特許第6388857号(P6388857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388857
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20180903BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20180903BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   !H01M8/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-176008(P2015-176008)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-54609(P2017-54609A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤森 弘幸
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−63352(JP,A)
【文献】 特開2008−257974(JP,A)
【文献】 特開2014−234969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、ガスの流通する配管に設置されて前記ガスの圧力を検出する圧力センサと、を含む燃料電池システムであって、
前記圧力センサは、前記配管での前記ガスの流通方向に交差する方向へボディの軸方向が延びる状態で前記配管に設置されるとともに、
前記配管の内側に露出した前記ボディの軸方向一端面から凹む凹部と、前記凹部の底に配置された受圧部と、
毛細管現象によって前記受圧部の水分除去を行うために前記ボディに取り付けられた除水部材と、を有し、
前記除水部材は、前記凹部の内周面及び前記受圧部から離間した状態で前記凹部内に位置する第1端部、及び前記凹部外に位置する第2端部を有する棒状の複数の排水部と、
前記複数の排水部を保持した保持部と、
隣り合う前記排水部同士の間に画定された隙間と、を含み、
前記隙間が、前記第1端部の先端から前記第2端部側に向かうに従い徐々に狭くなっていることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記排水部の前記第1端部は、前記第2端部側から第1端部の先端に向かうに従い尖る形状である請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記圧力センサは、前記燃料電池に接続された配管に設置されている請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記複数の排水部は、前記保持部の周縁部に沿って配列されている請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記除水部材は、前記隙間に連通した水溜凹部を前記保持部に備える請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池と、圧力センサと、を含む燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素との化学反応によって発電を行う。燃料電池には、ガスとして水素と空気が所定の圧力で供給されており、その圧力を測定するために、空気や水素の流通する配管には圧力センサが設置されている(例えば、特許文献1参照)。なお、圧力センサとしては、受圧部としてダイヤフラムを備えたものが一般的であり、ダイヤフラムが圧力を受けて変位して圧力を検出可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−231202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、燃料電池に供給される空気中には、大気中に含まれる水蒸気が含まれ、燃料電池から排出された空気や水素には、酸素と水素の反応によって生成した生成水が含まれる。このため、空気や水素の流通する配管に設置された圧力センサにおいては、その受圧部で水蒸気が結露する等して水滴が付着することがある。そして、受圧部に水滴が付着していると、冷寒時には、燃料電池の発電が停止されている間に水滴が受圧部で凍結してしまう虞がある。