特許第6388903号(P6388903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388903
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】乾燥ナツメグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/02 20060101AFI20180903BHJP
   A23L 27/12 20160101ALI20180903BHJP
   A23L 3/40 20060101ALI20180903BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20180903BHJP
【FI】
   A23B7/02
   A23L27/12
   A23L3/40 B
   A23L19/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-250795(P2016-250795)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-102172(P2018-102172A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2017年12月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516389053
【氏名又は名称】志賀 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】志賀 正和
【審査官】 鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−000012(JP,A)
【文献】 特開2003−225077(JP,A)
【文献】 特開昭52−120155(JP,A)
【文献】 特開2013−217545(JP,A)
【文献】 特開2011−078315(JP,A)
【文献】 特開2016−166131(JP,A)
【文献】 特開2003−206209(JP,A)
【文献】 特開平06−007078(JP,A)
【文献】 アンドリュー・シェヴァリエ著, 世界薬用植物百科事典, 2000, 誠文堂新光社発行, p.113
【文献】 大図祐二, "カビ毒研究連絡会 ミニシンポジウム 輸入香辛料のカビ毒汚染について", 2012, retrieved on 2018.01.16, retrieved from the Internet, <URL;http://mycotoxin.or.jp/wp-content/themes/pdf/kabirenraku2012.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23B 7/00−7/25
A23L 3/00−3/54
A23L 19/00−19/20
A23L 27/00−27/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含むことを特徴とする、低アフラトキシン乾燥ナツメグの製造方法。
(A)収穫直後のナツメグの果実の果皮を取り除いた生ナツメグからメースを除去し、生ナツメグ種子を取得するステップ;
(B)前記生ナツメグ種子を、温度30〜60℃、湿度70%以下の環境下で8日以下の期間連続熱風乾燥させ、乾燥ナツメグ種子を製造するステップ;
(C)前記乾燥ナツメグ種子の殻を割り、水分活性値が0.75以下である乾燥ナツメグを取り出すステップ;
(D)アフラトキシン総濃度が10ppb未満、アフラトキシンB1濃度が5ppb未満、オクラトキシンA濃度が15ppb未満である乾燥ナツメグを選別するステップ;
【請求項2】
収穫後24時間以内の生ナツメグを原料とすることを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
低アフラトキシン乾燥ナツメグの精油成分が7%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
乾燥ナツメグが、ホール品であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
ステップ(D)の選別するステップが、UV照射及び/又はHPLC分析により行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ステップ(B)の温度が40〜50℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
乾燥ナツメグの水分活性値が0.65以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
ステップ(B)を、除湿手段を備えた乾燥室で行うことを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(B)の熱風乾燥が、温度30〜100℃、流速1〜30m/secの熱風を用いる乾燥であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物学的に汚染されておらず(一般生菌数の平均値が100cfu/g未満)、かつ実質的にアフラトキシン及びオクラトキシンが存在しないか極めて低濃度である(総アフラトキシン濃度10ppb未満、アフラトキシンB1濃度5ppb未満、オクラトキシンA濃度15ppb未満)乾燥ナツメグの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ナツメグは、ナツメグ種子を乾燥させたのちに取り出した仁から作られる香辛料であり、ハンバーグ等のひき肉料理をはじめ、幅広い料理に用いられている。現在、生産量の85%をインドネシアが占めている。
