特許第6388841号(P6388841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6388841反射型マスクブランク、反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスク及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388841
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスク及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20180903BHJP
【FI】
   G03F1/24
【請求項の数】20
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2015-52132(P2015-52132)
(22)【出願日】2015年3月16日
(62)【分割の表示】特願2015-504434(P2015-504434)の分割
【原出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-133514(P2015-133514A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2017年7月13日
(31)【優先権主張番号】特願2013-179123(P2013-179123)
(32)【優先日】2013年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】浜本 和宏
(72)【発明者】
【氏名】淺川 竜男
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/084978(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/105508(WO,A1)
【文献】 特開2008−094649(JP,A)
【文献】 特開2006−093454(JP,A)
【文献】 特表2003−515794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00〜1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクブランク用基板の主表面の上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜及び吸収体膜を含むマスクブランク用多層膜を有する反射型マスクブランクであって、
前記マスクブランク用多層膜が形成されている前記反射型マスクブランク表面における3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度の積分値が800×10−3nm以下であることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記パワースペクトル密度の積分値は、650×10−3nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記マスクブランク用多層膜が、前記多層反射膜の表面のうち、マスクブランク用基板とは反対側の表面に接して配置される保護膜を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記マスクブランク用多層膜が、前記吸収体膜の表面のうち、マスクブランク用基板とは反対側の表面に接して配置されるエッチングマスク膜を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記吸収体膜は、タンタルと窒素とを含有し、窒素の含有量が10原子%以上50原子%以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記吸収体膜の膜厚は60nm以下であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記吸収体膜は、該吸収体膜表面からの反射光と、前記吸収体膜が形成されていない前記多層反射膜又は前記保護膜表面からの反射光との位相差が所定の位相差を有する位相シフト機能を有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
マスクブランク用基板の主表面の上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜及び吸収体膜を含むマスクブランク用多層膜を有する反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記マスクブランク用基板の主表面の上に、前記多層反射膜を形成する工程と、
前記多層反射膜の上に、前記吸収体膜を形成する工程とを含み、
前記反射型マスクブランクの表面が、3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度の積分値が800×10−3nm以下となるように、前記吸収体膜を形成することを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項9】
前記パワースペクトル密度の積分値は、650×10−3nm以下であることを特徴とする請求項8に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項10】
前記多層反射膜を形成する工程において、前記多層反射膜は、高屈折率材料のスパッタリングターゲット及び低屈折率材料のスパッタリングターゲットにイオンビームを交互に照射して、イオンビームスパッタリング法により形成されることを特徴とする請求項8又は9に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項11】
前記吸収体膜を形成する工程において、前記吸収体膜は、吸収体膜材料のスパッタリングターゲットを用いる反応性スパッタリング法により形成され、反応性スパッタリングの際の雰囲気ガスに含まれる成分が含有されるように前記吸収体膜が形成され、前記二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、前記パワースペクトル密度の積分値が800×10−3nm以下となるように、雰囲気ガスの流量を制御することを特徴とする請求項8乃至10の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項12】
前記雰囲気ガスは、不活性ガスと、窒素ガスとを含有する混合ガスであることを特徴とする請求項11に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項13】
前記吸収体膜は、タンタルを含む材料のスパッタリングターゲットを用いて形成されることを特徴とする請求項8乃至12の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項14】
前記吸収体膜を形成する工程において、前記吸収体膜は、吸収体膜材料のスパッタリングターゲットを用いるスパッタリング法により形成され、前記吸収体膜表面が、前記二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ前記パワースペクトル密度の積分値が800×10−3nm以下となるように、前記吸収体膜の材料と膜厚を選定することを特徴とする請求項8乃至10の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項15】
前記吸収体膜の材料が窒素を含む材料とし、前記吸収体膜の膜厚が60nm以下とすることを特徴とする請求項14記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項16】
前記多層反射膜の表面に接して配置される保護膜を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項8乃至15の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項17】
前記保護膜は、保護膜材料のスパッタリングターゲットにイオンビームを照射する、イオンビームスパッタリング法により形成されることを特徴とする請求項16に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項18】
前記吸収体膜の表面に接して配置されるエッチングマスク膜を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項8乃至17の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項19】
請求項1乃至7の何れかに記載の反射型マスクブランク、又は請求項8乃至18の何れかに記載の製造方法により得られた反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングした吸収体パターンを、前記多層反射膜の上に有することを特徴とする反射型マスク。
【請求項20】
請求項19に記載の反射型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能な反射型マスクブランク、反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスク及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業において、半導体デバイスの高集積化に伴い、従来の紫外光を用いたフォトリソグラフィ法の転写限界を上回る微細パターンが必要とされてきている。このような微細パターン形成を可能とするため、極紫外(Extreme Ultra Violet:以下、「EUV」と呼ぶ。)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィーが有望視されている。ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。このEUVリソグラフィーにおいて用いられる転写用マスクとして反射型マスクが提案されている。このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。
【0003】
当該反射型マスクは、基板と、当該基板上に形成された多層反射膜と、当該多層反射膜上に形成された吸収体膜とを有する反射型マスクブランクから、フォトリソグラフィ法等により吸収体パターンを形成することによって製造される。
【0004】
以上のように、リソグラフィー工程での微細化に対する要求が高まることにより、そのリソグラフィー工程での課題が顕著になりつつある。その1つが、リソグラフィー工程で用いられるマスクブランク用基板や多層反射膜付き基板、反射型マスクブランク等の欠陥情報に関する問題である。
【0005】
マスクブランク用基板は、近年のパターンの微細化に伴う欠陥品質の向上や、転写用マスクに求められる光学的特性の観点から、より平滑性の高い基板が要求されている。
【0006】
また、多層反射膜付き基板も、近年のパターンの微細化に伴う欠陥品質の向上や、転写用マスクに求められる光学的特性の観点から、より高い平滑性を有することが要求されている。多層反射膜は、マスクブランク用基板の表面上に高屈折率層及び低屈折率層を交互に積層することで形成される。これらの各層は、一般にそれらの層の形成材料からなるスパッタリングターゲットを使用したスパッタリングにより形成されている。
【0007】
スパッタリングの手法としては、放電でプラズマを作る必要がなく、多層反射膜中に不純物が混ざりにくい点や、イオン源が独立していて、条件設定が比較的容易等の点からイオンビームスパッタリングが好ましく実施されている。また、形成される各層の平滑性や面均一性の観点から、マスクブランク用基板主表面の法線(前記主表面に直交する直線)に対して大きな角度で、すなわち基板主表面に対してななめ若しくは平行に近い角度でスパッタ粒子を到達させて、高屈折率層及び低屈折率層を成膜している。
【0008】
このような方法で多層反射膜付き基板を製造する技術として、特許文献1には、基板上にEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの多層反射膜を成膜するに際し、基板をその中心軸を中心に回転させつつ、基板の法線と基板に入射するスパッタ粒子とがなす角度αの絶対値を35度≦α≦80度に保持してイオンビームスパッタリングを実施することが記載されている。
【0009】
また、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクとして、特許文献2には、EUV光を吸収する吸収体層が、Ta、B、Si、Nを含有し、Bの含有率が1at%以上5at%未満、Siの含有率が1〜25at%であり、TaとNとの組成比(Ta:N)が8:1〜1:1であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2009−510711号公報
【特許文献2】特開2007−311758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
