【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、縦長の把持ボディ(以下、「ボディ」と称する)と該ボディの一端に取り付けられた容量性スクリーン用のパッド(以下、「パッド」と称する)とを備える手動装置であって、上記ボディが絶縁性である一方、上記パッドは伝導性であり、少なくとも1つの伝導性材料で充填され、かつ/または伝導性コーティングを含むポリマー材料でできたロッドが上記パッドと電気的に接触するとともに、上記ボディの内部を縦方向に延びている手動装置を提案することによって、上記目的を達成する。
【0005】
例えば、手動装置は、容量性スクリーン用のスタイラス、従来の筆記用先端部と容量性スクリーン用の先端部とを有するペン、あるいは、概して言えば、その一端に容量性スクリーンと相互作用するように構成された先端部を有する何らかの手動器具である。
【0006】
手動装置はパッシブ型であることが理解できる。「パッシブ」であると言われる器具は、作動するためにエネルギー源から動力を供給される必要がない器具であることに留意されたい。一方、「アクティブ」であると言われる器具は、作動するために、例えば内蔵電池などのエネルギー源を必要とする。すなわち、手動装置は、パッドと相互作用する何らかのエネルギー源、特に何らかの電気エネルギー源を有しない。
【0007】
以下、異なる説明がない限り、「伝導性」という用語は、「電気を伝導可能」の意として理解されるべきである。一方、「絶縁性」という用語は、以下、異なる説明がない限り、「電気に対して絶縁性」の意として理解されるべきである。
【0008】
パッドは、容量性スクリーンと相互作用するように構成された末端部であることが理解できる。パッドは、(パッドを形成している材料のおかげで、または、コーティングのおかげで)伝導性である。パッドが容量性スクリーンと相互作用可能である限り、すなわち、パッドがスクリーンに接触していることをスクリーンが検知できる限り、パッドの形状、柔軟性/剛性、および材料は限定されない。
【0009】
また、ボディによって、手動装置を操作するため、特に容量性スクリーンと相互作用するために手動装置を把持することが可能になることが理解できる。ボディは、縦方向または長手方向に延びている。縦方向のボディの寸法を以下ではボディの長さとみなす。ボディは、好ましくは直線状である。また、ロッドも、ボディの内部を縦方向に延びている。従って、ボディは、ロッドを収容できるように中空である。ロッドとボディとは実質的に平行である。一実施形態では、ロッドとボディとが同軸である。これにより、製造が簡易な構造が得られる。
【0010】
ロッドは、中実であっても中空であってもよい。また、ロッドは、実質的に、断面が円形、楕円形、多角形などであるシリンダー状であってもよい。ロッドの長さおよび形状は限定されない。例えば、ロッドは、ボディの全長にわたって延びていてもよく、または、ボディの長さよりも短い長さの部分にだけわたって延びていてもよい。縦方向のロッドの寸法を以下ではロッドの長さとみなす。
【0011】
ロッドは、ポリマー材料、すなわち、1つまたは複数のポリマーを基にする材料でできている。一実施形態では、ポリマー材料は、少なくとも1つの伝導性材料で充填されている。別の実施形態では、ポリマー材料は、少なくとも部分的に伝導性コーティングによって被覆されている。さらに別の実施形態では、ロッドの材料は、伝導性材料で充填され、かつ伝導性コーティングによって被覆されている。すなわち、ロッドは、ポリマー材料でできており、その全体に少なくとも1つの伝導性材料からなるフィラーを含むか、その表面に伝導性コーティングを有するか、あるいはまた、フィラーおよびコーティングの両方を有する。
【0012】
