特許第6388919号(P6388919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388919
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】容量性スクリーンに適した手動装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   G06F3/03 400F
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-512403(P2016-512403)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公表番号】特表2016-524743(P2016-524743A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】FR2014050971
(87)【国際公開番号】WO2014181053
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2017年3月23日
(31)【優先権主張番号】1354146
(32)【優先日】2013年5月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501436665
【氏名又は名称】ソシエテ ビック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE BIC
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】ロリオン,フランク
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−226554(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0086664(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3176454(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/124280(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0038579(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0139879(US,A1)
【文献】 特開2013−077105(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3173117(JP,U)
【文献】 特開2012−153087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/03
3/041−3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦長の把持ボディ(10)と、
前記ボディ(10)の一端(10a)に取り付けられた容量性スクリーン用のパッド(12)と、を備える手動装置であって、
前記ボディ(10)が絶縁性である一方、前記パッド(12)は伝導性であり、
少なくとも1つの伝導性材料で充填され、かつ/または伝導性コーティングを含むポリマー材料でできたロッド(14)が前記パッド(12)と電気的に接触するとともに、前記ボディ(10)の内部を縦方向に延び、
前記ボディ(10)は外面を有し、伝導性材料の層(202)が前記ボディ(10)の前記外面に配置され、前記層(202)は前記パッド(12)から絶縁されているとともに前記縦長の把持ボディ(10)の一部の上のみに存在する、手動装置。
【請求項2】
前記ロッド(14)は、前記ボディ(10)の長さの10%よりも長い範囲にわたって延びている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記パッド(12)は、伝導性の受け部(13)を介して前記ボディ(10)に取り付けられ、前記ロッド(14)は、前記受け部(13)を介して前記パッド(12)と電気的に接触している、請求項1または請求項2に記載の装置(100,200)。
【請求項4】
前記ロッド(14)と前記受け部(13)とが単一の部材を成している、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
