425(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12−18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用プローブであって、
患者の身体内に挿入するように構成された遠位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメン、及び電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管と、
前記挿入管の前記遠位端に取り付けられ、前記導電体に電気的に連結された導電性キャップであって、前記導電性キャップは、多数の開口部によって穿孔された外側表面を有し、前記ルーメンからの前記灌注流体が、前記開口部を通じて前記導電性キャップの外に流れ出るようにするため、前記挿入管の前記ルーメンと流体連通する内側空洞を画定する、導電性キャップと、
前記外側表面と熱連絡する、前記導電性キャップ内に取り付けられた複数の温度センサーであって、前記内側空洞の前記灌注流体から断熱された、複数の温度センサーとを含み、
前記導電性キャップが前記外側表面の内側に多数のリブを含み、前記温度センサーが前記リブの内側に取り付けられ、
前記リブは、前記導電性キャップの一体部分であり、前記導電性キャップの外側部分と同じ材料から作製される、プローブ。
【請求項2】
前記温度センサーが、前記導電性キャップの周囲で、異なる周方向及び軸方向の位置において配置されている、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記温度センサーが、異なる周方向位置において軸方向に離間した対として構成される、請求項に記載のプローブ。
【請求項4】
前記挿入管が、前記患者の心臓に挿入するためのカテーテルとして構成されており、前記導電性キャップが、前記心臓内の心筋組織を焼灼するために前記心筋組織に接触して前記電気エネルギーを適用するように構成されている、請求項1に記載のプローブ。
【請求項5】
医療用装置であって、
患者の身体に挿入する様に構成されたプローブであって、
遠位端及び近位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメン、及び電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管と、
前記挿入管の前記遠位端に取り付けられ、前記導電体に電気的に連結された導電性キャップであって、前記導電性キャップが、多数の開口部によって穿孔された外側表面を有し、前記ルーメンからの前記灌注流体が、前記開口部を通じて前記導電性キャップの外に流れ出るようにするため、前記挿入管の前記ルーメンと流体連通する内側空洞を画定する、導電性キャップと、
前記外側表面と熱連絡する、前記導電性キャップ内に取り付けられた複数の温度センサーであって、前記内側空洞の前記灌注流体から断熱された、複数の温度センサーと、を含む、プローブと、
前記プローブに前記灌注流体を供給するために、前記挿入管の前記近位端において前記ルーメンに連結されるポンプと、
前記導電性キャップに前記電気エネルギーを供給するために、前記挿入管の前記近位端で前記導電体に連結される発電機と、
前記導電性キャップの温度をモニタリングするために、前記温度センサーからの温度信号を受信するように接続されているモニタリング回路とを含み、
前記導電性キャップが前記外側表面の内側に多数のリブを含み、前記温度センサーが前記リブの内側に取り付けられ、
前記リブは、前記導電性キャップの一体部分であり、前記導電性キャップの外側部分と同じ材料から作製される、医療用装置。
【請求項6】
前記モニタリング回路が、前記複数の温度センサーからの最高温度読み取り値を選択し、前記最高温度読み取り値に対応して、前記ポンプ及び前記発電機の少なくとも一方を制御するよう構成される、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記温度センサーが、前記導電性キャップの周囲で、異なる周方向及び軸方向の位置において、配置されている、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記プローブが、前記患者の心臓に挿入するためのカテーテルとして構成され、前記導電性キャップが、前記心臓内の心筋組織を焼灼するために前記心筋組織に接触して前記電気エネルギーを適用するように構成されている、請求項に記載の装置。