EUV(Extreme Ultra-Violet)を使用したリソグラフィーにおける急速なパターンの微細化に伴い、反射型マスクであるEUVマスクの欠陥サイズ(Defect Size)も年々微細になり、このような微細欠陥を発見するために、欠陥検査で使用する検査光源波長は露光光の光源波長に近づきつつある。
【0012】
例えば、EUVマスクや、その原版であるEUVマスクブランク、多層反射膜付き基板、及びサブストレートの欠陥検査装置としては、検査光源波長が266nm(例えば、レーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M7360」、193nm(KLA−Tencor社製のEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron600シリーズ」、例えば「Teron610」)、13.5nmとする高感度欠陥検査装置が普及、又は提案されている。
【0013】
また、従来のEUVマスクに用いられる多層反射膜付き基板の多層反射膜は、例えば特許文献1に記載の方法で成膜することにより、基板上に存在する凹欠陥を低減する試みがなされている。しかし、いくら基板の凹欠陥起因の欠陥を低減できたとしても、上述した高感度欠陥検査装置の検出感度が高いため、多層反射膜の欠陥検査を行うと欠陥検出個数(欠陥検出個数=致命欠陥個数+疑似欠陥個数)が多く検出されるという問題が生じている。
【0014】
また、従来のEUVマスクに用いられる反射型マスクブランクの吸収体層(吸収体膜)は、例えば特許文献2に記載されているような組成比とすることで、吸収体層の成膜上の問題や、EUV光や検査光の反射率の問題の解決を図っている。そして、吸収体層表面の表面粗さも、パターンの寸法精度悪化防止の観点から平滑化が良いとされている。しかし、いくら吸収体層の成膜上の問題を解決できたとしても、上述した検出感度が高い高感度欠陥検査装置を用いて、吸収体層の欠陥検査を行うと、欠陥検出個数が多く検出されるという問題が生じている。
【0015】
ここでいう疑似欠陥とは、パターン転写に影響しない基板表面上や多層反射膜上、吸収体層上の許容される凹凸であって、高感度欠陥検査装置で検査した場合に、欠陥と誤判定されてしまうものをいう。欠陥検査において、このような疑似欠陥が多数検出されると、パターン転写に影響のある致命欠陥が多数の疑似欠陥に埋もれてしまい、致命欠陥を発見することができなくなる。例えば、現在普及しつつある検査光源波長が266nm、193nmとする欠陥検査装置では、例えば132mm×132mmのサイズの基板、多層反射膜付き基板及び反射型マスクブランクにおいて、欠陥検出個数が50,000個を超えてしまい、致命欠陥の有無を検査するのに支障をきたす。欠陥検査における致命欠陥の看過は、その後の半導体装置の量産過程において不良を引き起こし、無用な労力と経済的な損失をまねくことになる。
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能な反射型マスクブランク及びその製造方法、並びに反射型マスク及びその反射型マスクを使用した半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
【0017】
また、本発明は、種々の波長の光を使用した高感度欠陥検査装置においても疑似欠陥を含む欠陥検出個数が少なく、特に反射型マスクブランクに要求される平滑性が達成され、同時に疑似欠陥を含む欠陥検出個数が少ないために致命欠陥を確実に検出することができる反射型マスクブランク及びその製造方法、並びに反射型マスク及びその反射型マスクを使用した半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記問題点を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、高感度欠陥検査装置の検査光源波長に対し、所定の空間周波数(又は空間波長)成分の粗さが影響を与えることを見出した。そこで、基板主表面に形成された膜(例えば、吸収体膜)の表面上の粗さ(凹凸)成分のうち、高感度欠陥検査装置が疑似欠陥と誤判定してしまう粗さ成分の空間周波数を特定し、該空間周波数における振幅強度を管理することで、欠陥検査における疑似欠陥検出の抑制と、致命欠陥の顕著化とを図ることができる。
【0019】
また、反射型マスクブランクにおいては、従来、その表面粗さを低減する試みはなされていたが、高感度欠陥検査装置による疑似欠陥の検出との関連については、全く知られていなかった。
【0020】
そこで、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0021】
本発明は、下記の構成1〜6であることを特徴とする反射型マスクブランク、下記の構成7〜16であることを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法、下記の構成17であることを特徴とする反射型マスク、及び下記の構成18であることを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0022】
(構成1)
本発明の構成1は、マスクブランク用基板の主表面の上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜及び吸収体膜を含むマスクブランク用多層膜を有する反射型マスクブランクであって、前記マスクブランク用多層膜が形成されている前記反射型マスクブランク表面における3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が50nm以下であることを特徴とする反射型マスクブランクである。
【0023】
構成1によれば、反射型マスクブランクの表面において、二乗平均平方根粗さ(Rms)を0.5nm以下とし、3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度を50nm以下にすることにより、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0024】
(構成2)
本発明の構成2は、前記マスクブランク用多層膜が、前記多層反射膜の表面のうち、マスクブランク用基板とは反対側の表面に接して配置される保護膜を更に含むことを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランクである。
【0025】
構成2によれば、反射型マスクブランクが多層反射膜上に保護膜を有することにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が更に良好となる。また、反射型マスクブランクにおいて、高感度欠陥検査装置を使用しての保護膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0026】
(構成3)
本発明の構成3は、前記マスクブランク用多層膜が、前記吸収体膜の表面のうち、マスクブランク用基板とは反対側の表面に接して配置されるエッチングマスク膜を更に含むことを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランクである。
【0027】
構成3によれば、吸収体膜とはドライエッチング特性が異なるエッチングマスク膜を用いることにより、吸収体膜に転写パターンを形成する際に、高精度の転写パターンを形成することができる。
【0028】
(構成4)
本発明の構成4は、前記吸収体膜は、タンタルと窒素とを含有し、窒素の含有量が10原子%以上50原子%以下であることを特徴とする構成1乃至3の何れかに記載の反射型マスクブランクである。
【0029】
構成4によれば、前記吸収体膜がタンタルと窒素とを含有し、窒素の含有量が10原子%以上50原子%以下であることにより、吸収体膜の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度が所定の値の範囲となり、更に、吸収体膜を構成する結晶粒子の拡大を抑制できるので、吸収体膜をパターニングしたときのパターンエッジラフネスが低減できる。
【0030】
(構成5)
本発明の構成5は、前記吸収体膜の膜厚は60nm以下であることを特徴とする構成1乃至4の何れかに記載の反射型マスクブランクである。
【0031】
構成5によれば、前記吸収体膜の膜厚が60nm以下であることにより、シャドーイング効果を小さくすることができると共に、吸収体膜の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出される空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度をさらに小さくすることができる。その結果、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制させることができる反射型マスクブランクが得られる。
【0032】
(構成6)
本発明の構成6は、前記吸収体膜は、該吸収体膜表面からの反射光と、前記吸収体膜が形成されていない前記多層反射膜又は前記保護膜表面からの反射光との位相差が所定の位相差を有する位相シフト機能を有することを特徴とする構成1乃至5の何れかに記載の反射型マスクブランクである。
【0033】
構成6によれば、吸収体膜は、該吸収体膜表面からの反射光と、吸収体膜が形成されていない多層反射膜又は保護膜表面からの反射光との位相差が所定の位相差を有する位相シフト機能を有することにより、EUV光による転写解像性が向上した反射型マスクのための原版である反射型マスクブランクが得られる。また、所望の転写解像性を得るのに必要な位相シフト効果を奏するために必要な吸収体の膜厚が従来よりも薄膜化することができるので、シャドーイング効果を小さくした反射型マスクブランクが得られる。
【0034】
(構成7)
本発明の構成7は、マスクブランク用基板の主表面の上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜及び吸収体膜を含むマスクブランク用多層膜を有する反射型マスクブランクの製造方法であって、前記マスクブランク用基板の主表面の上に、前記多層反射膜を形成する工程と、前記多層反射膜の上に、前記吸収体膜を形成する工程とを含み、前記反射型マスクブランクの表面が、3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が50nm以下となるように、前記吸収体膜を形成することを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法である。
【0035】
構成7によれば、反射型マスクブランクの表面において、Rmsを0.5nm以下とし、3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度を50nm以下にすることにより、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる反射型マスクブランクを製造することができる。
【0036】
(構成8)
本発明の構成8は、前記多層反射膜を形成する工程において、前記多層反射膜は、高屈折率材料のスパッタリングターゲット及び低屈折率材料のスパッタリングターゲットにイオンビームを交互に照射して、イオンビームスパッタリング法により形成されることを特徴とする構成7に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0037】
構成8によれば、多層反射膜を形成する工程において、所定のイオンビームスパッタリング法で多層反射膜を形成することにより、EUV光に対する反射率特性が良好な多層反射膜を確実に得ることができる。
【0038】
(構成9)
本発明の構成9は、前記吸収体膜を形成する工程において、前記吸収体膜は、吸収体膜材料のスパッタリングターゲットを用いる反応性スパッタリング法により形成され、反応性スパッタリングの際の雰囲気ガスに含まれる成分が含有されるように前記吸収体膜が形成され、前記二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、前記パワースペクトル密度が50nm以下となるように、雰囲気ガスの流量を制御することを特徴とする構成7又は8に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0039】
構成9によれば、吸収体膜を形成する工程において、反応性スパッタリング法により吸収体膜を形成することにより、所定の組成の有する吸収体膜を得ることができる。反応性スパッタリング法による成膜の際に、雰囲気ガスの流量を調節することにより、吸収体膜を含むマスクブランク用多層膜の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度が所定の値の範囲となるように、調節することができる。
【0040】
(構成10)
本発明の構成10は、前記雰囲気ガスは、不活性ガスと、窒素ガスとを含有する混合ガスであることを特徴とする構成9に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0041】
構成10によれば、反応性スパッタリング法により吸収体膜を形成する際の雰囲気ガスが、不活性ガスと、窒素ガスとを含有する混合ガスであることにより、窒素の流量を調節することができるので、適切な組成を有する吸収体膜を得ることができる。その結果、マスクブランク用多層膜の表面において、適切な二乗平均平方根粗さ(Rms)及びパワースペクトル密度を有する吸収体膜を、確実に得ることができる。
