(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388819
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】スイッチングコンバータおよびその制御回路、制御方法、それを用いた照明装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20180903BHJP
H05B 37/02 20060101ALI20180903BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20180903BHJP
【FI】
H02M3/00 W
H05B37/02 J
H01L33/00 J
H02M3/00 J
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-224446(P2014-224446)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-92956(P2016-92956A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 義和
【審査官】
佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−59662(JP,A)
【文献】
特開2012−109141(JP,A)
【文献】
特開2007−110803(JP,A)
【文献】
特開平10−80135(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/111993(WO,A1)
【文献】
特開2013−157087(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/157242(WO,A1)
【文献】
特開2007−157423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
H01L 33/00
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングコンバータの制御回路であって、
前記スイッチングコンバータは、
入力ラインと出力ラインの間に設けられた出力キャパシタと、
前記出力ラインと接地ラインの間に直列に設けられたインダクタ、スイッチングトランジスタおよび検出抵抗と、
前記入力ラインにカソードが接続され、前記インダクタと前記スイッチングトランジスタの接続点にアノードが接続されたダイオードと、
を備え、
前記制御回路は、
前記検出抵抗の電圧降下に応じた電流検出信号が設定値を超えると、リセットパルスをアサートする電流リミットコンパレータと、
前記インダクタに流れる電流が実質的にゼロとなるとセットパルスをアサートするゼロ電流検出回路と、
前記セットパルスおよび前記リセットパルスを受け、制御パルスを生成するロジック回路であって、(i)前記制御パルスは、前記セットパルスがアサートされると、前記スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベルに遷移し、(ii)前記リセットパルスがアサートされると、前記スイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベルに遷移するものである、ロジック回路と、
複数の前記スイッチングコンバータを駆動するために複数の前記制御回路が併用されるプラットフォームにおいて、前記スイッチングトランジスタのターンオフを別の制御回路に通知する遷移通知回路と、
を備え、
前記ロジック回路は、前記別の制御回路において前記スイッチングトランジスタがターンオフされると、自分が生成する前記制御パルスの遷移を制限することを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記遷移通知回路は、前記リセットパルスのアサートを別の制御回路に通知することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記ロジック回路は、前記別の制御回路において前記リセットパルスがアサートされてから所定時間の間を遷移禁止期間とし、当該遷移禁止期間において自分が生成する前記制御パルスの遷移を禁止することを特徴とする請求項2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記遷移通知回路は、前記遷移禁止期間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成し、別の制御回路に出力可能に構成され、
前記ロジック回路は、別の制御回路からの前記マスク信号を用いて、自分に入力される前記セットパルスおよび前記リセットパルスの少なくとも一方のアサートをマスク可能に構成されることを特徴とする請求項3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記遷移通知回路は、前記リセットパルスがアサートされると、アサートされる通知信号を生成し、前記通知信号を別の制御回路に出力可能に構成され、
前記ロジック回路は、前記通知信号に応答して、前記遷移禁止期間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成し、当該マスク信号を用いて、自分に入力される前記セットパルスおよび前記リセットパルスの少なくとも一方のアサートをマスク可能に構成されることを特徴とする請求項3に記載の制御回路。
【請求項6】
前記遷移通知回路は、前記スイッチングトランジスタのターンオフに加えて、前記スイッチングトランジスタのターンオンを、別の制御回路に通知するよう構成され、
前記ロジック回路は、別の制御回路において前記スイッチングトランジスタがターンオンされると、自分が生成する前記制御パルスの遷移を制限することを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項7】
前記遷移通知回路は、前記リセットパルスおよび前記セットパルスそれぞれのアサートを、別の制御回路に通知するよう構成され、
前記ロジック回路は、別の制御回路において前記リセットパルスまたは前記セットパルスがアサートされると、自分が生成する前記制御パルスの遷移を制限することを特徴とする請求項6に記載の制御回路。