【請求項9】
医療用プローブを製造する方法であって、
患者の身体内に挿入するように構成された遠位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメン、及び電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管を提供することと、
多数の開口部により穿孔された外側表面を有し、内側空洞を画定する、導電性キャップを形成することと、
前記導電性キャップを前記挿入管の前記遠位端に取り付けることであって、前記内側空洞は、前記ルーメンからの前記灌注流体が、前記開口部を通じて前記導電性キャップから流れ出るようにするために、前記挿入管の前記ルーメンと流体連通している、ことと、
前記導電性キャップを前記導電体に電気的に連結することと、
複数の温度センサーを、前記外側表面と熱連絡させて前記導電性キャップ内に取り付け、前記温度センサーを、前記内側空洞内の前記灌注流体から断熱することとを含み、
前記導電性キャップが前記外側表面の内側に多数のリブを含み、前記温度センサーが前記リブの内側に取り付けられ、
前記リブは、前記導電性キャップの一体部分であり、前記導電性キャップの外側部分と同じ材料から作製される、方法。
【請求項10】
前記温度センサーを取り付けることが、前記導電性キャップの周囲で、異なる周方向及び軸方向位置において、前記温度センサーを配置することを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に非侵襲性医療用装置に関連し、特に身体内の組織を焼灼するために使用されるプローブに関連する。
【背景技術】
【0002】
心臓内の低侵襲的な焼灼は、各種不整脈の治療選択肢である。このような処置を実施するために、医師は、典型的には、血管系を介して心臓にカテーテルを挿入し、電気的活動が異常な区域にてカテーテルの遠位端を心筋組織と接触させ、次いで、遠位端で又はその付近で1つ以上の電極に通電させて組織を壊死させる。
【0003】
焼灼部位の領域を冷却することにより、組織の炭化及び血栓の形成が低下することが判明している。この目的のため、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)は、CARTO(登録商標)に組み込まれたマッピング及び焼灼システムと併用するための、ThermoCool(登録商標)灌流先端カテーテルを提供する。組織を焼灼するために無線周波数(RF)電流によりエネルギーを加えられる金属カテーテル先端には、治療部位への灌注のために先端の周囲に分布させた多数の周辺穴が存在する。カテーテルに連結させたポンプは、食塩水をカテーテル先端に運搬し、手順中にカテーテル先端及び組織を冷却するために穴から溶液を流す。
【0004】
参照により本明細書に開示が組み込まれる米国特許出願公開番号第2010/0030209号は、穿孔の開いた先端部を有するカテーテルを記載する。このカテーテルは、対象者の身体に挿入するための遠位端を有する挿入管を含む。遠位先端部は、挿入管の遠位端に固定され、身体内の組織に電力を印加するために連結される。遠位先端部は、外側表面を通過する複数の穿孔を備える外側表面を有し、これは、遠位先端部にわたって周方向及び長手方向に分布している。この挿入チューブにはルーメンが通っており、穿孔から組織に液体を送達するように連結されている。
【0005】
いくつかの焼灼カテーテルは、焼灼手術中の温度をモニタリングするためのセンサーを含む。例えば、米国特許番号第5,957,961号は、それに沿って延びる少なくとも1つの電極を担持する遠位区分を有し、かつ電極に隣接するように遠位区分に沿って配置されてそれぞれ温度を示す出力をもたらす多数の温度センサーを有する、カテーテルを記載する。カテーテルは、無線周波数エネルギーを電極にもたらす、電源に連結される。温度プロセス回路は、温度センサー及び電源に連結され、温度センサーの出力に応じ電源からの電力出力を制御する。
【0006】