【0042】
(構成11)
本発明の構成11は、前記吸収体膜は、タンタルを含む材料のスパッタリングターゲットを用いて形成されることを特徴とする構成7乃至10の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0043】
構成11によれば、反応性スパッタリング法により吸収体膜を形成する際に、タンタルを含む材料のスパッタリングターゲットを用いて形成することによって、タンタルを含む適切な吸収をもつ吸収体膜を形成することができる。また、マスクブランク用多層膜の表面において、適切な二乗平均平方根粗さ(Rms)及びパワースペクトル密度を有する吸収体膜を、より確実に得ることができる。
【0044】
(構成12)
本発明の構成12は、前記吸収体膜を形成する工程において、前記吸収体膜は、吸収体膜材料のスパッタリングターゲットを用いるスパッタリング法により形成され、前記吸収体膜表面が、前記二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が50nm以下となるように、前記吸収体膜の材料と膜厚を選定することを特徴とする構成7又は8に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0045】
構成12によれば、吸収体膜を形成する工程において、吸収体膜の材料、膜厚を選定することにより、吸収体膜を含むマスクブランク用多層膜の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度が所定の値の範囲となるように、調節することができる。
【0046】
(構成13)
本発明の構成13は、前記吸収体膜の材料が窒素を含む材料とし、前記吸収体膜の膜厚が60nm以下とすることを特徴とする構成12記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【0047】
構成13によれば、前記吸収体膜の材料が窒素を含む材料とし、前記吸収体膜の膜厚が60nm以下とすることにより、シャドーイング効果を小さくすることができると共に、吸収体膜の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出される空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度をさらに小さくすることができ、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制させることができる反射型マスクブランクが得られる。
【0048】
(構成14)
本発明の構成14は、前記多層反射膜の表面に接して配置される保護膜を形成する工程を更に含むことを特徴とする構成7乃至13の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0049】
構成14によれば、保護膜を形成する工程を更に含むことにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が更に良好となる。また、製造される反射型マスクブランクにおいて、高感度欠陥検査装置を使用しての保護膜表面の欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0050】
(構成15)
本発明の構成15は、前記保護膜は、保護膜材料のスパッタリングターゲットにイオンビームを照射する、イオンビームスパッタリング法により形成されることを特徴とする構成14に記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0051】
構成15によれば、吸収体膜を形成する工程において、保護膜材料のスパッタリングターゲットを用い、イオンビームスパッタリング法により保護膜を形成することにより、保護膜表面の平滑化が得られるので、保護膜上に形成される吸収体膜や、更に吸収体膜上に形成されるエッチングマスク膜の表面を平滑化させることができるので好ましい。
【0052】
(構成16)
本発明の構成16は、前記吸収体膜の表面に接して配置されるエッチングマスク膜を形成する工程を更に含むことを特徴とする構成7乃至15の何れかに記載の反射型マスクブランクの製造方法である。
【0053】
構成16によれば、吸収体膜とはドライエッチング特性が異なるエッチングマスク膜を形成することにより、吸収体膜に転写パターンを形成する際に、高精度の転写パターンを形成することができる。
【0054】
(構成17)
本発明の構成17は、構成1乃至6何れかに記載の反射型マスクブランク、又は構成7乃至16の何れかに記載の製造方法により得られた反射型マスクブランクの前記吸収体膜をパターニングした吸収体パターンを、前記多層反射膜の上に有することを特徴とする反射型マスクである。
【0055】
構成17の反射型マスクによれば、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0056】
(構成18)
本発明の構成18は、構成17に記載の反射型マスクを用いて、露光装置を使用したリソグラフィープロセスを行い、被転写体に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0057】
構成18の半導体装置の製造方法によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、異物や傷などの致命欠陥を排除した反射型マスクを使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターン等の転写パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0058】
上述した本発明の反射型マスクブランク及び反射型マスクによれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥の検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能となる。特に、EUVリソグラフィーに使用する反射型マスクブランク及び反射型マスクにおいては、疑似欠陥を抑制しつつ、基板主表面上に形成した多層反射膜は高い反射率が得られる。また、上述した本発明の反射型マスクブランクの製造方法によれば、上述の反射型マスクブランクを確実に製造することができる。
【0059】
また、上述した半導体装置の製造方法によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、異物や傷などの致命欠陥を排除した反射型マスクを使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成する回路パターン等の転写パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1(a)は、本発明の一実施形態に係るマスクブランク用基板を示す斜視図である。図1(b)は、本実施形態のマスクブランク用基板を示す断面模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る多層反射膜付き基板の構成の一例を示す断面模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランクの構成の一例を示す断面模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る反射型マスクの一例を示す断面模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る反射型マスクブランクの構成の別の一例を示す断面模式図である。
図6】本発明の実施例試料1、比較例試料1の反射型マスクブランクの吸収体膜表面をパワースペクトル解析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明は、マスクブランク用基板の主表面の上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜及び吸収体膜を含むマスクブランク用多層膜を有する反射型マスクブランクである。
【0062】
図5は、本発明の反射型マスクブランク30の一例を示す模式図である。本発明の反射型マスクブランク30は、マスクブランク用基板10の主表面の上に、マスクブランク用多層膜26を有する。本明細書において、マスクブランク用多層膜26とは、反射型マスクブランク30において、マスクブランク用基板10の主表面の上に積層して形成される、多層反射膜21及び吸収体膜24を含む複数の膜である。マスクブランク用多層膜26は、更に、多層反射膜21及び吸収体膜24の間に形成される保護膜22、及び/又は吸収体膜24の表面に形成されるエッチングマスク膜25を含むことができる。図5に示す反射型マスクブランク30の場合には、マスクブランク用基板10の主表面の上のマスクブランク用多層膜26が、多層反射膜21、保護膜22、吸収体膜24及びエッチングマスク膜25を有している。なお、後述の説明では、エッチングマスク膜25について、吸収体膜24に転写パターンを形成した後、エッチングマスク膜25を剥離することとしている。しかしながら、エッチングマスク膜25を形成しない反射型マスクブランク30において、吸収体膜24を複数層の積層構造とし、この複数層を構成する材料が互いに異なるエッチング特性を有する材料にすることにより、エッチングマスク機能を持った吸収体膜24とした反射型マスクブランク30としてもよい。
【0063】
本明細書において、「マスクブランク用基板10の主表面の上に、マスクブランク用多層膜26を有する」とは、マスクブランク用多層膜26が、マスクブランク用基板10の表面に接して配置されることを意味する場合の他、マスクブランク用基板10と、マスクブランク用多層膜26との間に他の膜を有することを意味する場合も含む。また、本明細書において、例えば「膜Aが膜Bの表面に接して配置される」とは、膜Aと膜Bとの間に他の膜を介さずに、膜Aと膜Bとが直接、接するように配置されていることを意味する。
【0064】
図3は、本発明の反射型マスクブランク30の別の一例を示す模式図である。図3の反射型マスクブランク30の場合には、マスクブランク用多層膜26が、多層反射膜21、保護膜22及び吸収体膜24を有しているが、エッチングマスク膜25を有していない。
【0065】
本発明の反射型マスクブランク30は、マスクブランク用多層膜26が形成されている反射型マスクブランク30表面における3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が50nm以下であることを特徴とする。
【0066】
本発明の反射型マスクブランク30によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥の検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能となる。
【0067】
次に、マスクブランク用多層膜26が形成されている反射型マスクブランク30の主表面の表面形態を示すパラメーターである表面粗さ(Rmax、Rms)及びパワースペクトル密度(Power Spectrum Density:PSD)について以下に説明する。
【0068】
まず、代表的な表面粗さの指標であるRms(Root means square)は、二乗平均平方根粗さであり、平均線から測定曲線までの偏差の二乗を平均した値の平方根である。Rmsは下式(1)で表される。
【0069】
【数1】

式(1)において、lは基準長さであり、Zは平均線から測定曲線までの高さである。
【0070】
同じく、代表的な表面粗さの指標であるRmaxは、表面粗さの最大高さであり、粗さ曲線の山の高さの最大値と谷の深さの最大値との絶対値の差(最も高い山と、最も深い谷のとの差)である。
【0071】
Rms及びRmaxは、従来からマスクブランク用基板10の表面粗さの管理に用いられており、表面粗さを数値で把握できる点で優れている。しかし、これらRms及びRmaxは、いずれも高さの情報であり、微細な表面形状の変化に関する情報を含まない。
【0072】
これに対して、得られた表面の凹凸を空間周波数領域へ変換することにより、空間周波数での振幅強度で表すパワースペクトル解析は、微細な表面形状を数値化することができる。Z(x,y)をx座標、y座標における高さのデータとすると、そのフーリエ変換は下式(2)で与えられる。
【0073】
【数2】
【0074】
ここで、Nx,Nyは、x方向とy方向のデータの数である。u=0、1、2・・・Nx−1、v=0、1、2・・・Ny−1であり、このとき空間周波数fは、下式(3)で与えられる。
【0075】
【数3】

ここで、式(3)において、dxはx方向の最小分解能であり、dyはy方向の最小分解能である。
【0076】
このときのパワースペクトル密度PSDは下式(4)で与えられる。
【数4】
【0077】
このパワースペクトル解析は、反射型マスクブランク30のマスクブランク用多層膜26の表面状態の変化を単純な高さの変化としてだけでなく、その空間周波数での変化として把握することができる点で優れており、原子レベルでの微視的な反応などが表面に与える影響を解析する手法である。
【0078】
そして、本発明の反射型マスクブランク30において、上記目的を達成するために、マスクブランク用多層膜26の表面を、上述の表面粗さ(Rms)、パワースペクトル密度を用い、3μm×3μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が50nm以下となるようにする。
