特許第6388797号(P6388797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388797医療分野向けの酸化窒素/窒素気体混合物を生成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388797
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】医療分野向けの酸化窒素/窒素気体混合物を生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/04 20060101AFI20180903BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20180903BHJP
   A61K 33/00 20060101ALN20180903BHJP
   A61P 9/08 20060101ALN20180903BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
   C01B21/04 T
   B01J23/755 M
   !A61K33/00
   !A61P9/08
   !A61P9/00
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-120725(P2014-120725)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2015-6982(P2015-6982A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】1355404
(32)【優先日】2013年6月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】399035504
【氏名又は名称】エール・リキード・サンテ(アンテルナスィオナル)
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ドゥ・ビルムール
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ルクール
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0312417(US,A1)
【文献】 特開平09−118508(JP,A)
【文献】 特表平09−502690(JP,A)
【文献】 特開昭62−269728(JP,A)
【文献】 米国特許第04717406(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/00 − 21/50
B01J 21/00 − 38/74
A61K 33/00
A61P 9/00
A61P 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NO/N2気体混合物を生成するための方法であって、
a)i)O2型不純物の少なくともいくらかを除去または転換するために、不純な窒素を触媒と接触させること、
ii)工程i)から生じたH2O型の不純物の少なくともいくらかを除去するために、副工程i)で精製された窒素を分子篩と接触させること
により、少なくともO2型の不純物を含有する不純な気体窒素の精製を行う工程と、
b)工程a)から生じた純粋な窒素を、一酸化窒素(NO)と混合する工程と、
c)20体積%未満の含量のNO、ならびに5ppmv未満のO2型および40ppmv未満のH2O型の割合の不純物を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物を得る工程と
を含む方法。
【請求項2】
副工程i)において、ニッケル触媒が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
副工程ii)において、ゼオライト、アルミナまたはシリカゲルを含む分子篩が使用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
100μm未満の細孔直径を有するフィルタが使用される副工程iii)を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