筆記用先端部(16)またはその等価物を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記筆記用先端部(16)は、貯蔵部(18)から供給を受け、前記貯蔵部(18)は、全体または一部が前記ロッド(14)の内部にある、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ボディ(10)は、絶縁性ポリマー材料、木材、セラミック、ガラス、またはそれらの等価物でできている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記層(202)は、前記ロッド(14)と少なくとも部分的に縦方向において重なって延びている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記層(202)は、前記ロッド(14)の長さの少なくとも30%の範囲にわたって延びている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記層(202)は、金属箔または伝導性ラミネートを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記ロッド(14)は、前記ボディ(10)から間隔を置いて配置されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記ロッドおよび前記ボディは、実質的にシリンダー状であり、前記ロッドおよび前記ボディはそれぞれ、実質的にシリンダー状の外面を有し、前記ロッドの前記外面と前記ボディの前記外面との径方向の距離が5mm未満である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置がパッシブ型である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばグラフィックスタブレットなどの容量性スクリーンを使用可能にする手動装置に関する。このような装置は、容量性スクリーンの任意の点における装置の存在を容量性スクリーンが検知できるようにスクリーンに干渉/相互作用可能である。
【背景技術】
【0002】
縦長の把持ボディと該ボディの一端に取り付けられた容量性スクリーン用のパッドとを備える手動装置が知られている。それら従来の装置では、使用中に、装置が容量性スクリーンと相互作用できるように使用者の手が把持ボディを介してパッドと電気的に接触することを確実にするために、把持ボディが必ず導電性でなければならず、かつパッドと電気的に接触していなければならない。このことは、設計、製造、および費用に関する制約をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、上述の欠点を少なくとも実質的に解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、縦長の把持ボディ(以下、「ボディ」と称する)と該ボディの一端に取り付けられた容量性スクリーン用のパッド(以下、「パッド」と称する)とを備える手動装置であって、上記ボディが絶縁性である一方、上記パッドは伝導性であり、少なくとも1つの伝導性材料で充填され、かつ/または伝導性コーティングを含むポリマー材料でできたロッドが上記パッドと電気的に接触するとともに、上記ボディの内部を縦方向に延びている手動装置を提案することによって、上記目的を達成する。
【0005】
例えば、手動装置は、容量性スクリーン用のスタイラス、従来の筆記用先端部と容量性スクリーン用の先端部とを有するペン、あるいは、概して言えば、その一端に容量性スクリーンと相互作用するように構成された先端部を有する何らかの手動器具である。
【0006】
手動装置はパッシブ型であることが理解できる。「パッシブ」であると言われる器具は、作動するためにエネルギー源から動力を供給される必要がない器具であることに留意されたい。一方、「アクティブ」であると言われる器具は、作動するために、例えば内蔵電池などのエネルギー源を必要とする。すなわち、手動装置は、パッドと相互作用する何らかのエネルギー源、特に何らかの電気エネルギー源を有しない。
【0007】
以下、異なる説明がない限り、「伝導性」という用語は、「電気を伝導可能」の意として理解されるべきである。一方、「絶縁性」という用語は、以下、異なる説明がない限り、「電気に対して絶縁性」の意として理解されるべきである。
【0008】
パッドは、容量性スクリーンと相互作用するように構成された末端部であることが理解できる。パッドは、(パッドを形成している材料のおかげで、または、コーティングのおかげで)伝導性である。パッドが容量性スクリーンと相互作用可能である限り、すなわち、パッドがスクリーンに接触していることをスクリーンが検知できる限り、パッドの形状、柔軟性/剛性、および材料は限定されない。
【0009】