【0079】
本発明において、前記3μm×3μmの領域は、転写パターン形成領域の任意の箇所でよい。転写パターン形成領域は、マスクブランク用基板10が6025サイズ(152mm×152mm×6.35mm)の場合、例えば、反射型マスクブランク30の表面の周縁領域を除外した142mm×142mmの領域や、132mm×132mmの領域、132mm×104mmの領域とすることができる、また、前記任意の箇所については、例えば、反射型マスクブランク30の表面の中心の領域とすることができる。
【0080】
また、本発明において、前記3μm×3μmの領域は、マスクブランク用多層膜26の膜表面の中心の領域とすることができる。例えば、反射型マスクブランク30のマスクブランク用多層膜26の膜表面が長方形の形状をしている場合には、前記中心とは前記長方形の対角線の交点である。すなわち、前記交点と前記領域における中心(領域の中心も前記膜表面の中心と同様である)とが一致する。
【0081】
また、上述で説明した3μm×3μmの領域、転写パターン形成領域、任意の箇所については、場合によっては、マスクブランク用基板10及び多層反射膜付き基板20においても適用することができる。
【0082】
また、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置を使用して、反射型マスクブランク30の表面の欠陥検査を行う場合には、上記表面において、3μm×3μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度を50nm以下とすることができ、好ましくは、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が45nm以下、より好ましくは、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が40nm以下、更に好ましくは、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が35nm以下、更に好ましくは、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が30nm以下とするのが望ましい。
【0083】
また、上述の二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.5nm以下、好ましくは、0.45nm以下、より好ましくは、0.40nm以下、更に好ましくは、0.35nm以下、更に好ましくは、0.30nm以下、更に好ましくは、0.25nm以下であることが望ましい。また、最大高さ(Rmax)は、好ましくは5nm以下、更に好ましくは、4.5nm以下、更に好ましくは、4nm以下、更に好ましくは、3.5nm以下、更に好ましくは3nm以下、更に好ましくは2.5nm以下が望ましい。
【0084】
また、本発明の反射型マスクブランク30において、上記目的を達成するために、マスクブランク用多層膜26の表面を、原子間力顕微鏡で3μm×3μmの領域を測定して得られる空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度の積分値Iは、800×10−3nm以下とすることが更に好ましい。更に好ましくは、上記積分値Iは、650×10−3nm以下とすることが望ましい。更に好ましくは、上記積分値Iは、500×10−3nm以下とすることが望ましい。特に好ましくは、上記積分値Iは、450×10−3nm以下とすることが望ましい。
【0085】
本発明の反射型マスクブランク30によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥の検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能となる。
【0086】
次に、本発明の反射型マスクブランク30について、具体的に説明する。
【0087】
[マスクブランク用基板10]
まず、本発明の反射型マスクブランク30の製造に用いることのできるマスクブランク用基板10について以下に説明する。
【0088】
図1(a)は、本発明の反射型マスクブランク30の製造に用いることのできるマスクブランク用基板10の一例を示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)に示すマスクブランク用基板10の断面模式図である。
【0089】
マスクブランク用基板10(又は、単に基板10と称する場合がある。)は、矩形状の板状体であり、2つの対向主表面2と、端面1とを有する。2つの対向主表面2は、この板状体の上面及び下面であり、互いに対向するように形成されている。また、2つの対向主表面2の少なくとも一方は、転写パターンが形成されるべき主表面である。
【0090】
端面1は、この板状体の側面であり、対向主表面2の外縁に隣接する。端面1は、平面状の端面部分1d、及び曲面状の端面部分1fを有する。平面状の端面部分1dは、一方の対向主表面2の辺と、他方の対向主表面2の辺とを接続する面であり、側面部1a、及び面取斜面部1bを含む。側面部1aは、平面状の端面部分1dにおける、対向主表面2とほぼ垂直な部分(T面)である。面取斜面部1bは、側面部1aと対向主表面2との間における面取りされた部分(C面)であり、側面部1aと対向主表面2との間に形成される。
【0091】
曲面状の端面部分1fは、基板10を平面視したときに、基板10の角部10a近傍に隣接する部分(R部)であり、側面部1c及び面取斜面部1eを含む。ここで、基板10を平面視するとは、例えば、対向主表面2と垂直な方向から、基板10を見ることである。また、基板10の角部10aとは、例えば、対向主表面2の外縁における、2辺の交点近傍である。2辺の交点とは、2辺のそれぞれの延長線の交点であってよい。本例において、曲面状の端面部分1fは、基板10の角部10aを丸めることにより、曲面状に形成されている。
【0092】
本発明の目的をより確実に達成するために、本発明の反射型マスクブランク30に用いるマスクブランク用基板10の主表面、及び、多層反射膜付き基板20の多層反射膜21の表面が、本発明の反射型マスクブランク30の表面と同様に、所定の表面粗さと、所定のパワースペクトル密度(Power Spectrum Density:PSD)とを有していることが好ましい。
【0093】
また、マスクブランク用基板10の主表面は、触媒基準エッチングにより表面加工された表面とすることが好ましい。触媒基準エッチング(Catalyst Referred Etching:以下、CAREともいう)とは、被加工物(マスクブランク用基板)と触媒を処理液中に配置するか、被加工物と触媒との間に処理液を供給し、被加工物と触媒を接触させ、そのときに触媒上に吸着している処理液中の分子から生成された活性種によって被加工物を加工する表面加工方法である。なお、被加工物がガラスなどの固体酸化物からなる場合には、処理液を水とし、水の存在下で被加工物と触媒を接触させ、触媒と被加工物表面とを相対運動させる等することにより、加水分解による分解生成物を被加工物表面から除去し加工するものである。
【0094】
マスクブランク用基板10の主表面が、触媒基準エッチングにより、基準面である触媒表面に接触する凸部から選択的に表面加工される。そのため、主表面を構成する凹凸(表面粗さ)が、非常に高い平滑性を維持しつつ、非常に揃った表面形態となり、しかも、基準面に対して凸部よりも凹部を構成する割合が多い表面形態となる。したがって、前記主表面上に複数の薄膜を積層する場合においては、主表面の欠陥サイズが小さくなる傾向となるので、触媒基準エッチングによって表面処理することが欠陥品質上好ましい。特に、前記主表面上に、後述する多層反射膜21を形成する場合に特に効果が発揮される。また、上述のように主表面を触媒基準エッチングによる表面処理することにより、上述の所定の範囲の表面粗さ、及び所定のパワースペクトル密度の表面を比較的容易に形成することができる。
【0095】
尚、基板10の材料がガラス材料の場合、触媒としては、白金、金、遷移金属及びこれらのうち少なくとも一つを含む合金からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料を使用することができる。また、処理液としては、純水、オゾン水や水素水等の機能水、低濃度のアルカリ水溶液、低濃度の酸性水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の所液を使用することができる。
【0096】
上記のように主表面の表面粗さ、及びパワースペクトル密度を上記範囲にすることにより、例えば、レーザーテック社製のEUV露光用のマスク・サブストレート/ブランク欠陥検査装置「MAGICS M7360」(検査光源波長:266nm)や、KLA−Tencor社製のレチクル、オプティカル・マスク/ブランク及びEUV・マスク/ブランク欠陥検査装置「Teron610」(検査光源波長:193nm)による欠陥検査において、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる。
【0097】
尚、上記検査光源波長は、266nm及び193nmに限定されない。検査光源波長として、532nm、488nm、364nm又は257nmを使用しても構わない。
【0098】
本発明の反射型マスクブランク30に用いるマスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されていることが好ましい。EUVの反射型マスクブランク用基板10の場合、基板10の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域、又は142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、特に好ましくは0.05μm以下である。更に好ましくは、基板10の転写パターンが形成される側の主表面132mm×132mmの領域において、平坦度が0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時の静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。
【0099】
EUV露光用の反射型マスクブランク用基板10の材料としては、低熱膨張の特性を有するものであれば何でもよい。例えば、低熱膨張の特性を有するSiO−TiO系ガラス(2元系(SiO−TiO)及び3元系(SiO−TiO−SnO等))、例えばSiO−Al−LiO系の結晶化ガラスなどの所謂、多成分系ガラスを使用することができる。また、上記ガラス以外にシリコンや金属などの基板を用いることもできる。前記金属基板の例としては、インバー合金(Fe−Ni系合金)などが挙げられる。
【0100】
上述のように、EUV露光用のマスクブランク用基板10の場合、基板に低熱膨張の特性が要求されるため、多成分系ガラス材料を使用する。しかしながら、多成分系ガラス材料は、合成石英ガラスと比較して高い平滑性を得にくいという問題がある。この問題を解決すべく、多成分系ガラス材料からなる基板上に、金属若しくは合金からなる薄膜、又は金属及び合金のいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有した材料からなる薄膜を形成する。そして、このような薄膜表面を鏡面研磨、表面処理することにより、上記範囲の表面粗さ、パワースペクトル密度の表面を比較的容易に形成することができる。
【0101】
上記薄膜の材料としては、例えば、Ta(タンタル)若しくはTaを含有する合金、又はTa及びTaを含有する合金のいずれかに酸素、窒素、炭素の少なくとも一つを含有したTa化合物が好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、及びTaSiCONなどから選択したものを適用することができる。これらTa化合物のうち、窒素(N)を含有するTaN、TaON、TaCON、TaBN、TaBON、TaBCON、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSiN、TaSiON及びTaSiCONから選択したものを用いることがより好ましい。尚、上記薄膜は、薄膜表面の高平滑性の観点から、好ましくはアモルファス構造とすることが望ましい。薄膜の結晶構造は、X線回折装置(XRD)により測定することができる。
【0102】
尚、本発明では、上記に規定した表面粗さ、パワースペクトル密度を得るための加工方法は、特に限定されるものではない。本発明は、反射型マスクブランク30の表面粗さ、パワースペクトル密度を管理する点に特徴があり、例えば、後述する実施例に例示したような加工方法によって実現することができる。
【0103】
[多層反射膜付き基板20]
次に、本発明の反射型マスクブランク30に用いることのできる多層反射膜付き基板20について以下に説明する。
【0104】
図2は、反射型マスクブランク30に用いることのできる多層反射膜付き基板20の一例を示す模式図である。
【0105】
本実施形態の多層反射膜付き基板20は、上記説明したマスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面上に多層反射膜21を有する構造としている。この多層反射膜21は、EUVリソグラフィー用反射型マスク40においてEUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層反射膜21の構成を取っている。