別の例として、米国特許番号第6,312,425号は、多数の熱センサーを備えるRF焼灼カテーテル先端電極を記載する。先端熱センサーは、遠位端区域の頂部、又はその付近に位置し、1つ以上の側方熱センサーは近位端区域の表面付近に位置する。電極は好ましくは、中空のドーム形状の外殻から形成されたアセンブリであり、コアが外殻内部に配置されている。側方熱センサーワイヤーは、外殻の内部に電気的に接続され、コアは外殻に溶接された側方熱センサーワイヤーのための長手方向チャネルを有する。外殻はまた、外殻の頂部にポケットを有し、端部熱センサーワイヤーは、コアを通じて外殻の頂部に達する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
下記の本発明の実施形態は、より高い温度測定能力を備える焼灼プローブをもたらす。
【0008】
したがって、本発明の実施形態により、患者の身体内に挿入するように構成された遠位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメン、及び電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管を含む、医療用プローブが提供される。導電性キャップは、挿入管の遠位端に取り付けられ、導電体に電気的に連結される。導電性キャップは、多数の開口部によって穿孔された外側表面を有し、ルーメンからの灌注流体が開口部を通じてキャップの外に流れ出るように、挿入管のルーメンと流体連通する内側空洞を画定する。複数の温度センサーは、外側表面と熱連絡させる導電性キャップ内に取り付けられ、内側空洞内の灌注流体から断熱される。
【0009】
一実施形態において、キャップは、外側表面の内側に複数のリブを含んでもよく、温度センサーはリブの内側に取り付けられる。
【0010】
別の実施形態により、プローブは、キャップの内側にあり、かつキャップと平行な内側壁部を含み、内側空洞は、内側壁部とキャップとの間に収容され、温度センサーは、内側壁部とキャップとの間に取り付けられる。プローブは、内側空洞内に位置しかつキャップを内側壁部に接続する多数のスペーサーを含み、温度センサーはスペーサー内に取り付けられる。
【0011】
更に別の実施形態において、キャップは内部に多数の長手方向ボアを有する側壁を含み、温度センサーは、ボア内に適合させてこれに取り付けられる。
【0012】
典型的に、温度センサーは、キャップの周囲で、異なる周方向及び軸方向位置において配置されている。温度センサーは、異なる周方向位置において軸方向に離間した対として配置され得る。
【0013】
開示される実施形態において、挿入管は、患者の心臓に挿入するためのカテーテルとして構成され、導電性キャップは、心臓内の心筋組織を焼灼するために心筋組織に接触して電気エネルギーを適用するように構成されている。
【0014】
また、本発明の実施形態により、上記のプローブを含む医療用装置が提示される。プローブの灌注流体を供給するために、挿入管の近位端においてルーメンにポンプが連結される。導電性キャップに電気エネルギーを供給するために、挿入管の近位端で導電体に発電機が連結される。キャップの温度をモニタリングするために、温度センサーからの温度信号を受信するようにモニタリング回路が接続されている。
【0015】
開示される実施形態において、モニタリング回路は、複数の温度センサーからの最高温度読み取り値を選択し、最高温度読み取り値に対応して、ポンプ及び発電機の少なくとも一方を制御する。
【0016】
本発明の実施形態により、上記のプローブを患者の身体に挿入することを含む、医学的治療のための方法が更に提示される。導電性キャップは、身体内の組織と接触させられる。電気エネルギーは、導電体を介してキャップに適用されて組織を焼灼し、一方で組織に灌注するためにルーメンを介して灌注流体を供給する。組織を焼灼する一方で、温度センサーを使用して導電性キャップの温度がモニタリングされる。
【0017】
プローブを挿入することは、心筋組織に電気エネルギーを適用するために、患者の心臓内にプローブを前進させることを含む場合がある。
【0018】