【請求項8】
前記遷移通知回路は、前記セットパルスまたは前記リセットパルスがアサートされてから所定時間の間を遷移禁止期間とし、当該遷移禁止期間において自分が生成する前記制御パルスの遷移を禁止することを特徴とする請求項7に記載の制御回路。
【請求項9】
前記遷移通知回路は、前記遷移禁止期間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成し、別の制御回路に出力可能に構成され、
前記ロジック回路は、別の制御回路からの前記マスク信号を用いて、自分に入力される前記セットパルスおよび前記リセットパルスのアサートをマスク可能に構成されることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項10】
前記遷移通知回路は、前記セットパルスまたは前記リセットパルスがアサートされると、アサートされる通知信号を生成し、前記通知信号を別の制御回路に出力可能に構成され、
前記ロジック回路は、前記通知信号に応答して、前記遷移禁止期間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成し、当該マスク信号を用いて、自分に入力される前記セットパルスおよび前記リセットパルスの少なくとも一方のアサートをマスク可能に構成されることを特徴とする請求項8に記載の制御回路。
【請求項11】
スイッチングコンバータの制御回路であって、
前記スイッチングコンバータは、
入力ラインと出力ラインの間に設けられた出力キャパシタと、
前記出力ラインと接地ラインの間に直列に設けられたインダクタ、スイッチングトランジスタおよび検出抵抗と、
前記入力ラインにカソードが接続され、前記インダクタと前記スイッチングトランジスタの接続点にアノードが接続されたダイオードと、
を備え、
前記制御回路は、
前記検出抵抗の電圧降下に応じた電流検出信号が設定値を超えると、リセットパルスをアサートする電流リミットコンパレータと、
前記インダクタに流れる電流が実質的にゼロとなるとセットパルスをアサートするゼロ電流検出回路と、
前記セットパルスおよび前記リセットパルスを受け、制御パルスを生成するロジック回路であって、(i)前記制御パルスは、前記セットパルスがアサートされると、前記スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベルに遷移し、(ii)前記リセットパルスがアサートされると、前記スイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベルに遷移するものである、ロジック回路と、
複数の前記スイッチングコンバータを駆動するために複数の前記制御回路が併用されるプラットフォームにおいて、
前記スイッチングトランジスタのターンオンを別の制御回路に通知する遷移通知回路と、
を備え、
前記ロジック回路は、前記別の制御回路において前記スイッチングトランジスタがターンオンされると、自分が生成する前記制御パルスの遷移を制限することを特徴とする制御回路。
【請求項12】
前記遷移通知回路は、前記セットパルスのアサートを別の制御回路に通知することを特徴とする請求項11に記載の制御回路。
【請求項13】
前記ロジック回路は、前記別の制御回路において前記セットパルスがアサートされてから所定時間の間を遷移禁止期間とし、当該遷移禁止期間において自分が生成する前記制御パルスの遷移を禁止することを特徴とする請求項12に記載の制御回路。
【請求項14】
スイッチングコンバータの制御回路であって、
前記スイッチングコンバータは、
入力ラインと出力ラインの間に設けられた出力キャパシタと、
前記出力ラインと接地ラインの間に直列に設けられたインダクタ、スイッチングトランジスタおよび検出抵抗と、
前記入力ラインにカソードが接続され、前記インダクタと前記スイッチングトランジスタの接続点にアノードが接続されたダイオードと、
を備え、
前記制御回路は、
前記検出抵抗の電圧降下に応じた電流検出信号が設定値を超えると、リセットパルスをアサートする電流リミットコンパレータと、
前記インダクタに流れる電流が実質的にゼロとなるとセットパルスをアサートするゼロ電流検出回路と、
前記セットパルスおよび前記リセットパルスを受け、制御パルスを生成するロジック回路であって、(i)前記制御パルスは、前記セットパルスがアサートされると、前記スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベルに遷移し、(ii)前記リセットパルスがアサートされると、前記スイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベルに遷移するものである、ロジック回路と、
複数の前記スイッチングコンバータを駆動するために複数の前記制御回路が併用されるプラットフォームにおいて、前記制御パルスの遷移を別の制御回路に通知する遷移通知回路と、
を備え、
前記ロジック回路は、別の制御回路において前記制御パルスの遷移が発生すると、自分が生成する前記制御パルスの遷移を制限することを特徴とする制御回路。
【請求項15】
前記遷移通知回路は、オープンコレクタまたはオープンドレイン形式の出力段を有することを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の制御回路。
【請求項16】
前記スイッチングコンバータは、前記インダクタと前記スイッチングトランジスタの接続点と接地ラインの間に直列に設けられた第1キャパシタおよび第1抵抗をさらに備え、
前記ゼロ電流検出回路は、前記第1抵抗の電位が所定のしきい値電圧がクロスすると、前記セットパルスをアサートすることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の制御回路。
【請求項17】
前記スイッチングコンバータは、前記インダクタと結合された補助巻線をさらに備え、
前記ゼロ電流検出回路は、前記補助巻線の電圧が所定のしきい値電圧とクロスすると、前記セットパルスをアサートすることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の制御回路。
【請求項18】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の制御回路。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかに記載の制御回路を備えることを特徴とするスイッチングコンバータ。
