特許第6388827号(P6388827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388827
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20180903BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20180903BHJP
【FI】
   G01N23/04 340
   G01N23/18
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-252081(P2014-252081)
(22)【出願日】2014年12月12日
(65)【公開番号】特開2016-114418(P2016-114418A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永塚 一毅
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−131247(JP,A)
【文献】 特開2004−028686(JP,A)
【文献】 特開2011−061047(JP,A)
【文献】 特開2009−192384(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0132588(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射し、被検査物(W)を透過したX線を検出して得られた検査画像を用いて前記被検査物を検査するX線検査装置(1)において、
前記検査画像を表示する検査画像表示部(41B)および予め設定された複数の表示形態を切換える切換操作を行う表示形態切換操作部(41g)を有する表示器(41)と、
前記表示形態切換操作部の操作を受けて、前記検査画像表示部に前記複数の表示形態を表す縮小画像(61、62、63)を並べて表示する表示制御部(47)とを備えたことを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記表示形態切換操作部が操作されてから、所定の操作が行われるまで、または所定時間が経過するまで前記縮小画像を並べて表示することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記検査画像表示部および前記表示形態切換操作部がタッチパネルから構成され、前記タッチパネル上で選択された縮小画像が操作されると、前記検査画像表示部の画像が選択された前記縮小画像に切換えられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記被検査物の不良発生時の画像を含んだ少なくとも前記検査画像表示部の画像を、前記縮小画像として表示することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記被検査物の検査結果の統計値の画像を含んだ少なくとも前記検査画像表示部の画像を、前記縮小画像として表示することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記検査画像を含む表示形態の前記縮小画像について、前記縮小画像における前記検査画像表示部の領域に前記検査画像を合成して作成した前記縮小画像を前記検査画像表示部に表示することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記検査画像表示部に表示される前記被検査物の検査画像の位置を除いた領域に、前記縮小画像を表示することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記表示形態切換操作部に前記縮小画像の数を示す表示を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて被検査物を検査するX線検査装置に関し、特に、被検査物を搬送しながらX線の照射を行うX線検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線検査装置は、搬送路上を所定間隔で順次搬送されてくる各品種の被検査物(例えば、肉、魚、加工食品、医薬品等)にX線発生器からX線を照射し、被検査物を透過したX線の透過量をX線ラインセンサで検出することで、被検査物中の異物(金属、ガラス、石、骨等)や欠陥の有無を判別し、被検査物の良否判定を行っている。
【0003】