また、ボディによって、手動装置を操作するため、特に容量性スクリーンと相互作用するために手動装置を把持することが可能になることが理解できる。ボディは、縦方向または長手方向に延びている。縦方向のボディの寸法を以下ではボディの長さとみなす。ボディは、好ましくは直線状である。また、ロッドも、ボディの内部を縦方向に延びている。従って、ボディは、ロッドを収容できるように中空である。ロッドとボディとは実質的に平行である。一実施形態では、ロッドとボディとが同軸である。これにより、製造が簡易な構造が得られる。
【0010】
ロッドは、中実であっても中空であってもよい。また、ロッドは、実質的に、断面が円形、楕円形、多角形などであるシリンダー状であってもよい。ロッドの長さおよび形状は限定されない。例えば、ロッドは、ボディの全長にわたって延びていてもよく、または、ボディの長さよりも短い長さの部分にだけわたって延びていてもよい。縦方向のロッドの寸法を以下ではロッドの長さとみなす。
【0011】
ロッドは、ポリマー材料、すなわち、1つまたは複数のポリマーを基にする材料でできている。一実施形態では、ポリマー材料は、少なくとも1つの伝導性材料で充填されている。別の実施形態では、ポリマー材料は、少なくとも部分的に伝導性コーティングによって被覆されている。さらに別の実施形態では、ロッドの材料は、伝導性材料で充填され、かつ伝導性コーティングによって被覆されている。すなわち、ロッドは、ポリマー材料でできており、その全体に少なくとも1つの伝導性材料からなるフィラーを含むか、その表面に伝導性コーティングを有するか、あるいはまた、フィラーおよびコーティングの両方を有する。
【0012】
例えば、ポリマー材料は熱可塑性物質である。例えば、ポリマー材料は、以下から選択される1つまたは複数の化合物を含んでいてもよい:アクリロニトリルブタジエンスチレン(頭字語ABSでも知られている);アクリロニトリルメチルメタクリレート(頭字語AMMAでも知られている);アクリロニトリルスチレンアクリレート(頭字語ASAでも知られている);セルロースアセテート(頭字語CAでも知られている);セルロースアセトブチレート(頭字語CABでも知られている);セルロースアセトプロピオネート(頭字語CAPでも知られている);発泡ポリスチレン(頭字語EPSでも知られている);エチレンテトラフルオロエチレン(頭字語ETFEでも知られている);エチレン‐ビニルアルコール(頭字語EVALまたはEVOHでも知られている);パーフルオロエチレンプロピレン(頭字語FEPまたはPFEPでも知られている);メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン(頭字語MBSでも知られている);メチルセルロース(頭字語MCでも知られている);ポリアミド(頭字語PAでも知られている);ポリカプロラクタム(頭字語PA6でも知られている);ポリアミド‐イミド(頭字語PAIでも知られている);ポリアクリロニトリル(頭字語PANでも知られている);ポリブテン‐1(頭字語PB‐1でも知られている);ポリブチレンテレフタレートまたはポリ(ブチレンテレフタレート)(頭字語PBTでも知られている);ポリカーボネート(頭字語PCでも知られている);ポリクロロトリフルオロエチレン(頭字語PCTFEでも知られている);ポリエチレン(頭字語PEでも知られている);高密度ポリエチレン(頭字語PE−HDでも知られている);低密度ポリエチレン(頭字語PE−LDでも知られている);直鎖状低密度ポリエチレン(頭字語PE−LLDでも知られている);超高分子量ポリエチレン(頭字語PE−UHMWでも知られている);ポリエーテルブロックアミド共重合体(頭字語PEBAでも知られている);ポリエステルカーボネート(頭字語PECでも知られている);ポリエーテルエーテルケトン(頭字語PEEKでも知られている);ポリエーテルイミド(頭字語PEIでも知られている);ポリエーテルケトン(頭字語PEKでも知られている);ポリ(エチレンナフタレート)(頭字語PENでも知られている);ポリエーテルスルフォン(頭字語PESUでも知られている);ポリ(エチレンテレフタレート)(頭字語PETでも知られている);パーフルオロアルコキシ(頭字語PFAでも知られている);ポリケトン(頭字語PKでも知られている);ポリメチルメタクリレート(頭字語PMMAでも知られている);ポリメチルペンテン(頭字語PMPでも知られている);ポリオキシメチレン、ポリアセタールまたはポリホルムアルデヒド(頭字語POMでも知られている);ポリプロピレンまたはポリプロペン(頭字語PPでも知られている);ポリ(フェニレンエーテル)(頭字語PPEでも知られている);ポリ(フェニレンオキシド)(頭字語PPOでも知られている);ポリ(プロピレンオキシド)(頭字語PPOXでも知られている);ポリ(フェニレンスルフィド)(頭字語PPSでも知られている);ポリスチレン(頭字語PSでも知られている);ポリスルホン(頭字語PSUでも知られている);ポリテトラフルオロエチレン(頭字語PTFEでも知られている);ポリウレタン(頭字語PURでも知られている);ポリ(酢酸ビニル)(頭字語PVACでも知られている);ポリ(ビニルアルコール)(頭字語PVALでも知られている);ポリ塩化ビニル(頭字語PVCでも知られている);ポリフッ化ビニリデン(頭字語PVDFでも知られている);ポリ(フッ化ビニル)(頭字語PVFでも知られている);スチレン−アクリロニトリル(頭字語SANでも知られている);シリコーン(頭字語SIでも知られている);スチレンマレイン酸無水物(頭字語SSMAまたはSMAnhでも知られている);ポリオレフィン;およびポリエステル。