【請求項20】
直列に接続された複数のLED(発光ダイオード)を含むLED光源と、
商用交流電圧を平滑整流する整流回路と、
前記整流回路により平滑整流された直流電圧を入力電圧として受け、前記LED光源を負荷とするスイッチングコンバータと、
を備え、
前記スイッチングコンバータは、請求項1から19のいずれかに記載の制御回路を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項21】
液晶パネルと、
前記液晶パネルを裏面から照射するバックライトである請求項20に記載の照明装置と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項22】
複数のスイッチングコンバータの制御方法であって、
前記複数のスイッチングコンバータそれぞれは、
入力ラインと出力ラインの間に設けられた出力キャパシタと、
前記出力ラインと接地ラインの間に直列に設けられたインダクタ、スイッチングトランジスタおよび検出抵抗と、
前記入力ラインにカソードが接続され、前記インダクタと前記スイッチングトランジスタの接続点にアノードが接続されたダイオードと、
を備え、
各チャンネルにおいて前記制御方法は、
前記検出抵抗の電圧降下に応じた電流検出信号が設定値を超えると、リセットパルスをアサートするステップと、
前記インダクタに流れる電流が実質的にゼロとなるとセットパルスをアサートするステップと、
前記セットパルスがアサートされると、前記スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベルに遷移し、前記リセットパルスがアサートされると、前記スイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベルに遷移する制御パルスを生成するステップと、
を備え、
あるスイッチングコンバータにおいて前記制御パルスの遷移を別のスイッチングコンバータにおいて前記制御パルスの遷移を制限するステップをさらに備えることを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶のバックライトや照明器具として、LED(発光ダイオード)などの半導体光源の普及が進んでいる。近年、LED照明においては、降圧型の開発が進められている。
図1は、本発明らが検討した降圧型のスイッチングコンバータの回路図である。スイッチングコンバータ100rは、図示しない電源から入力電圧V
INを受け、それを降圧することにより負荷であるLED光源502に出力電圧V
OUTを供給するとともに、LED光源502に流れる電流(負荷電流あるいは駆動電流という)I
LEDを目標値I
REFに安定化させる。たとえばLED光源502は、発光ダイオード(LED)ストリングであり、スイッチングコンバータ100rは、LEDストリングの目標輝度に応じて、負荷電流I
LEDの目標電流値I
REFを設定する。
【0003】
スイッチングコンバータ100rは、出力回路102および制御回路200rを備える。出力回路102は、平滑キャパシタC1、整流ダイオードD1、スイッチングトランジスタM1、インダクタL1、補助巻線L2、および検出抵抗R
CSを備える。
【0004】
スイッチングトランジスタM1のオン期間において、検出抵抗R
CSには、スイッチングトランジスタM1に流れる電流が流れる。制御回路200rの電流検出(CS)端子には、検出抵抗R
CSの電圧降下(検出電圧)V
CSがフィードバックされる。
【0005】
制御回路200は、電流リミットコンパレータ202、ゼロ電流検出回路204、ロジック回路206、ドライバ208を備える。
【0006】
図2は、
図1のスイッチングコンバータ100rの動作波形図である。スイッチングトランジスタM1がオンの期間(オン期間)、コイル電流I
LはスイッチングトランジスタM1を流れる電流I
M1に相当し、LED光源502、インダクタL1、スイッチングトランジスタM1および検出抵抗R
CSを経由して流れる。コイル電流I
Lの増大にともない、電流検出信号V
CSが上昇する。電流リミットコンパレータ202は、電流検出信号V
CSを、目標電流値I
REFに対応して設定された目標電圧V
ADIMと比較し、電流検出信号V
CSが目標電圧V
ADIMに達すると、つまりコイル電流I
Lがリミット電流I
LIM(=V
ADIM/R
CS)に達すると、リミット電流検出信号S1をアサート(たとえばハイレベル)する。オン期間において、インダクタL1に蓄えられるエネルギーが増大する。
【0007】
ロジック回路206は、リミット電流検出信号S1がアサートされると、パルス信号S2をスイッチングトランジスタM1のオフに対応するオフレベル(たとえばローレベル)に遷移させる。ドライバ208は、パルス信号S2に応じて、スイッチングトランジスタM1をオフする。
【0008】
スイッチングトランジスタM1がオフの期間、コイル電流I
Lは整流ダイオードD1に流れる電流I
D1に相当し、LED光源502、インダクタL1、および整流ダイオードD1を経由して流れる。オフ時間の経過にともない、インダクタL1に蓄えられたエネルギーが減少していき、コイル電流I
Lは減少していく。
【0009】
補助巻線L2は、インダクタL1と結合されており、トランスT1が形成される。制御回路200rのゼロクロス検出(ZT)端子には、補助巻線L2の電圧V
ZTが入力される。ゼロ電流検出回路204は、補助巻線Lzの電圧V
ZTにもとづいて、インダクタL1に流れるコイル電流I
Lがゼロになったこと(ゼロクロス)を検出し、ゼロクロス検出信号S3をアサートする。
【0010】
ロジック回路206は、ゼロクロス検出信号S3がアサートされると、パルス信号S2を、スイッチングトランジスタM1のオンに対応するオンレベル(たとえばハイレベル)に遷移させる。ドライバ208は、パルス信号S2に応じて、スイッチングトランジスタM1をオンする。
【0011】
制御回路200rは、以上の動作を繰り返す。負荷電流I
LEDは、コイル電流I
Lを平滑キャパシタC1により平滑化された電流となり、そのときの目標電流値I
REFは、I
LIM/2となる。
【0012】
図2に示すように、ドライバ208の出力パルス信号S
OUTがオンレベルに遷移した直後、電流検出信号V
CSはサージノイズの影響で大きく跳ね上がる。このスパイクノイズにより、コイル電流I
Lがリミット電流I