本発明の実施形態により、医療用プローブを製造する方法は、患者の身体内に挿入するように構成された遠位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメンを有し、電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管を提供することを含む多数の開口部により穿孔された外側表面を有し、内側空洞を画定する、導電性キャップが形成される。導電性キャップは挿入管の遠位端に取り付けられ、内側空洞は、ルーメンからの灌注流体が、開口部を通じてキャップから流れ出るようにするために、挿入管のルーメンと流体連通している。導電性キャップは、導電体に電気的に連結される。複数の温度センサーは、外側表面と熱連絡させる導電性キャップ内に取り付けられ、温度センサーは、内側空洞内の灌注流体から断熱される。
【0019】
本発明は、以下の実施形態の詳細な説明を、それら図面と総合すれば、より十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態による、心臓内焼灼のためのシステムの概略的な図。
図2A】本発明の実施形態による、カテーテル先端部の概略的な断面図。
図2B図2Aのカテーテル先端部の概略的な断面図。
図3】本発明の別の実施形態による、カテーテル先端部の概略的な断面図。
図4A】本発明の更に別の実施形態による、カテーテルカップの概略的な図。
図4B図4Aのカテーテルカップの概略的な端面図。
図4C図4A及び4Bのカテーテルカップの概略的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
心臓内焼灼手術は、組織及びその付近における、急速な温度変化、及び不均一な温度分布を特徴とする。したがって、焼灼カテーテルの先端部におけるセンサーによって測定される温度は、組織内の実際の現在温度を正確に反映しないことがある。更に、カテーテル内の温度センサーが灌注流体によって洗浄されるとき、温度の読み取り値は流体の温度を反映し、これは一般的にカテーテルの外側の組織温度よりも遥かに低い。
【0022】
以下に記載される本開示の実施形態は、正確な組織温度評価をもたらす、埋め込まれた温度センサーを有する灌流焼灼電極を提示する。このような電極は典型的には、心臓カテーテルなどの、非侵襲性プローブの挿入管の遠位先端部に取り付けられた導電性キャップを含む。冷却流体流は、治療中に組織に灌注するために、電極内の穿孔の配列を通じて流れ出る。
【0023】
温度センサーは、電極の外側表面の付近の異なる位置に取り付けられる。電極は、センサーが外側表面と近接し、これと熱連絡し、かつプローブ内の冷却流体に浸漬されるのではなくこれから断熱されるように構成されている。センサーはしたがって、先端電極の異なる位置において、冷却流体温度と実質的に独立した、多数の温度読み取り値をもたらす。
【0024】
典型的に、最高の温度読み取り値をもたらすセンサーは、焼灼される組織と接するものであり、センサーによって測定される温度は、現在の組織温度と共に直線的に変化する。(電極内の穿孔を通じた冷却流体の流れは、組織と強く接触させている領域で最も弱く、これらの領域のセンサーは、典型的に最も恒温の温度読み取り値をもたらす。)したがって、このセンサーからの最も高温な読み取り値は、過度に組織を損傷させずに、所望の治療効果を得るため、組織温度をモニタリングし、焼灼手術の適用電力及び持続時間を制御するために使用され得る。あるいは、又は加えて、カテーテル先端部の領域にわたる温度のマップをもたらすために、複数のセンサーの温度読み取り値が組み合わされ、補間される。
【0025】
開示される実施形態は特に、心臓内カテーテル、及び焼灼手術に関連するが、本発明の原理は、実質的にあらゆる種類の非侵襲性治療において使用するために、必要であれば変更を加えて、他の種類のプローブに同様に適用され得る。
【0026】
図1は、本発明の実施形態による、心臓焼灼療法のためのシステム20の概略的な図である。操作者28(例えば、治療的介入専門の心臓医)は、患者26の血管系を通じて患者の心臓24の寝室に、カテーテル22を挿入する。例えば、心房細動を処置するため、操作者はカテーテルを左心房に前進させ、焼灼させることになる心筋組織とカテーテルの遠位端30とを接触させてもよい。
【0027】