【0106】
多層反射膜21はEUV光を反射する限りその材質は特に限定されない。多層反射膜21の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。このような多層反射膜21は、一般的には、高屈折率の材料からなる薄膜(高屈折率層)と、低屈折率の材料からなる薄膜(低屈折率層)とが、交互に40〜60周期程度積層された多層反射膜21とすることができる。
【0107】
例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜21としては、Mo膜とSi膜とを交互に40周期程度積層したMo/Si周期多層膜とすることが好ましい。その他、EUV光の領域で使用される多層反射膜21として、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、及びSi/Ru/Mo/Ru周期多層膜などから選択したものを用いることが可能である。
【0108】
多層反射膜21の形成方法は当該技術分野において公知である。例えば、マグネトロンスパッタリング法や、イオンビームスパッタリング法などにより、多層反射膜21の各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えば、イオンビームスパッタリング法により、まずSiターゲットを用いて厚さ数nm程度のSi膜を基板10上に成膜し、その後、Moターゲットを用いて厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、40〜60周期積層して、多層反射膜21を形成する。
【0109】
本発明の反射型マスクブランク30を製造する際、多層反射膜21は、高屈折率材料のスパッタリングターゲット及び低屈折率材料のスパッタリングターゲットにイオンビームを交互に照射して、イオンビームスパッタリング法により形成されることが好ましい。所定のイオンビームスパッタリング法で多層反射膜21を形成することにより、EUV光に対する反射率特性が良好な多層反射膜21を確実に得ることができる。
【0110】
本発明の反射型マスクブランク30は、マスクブランク用多層膜26が、多層反射膜21の表面のうち、マスクブランク用基板10とは反対側の表面に接して配置される保護膜22を更に含むことが好ましい。
【0111】
上述のように形成された多層反射膜21の上に、EUVリソグラフィー用反射型マスク40の製造工程におけるドライエッチングやウェット洗浄からの多層反射膜21の保護のため、保護膜22(図3を参照)を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上に、多層反射膜21と、保護膜22とを有する形態も、本発明における多層反射膜付き基板20とすることができる。
【0112】
尚、上記保護膜22の材料としては、例えば、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo)、Si−(Ru,Rh,Cr,B)、Si、Zr、Nb、La、及びB等から選択した材料を使用することができる。これらの材料のうち、ルテニウム(Ru)を含む材料を適用すると、多層反射膜21の反射率特性がより良好となる。具体的には、保護膜22の材料は、Ru、Ru−(Nb,Zr,Y,B,Ti,La,Mo)であることが好ましい。このような保護膜22は、特に、吸収体膜24をTa系材料とし、Cl系ガスのドライエッチングで当該吸収体膜24をパターニングする場合に有効である。
【0113】
尚、上記の多層反射膜付き基板20では、多層反射膜21又は保護膜22の表面において、3μm×3μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度を25nm以下とすることができ、好ましくは22.5nm以下、より好ましくは20nm以下とすることが望ましい。このような構成とすることにより、150nm〜365nmの波長領域の検査光を用いる高感度欠陥検査装置、例えば、上述に挙げた検査光源波長として266nmのUVレーザー又は193nmのArFエキシマレーザーを用いる高感度欠陥検査装置で多層反射膜付き基板20の欠陥検査を行う場合、疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0114】
また、上記の高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を大幅に抑制することができる効果に加え、多層反射膜付き基板20として必要な反射特性を良好にするために、上記の多層反射膜付き基板20では、多層反射膜21又は保護膜22の表面において、3μm×3μmの領域を原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)を、0.25nm以下、好ましくは、0.20nm以下、より好ましくは、0.15nm以下とすることが望ましい。
【0115】
上記範囲の基板10の表面形態を保って、多層反射膜21又は保護膜22の表面が、上記範囲のパワースペクトル密度にするには、多層反射膜21を、基板10の主表面の法線に対して斜めに高屈折率層と低屈折率層とが堆積するように、スパッタリング法により成膜することにより得られる。より具体的には、Mo等の低屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度と、Si等の高屈折率層の成膜のためのスパッタ粒子の入射角度は、0度超45度以下にして成膜すると良い。より好ましくは、0度超40度以下、更に好ましくは、0度超30度以下が望ましい。更には、多層反射膜21上に形成する保護膜22も多層反射膜21の成膜後、連続して、基板10の主表面の法線に対して斜めに保護膜22が堆積するようにイオンビームスパッタリング法により形成することが好ましい。
【0116】
また、多層反射膜付き基板20において、基板10の多層反射膜21と接する面と反対側の面には、静電チャックの目的のために裏面導電膜23(図3を参照)を形成することもできる。このように、マスクブランク用基板10上の転写パターンが形成される側に多層反射膜21と、保護膜22とを有し、多層反射膜21と接する面と反対側の面に裏面導電膜23を有する形態も、本発明における多層反射膜付き基板20とすることができる。尚、裏面導電膜23に求められる電気的特性(シート抵抗)は、通常100Ω/□以下である。裏面導電膜23の形成方法は公知であり、例えば、マグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、Cr、Ta等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。
【0117】
また、本実施形態の多層反射膜付き基板20としては、基板10と多層反射膜21との間に下地層を形成しても良い。下地層は、基板10の主表面の平滑性向上の目的、欠陥低減の目的、多層反射膜21の反射率増強効果の目的、並びに多層反射膜21の応力補正の目的で形成することができる。
【0118】
[反射型マスクブランク30]
次に、本発明の反射型マスクブランク30について説明する。
【0119】
図3は、本発明の反射型マスクブランク30の一例を示す模式図である。
【0120】
本発明の反射型マスクブランク30は、上記説明した多層反射膜付き基板20の保護膜22上に、転写パターンとなる吸収体膜24を形成した構成としてある。
【0121】
上記吸収体膜24は、露光光であるEUV光を吸収する機能を有するもので、反射型マスクブランク30を使用して作製される反射型マスク40において、上記多層反射膜21、保護膜22による反射光と、吸収体パターン27による反射光との間に所望の反射率差を有するものであればよい。
【0122】
例えば、EUV光に対する吸収体膜24の反射率は、0.1%以上40%以下の間で設定される。また、上記反射率差に加えて、上記多層反射膜21、保護膜22による反射光と、吸収体パターン27による反射光との間で所望の位相差を有するものであってもよい。尚、このような反射光間で所望の位相差を有する場合、反射型マスクブランク30における吸収体膜24を位相シフト膜と称する場合がある。上記反射光間で所望の位相差を設けて、得られる反射型マスクの反射光のコントラストを向上させる場合、位相差は180度±10度の範囲に設定するのが好ましく、吸収体膜24の反射率は、絶対反射率で1.5%以上30%以下、多層反射膜21及び/又は保護膜22の表面に対する吸収体膜24の反射率は、2%以上40%以下に設定するのが好ましい。
【0123】
上記吸収体膜24は、単層でも積層構造であってもよい。積層構造の場合、同一材料の積層膜、異種材料の積層膜のいずれでもよい。積層膜は、材料や組成が膜厚方向に段階的及び/又は連続的に変化したものとすることができる。
【0124】
上記吸収体膜24の材料は、特に限定されるものではない。例えば、EUV光を吸収する機能を有するもので、Ta(タンタル)単体、又はTaを主成分とする材料を用いることが好ましい。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜24の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。Taを主成分とする材料としては、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくともいずれかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、及びTaとGeとNを含む材料などから選択した材料を用いることができる。また例えば、TaにB、Si及びGe等から選択した少なくとも一つを加えることにより、アモルファス構造が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。更に、TaにN及び/又はOを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができる。上記範囲の基板10や、多層反射膜付き基板20の表面形態を保ちつつ、吸収体膜24の表面を上記範囲のパワースペクトル密度にするには、吸収体膜24を微結晶構造にするか、又はアモルファス構造にすることが好ましい。結晶構造については、X線回折装置(XRD)により確認することができる。
【0125】
具体的には、吸収体膜24を形成するタンタルを含有する材料としては、例えば、タンタル金属、タンタルに、窒素、酸素、ホウ素及び炭素から選ばれる一以上の元素を含有し、水素を実質的に含有しない材料等が挙げられる。例えば、Ta、TaN、TaON、TaBN、TaBON、TaCN、TaCON、TaBCN及びTaBOCN等が挙げられる。前記材料については、本発明の効果が得られる範囲で、タンタル以外の金属を含有させてもよい。吸収体膜24を形成するタンタルを含有する材料にホウ素を含有させると、吸収体膜24をアモルファス構造(非晶質)になるように制御しやすい。
【0126】
マスクブランクの吸収体膜24は、タンタルと窒素を含有する材料で形成されることが好ましい。吸収体膜24中の窒素含有量は、50原子%以下であることが好ましく、30原子%以下であることが好ましく、25原子%以下であることがより好ましく、20原子%以下であることが更に好ましい。吸収体膜24中の窒素含有量は、5原子%以上であることが好ましい。
【0127】
本発明の反射型マスクブランク30では、吸収体膜24が、タンタルと窒素とを含有し、窒素の含有量が10原子%以上50原子%以下であることが好ましく、より好ましくは、15原子%以上50原子%以下、更に好ましくは、30原子%以上50原子%以下が望ましい。吸収体膜24がタンタルと窒素とを含有し、窒素の含有量が10原子%以上50原子%以下であることにより、吸収体膜24の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度が所定の値の範囲となり、更に、吸収体膜を構成する結晶粒子の拡大を抑制できるので、吸収体膜をパターニングしたときのパターンエッジラフネスが低減できる。
【0128】
本発明の反射型マスクブランク30では、吸収体膜24の膜厚は、多層反射膜21、保護膜22による反射光と、吸収体パターン27による反射光との間に所望の反射率差を有するものとするために必要な膜厚に設定する。吸収体膜24の膜厚は、シャドーイング効果を小さくするために、60nm以下であることが好ましい。吸収体膜24の膜厚が60nmであることにより、吸収体膜24の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度をさらに小さくすることができ、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制させることができる。
【0129】
また、本発明の反射型マスクブランク30では、上記吸収体膜24は、上記多層反射膜21、保護膜22による反射光と、吸収体パターン27による反射光との間に所望の位相差を有する位相シフト機能を持たせることができる。その場合、EUV光による転写解像性が向上した反射型マスクのための原版である反射型マスクブランクが得られる。また、所望の転写解像性を得るのに必要な位相シフト効果を奏するために必要な吸収体の膜厚が従来よりも薄膜化することができるので、シャドーイング効果を小さくした反射型マスクブランクが得られる。