概して言えば、ポリマー材料は、合成有機ポリマー材料または合成有機ポリマーである。このような材料は、工業規模でロッドを製造するのに特によく適している。
【0013】
フィラーは、ロッドの製造時にポリマー材料に導入される添加材料である。よって、少なくとも1つの伝導性材料で充填されたポリマー材料とは、その全体に少なくとも1つの伝導性材料をロッドの製造時に導入したポリマー材料である。この伝導性材料フィラーのおかげで、ロッドが伝導性を有する。例えば、ポリマー材料は、少なくとも2重量%の伝導性材料で充填されていてもよい。
【0014】
例えば、伝導性材料フィラーは、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、または金属粒子から選択される1つまたは複数の化合物を含む。
【0015】
伝導性コーティングは、例えば、伝導性を有するラミネート膜、塗膜、もしくはその等価物であってもよく、または、伝導性材料の箔膜、例えば金属箔であってもよい。
【0016】
このように、伝導性材料フィラーおよび/または伝導性コーティングのおかげで、ロッドは伝導性である。ロッドは、直接的あるいは間接的にパッドと電気的に接触している。例えば、パッドに触れているタブを有するロッドが、パッドに直接的に接続されているまたは電気的に接触しているロッドとなる。別の例では、ロッドは、例えば金属線などのロッドおよびパッドとは別の伝導性部材を介してパッドに接触して、パッドに間接的に接続されているまたは接触しているロッドとなる。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、使用者が把持ボディのロッドと縦方向において重なる部分を持って手動装置を操作すると、容量性スクリーンの面が、好ましくはパッドと接触することによってパッドの存在を感知できることと、このことは、手とロッドとの間、または手とパッドとの間に直接的な電気的接触がない場合であっても成立することとを見出した。パッドを容量性スクリーンと相互作用できるようにするためには、パッドと使用者の手との間に直接的な電気的接触があることが必須であることは、当業者に広く認められている。手動装置が手で操作されていない場合、または手がロッドと重なる部分に置かれていない場合には、スクリーンが手動装置を感知できないことはもちろんである。
【0018】
この驚くべき効果を利用すれば、任意の非伝導性の把持ボディを用いることができ、それにより、容量性スクリーンの使用を可能にする従来の装置にまつわる設計、製造、および費用に関する制約を回避できる。
【0019】
さらに、伝導性材料で充填または被覆されたポリマー材料をもとに製造されるロッドは、大規模工業生産に適したコストで容易に加工できるという利点を有する。さらに、ロッドの材料は、ボディの製造に通常用いられる材料と親和性があるため、ボディ内部へのロッドの取り付けが容易になり、ロッドを既存の手動装置のボディに適合させることができる。
【0020】
「縦方向において重なる」という表現は、2つの部材が、縦方向の同じ領域または縦方向の同じ位置にあることを意味するために用いられる。すなわち、使用者が手動装置を操作しており、ボディのロッドが延びている縦方向の領域に対応する部分に手を置いている場合、パッドを容量性スクリーンに接近または接触させると、容量性スクリーンがパッドの存在を検知する。
【0021】
すなわち、ロッドが縦方向に把持ボディのごく一部分にわたって、例えばボディの長さの10%にわたって延びている場合、把持ボディの長さのその10%を占めている把持ボディの把持部分が、ロッドと重なる把持部分となる。ロッドと重なっているこの把持部分を用いて手動装置を操作すれば、パッドを容量性スクリーンに接近または接触させた場合にスクリーンが装置の存在を検知する。
【0022】
有利には、ロッドは、ボディの長さの10%よりも長い範囲にわたって延びている。
【0023】
この場合、ボディの長さの少なくとも10%にわたって延びる把持部分が得られる。これにより、手動装置は、人間工学的に改善される。
【0024】
有利には、パッドが導電性の受け部を介してボディに取り付けられ、ロッドが受け部を介してパッドと電気的に接触している。
