特許第6388927号(P6388927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388927電気インピーダンストモグラフィ装置及び電気インピーダンストモグラフィ方法
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  • 特許6388927-電気インピーダンストモグラフィ装置及び電気インピーダンストモグラフィ方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388927
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】電気インピーダンストモグラフィ装置及び電気インピーダンストモグラフィ方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   A61B5/05 B
   A61B5/05ZDM
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-517491(P2016-517491)
(86)(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公表番号】特表2016-531618(P2016-531618A)
(43)【公表日】2016年10月13日
(86)【国際出願番号】EP2014002580
(87)【国際公開番号】WO2015043741
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年5月19日
(31)【優先権主張番号】13186489.4
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】308011030
【氏名又は名称】ドレーゲルヴェルク アクチェンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Draegerwerk AG & Co.KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イヴォ ゲアバー
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−534867(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0216664(US,A1)
【文献】 特表2002−531207(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0193700(US,A1)
【文献】 特開平06−225860(JP,A)
【文献】 特表平05−507864(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0260611(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気インピーダンストモグラフィ装置であって、
患者の胸部周囲に取り付け可能であり1つの電極平面を成す複数の電極と、ディスプレイと、制御及び評価ユニットと、が設けられており、
前記制御及び評価ユニットは、前記複数の電極に接続されており、プログラミングによって以下のように構成されている、即ち、
給電用の電極ペアとして少なくとも1つの電極ペアに交流電流又は交流電圧を供給し、残りの電極ペアのうち複数の電極ペアを用い、前記複数の電極から測定信号として電圧信号又は電流信号を取り出し、前記複数の電極ペアのうち別の電極ペアを順番に給電用の電極ペアとして機能させて、前記測定信号に基づき所定の再構成アルゴリズムを用いて、複数の画素から成る1つのマトリックスを再構成し、前記マトリックスは、前記電極平面におけるインピーダンス変化の空間的分布を表し、
順次連続する少なくとも1回の吸息と少なくとも1回の呼息とにわたって、測定信号を繰り返し取り出し、複数のマトリックスを再構成して、前記少なくとも1回の吸息と前記少なくとも1回の呼息とにわたり、前記複数の画素のインピーダンス変化を含む複数のマトリックスの時系列を取得する、
ように構成されている、
電気インピーダンストモグラフィ装置において、
前記制御及び評価ユニットは、さらに以下のように構成されている、即ち、
前記複数のマトリックスの時系列から、画素ごとに、又は考察される複数の画素から成る選択された集合に対し、それぞれ局所的インピーダンス変化を、平均肺胞圧力と厳密に単調に依存する量の関数として、少なくとも1回の吸息にわたり局所的吸息曲線として捕捉し、且つ少なくとも1回の呼息にわたり局所的呼息曲線として捕捉し、
局所的な吸息曲線と呼息曲線との偏差を表すパラメータを、局所的散逸値としてそれぞれ算出し、
それぞれ各画素に、前記画素の局所的な散逸値又は前記散逸値から正規化により得られた局所的散逸値を割り当て、
考察されるすべての画素の局所的散逸値をまとめて、前記電極平面により規定された1つの画像平面における1つの散逸マップを形成し、前記散逸マップにおいて各画素に対し、前記画素の局所的散逸値に依存するグラフィックコーティングが割り当てられており、
前記画像平面の散逸マップをディスプレイに表示させる、
ように構成されていることを特徴とする、
電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項2】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
考察される各画素の前記吸息曲線及び呼息曲線を閉曲線として捕捉し、前記閉曲線により囲まれたヒステリシス面積を、前記画素の散逸値として算出する、
ように構成されている、
請求項1に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項3】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
すべての画素の局所的インピーダンス変化曲線を、1つの共通の係数によって正規化して、正規化されたすべての局所的インピーダンス変化曲線の合計が、別個に求められた呼吸容量曲線と等しくなる、
ように構成されている、
請求項1又は2に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項4】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