すると、燃料電池の発電時には、凍結を原因として受圧部の圧力検出精度が低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、圧力センサの受圧部から水分を除去することができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための燃料電池システムは、燃料電池と、ガスの流通する配管に設置されて前記ガスの圧力を検出する圧力センサと、を含む燃料電池システムであって、前記圧力センサは、前記配管での前記ガスの流通方向に交差する方向へボディの軸方向が延びる状態で前記配管に設置されるとともに、前記配管の内側に露出した前記ボディの軸方向一端面から凹む凹部と、前記凹部の底に配置された受圧部と、毛細管現象によって前記受圧部の水分除去を行うために前記ボディに取り付けられた除水部材と、を有し、前記除水部材は、前記凹部の内周面及び前記受圧部から離間した状態で前記凹部内に位置する第1端部、及び前記凹部外に位置する第2端部を有する棒状の複数の排水部と、前記複数の排水部を保持した保持部と、隣り合う前記排水部同士の間に画定された隙間と、を含み、前記隙間が、前記第1端部の先端から前記第2端部側に向かうに従い徐々に狭くなっていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、燃料電池システムでは圧力センサによって配管を流れるガスの圧力が検出される。ガスに含まれる水蒸気が凝縮して水滴となって、凹部内で受圧部に付着した場合、その水滴が排水部における第1端部の先端に接触すると、隙間を利用した毛細管現象によって、水滴が排水部に沿って吸い上げられ、第1端部の先端から第2端部側に移動して受圧部から除去される。さらに、排水部に沿って第2端部側に向けて移動した水滴は、配管内のガスの流れによって引っ張られ、ガスに乗って除水部材から除去される。よって、除水部材によって、受圧部から水分を除去することができる。
【0008】
また、燃料電池システムについて、前記排水部の前記第1端部は、前記第2端部側から第1端部の先端に向かうに従い尖る形状であるのが好ましい。
これによれば、第1端部が尖る程、隣り合う排水部同士の隙間が、第1端部の先端から第2端部側に向かうに従い狭くなり、毛細管現象が発生しやすく、水滴を吸い上げやすい。また、第1端部が尖る程、第1端部の先端と受圧部との間に水滴が留まりにくくなる。
【0009】
また、燃料電池システムについて、前記圧力センサは、前記燃料電池に接続された配管に設置されている。
これによれば、燃料電池には配管を介して空気が供給され、空気には大気中の水蒸気が含まれる。また、燃料電池からは酸素と水素の反応によって生じた生成水が排出される。よって、燃料電池に接続された配管を流れるガスには、水蒸気が含まれており、その配管に設置された圧力センサの受圧部には水滴が付着しやすい。しかし、圧力センサが除水部材を備えることで、受圧部から水滴を除去して水分を除去することができる。
【0010】
また、燃料電池システムについて、前記複数の排水部は、前記保持部の周縁部に沿って配列されていてもよい。
これによれば、水滴は、凹部の内周面といった受圧部の周縁部に溜まりやすい。排水部を保持部の周縁部に配列することで、受圧部の周縁部を複数の排水部で対応して水分除去しやすくなる。
【0011】
また、燃料電池システムについて、前記除水部材は、前記隙間に連通した水溜凹部を前記保持部に備えていてもよい。
これによれば、毛細管現象により、排水部に吸い上げられた水滴は、隙間から水溜凹部に溜まる。そして、水溜凹部内の水滴は、配管内のガスによって引っ張られ、水溜凹部から除去される。よって、水溜凹部に水滴を留まらせることで、排水部を移動してきた水滴が受圧部側へ逆戻りすることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧力センサの受圧部から水分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】燃料電池システムを模式的に示す図。
図2】排気管に設置された圧力センサを示す部分断面側面図。
図3】ボディ、除水部材、取付部材を示す分解斜視図。
図4】排気管に設置された圧力センサを示す部分断面図。
図5】圧力センサでの水滴の移動を示す図。
図6】別例の除水部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、燃料電池システムを具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。燃料電池システムは、燃料電池式産業車両としてのフォークリフトに搭載されている。
図1に示すように、燃料電池システム11は、燃料電池FCを備える。本実施形態の燃料電池FCは、固体高分子型燃料電池によって構成されている。燃料電池FCでは、アノードに供給される水素と、カソードに供給される酸素との電解質膜を介した起電反応により発電が行われる。燃料電池FCで発電された電力は、燃料電池システム11に接続される走行用モータ(図示せず)などの負荷に供給される。
【0015】
燃料電池システム11は、燃料電池FCの他に、燃料電池FCに供給するガスとしての水素ガスを貯蔵するための水素ガスタンク21と、燃料電池FCにガスとしての酸素を含む空気を圧送するためのコンプレッサ31とを備える。
【0016】
コンプレッサ31と燃料電池FCのカソード側の入口とは酸素供給配管32によって接続され、燃料電池FCのカソードには、コンプレッサ31によって圧縮された空気が供給される。水素ガスタンク21と燃料電池FCのアノード側の入口とは水素供給配管22によって接続され、燃料電池FCのアノードには、水素ガスタンク21から送り出される水素ガスが供給される。水素供給配管22の途中には、水素供給配管22を開放又は閉鎖して水素ガスの流量を調節する電磁弁式の水素供給制御弁23が設けられている。