カテーテル22はその近位端において、所望の治療を適用及びモニタリングするために、操作者28によって制御されるコンソール32に接続される。コンソール32は、標的組織を焼灼さるために、カテーテル22を介して遠位端30に電力を供給する、RF電力発生器34を含む。モニタリング回路36は、以下のように、遠位端の温度センサーの出力を処理することによって、遠位端30の組織の温度を追跡する。灌注ポンプ38は、カテーテル22を介して灌流遠位端30に、食塩水など冷却流体を供給する。モニタリング回路36によりもたらされた情報により、コンソール32は、RFエネルギー発生器34により適用される電力、及び/又はポンプ38によってもたらされる流体流を、自動的に、又は操作者28による入力に応答して制御してもよい。
【0028】
システム20は、例えば、カテーテル22のナビゲーション及び制御を支持するために広範な設備を提供する、上記のCARTOに基づく場合がある。しかしながら、モニタリング回路36、及びコンソール32の機能のモニタリング及び制御の詳細を含むこれらのシステム設備は一般的に、本特許出願の範囲を超えている。
【0029】
図2A及び2Bは、本発明の実施形態により、カテーテル22の遠位端30を概略的に例示する。図2Aは、カテーテルの長さに沿った断面図であり、一方で図2Bは、図2Aに記された切断線IIB−IIBに沿った断面図である。挿入管42は、カテーテルの長さに沿って延び、その遠位端において導電性キャップ44に接続される。典型的に、挿入管42は、可撓性の生体適合性ポリマーを含み、キャップ44は、例えば、金又はプラチナなどの焼灼電極として機能するために好適な生体適合性金属を含む。キャップ44は、キャップの外側表面から、キャップ内の内側空洞58へと開く、灌注開口部46の列によって穿孔される。典型的な心臓内焼灼用途のため、キャップ44の直径は約2.5mmであり得、約0.2mmの壁部厚さ、及び直径0.1〜0.2mmの開口部46を備える。上記の寸法及び材料は、単に例として記載されるが、より大きい又はより小さい寸法の特徴を有する好適な材料が、同様に使用されてもよい。
【0030】
空洞58はルーメン54と流体連通しており、これは挿入管42の長さを通じて延びている。ルーメン54はその近位端において灌注ポンプ38に連結され、したがって、灌注流体を空洞58に送達し、ここから流体流が開口部46を通じて流れる。導電体56は、RF発生器34から、挿入管42を通じてキャップ44へと電気エネルギーを伝達し、よって、キャップにエネルギー印加して、キャップが接触する心筋組織を焼灼する。焼灼中、開口部46を通じて流れ出る流体は、治療中に組織に灌注する。
【0031】
温度センサー48は、導電性キャップ44内、軸方向及び周方向の両方において、カテーテルの遠位先端部の周囲に配置された位置で取り付けられる。この実施例においてキャップ44は、6つのセンサーを含み、一群が、先端部付近の遠位にあり、他方の群が僅かにより近位にある。この分布は単に例として示されるが、より多い、又はより少ないセンサーが、キャップ内の任意の好適な位置に取り付けられてもよい。センサー48は、熱電対、サーミスタ、又は任意の好適な種類の小型温度センサーを含み得る。センサーは、モニタリング回路36に温度信号をもたらすために、挿入管42の長さを通じて延びるリード52によって接続される。
【0032】
温度センサー48は、キャップ44の内側のリブ50内に取り付けられる。リブは典型的にはキャップ44の一体部分であり、キャップの外側表面と同じ材料から、又はキャップと物理的及び熱的に結合された、他の好適な種類の金属から作製されてもよい。リブの直径は、本実施例において10分の数ミリメートルであり得る。キャップ44を有するリブ50の一体構成により、センサー48は、キャップの外側表面と熱連絡し、すなわち、リブ50の内側の温度は外側表面の温度を正確に追跡する。リブは、空洞58内の灌注流体からこれらのセンサーを断熱するために十分である。結果として、温度センサー48は、キャップ44の外側表面の実際の温度を測定し、これはキャップが接触する組織の温度を最も正確に反映する。
【0033】
典型的には遠位端30は、他の機能構成要素を含み、これらは本開示の範囲外であり、したがって単純性のために省略される。例えば、カテーテルの遠位端は、ステアリングワイヤ、加えて位置センサー及び/又は接触力センサーなど、他の種類のセンサーを含む場合がある。これらの種類のセンサーを含むカテーテルが、米国特許出願公開番号第2009/0138007号に記載され、この開示は本明細書において参照として組み込まれる。