【0025】
受け部は、パッドとボディとの間に配置される中間部材であることが理解できる。このような受け部は、パッドをボディに取り付けることを容易にするという利点を有する。また、受け部は、手動装置を組み立てる際に、ロッドとパッドとを電気的に接触させることを容易にする。
【0026】
有利には、ロッドと受け部とが単一の部材を成している。
【0027】
この場合、手動装置内の部品の数を減らすことができる。これにより、装置の構造が簡素になり、製造コストが低減される。すなわち、受け部とロッドとが同一の材料から作られ、単一部品を成すことが理解できる。これにより、受け部とロッドとの間の電気伝導が最適化される。
【0028】
有利には、パッドが、受け部に直接(すなわち、何らかの中間部材を用いずに)取り付けられている。この場合に、受け部とロッドとが同一の材料でできた単一の部材を成していると、ロッドが直接的にパッドと電気的に接触すると考えることができ、これにより、それらの間の電気的接触の質が向上する。
【0029】
有利には、装置は、筆記用先端部またはその等価物を備える。
【0030】
縦長の把持ボディは2つの端部を有し、一方の端部がパッドを支持し、他方の端部が筆記用先端部を支持していることが理解できる。例えば、筆記用先端部またはその等価物は、ボールポイント、サインペン先端部、シャープペンシル先端部、抵抗性スクリーン用の硬質の先端部、パンチ先端部、または他の何らかの手動装置の端部材である。
【0031】
有利には、筆記用先端部は、貯蔵部から供給を受け、該貯蔵部は、全体または一部がロッドの内部にある。
【0032】
この構成ではロッドが中空であることと、ロッドの内部に形成される空洞が先端部用の貯蔵部の一部または全体を収容することとが理解できる。例えば、貯蔵部は、ボールペン用インクまたはフリーインクの貯蔵部であってもよく、あるいは、フェルトペン用の繊維質貯蔵部またはペンシルの芯の貯蔵部であってもよい。
【0033】
ロッドを貯蔵部の周囲に配置することで、手動装置の全体のサイズが小さくなり、それにより装置の人間工学性が向上する。中空のロッドを用いることでロッドの重さも低減され、このことは、使用の容易性および快適性の観点から有利である。
【0034】
有利には、ボディは、絶縁性ポリマー材料、木材、セラミック、ガラス、またはそれらの等価物でできている。
【0035】
「等価物」という用語は、例えば、ベークライト(商標)、厚紙、木材系材料、ガラス系材料、セラミック系材料、上記材料の1つまたは複数を基にする、例えば木材系およびポリマー材料系の複合材料などの、把持ボディを形成するためのあらゆる絶縁性材料を意味するために用いられる。例えば、ポリマー材料は、熱可塑性物質であり、より詳細には、前記した例示物のリストから選択される1つまたは複数の化合物を含む。
【0036】
有利には、ボディが外面(外壁)を有し、伝導性材料の層がボディの外面に配置されている。
【0037】
伝導性材料の層は、ロッドおよびパッドから絶縁されていることが理解できる。すなわち、伝導性材料の層は、パッドおよび/または伝導性の受け部および/またはロッドと、機械的に接触しておらず、また、電気的にも接触していない。概して言えば、この層は、パッドから絶縁されていることで、直接的にパッドと接触しておらず、また、例えば受け部、ロッド、または別の何らかの部材を介して間接的にもパッドと接触していないことが理解できる。発明者らは、驚くべきことに、ボディの外面に配置されたこのような伝導性の層により、手動装置と容量性スクリーンとの間の相互作用が向上することを見出した。すなわち、ボディがこの伝導性の層を有している場合、容量性スクリーンは、より容易に反応し、かつ/または、手動装置のパッドの存在をより容易に検知する。
【0038】
有利には、層は、ロッドと少なくとも部分的に縦方向において重なって延びている。
【0039】
層がロッドと縦方向において重なっている場合、容量性スクリーンとの相互作用が、スクリーンによってさらに容易に検知される。
【0040】
有利には、層は、ロッドの長さの少なくとも30%の範囲にわたって延びている。
【0041】
このような縦方向の重なりによって、容量性スクリーンとの良好な相互作用を確保できる。
【0042】
有利には、層は、金属箔、または、例えば金属塗膜などの伝導性ラミネートを含む。
【0043】
このような材料は加工が容易であり、十分な性能を有する。
【0044】
有利には、ロッドは、ボディから間隔を置いて配置(または径方向に間隔を置いて配置)されている。この場合、ロッドはどの箇所においてもボディと接触しないことが理解できる。すなわち、ロッドが、ボディから離間(または径方向に離間)している。従って、ロッドとボディとの間に空気の層があることが理解できる。この空気の層は、(使用者の指とロッドとの間、または伝導性材料の層とロッドとの間における)手動装置の容量効果を増大させる追加的な絶縁層である。