【0017】
また、燃料電池FCのアノード側の出口には、排気管24を介して気液分離器25が接続されている。気液分離器25は、燃料電池FCから排出されたガス中に含まれる液体成分を重力を利用して分離する自然落下式のものである。
【0018】
また、気液分離器25の出口には水素循環管26の一端が接続されるとともに、この水素循環管26の他端は、水素供給配管22における燃料電池FCと水素供給制御弁23との間に接続されている。水素循環管26の途中には水素循環ポンプ27が設けられている。そして、水素循環ポンプ27により、燃料電池FCから排出された水素ガスが水素循環管26を介して水素供給配管22に圧送され、燃料電池FC内で使用されなかった水素ガスは、水素循環管26を介して再び燃料電池FCに戻される。
【0019】
また、水素供給配管22において、水素循環管26の接続部と水素供給制御弁23との間には水素側の圧力センサ39が設けられている。水素側の圧力センサ39は、受圧部が水素供給配管22内に露出する状態で水素供給配管22に設置されている。この水素側の圧力センサ39は、水素ガスタンク21から水素供給配管22に供給される水素ガスの圧力を検出する。つまり、水素側の圧力センサ39は、燃料電池FCに流入する水素ガスの圧力を検出する。
【0020】
燃料電池FCのカソード側の出口には排気管19の一端が接続されている。排気管19は、燃料電池FC内で使用されなかった空気や燃料電池FC内での水素ガス及び酸素の電気化学反応で生成した水(反応生成水)を排出する。排気管19の途中には排水機構14が設けられている。
【0021】
また、排気管19には、酸素側の圧力センサ40が設置されている。酸素側の圧力センサ40は、受圧部が排気管19内に露出する状態で排気管19に設置されている。酸素側の圧力センサ40は、燃料電池FCのカソード側に供給された後の空気の圧力を検出するためのセンサである。コンプレッサ31で加圧され、燃料電池FCに供給された空気の圧力は、燃料電池FCで圧損が生じることから、その燃料電池FCでの圧損を加味して、燃料電池FCより下流側の排気管19で検出される。
【0022】
次に、酸素側の圧力センサ40の構造について説明する。
図2に示すように、圧力センサ40は、ボディ41を備え、ボディ41の軸線Lの延びる方向をボディ41の軸方向とする。圧力センサ40は、ボディ41の軸方向一端側の外周面に雄ねじ部41aを備え、ボディ41の軸方向他端側にセンサ本体41bを備える。排気管19には、圧力センサ40を螺着するための雌ねじ部19aが設けられ、この雌ねじ部19aに圧力センサ40の雄ねじ部41aを螺合することにより、圧力センサ40が排気管19に設置されている。
【0023】
図3又は図4に示すように、圧力センサ40は、ボディ41の軸方向一端面が排気管19内に露出した状態で排気管19に設置されている。よって、圧力センサ40は、ボディ41の軸方向が、排気管19での空気の流通方向に交差する状態で排気管19に設置されている。圧力センサ40は、ボディ41の軸方向一端面に凹部42を備える。凹部42は、ボディ41の軸方向一端面から、ボディ41の軸方向に沿って凹む形状である。圧力センサ40は、凹部42の底にダイヤフラム式の受圧部43を備える。よって、受圧部43は、ボディ41の軸方向一端面から奥まった位置に存在する。圧力センサ40は、排気管19内の圧力を受圧部43を介してセンサ本体41bの感圧素子で計測し、電気信号に変換し、出力する。
【0024】
圧力センサ40は、毛細管現象によって受圧部43の表面から水分除去を行う除水部材50を備え、除水部材50は、取付部材70によってボディ41に取り付けられている。除水部材50は、棒状の複数の排水部61と、複数の排水部61を保持した保持部としての天板51と、隣り合う排水部61同士の間に画定された隙間Sと、を含む。除水部材50は合成樹脂製であり、略円筒状である。
【0025】
天板51は、円板状であり、ボディ41の軸線Lの延長線上に配置され、かつ凹部42の外側に配置されている。天板51の中心部には螺子孔51aが設けられている。複数の排水部61は、細板の棒状であり、天板51の周縁部から受圧部43に向けて突設されている。また、複数の排水部61は、天板51の周縁部に等間隔おきに配列されている。各排水部61は、その長手方向の両端部のうち、凹部42内に位置する一方の端部に第1端部61aを有し、凹部42外に位置する他方の端部に第2端部61bを有する。第1端部61aは凹部42内で受圧部43に対峙する端部であり、第2端部61bは天板51に一体化された端部である。
【0026】
また、各排水部61において、天板51の周方向に沿う寸法を幅とすると、各排水部61は、第1端部61aでの幅が、第2端部61b側から第1端部61aの先端に向かうに従い尖る形状である。よって、本実施形態の第1端部61aとは、排水部61のうち、幅の変位する部位のことを示し、先細に尖る部位のことを示す。よって、凹部42には、各排水部61における第1端部61aの全てと、第1端部61a以外の部位の一部が入り込んでいる。なお、各排水部61において、天板51の径方向に沿う寸法である厚みは、全ての排水部61で同じである。