被検査物を搬送しながらX線の照射を行うこの種のX線検査装置において、作業者が設定入力部を操作することで異なる複数の表示形態(表示モード)を選択し、その表示形態で検査画像や検査結果を表示するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−28686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のX線検査装置は、設定入力部で複数の表示形態の中から所望の表示モードに切換える際に、その表示モードの切換え候補を一目で把握することができない。このため、作業者が所望する表示形態を容易に選択することができない。
【0006】
特に、食品や医薬品等の生産ラインに組み込まれて生産される製品の品質を検査するX線検査装置の分野では、画像処理技術の向上や検査アルゴリズムの高度化により検査項目や検査内容が多様化し、検査結果を表す情報も複雑化していることから、操作者や管理者が製品の検査状況を適切に把握するのに必要な情報量が飛躍的に増加してきている。
【0007】
一方で、X線検査装置の画面表示領域には限りがあるため、複数種類の表示形態を予め設定しておき、状況に応じて適切な表示形態を瞬時に選択できなければならないが、従来の技術では、表示の切換えの操作自体が直感的でなかったり、操作手順が複雑で操作時間がかかったりして実現できていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、表示形態の切換え候補を視覚的に容易に把握でき、作業者の所望する表示形態を容易かつ瞬時に選択できるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るX線検査装置は、X線を照射し、被検査物(W)を透過したX線を検出して得られた検査画像を用いて前記被検査物を検査するX線検査装置(1)において、前記検査画像を表示する検査画像表示部(41B)および予め設定された複数の表示形態を切換える切換操作を行う表示形態切換操作部(41g)を有する表示器(41)と、前記表示形態切換操作部の操作を受けて、前記検査画像表示部に前記複数の表示形態を表す縮小画像(61、62、63)を並べて表示する表示制御部(47)とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、表示形態切換操作部が操作されたことを受けて、検査画像表示部に複数の表示形態を表す縮小画像を並べて表示するので、表示形態の切換え候補を視覚的に把握でき、適切な表示形態を容易かつ瞬時に選択できる。
【0011】
また、検査画像表示部に複数の表示形態を表す縮小画像を並べて表示すれば、検査画像表示部に被検査物の検査画像が表示され続ける状態において、表示形態の切換え候補を視覚的に把握でき、被検査物の検査中であっても適切な表示形態を容易かつ瞬時に選択できる。
【0012】
また、本発明に係るX線検査装置において、前記表示制御部は、前記表示形態切換操作部が操作されてから、所定の操作が行われるまで、または所定時間が経過するまで前記縮小画像を並べて表示することを特徴とする。
【0013】
この構成により、表示形態切換操作部が操作されてから、所定の操作が行われるまで、または所定時間が経過するまで縮小画像を並べて表示するので、作業者は、検査画像表示部に現在、表示される表示形態が適切であると判断した場合に、縮小画像を消去することができる。このため、誤って縮小画像が操作されて検査画像表示部に現在、表示される表示形態が変更されてしまうことを防止できる。
【0014】
また、本発明に係るX線検査装置において、前記検査画像表示部および前記表示形態切換操作部がタッチパネルから構成され、前記タッチパネル上で選択された縮小画像が操作されると、前記検査画像表示部の画像が選択された前記縮小画像に切換えられることを特徴とする。
【0015】
この構成により、タッチパネル上で選択された縮小画像が操作されると、検査画像表示部の画像が選択された縮小画像に切換えられるので、検査画像表示部の全体画像を作業者が所望する表示形態に容易かつ瞬時に切換えることができる。
【0016】
また、本発明に係るX線検査装置において、前記表示制御部は、前記被検査物の不良発生時の画像を含んだ少なくとも前記検査画像表示部の画像を、前記縮小画像として表示することを特徴とする。
【0017】
この構成により、作業者は、検査画像表示部に表示される縮小画面を視認して、被検査物の不良発生時の表示形態を認識することができ、必要に応じて被検査物の不良発生時の表示形態を選択できる。
【0018】
また、本発明に係るX線検査装置において、前記表示制御部は、前記被検査物の検査結果の統計値の画像を含んだ少なくとも前記検査画像表示部の画像を、前記縮小画像として表示することを特徴とする。
【0019】
この構成により、作業者は、検査画像表示部に表示される縮小画面を視認して、被検査物の検査結果の統計値を認識することができ、必要に応じて被検査物の検査結果の統計値の表示形態を選択できる。
【0020】
