特許第6388799号(P6388799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388799切りくず除去加工用工具及びインサート保持用ブレード並びに交換可能な切削用インサート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388799
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】切りくず除去加工用工具及びインサート保持用ブレード並びに交換可能な切削用インサート
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/10 20060101AFI20180903BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20180903BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   B23B27/10
   B23B27/04
   B23B27/16 B
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-132825(P2014-132825)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-9360(P2015-9360A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2017年4月27日
(31)【優先権主張番号】1350795-9
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】クラエス アンデション
(72)【発明者】
【氏名】ジミー ピール
(72)【発明者】
【氏名】グンナル ヤンソン
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−104579(JP,A)
【文献】 特開平09−192905(JP,A)
【文献】 特開平07−227702(JP,A)
【文献】 特開2013−107196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00 − 27/24
B23B 29/14
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード(3)と、
ブレードの一端部内に位置設定され底部支持体(12)と弾性的復元力を有するクランプフィンガー(8)との間に画定されているインサート座(11)内に取り付けられる溝切りまたは突切り用の交換可能な切削用インサート(4)と、を含む、切りくず除去加工用工具であって、
切削用インサート(4)が、前面(17)と、後面(18)と、2つの側面(19)と、下面(20)と、上面(21)とを含み、
上面内には、前面(17)に最も近位に位置するすくい面(22)ならびにすくい面の後方に位置づけされかつそれに対してクランプフィンガー(8)が押圧する作用面(23)が含まれており、
クランプフィンガー(8)が、すくい面(22)と切削用インサート(4)の前面(17)との間に形成される主切れ刃(24)およびすくい面(22)に向かって冷却用媒体を噴射するために切削用インサートに向かって開放する噴射孔(48)を含んでいる工具において、
クランプフィンガー(8)の前方ノーズ(38)が、すくい面(22)と作用面(23)との間に形成されノーズを切りくずから保護することを目的とする肩部に面しており、切削用インサート(4)の肩部が2つのこぶ(41)を含み、これらのこぶが中央溝(42)により互いに分離されており、中央溝を介して冷却媒体が噴射孔(48)からすくい面(22)および主切れ刃(24)に向かって通過できるようになっており、
取付けた状態の切削用インサートの最高点をこぶ(41)が形成しており、
作用面(23)が、こぶ(41)により形成された切削用インサート(4)の最高点から下向きおよび後向きに斜めに傾いていることを特徴とする、切りくず除去加工用工具。
【請求項2】
すくい面(22)が、主切れ刃(24)からこぶ(41)まで通る2つの側方リブ(44)により取り囲まれている凹状底部(43)を有することを特徴とする請求項1に記載の工具。
【請求項3】
クランプフィンガー(8)の上面(37)と下面(13)がノーズ(38)の端面(39)に向かって収束し、噴射孔(48)が上面(37)ならびに前記端面(39)内で開放していることを特徴とする請求項1または2に記載の工具。
【請求項4】
切削用インサート(4)のすくい面(22)の最も深いところに存在する平坦な底部(45)および作用面(23)のV字形溝内の2つのフランク面(27)が、最大限でも165°である鈍角(β)を成して互いに傾斜しており、こぶがすくい面と作用面との間の遷移部分の中に位置設定されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の工具。
【請求項5】
