(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388893
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】分散アンテナシステム及び装置
(51)【国際特許分類】
H04W 16/26 20090101AFI20180903BHJP
H04W 24/10 20090101ALI20180903BHJP
H04W 52/18 20090101ALI20180903BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W24/10
H04W52/18
【請求項の数】25
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-126544(P2016-126544)
(22)【出願日】2016年6月27日
(62)【分割の表示】特願2014-503956(P2014-503956)の分割
【原出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2016-197888(P2016-197888A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2016年6月27日
(31)【優先権主張番号】13/079,558
(32)【優先日】2011年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593096712
【氏名又は名称】インテル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ベンカトラマン・シャンカー
(72)【発明者】
【氏名】シェイク・クラム・ピー
【審査官】
田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2002/0103001(US,A1)
【文献】
特開2010−068496(JP,A)
【文献】
特表2007−533178(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0190519(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0279729(US,A1)
【文献】
特開2009−206735(JP,A)
【文献】
ZTE,TR25.865 v1.0.0 Introduction of Improvements of distributed antenna for 1.28Mcps TDD [online],3GPP TSG-RAN WG1 #63 R1-106554,2010年12月 3日,全文,[retrieved on 2017.07.21], Retrieved from the Internet: <URL: http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_63/Docs/R1-106554.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
H04B 7/24− 7/26
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのベースステーションのカバレッジを拡張するために複数のリモートアンテナユニットと通信するように構成される分散アンテナシステム(DAS)のための装置であって:
前記リモートアンテナユニットへの伝達のためにダウンリンク信号を前記少なくとも1つのベースステーションから受信し、及び前記リモートアンテナユニットから受信した信号に基づいて前記少なくとも1つのベースステーションにアップリンク信号を送信するトランシーバ回路;及び
前記リモートアンテナユニットに動作可能に結合されるコントローラ回路であって、共通のダウンリンク信号により、前記トランシーバ回路から前記リモートアンテナユニットへの前記ダウンリンク信号の複数の送信を制御するように構成され、前記制御は、共通のダウンリンク信号を利用し且つ少なくとも1つのリモートアンテナユニットから受信される信号情報に少なくとも部分的に基づいて、前記リモートアンテナユニットのダウンリンク送信電力レベルを制御することを含む、コントローラ回路;
を有し、前記ダウンリンク信号は、前記リモートアンテナユニットの複数のアンテナユニットへ、前記トランシーバ回路により送信され、前記リモートアンテナユニットは、前記分散アンテナシステムのサービスエリア内でカバレッジを提供する、装置。
【請求項2】
前記トランシーバ回路は:
前記少なくとも1つのベースステーションから受信した無線周波数(RF)のダウンリンク信号をディジタルのダウンリンク信号に変換し;
前記サービスエリア内で送信するRFダウンリンク信号に変換するために、前記ディジタルのダウンリンク信号を前記リモートアンテナユニットに提供し;
前記リモートアンテナユニットからディジタルアップリンク信号を受信し;及び
前記少なくとも1つのベースステーションへ送信するために、前記ディジタルアップリンク信号をRFアップリンク信号に変換する;
ように更に構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラ回路は:
共通のダウンリンク信号を前記リモートアンテナユニットに提供し;及び
前記リモートアンテナユニットの前記ダウンリンク送信電力レベルを設定する
ように更に構成されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ダウンリンク送信電力レベルは、前記信号情報に少なくとも部分的に基づいている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記共通のダウンリンク信号はパイロット信号を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記信号情報は、前記リモートアンテナユニットにより送信された信号情報に基づいて収集された干渉関連情報を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記信号情報は、前記リモートアンテナユニットにおいて信号情報から収集されたサービス品質(QoS)情報を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記信号情報は、前記リモートアンテナユニットにおいて信号情報から収集されたダウンリンクレート及び位置情報を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項9】
前記信号情報は、1つ以上のユーザー装置(UE)からの前記リモートアンテナユニットにおいて収集された信号情報を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項10】
前記信号情報は、1つ以上のリモートアンテナユニットが、他の1つ以上のリモートアンテナユニットにより送信された信号に基づいて収集した信号情報を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラ回路及び前記リモートアンテナユニットの間にインターフェースを更に有し、前記コントローラ回路は、前記リモートアンテナユニットによるダウンリンク送信を設定するために前記インターフェースによりコマンド信号を提供するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項12】
前記コマンド信号は、前記リモートアンテナユニットのダウンリンク送信電力レベルを個別的に設定するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記コントローラ回路は、干渉レベルを分析し、かつ、前記リモートアンテナユニットにより使用される前記RFダウンリンク信号の周波数を選択するように更に構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項14】
前記リモートアンテナユニットは、ネットワーク状態を監視し、かつ、ダウンリンク信号の送信を制御する前記装置が使用するためにフィードバックを提供するように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記DASは、ロングタームエボリューション(LTE)規格に従う無線セルラネットワークの一部として動作するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記DASは、建物内部のカバレッジを改善するように前記建物の中で使用されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも1つのベースステーションのカバレッジを拡張するように構成される分散アンテナシステム(DAS)であって:
個々の複数のリモートアンテナユニットと通信するように構成されるマスターコントローラを有し、前記マスターコントローラは:
前記リモートアンテナユニットに伝達するためにダウンリンク信号を前記少なくとも1つのベースステーションから受信し、及び前記リモートアンテナユニットから受信した信号に基づいて前記少なくとも1つのベースステーションにアップリンク信号を送信するトランシーバ回路;及び
前記リモートアンテナユニットへの前記ダウンリンク信号の複数の送信を制御するコントローラ回路であって、前記制御は、共通のダウンリンク信号を利用し且つ少なくとも1つのリモートアンテナユニットから受信される信号情報に少なくとも部分的に基づいて、前記リモートアンテナユニットのダウンリンク送信電力レベルを制御することを含む、コントローラ回路;
を有し、前記リモートアンテナユニットは、前記分散アンテナシステムのサービスエリア内でカバレッジを提供する、分散アンテナシステム。
【請求項18】
前記少なくとも1つのベースステーションから受信した無線周波数(RF)のダウンリンク信号をディジタルのダウンリンク信号に変換し;
前記サービスエリア内で送信するRFダウンリンク信号に変換するために、前記ディジタルのダウンリンク信号を前記リモートアンテナユニットに提供し;
前記リモートアンテナユニットからディジタルアップリンク信号を受信し;及び
前記少なくとも1つのベースステーションへ送信するために、前記ディジタルアップリンク信号をRFアップリンク信号に変換する;