25μm以下の細孔直径を有するフィルタが使用される副工程iii)を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の上流において、前記不純な気体窒素が、液体窒素の気化により得られることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程c)において、1ppmv未満のO2型および/または10ppmv未満のH2O型の割合の不純物を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物が形成されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記不純な気体窒素が、80ppmv未満のO2不純物および100ppmv未満のH2O不純物を含有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記不純な気体窒素が、50ppmv未満のO2不純物および67ppmv未満のH2O不純物を含有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)において得られた前記NO/N2混合物が、10体積%以下の含量のNOを含有することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)において得られた前記NO/N2混合物が、8体積%以下の含量のNOを含有することを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程c)において得られた前記NO/N2混合物が、5体積%以下の含量のNOを含有することを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
工程c)において、5体積%未満の含量のNO、ならびに0.5ppmv未満のO2型および/または5ppmv未満のH2O型の割合の不純物を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物が得られることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程c)において、4体積%未満の含量のNO、ならびに0.1ppmv未満のO2型および/または3ppmv未満のH2O型の割合の不純物を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物が得られることを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
20体積%以下の含量のNOを含有する、工程c)において得られた前記NO/N2混合物に、窒素による補助的な希釈を施して、5000ppmv以下の含量のNOを含有する最終NO/N2混合物を得ることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
20体積%以下の含量のNOを含有する、工程c)において得られた前記NO/N2混合物に、窒素による補助的な希釈を施して、100〜1000ppmvの含量のNOを含有する最終NO/N2混合物を得ることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
5000ppmv以下の含量のNOを含有する前記最終NO/N2混合物が、1つ以上の気体貯蔵容器内に充填されることを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
100〜1000ppmvの含量のNOを含有する前記最終NO/N2混合物が、1つ以上の気体貯蔵容器内に充填されることを特徴とする、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
気体貯蔵容器が気体シリンダーであることを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、NO/N2気体混合物を製造し、その後それを容器内に、特に1つ以上のガスボトル内に充填するための方法に関する。
【0002】
NO/N2気体混合物は、一般的に、初期肺高血圧に罹患した成人、小児、および特に新生児における、または心臓手術を受けている患者における肺血管収縮を治療するために使用される。
【0003】
これらのNO/N2混合物は、従来、スチールおよびアルミニウム製のガスボトル内に充填され、100〜1000体積ppmのNO、および残りは窒素(N2)を含有する。これらのボトルは、典型的には、2〜50リットルの水相当容量を有する。
【0004】
これらの混合物の充填、すなわちボトリングは、ガスボトリングセンターで行われる。これを行うために、窒素中の必要なNO濃度が得られるまで、NOおよび窒素の1種以上の混合物を生成させる。
【0005】
しかしながら、このようにして生成されたNO/窒素混合物は、特にNO2型の極めて多量の不純物を含有するため、医療分野の規格に適合しない場合が生じ得る。
【0006】
換言すれば、NO/N2混合物を生成するための従来の方法の信頼性は、偶発的であることが多い。
【0007】
しかしながら、NO2は、患者により吸入されると、極微量、すなわち数体積ppm程度であっても極めて有毒であるため、生成された最終NO/窒素混合物中に存在するNO2不純物は、医療レベルにおいて深刻な問題を呈する。
【0008】
それゆえに、気体化合物を混合する間の良好な精密さだけでなく、生成し、次いで充填されるNO/N2気体混合物の信頼性および純度の向上を確実にする、すなわち、NO2不純物を含まない、またはほとんど含まないNO/窒素混合物を生成することができる、NO/N2気体混合物を生成するための改善された方法を提案することが課題である。
【0009】
したがって、本発明の解決策は、NO/N2気体混合物を生成するための方法であって、