LIMに達していないにもかかわらず、電流リミットコンパレータ202の出力(リミット電流検出信号)S1がアサートされるのを防止するために、スイッチングトランジスタM1がオンした直後、所定の長さを有するマスク時間T
MSKが設定され、マスク時間T
MSKの間、電流リミットコンパレータ202による比較結果が無効化される。これをリーディングエッジブランキング(LEB)とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003−153529号公報
【特許文献2】特開2004−47538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者は、
図1のスイッチングコンバータを複数個、併用するアプリケーションについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
図3は、複数のスイッチングコンバータを併用するアプリケーションブロック図である。
【0015】
図1のスイッチングコンバータ100は、疑似共振モードで動作する。したがって、それを複数個を併用する場合には、各チャンネルは独立にスイッチングし、それらは完全に非同期動作となる。ここで複数のスイッチングコンバータ100の入力ライン104は共通であるため、あるチャンネルCH1のスイッチングにともなうノイズは、入力ライン104を介して別のチャンネルCH2に混入しうる。そうすると、チャンネルCH2におけるZT端子やCS端子にノイズが伝搬して誤動作の要因となるため、システムが不安定となる。なおかかる問題を当業者の一般的な認識としてとらえてはならない。
【0016】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、安定性を高めたスイッチングコンバータの制御回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のある態様は、スイッチングコンバータの制御回路に関する。スイッチングコンバータは、入力ラインと出力ラインの間に設けられた出力キャパシタと、出力ラインと接地ラインの間に直列に設けられたインダクタ、スイッチングトランジスタおよび検出抵抗と、入力ラインにカソードが接続され、インダクタとスイッチングトランジスタの接続点にアノードが接続されたダイオードと、を備える。
制御回路は、検出抵抗の電圧降下に応じた電流検出信号が設定値を超えると、リセットパルスをアサートする電流リミットコンパレータと、インダクタに流れる電流が実質的にゼロとなるとセットパルスをアサートするゼロ電流検出回路と、セットパルスおよびリセットパルスを受け、制御パルスを生成するロジック回路であって、(i)制御パルスは、セットパルスがアサートされると、スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベルに遷移し、(ii)リセットパルスがアサートされると、スイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベルに遷移するものである、ロジック回路と、複数のスイッチングコンバータを駆動するために複数の制御回路が併用されるプラットフォームにおいて、スイッチングトランジスタのターンオフを別の制御回路に通知する遷移通知回路と、を備える。ロジック回路は、別の制御回路においてスイッチングトランジスタがターンオフされると、自分が生成する制御パルスの遷移を制限する。
【0018】
この態様によると、あるチャンネルのスイッチングコンバータのスイッチングトランジスタのターンオンにともなうノイズによって、別のチャンネルのスイッチングコンバータのスイッチングトランジスタが誤動作するのを防止でき、安定性を高めることができる。
【0019】
遷移通知回路は、リセットパルスのアサートを別の制御回路に通知してもよい。これにより、スイッチングトランジスタのターンオフを好適に通知できる。
【0020】
ロジック回路は、別の制御回路においてリセットパルスがアサートされてから所定時間の間を遷移禁止期間とし、当該遷移禁止期間において自分が生成する制御パルスの遷移を禁止してもよい。
所定時間を最適化することで、回路の安定性と、回路の即応性のバランスをとることができる。
【0021】
遷移通知回路は、遷移禁止期間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成し、別の制御回路に出力可能に構成されてもよい。ロジック回路は、別の制御回路からのマスク信号を用いて、自分に入力されるセットパルスおよびリセットパルスの少なくとも一方のアサートをマスク可能に構成されてもよい。
【0022】
遷移通知回路は、リセットパルスがアサートされると、アサートされる通知信号を生成し、通知信号を別の制御回路に出力可能に構成されてもよい。ロジック回路は、通知信号に応答して、遷移禁止期間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成し、当該マスク信号を用いて、自分に入力されるセットパルスおよびリセットパルスの少なくとも一方のアサートをマスク可能に構成されてもよい。
【0023】
遷移通知回路は、スイッチングトランジスタのターンオフに加えて、スイッチングトランジスタのターンオンを、別の制御回路に通知するよう構成されてもよい。ロジック回路は、別の制御回路においてスイッチングトランジスタがターンオンされると、自分が生成する制御パルスの遷移を制限してもよい。
この態様によると、あるチャンネルのスイッチングコンバータのスイッチングトランジスタのターンオンにともなうノイズによって、別のチャンネルのスイッチングコンバータのスイッチングトランジスタが誤動作するのを防止でき、安定性を高めることができる。
【0024】
遷移通知回路は、リセットパルスおよびセットパルスそれぞれのアサートを、別の制御回路に通知するよう構成されてもよい。ロジック回路は、別の制御回路においてリセットパルスまたはセットパルスがアサートされると、自分が生成する制御パルスの遷移を制限してもよい。
セットパルス、リセットパルスを監視することにより、各チャンネルのスイッチングトランジスタのターンオフ、ターンオンの発生を検出できる。
【0025】
遷移通知回路は、セットパルスまたはリセットパルスがアサートされてから所定時間の間を遷移禁止期間とし、当該遷移禁止期間において自分が生成する制御パルスの遷移を禁止してもよい。
【0026】