ことを特徴とする請求項17に記載の分散アンテナシステム。
【請求項19】
共通のダウンリンク信号を前記リモートアンテナユニットに提供し;及び
前記リモートアンテナユニットの前記ダウンリンク送信電力レベルを設定する;
ことを特徴とする請求項17に記載の分散アンテナシステム。
【請求項20】
前記ダウンリンク送信電力レベルは、前記信号情報に少なくとも部分的に基づいて設定され、前記信号情報は、1つ以上のユーザー装置(UE)からの前記リモートアンテナユニットにおいて収集された信号情報を含む、請求項19に記載の分散アンテナシステム。
【請求項21】
建物内部のカバレッジを拡張するように構成される分散アンテナシステム(DAS)であって:
前記建物内部のカバレッジを提供するための複数のリモートアンテナユニット;
前記リモートアンテナユニットへの伝達のためにダウンリンク信号を少なくとも1つのベースステーションから受信し、及び前記リモートアンテナユニットから受信した信号に基づいて前記少なくとも1つのベースステーションにアップリンク信号を送信するトランシーバ回路;及び
共通のダウンリンク信号により、前記トランシーバ回路から前記リモートアンテナユニットへの前記ダウンリンク信号の複数の送信を制御するコントローラ回路であって、前記制御は、共通のダウンリンク信号を利用し且つ少なくとも1つのリモートアンテナユニットから受信される信号情報に少なくとも部分的に基づいて、前記リモートアンテナユニットのダウンリンク送信電力レベルを制御することを含む、コントローラ回路;
を有し、前記信号情報は、1つ以上のユーザー装置(UE)からの前記リモートアンテナユニットにおいて収集された信号情報を含む、DAS。
【請求項22】
前記コントローラ回路は:
共通のダウンリンク信号を前記リモートアンテナユニットに提供し;
前記信号情報に少なくとも部分的に基づいて前記リモートアンテナユニットの前記ダウンリンク送信電力レベルを設定する;
ように構成され、前記共通のダウンリンク信号はパイロット信号を含む、請求項21に記載のDAS。
【請求項23】
前記信号情報は、前記リモートアンテナユニットにより送信された信号情報に基づいて収集された干渉関連情報を含む、請求項22に記載のDAS。
【請求項24】
前記信号情報は、前記リモートアンテナユニットにおいて信号情報から収集されたサービス品質(QoS)情報を含む、請求項22に記載のDAS。
【請求項25】
前記信号情報は、前記リモートアンテナユニットにおいて信号情報から収集されたダウンリンクレート情報を含む、請求項22に記載のDAS。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の背景〕
1.発明の分野
本発明は、概して、無線テレフォニーに関連した方法およびシステムに関する。より具体的には、本発明は、分散アンテナシステムを用いた無線システム、および関連する方法に関する。
2.先行技術および関連する背景情報の説明
現代の無線電話システムは、セル領域(cell region)内でユーザーと通信するためにしばしば分散アンテナシステム(「DAS」)を用いる。DASの送信電力は、ネットワーク容量を高めるために最適化されなければならない。しかしながら、従来の無線システムは、セル領域内においてユーザーのリアルタイム要求に基づいてセル容量を最適化しない。
【0002】
したがって、分散アンテナシステムを利用した無線電話システムの性能を最適化する必要性がある。
〔発明の概要〕
第1の態様では、本発明は、分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法を提供し、この方法は、分散アンテナシステムの複数の別々のアンテナユニットに、共通のダウンリンク信号を提供することと、収集されたユーザー情報に基づいてシステム性能を高めるためにアンテナユニットの利得を変化させることと、を含む。
【0003】
好適な実施形態では、分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法は、ユーザー装置(UE)からダウンリンク信号を記述する情報を収集することをさらに含み、この情報は、UEにより報告されたダウンリンク信号のピークデータレート(peak data rates)を含む。情報を収集することは、UEにより報告されるダウンリンク信号の最大持続可能データレートを収集することと、QOS(サービス品質)閾値を超えるQOSを有するUEの数を収集することと、をさらに含み得る。アンテナユニットの利得を変化させることは、マルチパス干渉を低減するため1つまたは複数のアンテナユニットの利得を低減することを含み得る。アンテナユニットの利得を変化させることは、分散アンテナシステムの総利得を変化させることを含み得る。アンテナユニットの利得を変化させることは、個々のアンテナユニットのリンク利得を変化させることも含み得る。アンテナユニットは、内壁により隔てられる屋内空間にグループ化され得、アンテナユニットの利得を変化させることは、アンテナユニットのグループの利得を独立して変化させることを含み得る。
【0004】
別の態様では、本発明は、分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法を提供し、この方法は、第1の電力レベルを有する共通のダウンリンク信号を、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットからユーザー装置(UE)へ伝送することであって、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットは物理的に分離されている、ことと、UEにより報告されるダウンリンク信号を記述する情報を収集することと、収集された情報に基づいて、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットのダウンリンク送信電力がいつ更新されるべきかを決定することと、第2の電力レベルを有するダウンリンク信号を、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットから伝送することと、を含む。
【0005】
分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法の好適な実施形態では、ダウンリンク信号を記述する情報を収集することは、UEにより報告されるダウンリンク信号のダウンリンクデータレートを収集することと、UEにより報告されるダウンリンク信号の信号品質情報を収集することと、UEにより報告される場所情報を収集することと、を含むことが好ましい。第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットのダウンリンク送信電力がいつ更新されるべきかを決定することは、収集された情報に基づいて現在の平均容量を推定することと、現在の平均容量を、先の平均容量と比較することと、をさらに含み得る。現在の平均容量が先の平均容量未満である場合、第2の電力レベルは、第1の電力レベル未満であってよい。現在の平均容量が先の平均容量より大きい場合、第2の電力レベルは、第1の電力レベルより大きくてよい。この方法は、第2の電力レベルを最大電力閾値と比較することと、第2の電力レベルがこの最大電力レベルを超えた場合に、第2の電力レベルを第1の電力レベルまで下げることと、をさらに含み得る。ダウンリンク信号を記述する情報を収集することは、UEにより報告されるダウンリンク信号のピークデータレートを収集することと、UEにより報告されるダウンリンク信号の最大持続可能データレートを収集することと、QOS(サービス品質)閾値を超えるQOSを有するUEの数を収集することと、をさらに含み得る。第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットのダウンリンク送信電力がいつ更新されるべきかを決定することは、収集された情報に基づいて現在の平均容量を推定することと、現在の平均容量を先の平均容量と比較することと、をさらに含み得る。第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットは、屋内に位置してよい。ダウンリンク信号は、単一セクターキャリア信号(single sector carrier signal)を含み得る。
【0006】
別の態様では、本発明は、分散アンテナシステムを提供し、この分散アンテナシステムは、ダウンリンク信号を提供する分散アンテナシステムサービスモジュールと、ダウンリンク信号を受信するために伝送ケーブルにより分散アンテナシステムサービスモジュールに連結され、ダウンリンク信号を無線伝送するように構成された、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットと、を含み、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットは、物理的に分離されている。分散アンテナシステムサービスモジュールは、アンテナユニットからダウンリンク信号を受信し、アンテナユニットにアップリンク情報を伝送する複数のユーザー装置(UE)からの収集された情報に基づいて、第1および第2のアンテナユニットの送信電力レベルを制御するように構成される。
【0007】
分散アンテナシステムの好適な一実施形態では、第1および第2のアンテナユニットは、屋内に位置しており、単一空間の別々のサービスエリアをカバーしている。分散アンテナシステムは、伝送ケーブルにより分散アンテナシステムサービスモジュールに連結され、ダウンリンク信号を無線伝送するように構成された、第3のアンテナユニットおよび第4のアンテナユニットをさらに含んでよく、第3のアンテナユニットおよび第4のアンテナユニットは、第1および第2のアンテナユニットから壁で隔てられた第2の空間において物理的に分離されている。分散アンテナシステムサービスモジュールは、第3および第4のアンテナユニットからダウンリンク信号を受信し、アップリンク情報を第2の空間のアンテナユニットに伝送する複数のユーザー装置(UE)からの、収集された情報に基づいて、第3および第4のアンテナユニットの送信電力レベルを制御するように構成され得る。
【0008】