【0034】
図3は、本発明の別の実施形態による、遠位端30の概略的側面図である。図2A及び図2Bの実施形態における対応する要素と同様である、実施形態の要素は、同じ参照番号を付される。図3の実施形態において、挿入管42の遠位端に取り付けられた導電性穿孔キャップ64は、非常に低い熱容量を有するように設計され、センサー48はキャップ64と接触するように把持される。この構成の結果として、キャップ64の温度は実際の組織温度の変化をより正確に追跡し、センサー48は、キャップ64の外側表面の温度をより正確に追跡する。センサー48はしたがって、キャップ64が接触する組織の温度変化のより正確かつ最新の指標をもたらす。
【0035】
図3に例示されるように、キャップ64は、穿孔されていない、キャップに近く、これと平行な、内側壁部60を含む。ルーメン54は、キャップ64と壁部60との間に形成された空洞66に灌注流体を供給し、灌注流体は、キャップ64の開口部46を通じてこの空洞から出る。典型的に、キャップ64及び壁部は、金属材料の薄い外殻を含み、小さな金属製スペーサー62によって分離して保持され、その周囲で流体は空洞内66内において流れることができる。スペーサーは、異なる周方向位置における軸方向に分離したスペーサーの対(図3に示される対のように)として、任意の好適な構成でキャップ内に分布し得る。スペーサー62はまた、キャップ64の外側表面と熱連絡する温度センサー48を保持し、センサーを、空洞66内の周囲の灌注流体から断熱する。スペーサー62の断熱効果がなくても、本実施形態におけるセンサー48上の灌注流体温度の効果は、小さな空洞66(例えば、前の実施形態の空洞58と比較して)のために最小限に抑えられる。
【0036】
心臓内焼灼のために好適な構成において、キャップ64は、約2.5mmの外径、及び同様の長さを有する。キャップ64及び壁60の厚さは、約100μmであり、開口部46は25〜100μmの範囲の直径を有する。キャップ64及び壁部60は非常に薄く、構造全体の機械的一体性は、キャップ及び壁部をスペーサー62と一緒に接続することによって維持される。
【0037】
図4A〜4Cは、本発明の更に別の実施形態により、カテーテルキャップ70を概略的に例示する。キャップ70は、上記の実施形態に示されるキャップの代わりにカテーテル22の遠位端30で使用され得る。図4Aはキャップ70の概略的な図であり、図4Bは、キャップの内側を示す概略的端面図であり、図4Cは、図4Bの直線IVC−IVCに沿ってとった断面図である。
【0038】
キャップ70は、温度センサー48と先端部の中央空洞76の内側の灌注流体との間の所望の断熱をもたらすため、比較的熱い(およそ0.4mm厚さ)側壁74を含む。所望の実施形態において、灌注流体は開口部46を通じて空洞76を出る。センサー48は、エポキシなどの好適な接着剤を充填された中空の管78に取り付けられ、側壁74の長手方向孔72内に適合される。管78は、ポリイミドなどの好適なプラスチック材料を含むことがあり、エポキシなどの好適な接着剤によって適所に保持され得る。この構成は、上記の実施形態におけるように、6つのセンサー48の配列をもたらし、潜在的に更なる製造の容易性、及び持続性の利益を有する。
【0039】
多くの特定の実施例が図示され先に記載されてきたが、これらの実施例において具体化される原理の別の実施が、前述の記載を読んだ後に当業者によって理解され、本発明の範囲内であるものとみなされる。したがって、上述の実施形態は一例として引用したものであり、また本発明は上記に具体的に図示及び記載したものに限定されないことは認識されるであろう。むしろ本発明の範囲には、上記に述べた様々な特徴の組み合わせ及び下位の組み合わせ、並びに当業者であれば上記の説明文を読むことで想到されるであろう、先行技術に開示されていないそれらの変更及び改変が含まれるものである。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 医療用プローブであって、