遷移通知回路は、遷移禁止期間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成し、別の制御回路に出力可能に構成されてもよい。ロジック回路は、別の制御回路からのマスク信号を用いて、自分に入力されるセットパルスおよびリセットパルスのアサートをマスク可能に構成されてもよい。
【0027】
遷移通知回路は、セットパルスまたはリセットパルスがアサートされると、アサートされる通知信号を生成し、通知信号を別の制御回路に出力可能に構成されてもよい。ロジック回路は、通知信号に応答して、遷移禁止期間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成し、当該マスク信号を用いて、自分に入力されるセットパルスおよびリセットパルスの少なくとも一方のアサートをマスク可能に構成されてもよい。
【0028】
ある態様において、制御回路は、複数の前記スイッチングコンバータを駆動するために複数の制御回路が併用されるプラットフォームにおいて、リセットパルスのアサートを別の制御回路に通知する遷移通知回路を備えてもよい。ロジック回路は、別の制御回路においてリセットパルスがアサートされると、自分が生成する制御パルスの遷移を制限してもよい。
【0029】
本発明の別の態様もまた、制御回路である。制御回路は、検出抵抗の電圧降下に応じた電流検出信号が設定値を超えると、リセットパルスをアサートする電流リミットコンパレータと、インダクタに流れる電流が実質的にゼロとなるとセットパルスをアサートするゼロ電流検出回路と、セットパルスおよびリセットパルスを受け、制御パルスを生成するロジック回路であって、(i)制御パルスは、セットパルスがアサートされると、スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベルに遷移し、(ii)リセットパルスがアサートされると、スイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベルに遷移するものである、ロジック回路と、複数のスイッチングコンバータを駆動するために複数の制御回路が併用されるプラットフォームにおいて、スイッチングトランジスタのターンオンを別の制御回路に通知する遷移通知回路と、を備える。ロジック回路は、別の制御回路においてスイッチングトランジスタがターンオンされると、自分が生成する制御パルスの遷移を制限する。
【0030】
この態様によると、あるチャンネルのスイッチングコンバータのスイッチングトランジスタのターンオンにともなうノイズによって、別のチャンネルのスイッチングコンバータのスイッチングトランジスタが誤動作するのを防止でき、安定性を高めることができる。
【0031】
遷移通知回路は、セットパルスのアサートを別の制御回路に通知してもよい。
【0032】
ロジック回路は、別の制御回路においてセットパルスがアサートされてから所定時間の間を遷移禁止期間とし、当該遷移禁止期間において自分が生成する制御パルスの遷移を禁止してもよい。
【0033】
本発明の別の態様もまた、制御回路である。制御回路は、検出抵抗の電圧降下に応じた電流検出信号が設定値を超えると、リセットパルスをアサートする電流リミットコンパレータと、インダクタに流れる電流が実質的にゼロとなるとセットパルスをアサートするゼロ電流検出回路と、セットパルスおよびリセットパルスを受け、制御パルスを生成するロジック回路であって、(i)制御パルスは、セットパルスがアサートされると、スイッチングトランジスタのオンに対応するオンレベルに遷移し、(ii)リセットパルスがアサートされると、スイッチングトランジスタのオフに対応するオフレベルに遷移するものである、ロジック回路と、複数のスイッチングコンバータを駆動するために複数の制御回路が併用されるプラットフォームにおいて、制御パルスの遷移を別の制御回路に通知する遷移通知回路と、を備える。ロジック回路は、別の制御回路において制御パルスの遷移が発生すると、自分が生成する制御パルスの遷移を制限する。
【0034】
遷移通知回路は、オープンコレクタまたはオープンドレイン形式の出力段を有してもよい。これにより、3個以上の制御回路を併用するプラットフォームに利用する際のインタフェースを簡略化できる。
【0035】
スイッチングコンバータは、インダクタとスイッチングトランジスタの接続点と接地ラインの間に直列に設けられた第1キャパシタおよび第1抵抗をさらに備えてもよい。ゼロ電流検出回路は、第1抵抗の電位が所定のしきい値電圧がクロスすると、セットパルスをアサートしてもよい。
【0036】
スイッチングコンバータは、インダクタと結合された補助巻線をさらに備えてもよい。ゼロ電流検出回路は、補助巻線の電圧が所定のしきい値電圧とクロスすると、セットパルスをアサートしてもよい。
【0037】
制御回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0038】
本発明の別の態様は、スイッチングコンバータに関する。スイッチングコンバータは、上述のいずれかの制御回路を含む。
【0039】
本発明の別の態様は、照明装置に関する。照明装置は、直列に接続された複数のLED(発光ダイオード)を含むLED光源と、商用交流電圧を平滑整流する整流回路と、整流回路により平滑整流された直流電圧を入力電圧として受け、LED光源を負荷とするスイッチングコンバータと、を備えてもよい。スイッチングコンバータは、上述のいずれかの制御回路を備えてもよい。
【0040】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、液晶パネルと、液晶パネルを裏面から照射するバックライトである上述の照明装置と、を備えてもよい。
【0041】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0042】
本発明のある態様によれば、複数のスイッチングコンバータが併用されるアプリケーションにおいて、安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明らが検討した降圧型のスイッチングコンバータの回路図である。
【
図2】
図1のスイッチングコンバータの動作波形図である。
【
図3】複数のスイッチングコンバータを併用するアプリケーションブロック図である。
【
図4】第1の実施の形態に係るスイッチングコンバータの回路図である。
【
図5】制御回路の具体的な構成例を示す回路図である。
【
図6】