別の態様では、本発明は、分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法を提供する。この方法は、複数のキャリアにおいて動作するマルチキャリアベースステーションから個々のキャリア負荷情報(individual carrier load information)を収集することと、収集されたキャリア負荷情報に基づいて、複数のキャリアのうち少なくとも1つのキャリアのダウンリンク送信電力を、少なくとも1つの他のキャリアとは異なる値へと変化させることと、を含む。
【0009】
好適な実施形態では、ダウンリンク送信電力を変化させることは、複数のキャリアのうち1つのキャリアが、予め規定された閾値より大きいキャリア負荷を有するかどうかを判断することと、予め規定された閾値より大きいキャリア負荷を有するキャリアのダウンリンク送信電力を増大させることと、をさらに含む。この方法は、複数のキャリアのダウンリンク送信電力動作パラメータを決定することと、予め規定された閾値より大きいキャリア負荷を有するキャリアのダウンリンク送信電力の利用可能な余剰増大(available surplus increase)を決定することと、をさらに含むのが好ましい。予め規定された閾値より大きいキャリア負荷を有するキャリアのダウンリンク送信電力を増大させることは、ダウンリンク送信電力の決定された利用可能な増大以下の量だけ、ダウンリンク送信電力を増大させることをさらに含むのが好ましい。ダウンリンク送信電力を増大させることは、複数のキャリアの利用可能な電力レベルの合計を決定することと、ダウンリンク送信電力動作パラメータ、および収集されたキャリア負荷情報に基づいて比例因子を決定することと、利用可能な電力レベルの合計と比例因子との積を決定することと、をさらに含み得る。利用可能な電力レベルの合計を決定することは、ダウンリンク送信電力動作パラメータおよび収集されたキャリア負荷情報に基づいていることが好ましい。この方法は、収集されたキャリア負荷がキャリア負荷閾値未満である場合に、ダウンリンク送信電力をベースライン値にリセットすることをさらに含むのが好ましい。この方法は、キャリア負荷を有するキャリアが予め規定された第2の閾値を超える時期を決定することと、キャリア負荷を有するキャリアが予め規定された第2の負荷閾値を超える時期を、一時的なヒステリシス閾値と比較することと、をさらに含むのが好ましい。この方法は、複数のキャリアからの収集されたキャリア負荷情報に基づいて、キャリアのランク付けリストを生成することをさらに含んでよく、ダウンリンク送信電力を変化させることは、キャリアのランク付けリストのうち最も高くランク付けされたキャリアについて、ダウンリンク送信電力を変化させることをさらに含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、無線システムを提供し、無線システムは、複数のキャリアを有するマルチキャリア通信信号を受信するマルチキャリアベースステーションを含み、マルチキャリアベースステーションは、マルチキャリア通信信号を増幅する1つまたは複数のマルチキャリア増幅器システムを含む。無線システムは、ベースステーションに連結され、ダウンリンク信号を提供する1つまたは複数のアンテナと、複数のキャリアのうち少なくとも1つのキャリアのダウンリンク送信電力を、少なくとも1つの他のキャリアとは異なる値へと変化させるための、電力管理制御ユニットと、をさらに含む。
【0011】
好適な実施形態では、電力管理制御ユニットは、複数のキャリアの負荷情報を収集し、ダウンリンク送信電力レベルの値をマルチキャリア増幅器システムに提供する、負荷収集手段を含む。負荷収集手段は、ネットワークに連結されていてよく、このネットワークから負荷情報を収集する。あるいは、負荷収集手段は、マルチキャリアベースステーションに連結されてもよく、マルチキャリアベースステーションから負荷情報を収集する。制御ユニットは、キャリアに対して電力レベル制御信号を生成するように構成された電力管理決定エンジンをさらに含むのが好ましく、電力レベル制御信号は、収集された負荷情報に基づいている。
【0012】
別の態様では、本発明は、無線分散アンテナシステムを提供し、これは、複数のキャリアを有するマルチキャリア通信信号を受信するマルチキャリアベースステーションを含み、マルチキャリアベースステーションは、マルチキャリア通信信号を増幅する1つまたは複数のマルチキャリア増幅器システムを含む。無線分散アンテナシステムは、複数の別々のアンテナシステムを有する分散アンテナシステムであって、マルチキャリアベースステーションに連結され、ダウンリンク信号を提供する、分散アンテナシステムと、マルチキャリアベースステーションに連結され、複数のキャリアの負荷情報を収集し、ダウンリンク送信電力のさまざまな値をマルチキャリア増幅器システムに提供する、制御ユニットと、をさらに含む。
【0013】
好適な実施形態では、制御ユニットは、マルチキャリアベースステーションから負荷情報を収集するようにさらに構成される。あるいは、制御ユニットは、ネットワークから負荷情報を収集するようにさらに構成される。制御ユニットは、複数のキャリアから負荷情報を収集する分散アンテナシステム管理サーバーと、キャリアに対して電力レベル制御信号を生成する電力管理決定エンジンと、をさらに含むのが好ましい。電力管理決定エンジンは、好ましくは、収集された負荷情報およびダウンリンク電力動作パラメータに基づいて、電力レベル制御信号を決定するように構成される。無線システムは、複数の第2のキャリアを有する第2のマルチキャリア通信信号を受信する第2のマルチキャリアベースステーションであって、第2のマルチキャリア通信信号を増幅する1つまたは複数の第2の増幅器を含む、第2のマルチキャリアベースステーションと、複数の第2の別々のアンテナシステムを有する第2の分散アンテナシステムであって、第2のマルチキャリアベースステーションに連結され、第2のダウンリンク信号を提供する、第2の分散アンテナシステムと、をさらに含むのが好ましい。制御ユニットは、好ましくは、第2のマルチキャリアベースステーションに連結され、複数の第2のキャリアから負荷情報を収集し、ダウンリンク送信電力の値を複数の第2のキャリアに提供する。
【0014】
本発明のさらなる特徴および態様は、以下の詳細な説明に記載する。
〔発明の詳細な説明〕
本発明の目的は、携帯電話、スマートフォン、または他のモバイルデバイスなどのユーザー装置に通信するための屋内分散アンテナシステムの性能を動的に最適化するためのシステムおよび関連する方法を提供することである。屋内分散アンテナシステムに関連する主な問題は、マルチパスフェージングである。ある実施形態では、ユーザー装置は、ダウンリンクデータレート、受信信号の品質、およびユーザー装置の場所など、アンテナユニットにより伝送されるダウンリンク信号を記述する情報を測定する。サービスモジュールが、この情報を収集し、アンテナユニットそれぞれの、最適化された電力レベルを決定する。サービスモジュールは、好適な実施形態では、分散アンテナシステム内部の、ただ1つのアンテナユニット、またはアンテナユニットのサブセットを最適化することができる。その後、アンテナユニットのうち1つまたは複数は、最適化された電力レベルで、ダウンリンク信号を伝送する。好適な実施形態では、最適化された電力レベルは、減少することができる。その結果、屋内分散アンテナシステムの性能が高められる。
【0015】
現代のモバイル通信ネットワークは、高められた効率および性能を必要とする。これらの目標は、ピーク使用時間中にネットワーク容量を増大し、モバイルデータデバイスのデータレートを高めると共に、信号品質およびネットワーク適用範囲を維持し、また、同じ場所の無線サービス(co-located wireless services)への有害な干渉を減少することによって、達成され得る。現代のスマートフォンは、動的に変化する無線トラフィックに対して応答するよう無線システムに追加要求する音声信号およびデータ信号のいずれも送受信する。さらに、通信媒体が音声からオンデマンドデータへと急速に移行するにつれて、通信標準の技術的進歩および進化により、無線サービスプロバイダにさらなる要求が課される。
【0016】
分散アンテナシステム(「DAS」)は、より良好な信号適用範囲を提供し、ネットワーク容量を改善し、大きなオフィスビル、病院、スタジアム、ショッピングモール、および大学のキャンパスなどの屋外の場所におけるデータレートを増大させるために、屋内の場所で採用されてきた。典型的なDASは、小さなサービスアンテナの集合であり、これらのアンテナは、所望の地理的エリアに広がり、ファイバーもしくは同軸ケーブルにより、ベースステーション信号がDASネットワークへと連結されるドナーノードへと戻って接続される。DASテクノロジーは、マクロのセル部位をより小さな領域に分割することによって、キャリアが、適用範囲エリアにおける切れ目(gaps)、およびマクロネットワーク内のデッドスポットを減少させることを可能にする。
【0017】
DASネットワークの従来的配備は、DASアンテナユニットまたはノードおよび遠隔ユニットの静的工学技術(static engineering)を伴い、アンテナユニットは、キャリア当たり、一定の標的電力レベルで動作する。この従来的アプローチは、所与のエリアにおいて、ある特定の品質の適用範囲を提供する。従来的配備は、工学技術の実践(engineering exercise)の一部として、マクロの信号パスロスおよび信号強度のみを考慮しているが、システムパラメータを、特定の配備シナリオに、または特定の容量のために微調整することはできない。
【0018】
従来のDASシステム(受動的および能動的の双方)では、−75dBmの受信信号レベルが、DASシステムの一般的なデザインガイドラインとして使用された。しかしながら、これらの受信信号レベルが、著しいマルチパスへとつながるものである場合、いくつかの動作条件下において、直交性が改善され得る場合には、受信信号レベルを−75dBmから−85dBmまで下げることが非常に有利である。このことは、DASシステムが、受信信号レベル(またはパスロス)を最適化して特定の環境および動作要件において直交性を増大させる目的で、個々のアクセスノードにおいて、遠隔的に利得/送信機電力(および他の動作パラメータ)を制御できることを必要とする。
【0019】