例えば、ポリマー材料は熱可塑性物質である。例えば、ポリマー材料は、以下から選択される1つまたは複数の化合物を含んでいてもよい:アクリロニトリルブタジエンスチレン(頭字語ABSでも知られている);アクリロニトリルメチルメタクリレート(頭字語AMMAでも知られている);アクリロニトリルスチレンアクリレート(頭字語ASAでも知られている);セルロースアセテート(頭字語CAでも知られている);セルロースアセトブチレート(頭字語CABでも知られている);セルロースアセトプロピオネート(頭字語CAPでも知られている);発泡ポリスチレン(頭字語EPSでも知られている);エチレンテトラフルオロエチレン(頭字語ETFEでも知られている);エチレン‐ビニルアルコール(頭字語EVALまたはEVOHでも知られている);パーフルオロエチレンプロピレン(頭字語FEPまたはPFEPでも知られている);メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン(頭字語MBSでも知られている);メチルセルロース(頭字語MCでも知られている);ポリアミド(頭字語PAでも知られている);ポリカプロラクタム(頭字語PA6でも知られている);ポリアミド‐イミド(頭字語PAIでも知られている);ポリアクリロニトリル(頭字語PANでも知られている);ポリブテン‐1(頭字語PB‐1でも知られている);ポリブチレンテレフタレートまたはポリ(ブチレンテレフタレート)(頭字語PBTでも知られている);ポリカーボネート(頭字語PCでも知られている);ポリクロロトリフルオロエチレン(頭字語PCTFEでも知られている);ポリエチレン(頭字語PEでも知られている);高密度ポリエチレン(頭字語PE−HDでも知られている);低密度ポリエチレン(頭字語PE−LDでも知られている);直鎖状低密度ポリエチレン(頭字語PE−LLDでも知られている);超高分子量ポリエチレン(頭字語PE−UHMWでも知られている);ポリエーテルブロックアミド共重合体(頭字語PEBAでも知られている);ポリエステルカーボネート(頭字語PECでも知られている);ポリエーテルエーテルケトン(頭字語PEEKでも知られている);ポリエーテルイミド(頭字語PEIでも知られている);ポリエーテルケトン(頭字語PEKでも知られている);ポリ(エチレンナフタレート)(頭字語PENでも知られている);ポリエーテルスルフォン(頭字語PESUでも知られている);ポリ(エチレンテレフタレート)(頭字語PETでも知られている);パーフルオロアルコキシ(頭字語PFAでも知られている);ポリケトン(頭字語PKでも知られている);ポリメチルメタクリレート(頭字語PMMAでも知られている);ポリメチルペンテン(頭字語PMPでも知られている);ポリオキシメチレン、ポリアセタールまたはポリホルムアルデヒド(頭字語POMでも知られている);ポリプロピレンまたはポリプロペン(頭字語PPでも知られている);ポリ(フェニレンエーテル)(頭字語PPEでも知られている);ポリ(フェニレンオキシド)(頭字語PPOでも知られている);ポリ(プロピレンオキシド)(頭字語PPOXでも知られている);ポリ(フェニレンスルフィド)(頭字語PPSでも知られている);ポリスチレン(頭字語PSでも知られている);ポリスルホン(頭字語PSUでも知られている);ポリテトラフルオロエチレン(頭字語PTFEでも知られている);ポリウレタン(頭字語PURでも知られている);ポリ(酢酸ビニル)(頭字語PVACでも知られている);ポリ(ビニルアルコール)(頭字語PVALでも知られている);ポリ塩化ビニル(頭字語PVCでも知られている);ポリフッ化ビニリデン(頭字語PVDFでも知られている);ポリ(フッ化ビニル)(頭字語PVFでも知られている);スチレン−アクリロニトリル(頭字語SANでも知られている);シリコーン(頭字語SIでも知られている);スチレンマレイン酸無水物(頭字語SSMAまたはSMAnhでも知られている);ポリオレフィン;およびポリエステル。概して言えば、ポリマー材料は、合成有機ポリマー材料または合成有機ポリマーである。このような材料は、工業規模でロッドを製造するのに特によく適している。
【0013】
フィラーは、ロッドの製造時にポリマー材料に導入される添加材料である。よって、少なくとも1つの伝導性材料で充填されたポリマー材料とは、その全体に少なくとも1つの伝導性材料をロッドの製造時に導入したポリマー材料である。この伝導性材料フィラーのおかげで、ロッドが伝導性を有する。例えば、ポリマー材料は、少なくとも2重量%の伝導性材料で充填されていてもよい。
【0014】
例えば、伝導性材料フィラーは、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、または金属粒子から選択される1つまたは複数の化合物を含む。
【0015】
伝導性コーティングは、例えば、伝導性を有するラミネート膜、塗膜、もしくはその等価物であってもよく、または、伝導性材料の箔膜、例えば金属箔であってもよい。