【0045】
有利には、ロッドおよびボディが実質的にシリンダー状であり、ロッドおよびボディがそれぞれ実質的にシリンダー状の外面を有し、ロッドの外面とボディの外面との径方向の距離が、5ミリメートル(mm)未満である。このような距離であれば、良好な容量効果が得られる。実質的にシリンダー状とは、例えば、外面の断面の形状および内面の断面の形状が異なり、それら断面形状が、円形、楕円形、多角形などである形状である。
【0046】
本発明およびその利点が、非限定的な例として提示される本発明の種々の実施形態に関する詳細な説明を読むことでよりよく理解できる。以下の説明では、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、斜視図で見た第1実施形態の手動装置を示す。
図2図2は、分解斜視図で見た図1の手動装置を示す。
図3図3は、平面IIIに沿った断面で見た図1の手動装置を示す。
図4図4は、斜視図で見た第2実施形態の手動装置を示す。
図5図5は、平面Vに沿った断面で見た図4の手動装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
第1実施形態の手動装置100を図1図3を参照して説明する。
【0049】
手動装置100は、縦長の把持ボディ10と、容量性スクリーン用のパッド12と、ボディ10の内部を縦方向に延びるロッド14と、を備える。手動装置100、より詳細にはボディ10およびロッド14は、縦方向Xに沿って延びている。ボディ10が、ロッド14を収容するために中空であることはもちろんである。ボディ10が絶縁性である一方、パッド12およびロッド14は伝導性である。パッド12とロッド14とは電気的に接触している。
【0050】
ボディ10は、2つの端部10aおよび10bを有する。端部10aが、ペンの後端部または第1端部となり、一方、端部10bが、ペンの前端部または第2端部となる。この例では、実質的に円錐台形である前端部10bを除いて、ボディ10は、実質的にシリンダー形状であり、外側が六角形断面で、内側が円形断面である。
【0051】
手動装置100は、ボディ10の端部10bに取り付けられた筆記用先端部16を有し、一方、パッド12は端部10aに取り付けられている。従って、この例では、手動装置100は、筆記用のペンと容量性スクリーン用のスタイラスの両方を構成する複合型装置である。
【0052】
パッド12は、受け部13を介してボディ10に取り付けられている。すなわち、受け部13がボディ10に取り付けられ、パッド12は受け部13に取り付けられている。この例では、パッド12は、受け部13を介してロッド14と電気的に接触している。
【0053】
パッド12は、容量性スクリーンと協働するための遠位端部12aを有し、この端部12aは、この例では、実質的に中空の半球状である。端部12aは、実質的に中空のシリンダー状である固定部12bの延長上にある。固定部12bは、固定部12bの自由端近傍かつ固定部12bの内側に配置されたカラー12cを有する。カラー12cは、受け部13に形成された環状の溝15とスナップ嵌めによって協働する。リング20が、固定部12bおよび受け部13の周囲に圧力嵌めされ、受け部13に圧着される(図3参照)。このリング20により、パッド12と受け部13とのスナップ嵌めが固定される。受け部13は、押しつけられたリング20を受け止める肩部13aを有する。
【0054】
受け部13は、パッド12と受け部13との間にできる空間の内部の圧力と該空間の外部の圧力とのバランスを取るための通気口を形成するように、縦方向Xに沿った貫通孔13bを有する。
【0055】
受け部13は、例えば接着または溶着(ヒートシール、超音波溶着など)によってボディ10と協働する肩部13cを有する。受け部13およびロッド14は、同一の材料でできた単一の部品を成している。従って、この例では、ロッド14が受け部13を介してボディ10に固定されている。受け部13とロッド14との間の接続部分は、ボディ10の後端部10aに形成された凹部10cと相補的な形状で協働する、中心合わせ用の厚肉部13dを有する。さらに、受け部13をボディ10に溶着する場合、厚肉部13dは、受け部13をボディ10に固定することにも寄与する。厚肉部13dは、ボディととりわけ接触しているので、溶着ビードとなる。この例では、厚肉部13dおよび凹部10cは、実質的に環状である。
【0056】
ロッド14は中空である。受け部13の通気口13cは、中空のロッド14の内部の空洞につながっている。ロッド14は、ボディ10の内部を、後端部10aから延びている。図3に示すように、ロッド14は、長さを概ね縦方向Xに沿って見た場合、ボディ10の長さの10%よりも長い範囲にわたって延びている。この例では、ロッドは、後端部10aを起点として、ボディ10のおよそ50%にわたって延びている。すなわち、縦方向Xに沿って見た場合、ロッド12は、ボディ10のおよそ半分にわたって延びている。