第3世代システム、例えば3Gシステムまたは3.5 G HSDPA(「高速ダウンリンクパケットアクセス」)システムは、1.8、3.6、7.2、14.0Mbit/s(「メガビット/秒」)のダウンリンク速度をサポートしている。より速いダウンリンク速度は、HSPA+で利用可能であり、これは、3GPP規格のリリース9で、最大42Mbit/sおよび84Mbit/sのダウンリンク速度を提供している。OFDM(「直交周波数分割多重」)は、10MHz以上のバンド幅を有するシステムについて、CDMA(「符号分割多元接続」)に比べ固有利点をもたらす。10〜20MHzの範囲のバンド幅は、多重入出力(「MIMO」)または適応アンテナシステム(「AAS」)などの、高度なアンテナ構造で達成可能である。OFDMは、CDMAプロトコルに基づくものに比べて、あまり複雑な計算を必要としないため、極めて高いピークデータレートが達成可能である。HSDPAは、四位相偏移変調(Quadrature Phase Shift Keying)(「QPSK」)のWCDMA(登録商標)に使用される変調、および高度な変調方式、例えば16直交振幅変調(16 Quadrature Amplitude Modulation)(「16QAM」)を採用している。無線チャネルの状況によって、異なるレベルの前方誤り訂正(すなわち、チャネル符号化)も使用され得る。例えば、3/4符号化速度(three quarter coding rate)は、転送されるビットの4分の3が、ユーザービットであり、ビットの4分の1が、誤り訂正ビットであることを必要とする。最適な変調および符号化速度を選択し迅速に更新するプロセスは、リンク適応と呼ばれる。
【0020】
HSDPA適応のさらなる利点は、WCDMA(登録商標)との完全な互換性であり、そのため、より新しいWCDMA(登録商標)ネットワークにおいて、ソフトウェアのみのアップグレード(software only upgrade)として配備され得る。最初に、リリース5のHSDPA対応デバイスは、3.6Mbpsのピーク速度で伝送することができる。HSUPA(「高速アップリンクパケットアクセス」)とも呼ばれる、拡張アップリンクプロトコル(「EUL」)のリリース6は、スループットの改善、待ち時間の減少、および容量の増大をもたらす。EUL、ならびに拡張専用チャネル(Enhanced Dedicated Channel)(「E−DCH」)は、最大で5.8Mbpsのデータレートを提供する。HSDPAとEULとの組み合わせは、HSPAと呼ばれる。ピークデータレートおよび容量をさらに増加させるために、3GPPのリリース7は、HSPAエボリューション(HSPA+とも呼ぶ)を導入し、これは、ダウンリンクではMIMO、64QAMを、アップリンクでは16QAMをサポートする。リリース8は、64QAMとMIMOとの組み合わせを通じて、または、64QAM変調でデュアルキャリアを使用することにより、42Mbpsのダウンリンクビットレートをサポートする。
【0021】
高データレートをサポートするこれらのテクノロジーは、スケジューリングに基づくシステムのスループットを最大にするため無線環境において各通信リンクのチャネル容量を十分に利用する無線リンク適応を必要とする。従来の高データレート無線リンクは、主に、屋外シナリオで配備された。屋内無線システムは、パスロスの増加と、E−DCHによりサポートされる信号処理技術に複雑な事態を持ち込む、急速に変化するマルチパス信号と、により、さらなる課題を提示している。E−DCHは、主に都市、郊外、および田舎の環境で使用するために開発された。
【0022】
これらの屋内(室内)での開発課題に取り組むため、本発明の実施形態は、遠隔管理可能なアクティブDASを提供し、これは、動作パラメータに基づいた、動的なシステム最適化を可能にする。これらの動作パラメータには、ピークデータレート、持続可能最大データレート、所与のQOS(「サービス品質」)レベルでのUE(「ユーザー装置」)数が含まれるが、これらに限定されない。DASシステムは、HSPAにおいて協調的なマルチコード最適化(co-operative multi-code optimization)を使用することにより、性能の柔軟性を示す。HSPA 7.2プロトコルを使用するシステムは、好ましくは、符号直交性の十分な利益を得るためにマルチパス干渉なしの環境で動作する。
【0023】
本発明の実施形態は、従来のDASシステムと対照をなす。従来のアプローチ、例えば、リリース7のHSPAにおけるMIMOは、伝送信号強度が、マルチパス効果を相殺するように増大されるべきであると示唆している。本発明の実施形態は、Wi−Fi、WiMax、および他の開発中のテクノロジーなどであるがこれらに限定されない、他の無線アクセステクノロジー(「RAT」)に適用されてもよい。RATは、ニュートラルホストアクティブDAS(neutral host active DAS)において実行され得、特に、無線アクセスがロードされバランスをとり、マルチモード、マルチバンドUEのある(with radio access loading and balancing and multi-mode, multi-band UEs)通信量の多い状況では、容易に入手可能であると共に、単一の無線アクセスの実行では可能とならない高レベルのQOSを提供する。さらに、スタジアムなどの一部の配備において、DASシステムは、セル分割(cell split)(すなわちセクター化DAS(sectorized DAS))を有する場合は特に、選択されたエリアで利得を最小化する必要がある。重なる領域で利得を選択的に制御する能力は、セクター間の干渉を減少させる。
【0024】
本発明の実施形態は、フレキシブルな遠隔管理システムを含み、これは、アンテナ当たりのパスにおけるDASの利得およびリンク利得の合計を変えることにより、パスのアンテナ当たりのEIRPを最適化することができる。さらに、実施形態は、システム性能を最大限にするために有効なチャネルを変更する目的で、個々の中継器利得(低出力zinwaveノード(low power zinwave nodes)の場合のように)を変化させることができる。したがって、アクティブDASシステム、および前述した制限を回避すると共に無線サービスを改良する手段を提供する方法を使用することが望ましい。
【0025】
シミュレーションでは、アクティブDASシステムが、従来システムに比べ、改良された性能を示すことが示唆される。HS−DSCH(「高速ダウンリンク共有チャネル」)における受信信号のSINR(「信号対干渉電力と雑音比(Signal to Interference-plus-Noise Ratio)」)は、以下の式により与えられ:
【0026】
【数1】
式中、αは、直交性因子であり、P
ownは、サービス提供しているベースステーションまたはアンテナからの合計受信電力であり、P
HS−DSCH=は、HS−DSCHチャネルにおける合計受信電力であり、P
otherは、別のベースステーションからの合計受信電力であり、SF
16は、16の拡散因子である。
【0027】
式1および直交性因子αは、HSPAネットワークの性能を分析する上で、安定したパラメータである。マルチパス環境は、拡散コードの直交性に影響を及ぼす場合があり、その結果、他のコードからのセル間干渉(intra-cell interference)が生じる。この影響は、(1−α)
*P
ownにより、式の分母においてとらえられる(captured)。別のコードからの電力は、自己干渉を結果として生じ、SINRを低減し、その結果、スループットを低減する場合がある。
【0028】
【表1】
上記表1は、DASの効果を示すシミュレーションである。Ec/loは、チップ当たりのエネルギー対干渉の比率(SINRの別の尺度)を表し、これは、直交性因子αの影響を含まない。直交性因子を考慮する場合、直交性がないことの影響が、表1に示されている。Ec/loが典型的には−16dB〜−13dBの範囲のマクロネットワークでは、スループットは、述べたとおりである。しかしながら、DASネットワークでは、Ec/loは、中継器により、典型的にはさらに大きく、また、−10dBとなり得る。しかしながら、最高の性能を得るため、直交性因子はやはり低くなくてはならない。利用可能なリンク利得は、62%〜200%の範囲で改善されたことに注意されたい。
【0029】
表1は、2〜3個の態様を示している。第一に、DAS配備の1つの利点は、HSPAネットワークの性能を改善する(DAS電力が−10dBのEc/loをもたらすように設定される場合)。第二に、表1は、高度の直交性での配備を有することの利点を示している。これら2つの態様は、最大の性能が実現されるまでDAS電力増幅器の電力を自動調節するDASシステムの重要性を強調するものである。
【0030】
図1は、本発明による、複数の屋内の部屋にサービス提供するDASシステム8の表示である。DASシステム8は、DASサービスモジュール30と、複数の遠隔アンテナユニット、例えば遠隔アンテナユニット20aおよび22aと、を含む。DASサービスモジュール30は、コントローラ60を含み、コントローラ60は、外部通信用の光ファイバーフィード10と、専用の制御および監視チャネル12と、に連結される。GPSアンテナ34およびドナーサービスアンテナ32も、コントローラ60に連結される。コントローラは、62aなどのインターフェースに連結され、これらのインターフェースは、ケーブル24a〜24fにより遠隔アンテナユニットに連結される。
【0031】
内部18a〜18dは、例えばオフィスビルの複数のフロアなどのフロアまたは密閉空間の外形を示している。内部18a〜18dは、壁36a〜36dなどの内部障害物を有し得る。この非限定的な例では、18dなどの各内部は、遠隔アンテナユニット20dおよび22dなどの、2つの遠隔アンテナユニットを有してよい。しかしながら、内部全体にわたって位置する1つまたは複数の遠隔アンテナユニットを使用することが企図される。20dおよび22dなどの遠隔アンテナユニットは、UE16cおよび16bなどのUEと通信する。
【0032】
これらの遠隔アンテナユニットはそれぞれ、内部の中でダウンリンク信号を伝送し、ダウンリンク信号は、UEに到達するまでに複数のパスを進む。その結果、UEは、伝送された信号の複数のコピーの重ね合わせを受け取り、その結果、建設的または相殺的干渉を生じる場合がある。このマルチパス干渉は、ユーザーが内部の中を動く際にユーザーに提供されるサービス品質に著しく影響し得る。例えば、UE16bは、パス40aおよび40cそれぞれにより、遠隔アンテナユニット20dおよび22dから直接、ダウンリンク信号を受信する。さらに、UE16bは、パス40bおよび40dそれぞれにより、壁36aおよび36bで部分的に反射されたダウンリンク信号も受信する。したがって、UE16bへのサービス品質は、パス40a〜40cを横断するダウンリンク信号の全体的な干渉によって決まる。ユーザーは、内部18dの中を動く際に、異なるレベルのサービス品質を経験し得る。