切削用インサート(4)が片刃であり、かつ、インサート座の底部支持体(12)の横断面がV字形である尾根の一対のフランク面(31)と鋭角(α)を成す、インサート座(11)内に含まれる後部ストッパ面(14)に押圧されるように平坦な表面の形をした後面(18)を有しており、前記後面(18)は、切削用インサートの下面(20)の横断面がV字形である溝内の2つのフランク面と角を成していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の工具。
【請求項6】
切削用インサートの後面と下面(18、20)の間の鋭角(δ)が、切削用インサートのすくい面と作用面(22、23)の間の鈍角(β)の補角であることを特徴とする請求項4または5に記載の工具。
【請求項7】
前面(17)と、後面(18)と、2つの側面(19)と、下面(20)と、上面とを含み、上面内には、前面に最も近位に位置するすくい面(22)ならびに工具のブレードのクランプフィンガーのためにその後方に位置づけされている作用面(23)が含まれている、溝切りまたは突切りにおける切りくず除去加工用工具のための切削用インサートにおいて、
クランプフィンガーの前方ノーズを切りくずから保護するために、すくい面(22)と作用面(23)を分離する肩部が形成されており、肩部には、すくい面(22)およびすくい面(22)と切削用インサート(4)の前面(17)との間に形成されている主切れ刃(24)に向かう冷却媒体の通過のための中央溝(42)により互いに分離されている2つのこぶ(41)が含まれており、
取付けた状態の切削用インサートの最高点を形成するようにこぶ(41)が形成されており、
作用面(23)が、こぶ(41)により形成された切削用インサート(4)の最高点から下向きおよび後向きに斜めに傾いていることを特徴とする切削用インサート。
【請求項8】
すくい面(22)が、主切れ刃(24)からこぶ(41)まで通る2つの側方リブ(44)により取り囲まれている凹状底部(43)を有することを特徴とする請求項に記載の切削用インサート。
【請求項9】
個別の側方リブ(44)の上面が凹状表面であり、その最高点が個別のこぶ(41)に連結していることを特徴とする請求項に記載の切削用インサート。
【請求項10】
すくい面(22)の最も深いところに存在する平坦な底部(45)および作用面(23)のV字形溝内の2つのフランク面(27)が、最大限でも165°である鈍角(β)を成して互いに傾斜していることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の切削用インサート。
【請求項11】
片刃であり、下面(20)の横断面がV字形であるの2のフランク面(29)と鋭角(δ)を成す後面(18)を有すること特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の切削用インサート。
【請求項12】
前記後面と下面(18、20)の間の鋭角(δ)が、すくい面と作用面(22、23)の間の鈍角(β)の補角であることを特徴とする請求項10または11に記載の切削用インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様では、本発明は、ブレードおよびブレードの一端部内に位置設定され底部支持体と弾性的復元力を有するクランプフィンガーとの間に画定されているインサート座に取り付けられる交換可能な切削用インサートを含むタイプの、溝切りまたは突切りにおける切りくず除去加工用に意図された工具において、切削用インサートが前面、後面、2つの側面、下面および上面を含み、この上面の中には、前面に最も近位に設置されたすくい面ならびにすくい面の後方に位置づけされ、かつそれに対してクランプフィンガーが押圧されている作用面が含まれており、クランプフィンガーが、すくい面と切削用インサートの前面との間に形成される主切れ刃およびすくい面に対して冷却用媒体を噴射するために切削用インサートのすくい面に向かって開放する噴射孔を含んでいる工具に関する。
【背景技術】
【0002】
以上で一般的に言及されているタイプの工具は概して、金属または類似の材料、例えば複合材料のワークの切りくず除去または切削加工のために使用される。通常の加工方法は、なかでも溝切りまたは突切り作業の形での旋削であり、この作業のあいだ切削用インサートは回転するワーク内に径方向に送り込まれて、ワーク内に円周方向溝を形成する。溝切りにおいて切削用インサートはワーク内の適度の深さまで挿入し、一方突切りでは、切削用インサートをワークの中心軸の近辺まで進める必要がある。問題になっている種類の工具は同様に、例えばワークの平坦な表面内に直線スロットを提供することを目的とする回転式フライス内に取付けてもよい。しかしながら、両方の場合において、切削用インサートのためのホルダーとして役立つブレードは、溝の幅を決定する切削用インサートの前方有効主切れ刃の幅よりも小さい厚みを有している必要があるが、これは、そうでなければ、溝を画定する発生した平坦な表面から離れた状態にブレードを置けないからである。その実用的応用の帰結として、工具は一般に「突切り用工具」と呼称されている。
【0003】