【0027】
各排水部61は、第1端部61aが凹部42内に位置する状態でボディ41の軸方向に沿って凹部42内から凹部42外まで直線状に延び、第2端部61bが凹部42の外側で天板51に連結されている。各排水部61において、第1端部61aの外面は、凹部42の内周面から離間し、第1端部61aの先端は受圧部43から離間している。第1端部61aの先端と受圧部43との離間距離は、第1端部61aの先端と受圧部43との間に水滴Wが存在したとき、毛細管現象によって水滴Wが排水部61に吸い付くことができる距離に設定されている。
【0028】
また、第1端部61aの外面と凹部42の内周面との離間距離は、毛細管現象によって水滴Wが排水部61の外面に沿って移動したとき、水滴Wが排水部61の外面と凹部42の内周面との間で留まらず、動くことのできる距離に設定されている。
【0029】
天板51の周方向に隣り合う排水部61同士の間には、隙間Sが存在している。各排水部61の第1端部61aは、先端に向かうに従い尖る形状である。このため、周方向に隣り合う第1端部61a同士で画定された隙間Sは、第1端部61aの先端から第2端部61b側に向かうに従い徐々に狭くなっている。一方、尖った部分以外で形成された隙間Sは、ボディ41の軸方向に沿って一定の広さである。
【0030】
取付部材70はコ字状である。取付部材70は、天板51に取り付けられる矩形状の本体部71と、本体部71の長手方向両端から矩形状に突出した取付片72とを含む。本体部71の長手方向及び短手方向の中央部には貫通孔71aが存在し、貫通孔71aに挿通された螺子74は、除水部材50の天板51に設けた螺子孔51aに螺合され、この螺合により、取付部材70が除水部材50に一体化されている。
【0031】
各取付片72の先端部には、貫通孔72aが存在し、この貫通孔72aに挿通された螺子75は、圧力センサ40のボディ41に螺着されている。この螺着により、取付部材70が圧力センサ40のボディ41に取り付けられるとともに、除水部材50が圧力センサ40に取り付けられている。取付部材70による除水部材50の取付状態では、各第1端部61aの先端が受圧部43から離間するように、取付片72のボディ41への取付位置が調節されている。
【0032】
そして、除水部材50を含む圧力センサ40は、取付部材70によって除水部材50が取り付けられた状態で、除水部材50及び取付部材70を雌ねじ部19aの内側を通過させて排気管19内に挿入し、圧力センサ40の雄ねじ部41aを排気管19の雌ねじ部19aに螺合する。その結果、除水部材50が排気管19内に露出した状態で、圧力センサ40が排気管19に設置される。
【0033】
次に、燃料電池システム11における酸素側の圧力センサ40の作用を記載する。
さて、燃料電池システム11が駆動され、燃料電池FCが発電している状態では、酸素側の圧力センサ40によって、燃料電池FCでの圧損を加味して、燃料電池FCに供給される空気の圧力が検出される。排気管19では、燃料電池FC内で使用されなかった空気に加え、電気化学反応で生成した反応生成水が排出される。このため、排気管19内を流通する空気には水蒸気が含まれており、圧力センサ40の凹部42内では、水蒸気が結露する等して受圧部43に水滴Wが付着することがある。
【0034】
図5の2点鎖線に示すように、受圧部43と凹部42との境界線に沿って水滴Wが付着していると、受圧部43及び凹部42の内周面に対峙した排水部61において、その第1端部61aの先端に水滴Wが接触すると、毛細管現象により水滴Wが排水部61によって第2端部61b側に吸い上げられる。
【0035】
すると、水滴Wは、排水部61に沿って第2端部61b側へと移動していき、凹部42の外へと移動する。さらに、排水部61の第2端部61b側では、空気の流れによって水滴Wが天板51に向けて引っ張られる。そして、水滴Wは、空気の流れによって、天板51の表面を伝って除水部材50から除去される。
【0036】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)燃料電池システム11における酸素側の圧力センサ40は、受圧部43から水分を除去する除水部材50を含む。除水部材50は、受圧部43に対し所定位置に配置された複数の排水部61を備え、隣り合う排水部61同士の隙間Sは、第1端部61aの先端から第2端部61b側に向かうに従い徐々に狭くなっている。このため、受圧部43に付着した水滴Wに第1端部61aの先端が接触すると、毛細管現象を利用して水滴Wを排水部61に沿って吸い上げることができる。そして、吸い上げた水滴Wを凹部42の外へ移動させ、排気管19の空気の流れに乗せて除水部材50から除去することができる。よって、除水部材50によって、受圧部43から水分を除去することができ、燃料電池FCの発電停止時に水滴Wが受圧部43で凍結することを抑制できる。その結果として、燃料電池システム11の始動時に、受圧部43の凍結による圧力センサ40の検出精度の低下を抑制できる。
【0037】