また、本発明に係るX線検査装置において、前記表示制御部は、前記検査画像を含む表示形態の前記縮小画像について、前記縮小画像における前記検査画像表示部の領域に前記検査画像を合成して作成した前記縮小画像を前記検査画像表示部に表示することを特徴とする。
【0021】
この構成により、検査画像表示部に被検査物の検査画像が表示され続ける状態において、表示形態の切換え候補を視覚的に把握でき、被検査物の検査中において適切な表示形態を容易かつ瞬時に選択できる。
【0022】
また、検査画像表示部の検査画像を所定のタイミングで更新することが可能となる。例えば、不良発生時の画像を含む表示形態の場合には、不良発生のタイミングで検査画像の更新を行ったり、通常の検査画像の表示の場合には、検査のタイミングで更新を行うことが可能となる。
【0023】
また、本発明に係るX線検査装置において、前記表示制御部は、前記検査画像表示部に表示される前記被検査物の検査画像の位置を除いた領域に、前記縮小画像を表示することを特徴とする。
【0024】
この構成により、検査画像表示部において検査画像と縮小画像とが重なることを防止でき、検査画像と縮小画像とを明確に区別して検査画像と縮小画像とを容易かつ瞬時に視認できる。
【0025】
また、本発明に係るX線検査装置において、前記表示制御部は、前記表示形態切換操作部に前記縮小画像の数を示す表示を行うことを特徴とする。
この構成により、表示形態切換操作部に、前記縮小画像の数を示す表示がなされるので、作業者は、縮小画像が表示されていない場合でも検査画像表示部に切換表示可能な表示形態の数を容易かつ瞬時に把握できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、表示形態の切換え候補を視覚的に容易に把握でき、作業者の所望する表示形態を容易かつ瞬時に選択できるX線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の側面および内部構成を示す図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の表示器の構成図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の縮小画像の表示例を示す図である。
図5】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の制御部が実行する表示制御プログラムのフローチャートである。
図6】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の被検査物の検査結果を示す画像の表示例である。
図7】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の現在の検査画面から射影表示画面に切換えられた表示例である。
図8】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の現在の検査画面から統計データ画面に切換えられた表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
まず、構成を説明する。
図1において、X線検査装置1は、搬送部2と検査部3とを筐体4の内部に備えており、表示器41を筐体4の前面上部に備えている。
【0029】
搬送部2は、本発明の被検査物を構成する被検査物Wを、所定間隔をおいて順次搬送するものであり、搬送部2は、例えば、筐体4の内部で水平に配置されたベルトコンベアにより構成されている。
【0030】
搬送部2は、図1に示す駆動モータ6の駆動により予め設定された搬送速度で搬入口7から搬入された被検査物Wを、搬出口8側(図1中、X方向)に向けて搬送面としてのベルト面2a上を搬送させる。筐体4の内部において、ベルト面2a上を搬入口7から搬出口8まで貫通する空間は、搬送路21を形成する。
【0031】
検査部3は、順次搬送される被検査物Wに対し、搬送路21の途中の検査空間22においてX線を照射するとともに被検査物Wを透過するX線を検出するものであり、搬送路21の途中の検査空間22の上方に所定高さで離隔して配置されたX線発生器9と、搬送部2内にX線発生器9と対向して配置されたX線検出器10とを備えている。
【0032】
X線発生器9は、金属製の箱体11の内部に設けられた円筒状のX線管12を図示しない絶縁油に浸漬した構成を有しており、X線管12の陰極からの電子ビームを陽極のターゲットに照射させてX線を生成している。
【0033】
X線管12は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向(X方向)となるよう配置されている。X線管12により生成されたX線は、下方のX線検出器10に向けて、図示しないスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向(X方向)を横切るように照射される。