図4のスイッチングコンバータの動作波形図である。
【
図7】
図7(a)は、第1変形例に係る制御回路の回路図であり、
図7(b)は、第2変形例に係る制御回路の回路図である。
【
図8】第3変形例に係る制御回路の遷移通知回路の回路図である。
【
図10】第5変形例に係るスイッチングコンバータの回路図である。
【
図11】スイッチングコンバータを用いた照明装置のブロック図である。
【
図12】
図12(a)〜(c)は、照明装置の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0045】
本明細書において、「部材Aと部材Bが接続」された状態とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0046】
(第1の実施の形態)
図4は、第1の実施の形態に係るスイッチングコンバータ100の回路図である。スイッチングコンバータ100は、単独で、あるいは
図4に示すように、複数チャンネルが併用されるプラットフォームで使用される。
図4では2個のスイッチングコンバータ100が併用されるが、その個数は特に限定されない。制御回路200_1、200_2は同様に構成されるため、
図4には一方の構成のみを示す。
【0047】
複数のスイッチングコンバータ100_1、100_2は、入力ライン104が共通に接続される。各チャンネルのスイッチングコンバータ100は、入力ライン104の入力電圧V
INを降圧し、降圧された出力電圧V
OUTを出力ライン106から出力する降圧コンバータ(バックコンバータ)である。各チャンネルにおいて、LED光源502の一端(アノード)は入力ライン104と接続され、その他端(カソード)は出力ライン106と接続される。LED光源502の両端間には、駆動電圧V
IN−V
OUTが供給される。
【0048】
LED光源502は、定電流駆動すべきデバイスであり、スイッチングコンバータ100は、LED光源502に流れる電流I
LEDを、目標量に安定化する。たとえばLED光源502は、直列に接続された複数の発光素子(LED)を含むLEDストリングであってもよい。スイッチングコンバータ100は、LED光源502に流れる電流I
LEDを、目標となる輝度に応じた目標電流I
REFに安定化する。
【0049】
出力回路102は、平滑キャパシタC1、入力キャパシタC2、整流ダイオードD1、スイッチングトランジスタM1、インダクタL1、検出抵抗R
CSを備える。平滑キャパシタC1の一端は入力ライン104と接続され、その他端は出力ライン106と接続される。
【0050】
インダクタL1の一端は出力ライン106と接続され、その他端はスイッチングトランジスタM1のドレインと接続される。検出抵抗R
CSは、スイッチングトランジスタM1がオンの期間に、スイッチングトランジスタM1およびインダクタL1に流れる電流I
Lの経路上に配置される。整流ダイオードD1のカソードは入力ライン104と接続され、そのアノードは、インダクタL1とスイッチングトランジスタM1の接続点N1(ドレイン)と接続される。
【0051】
制御回路200は、ひとつの半導体基板に一体集積化された機能IC(Integrated Circuit)であり、出力(OUT)端子、電流検出(CS)端子、補助(ZT)端子、接地(GND)端子を有する。GND端子は接地される。OUT端子は、スイッチングトランジスタM1のゲートと接続され、CS端子には、検出抵抗R
CSの電圧降下に応じた電流検出信号V
CSが入力される。スイッチングトランジスタM1は、制御回路200に内蔵されてもよい。
【0052】
制御回路200は、電流リミットコンパレータ202、ゼロ電流検出回路204、ロジック回路206、ドライバ208、LEB(Leading Edge Blanking)回路210、遷移通知回路260を備える。
【0053】
電流リミットコンパレータ202は、電流検出信号V
CSが設定値V
ADIMを超えると、言い換えればコイル電流I
Lが設定値V
ADIMに応じたリミット電流I
LIMに達すると、リセットパルスS11をアサート(たとえばハイレベル)する。設定値V
ADIMは、アナログ調光の設定値に対応する。
【0054】
ゼロ電流検出回路204は、スイッチングトランジスタM1のターンオンを指示するセットパルスS13を生成する。
図4のスイッチングコンバータ100は、疑似共振(QR)型のコンバータであり、コイル電流I
Lがゼロとなると、スイッチングトランジスタM1をターンオンするソフトスイッチング動作を行なう。ゼロ電流検出回路204は、コイル電流I
Lが実質的にゼロとなると、セットパルスS13をアサート(たとえばハイレベル)する。
【0055】
キャパシタC11、抵抗R10は、コイル電流I
Lを検出するために設けられる。ゼロ電流検出回路204は、キャパシタC11と抵抗R10の接続点N2の電圧V
N2が、ゼロ付近のしきい値とクロスすると、セットパルスS13をアサートする。ZT端子には、接続点N2の電圧V
N2を直接入力してもよいが、抵抗R11、R12により分圧した電圧V
ZTを入力してもよい。
【0056】
ゼロ電流検出回路204は、コンパレータを含み、ZT端子の電圧V
ZTが、ゼロ付近に設定されたしきい値電圧V
ZEROとクロスすると、セットパルスS13をアサート(たとえばハイレベル)する。
【0057】
LEB回路210は、スイッチングトランジスタM1がターンオンしてから所定時間(マスク時間)の経過までをマスク期間とし、マスク期間中のリセットパルスS11のアサートをマスク、つまり無効化し、マスク後のリセットパルスS12をロジック回路206に出力する。つまり、LEB回路210のマスク時間は、スイッチングトランジスタM1のオン時間の最小幅を規定する。
【0058】
LEB回路210の構成は特に限定されず、公知技術を用いればよい。たとえばLEB回路210は、タイマー回路とゲート素子で構成できる。タイマー回路は、スイッチングトランジスタM1がターンオンしてからマスク時間の間、所定レベルとなるマスク信号を生成する。ゲート素子は、マスク信号とリセットパルスS11とを論理演算することにより、マスク後のリセットパルスS12を生成する。
【0059】
ロジック回路206は、セットパルスS13およびリセットパルスS12を受け、制御パルスS14を生成する。(i)制御パルスS14は、セットパルスS13がアサートされると、スイッチングトランジスタM1のオンに対応するオンレベル(たとえばハイレベル)に遷移し、(ii)リセットパルスS12がアサートされると、スイッチングトランジスタM1のオフに対応するオフレベル(たとえばローレベル)に遷移する。