a)
i)O2型不純物の少なくともいくらかを除去または転換するために、不純な窒素を触媒と接触させること、
ii)副工程i)から生じたH2O型の不純物の少なくともいくらかを除去するために、工程i)で精製された窒素を分子篩と接触させること
により、少なくともO2型の不純物を含有する不純な気体窒素の精製を行う工程と、
b)工程a)から生じた純粋な窒素を、一酸化窒素(NO)と混合する工程と、
c)20体積%未満の含量のNO、ならびに5ppmv未満のO2型および40ppmv未満のH2O型の割合の不純物を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物を得る工程と
を含む方法である。
【0010】
本発明に関して、示される圧力は、絶対圧力であり、気体化合物の割合は、体積%(%v)として、または体積ppm、すなわちppmvで示される。
【0011】
状況に応じて、本発明の方法は、以下の技術的特徴の1つ以上を含んでもよい。
【0012】
− 副工程i)において、ニッケル触媒が使用される;
− 副工程ii)において、ゼオライト、アルミナまたはシリカゲルを含む分子篩が使用される;
− 100μm未満、好ましくは25μm以下の細孔直径を有するフィルタが使用されるサブステップiii)を含む。
【0013】
− 副工程iii)は、副工程ii)に続く。これは、特に副工程i)および/またはii)にて発する、および/またはその間に生成される固体粒子、特に粉塵型の粒子または分子篩の消耗により生じる残渣を除去する;
− 工程a)の上流において、不純な気体窒素が、液体窒素の気化により得られる;
− 工程c)において、1ppmv未満のO2型および/または10ppmv未満のH2O型の割合の不純物を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物が得られる;
− 工程a)は、固体粒子、たとえば粉塵等を除去するために、副工程ii)において精製された窒素を少なくとも1つのフィルタに通過させる補助的副工程を含む;
− 不純な気体窒素は、80ppmv未満のO2不純物および/または100ppmv未満のH2O不純物を含有する;
− 不純な気体窒素は、50ppmv未満のO2不純物および/または67ppmv未満のH2O不純物を含有する;
− 工程c)において得られたNO/N2混合物は、10体積%以下の含量のNO、好ましくは8体積%以下の含量のNO、また好ましくは5体積%以下、たとえば約4%vの含量のNOを含有する;
− 工程c)において、5体積%未満の含量のNO、ならびに0.5ppmv未満のO2型および/または5ppmv未満のH2O型の割合の不純物を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物が形成される;
− 工程c)において、4体積%未満の含量のNO、ならびに0.1ppmv未満のO2型および/または3ppmv未満のH2O型の割合の不純物を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物が形成される;
− 20体積%以下の含量のNOを含有する、工程c)において得られたNO/N2混合物は、5000ppmv以下、好ましくは100〜1000ppmvの含量のNOを含有する最終NO/N2混合物を得るために、窒素による追加的な希釈を施される;
− 5000ppmv以下、好ましくは100〜1000ppmvの含量のNOを含有する最終NO/N2混合物は、1つ以上の気体貯蔵容器、特に気体シリンダー、とりわけ2〜50リットルの水相当容量を有する気体シリンダー内に充填される;
− 工程c)において、NOおよびN2から形成される気体混合物は、8体積%以下の含量のNOを含有する;
− 工程c)において、NOおよびN2から形成される気体混合物は、5体積%以下の含量のNOを含有する;
− 工程c)において、NOおよびN2から形成される気体混合物は、約4体積%の含量のNOを含有する;
− NOおよびNO2から形成される最終気体混合物は、たとえば、純粋な窒素による希釈後に、450ppmvのNO(+/−5%)、3ppmv未満のNO2、および残りは窒素を含有し、任意に50ppmv未満のN2O、および/または450ppmv未満のCO2を含有する。
【0014】
ここで、本発明は、添付の図面を参照しながら以下に示される説明から、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明による方法の態様を概略的に示す。
図2図2は、本発明の方法を実施するための設備の図を示す。
【発明の詳細な説明】
【0016】
図1は、NO2不純物を含まない、またはほとんど含まないNO/N2気体混合物、たとえば約4%のNOおよび残りは窒素を含有するNO/N2気体混合物を生成する、本発明による生成方法の態様を概略的に示す。
【0017】
この方法によれば、以下の逐次的工程が実行される。
【0018】
− 以下の組成を有する不純な窒素が(31において)供給される:O2≦50ppmv、CO≦5ppmv、CO2≦300ppmv、H2O≦67ppmvおよび残りはN2(約99.5%v)。