これに関連して、交換可能な切削用インサートが通常超硬合金または高い耐摩耗性を有する別の硬質材料で製造され、一方保持用ブレードが好適な品質の鋼で製造されているという点に言及しておくべきである。後者の材料は、(切削用インサートの硬質材料とは異なり)、ブレードのインサート座に切削用インサートをクランプするのに利用できる一定の固有の弾性を有する。
【0004】
加工中には大量の熱が発生することから、通常、切削用インサートおよびその直接的周囲環境の効率の良い冷却が必要とされる。したがって、従来、切削用インサートは上から(オーバークーリング)ならびに下から(アンダークーリング)冷却される。
【0005】
最初に言及したタイプの工具は、以前、特許文献1によって公知のものである。この文献で説明されているいくつかの変形実施形態のうちの1つにおいて、切削用インサートは、オーバークーリングならびにアンダークーリングによって冷却されている。オーバークーリングを提供するために、付属するインサート座に切削用インサートを固定することを目的とするクランプフィンガーの中には噴射孔が配置される。切削用インサートは前方すくい面ならびに後方作用面を含み、これに対してクランプフィンガーが当接している。クランプフィンガーの前方ノーズにおいて、切削用インサートは、皿孔面の形状を有する肩部を伴って形成され、この肩部は、すくい面の後部境界線のすぐ後方に位置設定されており、本質的に作用面のための前方境界線に向かって垂直方向下向きに延在する。クランプフィンガーは、ノーズに向かって収束する上面と下面との間に画定され、クランプフィンガーの上面および切削用インサートのすくい面は(側方から見た場合)わずかに凹状となっており、このためこれらは共に(切削用インサートの取付け状態において)凹状へこみを形成し、このへこみに沿って、除去されたもののまだ放出されていない切りくずは、冷却して孤立した断片の形に形成されてしまうまで摺動することができる。
【0006】
特許文献1により公知である工具の欠点は、噴射孔の口がクランプフィンガーのノーズから大きく離隔されていると同時に、切りくずがクランプフィンガーの上面に沿って進む間にいかなる切りくず形成障害物にも衝突しないという点にある。このことはすなわち、冷却媒体の噴流が、切りくずに直ちに衝突して(そしてそれ自体この切りくずを冷却して)、切りくずが効率良く切削用インサートのすくい面に到達しないことを意味する。これは、すくい面および前方主要切れ刃が受けるオーバークーリングが劣っていることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−227702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、以前に公知の工具の上述の欠点を除去し、問題となっている種類の改良型工具を提供することにある。したがって本発明の第1の目的は、加圧下で噴射孔から外に噴射される水噴流などの冷却媒体噴流が切りくずの下に入ってすくい面を有効に冷却しかつ切削用インサートからの切りくずの吹き出しに寄与するような形で形成されたクランプ用フィンガーと切削用インサートとを有する工具を提供することにある。同時に本発明の目的は、クランプフィンガーに激しく当たるのではなく、クランプフィンガーから離れて切りくずを形成するようにクランプフィンガーのノーズを保護することを目的とする肩部を利用することにもある。換言すると、本発明の最終的な目的は、改善されたオーバークーリングおよび改善された切りくずコントロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、少なくとも第1の目的は、すくい面と作用面の間に形成されかつ切りくずからノーズを保護することを目的とする肩部に面するクランプフィンガーの前方ノーズによって達成され、ここで切削用インサートの肩部は、2つのこぶを含み、これらのこぶは中央溝により互いに分離されており、この溝を介して冷却媒体は噴射孔からすくい面および主切れ刃に向かって通過することができる。このようにして、こぶの前方表面が切削用インサートから外に切りくずを誘導し、それと同時に、こぶはクランプフィンガーのノーズを後方に置いて保護することができる。こうして、冷却媒体の噴流は溝を通って切りくずの下へと自由に移動して、切削用インサートの主切れ刃の方向に可能なかぎり遠位に到達することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、こぶは、取付けた状態の切削用インサートの最高点を形成している。このようにしてクランプフィンガーのノーズは、こぶの後ろで充分保護された状態にあり、それと同時にこぶはクランプフィンガーから上方へ安全な距離のところに切りくずを誘導する。
【0011】
さらなる実施形態において、作用面は、こぶにより形成された切削用インサートの最高点から下向きおよび後向きに斜めに傾いている。同様に、このことは、こぶの後方でクランプフィンガーのノーズを保護するのと同時に、こぶがクランプフィンガーから上方へ安全な距離のところに切りくずを誘導するのに寄与している。このことは同様に、すくい面との関係におけるクランプフィンガーを通した噴射孔の有利な比較的小さい角度のための条件を提供することにも寄与し、こうして液体噴流は、溝を通過する場合に切削用インサートの主切れ刃の方にかなり正確に誘導され得るようになっている。