【0060】
遷移通知回路260は、同じチャンネルにおけるスイッチングトランジスタM1のターンオフを別のチャンネルの制御回路200に通知する。たとえば遷移通知回路260は、同じ制御回路200内のリセットパルスS12のアサートを、別の制御回路200に通知する。この通知S30は、TX端子から出力され、別の制御回路200のRX端子に入力される。ロジック回路206は、別の制御回路200から通知S31を受信可能となっており、別の制御回路200におけるリセットパルスS12のアサート、つまり別チャンネルのスイッチングトランジスタM1のターンオフを知ることが可能である。ロジック回路206は、別の制御回路200においてリセットパルスS12がアサートされると、自分が生成する制御パルスS14の遷移を制限する。
【0061】
より具体的にはロジック回路206は、別の制御回路200においてリセットパルスS12がアサートされてから所定時間の間を遷移禁止期間τとし、当該遷移禁止期間τにおいて自分が生成する制御パルスS14の遷移を禁止する。
【0062】
たとえばロジック回路206における制御パルスS14の遷移の禁止は、それに入力されるリセットパルスS12、セットパルスS13のアサートをマスクすることで実現できる。この場合、ロジック回路206は、フリップフロップ206a、マスク回路206bを備える。マスク回路206bは、リセットパルスS12、セットパルスS13を受け、遷移禁止期間τ中は、それらを遮断し、それ以外の期間はそれらを通過させる。リセットパルスS12はRS型のフリップフロップ206aのリセット端子に、セットパルスS13はマスク回路206bのセット端子に入力される。
【0063】
以上が制御回路200の基本構成である。続いてその具体的な構成を、いくつか説明する。
【0064】
図5は、制御回路200の具体的な構成例を示す回路図である。なお、
図5では2個の制御回路200が併用される場合を示すが、3個以上にも拡張可能である。
【0065】
遷移通知回路260は、遷移禁止期間τの間、所定レベルとなるマスク信号S30を生成し、別の制御回路200に出力可能に構成される。
図5では、遷移通知回路260はオープンドレイン形式(もしくはオープンコレクタ)の出力段を有する。複数の制御回路200それぞれのTX端子およびRX端子は、外部の共通のプルアップ抵抗R30によりプルアップされている。ひとつの制御回路200においてマスク信号S30がハイレベルとなると、トランジスタ266がオンとなる。これにより、すべての制御回路200のRX端子がローレベル(接地電位)となり、遷移の発生が通知される。オープンコレクタ・オープンドレイン形式を採用することにより、3個以上の制御回路を併用するプラットフォームに利用する際に、制御回路200のインタフェースを簡略化できる。なお、制御回路200のRX端子とTX端子を共通化して、ピン数を削減してもよい。
【0066】
遷移通知回路260は、遅延回路262、ワンショット回路264、トランジスタ266を含む。
図5の場合、ある制御回路200で生成されるマスク信号S30は、自分自身のロジック回路206にも供給される構成となっている。自分が生成したマスク信号S30によって、自分が生成したリセットパルスS12がマスクされるのを防止するために、遅延回路262を挿入するとよい。遅延回路262は、リセットパルスS12を所定時間τd遅延させる。遅延時間τdは、自分が生成したマスク信号S30によって、自分が生成したリセットパルスS12がマスクされないように定められる。
【0067】
ワンショット回路264は、遅延されたリセットパルスS12のアサートを示すエッジから、遷移禁止期間τの間、ハイレベルとなるマスク信号S30を生成し、トランジスタ266のゲートに供給する。
【0068】
ある制御回路200のロジック回路206は、別の制御回路200からのマスク信号S30を用いて、自分に入力されるセットパルスS13およびリセットパルスS12の少なくとも一方のアサートをマスク可能に構成される。
図5では、セットパルスS13およびリセットパルスS12の両方が、RX端子に入力されるマスク信号S31によりマスクされる。
【0069】
ロジック回路206は、フリップフロップ206aおよびマスク回路206bを含む。マスク回路206bは、2個のANDゲート270、272を含む。ANDゲート270は、セットパルスS13とRX端子のマスク信号S31の論理積を生成し、フリップフロップ206aのセット端子に供給する。ANDゲート272は、リセットパルスS12とRX端子のマスク信号S31の論理積を生成し、フリップフロップ206aのリセット端子に供給する。ある制御回路200においてマスク信号S30がハイレベルとなると、RX端子のマスク信号S31はローレベルとなり、リセットパルスS12、セットパルスS13のアサート(ハイレベル遷移)がマスク(無効化)される。
【0070】
以上が制御回路200の構成である。続いてその動作を説明する。
図6は、
図4のスイッチングコンバータ100の動作波形図である。
【0071】
第1チャンネルCH1において制御パルスS14がオフレベルに遷移するたびに、言い換えれば、リセットパルスS12がアサートされるたびに、マスク信号S30がハイレベルとなる。マスク信号S30がハイレベルとなる遷移禁止期間τの間、第2チャンネルCH2では、制御パルスS14の遷移が禁止される。
【0072】
時刻t1に、第1チャンネルCH1においてスイッチングトランジスタM1がターンオフし、これに起因して第2チャンネルCH2の検出信号V
CSにノイズN3が重畳したとする。このノイズN3によりリセットパルスS12が誤ってアサートされるが、時刻t1は遷移禁止期間τに含まれるため、制御パルスS14はオンレベルを維持する。そして、時刻t2に電流検出信号V
CSが設定値V
ADIMに達すると、リセットパルスS12が正しくアサートされ、制御パルスS14がオフレベルに遷移する。
【0073】
以上がスイッチングコンバータ100の動作である。
このスイッチングコンバータ100によれば、あるチャンネルのスイッチングコンバータ100のスイッチングトランジスタM1のターンオンにともなうノイズによって、別のチャンネルのスイッチングコンバータのスイッチングトランジスタが誤動作するのを防止でき、安定性を高めることができる。
【0074】