【0034】
図2に示すように、X線発生器9から照射されるX線は、下方のX線検出器10に到達するようになっており、X線検出器10は、X線を検出するためのX線ラインセンサ51を備えている。X線ラインセンサ51は、図示しないシンチレータおよびフォトダイオードアレイを備えており、X線をシンチレータで光に変換し、この光をフォトダイオードアレイで電気信号に変換してX線透過データを出力する。
【0035】
搬送路21内の天井部21aには、搬送方向(X方向)に沿って複数個所にX線遮蔽用の遮蔽カーテン16が吊り下げ配置されている。遮蔽カーテン16は、X線を遮蔽する鉛粉を混入したゴムシートをのれん状(上部が繋がっており下部が帯状に分割された状態)に加工したものから構成されており、遮蔽カーテン16は、検査空間22から搬送路21を介してX線が筐体4の外部に漏洩することを防止する。
【0036】
遮蔽カーテン16は、本実施の形態では、搬入口7と検査空間22との間、および検査空間22と搬出口8との間にそれぞれ2枚ずつ設けられており、1つの遮蔽カーテン16が被検査物Wと接触して弾性変形して隙間が生じた場合でも、他の遮蔽カーテン16がX線を遮蔽するので、漏洩基準量を超えることなくX線の漏洩を防止できる。本実施の形態のX線検査装置1は、搬送路21における遮蔽カーテン16により囲まれた内側の空間が検査空間22を構成している。
【0037】
X線検査装置1は、X線検出器10からのX線透過データが画像化されたX線画像として入力されるとともに被検査物W中の異物や欠陥の有無を検査する制御回路40と、制御回路40による検査結果等を表示出力する表示部および制御回路40への各種パラメータ等の設定入力を行う操作部が一体的に設けられた表示器41とを備えている。ここで、本実施の形態の表示器41は、本発明の表示器を構成する。
【0038】
図3において、表示器41は、検査情報表示・設定部41A、検査画像表示部41B、動作状態表示部41Cおよび操作部41Dを備えており、検査情報表示・設定部41Aおよび検査画像表示部41Bは、後述する縮小画像が表示される縮小画像表示領域41Pとなる。
【0039】
検査情報表示・設定部41Aは、例えば、図示しない品種番号表示部、検査結果表示部、検査内容表示部、検出リミット値表示部、スタートボタンおよびストップボタンを備えている。
【0040】
品種番号表示部は、被検査物Wの品種(例えば、肉、魚、加工食品、医薬品)に応じて番号を設定するとともに、設定された品種に応じた番号を表示する。検査結果表示部は、被検査物Wの良否判定結果を「OK」や「NG」等の文字または記号で表示する。
【0041】
検査内容表示部は、被検査物Wの検査総数と検査総数に対する良品の総数と不良品の総数とを表示する。検出リミット値表示部において、被検査物Wの品種や検出対象となる異物の種類等に応じて異なる複数の値(閾値)の設定が可能となっており、検出リミット値表示部が操作されることで、検出リミット値が適宜設定され、検出リミット値表示部には設定された検出リミット値が表示される。
【0042】
スタートボタンは、X線検査装置1の運転の開始を指示するときに操作され、ストップボタンは、X線検査装置1の運転の停止を指示するときに操作される。
【0043】
検査画像表示部41Bは、被検査物Wの検査画像(図6に示す検査画像)に関する情報を表示する。
動作状態表示部41Cは、例えば、図示しない動作状態表示部およびX線検査状態表示部を備えている。
【0044】
動作状態表示部は、X線の照射中であるか否か、および搬送部2が動作中であるか否かを点灯および消灯によって表示する。X線検査状態表示部は、X線の照射により被検査物Wを検査中であるか否かを表示する。
【0045】
操作部41Dは、表示モード切換ボタン41gを備えており、表示モード切換ボタン41gは、検査画像表示部41Bに表示される表示形態(表示モード)を選択するときに操作される。本実施の形態の表示モード切換ボタン41gは、本発明の表示形態切換操作部を構成する。なお、表示モード切換ボタン41gの詳細については、後述する。
【0046】
本実施の形態の検査画像表示部41Bは、表示器41の全体の領域に対して2/3程度の表示領域を占めており、本発明の検査画像表示部を構成する。
表示器41において、検査情報表示・設定部41Aは、検査画像表示部41Bに対して図3中、右側の領域に設けられている。
【0047】
表示器41において、動作状態表示部41Cは、検査画像表示部41Bの上方に設けられており、操作部41Dは、検査画像表示部41Bの下方に設けられている。
図2において、制御回路40は、X線画像記憶部42、画像処理部43、判定部44、制御部46、表示制御部47および表示画面記憶部48を備えている。