【0012】
別の実施形態において、すくい面は、主切れ刃からこぶまで通る2つの側方リブにより取り囲まれている凹状底部を有する。こうして、切りくずは部分的に、こぶに向かって側方リブ上に載ることができ、ここで切りくずは最終的に切削用インサートを離れる。この除去作業中、噴射孔の口を通って外へ高圧下で液体が噴射され、ここで、液体はこぶの間の溝の中を通過し、切りくずの下に進入し、主切れ刃に向かって進むことができる。
【0013】
さらなる実施形態においては、クランプフィンガーの上面と下面がノーズの端面に向かって収束し、噴射孔は上部側ならびに前記端面内で開放している。このようにして、噴射孔の口は、クランプフィンガー内の低い場所におかれ、こうして溝を通過する際に切削用インサートの主エッジに向かってかなり正確に液体噴流が誘導される。
【0014】
さらなる実施形態においては、最も深いところに存在する平坦な底部によって表されている通りのすくい面およびV字形溝の2つのフランク面によって表されている通りの作用面は、最大限でも165°である鈍角を成して互いに傾斜している。このようにして、切削用インサートのすくい面をブレードを長さ方向の延長に対して本質的に水平方向に配向することができ、一方作用面は下向き/後向きに斜め傾き、すくい面と作用面の間の遷移部分の中に2つのこぶが適用される。この位置で、こぶは、作動的状態における切削用インサートの最高点を形成する。このことのもつプラスの効果は、クランプフィンガーのノーズがこぶの後方で充分保護された状態に置かれているのと同時に、こぶがクランプフィンガーから安全な距離のところに上方へと切りくずを誘導するという点にある。
【0015】
さらなる実施形態において、切削用インサートは、片刃であり、横断面がV字形である尾根の一対のフランク面によって表されている通り、インサート座の中に含まれインサート座の底部支持体と鋭角を成す後部または内側ストッパ面に押圧される平坦な表面の形をした後面を有しており、切削用インサートの後面は、横断面がV字形である溝内の2つのフランク面により表現されている通り、切削用インサートの下面と鋭角を成している。このようにして切削用インサートの堅牢なクランプが単純な手段によって達成される。
【0016】
最後に言及された実施形態において、切削用インサートの後面と下面の間の鋭角は、切削用インサートのすくい面と作用面の間の鈍角の補角であってよい。このようにして、ブレードとの関係におけるすくい面の本質的に水平な配向が、単純な形で達成される。
【0017】
第2の態様において、本発明は同様に、このような交換可能な切削用インサートにも関する。前記切削用インサートの独特の特徴は、独立請求項9と従属請求項10〜16に見られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】回転するワーク内での溝の旋削に関連する本発明にしたがって形成された工具を示す分解組立斜視図である。
図2】インサートホルダーとして役立つ本発明に係るブレードの拡大断面側面図である。
図3】ブレードおよび切削用インサートを全体的に示す斜視図である。
図4】工具の切削用インサートを上から見た斜視図である。
図5】同じ切削用インサートの側面図である。
図6図5中のVI−VI正面図である。
図7】切削用インサートの上から見た平面図である。
図8図7中のVIII−VIII横断面である。
図9図7中のIX−IX横断面である。
図10図7中のX−X縦断面である。
図11】空のインサート座をさらに詳細に示す拡大斜視図である。
図12】同じインサート座を下から見た図である。
図13】切削用インサートが取付けられた状態のブレードの端面図である。
図14】ブレードのチャネルシステムを1/2に分割した状態で示す、図13中のXIV−XIV中央縦断面である。
図15】作動中の工具すなわち切りくず除去および同時冷却中の工具を示す拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1では、本発明に係る工具1が、ワーク2の加工に関連して示されている。工具は、旋削工具の形で実施され、その主要構成要素は、交換可能な切削用インサート4のためのホルダーまたは基体として役立つブレード3である。ワーク2は円筒形であり、回転方向Rに回転可能である。ワークの同時回転中、送り方向Fで工具1を長手方向に送り込むことによって、ワークの包絡面内に、円周方向の溝5を提供することができ、この溝の幅は切削用インサート4内に含まれる主切れ刃の幅によって決定され、一方その深さは、ブレードとその切削用インサートをワーク内部に送り込む程度によって決定される。
【0020】
図1中に示された加工方法は、溝切り作業である。
【0021】
図1には、さらに、ブレード内に含まれたクランプフィンガー8を切削用インサート4の取付けを可能にするように偏向させることのできる偏心体7を有するキー6も示されている。
【0022】