(2)各排水部61の第1端部61aは、第2端部61b側から第1端部61aの先端に向かうに従い尖る形状である。このため、第1端部61aにおいて受圧部43に対峙する面積が小さく抑えられ、第1端部61aの先端と受圧部43との間に水滴Wが留まりにくくなる。その結果として、排水部61の先端に水滴Wが接触したとき、毛細管現象によって水滴Wを吸い上げやすくなる。
【0038】
(3)凹部42内では、水滴Wは、受圧部43の周縁部に付着しやすい。天板51の周縁部に排水部61を配列したことで、排水部61を受圧部43の周縁部に沿うように配置でき、受圧部43に付着した水滴Wを排水部61を利用して好適に除去することができる。
【0039】
(4)受圧部43に付着した水滴Wを除去するための方法として、排気管19内に空気を大量に送って水滴Wを受圧部43から吹き飛ばす方法があるが、この方法では、空気を大量に送るため、コンプレッサ31の制御等が面倒である。しかし、除水部材50を用い、毛細管現象を利用して受圧部43から水滴Wを除去することで、コンプレッサ31の制御等が必要なく、簡単に水滴Wを受圧部43から除去することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図6に示すように、除水部材50は、隙間Sに連通した水溜凹部51bを天板51に備えていてもよい。水溜凹部51bは、天板51において、排水部61同士の隙間Sを天板51に延長した部位を切り起こすことで形成されている。なお、天板51を切り起こすことにより、除水部材50は、受圧部43から離れる方向へ天板51から突出した突片51cを備える。
【0041】
このように構成した場合、毛細管現象により、排水部61に沿って吸い上げられた水滴Wは、隙間Sを通って水溜凹部51bに入り込む。そして、水滴Wは、排気管19を流れる空気により、水溜凹部51bから引っ張られ、空気の流れに乗って除水部材50から除去される。
【0042】
そして、水溜凹部51bにより、排水部61を移動してきた水滴Wを留めることができ、移動してきた水滴Wが排水部61に沿って受圧部43側に戻ることを抑制することができる。また、突片51cに水滴Wが付着すると、水滴Wを空気の流れにより乗せやすくなり、除水部材50から水滴Wを除去しやすくなる。
【0043】
なお、天板51に水溜凹部51bを形成しつつ、突片51cを天板51から除去した構成としてもよい。
○ 実施形態では、天板51の周縁部に排水部61を突設したが、これに限らず、天板51の周縁部に加え、天板51において周縁部で囲まれた領域全体に排水部61を設けてもよい。
【0044】
○ 排水部61は第1端部61aのみが先端に向かうに従い尖る形状であったが、排水部61の長手方向全体に亘って、第2端部61bから第1端部61aの先端に向かうに従い幅狭となり、尖る形状としてもよい。
【0045】
○ 実施形態では、コ字状の取付部材70を用いて除水部材50を圧力センサ40に取り付けたが、除水部材50を圧力センサ40に取り付ける方法は適宜変更してもよい。
○ 排水部61における第1端部61aの先端は、第2端部61b側から第1端部61aの先端に向かうに従い尖る形状であるが、これに限らない。例えば、第1端部61aは、先端に向かうに従い湾曲する円弧状であってもよいし、階段状に細くなる形状であってもよい。要は、隙間Sが受圧部43から離れるに従い徐々に狭くなり、毛細管現象によって水滴Wを吸い上げることができれば、排水部61の第1端部61aでの形状は適宜変更してもよい。
【0046】
○ 実施形態では、酸素側の圧力センサ40を排気管19に設置したが、圧力センサ40を酸素供給配管32に設置してもよい。このように構成した場合、コンプレッサ31から圧送される空気にも水蒸気が含まれるため、受圧部43に水滴Wが付着しやすいが、圧力センサ40が除水部材50を備えることにより、受圧部43から水分を除去することができる。
【0047】
また、水素側の圧力センサ39が除水部材50を備えていてもよいし、水素供給側において、排気管24や水素循環管26に圧力センサ39を設置した場合は、その圧力センサ39が除水部材50を備えていてもよい。
【0048】
○ ガスが流通する配管としての酸素供給配管32に、酸素側の圧力センサ40を設置してもよい。
○ 実施形態では、天板51に排水部61の第2端部61bが一体化された構成であったが、排水部61は、長手方向の途中で保持部によって一体化されて保持された構成であってもよい。この場合、保持部よりも外側に第2端部61bが突出している。
【0049】
○ 燃料電池システム11が搭載されるのは、フォークリフト以外の産業車両であってもよく、例えば、牽引車であってもよい。また、燃料電池システム11が搭載されるのは、産業車両でなく、自動車であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
S…隙間、FC…燃料電池、11…燃料電池システム、19…ガスの流通する配管としての排気管、22…ガスの流通する配管としての水素供給配管、39,40…圧力センサ、41…ボディ、42…凹部、43…受圧部、50…除水部材、51…保持部としての天板、51b…水溜凹部、61…排水部、61a…第1端部、61b…第2端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6