【0048】
X線画像記憶部42は、X線検出器10から受け取ったX線透過データからなるX線画像を一時的に記憶する。画像処理部43は、X線画像記憶部42から読み出したデータに対してフィルタや特徴抽出するための画像処理を施す。
【0049】
判定部44は、画像処理部43によって画像処理が施されたX線透過データと、検査情報表示・設定部41Aの検出リミット値表示部により予め設定された検出リミット値とを比較し、この比較結果に基づいて被検査物Wの異物混入の有無や欠陥の有無等を判別している。
そして、判定部44は、例えば、画像処理が施されるX線透過データが検出リミット値を超えたときに、その被検査物Wに異物が混入している、すなわち、不良品であると判断する。
【0050】
表示制御部47は、表示器41の操作に従って、表示器41に表示する表示データを作成し、表示器41に表示するように制御する。
例えば、通常の検査画面を表示器41に表示する場合には、判定部44の判定結果および画像処理部43で作成される画像データに基づき、現在行われている被検査物Wの良否結果の画像が検査画像表示部41Bに表示されるように表示器41を制御するとともに、被検査物Wの検査毎に、被検査物Wの総検査数、良品数、NG総数等の検査結果を更新し、更新された総検査数、良品数、NG総数等の検査結果がそれぞれ検査画像表示部41Bに表示されるように表示器41を制御する。
【0051】
また、表示制御部47は、検査画像表示部41Bの検査画像を所定のタイミングで更新する。例えば、不良発生時の画像を含む表示形態の場合には、不良発生のタイミングで検査画像の更新を行ったり、通常の検査画像の表示の場合には、検査のタイミングで更新を行う。
【0052】
また、表示制御部47は、表示モード切換ボタン41gの操作があったときに、複数の表示形態の縮小画像を生成し、検査画像表示部41Bに複数の表示形態を表す縮小画像を並べて表示するように表示器41を制御する。
【0053】
この表示形態に構成する縮小画像は、例えば、図4に示すように、被検査物Wの検査を行うための検査画面61、過去の被検査物WのNG画像を含み、射影波形が表示される射影表示画面62、あるいは、被検査物Wの検査結果の統計データを表す統計データ画面63である。図4に示すように、表示制御部47は、検査画面61、射影表示画面62および統計データ画面63をバルーン表示する。
【0054】
また、表示制御部47は、統計や射影表示を表示器41に表示する場合には、被検査物Wの検査結果の統計データ(本発明の統計値に対応)、過去の被検査物Wの良否結果の画像等が検査画像表示部41Bに表示されるように表示器41を制御する。
【0055】
また、表示画面記憶部48は、複数の表示形態の縮小画像である検査画面61、射影表示画面62および統計データ画面63の画像データを記憶する。なお、記憶する画面の画像は、縮小画像であってもよいし、縮小前の画面サイズの画像であってもよい。
【0056】
表示制御部47は、作業者によって表示モード切換ボタン41gが操作されたときに、表示画面記憶部48から検査画面61、射影表示画面62および統計データ画面63のうちで、検査画像表示部41Bに現在表示されていない画像を読み出し、検査画像表示部41Bに並べて表示する。
【0057】
検査画面61は、被検査物Wの検査時の画像を含んだ画像であり、本実施の形態の検査画面61は、検査情報表示・設定部41Aおよび検査画像表示部41Bを含んだ縮小画像表示領域41Pから構成される。なお、この検査画面61は、表示器41の全体の画像を含んだものであってもよいし、検査画像表示部41Bのみを含んだ画像であってもよい。
また、被検査物Wの検査を行う前において、検査画像表示部41Bに初期画面が表示されるようにしてもよい。
【0058】
射影表示画面62は、不良発生時の検査画像とその検査画像の搬送方向と直交する方向の濃淡レベルの各ピーク値を搬送方向に沿って描画した2次元断面波形画像である射影画像Wsとを搬送方向が一致するように並べて配置した画像が、検査画像表示部41Bに表示された縮小画面である。
【0059】
すなわち、射影表示画面62は、被検査物Wの不良発生時の画像を含んだ画像であり、本実施の形態の射影表示画面62は、検査情報表示・設定部41Aおよび検査画像表示部41Bを含んだ縮小画像表示領域41Pから構成される。なお、この射影表示画面62は、表示器41の全体の画像を含んだものであってもよいし、検査画像表示部41Bのみを含んだ画像であってもよい。
【0060】
また、統計データ画面63は、統計データが検査画像表示部41Bに表示された縮小画像表示領域41Pから構成される縮小画面である。なお、本実施の形態の統計データ画面63は、表示器41の全体の画像を含んだものであってもよいし、検査画像表示部41Bのみを含んだ画像であってもよい。
【0061】