【0130】
位相シフト機能を有する吸収体膜24の材料は、特に限定されるものではない。例えば、上記に挙げたTa単体、又はTaを主成分とする材料とすることができるし、それ以外の材料でも構わない。Ta以外の材料としては、Ti、Cr、Nb、Mo、Ru、Rh、及びWが挙げられる。また、Ta、Ti、Cr、Nb、Mo、Ru、Rh、及びWのうち2以上の元素を含む合金を材料として用いることができ、これらの元素を材料とする層の積層膜とすることができる。また、これらの材料に窒素、酸素、及び炭素から選ばれる一以上の元素を含有しても良い。中でも窒素を含む材料とすることにより、吸収体膜の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出される空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度を小さくすることができ、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制させることができる反射型マスクブランクが得られるので好ましい。尚、吸収体膜24を積層膜とする場合、同一材料の層の積層膜や、異種材料の層の積層膜としても良い。吸収体膜24を異種材料の層の積層膜とした場合、この複数層を構成する材料が互いに異なるエッチング特性を有する材料にして、エッチングマスク機能を持った吸収体膜24としてもよい。
【0131】
本発明の反射型マスクブランク30の最表面が吸収体膜24の場合、吸収体膜24の表面における3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度は、所定の範囲の値となるようにする。このような構造を有する本発明の反射型マスクブランク30によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥の検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能となる。
【0132】
尚、本発明の反射型マスクブランク30は、図3に示す構成に限定されるものではない。例えば、上記吸収体膜24の上に、吸収体膜24をパターニングするためのマスクとなるレジスト膜を形成することもでき、レジスト膜付き反射型マスクブランク30も、本発明の反射型マスクブランク30とすることができる。尚、吸収体膜24の上に形成するレジスト膜は、ポジ型でもネガ型でも構わない。また、電子線描画用でもレーザー描画用でも構わない。更に、吸収体膜24と前記レジスト膜との間に、いわゆるハードマスク膜(エッチングマスク膜)を形成することもでき、この態様も本発明における反射型マスクブランク30とすることができる。
【0133】
本発明の反射型マスクブランク30は、マスクブランク用多層膜26が、吸収体膜24の表面のうち、マスクブランク用基板10とは反対側の表面に接して配置されるエッチングマスク膜25を更に含むことが好ましい。図5に示す反射型マスクブランク30の場合には、マスクブランク用基板10の主表面の上のマスクブランク用多層膜26が、多層反射膜21、保護膜22及び吸収体膜24に加えて、更にエッチングマスク膜25を有している。本発明の反射型マスクブランク30は、図5に示す反射型マスクブランク30のマスクブランク用多層膜26の最表面に、更にレジスト膜を有することができる。
【0134】
具体的には、本発明の反射型マスクブランク30は、吸収体膜24の材料が、Ta単体、又はTaを主成分とする材料を用いる場合、吸収体膜24上にクロムを含有する材料からなるエッチングマスク膜25が形成された構造となっていることが好ましい。このような構造の反射型マスクブランク30とすることにより、吸収体膜24に転写パターンを形成後、エッチングマスク膜25を塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチングで剥離しても、吸収体膜24パターンの光学的特性が良好な反射型マスク40を作製することができる。また、吸収体膜24に形成された転写パターンのラインエッジラフネスが良好な反射型マスク40を作製することができる。
【0135】
エッチングマスク膜25を形成するクロムを含有する材料としては、例えば、クロムに、窒素、酸素、炭素及びホウ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料等が挙げられる。例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCN等が挙げられる。前記材料については、本発明の効果が得られる範囲で、クロム以外の金属を含有させてもよい。エッチングマスク膜25の膜厚は、転写パターンを精度よく吸収体膜24に形成するエッチングマスクとしての機能を得る観点から、3nm以上であることが望ましい。また、エッチングマスク膜25の膜厚は、レジスト膜の膜厚を薄くする観点から、15nm以下であることが望ましい。
【0136】
本発明の反射型マスクブランク30の最表面がエッチングマスク膜25の場合、反射型マスクブランク30の最表面が吸収体膜24である場合と同様に、エッチングマスク膜25の表面における3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度は、所定の範囲の値となるようにする。このような構造を有する本発明の反射型マスクブランク30によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、基板や膜の表面粗さに起因する疑似欠陥の検出を抑制し、異物や傷などの致命欠陥の発見を容易にすることが可能となる。
【0137】
次に、本発明の反射型マスクブランク30の製造方法について説明する。
【0138】
本発明は、マスクブランク用基板10の主表面の上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜21及び吸収体膜24を含むマスクブランク用多層膜26を有する反射型マスクブランク30の製造方法である。本発明の反射型マスクブランク30の製造方法は、マスクブランク用基板10の主表面の上に、多層反射膜21を形成する工程と、多層反射膜21の上に、吸収体膜24を形成する工程とを含む。本発明の反射型マスクブランク30の製造方法では、反射型マスクブランク30の表面が、3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が50nm以下となるように、吸収体膜24を形成する。
【0139】
本発明の反射型マスクブランク30の表面において、Rmsを0.5nm以下(好ましくは、0.45nm以下、より好ましくは、0.40nm以下、更に好ましくは、0.35nm以下)とし、3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度を50nm以下(好ましくは45nm以下、より好ましくは40nm以下、更に好ましくは35nm以下)にすることにより、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる反射型マスクブランク30を製造することができる。
【0140】
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法では、吸収体膜24を形成する工程において、吸収体膜24は、吸収体膜24に含まれる材料からなるスパッタリングターゲットを用いる反応性スパッタリング法により形成され、反応性スパッタリングの際の雰囲気ガスに含まれる成分が含有されるように吸収体膜24が形成されることが好ましい。反応性スパッタリング法による成膜の際に、雰囲気ガスの流量を調節することにより、吸収体膜24を含むマスクブランク用多層膜26の表面の二乗平均平方根粗さ(Rms)、及び3μm×3μmの領域で検出されうる空間周波数1〜10μm−1の粗さ成分全ての振幅強度であるパワースペクトル密度が所定の値の範囲となるように、調節することができる。
【0141】
反応性スパッタリング法により吸収体膜24を形成する場合、雰囲気ガスは、不活性ガスと、窒素ガスとを含有する混合ガスであることが好ましい。この場合には、窒素の流量を調節することができるので、適切な組成を有する吸収体膜24を得ることができる。その結果、マスクブランク用多層膜26の表面において、適切な二乗平均平方根粗さ(Rms)及びパワースペクトル密度を有する吸収体膜24を、確実に得ることができる。
【0142】
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法では、吸収体膜24は、タンタルを含む材料のスパッタリングターゲットを用いて形成されることが好ましい。この結果、タンタルを含む、適切な露光光の吸収をもつ吸収体膜24を形成することができる。
【0143】
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法では、吸収体膜24を形成する工程において、吸収体膜24は、吸収体膜材料のスパッタリングターゲットを用いるスパッタリング法により形成され、吸収体膜24の表面が、二乗平均平方根粗さ(Rms)が0.5nm以下であり、且つ、空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度が50nm以下となるように、材料と膜厚を選定する。上記吸収体膜24の材料は上記に挙げた材料から選定され、吸収体膜24の膜厚は、多層反射膜21、保護膜22による反射光と、吸収体パターン27による反射光との間に所望の反射率差を有するものとするために必要な膜厚で設定される。吸収体膜24の膜厚は、60nm以下の範囲で設定することが好ましい。
【0144】
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法は、多層反射膜21の表面に接して配置される保護膜22を形成する工程を更に含むことが好ましい。保護膜22を形成することにより、転写用マスク(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜21の表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が更に良好となる。また、製造される反射型マスクブランク30において、高感度欠陥検査装置を使用しての保護膜22の表面の、欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0145】
保護膜22は、保護膜22材料のスパッタリングターゲットにイオンビームを照射する、イオンビームスパッタリング法により形成されることが好ましい。イオンビームスパッタリング法によって、保護膜表面の平滑化が得られるので、保護膜上に形成される吸収体膜や、更に吸収体膜上に形成されるエッチングマスク膜の表面を平滑化させることができる。
【0146】
本発明の反射型マスクブランク30の製造方法は、吸収体膜24の表面に接して配置されるエッチングマスク膜25を形成する工程を更に含むことが好ましい。吸収体膜24とはドライエッチング特性が異なるエッチングマスク膜25を形成することにより、吸収体膜24に転写パターンを形成する際に、高精度の転写パターンを形成することができる。
【0147】
[反射型マスク40]
次に、本発明の一実施形態に係る反射型マスク40について以下に説明する。
【0148】
図4は、本実施形態の反射型マスク40を示す模式図である。
【0149】
本発明の反射型マスク40は、上記の反射型マスクブランク30における吸収体膜24をパターニングして、上記多層反射膜21上又は上記保護膜22上に吸収体パターン27を形成した構成である。本実施形態の反射型マスク40は、EUV光等の露光光で露光すると、マスク表面で吸収体膜24のある部分では露光光が吸収され、それ以外の吸収体膜24を除去した部分では露出した保護膜22及び多層反射膜21で露光光が反射されることにより、リソグラフィー用の反射型マスク40として使用することができる。本発明の反射型マスク40により、高感度欠陥検査装置を使用しての欠陥検査における疑似欠陥の検出を抑制することができ、更に致命欠陥の顕在化を図ることができる。
【0150】
[半導体装置の製造方法]
以上説明した反射型マスク40と、露光装置を使用したリソグラフィープロセスにより、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に、反射型マスク40の吸収体パターン27に基づく回路パターン等の転写パターンを転写し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板等の被転写体上に種々の転写パターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
【0151】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、高感度の欠陥検査装置を用いた欠陥検査において、異物や傷などの致命欠陥を排除した反射型マスク40を使用できるので、半導体基板等の被転写体上に形成されたレジスト膜に転写する回路パターン等の転写パターンに欠陥がなく、微細でかつ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
【0152】