【0033】
他のシナリオでは、UEにより受信されるダウンリンク信号は、シャドーイングの結果として、減衰され得る。例えば、UE16cは、遠隔アンテナユニット20dから、減衰したダウンリンク信号を受信し得る。これは、この信号が、壁36cを通過するためである。遠隔アンテナユニット22dからのダウンリンク信号の強度は、UE16が、開口部38を通じてダウンリンク信号を受信するため、より強くなり得る。同様に、UE16aは、パス40fが妨げられていないパスであるため、遠隔アンテナユニット20aから、より強い伝送信号を受信する。UE16aは、パス40eが壁36eにより妨げられているので、遠隔アンテナユニット22aから、より弱い信号を受信する。
【0034】
したがって、複数の遠隔伝送器を備えた、単一のキャリアを支持するDASネットワーク8は、サポートされるテクノロジーおよび環境に基づいて、各遠隔アンテナユニットの送信電力レベルを最適化することができる。ダウンリンク速度またはチャネル品質に関するUEまたはモバイルステーションからのフィードバック情報は、所与のエリアにサービス提供する各DASクラスターについて求められる。このフィードバック情報は、サービス提供したクラスターの平均データレートを決定するために分析される。マクロ信号を繰り返すDASネットワークの場合、モバイルステーションからのGPS情報を使用して、DASによりサービスを受けるエリアのみに、分析を制限することができる。クラスターにサービス提供するすべてのDAS遠隔アンテナユニットからのダウンリンク送信電力は、P
initialから次第に増大する。このアルゴリズムは、クラスター容量が飽和状態になるまで、電力を増大させ続ける。このアルゴリズムは、単一のセクター信号を繰り返すクラスター、または、同じ周波数の再利用を実行するクラスターに、利用され得る。
【0035】
図2は、分散アンテナシステム8内において遠隔アンテナユニットのダウンリンク送信電力を最適化する例示的なプロセスを示すフローチャートである。本質的に、このプロセスは、UEから信号情報を収集し、システムの平均容量C
iを決定する。先の反復以来、容量が改善されていた場合、送信電力P
txは増加し、次の組の信号情報が収集される。一方、平均容量C
iが先の反復以来改善されていなかった場合、送信電力P
txは減少する。送信電力P
txは、最大電力レベルP
maxを超えることはできない。
【0036】
具体的には、このプロセスは、ステップ210で始まる。送信電力P
txは、初期電力レベルP
initialに設定され、初期容量C
i-1は、0に設定される(ステップ212)。信号情報は、UE16bおよび16cなどのUEから収集される(ステップ214)。この信号情報には、ダウンリンクデータレート、UEにより受信されるダウンロード信号品質、UEの場所情報、ピークデータレート、ダウンリンク信号の最大持続可能データレート、および/またはQOS(「サービス品質」)閾値を超えるQOSを有するUEの数が含まれ得るが、これらに限定されない。平均容量C
iは、DASクラスターの収集された信号情報に基づいて推定される(ステップ216)。現在の推定容量C
iは、先の平均容量C
i-1と比較される(ステップ218)。システムの平均容量が改善されている場合、プロセスはステップ220に進む。容量が改善されていない場合、プロセスは、ステップ224に進み、ここで送信電力P
txを低減し、ステップ226で終わる。送信電力P
txは増大され、P
tx+ΔPに設定される(ステップ220)。ある実施形態では、送信電力P
txは、遠隔アンテナユニット20dおよび22dなど、すべての遠隔アンテナユニットで増大される。好適な実施形態では、送信電力P
txは、遠隔アンテナ20dのみなど、ただ1つの遠隔アンテナ、または、すべての遠隔アンテナユニットのサブセットで、増大される。送信電力P
txは、次に、最大送信電力P
maxと比較される(ステップ222)。最大送信電力P
maxは、個々の遠隔アンテナユニットの最大電力であってよく、あるいは、1組の遠隔アンテナユニットの最大送信電力であってよく、あるいは、DASシステム8全体の最大送信電力であってよい。送信電力P
txが、最大送信電力P
max未満である場合、プロセスは、ステップ214に進む。別の状況では、プロセスは、ステップ224に進む。送信電力P
txは、低減され、P
tx−ΔPに設定される(ステップ224)。プロセスは、ステップ226で終了する。
【0037】
前記のとおり、屋内の分散環境(indoor, scattering environment)の存在は、不利益なものである。さらに、隣の遠隔アンテナユニットからの信号が、マルチパスフェージングを増大させ得る。このようなシナリオでは、各遠隔アンテナユニットからのダウンリンク送信電力を、全体の拡散(overall spread)を最小減にするレベルまで実際に低減することが、役立ち得る。
【0038】
実施形態は、バンド選択的電力管理(band selective power management)を用いて不均一なシステム性能を最適化するシステムおよび方法を提供する。ある実施形態では、キャリアそれぞれの、負荷容量およびダウンリンク送信電力動作パラメータを収集する。ダウンリンク送信電力動作パラメータは、各キャリアの、最小、最大、公称、および現在の送信電力レベルを含み得る。制御ユニットが、負荷およびダウンリンク送信電力動作パラメータに基づいて、キャリアの最適化されたダウンリンク送信電力レベルを決定する。選択されたキャリアの送信電力レベルは、キャリア負荷容量が最適化されるまで増大される。電力レベルは、その後、キャリアの負荷が低減されると、ベースライン性能パラメータまで低減され得る。
【0039】
従来的に、DASネットワークは、低い信号強度を経験する領域において、マクロのセルラー信号適用範囲を改良するために、配備される。これらのシステムは、容量問題の解決策として、スタジアムおよび会議場の中といった、通信量の多い配置において、均一な適用範囲を提供するためにも使用されてきた。これら2つのケースのいずれにおいても、ニュートラルホスト配置では特に、DASネットワークが複数のキャリアおよび複数のテクノロジーの要求を満たすことは、一般的である。これは、パーバンド電力増幅器(per band power amplifiers)、または代わりに、ベースステーション設備からの信号およびベースステーション設備への信号を反復するのに使用されるいくつかのワイドバンド低電力増幅器を採用することにより、達成される。ほとんどの適用において、各キャリアは、予め設定された電力レベル出力を有し、これは、操作中維持される。
【0040】
不均一なシステム性能は、バンド選択的電力管理を使用して最適化され得る。以下に記載する技術は、MIMO付きおよびMIMOなしで、2Gから4Gまで複数のテクノロジーをサポートするDASネットワークにおいて、電力管理による性能最適化に取り組むものであり、将来のテクノロジーおよびキャリアをサポートするために現在のDASネットワークの能力を高める。
【0041】
このようなDASシステムの配備およびプロビジョニングは、将来的拡張のために必要ないくらかのマージンを維持することに加えて、各テクノロジーに均一に良好な適用範囲を提供するために各キャリアに必要とされる電力を決定することに基づく。このようなプロビジョニング戦略は、サポートを必要とするテクノロジーの数が増えているので、効果がなくなってきている。本発明は、追加的キャリアが低コストで適応され得るように、費用効率が良い方法でこの問題の解決策を提供する。
【0042】
また、複数のキャリアが配備されるので、各キャリアの負荷は、ユーザーの使用パターンの変化、および新しいテクノロジーの採用により、均一でない場合がある。古いキャリアは依然として、あるテクノロジーについて最小の適用範囲を維持するためにサポートを必要としている場合がある。キャリア全体にわたる使用および容量の非均一性を利用して、キャリア全体にわたるインテリジェントな電力管理によってより多くの使用を経験するテクノロジーに対し、より多くの容量およびスループットを提供することができる。
【0043】
図3は、ライン301により1つまたは複数のマルチキャリアベースステーションサブシステム300と通信可能に連結された、DASシステム8を描く。
図4は、マルチキャリアベースステーションサブシステム300のうち1つの例示的な概略ブロック図を表す。1つまたは複数のマルチキャリアベースステーションサブシステム300は、ネットワーク305に連結された第1のマルチキャリアサブシステム302aを含み得る。マルチキャリアベースステーションサブシステム300は、やはりネットワーク305に連結された、概して「n」として302nにより示される、他のマルチキャリアサブシステムも有し得る。第1のマルチキャリアサブシステム302aは、キャリアトランシーバー331aおよび332aにより表される1つまたは複数のキャリアトランシーバーを含む。キャリアトランシーバー331aおよび331aは、
図3にライン301として描かれるライン301aを経由してDASシステムに音声およびデータ通信信号を提供する、第1のマルチキャリア電力増幅器二重化システム335aに連結される。同様に、「第n」のマルチキャリアサブシステム302nは、キャリアトランシーバー331nおよび332nにより表される1つまたは複数のキャリアトランシーバーを含む。キャリアトランシーバー331nおよび331nは、ライン301nを経由して音声およびデータ通信信号を提供する、対応するマルチキャリア電力増幅器二重化システム335nに連結される。
【0044】
マルチキャリアベースステーションサブシステム300は、DAS管理サーバー342および電力管理決定エンジン344を有する制御ユニット340をさらに含む。DAS管理サーバー342は、信号ライン310a、311a、31On、311nを経由して、第1のサブシステム301aおよび第nのサブシステム301nなど、ベースステーションサブシステムのうち1つまたは複数から、負荷情報を収集する。ある実施形態では、DAS管理サーバー342は、例えばリンク306により、ネットワーク305から負荷情報を収集することができる。以下に記載するように、DAS管理サーバー342は、収集された負荷情報に基づいて、キャリアのランク付けリストを決定する。電力管理決定エンジン344が、制御ライン320a、320n、320a、320nにより、キャリアそれぞれの電力レベルを決定する。