ここで、統計データとしては、例えば、縦軸に被検査物Wの数、横軸に異物の大きさを示したヒストグラムである。なお、統計データは、これに限定されるものでなく、被検査物Wの検査結果に関する統計データであれば、どのような統計データでもよく、あるいはリミット値を最適なものにするためにリミット値の統計データであってもよい。
【0062】
また、表示制御部47は、表示モード切換ボタン41gが操作されてから、所定の操作として表示モード切換ボタン41gが操作されるまでの間、または、所定時間経過するまでの間に、検査画像表示部41Bに検査画面61、射影表示画面62および統計データ画面63のいずれかを並べて表示する。
【0063】
表示制御部47は、検査画像表示部41Bに検査画面61、射影表示画面62および統計データ画面63のいずれかが並べて表示されている間に、作業者によって検査画像表示部41Bに検査画面61、射影表示画面62および統計データ画面63のいずれかが押下された場合に、押下された画面を拡大して検査画像表示部41Bの全面に表示する。
【0064】
また、表示制御部47は、被検査物Wの検査中において、表示モード切換ボタン41gが操作されると、検査画像表示部41Bに表示される被検査物Wの検査画像に射影表示画面62および統計データ画面63を合成して検査画像表示部41Bに並べて表示する。
【0065】
被検査物Wの検査中においては、搬入口7から搬出口8までベルト面2a上で搬送される複数の被検査物Wは、搬送方向であるX方向に対して直交するY方向にずれて搬送されることがある。
【0066】
本実施の形態の表示制御部47は、被検査物Wの検査中において、X線画像記憶部42に記憶されたX線画像の位置情報に基づいてベルト面2a上の被検査物Wの位置を把握し、この被検査物Wの位置に応じた検査画像表示部41Bに被検査物Wの検査画像64を表示する(図6参照)。
【0067】
そして、表示制御部47は、表示モード切換ボタン41gが操作されたときに、検査画像表示部41Bに表示される被検査物Wの検査画像64の位置を除いた領域に、射影表示画面62および統計データ画面63を並べて表示する。
【0068】
また、表示制御部47は、表示モード切換ボタン41g上に縮小画像の数を示す表示を行う。本実施の形態においては、3つの縮小画像を用いた例を示しているが、検査画像表示部41Bの全面に3つの縮小画像のうちの1つが表示されている場合には、2つの縮小画像が検査画像表示部41Bに並べて表示されることになる。
【0069】
このため、表示モード切換ボタン41g上に表示される縮小画像の候補の数は、「3」である。また、表示モード切換ボタン41g上には現在、検査画像表示部41Bに表示される縮小画像に対応する番号が白抜きされた画像が表示される。
なお、本実施の形態の縮小画像は、検査画面61、射影表示画面62および統計データ画面63を例にしているが、縮小画像の種類は、これに限定されるものではなく、縮小画像の数もこれに限定されるものではない。また、現在、検査画像表示部41Bに表示されている画面を含まない表示候補の数(検査画像表示部41Bに表示される縮小画像の数)を表示モード切換ボタン41gに表示するようにしてもよい。
【0070】
次に、図5のフローチャートおよび図6図8の画像表示例に基づいて作用を説明する。
なお、図5のフローチャートは、制御部46によって実行される表示制御プログラムであり、被検査物Wの検査中に実行される。
【0071】
被検査物Wの検査中においては、図6に示すように、表示制御部47は、被検査物Wの検査結果を示す画像を検査画像表示部41Bに表示する。ここでは、被検査物WとしてパッケージPに4つの内容物N1〜N4が収容されたものを例にしている。
【0072】
図5においては、制御部46は、表示モード切換ボタン41gが操作されたか否かを判別し(ステップS1)、表示モード切換ボタン41gか操作されていないと判断した場合には、今回の処理を終了する。
【0073】
ステップS1において、制御部46は、表示モード切換ボタン41gが操作されたと判断した場合には、射影表示画面62および統計データ画面63に関する画像情報を表示画面記憶部48から読み出し、表示制御部47に出力する。
【0074】
このとき、図6に示すように、表示制御部47は、検査画像表示部41Bに表示される被検査物Wの検査画像64の位置を除いた領域に、射影表示画面62および統計データ画面63を並べて表示する(ステップS2)。
【0075】
ここでは、被検査物WがY方向の中央に位置してX方向に搬送されるので、射影表示画面62および統計データ画面63は、被検査物Wに対して下方に位置するようにして、検査画像表示部41Bに表示される。
【0076】
また、被検査物WがY方向の下方に位置してX方向に搬送される場合には、射影表示画面62および統計データ画面63は、被検査物Wに対して上方に位置するようにして、検査画像表示部41Bに表示される。