【0019】
− 上記不純物を含有する不純な気体窒素の精製が、
i)たとえば、O2型の不純物の少なくともいくらかを除去または転換する、特にそれらを水蒸気またはH2Oに転換するために、不純な窒素をニッケル触媒と(32において)接触させること、
ii)31において供給された窒素中に最初から存在する、または(32において)工程i)のO2不純物の転換から生じたH2O型不純物の少なくともいくらかを除去するために、副工程i)において精製された窒素を、分子篩、たとえば10Åゼオライトと(33において)接触させること、
iii)、工程ii)中に分子篩粒子の摩擦または消耗による磨耗から生じる粉塵のようないずれの固体粒子からのものも除去するために、工程ii)からの窒素が(34において)濾過されること
により行われる。
【0020】
− O2およびH2O型の気体不純物が除去された精製された窒素、特に、200ppbv以下のO2不純物、好ましくは100ppbv未満のO2、および1ppmv以下のH2O不純物を含有する窒素が、(35において)回収される。これらの不純物の分析は、連続的に行われる。
【0021】
− NO源、たとえば貯蔵タンク(図示せず)からの一酸化窒素または純NO(30における)が供給される。
【0022】
− 工程a)からの精製された窒素が、たとえば気体混合物中で純NOと(36において)混合される。
【0023】
− 20%v、典型的には約4%vの含量のNO、ならびに約1ppmv未満の割合のO2型および約10ppmv未満の割合のH2O型を含有する、NOおよび純粋な窒素から形成される混合物が得られる。
【0024】
次に、20体積%以下、典型的には約3体積%から10体積%、好ましくは約4体積%の含量のNOを含有する、NOおよび純粋な窒素の混合物は、最終混合物中のNO含量を低減するために、たとえば、O2、H2OおよびNO2型の気体不純物を有さず、100〜5000ppmv、典型的には1000ppmv未満の割合のNOを含有するNO/N2混合物を生成するために、1回以上の補助的な希釈を施されてもよく、これが、以下で説明されるように、その後ガスボトル内に充填され得る。
【0025】
図1に示される本発明による方法は、図2に概略的に示されるような設備により実施され得る。
【0026】
少なくともO2型の残留不純物を含有する不純な窒素は、液体形態でタンク1に貯蔵され、次いで液体形態でクライオポンプ2により引き出され、クライオポンプは、不純な窒素を約100〜300バールの圧力に圧縮してから大気圧ヒーター3に送出し、そこで不純な気体窒素を得るために不純な窒素が気化される。
【0027】
見て分かるように、この設備は、生成されるNO/N2混合物を含有するタンク13に至るまで、タンク1から不純な窒素を搬送する主パイプまたはライン20を含む。
【0028】
ライン20はまた、ヒーター3からの不純な気体窒素の一部を貯蔵するためのバッファタンク4、および、設備の上流部分、特にポンプ2またはヒーター3が故障した場合に不純な窒素の供給を引き継ぐ、バックアップN2源として機能する不純な窒素のいくつかのボトルをそれぞれ含むバックアップフレーム5に流体連通してもよい。
【0029】
設備の上記要素は、好ましくは建物9の外側に位置する。
【0030】
実際に、大気圧ヒーター3、バッファタンク4またはバックアップフレーム5からの不純な気体窒素は、次いで、ライン20によって精製システム6、7、8に搬送され、本発明により気体の不純な窒素中の残留不純物を形成するO2およびH2O不純物を除去する。
【0031】
これらのO2およびH2O不純物は、タンク13内に貯蔵される最終NO/N2混合物中の有毒NO2形成の原因であるため、完全に除去されなければならない。これは、窒素とNOとの(11における)混合後、O2およびH2O不純物がNOを酸化させ、ひいてはNO2型の有毒種を形成するようにNOと反応するためである。
【0032】
したがって、設備の上流において、すなわち混合器11中で生じるNOと窒素との混合の前に作用することにより、この現象を防止し、O2およびH2O不純物を含まない、したがってNO2の有毒種もまた含まない最終NO/N2混合物を得ることが可能である。
【0033】
より正確には、精製システム6、7、8は、本発明によれば、図2に示されるように、直列に配置された少なくとも1つの触媒チャンバ6および少なくとも1つの吸着器7、ならびに好ましくは少なくとも1つの濾過区画8を含む。
【0034】
制御デバイス10、たとえば、プログラム可能な自動制御装置等を有する制御室は、特に、触媒チャンバ6、吸着器7および濾過区画8への気体の流入およびそこからの気体の流出を制御する弁(図示せず)に作用することにより、精製システム6、7、8を制御する。この種の制御デバイス10は、従来のものであり、以下で詳細には説明しない。
【0035】
好ましい態様によれば、精製システム6、7、8は、以下を含む。
【0036】
− ヒーター3、バッファタンク4またはバックアップフレーム5からの不純な窒素中に存在するO2種をH2O種に転換するための触媒、好ましくはニッケル触媒を含有する触媒チャンバ6;