【0003】
ナツメグは、収穫したナツメグの果実から果皮及びメースを取り除いたナツメグ種子を天日で約1週間乾燥させた後、ナツメグ種子の殻を割り、中の仁を取り出すことにより製造される。この製造方法は、インドネシアで400年続く伝統的な方法であるが、ナツメグの原産地である、インドネシアをはじめとする東南アジアは高温多湿な環境でありカビが生えやすいため、しばしばカビ毒であるアフラトキシンやオクラトキシンによる汚染が発生する。
【0004】
ナツメグのアフラトキシンやオクラトキシンによる汚染は、ナツメグの内部に発生するため外観の目視では判別することができない。そのため、輸出後の検査により汚染が発見され、積戻しが行われるケースが生じている。近年EUにおけるアフラトキシンやオクラトキシンによる汚染に対する規制が強化され、積戻しが増加している。今後アフラトキシン・オクラトキシンモニタリング検査が強化されると、さらに積戻しが増加すると予想される。
【0005】
ナツメグの殺菌には、過熱水蒸気殺菌法が用いられているが、破砕が必要であること、殺菌処理により香味成分が失われるという問題がある(非特許文献1)。また、食品に対する放射線殺菌は日本では認められていない(非特許文献1、2)。さらに、いずれの手法でも、既に産生されたアフラトキシンやオクラトキシンを除去することはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】伊藤均「22.香辛料の放射線殺菌効果」食品照射 第49巻 第1号(2014)87〜89頁
【非特許文献2】等々力節子「ESR・化学分析による香辛料の加工・貯蔵履歴の解明に関する研究」浦上財団研究報告書 Vol.21(2014)78〜87頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、アフラトキシンやオクラトキシンにより汚染されていないナツメグの、農家レベルでも実施することのできる簡便な製造方法を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、収穫直後のナツメグの果実の果皮を取り除いた生ナツメグからメースを除去し、生ナツメグ種子を取得するステップ;前記生ナツメグ種子を、温度30〜60℃、湿度70%以下の環境下で熱風乾燥、好ましくは連続熱風乾燥させ、乾燥ナツメグ種子を製造するステップ;前記乾燥ナツメグ種子の殻を割り、水分活性値が0.75以下である乾燥ナツメグを取り出すステップ;を含む方法によりナツメグを処理することにより、微生物学的に汚染されておらず、かつ実質的にアフラトキシンやオクラトキシンが存在しないか極めて低濃度である乾燥ナツメグを製造できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
(1)以下のステップを含むことを特徴とする乾燥ナツメグの製造方法。
(A)収穫直後のナツメグの果実の果皮を取り除いた生ナツメグからメースを除去し、生ナツメグ種子を取得するステップ;
(B)前記生ナツメグ種子を、温度30〜60℃、湿度70%以下の環境下で熱風乾燥させ、乾燥ナツメグ種子を製造するステップ;
(C)前記乾燥ナツメグ種子の殻を割り、水分活性値が0.75以下である乾燥ナツメグを取り出すステップ;
(2)ステップ(B)の温度が35〜55℃であることを特徴とする上記(1)に記載の製造方法。
(3)ステップ(B)の温度が40〜50℃であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)ステップ(B)の湿度が60%以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)ステップ(B)の湿度が50%以下であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)ステップ(B)を、除湿手段を備えた乾燥室で行うことを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)収穫後24時間以内の生ナツメグを原料とすることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)収穫後12時間以内の生ナツメグを原料とすることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)乾燥ナツメグの水分活性値が0.70以下であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)乾燥ナツメグの水分活性値が0.65以下であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)乾燥ナツメグの水分活性値が0.60以下であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の製造方法。
(12)ステップ(B)の乾燥が8日以下で完了することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の製造方法。
(13)ステップ(B)の乾燥が7日以下で完了することを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の製造方法。
(14)ステップ(B)の乾燥が6日以下で完了することを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載の製造方法。
(15)ステップ(B)の乾燥が5日以下で完了することを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の製造方法。