【0077】
次いで、制御部46は、射影表示画面62および統計データ画面63の一方が選択されて操作されたか否か判別する(ステップS3)。ステップS3において、射影表示画面62および統計データ画面63のいずれも選択されない場合には、制御部46は、所定時間が経過後または表示モード切換ボタン41gが操作されたタイミングで表示制御部47に消去の指示を行う。
このとき、表示制御部47は、検査画像表示部41B上から射影表示画面62および統計データ画面63を消去する(ステップS6)。
【0078】
ステップS3において、制御部46は、射影表示画面62および統計データ画面63のいずれか一方が選択されて操作された場合には、選択された射影表示画面62または統計データ画面63に対応する画面を生成して(ステップS4)、検査画像表示部41Bの全面を選択された画面に切換える(ステップS5)。
【0079】
ここで、生成された実際の画面は、表示画面記憶部48に記憶され、表示制御部47は、射影表示画面62または統計データ画面63が選択された場合には、選択された射影表示画面62または統計データ画面63に対応して生成された画面を表示する。
【0080】
なお、本実施の形態において、実際の画面を表示画面記憶部48に記憶させて、表示画面記憶部48から縮小画像を表示するように説明したが、射影表示画面62または統計データ画面63の各画面の表示形態を表す模擬画面であってもよい。
【0081】
この場合に表示制御部47は、選択に応じて模擬画面に最新の不良発生時の画像データを合成して射影表示画面62を形成してもよく、模擬画面に統計データを合成して統計データ画面63を形成してもよい。
【0082】
図7は、検査画像表示部41Bにおいて、現在の検査画面から射影表示画面65に切換えられた状態を示している。
図7に示すように、表示器41には検査情報表示・設定部41Aに被検査物Wの検査総数と検査総数に対する良品の総数と不良品の総数とが表示されている。また、被検査物Wにおいては、内容物N2、N3に異物71が混入されている状態が表示されている。
【0083】
また、被検査物Wの下方において、被検査物Wの検査画像の搬送方向と直交する方向の濃淡レベルの各ピーク値が搬送方向に沿って描画された2次元断面波形画像である射影画像Wsが表示されている。
【0084】
図8は、検査画像表示部41Bにおいて、現在の検査画面から統計データ画面66に切換えられた状態を示している。図8に示すように、表示器41には縦軸に被検査物Wの数、横軸に異物の大きさを示したヒストグラムが表示される。
【0085】
また、検査画像表示部41Bに射影表示画面62および統計データ画面63のいずれか一方の画面が切換え表示される場合には、表示モード切換ボタン41gが操作されると、検査画像表示部41Bに縮小された射影表示画面62および統計データ画面63の他方の縮小画像と縮小された検査画面61が並べて表示される。
図7では、表示モード切換ボタン41gに、縮小画像候補の数および検査画像表示部41Bに表示される射影表示画面62に対応する番号が白抜きされた画像が表示され、図8では、表示モード切換ボタン41gに、縮小画像候補の数および検査画像表示部41Bに表示される統計データ画面63に対応する番号が白抜きされた画像が表示される。
【0086】
このように本実施の形態のX線検査装置1によれば、表示制御部47が、表示モード切換ボタン41gの操作を受けて、検査画像表示部41Bに複数の表示形態を表す検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63を並べて表示する。
これにより、表示形態の切換え候補を視覚的に把握でき、適切な表示形態を容易かつ瞬時に選択できる。
【0087】
また、検査画像表示部41Bに複数の表示形態を表す検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63を並べて表示すれば、検査画像表示部41Bに被検査物Wの検査画像64が表示され続ける状態において、表示形態の切換え候補を視覚的に把握でき、被検査物Wの検査中であっても適切な表示形態を容易かつ瞬時に選択できる。
【0088】
また、本実施の形態のX線検査装置1によれば、表示制御部47は、表示モード切換ボタン41gが操作されてから、所定の操作が行われるまで、または所定時間が経過するまで検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63を並べて表示する。
【0089】
この構成により、作業者は、検査画像表示部41Bに現在、表示される表示形態が適切であると判断した場合に、検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63を消去することができる。このため、誤って検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63が操作されて検査画像表示部41Bに現在、表示される表示形態が変更されてしまうことを防止できる。