尚、上述のマスクブランク用基板10、多層反射膜付き基板20、反射型マスクブランク30に、基準マークを形成し、この基準マークと、上述の高感度欠陥検査装置で検出された致命欠陥の位置を座標管理することができる。得られた致命欠陥の位置情報(欠陥データ)に基づいて、反射型マスク40を作製するときに、上述の欠陥データと被転写パターン(回路パターン)データとを元に、致命欠陥が存在している箇所に吸収体パターン27が形成されるように描画データを補正して、欠陥を低減させることができる。
【実施例】
【0153】
次に、本実施の形態にかかる反射型マスクブランク30及び反射型マスク40を製造した例を実施例として説明する。
【0154】
まず、EUV露光用のマスクブランク用基板10の表面に、多層反射膜21及び吸収体膜24を以下に述べるように成膜して、実施例試料1〜5及び比較例試料1〜4の多層反射膜付き基板20を製造した。
【0155】
<マスクブランク用基板10の作製>
マスクブランク用基板10として、大きさが152mm×152mm、厚さが6.35mmのSiO−TiO系のガラス基板を準備し、両面研磨装置を用いて、当該ガラス基板の表裏面を、酸化セリウム砥粒やコロイダルシリカ砥粒により段階的に研磨した後、低濃度のケイフッ酸で表面処理した。これにより得られたガラス基板表面の表面粗さを原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.5nmであった。
【0156】
当該ガラス基板の表裏面における148mm×148mmの領域の表面形状(表面形態、平坦度)、TTV(板厚ばらつき)を、波長変調レーザーを用いた波長シフト干渉計で測定した。その結果、ガラス基板の表裏面の平坦度は290nm(凸形状)であった。ガラス基板表面の表面形状(平坦度)の測定結果は、測定点ごとにある基準面に対する高さの情報としてコンピュータに保存するとともに、ガラス基板に必要な表面平坦度の基準値50nm(凸形状)、裏面平坦度の基準値50nmと比較し、その差分(必要除去量)をコンピュータで計算した。
【0157】
次いで、ガラス基板面内を加工スポット形状領域ごとに、必要除去量に応じた局所表面加工の加工条件を設定した。事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板を移動させずにスポットで加工し、その形状を上記表裏面の表面形状を測定する装置と同じ測定機にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットの加工体積を算出する。そして、スポットの情報とガラス基板の表面形状の情報より得られた必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
【0158】
設定した加工条件に従い、磁気流体による基板仕上げ装置を用いて、磁気粘弾性流体研磨(Magneto Rheological Finishing : MRF)加工法により、ガラス基板の表裏面平坦度が上記の基準値以下となるように局所表面加工処理をして表面形状を調整した。尚、このとき使用した磁気粘弾性流体は、鉄成分を含んでおり、研磨スラリーは、研磨剤として酸化セリウムを約2wt%含むアルカリ水溶液を用いた。その後、ガラス基板を濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬した後、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)乾燥を行った。
【0159】
尚、本発明におけるマスクブランク用基板10の局所加工方法は、上述した磁気粘弾性流体研磨加工法に限定されるものではない。ガスクラスターイオンビーム(Gas Cluster Ion Beams : GCIB)や局所プラズマを使用した加工方法であってもよい。
【0160】
その後、局所表面加工処理の仕上げ研磨として、表面粗さ改善を目的として、コロイダルシリカ砥粒を用いた両面タッチ研磨を行った後、触媒基準エッチング法(CARE:Catalyst Referred Etching)による表面加工を行った。このCAREは、以下の加工条件で行った。
加工液:純水
触媒:白金
基板回転数:10.3回転/分
触媒定盤回転数:10回転/分
加工時間:50分
加工圧:250hPa
【0161】
その後、ガラス基板の端面をスクラブ洗浄した後、当該基板を王水(温度約65℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬させ、その後、純水によるリンス、乾燥を行った。尚、王水による洗浄は、ガラス基板の表裏面に触媒である白金の残留物がなくなるまで、複数回行った。
【0162】
上述のようにして得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面において、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所の1μm×1μmの領域を原子間力顕微鏡で測定したところ、二乗平均平方根粗さ(Rms)は0.040nm、最大高さ(Rmax)は0.40nmであった。
【0163】
上述のようにして得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における1μm×1μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1μm−1以上10μm−1以下のパワースペクトル密度は、最大値5.29nm、最小値1.15nmであった。また、空間周波数10μm−1以上100μm−1以下のパワースペクトル密度は、最大値1.18nm、最小値0.20nmであった。したがって、上述のマスクブランク用基板10の主表面の空間周波数1μm−1以上、及び空間周波数1μm−1以上10μm−1以下におけるパワースペクトル密度は、10nm以下であったといえる。
【0164】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron610」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で21.5nmの欠陥を検出できる検査感度条件で、上述のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。この結果、疑似欠陥を含む欠陥検出個数は、合計370個であり、従来の欠陥検出個数50,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計370個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。
【0165】
また、検査光源波長266nmの高感度欠陥検査装置(レーザーテック社製「MAGICS M7360」)を使用して、最高の検査感度条件で、上述のEUV露光用のマスクブランク用基板10の主表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した結果、欠陥検出個数の合計は、いずれも50,000個を下回り、致命欠陥の検査が可能であった。
【0166】
<実施例試料1〜5及び比較例試料1〜4の作製>
Moターゲット及びSiターゲットを使用して、イオンビームスパッタリングによりMo層(低屈折率層、厚み2.8nm)及びSi層(高屈折率層、厚み4.2nm)を交互積層し(積層数40ペア)、多層反射膜21を上述のガラス基板上に形成した。イオンビームスパッタリング法による多層反射膜21の成膜の際、イオンビームスパッタリングにおけるガラス基板の主表面の法線に対するMo及びSiスパッタ粒子の入射角度は30度、イオンソースのガス流量は8sccmとした。
【0167】
多層反射膜21の成膜後、更に連続して多層反射膜21上にイオンビームスパッタリングによりRu保護膜22(膜厚2.5nm)を成膜して多層反射膜付き基板20とした。イオンビームスパッタリング法によるRu保護膜22の成膜の際、基板の主表面の法線に対するRuスパッタ粒子の入射角度は40度、イオンソースのガス流量は8sccmとした。
【0168】
次に、上述したマスクブランク用基板10の主表面上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、吸収体膜24を成膜した。実施例試料1〜4及び比較例試料1〜3の場合には、表1に示すように、単層のTaN膜を吸収体膜24とした。実施例試料5及び比較例試料4の場合には、表2に示すように、吸収層であるTaBN膜及び低反射層であるTaBO膜の二層からなる積層膜を吸収体膜24とした。
【0169】
実施例試料1〜4及び比較例試料1〜3の吸収体膜24(TaN膜)の成膜方法は、次のとおりである。すなわち、上述したマスクブランク用基板10の主表面上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaN膜を成膜した。具体的には、Taターゲット(多軸圧延ターゲット)をマスクブランク用基板10の主表面に対向させ、Arガス及びNガスの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。表1に、実施例試料1〜4及び比較例試料1〜3のTaN膜を成膜する際のArガス及びNガスの流量等の成膜条件を示す。成膜後、X線光電子分光法(XPS法)により、TaN膜の元素組成を測定した。表1に、XPS法により測定した実施例試料1〜4及び比較例試料1〜3のTaN膜の元素組成を、TaN膜の膜厚と共に示す。尚、上記TaN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、微結晶構造であった。以上のようにして、実施例試料1〜4及び比較例試料1〜3の吸収体膜24(TaN膜)を成膜した。
【0170】
実施例試料5及び比較例試料4の吸収体膜24(吸収層であるTaBN膜及び低反射層であるTaBO膜の二層からなる積層膜)の成膜方法は、次のとおりである。すなわち、上述した多層反射膜付き基板20の保護膜22表面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、吸収層としてTaBN膜を成膜した。このTaBN膜は、TaB混合焼結ターゲット(Ta:B=80:20、原子比)に多層反射膜付き基板20を対向させ、Arガス及びNガスの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。表2に、実施例試料5及び比較例試料4のTaBN膜を成膜する際のArガス及びNガスの流量等の成膜条件を示す。成膜後、X線光電子分光法(XPS法)により、TaBN膜の元素組成を測定した。表2に、XPS法により測定した実施例試料5及び比較例試料4のTaBN膜の元素組成を、TaBN膜の膜厚と共に示す。尚、上記TaBN膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。
【0171】
実施例試料5及び比較例試料4では、次に、TaBN膜の上に更に、Ta、B及びOを含むTaBO膜(低反射層)を、DCマグネトロンスパッタリング法によって形成した。このTaBO膜は、第1膜のTaBN膜と同様に、TaB混合焼結ターゲット(Ta:B=80:20、原子比)に多層反射膜付き基板20を対向させ、Ar及びOの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。表2に、実施例試料5及び比較例試料4のTaBO膜を成膜する際のArガス及びOガスの流量等の成膜条件を示す。成膜後、X線光電子分光法(XPS法)により、TaBO膜の元素組成を測定した。表2に、XPS法により測定した実施例試料5及び比較例試料4のTaBO膜の元素組成を、TaBO膜の膜厚と共に示す。尚、上記TaBO膜の結晶構造をX線回折装置(XRD)により測定したところ、アモルファス構造であった。以上のようにして、実施例試料5及び比較例試料4の吸収体膜24(積層膜)を成膜した。
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】
【0174】
実施例試料1〜5及び比較例試料1〜4として得られたEUV露光用のマスクブランク用基板10の吸収体膜24の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所(具体的には、転写パターン形成領域の中心)の3μm×3μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した。表1及び表2に、原子間力顕微鏡による測定によって得られた表面粗さ(二乗平均平方根粗さ、Rms)、及び表面粗さのパワースペクトル解析によって求めた空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度(PSD)の最大値を示す。
【0175】
参考のため、図6に、実施例試料1及び比較例試料1のパワースペクトル解析した結果を示す。図6に示すように、実施例試料1のTaN膜表面における3μm×3μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度は、最大値39.0nm、最小値11.4nmであった。一方、図6に示すように、比較例試料1のTaN膜表面における3μm×3μmの領域を、原子間力顕微鏡で測定して得られる空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度は、最大値114.7nm、最小値34.0nmであった。
【0176】