別個に求められた呼吸の圧力曲線と容量曲線とに基づき、呼吸メカニズムモデルを用いて平均肺胞圧力を求め、前記平均肺胞圧力を、前記平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量として利用する、
ように構成されている、
請求項1又は2に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項5】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
前記平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量として、別個に求められた呼吸容量曲線の形態で、前記量に線形依存する量を利用し、前記呼吸容量曲線は、弾性変形が行われているとすれば、前記平均肺胞圧力の線形関数である、
ように構成されている、
請求項1又は2に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項6】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
前記平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量として、すべての局所的インピーダンス変化曲線の合計から求められた大域的インピーダンス変化曲線の形態で、前記量に線形依存する量を利用し、前記大域的インピーダンス変化曲線は、呼吸容量曲線に比例し、つまり弾性変形が行われているとすれば、前記平均肺胞圧力の曲線に比例する、
ように構成されている、
請求項1又は2に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項7】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
前記平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量を、前記量が呼息終了時には呼息終末圧力(PEEP)と等しく、吸息終了時には最大吸息圧力(PMAX)と等しくなるよう、正規化して、局所的インピーダンス変化曲線がp―V曲線を表す、
ように構成されている、
請求項1又は2に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項8】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
前記ヒステリシス面積をヒステリシス値に対して正規化し、前記正規化において、各ヒステリシス面積を、局所的インピーダンス変化曲線における各呼吸終末値間の差と、前記平均肺胞圧力に比例する量の各呼吸終末値間の差と、の積によって除算して、正規化されたヒステリシス面積を、0(ヒステリシスなし)と1(最大ヒステリシス)との間に生じさせる、
ように構成されている、
請求項2又は請求項2に従属するり請求項から6のいずれか1項に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項9】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
必要に応じて正規化された各ヒステリシス面積に極性符号を割り当て、前記割り当てにおいて、前記局所的インピーダンス変化曲線の呼息曲線部分が、前記平均肺胞圧力に比例する量の関数として、前記吸息曲線部分の上方に位置しているか否かを検査し、検査の結果が肯定であれば、+及び−の極性符号のうち一方の極性符号を割り当て、検査の結果が否定であれば、逆の極性符号を割り当てる、
ように構成されている、
請求項2又は請求項2に従属する限り請求項3から8のいずれか1項に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項10】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
前記散逸マップを、カラー又はグレー値のスカラーの形式のグラフィックコーティングによって、前記ディスプレイに表示させる、
ように構成されている、
請求項1から9のいずれか1項に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項11】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
平均化された散逸マップを形成し、前記形成において画素ごとに、複数の呼吸動作にわたり局所的インピーダンス変化曲線を捕捉して平均化し、平均化された前記局所的インピーダンス変化曲線に基づき散逸マップを求めるか、又は、複数の呼吸動作における複数の散逸マップを平均化し、平均化された散逸マップを表示させる、
ように構成されている、
請求項1から10のいずれか1項に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項12】
前記制御及び評価ユニットはさらに、
1つの散逸マップに対し、前記散逸マップからのすべての値又は絶対値の平均値形成、合計、又は最大値の算出によって、1つの大域的肺胞散逸値を割り当て、前記大域的肺胞散逸値を数値として又はグラフとして前記ディスプレイに表示させる、
ように構成されている、
請求項1から11のいずれか1項に記載の電気インピーダンストモグラフィ装置。
【請求項13】
患者の胸部周囲に分散されて1つの電極平面を成す複数の電極によって、前記胸部の横断面のEIT画像シーケンスを撮影する方法であって、
給電用の電極ペアとして、1つの電極ペアに交流電流又は交流電圧を供給し、残りの電極ペアのうち複数の電極ペアを用い、測定信号として電圧信号又は電流信号を取り出し、前記複数の電極ペアのうち、別の電極ペアを順次、給電用の電極ペアとして駆動し、
前記測定信号の全体から、所定の再構成アルゴリズムを用いて、複数の画素から成る1つのマトリックスを再構成し、前記マトリックスは、前記電極平面における画素ごとのインピーダンス変化の空間的分布を表し、
前記インピーダンス変化のマトリックスを、所定の時間にわたり繰り返し再構成して、順次連続する少なくとも1回の吸息と少なくとも1回の呼息とにわたり、局所的インピーダンス変化の複数のマトリックスの時系列を取得する、
EIT画像シーケンスを撮影する方法において、
画素ごとに、又は複数の画素から成る選択された集合について、複数のマトリックスの時系列からそれぞれ局所的インピーダンス変化を、肺胞圧力に厳密に単調に依存する量の関数として、少なくとも1回の吸息にわたり局所的吸息曲線として捕捉し、少なくとも1回の呼息にわたり局所的呼息曲線として捕捉し、