図2および3では、実施例中のインサート保持ブレード3が、ブレードの端部を形成する2つの横方向側縁部10と2つの長手方向平行側縁部9とによって画定されることにより、細長い矩形の基本的形状を有することがわかる。対角線上で相対する2つのコーナーには、インサート座11が形成されており、その中に切削用インサートを着脱可能な形で取付けることができる。この場合にブレードが2つのインサート座を含んでいる理由は、ブレードがブロック(図示せず)内に取付け可能でなくてはならず、ここでブレードはいずれかのインサート座が図1に示されている作動的状態をとるように反転可能であるということにある。ただし、本発明は同様に、1つのインサート座しか含まないブレードにも適用可能である。
【0023】
個別のインサート座11(図2参照)は、クランプフィンガー8の下面13と底部支持体12との間に画定される。インサート座はさらに、切削用インサートの後端部に対する支持体として役立ちインサート座内の切削用インサートの軸方向位置を決定する内側ストッパ面14によって画定されている。インサート座11から、キーホール16内に開口するスリット15が延在しており、このキーホールの中にキー6の偏心体7を挿入して、インサート座を拡張させながらクランプフィンガーを偏心させ、さらに厳密には切削用インサートの交換を可能することができる。
【0024】
工具についての以下の説明を容易にするため、図2では、長手方向側縁部9に対し平行でかつこれらの縁部の中間に位置づけされている基準線RLが示されている。これに関連して、以下の説明は、ブレードが図2に示された水平方向位置をとり作動的切削用インサートが左側インサート座内に適用されるという仮定に基づいている、ということを指摘しておくべきである(図3も参照のこと)。
【0025】
本発明に係る切削用インサートの形状を明確にするため、ここで図4〜10の参照が指示される。これらの図から、切削用インサートが概して6面体の形状を有し、この形状が前面17、後面18、2つの同一の側面19、下面20および全体が21という番号で呼称されている上面によって画定されているということがわかる。図5では、下面20がどのようにして(図2にしたがって)水平平面に対し角度αで、より厳密にはインサート座11の底部支持体12が基準線RLとの関係において傾いているのと同じ角度を成して傾いているのかが示されている。この実施例中では、αは20°である。しかしながら、この値は上向きならびに下向きに変動してよいが、αは10°未満または45°超であってはならない。
【0026】
上面21には、異なる機能を有する2つの異なる部分表面、すなわち一方ではすくい面22そして他方では作用面が含まれており、これに対してクランプフィンガー8を押圧することができる。前面17を形成する平坦な表面とすくい面22の間に主切れ刃24が形成され、この切れ刃に対して、主切れ刃24が作り出す平坦な表面を平滑化することを目的とする二次切れ刃25(図4参照)が連結している。前面17は、ワークと接触しない逃げ面を形成する。2つの相対する側面26は、類似の要領で、二次切れ刃25のための逃げ面を形成する。
【0027】
作用面23は、横断面がV字形である溝の形状を有し、これは上向きに開放し、中央スロット28によって分離されている2つのフランク面27を含む。
【0028】
同様に、下面20も、下向きに開放しているものの横断面がV字形である溝の形状を有し、この中に、中央スロット30によって分離されている2つのフランク面29が含まれている(図6および8を参照のこと)。
【0029】
ここで図11および12を参照すると、これらの図から、インサート座11の底部支持体12ならびに、クランプフィンガー8の下面13が、切削用インサート内のV字形溝と相互作用するための横断面がV字形の尾根の形状を有することがわかる。こうして、底部支持体12は、共通の尾根32に向かって収束する2つのフランク面31を含む。類似の要領で、2つのフランク面33は、共通の尾根34に向かって収束する。これらは共に、全体として13と呼称されるクランプフィンガーの下面を形成する。尾根32、34は、切削用インサートをインサート座内の適正な位置へと誘導すること、より厳密には切削用インサートがクランプ位置にある場合にスロット28、30と直接接触せずにこれらのスロット内に挿入することで誘導することを目的としている。
【0030】
これに関連して、図2中で全体が16として呼称されているキーホールが、クランプフィンガー8の下面の上部陥凹と、ストッパ面14の後方に位置し上向きに開放する下部陥凹とを含んでいることに言及しておかなければならない。同様に、クランプフィンガーの弾性偏向が必然的に発生する特定のゾーンの疲労からブレードを保護することを目的として、クランプフィンガー8が円形孔35を介してブレードの残りの部分から分離されている(図12参照)ことにも言及しておくべきである。
【0031】
平面で平行な2つの相対する側面36に加えて、クランプフィンガー8は、上面37および下面13(フランク面33)により画定され、上面と下面は、全体として38と呼称されるノーズに向かって収集しており、ノーズの中には平坦な端面39が含まれている。平坦な端面39は、40と呼称される境界線を介して同様に平坦な上面37へと形を変える。
【0032】