【0016】
このように、伝導性材料フィラーおよび/または伝導性コーティングのおかげで、ロッドは伝導性である。ロッドは、直接的あるいは間接的にパッドと電気的に接触している。例えば、パッドに触れているタブを有するロッドが、パッドに直接的に接続されているまたは電気的に接触しているロッドとなる。別の例では、ロッドは、例えば金属線などのロッドおよびパッドとは別の伝導性部材を介してパッドに接触して、パッドに間接的に接続されているまたは接触しているロッドとなる。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、使用者が把持ボディのロッドと縦方向において重なる部分を持って手動装置を操作すると、容量性スクリーンの面が、好ましくはパッドと接触することによってパッドの存在を感知できることと、このことは、手とロッドとの間、または手とパッドとの間に直接的な電気的接触がない場合であっても成立することとを見出した。パッドを容量性スクリーンと相互作用できるようにするためには、パッドと使用者の手との間に直接的な電気的接触があることが必須であることは、当業者に広く認められている。手動装置が手で操作されていない場合、または手がロッドと重なる部分に置かれていない場合には、スクリーンが手動装置を感知できないことはもちろんである。
【0018】
この驚くべき効果を利用すれば、任意の非伝導性の把持ボディを用いることができ、それにより、容量性スクリーンの使用を可能にする従来の装置にまつわる設計、製造、および費用に関する制約を回避できる。
【0019】
さらに、伝導性材料で充填または被覆されたポリマー材料をもとに製造されるロッドは、大規模工業生産に適したコストで容易に加工できるという利点を有する。さらに、ロッドの材料は、ボディの製造に通常用いられる材料と親和性があるため、ボディ内部へのロッドの取り付けが容易になり、ロッドを既存の手動装置のボディに適合させることができる。
【0020】
「縦方向において重なる」という表現は、2つの部材が、縦方向の同じ領域または縦方向の同じ位置にあることを意味するために用いられる。すなわち、使用者が手動装置を操作しており、ボディのロッドが延びている縦方向の領域に対応する部分に手を置いている場合、パッドを容量性スクリーンに接近または接触させると、容量性スクリーンがパッドの存在を検知する。
【0021】
すなわち、ロッドが縦方向に把持ボディのごく一部分にわたって、例えばボディの長さの10%にわたって延びている場合、把持ボディの長さのその10%を占めている把持ボディの把持部分が、ロッドと重なる把持部分となる。ロッドと重なっているこの把持部分を用いて手動装置を操作すれば、パッドを容量性スクリーンに接近または接触させた場合にスクリーンが装置の存在を検知する。
【0022】
有利には、ロッドは、ボディの長さの10%よりも長い範囲にわたって延びている。
【0023】
この場合、ボディの長さの少なくとも10%にわたって延びる把持部分が得られる。これにより、手動装置は、人間工学的に改善される。
【0024】
有利には、パッドが導電性の受け部を介してボディに取り付けられ、ロッドが受け部を介してパッドと電気的に接触している。
【0025】
受け部は、パッドとボディとの間に配置される中間部材であることが理解できる。このような受け部は、パッドをボディに取り付けることを容易にするという利点を有する。また、受け部は、手動装置を組み立てる際に、ロッドとパッドとを電気的に接触させることを容易にする。
【0026】
有利には、ロッドと受け部とが単一の部材を成している。
【0027】
この場合、手動装置内の部品の数を減らすことができる。これにより、装置の構造が簡素になり、製造コストが低減される。すなわち、受け部とロッドとが同一の材料から作られ、単一部品を成すことが理解できる。これにより、受け部とロッドとの間の電気伝導が最適化される。
【0028】
有利には、パッドが、受け部に直接(すなわち、何らかの中間部材を用いずに)取り付けられている。この場合に、受け部とロッドとが同一の材料でできた単一の部材を成していると、ロッドが直接的にパッドと電気的に接触すると考えることができ、これにより、それらの間の電気的接触の質が向上する。
【0029】
有利には、装置は、筆記用先端部またはその等価物を備える。
【0030】