患者の身体内に挿入するように構成された遠位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメン、及び電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管と、
前記挿入管の前記遠位端に取り付けられ、前記導電体に電気的に連結された導電性キャップであって、前記導電性キャップは、多数の開口部によって穿孔された外側表面を有し、前記ルーメンからの前記灌注流体が、前記開口部を通じて前記キャップの外に流れ出るようにするため、前記挿入管の前記ルーメンと流体連通する内側空洞を画定する、導電性キャップと、
前記外側表面と熱連絡する、前記導電性キャップ内に取り付けられた複数の温度センサーであって、前記内側空洞の前記灌注流体から断熱された、複数の温度センサーとを含む、医療用プローブ。
(2) 前記キャップが前記外側表面の内側に多数のリブを含み、前記温度センサーが前記リブの内側に取り付けられる、実施態様1に記載のプローブ。
(3) 前記キャップの内側にあり、かつ該キャップと平行な内側壁部を含み、前記内側空洞が前記内側壁部と前記キャップとの間に収容され、前記温度センサーが前記内側壁部と前記キャップとの間に取り付けられる、実施態様1に記載のプローブ。
(4) 前記プローブが、前記内側空洞内に位置しかつ前記キャップを前記内側壁部に接続する多数のスペーサーを含み、前記温度センサーが前記スペーサー内に取り付けられる、実施態様3に記載のプローブ。
(5) 前記キャップが内部に複数の長手方向の孔を有する側壁を含み、前記温度センサーが前記孔に適合され、取り付けられる、実施態様1に記載のプローブ。
【0041】
(6) 前記温度センサーが、前記キャップの周囲で、異なる周方向及び軸方向の位置において配置されている、実施態様1に記載のプローブ。
(7) 前記温度センサーが、異なる周方向位置において軸方向に離間した対として構成される、実施態様6に記載のプローブ。
(8) 前記挿入管が、前記患者の心臓に挿入するためのカテーテルとして構成されており、前記導電性キャップが、前記心臓内の心筋組織を焼灼するために前記心筋組織に接触して前記電気エネルギーを適用するように構成されている、実施態様1に記載のプローブ。
(9) 医療用装置であって、
患者の身体に挿入する様に構成されたプローブであって、
遠位端及び近位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメン、及び電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管と、
前記挿入管の前記遠位端に取り付けられ、前記導電体に電気的に連結された導電性キャップであって、前記導電性キャップが、多数の開口部によって穿孔された外側表面を有し、前記ルーメンからの前記灌注流体が、前記開口部を通じて前記キャップの外に流れ出るようにするため、前記挿入管の前記ルーメンと流体連通する内側空洞を画定する、導電性キャップと、
前記外側表面と熱連絡する、前記導電性キャップ内に取り付けられた複数の温度センサーであって、前記内側空洞の前記灌注流体から断熱された、複数の温度センサーと、を含む、プローブと、
前記プローブに前記灌注流体を供給するために、前記挿入管の前記近位端において前記ルーメンに連結されるポンプと、
前記導電性キャップに前記電気エネルギーを供給するために、前記挿入管の前記近位端で前記導電体に連結される発電機と、
前記キャップの温度をモニタリングするために、前記温度センサーからの温度信号を受信するように接続されているモニタリング回路とを含む、医療用装置。
(10) 前記モニタリング回路が、前記複数の温度センサーからの最高温度読み取り値を選択し、前記最高温度読み取り値に対応して、前記ポンプ及び前記発電機の少なくとも一方を制御するよう構成される、実施態様9に記載の装置。
【0042】
(11) 前記キャップが前記外側表面の内側に多数のリブを含み、前記温度センサーが前記リブの内側に取り付けられる、実施態様9に記載の装置。
(12) 前記プローブが、前記キャップの内側にあり、かつ前記キャップと平行な内側壁部を含み、前記内側空洞が前記内側壁部と前記キャップとの間に収容され、前記温度センサーが前記内側壁部と前記キャップとの間に取り付けられる、実施態様9に記載の装置。