【0057】
筆記用先端部16は、この例ではボールポイントであるが、インク19を収容している貯蔵部18からインクを供給される。図3に示すように、貯蔵部18は、その一部がロッド14の内部を延びている。より詳細には、貯蔵部18の後端部18a、すなわち、筆記用先端部16とは反対側の貯蔵部の端部が、ロッド14の内部に配置されている。概して言えば、インク貯蔵部は、全体または一部がロッド14の内部を縦方向Xに沿って延びている。この例では、貯蔵部18の後端部18aからおよそ50%の部分がロッドの内部に配置されている。すなわち、この例では、縦方向Xに沿って見た場合、貯蔵部18の概ね後ろ側半分がロッド14の内部にある。
【0058】
この例では、ロッドの外径は5.4mmであり、一方、ボディの内径は5.52mmである。概して言えば、ロッド14がボディ10から間隔を置いて配置されていることが理解できる。ボディの厚さは、1.2mm〜1.5mmの範囲にある。従って、ボディの外面(または外壁)とロッドの外面(または外壁)との径方向の距離は、1.26mm〜1.56mmの範囲にある。概して言えば、発明者らは、ボディの外面とロッドの外面との径方向の距離が5mm未満である場合に、手動装置100が満足のいく仕方で作動することを見出した。
【0059】
この例では、ボディ10はPSでできており、ロッド12および受け部13は、3重量%のカーボンナノチューブをフィラーとして含有するABSでできている。パッド14は、伝導性成分を含有するエラストマー材料でできている。この例では、パッド14は、カーボンブラック粒子で充填されたシリコンでできている。リング20は、クロムめっき銅でできている。
【0060】
このように、使用される材料のおかげで、パッド12は、受け部13を介して間接的にロッド14と電気的に接触している。リング20は、金属でできているため、その主な機能はパッド12を受け部13上に機械的に保持することではあるが、受け部13とパッド12との電気的接触を確保することにも寄与する。
【0061】
使用者がボディ10のロッド14と縦方向Xにおいて重なる部分を把持して手動装置100を操作すると、容量性スクリーンがパッド12からの接触を感知できる。すなわち、使用者が手動装置100を操作しており、ボディ10のロッド14が延びている縦方向の領域に対応する部分で装置を掴んでいる場合、パッド12を容量性スクリーンに接近または接触させると、容量性スクリーンがパッドの存在を検知する。図3では、ボディ10の部分Aが、ボディ10のロッド14と縦方向において重なる把持部分となり、ボディ10の部分Bがロッド14と縦方向において重ならない把持部分となる。
【0062】
以下、第2実施形態の手動装置200を図4および図5を参照して説明する。第1実施形態の手動装置100との唯一の違いは、ボディの外面に伝導性材料の層があることである。従って、第1実施形態と第2実施形態とに共通する全ての要素について再度説明はせず、それら要素は同じ参照符号のままである。
【0063】
第2実施形態では、ボディ10が、その外面に伝導性材料の層202を有する。この例では、層202は、例えば熱溶融性接着剤などの従来の手段を用いてボディ10の外面に積層された金属箔を含む。金属箔は、アルミニウムでできている。図5に示すように、層202は、ボディの後端部10aまでは延びていない。従って、層202と、受け部13、リング20、またはパッド12との間には電気的接触がない。すなわち、層202は、受け部13、リング20、およびパッド12から(当然ロッド14からも)絶縁されている。
【0064】
この層202は、概ねロッド14の全長と縦方向において重なる部分Cにわたって延びている。さらに、層202は、ロッドと重ならない部分Dにわたって延びている。部分Dが、把持部分Aに追加された把持部分となる。このように、コーティング202を用いることで、容量性スクリーンに対してパッド12を用いるのに有効な把持部分が大きくなるため、手動装置200は、手動装置100と比べて人間工学的により優れる。
【0065】
本発明を具体的な実施形態を挙げて説明したが、請求項によって定められる本発明の全体の範囲を逸脱しない限り、改良および変更をそれら実施形態に施し得ることは明らかである。特に、図示かつ/または説明した種々の実施形態の個々の特徴を組み合わせてさらなる実施形態を構成してもよい。従って、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で考察されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5