【0045】
各DAS電力増幅器(「PA」)で利用可能な電力の合計は、P
totalとして示される。キャリア「c」の合計公称電力量(total nominal power budget)は、P
c_nominalで表される。キャリア「c」の最小電力量(minimum power budget)は、P
c_minで表され、最大電力量は、P
c_maxとして表されることができる。
【0046】
各キャリアは、P
c_nominal、P
c_min、およびP
c_maxの値で設定される。さらに、(MIMO対応キャリアについて)キャリアが単一の伝送アンテナを使用しているのか、または2つの伝送アンテナを使用しているのかに基づいて、異なる値が設定され得る。パラメータは、電力利得で達成される容量利得に基づくテクノロジーに基づいて、操作される必要がある。
【0047】
DAS管理サーバーは、キャリア当たりの利用状態(utilization)に基づいてランク付けリストを決定するためにキャリア全体にわたりサービスを提供する全ベースステーションから負荷情報「L
c」を収集する。ある実施形態では、DAS管理サーバーは、例えば、ネットワークから負荷情報を収集し得る。あるいは、キャリア当たりの負荷の度合い(measure)は、キャリア当たりの平均RF信号電力を測定し、それを、較正された全負荷測定値と比較することによって、決定され得る。
【0048】
電力管理アルゴリズムは、特定のキャリアの負荷が、予め設定した閾値L
highを超えた場合に、システム負荷の変化に応答して、手動で、または自動的にトリガーされ得る。自動的なトリガーはヒステリシスも含んで、先のトリガーに対するシステム応答が安定状態に到達した後で、現在の負荷事象が持続し、任意の再配分分析が行われることを確実にすることができる。
【0049】
電力借用(Power borrowing)および電力共有(Power sharing)にふさわしいキャリアのリストは、以下のように識別される。キャリアは、負荷に基づいて2つのリストのうち1つに予め割り当てられ得る。L
c_current<L
l0Wである場合、「電力共有」のリストにキャリアが追加され得る。L
c_current>L
highである場合、「電力借用」のリストにキャリアが追加され得る。
【0050】
電力管理決定エンジンは、P
cを以下のように決定する。合計の余剰電力は、
P
surplus=P
surplus_1+P
surplus_2+・・・+P
surplus_n
により与えられ、
各キャリアのP
surplus_cは、
P
surplus_c=max(0,P
c_current−max(P
c_min,f(L
c)
*P
c_nominal))
により与えられ、
f(L
c)は、負荷L
cをサポートするのに必要な電力倍率(power scaling factor)を表し、P
c_minは、キャリア「c」の最小適用範囲を確実にするのに使用される閾値である。
【0051】
キャリアcに対する、要求される電力増加(power boost)は、
P
c_req=min((P
c_max−P
c_current),max((f(L
c)−1)
*P
c_nominal,0))
により与えられ、
f(L
cは、現在の利用状態を表し、これは、公称負荷の下では1に等しい。
【0052】
各キャリアについて、実際の電力増加は、
P
c_boost=f
*P
surplus
により与えられ、
f=P
c_req/(P
1_req+P
2_req+・・・P
n_req)であり、キャリアcの相対的な電力需要を表す。
【0053】
実施形態では、電力を再配分するための実際の処方は、1つのキャリアに対し、別のキャリアよりも電力の共有を優先させるための重み付け係数(weighing factors)も含み得る、他のインプリメンテーションを用いて行われることもできる。
【0054】
共有リストの各キャリアについて、
P
c=P
c_current+P
c_boost
である。
【0055】
各キャリアに配分された適切な利得は、次に、例えば、各信号をスケール変更する(scales)電力増幅器の入力装置において何らかの形態の可変信号減衰手段によって実行されることができ、キャリア当たりの適切な電力が、VVA(可変電圧減衰器)など、当技術分野で周知の技術を使用して、送られ得る。
【0056】
電力の再配分は、いくつかのキャリアの時間依存の負荷が減少すると、ベースラインパラメータに戻り得る。
【0057】
実施形態は、他のより頻繁に使用されるキャリアの性能および容量を改善するため、いくつかのキャリアにおいてより低い利用状態(および必要な容量)を交換する(trade off)のに使用され得る。実施形態は、(MIMO対応のもの、または、より高次のQAMを使用するもののように)高電力の利益を得ることができるキャリアを選択的に増大させることによって、全体的なネットワーク性能を有利に改善することができる。
【0058】
実施形態は、追加のキャリアを導入する目的で、現存するDASネットワークのオーバープロビジョニングおよび管理も可能とする。いくつかのキャリアによって使用されないか、または特定の期間において使用されない、余剰電力は、新しいDASのアップグレードを遅らせるための戦略として、必要としている他のものにインテリジェントに割り当てられ得る。
【0059】
図5は、前述した一般的説明に従ってキャリアのダウンリンク送信電力を最適化する例示的なプロセスを示す、フローチャートである。自動電力再配分が、ステップ510で始まる。キャリアそれぞれの最小、最大、公称、および現在の送信電力レベルなどのダウンリンク送信電力動作パラメータが決定される(ステップ512)。各DAS電力増幅器(「PA」)の総電力は、P
totalで示される。キャリア「c」の合計公称電力レベルは、P
c_nominalで表される。キャリア「c」の最小電力レベルおよび最大電力レベルはそれぞれ、P
c_minおよびP
c_maxで表される。
【0060】
前述のとおり、各キャリアは、P
c_nominal、P
c_min、P
c_maxの値で設定される。ある実施形態では、(MIMO対応キャリアについて)キャリアが単一の伝送アンテナを使用しているのか、または2つの伝送アンテナを使用しているのかに基づいて、これらのパラメータの異なる値が設定され得る。パラメータは、テクノロジー、および電力利得で達成される容量改善に基づいて決定される必要がある。
【0061】
DAS管理サーバー342は、ある実施形態では、キャリア当たりの利用状態に基づいて収集された負荷情報を決定するために、キャリアにわたってサービスを提供する全ベースステーションから負荷情報「L
c」を収集する(ステップ514)。DAS管理サーバー342は、ある実施形態では、リンク306を経由して、ネットワーク5からキャリア負荷情報を収集し得る。これらの非限定的な例では、収集された負荷情報は、ランク付けリストなどのさまざまな形態で、または、全負荷測定値の割合として、表され得る。
【0062】
例えば、
図6Aは、キャリアの負荷のランク付けリストを生成するための例示的なプロセスを示すフローチャートを描く。このプロセスは、ステップ610で始まり、全ベースステーション(BS)からのキャリアすべての負荷情報が収集される(ステップ612)。負荷情報に基づいたキャリアのランク付けリストが生成され(ステップ614)、プロセスが終了する(ステップ616)。
【0063】
あるいは、キャリア当たりの負荷の度合いは、
図6Bに示すように、キャリア当たりの平均RF信号電力を測定し、それを、較正された全負荷測定値と比較することにより、決定されることができる。プロセスが開始され(ステップ620)、キャリア当たりの平均RF信号電力P
cが計算される(ステップ622)。L
cの推定値は、P
currentとP
full_loadの割合に基づいて計算される(ステップ624)。このプロセスはステップ626で終わる。
【0064】
図5を参照すると、ある実施形態では、電力管理制御装置が、例えば特定のキャリアの負荷L
cが予め設定した閾値L
highを超えたときに、システム負荷の特定の変化に応答して、トリガーされ得る(ステップ516)。このトリガーは、ある実施形態では、ヒステリシスも含んで、先のトリガーに対するシステム応答が安定状態に到達した後で、現在の負荷事象が持続し、任意の再配分分析が行われることを確実にすることができる(ステップ518)。例えば、L
cがL
highを超えたことが検知されてから経過した時間T
cが決定され、予め決定された閾値T
hysteresisと比較される(ステップ518)。ある実施形態では、T
cは、L
cがL
highを下回るとゼロにリセットされる。T
hysteresisは、送信電力レベルの変化を必要とするために負荷がL
highを超えなければならない時間である。この特徴により、システムがキャリア負荷の即時変動に対して反応しないことが確実となる。T
cがT
hysteresisを超えると、プロセスはステップ520へと続く。別の状況では、プロセスはステップ514に戻り、負荷情報がキャリアから収集される。
【0065】
ある実施形態では、電力管理制御装置は続けて、以下のように、送信電力の増大を決定する。まず、余剰合計P
surplusが決定される(ステップ520)。本明細書で使用される場合、余剰および合計余剰電力レベルとは、キャリアの利用可能な電力、および複数のキャリアの利用可能な合計電力をそれぞれ指す。例えば、キャリアの利用可能な電力は、現在の送信電力と、キャリアが所与の領域内で伝送するのに必要とされる最小電力レベルとの間の差により表され得る。
【0066】
図6Cは、キャリアそれぞれの余剰電力(すなわち利用可能な電力)を決定するプロセスの、例示的で非限定的な例を示すフローチャートである。このプロセスは、ステップ630で始まり、ステップ632へと続き、ここでキャリア指定パラメータc、およびP
surplusの値がゼロに設定される。キャリア指定パラメータcは、キャリアの総数Num_carriersと比較される(ステップ634)。キャリア指定パラメータcがキャリアの総数Num_ carriers未満である場合、P
surplusが計算される(ステップ636)。別の状況では、プロセスが終了する(ステップ640)。
【0067】
余剰電力の合計は、以下の式により与えられ:
P
surplus=P