(13) 前記キャップが内部に複数の長手方向の孔を有する側壁を含み、前記温度センサーが前記孔に適合され、取り付けられる、実施態様9に記載の装置。
(14) 前記温度センサーが、前記キャップの周囲で、異なる周方向及び軸方向の位置において、配置されている、実施態様9に記載の装置。
(15) 前記プローブが、前記患者の心臓に挿入するためのカテーテルとして構成され、前記導電性キャップが、前記心臓内の心筋組織を焼灼するために前記心筋組織に接触して前記電気エネルギーを適用するように構成されている、実施態様9に記載の装置。
【0043】
(16)
医学的治療のための方法であって、
患者の身体内にプローブを挿入することであって、前記プローブが、
遠位端及び近位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメン、及び電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管、
前記挿入管の前記遠位端に取り付けられ、前記導電体に電気的に連結された導電性キャップであって、前記導電性キャップが、多数の開口部によって穿孔された外側表面を有し、前記ルーメンからの前記灌注流体が、前記開口部を通じて前記キャップの外に流れ出るようにするため、前記挿入管の前記ルーメンと流体連通する内側空洞を画定する、導電性キャップ、及び
前記外側表面と熱連絡する、前記導電性キャップ内に取り付けられた複数の温度センサーであって、前記内側空洞の前記灌注流体から断熱された、複数の温度センサーを含む、ことと、
前記導電性キャップを、前記身体内の組織と接触させることと、
前記電気エネルギーを、前記導電体を介して前記キャップに適用して前記組織を焼灼し、一方で前記組織に灌注するために前記ルーメンを介して前記灌注流体を供給することと、
前記組織を焼灼する一方で、前記温度センサーを使用して前記導電性キャップの温度をモニタリングすることとを含む、方法。
(17) 前記温度をモニタリングすることが、前記複数の温度センサーから最高温度読み取り値を選択することと、前記最高温度読み取り値に対応して前記ポンプ及び前記発電機の少なくとも一方を制御することとを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記プローブを挿入することが、心筋組織に前記電気エネルギーを適用するために、前記患者の心臓内に前記プローブを前進させることを含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 医療用プローブを製造する方法であって、
患者の身体内に挿入するように構成された遠位端を有し、灌注流体を運搬するためのルーメン、及び電気エネルギーを伝達するための導電体を含む、挿入管を提供することと、
多数の開口部により穿孔された外側表面を有し、内側空洞を画定する、導電性キャップを形成することと、
前記導電性キャップを前記挿入管の前記遠位端に取り付けることであって、前記内側空洞は、前記ルーメンからの前記灌注流体が、前記開口部を通じて前記キャップから流れ出るようにするために、前記挿入管の前記ルーメンと流体連通している、ことと、
前記導電性キャップを前記導電体に電気的に連結することと、
複数の温度センサーを、前記外側表面と熱連絡させて前記導電性キャップ内に取り付け、前記温度センサーを、前記内側空洞内の前記灌注流体から断熱することとを含む、方法。
(20) 前記キャップが前記外側表面の内側に多数のリブを含み、前記温度センサーが前記リブの内側に取り付けられる、実施態様19に記載の方法。
【0044】
(21) 前記キャップの内側にありかつ該キャップと平行な内側壁部を取り付けることを含み、前記内側空洞が、前記内側壁部と前記キャップとの間に収容され、前記温度センサーが、前記内側壁部と前記キャップとの間に取り付けられる、実施態様19に記載の方法。
(22) 前記キャップが内部に複数の長手方向の孔を有する側壁を含み、前記温度センサーが前記孔に適合され、取り付けられる、実施態様19に記載の方法。
(23) 前記温度センサーを取り付けることが、前記キャップの周囲で、異なる周方向及び軸方向位置において、前記温度センサーを配置することを含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C