− たとえばゼオライト、シリカゲル、アルミナもしくは同様の種類、またはそれらの混合物の、少なくとも1種の分子篩を含有する1つ(またはそれ以上)の吸着器7。この分子篩は、タンク1からの不純な窒素中に初めから存在する、または触媒チャンバ6内でO2不純物の転換中に生成されるH2O種を除去する;
− 優先的には100μm未満、典型的には約25μmの細孔直径を有する、特に、圧力および処理される気体流における変動の影響下での分子篩粒子の消耗に起因して、吸着器7内で放出される傾向がある固体残渣を阻止する、少なくとも1つのフィルタを含む濾過区画8。
【0037】
吸着器7は、たとえばPSA(圧力スイング吸着)モード、VSA(真空スイング吸着)モードまたはTSA(温度スイング吸着)モードにおいて、したがって、圧力、真空または温度変動による従来の再生段階により機能することができる。この種の吸着法は、当業者に知られており、本発明に関して詳述する必要はない。
【0038】
同様に、触媒チャンバ6は、たとえば高温気体により定期的に再生され得る。この種の触媒および再生方法もまた、当業者に知られており、本発明に関して詳述する必要はない。
【0039】
さらに、他の触媒、たとえば白金またはパラジウム触媒もまた好適となり得ることに留意されたい。同様に、分子篩は、非ゼオライト型、たとえば活性アルミナまたはシリカゲルのものであってもよい。当業者は、慣例的な試験により、最も好適である触媒および吸着剤、ならびに1種以上の好適なフィルタを選択することができる。
【0040】
一度その不純物が除去されたら、精製された窒素は、貯蔵タンク14内に貯蔵されるか、または、NOおよび精製窒素の必要な割合での混合、たとえば約4%NOを含有するNO/N2混合物を実現するために、純NOの源12による供給も受ける混合デバイスもしくは混合器11に、ライン20により直接搬送されてもよい。
【0041】
このNOおよび精製された窒素の混合物は、次いで、第2の貯蔵タンク13に貯蔵されてから、多岐管供給ライン22、および多岐管供給ライン22から分岐した第2の気体ライン17を介して、充填多岐管18に送出されてもよく、そこで混合物がガスボトル19に封入され得る。
【0042】
しかしながら、NO/N2混合物をガスボトル19に充填する前に、NO含量を調節すること、特に、必要最終使用含量、たとえば、100〜5000ppmv、典型的には1000ppmv未満のNOの最終含量までNO含量を低減することが有用、または必要とさえなり得る。
【0043】
これを行うために、NO/N2混合物中のNO含量を低減するように、そうして200〜5000ppmvのNO、典型的には200〜1000ppmvのNOを含有し、残りは窒素である最終NO/N2混合物を得るように、第2の混合デバイス15内での純粋な窒素によるNO/N2混合物の追加的な希釈が実行されてもよい。
【0044】
第2の混合デバイス15は、第1の混合器11および貯蔵タンク13の下流に配置される。さらに、図2に示されるように、混合デバイス15には、NO/N2混合物を希釈するために使用され、精製システム6、7、8の下流で主ライン20に接続されたバイパスライン21により搬送される精製された窒素が供給され得る貯蔵タンク16からの純粋な窒素が供給される。
【0045】
ガスボトル19は、スチール、アルミニウムまたはアルミニウム合金本体を有する種類のものであり、約2〜50リットルの容量(水相当)を有する。気体混合物は、300バールまでの範囲の圧力でその中に貯蔵される。
【0046】
気体供給ライン、特に主ライン20、バイパスライン21または多岐管供給ライン22に流入するN2およびNOの量を測定するために、また測定された情報を制御デバイス10または設備を制御する任意の他のデバイス、たとえばコンピュータ等に伝送するために、流量計(図示せず)が提供されてもよいことに留意されたい。
【0047】
[実施例]
約4%のNOを含有し、NO2型の有毒不純物を有さないNO/N2気体混合物の生成における、本発明により提案される解決策の有効性を試験するために、図2中の設備と同様の設備を使用して図1の方法を実施した。
【0048】
方法の条件を以下の表1に示す。
【表1】
【0049】
以下の表2は、O2型不純物を阻止し、特にそれらをH2Oに転換するために使用された触媒の特性を示す。
【表2】
【0050】
以下の表3は、H2O型(水蒸気)の不純物を阻止するために使用された分子篩の特性を示す。
【表3】
【0051】
固体粒子、たとえば分子篩の消耗により生じる粉塵を阻止するために使用されたフィルタは、約25μmの平均細孔直径を有する。
【0052】
表1に示した結果を鑑みて、本発明の方法は、不純な窒素中に存在する傾向があるO2およびH2O不純物の大部分を除去することができ、したがって約3ppmv未満の最終割合のH2O、および約0.1ppmv未満の最終割合のO2を含有するNO/N2混合物を得ることができ、最終混合物中の有毒NO2の形成をほぼゼロとするため、効果的であることが分かる。
【0053】
このようにして生成されたNO/N2気体混合物は、吸入により、初期肺高血圧に罹患した成人および小児、特に新生児における、または心臓手術を受けている患者における肺血管収縮を治療するために使用され得る。
図1
図2