surplus_1+P
surplus_2+・・・+P
surplus_n
各キャリアのP
surplusは、送信電力情報に基づいて、以下により決定され得:
P
surplus_c=max(0,P
c_current−max(P
c_min,f(L
c)
*P
c_nominal))
f(L
c)は、負荷L
cをサポートするのに必要な電力倍率を表し、P
c_minは、キャリア「c」の最小適用範囲を確実にするのに使用される閾値である。f(L
c)は、現在の利用状態を表し、これは、公称負荷の下では1に等しい。ある実施形態では、f(L
c)は、
f(L
c)=L
c/L
nominal
として表され得る。
【0068】
キャリア指定パラメータcは、1ずつ増加し(ステップ638)、プロセスはステップ634に戻る。
【0069】
図5を参照すると、各キャリアの要求電力増加P
c_reqが決定される(ステップ522)。キャリアcに対する要求電力増加P
c_reqは、以下の式により与えられ得る:
P
c_req=min((P
c_max−P
c_current),max((f(L
c)−1)
*P
c_nominal,0))。
【0070】
各キャリアについて、実際の電力増加P
c_boostが決定され(ステップ524)、これは、以下の式により与えられ得:
P
c_boost=f
*P
surplus
f=P
c_req/(P
1_req+P
2_req+・・・P
n_req)は、キャリアcにより必要とされる相対電力を表す比例因子である。電力を再配分する実施形態は、1つのキャリアへの電力の共有を別のキャリアよりも優先させる重み付け係数(weighing factors)も含み得る、他の方法を含むことができることに、注意されたい。
【0071】
電力共有リストの各キャリアについて、キャリア電力P
cは、Pc=P
c_current+P
c_boostにリセットされる(ステップ526)。電力制御プロセスは、その後ステップ514に戻る。
【0072】
ある実施形態では、各キャリアに割り当てられた適切な利得が、さまざまな方法によって、例えば、各信号をスケール変更する電力増幅器の入力装置における何らかの形態の可変信号減衰によって、制御されることができ、キャリア当たりの適切な電力が送られ得る。例えば、制御ライン320a、321a、320n、321nは、次に、所与のキャリアについてマルチキャリア電力増幅器二重化システム335aおよび335nの利得を変化させるように作動され得る。電力再配分は、いくつかのキャリアの時間依存の負荷が減少されると、ベースラインパラメータに戻ることができる。
【0073】
本発明は、主に、分散アンテナシステムからユーザー装置、例えば携帯電話またはスマートフォン、に伝送されるダウンリンク信号の送信電力レベルを動的に最適化するシステムおよび手段として説明されてきた。この点において、ダウンリンク信号の送信電力レベルを最適化するシステムおよび手段は、例示および説明の目的で提示されている。さらに、説明は、発明を、本明細書に開示された形態に制限することを意図していない。したがって、関連技術の以下の教示、スキル、および知識に一致する変形および改変は、本発明の範囲内である。本明細書に記載される実施形態は、本明細書に開示される発明を実施するための既知の様式を説明すること、ならびに当業者が、同等の、もしくは代替的な実施形態において、本発明の特定の適用もしくは使用により必要と考えられるさまざまな改変を有する本発明を利用できること、をさらに意図している。
〔実施の態様〕
(1) 分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
分散アンテナシステムにおける複数の別々のアンテナユニットに共通のダウンリンク信号を提供することと、
収集されたユーザー情報に基づいてシステム性能を高めるために前記アンテナユニットの利得を変化させることと、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
ユーザー装置(UE)により報告される前記ダウンリンク信号のピークデータレートを含む、前記ダウンリンク信号を記述する情報を、前記UEから収集することをさらに含む、方法。
(3) 実施態様2に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
情報を収集することは、
前記UEにより報告される前記ダウンリンク信号の最大持続可能データレートを収集することと、
QOS(サービス品質)閾値を超えるQOSを有するUEの数を収集することと、
をさらに含む、方法。
(4) 実施態様1に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記アンテナユニットの前記利得を変化させることは、マルチパス干渉を低減するために1つまたは複数のアンテナユニットの利得を低減することを含む、方法。
(5) 実施態様1に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記アンテナユニットの前記利得を変化させることは、前記分散アンテナシステムの総利得を変化させることを含む、方法。
(6) 実施態様1に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記アンテナユニットの前記利得を変化させることは、個々のアンテナユニットのリンク利得を変化させることを含む、方法。
(7) 実施態様1に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記アンテナユニットは、内壁により隔てられる屋内空間にグループ化され、
前記アンテナユニットの前記利得を変化させることは、前記アンテナユニットのグループの利得を独立して変化させることを含む、方法。
(8) 分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
第1の電力レベルを有する共通のダウンリンク信号を、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットからユーザー装置(UE)へ伝送することであって、前記第1のアンテナユニットおよび前記第2のアンテナユニットは、物理的に分離されている、ことと、
前記UEにより報告される前記ダウンリンク信号を記述する情報を収集することと、
収集された前記情報に基づいて、前記第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットのダウンリンク送信電力がいつ更新されるべきかを決定することと、
第2の電力レベルを有するダウンリンク信号を、前記第1のアンテナユニットおよび前記第2のアンテナユニットから伝送することと、
を含む、方法。
(9) 実施態様8に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記ダウンリンク信号を記述する情報を収集することは、
前記UEにより報告される前記ダウンリンク信号のダウンリンクデータレートを収集することと、
前記UEにより報告される前記ダウンリンク信号の信号品質情報を収集することと、
前記UEにより報告される場所情報を収集することと、
を含む、方法。
(10) 実施態様9に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットのダウンリンク送信電力がいつ更新されるべきかを決定することは、
収集された前記情報に基づいて現在の平均容量を推定することと、
前記現在の平均容量を先の平均容量と比較することと、
を含む、方法。
(11) 実施態様10に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記現在の平均容量が前記先の平均容量未満であるとき、前記第2の電力レベルは、前記第1の電力レベル未満である、方法。
(12) 実施態様10に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記現在の平均容量が前記先の平均容量より大きいとき、前記第2の電力レベルは、前記第1の電力レベルより大きい、方法。
(13) 実施態様10に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記第2の電力レベルを最大電力閾値と比較することと、
前記第2の電力レベルが前記最大電力レベルを超える場合、前記第2の電力レベルを前記第1の電力レベルまで下げることと、
をさらに含む、方法。
(14) 実施態様9に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記ダウンリンク信号を記述する情報を収集することは、
前記UEにより報告される前記ダウンリンク信号のピークデータレートを収集することと、
前記UEにより報告される前記ダウンリンク信号の最大持続可能データレートを収集することと、
QOS(サービス品質)閾値を超えるQOSを有するUEの数を収集することと、
をさらに含む、方法。
(15) 実施態様14に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットのダウンリンク送信電力がいつ更新されるべきかを決定することは、
収集された前記情報に基づいて現在の平均容量を推定することと、
前記現在の平均容量を先の平均容量と比較することと、
をさらに含む、方法。
(16) 実施態様8に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記第1のアンテナユニットおよび前記第2のアンテナユニットは、屋内に位置する、方法。
(17) 実施態様8に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記ダウンリンク信号は、単一のセクターキャリア信号を含む、方法。
(18) 分散アンテナシステムにおいて、
ダウンリンク信号を提供する分散アンテナシステムサービスモジュールと、
前記ダウンリンク信号を受信するために伝送ケーブルにより前記分散アンテナシステムサービスモジュールに連結され、前記ダウンリンク信号を無線伝送するように構成された、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットであって、物理的に分離されている、第1のアンテナユニットおよび第2のアンテナユニットと、
を含み、