表1及び表2に示すとおり、実施例試料1〜5の吸収体膜24の表面の3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)は、0.5nm以下であった。一方、比較例試料1、2及び4の吸収体膜24の表面の3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)は、0.5nmより大きかった。
【0177】
表1及び表2に示すとおり、実施例試料1〜5の吸収体膜24の表面の空間周波数1〜10μm−1におけるパワースペクトル密度の最大値は、50nm以下であった。一方、比較例試料1〜3の吸収体膜24の表面の空間周波数1〜10μm−1におけるパワースペクトル密度の最大値は、50nmより大きかった。
【0178】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron610」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で21.5nmの欠陥を検出できる検査感度条件で、実施例試料1〜5及び比較例試料1〜4の吸収体膜24の表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。尚、球相当直径SEVDは、欠陥の面積を(S)、欠陥の高さを(h)としたときに、SEVD=2(3S/4πh)1/3の式により算出することができる。欠陥の面積(S)、欠陥の高さ(h)は原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
【0179】
表1及び表2に、球相当直径SEVDの測定による、実施例試料1〜5及び比較例試料1〜4の吸収体膜24の表面の、疑似欠陥を含む欠陥検出個数を示す。実施例試料1〜5では、欠陥検出個数が最大でも合計18,572個(実施例試料5)であり、従来の欠陥検出個数50,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計18,572個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。これに対して、比較試料1〜4では、欠陥検出個数が最低でも合計58,113個(比較試料4)であり、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
【0180】
<反射型マスクブランク30の作製:実施例1及び2並びに比較例1及び2>
実施例1及び2並びに比較例1及び2の反射型マスクブランク30を、表3に示すような条件で作製した。すなわち、実施例試料1〜5及び比較例試料1〜4の場合と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10の表面に多層反射膜21を成膜した。その後、多層反射膜21の表面に、保護膜22を成膜し、保護膜22上に表3に示す吸収体膜24を成膜した。更にマスクブランク用基板10の裏面に裏面導電膜23を成膜することにより、実施例1及び2並びに比較例1及び2の反射型マスクブランク30を製造した。
【0181】
【表3】
【0182】
尚、実施例1及び2並びに比較例1及び2に用いる多層反射膜付き基板20の保護膜22及び多層反射膜21に対して、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の外側4箇所に、上記欠陥の位置を座標管理するための基準マークを集束イオンビームにより形成した。
【0183】
裏面導電膜23は、次のように形成した。すなわち、実施例1及び2並びに比較例1及び2に用いる多層反射膜付き基板20の多層反射膜21を形成していない裏面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、裏面導電膜23を形成した。当該裏面導電膜23は、Crターゲットを多層反射膜付き基板20の裏面に対向させ、Ar及びNの混合ガス(Ar:N=90%:10%)雰囲気中で反応性スパッタリングを行った。ラザフォード後方散乱分析法により裏面導電膜23の元素組成を測定したところ、Cr:90原子%、N:10原子%であった。また、裏面導電膜23の膜厚は20nmであった。以上のようにして、実施例1及び2並びに比較例1及び2の反射型マスクブランク30を製造した。
【0184】
実施例1及び2並びに比較例1及び2の反射型マスクブランク30の吸収体膜24の表面について、転写パターン形成領域(132mm×132mm)の任意の箇所(具体的には、転写パターン形成領域の中心)の3μm×3μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した。表3に、原子間力顕微鏡による測定によって得られた表面粗さ(二乗平均平方根粗さ、Rms)、及び表面粗さのパワースペクトル解析によって求めた空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度(PSD)の最大値を示す。
【0185】
表3に示すとおり、実施例1及び2の反射型マスクブランク30の吸収体膜24の表面の3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)は、0.5nm以下であった。一方、比較例1の反射型マスクブランク30の吸収体膜24の表面の3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)は、0.5nmより大きかった。
【0186】
表3に示すとおり、実施例1及び2の吸収体膜24の表面の空間周波数1〜10μm−1におけるパワースペクトル密度の最大値は、50nm以下であった。一方、比較例1及び2の吸収体膜24の表面の空間周波数1〜10μm−1におけるパワースペクトル密度の最大値は、50nmより大きかった。
【0187】
検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron610」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で21.5nmの欠陥を検出できる検査感度条件で、実施例試料1〜5及び比較例試料1〜4の吸収体膜24の表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。尚、球相当直径SEVDは、欠陥の面積を(S)、欠陥の高さを(h)としたときに、SEVD=2(3S/4πh)1/3の式により算出することができる。欠陥の面積(S)、欠陥の高さ(h)は原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
【0188】
表3に、球相当直径SEVDの測定による、実施例1及び2並びに比較例1及び2の吸収体膜24の表面の、疑似欠陥を含む欠陥検出個数を示す。実施例1及び2では、欠陥検出個数が最大でも合計19,986個(実施例2)であり、従来の欠陥検出個数50,000個超と比較して疑似欠陥が大幅に抑制された。合計19,986個程度の欠陥検出個数であれば、異物や傷などの致命欠陥の有無を容易に検査することができる。これに対して、比較例1及び2では、欠陥検出個数が最低でも合計69,950個(比較例2)であり、異物や傷などの致命欠陥の有無を検査することができなかった。
【0189】
<反射型マスク40の作製>
実施例1及び2並びに比較例1及び2の反射型マスクブランク30の吸収体膜24の表面に、スピンコート法によりレジストを塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚150nmのレジスト膜25を成膜した。次いで、所望のパターンの描画及び現像工程を経て、レジストパターン形成した。当該レジストパターンをマスクにして、所定のドライエッチングにより、吸収体膜24のパターニングを行い、保護膜22上に吸収体パターン27を形成した。なお、吸収体膜24がTaBN膜である場合には、Cl及びHeの混合ガスによりドライエッチングすることができる。また、吸収体膜24がTaBN膜及びTaBO膜の二層からなる積層膜である場合には、塩素(Cl)及び酸素(O)の混合ガス(塩素(Cl)及び酸素(O)の混合比(流量比)は8:2)によりドライエッチングすることができる。
【0190】
その後、レジスト膜25を除去し、上記と同様の薬液洗浄を行い、実施例1及び2並びに比較例1及び2の反射型マスク40を作製した。尚、上述の描画工程においては、上記基準マークを元に作成された欠陥データに基づいて、欠陥データと被転写パターン(回路パターン)データとを元に、致命欠陥が存在している箇所に吸収体パターン27が配置されるように描画データを補正して、反射型マスク40を作製した。得られた実施例1及び2並びに比較例1及び2の反射型マスク40について、高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron610」)を使用して欠陥検査を行った。
【0191】
高感度欠陥検査装置による測定では、実施例1及び2の反射型マスク40の場合には、欠陥は確認されなかった。一方、比較例1及び2の反射型マスク40の場合には、高感度欠陥検査装置による測定により、多数の欠陥が検出された。
【0192】
<位相シフト機能を有する吸収体膜が形成された反射型マスクブランク30の作製:実施例3〜5>
実施例3〜5の反射型マスクブランク30を、表4に示すような条件で作製した。実施例試料1〜5及び比較例試料1〜4の場合と同様に、EUV露光用のマスクブランク用基板10の表面に多層反射膜21を成膜した。その後、多層反射膜21の表面に、保護膜22を成膜し、保護膜22上に表4に示す吸収体膜24を成膜した。具体的には、DCスパッタリングにより、タンタル窒化膜(TaN膜)と、クロム炭化酸化窒化膜(CrCON膜)とを積層することによって、吸収体膜24を形成した。TaN膜は、次のように形成した。すなわち、タンタルターゲットを用い、ArガスとNガスとの混合ガス雰囲気とした反応性スパッタリング法で、表4に記載している膜厚のTaN膜(Ta:85原子%、N:15原子%)を形成した。CrCON膜は、次のように形成した。すなわち、クロムターゲットを用い、ArガスとCOガスとNガスの混合ガス雰囲気とした反応性スパッタリング法で、表4に記載している膜厚のCrCON膜(Cr:45原子%、C:10原子%、O:35原子%、N:10原子%)を形成した。更に、実施例1及び2と同様に、マスクブランク用基板10の裏面に裏面導電膜23を成膜することにより、実施例3〜5の反射型マスクブランク30を製造した。
【0193】
【表4】
【0194】
実施例3〜5の反射型マスクブランク30の吸収体膜24の表面について、実施例1及び2と同様に、転写パターン形成領域の中心)の3μm×3μmの領域を原子間力顕微鏡で測定した。表4に、原子間力顕微鏡による測定によって得られた表面粗さ(二乗平均平方根粗さ、Rms)、及び表面粗さのパワースペクトル解析によって求めた空間周波数1〜10μm−1のパワースペクトル密度(PSD)の最大値を示す。
【0195】
表4に示すように、実施例3〜5の反射型マスクブランク30の吸収体膜24の表面の3μm×3μmの領域において、原子間力顕微鏡で測定して得られる二乗平均平方根粗さ(Rms)は、0.5nm以下と良好であった。
【0196】
また、実施例3〜5の吸収体膜24の表面の空間周波数数1〜10μm−1のパワースペクトル密度(PSD)の最大値は50nm以下であり、積分値も800×10−3nm以下と良好であった。
【0197】
次に、実施例1及び2と同様に、検査光源波長193nmの高感度欠陥検査装置(KLA−Tencor社製「Teron610」)を使用して、球相当直径SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)で21.5nmの欠陥を検出できる検査感度条件で、実施例3〜5の吸収体膜24の表面における132mm×132mmの領域を欠陥検査した。
【0198】
その結果、実施例3の吸収体膜24の表面の欠陥検出個数は6,254個と一番少なく、次いで、実施例4の吸収体膜24は10,094個、実施例5の吸収体膜24は25,212個となり、異物や傷などの地名欠陥の有無を容易に検査ですることができるレベルの欠陥検出個数であった。
【0199】
<半導体装置の製造方法>
上述の実施例1乃至4、並びに比較例1及び2の反射型マスク40を使用し、露光装置を使用して、半導体基板である被転写体上のレジスト膜にパターン転写を行い、その後、配線層をパターニングして、半導体装置を作製すると、パターン欠陥のない半導体装置を作製することができる。
【0200】
尚、上述の多層反射膜付き基板20、及び反射型マスクブランク30の作製において、マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面に、多層反射膜21及び保護膜22を成膜した後、上記主表面とは反対側の裏面に裏面導電膜23を形成したがこれに限らない。マスクブランク用基板10の転写パターンが形成される側の主表面とは反対型の主表面に裏面導電膜23を形成した後、転写パターンが形成される側の主表面に、多層反射膜21や、更に保護膜22を成膜して多層反射膜付き基板20、更に保護膜22上に吸収体膜24を成膜して反射型マスクブランク30を作製しても構わない。
【0201】
[符号の説明]
10 マスクブランク用基板
20 多層反射膜付き基板
21 多層反射膜
22 保護膜
23 裏面導電膜
24 吸収体膜
25 エッチングマスク膜
26 マスクブランク用多層膜
27 吸収体パターン
30 反射型マスクブランク
40 反射型マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6