(16)ステップ(B)の熱風乾燥が、温度30〜100℃、流速1〜30m/secの熱風を用いる乾燥であることを特徴とする上記(1)〜(15)のいずれかに記載の製造方法。
(17)ステップ(B)の熱風乾燥が、連続熱風乾燥であることを特徴とする上記(1)〜(16)のいずれかに記載の製造方法。
(18)乾燥ナツメグが、ホール品であることを特徴とする上記(1)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
(19)乾燥ナツメグが、ブロークン品であることを特徴とする上記(1)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
(20)乾燥ナツメグが、粉砕品であることを特徴とする上記(1)〜(17)のいずれかに記載の製造方法。
(21)乾燥ナツメグのアフラトキシン総濃度が10ppb未満、アフラトキシンB1濃度が5ppb未満、オクラトキシンA濃度が15ppb未満であることを特徴とする上記
(1)〜(20)のいずれかに記載の製造方法。
(22)以下のステップ(X)を、ステップ(C)の後に含むことを特徴とする上記(1)〜(21)のいずれかに記載の製造方法。
(X)UV照射によりアフラトキシン総濃度が10ppb未満、アフラトキシンB1濃度が5ppb未満、オクラトキシンA濃度が15ppb未満である乾燥ナツメグを選別するステップ;
(23)以下のステップ(Y)を、ステップ(C)の後に含むことを特徴とする上記(1)〜(21)のいずれかに記載の製造方法。
(Y)HPLC分析によりアフラトキシン総濃度が10ppb未満、アフラトキシンB1濃度が5ppb未満、オクラトキシンA濃度が15ppb未満である乾燥ナツメグを選別するステップ;
(24)熱風送風手段、温度調節手段、除湿手段及び乾燥棚を備えた乾燥室からなることを特徴とするナツメグ乾燥装置。
(25)上記(1)〜(23)のいずれかに記載の製造方法に用いることを特徴とする上記(24)に記載のナツメグ乾燥装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、簡便な方法により微生物学的に汚染されておらず、かつ実質的にアフラトキシンやオクラトキシンが存在しない乾燥ナツメグを製造することができる。本発明により製造した乾燥ナツメグは、ナツメグエッセンシャルオイルのようなストレートな風味を有し(カビ、酵母が無いため、複雑な香りがしない)、アフラトキシンやオクラトキシンが実質的に存在しないか極めて低濃度であり(総アフラトキシン濃度10ppb未満、アフラトキシンB1濃度5ppb未満、オクラトキシンA濃度15ppb未満)、一般生菌数の平均値が100cfu/g未満であり、水分活性値管理により、保管中のカビの増殖がない。したがって、輸出時の積戻しを減らすことができることに加え、殺菌による香味の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の乾燥ナツメグの製造方法は、微生物学的に汚染されておらず(一般生菌数の平均値が100cfu/g未満)、かつ実質的にアフラトキシンやオクラトキシンが存在しないか極めて低濃度である(総アフラトキシン濃度10ppb未満、アフラトキシンB1濃度5ppb未満、オクラトキシンA濃度15ppb未満)乾燥ナツメグを製造することのできる方法であり、以下のステップ(A)〜(C)を含む。
(A)収穫直後のナツメグの果実の果皮を取り除いた生ナツメグからメースを除去し、生ナツメグ種子を取得するステップ;
(B)前記生ナツメグ種子を、温度30〜60℃、湿度70%以下の環境下で熱風乾燥、好ましくは連続熱風乾燥させ、乾燥ナツメグ種子を製造するステップ;
(C)前記乾燥ナツメグ種子の殻を割り、水分活性値が0.75以下である乾燥ナツメグを取り出すステップ;
【0012】
ここで、ステップ(A)における収穫直後とは、アフラトキシンの産生菌であるアスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)やアスペルギルス・パラシティクス(Aspergillus parasiticus)、又は、オクラトキシンの産生菌であるアスぺルギルス・オクラセウス(Aspergillus ochraceus)等のカビによるアフラトキシン生産及び/又はオクラトキシン生産が開始されていない時間であれば特に制限されず、具体的には収穫から24時間以内、好ましくは12時間以内、より好ましくは6時間以内を意味する。
【0013】
ステップ(B)における熱風乾燥、好ましくは連続熱風乾燥とは、乾燥対象に熱風を吹き付けつつ、対象からの水分の蒸発により生じた湿度を低下させることで、乾燥室内の水蒸気が飽和することなしに継続的に乾燥させることを意味する。乾燥中の温度及び湿度は、アフラトキシンやオクラトキシンの産生菌が生育する前に乾燥が完了する温度及び湿度であればよく、そのような温度としては30〜60℃、好ましくは35℃〜55℃、より好ましくは40℃〜50℃を例示することができ、湿度としては70%未満、好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満を例示することができる。温度調節は、公知のいかなる温度調節器を用いて行ってもよく、湿度は、コンプレッサー式、ゼオライト式(デシカント方式)等のいかなる除湿手段を用いて低下させてもよい。また、乾燥時間を短くするため、熱風乾燥後に減圧条件下での乾燥を行ってもよく、減圧条件としては、例えば150〜450Torr、好ましくは200〜400Torr、より好ましくは250〜350Torrを挙げることができる。
【0014】
上記熱風乾燥に用いる熱風は、電気、ガス、石油、石炭、薪等の加熱手段によって加熱した空気を、ファンを用いて送風したものであり、温度30℃〜100℃、好ましくは40℃〜95℃、さらに好ましくは50℃〜90℃で、流速1〜30m/secである熱風を好適に用いることができる。