前記分散アンテナシステムサービスモジュールは、前記アンテナユニットから前記ダウンリンク信号を受信し前記アンテナユニットにアップリンク情報を伝送する複数のユーザー装置(UE)からの、収集された情報に基づいて、前記第1および第2のアンテナユニットの送信電力レベルを制御するように構成される、分散アンテナシステム。
(19) 実施態様18に記載の分散アンテナシステムにおいて、
前記第1および第2のアンテナユニットは、屋内に位置し、単一空間の別々のサービスエリアをカバーしている、分散アンテナシステム。
(20) 実施態様19に記載の分散アンテナシステムにおいて、
伝送ケーブルにより前記分散アンテナシステムサービスモジュールに連結され、前記ダウンリンク信号を無線伝送するように構成された第3のアンテナユニットおよび第4のアンテナユニットであって、前記第1および第2のアンテナユニットから壁により隔てられた第2の空間において物理的に分離される、第3のアンテナユニットおよび第4のアンテナユニットをさらに含み、
前記分散アンテナシステムサービスモジュールは、前記第3および第4のアンテナユニットから前記ダウンリンク信号を受信し、アップリンク情報を前記第2の空間の前記アンテナユニットに伝送する複数のユーザー装置(UE)からの、収集された情報に基づいて、前記第3および第4のアンテナユニットの送信電力レベルを制御するように構成される、分散アンテナシステム。
(21) 分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
複数のキャリアにおいて動作するマルチキャリアベースステーションから個々のキャリア負荷情報を収集することと、
収集された前記キャリア負荷情報に基づいて、前記複数のキャリアのうち少なくとも1つのキャリアのダウンリンク送信電力を、少なくとも1つの他のキャリアとは異なる値に変化させることと、
を含む、方法。
(22) 実施態様21に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記ダウンリンク送信電力を変化させることは、
前記複数のキャリアのうちの1つのキャリアが、予め規定された閾値より大きいキャリア負荷を有するかどうかを判断することと、
前記予め規定された閾値より大きい前記キャリア負荷を有する前記キャリアのダウンリンク送信電力を増大させることと、
をさらに含む、方法。
(23) 実施態様22に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記複数のキャリアのダウンリンク送信電力動作パラメータを決定することと、
前記予め規定された閾値より大きい前記キャリア負荷を有する前記キャリアのダウンリンク送信電力の利用可能な余剰増大を決定することと、
をさらに含み、
前記予め規定された閾値より大きい前記キャリア負荷を有する前記キャリアのダウンリンク送信電力を増大させることは、ダウンリンク送信電力の決定された前記利用可能な増大以下の量だけ、前記ダウンリンク送信電力を増大させることをさらに含む、方法。
(24) 実施態様23に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記ダウンリンク送信電力を増大させることは、
前記複数のキャリアの利用可能な電力レベルの合計を決定することと、
前記ダウンリンク送信電力動作パラメータおよび収集された前記キャリア負荷情報に基づいて比例因子を決定することと、
前記利用可能な電力レベルの合計と前記比例因子との積を決定することと、
をさらに含む、方法。
(25) 実施態様24に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
前記利用可能な電力レベルの合計を決定することは、前記ダウンリンク送信電力動作パラメータおよび収集された前記キャリア負荷情報に基づく、方法。
(26) 実施態様21に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
収集された前記キャリア負荷がキャリア負荷閾値未満である場合に、前記ダウンリンク送信電力をベースライン値にリセットすることをさらに含む、方法。
(27) 実施態様21に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
キャリア負荷を有するキャリアが予め規定された第2の負荷閾値を超える時期を決定することと、
キャリア負荷を有する前記キャリアが予め規定された第2の負荷閾値を超える前記時期を、一時的なヒステリシス閾値と比較することと、
をさらに含む、方法。
(28) 実施態様21に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
複数のキャリアからの、収集された前記キャリア負荷情報に基づいてキャリアのランク付けリストを生成することをさらに含む、方法。
(29) 実施態様28に記載の分散アンテナシステムのダウンリンク送信電力を最適化する方法において、
ダウンリンク送信電力を変化させることは、前記キャリアのランク付けリストのうち最も高くランク付けされたキャリアのダウンリンク送信電力を変化させることをさらに含む、方法。
(30) 無線システムにおいて、
複数のキャリアを有するマルチキャリア通信信号を受信するマルチキャリアベースステーションであって、前記マルチキャリア通信信号を増幅する1つまたは複数のマルチキャリア増幅器システムを含む、マルチキャリアベースステーションと、
前記ベースステーションに連結され、ダウンリンク信号を提供する1つまたは複数のアンテナと、
前記複数のキャリアのうちの少なくともキャリアのダウンリンク送信電力を、少なくとも1つの他のキャリアとは異なる値に変化させるための、電力管理制御ユニットと、
を含む、無線システム。
(31) 実施態様30に記載の無線システムにおいて、
前記電力管理制御ユニットは、前記複数のキャリアの負荷情報を収集し、ダウンリンク送信電力レベルの値を前記マルチキャリア増幅器システムに提供する、負荷収集手段を含む、無線システム。
(32) 実施態様31に記載の無線システムにおいて、
前記負荷収集手段は、ネットワークに連結され、前記ネットワークから負荷情報を収集する、無線システム。
(33) 実施態様31に記載の無線システムにおいて、
前記負荷収集手段は、前記マルチキャリアベースステーションに連結され、前記マルチキャリアベースステーションから負荷情報を収集する、無線システム。
(34) 実施態様31に記載の無線システムにおいて、
前記制御ユニットは、前記キャリアに対して電力レベル制御信号を生成するように構成された電力管理決定エンジンをさらに含み、前記電力レベル制御信号は、収集された前記負荷情報に基づいている、無線システム。
(35) 無線分散アンテナシステムにおいて、
複数のキャリアを有するマルチキャリア通信信号を受信するマルチキャリアベースステーションであって、前記マルチキャリア通信信号を増幅する1つまたは複数のマルチキャリア増幅器システムを含む、マルチキャリアベースステーションと、
複数の別々のアンテナシステムを有する分散アンテナシステムであって、前記マルチキャリアベースステーションに連結され、ダウンリンク信号を提供する、分散アンテナシステムと、
前記マルチキャリアベースステーションに連結され、前記複数のキャリアの負荷情報を収集し、ダウンリンク送信電力のさまざまな値を前記マルチキャリア増幅器システムに提供する、制御ユニットと、
を含む、無線分散アンテナシステム。
(36) 実施態様35に記載の無線システムにおいて、
前記制御ユニットは、前記マルチキャリアベースステーションから前記負荷情報を収集するようにさらに構成される、無線システム。
(37) 実施態様35に記載の無線システムにおいて、
前記制御ユニットは、ネットワークから前記負荷情報を収集するようにさらに構成される、無線システム。
(38) 実施態様35に記載の無線システムにおいて、
前記制御ユニットは、
前記複数のキャリアから負荷情報を収集する分散アンテナシステム管理サーバーと、
前記キャリアに対して電力レベル制御信号を生成する電力管理決定エンジンと、
をさらに含む、無線システム。
(39) 実施態様38に記載の無線システムにおいて、
前記電力管理決定エンジンは、収集された前記負荷情報、およびダウンリンク電力動作パラメータに基づいて、前記電力レベル制御信号を決定するように構成される、無線システム。
(40) 実施態様35に記載の無線システムにおいて、
複数の第2のキャリアを有する第2のマルチキャリア通信信号を受信する第2のマルチキャリアベースステーションであって、前記第2のマルチキャリア通信信号を増幅する1つまたは複数の第2の増幅器を含む、第2のマルチキャリアベースステーションと、
複数の第2の別々のアンテナシステムを有する第2の分散アンテナシステムであって、前記第2のマルチキャリアベースステーションに連結され、第2のダウンリンク信号を提供する、第2の分散アンテナシステムと、
をさらに含み、
前記制御ユニットは、前記第2のマルチキャリアベースステーションに連結され、前記複数の第2のキャリアから負荷情報を収集し、前記複数の第2のキャリアにダウンリンク送信電力の値を提供する、無線システム。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】本発明による、複数の屋内の部屋にサービス提供する分散アンテナシステム(「DAS」)の表示である。
【
図2】分散アンテナシステム内部の遠隔アンテナユニットのダウンリンク送信電力を最適化する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態による、ベースステーションサブシステムにより制御されたDASの表示である。
【
図4】ベースステーションサブシステム、およびキャリアから負荷情報を収集し、そのキャリアの送信電力レベルを決定する制御ユニットの概略的ブロック図である。
【
図5】キャリアのダウンリンク送信電力を最適化する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【
図6A】キャリアの負荷のランク付けリストを生成する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【
図6B】キャリア負荷を推定する例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【
図6C】キャリアのそれぞれについて、余剰電力を決定する例示的なプロセスを示すフローチャートである。