特に、電流リミットコンパレータ202が生成するリセットパルスS12にもとづいて、通知信号(マスク信号)S30を生成し、他の制御回路200に通知することとした。これにより、スイッチングトランジスタのターンオフを確実に通知できる。
【0075】
実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0076】
(第1変形例)
図7(a)は、第1変形例に係る制御回路200aの回路図である。この変形例では、スイッチングトランジスタM1のターンオフに代えて、スイッチングトランジスタM1のターンオンが、他の制御回路200に通知される。遷移通知回路260aには、リセットパルスS12に代えてセットパルスS13を受け、セットパルスS13がアサートされると、通知信号S30をアサートする。
【0077】
(第2変形例)
図7(b)は、第2変形例に係る制御回路200bの回路図である。この変形例では、スイッチングトランジスタM1のターンオフに加えて、スイッチングトランジスタM1のターンオンが、他の制御回路200に通知される。遷移通知回路260bには、リセットパルスS12加えて、セットパルスS13が入力される。たとえば遷移通知回路260aは、セットパルスS13とリセットパルスS12を受けるORゲートを含み、いずれか一方がアサートされると、通知信号S30をアサートする。
【0078】
(第3変形例)
実施の形態では、リセットパルスS12あるいはセットパルスS13を利用して、スイッチングトランジスタM1のターンオン、あるいはターンオフを別の制御回路200に通知したが、本発明はそれに限定されない。
図8は、第3変形例に係る制御回路200cの遷移通知回路260cの回路図である。
【0079】
遷移通知回路260cは、エッジ検出回路280を含む。エッジ検出回路280は、制御パルスS14のポジティブエッジ、ネガティブエッジの少なくとも一方を検出対象とし、検出対象のエッジを検出すると、その出力をアサート(たとえばハイレベル)する。この変形例によっても、実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
(第4変形例)
図9は、第4変形例に係る制御回路200dの回路図である。この変形例では、TX端子からは、マスク信号ではなく、スイッチングトランジスタM1のターンオン/ターンオフを示す通知信号S32が出力され、その他の制御回路のRX端子に入力される。ロジック回路206dのマスク回路206bは、マスク信号生成回路282を含む。マスク信号生成回路282は、RX端子に入力される通知信号S33を受け、通知信号S33がアサートされてから遷移禁止期間の間、所定レベル(たとえばローレベル)となるマスク信号を生成する。この変形例によっても、同様の効果を得ることができる。
【0081】
(第5変形例)
図10は、第5変形例に係るスイッチングコンバータ100の回路図である。このスイッチングコンバータは、キャパシタC11、抵抗R10に代えて、インダクタL1と結合された補助巻線L2を備える。制御回路200のZT端子には、補助巻線L2に生ずる電圧V
L2に応じた電圧V
ZTが入力される。ゼロ電流検出回路は、補助巻線L2の電圧V
ZTが所定のしきい値電圧V
ZEROとクロスすると、セットパルスS13をアサートする。この構成によっても、疑似共振モードを実現できる。
【0082】
(第6変形例)
実施の形態では、LED光源502がLEDストリングである場合を説明したが、負荷の種類は特に限定されない。
【0083】
(第7変形例)
本実施の形態において、ロジック回路のハイレベル、ローレベルの論理値の設定は一例であって、インバータなどによって適宜反転させることにより自由に変更することが可能である。
【0084】
また、上述の実施の形態および任意の変形例の組み合わせも、本発明の態様として有効である。
【0085】
最後に、スイッチングコンバータ100の用途を説明する。
図11は、スイッチングコンバータ100を用いた照明装置500のブロック図である。照明装置500は、LED光源502である発光部、スイッチングコンバータ100に加えて、整流回路504、平滑コンデンサ506、マイコン508を備える。整流回路504および平滑コンデンサ506は、商用交流電圧V
ACを整流平滑化し、直流電圧V
DCに変換する。マイコン508は、LED光源502の輝度を指示する制御信号S
DIMを生成する。スイッチングコンバータ100は、直流電圧V
DCを入力電圧V
INとして受け、制御信号S
DIMに応じた駆動電流I
LEDをLED光源502に供給する。
【0086】
図12(a)〜(c)は、照明装置500の具体例を示す図である。
図12(a)〜(c)にはすべての構成要素が示されているわけではなく、一部は省略されている。
図12(a)の照明装置500aは、直管型LED照明である。LED光源502であるLEDストリングを構成する複数のLED素子は、基板510上にレイアウトされる。基板510には、整流回路504や制御回路200、出力回路102などが実装される。
【0087】
図12(b)の照明装置500bは、電球型LED照明である。LED光源502であるLEDモジュールは、基板510上に実装される。制御回路200や整流回路504は、照明装置500bの筐体の内部に実装される。
【0088】
図12(c)の照明装置500cは、液晶ディスプレイ装置600に内蔵されるバックライトである。照明装置500cは、液晶パネル602の背面を照射する。
【0089】
あるいは照明装置500は、シーリングライトに利用することも可能である。このように、
図11の照明装置500はさまざまな用途に利用可能である。
【0090】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0091】
100…スイッチングコンバータ、102…出力回路、104…入力ライン、106…出力ライン、C1…平滑キャパシタ、D1…整流ダイオード、M1…スイッチングトランジスタ、T1…トランス、L1…インダクタ、L2…補助巻線、R
CS…検出抵抗、200…制御回路、202…電流リミットコンパレータ、204…ゼロ電流検出回路、206…ロジック回路、206a…フリップフロップ、206b…マスク回路、208…ドライバ、210…LEB回路、260…遷移通知回路、S11,S12…リセットパルス、S13…セットパルス、S14…制御パルス、500…照明装置、502…LED光源、504…整流回路、506…平滑コンデンサ、508…マイコン、510…基板。