【0015】
ステップ(B)の熱風乾燥は、アフラトキシンやオクラトキシンの産生菌が生育する前に完了すればよく、乾燥時間としては例えば8日以下、7日以下、6日以下、好ましくは5日以下、4日以下、より好ましくは3日以下、2日以下、さらに好ましくは1日以下、12時間以下である。
【0016】
上記熱風乾燥処理に代えて、真空乾燥処理とすることもできる。真空乾燥処理条件としては、真空度4〜50Torr、好ましくは10〜30Torr、温度範囲0〜70℃、好ましくは20〜50℃で、2〜15時間、好ましくは3〜10時間、より好ましくは4〜7時間である。
【0017】
ステップ(B)において、生ナツメグ種子は割れないような状態に置かれていればよく、例えば乾燥棚、ネット、金網、コンベア等の上で乾燥することができる。
【0018】
また、ステップ(B)は、生ナツメグ種子に代えて、メース除去前の生ナツメグ、果皮を取り除く前のナツメグの果実に対して行っても、殻を取り除いた後の仁に対して行ってもよい。
【0019】
ステップ(C)において、水分活性値はアフラトキシンやオクラトキシンの産生菌が生育することのできない数値であればよく、例えば0.75以下、好ましくは0.70以下、より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.60以下である。水分活性値は、重量平衡法や蒸気圧法等の公知の手法により測定することができる。
【0020】
本発明の製造方法で製造される乾燥ナツメグは、ホール品、ブロークン品、粉砕品のいずれであってもよいが、好ましくはホール品であり、アフラトキシン濃度としては、総濃度10ppb以下又はそれ未満、8ppb以下又はそれ未満、好ましくは6ppb以下又はそれ未満、4ppb以下又はそれ未満、より好ましくは2ppb以下又はそれ未満、さらに好ましくは1ppb以下又はそれ未満を例示することができ、アフラトキシンB1濃度としては5ppb以下又はそれ未満、4ppb以下又はそれ未満、3ppb以下又はそれ未満、2ppb以下又はそれ未満、又は1ppb以下又はそれ未満、好ましくは0.8ppb以下又はそれ未満、より好ましくは0.6ppb以下又はそれ未満、さらに好ましくは0.4ppb以下又はそれ未満を例示することができる。また、本発明の乾燥ナツメグは、オクラトキシンも実質的に含んでおらず、オクラトキシンA濃度としては15ppb以下又はそれ未満、12ppb以下又はそれ未満、好ましくは10ppb以下又はそれ未満、8ppb以下又はそれ未満、より好ましくは、6ppb以下又はそれ未満、4ppb以下又はそれ未満、さらに好ましくは2ppb以下又はそれ未満、1ppb以下又はそれ未満を例示することができる。アフラトキシン及び/又はオクラトキシンの検出及び濃度測定は、UV照射、HPLC分析、質量分析、蛍光検出等の公知の手法を用いて行うことができる。また、一般生菌数の平均値としては100cfu/g未満、好ましくは80cfu/g未満、より好ましくは60cfu/g未満、さらに好ましくは40cfu/g未満を例示することができる。さらに、本発明の乾燥ナツメグは精油成分を多く含んでおり、精油成分含量としては7%以上、好ましくは7.5%以上、より好ましくは8%以上、さらに好ましくは8.5%以上、特に好ましくは9%以上を例示することができる。
【0021】
また、本発明の製造方法は、以下のステップ(X)を、ステップ(C)の後に含んでもよい。
(X)UV照射によりアフラトキシン総濃度が10ppb以下又はそれ未満、アフラトキシンB1濃度が5ppb以下又はそれ未満、オクラトキシンA濃度が15ppb以下又はそれ未満である乾燥ナツメグを選別するステップ;
【0022】
また、本発明の製造方法は、以下のステップ(Y)を、ステップ(C)の後に含んでもよい。
(Y)HPLC分析によりアフラトキシン総濃度が10ppb以下又はそれ未満、アフラトキシンB1濃度が5ppb以下又はそれ未満、オクラトキシンA濃度が15ppb以下又はそれ未満である乾燥ナツメグを選別するステップ;
【0023】
本発明のナツメグ乾燥装置は、熱風送風手段、温度調節手段、除湿手段及び乾燥棚を備えた乾燥室からなることを特徴とし、上記本発明の乾燥ナツメグの製造方法に用いられる。本発明のナツメグ乾燥装置は、乾燥棚に代えて、ネット、金網、コンベアを備えてもよい。
【0024】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
[乾燥ナツメグの製造]
収穫24時間以内のナツメグの果実の果皮を取り除いた生ナツメグからメースを除去し、生ナツメグ種子を取得した。前記生ナツメグ種子を、乾燥棚上で温度40〜50℃、湿度50%未満の環境下で、乾燥ナツメグの水分活性が0.65以下になるまで1日間から7日間連続熱風乾燥させ、乾燥ナツメグ種子を製造した。前記乾燥ナツメグ種子の殻を割り、乾燥ナツメグを取り出した。
【実施例2】
【0026】
[乾燥ナツメグの分析]
実施例1の方法で製造した乾燥ナツメグのアフラトキシン濃度、オクラトキシン濃度、精油濃度、水分含有量、水分活性を分析した。分析データを以下の表に示す。
【0027】
【表1-1】
【表1-2】
【0028】
分析結果より、いずれのロットでもアフラトキシン総濃度、アフラトキシンB1濃度、オクラトキシンA濃度が1ppbを下回っており、実質的にアフラトキシンやオクラトキシンが存在しない乾燥ナツメグを製造できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の製造方法によれば、簡便な方法により微生物学的に汚染されておらず、かつ実質的にアフラトキシンやオクラトキシンが存在しないか極めて低濃度である乾燥ナツメグを製造することができるため、輸出時の積戻しを減らすことができることに加え、殺菌による香味の低下を防ぐことができ、高品質な乾燥ナツメグを供給することができるという点で産業上の有用性は高い。