縦長の把持ボディは2つの端部を有し、一方の端部がパッドを支持し、他方の端部が筆記用先端部を支持していることが理解できる。例えば、筆記用先端部またはその等価物は、ボールポイント、サインペン先端部、シャープペンシル先端部、抵抗性スクリーン用の硬質の先端部、パンチ先端部、または他の何らかの手動装置の端部材である。
【0031】
有利には、筆記用先端部は、貯蔵部から供給を受け、該貯蔵部は、全体または一部がロッドの内部にある。
【0032】
この構成ではロッドが中空であることと、ロッドの内部に形成される空洞が先端部用の貯蔵部の一部または全体を収容することとが理解できる。例えば、貯蔵部は、ボールペン用インクまたはフリーインクの貯蔵部であってもよく、あるいは、フェルトペン用の繊維質貯蔵部またはペンシルの芯の貯蔵部であってもよい。
【0033】
ロッドを貯蔵部の周囲に配置することで、手動装置の全体のサイズが小さくなり、それにより装置の人間工学性が向上する。中空のロッドを用いることでロッドの重さも低減され、このことは、使用の容易性および快適性の観点から有利である。
【0034】
有利には、ボディは、絶縁性ポリマー材料、木材、セラミック、ガラス、またはそれらの等価物でできている。
【0035】
「等価物」という用語は、例えば、ベークライト(商標)、厚紙、木材系材料、ガラス系材料、セラミック系材料、上記材料の1つまたは複数を基にする、例えば木材系およびポリマー材料系の複合材料などの、把持ボディを形成するためのあらゆる絶縁性材料を意味するために用いられる。例えば、ポリマー材料は、熱可塑性物質であり、より詳細には、前記した例示物のリストから選択される1つまたは複数の化合物を含む。
【0036】
有利には、ボディが外面(外壁)を有し、伝導性材料の層がボディの外面に配置されている。
【0037】
伝導性材料の層は、ロッドおよびパッドから絶縁されていることが理解できる。すなわち、伝導性材料の層は、パッドおよび/または伝導性の受け部および/またはロッドと、機械的に接触しておらず、また、電気的にも接触していない。概して言えば、この層は、パッドから絶縁されていることで、直接的にパッドと接触しておらず、また、例えば受け部、ロッド、または別の何らかの部材を介して間接的にもパッドと接触していないことが理解できる。発明者らは、驚くべきことに、ボディの外面に配置されたこのような伝導性の層により、手動装置と容量性スクリーンとの間の相互作用が向上することを見出した。すなわち、ボディがこの伝導性の層を有している場合、容量性スクリーンは、より容易に反応し、かつ/または、手動装置のパッドの存在をより容易に検知する。
【0038】
有利には、層は、ロッドと少なくとも部分的に縦方向において重なって延びている。
【0039】
層がロッドと縦方向において重なっている場合、容量性スクリーンとの相互作用が、スクリーンによってさらに容易に検知される。
【0040】
有利には、層は、ロッドの長さの少なくとも30%の範囲にわたって延びている。
【0041】
このような縦方向の重なりによって、容量性スクリーンとの良好な相互作用を確保できる。
【0042】
有利には、層は、金属箔、または、例えば金属塗膜などの伝導性ラミネートを含む。
【0043】
このような材料は加工が容易であり、十分な性能を有する。
【0044】
有利には、ロッドは、ボディから間隔を置いて配置(または径方向に間隔を置いて配置)されている。この場合、ロッドはどの箇所においてもボディと接触しないことが理解できる。すなわち、ロッドが、ボディから離間(または径方向に離間)している。従って、ロッドとボディとの間に空気の層があることが理解できる。この空気の層は、(使用者の指とロッドとの間、または伝導性材料の層とロッドとの間における)手動装置の容量効果を増大させる追加的な絶縁層である。
【0045】
有利には、ロッドおよびボディが実質的にシリンダー状であり、ロッドおよびボディがそれぞれ実質的にシリンダー状の外面を有し、ロッドの外面とボディの外面との径方向の距離が、5ミリメートル(mm)未満である。このような距離であれば、良好な容量効果が得られる。実質的にシリンダー状とは、例えば、外面の断面の形状および内面の断面の形状が異なり、それら断面形状が、円形、楕円形、多角形などである形状である。
【0046】
本発明およびその利点が、非限定的な例として提示される本発明の種々の実施形態に関する詳細な説明を読むことでよりよく理解できる。以下の説明では、添付の図面を参照する。