【0090】
また、本実施の形態のX線検査装置1によれば、検査画像表示部41Bおよび表示モード切換ボタン41gがタッチパネルから構成され、タッチパネル上で検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63が選択されて操作(押圧)されると、検査画像表示部41Bの画像が選択された検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63に切換えられる。
この構成により、検査画像表示部41Bの全体画像を作業者が所望する表示形態に容易に切換えることができる。
【0091】
また、本実施の形態のX線検査装置1によれば、表示制御部47は、被検査物Wの不良発生時の画像を含んだ検査情報表示・設定部41Aおよび検査画像表示部41Bからなる縮小画像表示領域41Pの画像を、射影表示画面62として表示する。
【0092】
この構成により、作業者は、縮小画像表示領域41Pに表示される縮小画面を視認して、被検査物Wの不良発生時の表示形態を認識することができ、必要に応じて被検査物Wの不良発生時の表示形態を選択できる。
【0093】
また、本実施の形態のX線検査装置1によれば、表示制御部47は、被検査物Wの検査結果の統計値を含んだ検査情報表示・設定部41Aおよび検査画像表示部41Bからなる縮小画像表示領域41Pの画像を、統計データ画面63として表示する。
【0094】
この構成により、作業者は、縮小画像表示領域41Pに表示される縮小画面を視認して、被検査物Wの検査結果の統計値を認識することができ、必要に応じて被検査物Wの検査結果の統計値の表示形態を選択できる。
【0095】
また、本実施の形態のX線検査装置1によれば、表示制御部47は、検査画像を含む検査画面61について、検査画面61における検査画像表示部41Bの領域に検査画像を合成して作成した検査画面61を検査画像表示部41Bに表示する。
【0096】
この構成により、検査画像表示部41Bに被検査物Wの検査画像64が表示され続ける状態において、表示形態の切換え候補を視覚的に把握でき、被検査物Wの検査中において適切な表示形態を容易かつ瞬時に選択できる。
【0097】
また、本実施の形態のX線検査装置1によれば、表示制御部47は、検査画像表示部41Bに表示される被検査物Wの検査画像64の位置を除いた領域に、射影表示画面62および統計データ画面63を表示する。
【0098】
この構成により、検査画像表示部41Bにおいて検査画像64と射影表示画面62および統計データ画面63とが重なることを防止でき、検査画像64と射影表示画面62および統計データ画面63とを明確に区別して検査画像64と射影表示画面62および統計データ画面63とを容易に視認できる。
【0099】
また、本実施の形態のX線検査装置1によれば、表示制御部47は、表示モード切換ボタン41gに検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63の数を示す表示を行う。
【0100】
この構成により、表示モード切換ボタン41gに検査画面61、射影表示画面62または統計データ画面63の数が表示されるので、作業者は、縮小画像が表示されていない場合でも検査画像表示部41Bに切換表示可能な表示形態の数を容易に把握できる。
【0101】
なお、本実施の形態の表示器41は、タッチパネル式の平面ディスプレイから構成されているが、タッチパネルに限定されるものではない。また、本実施の形態の表示器41は、制御回路40による検査結果等を表示出力する表示部および制御回路40への各種パラメータ等の設定入力を行う操作部が一体的に設けられているが、表示部および操作部が別体に設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上のように、本発明に係るX線検査装置は、表示形態の切換え候補を視覚的に容易に把握でき、作業者の所望する表示形態を容易かつ瞬時に選択できるX線検査装置を提供することができるという効果を有し、被検査物を搬送しながらX線の照射を行うX線検査装置として有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 X線検査装置
41 表示器(表示器)
41g 表示モード切換ボタン(表示形態切換操作部)
47 表示制御部
61 検査画面(縮小画像)
62 射影表示画面(縮小画像)
63 統計データ画面(縮小画像)
W 被検査物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8