ここで再び図4〜10を参照すると、これらの図から、2つのノブつまり突起41がすくい面22と作用面23の間に形成されていることがわかる。これらのノブは、切削用インサートの2つの側面19近くに位置設定され、中央溝またはくぼみ42によって分離されている。切削用インサートの取付けされた機能的状態において、ノブは共に1つの肩部を形成し、この肩部の後方で、クランプフィンガーのノーズが切りくずから保護された位置に置かれている。図5を見ればわかるように、ノブは、切削用インサートの最高点を形成し、この点から作用面23は後向きに(およそ角度αで)傾いている。すくい面22は、主切れ刃24からノブ41まで通っている2つの側方リブ44によって凹状底部43(図4参照)が取り囲まれていることを特徴とする形状を有する。図10を見ればわかるように、リブ44の厚みは、主切れ刃からノブ41に向かう方向に増大し、個別のリブの上面は凹状表面であり、その最高点は個別のノブに連結している。底部43において、リブとの関係において皿モミ加工された状態で、複数の部分表面が含まれており、そのうち45と呼称されているものは、切削用インサートがインサート座内に取付けられた場合それ自体基準線RL(図2)に対して平行である図5に示された基準平面RP対して本質的に平行である平坦な表面である。作用面23の配向との関係におけるすくい面の配向のための基礎として平坦な底面45が考慮される場合、2つの表面は、図10を見ればわかるように、互いに鈍角βを成す。実施例においては、αが20°である場合、βは160°となる。同様に、角度δが20°となることも指摘しておかなければならない。しかしながら、すくい面と逃げ面17の間の角度(図示せず)は、より厳密には逃げ角εを提供する目的で、20°未満である。
【0033】
図5ならびに図10を見れば明らかにわかるよう、ノブ41により形成される肩部は、切削用インサートの最高点を形成し、この点から作用面が下向き/後向きに斜めに傾いており、一方(表面45を基準平面として)すくい面22はノブからおよそ水平方向に前向きに延在している。
【0034】
ここで図13および14を参照すると、これらの図は、冷却媒体、特に液体を切削用インサート4に向かって搬送できるドリル加工されプラグされたチャネルのシステムがブレード3にどのような形で含まれているかを示している。こうして、切削用インサートを下側から冷却するために中央側方入口46からチャネル47を介して液体を補給してよい。切削用インサートのオーバークーリングのためのチャネル48が、部分的にクランプフィンガー8を通って経路設定される。図11および12を見ればわかるように、チャネル48は、クランプフィンガーのノーズ38の部域内に開口している。より厳密には、チャネル48は、一方ではクランプフィンガーの上面37に開放し、他方ではノーズ38の平坦な端面39に開放している。オーバークーリングチャネル48の口のこのような位置設定は、チャネルから外に噴射される液体噴流が比較的低く位置づけされ、この低い位置設定にも関わらずノブ41の間の溝42の中を通過できることを意味する。このことは図15に示されている。
【0035】
発明の機能と利点
図15において、G1、G2は、ブレードの材料にドリル加工することによって得られる、横断面が円形であるチャネル48の上部および下部母線を表わしている。ワーク2内での旋削中、切削用インサート4は、上述の溝5を生成する一方でCHと呼称される切りくずを除去する。より厳密には、切りくず除去は、主として主切れ刃(いわゆる溶接ゾーン)に沿って達成され、この時点で切りくずは連続して冷却され、図15に概略的に示されているような形で曲線を描く。これに関連して、切りくずは部分的にノブ41に向かって上述のリブ44上に載り、ここで最終的に切削用インサートから離れる。前記除去作業中に、液体がチャネル48の口を通して高圧下で外に噴射され、ここで液体はノブ41間の溝42の中を通過できる。これに関連して、液体は切りくずの下に進入し主切れ刃に向かって進むことができる(ただし、液体は、事実上主切れ刃まで達する前に蒸発させられる)。図15では、下部母線G2の仮想延長部分が、溝42の底部近くすなわちノブ41の上面より下のかなりの深さのところに位置設定されるのと同時に主切れ刃24に向かって誘導されているのがわかる。このことは、冷却液が主切れ刃の方向でかなり前方にまで達するという利点をもたらすのみならず、図15に概略的に示されている形で切りくずの破壊に寄与するという利点をもたらす。当然のことながら、この切りくず破壊効果は、冷却液の圧力の増大と共に増大する。実際には、使用される圧力は5〜10MPa(50〜100bar)以上になるかもしれない。このような圧力は切りくずに対して力を加え、この力は、切削用インサートからの切りくずの除去に大きく貢献するのに充分な程度に大きいものである。
【符号の説明】
【0036】
3 ブレード
4 切削インサート
8 クランプフィンガー
11 インサート座
12 底部支持体
17 前面
18 後面
19 側面
20 下面
21 上面
22 すくい面
23 作用面
41 こぶ
42 中央溝
48 噴射孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15