局所的な吸息曲線と呼息曲線との偏差を表すパラメータを、局所的散逸値として算出し、
考察されるすべての画素の局所的散逸値をまとめて、前記電極平面により定義された画像平面における1つの散逸マップを形成し、前記散逸マップにおいて、考察される各画素に、前記画素の散逸値に依存するグラフィックコーティングを割り当て、前記画像平面の散逸マップをディスプレイに表示させることを特徴とする、
EIT画像シーケンスを撮影する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気インピーダンストモグラフィ装置に関する。この装置には、患者の胸部周囲に取り付け可能であり1つの電極平面を成す複数の電極と、ディスプレイと、制御及び評価ユニットとが設けられている。制御及び評価ユニットは、複数の電極に接続されており、プログラミングによって以下のように構成されている、即ち、
給電用の電極ペアとして少なくとも1つの電極ペアに交流電流又は交流電圧を供給し、残りの電極ペアのうち複数の電極ペアを用い、測定信号として電圧信号又は電流信号を取り出し、別の電極ペアを順番に給電用の電極ペアとして機能させて、測定信号に基づき所定の再構成アルゴリズムを用いて、複数の画素から成る1つのマトリックスを再構成し、このマトリックスは、電極平面におけるインピーダンス変化の空間的分布を表し、順次連続する少なくとも1回の吸息と少なくとも1回の呼息とにわたり、測定信号を繰り返し取り出し、複数のマトリックスを再構成して、少なくとも1回の吸息と少なくとも1回の呼息とにわたり、複数の画素のインピーダンス変化を含む複数のマトリックスから成る時系列を取得する、
ように構成されている。
【背景技術】
【0002】
この種の電気インピーダンストモグラフィ装置(EIT装置)は、例えば欧州特許出願公開第1000580号明細書から公知であり、この装置は、患者の胸郭横断面の「電気インピーダンストモグラフィ画像」を撮影するために用いられる。
【0003】
電気インピーダンストモグラフィは、インピーダンス分布を再構成するための方法であり、正確に言えば、導電性の体内における基準分布に対するインピーダンス変化を再構成するための方法である。この目的で、被検査体表面に複数の電極が取り付けられる。典型的な事例として、環状に等間隔に配置された16個の電極が使用され、それらの電極を、ベルトによって患者胸郭周囲に設置することができる。
【0004】
制御及び評価ユニットには、信号増幅及び交流電流給電のためのアナログ電気回路と、電圧信号をディジタル変換して準備処理するための電子回路と、機器を制御するための、及びインピーダンス分布再構成のために取得データを処理するための信号プロセッサと、が設けられている。制御及び評価ユニットは、(好ましくは)隣り合う電極から成る1つのペアに、それぞれ相前後して交流電流を給電し(例えば50kHzで5mA)、さらに制御及び評価ユニットは、残りの複数の電極ペアから電圧を捕捉するように構成されている(基本的にはこれとは逆に、交流電圧を1つの電極ペアに供給し、残りの複数の電極ペアを介して交流電流を測定することも可能である)。一般的には、隣り合う電極から成る残りのすべてのペアの電圧が捕捉されるが、基本的にはいくつかの電極を抜かしてもよく、ただしそれによって情報が損失することになる。
【0005】
給電される電極ペアの位置が段階的に電極リング周囲を巡るように、相前後して電流給電を行うことによって得られたすべての測定信号全体から、所定のアルゴリズムを用いてインピーダンス分布を再構成することができ、正確に言えば、基準分布(例えば初回の撮影におけるインピーダンス分布)に対するインピーダンス変化を再構成することができる。公知のアルゴリズムによれば、再構成結果として32×32の画素から成るマトリックスが形成され、このマトリックスは画素ごとに、その画素に関する再構成されたインピーダンス変化を含んでいる。少なくとも1回の吸息と少なくとも1回の呼息との間に、例えば吸息とそれに続く呼息とを含む1回の呼吸動作にわたって、複数のこの種のマトリックスが予め定められたタイムインターバルで記録される。これらのマトリックスは、相前後してディスプレイに表示され、それによってインピーダンス分布に関する換気間(intratidal)の時間的推移が、実際にはフィルムとして可視化される。
【0006】
研究対象として関心が向けられている集中医療において、局所的な肺の換気機能を測定するために胸郭電気インピーダンストモグラフィが広まってきている。胸郭のCT撮影を伴うEIT撮影の理論モデル及び実験比較によれば、肺組織の空気含有量とそのインピーダンスが、ほぼ完全な比例関係にあることが示されている。空間的には胸郭直径の約20%、時間的には一般に毎秒約20個〜約40個のマトリックスの分解能で呼吸が処理され、そのことから局所的な肺換気機能をベッドサイドで監視することができる。これらのマトリックスは場合によっては、(32×32=1024個の画素を有する)インピーダンス分布画像とも呼ばれ、又はフレームとも呼ばれる。
【0007】
つまり画素ごとに、1回の吸息フェーズ又は1回の呼息フェーズにわたり一連のインピーダンス変化が求められ、このような一連のインピーダンス変化のことを、ここではその画素のインピーダンス変化値の時系列とも称する。離散的な点から成る時系列は、厳密な意味では曲線ではないけれども、以下では、インピーダンス変化値の時系列とインピーダンス変化値の曲線とを同じ意味で用いる。また、図面においてもこれらの時系列は、図示の都合上、時間の関数として曲線の形態で描かれている。
【0008】
高いフレームレートによる基本的な利点とは、呼吸特にその吸息フェーズと呼息フェーズを、時間的に分解して処理できることである。したがって、吸息終了状態において換気された肺の局所的な分布(換気画像)を分析できるだけでなく、吸息中及び呼息中の時間特性も検査することができ、これによって局所的な肺のメカニズムの経過に関する推定を取得することができる。つまり例えば論文"Neue Verfahren zur Verbesserung der Abbildungsqualitaet bei funktionellen EIT-Tomogrammen der Lunge"(「肺の機能的EIT断層像の結像品質を改善する新たな手法」)、G. Kuehnel等著、Biomed. Tech. (Berl.) 42 (1997) Suppl. 470-1によれば、大域的インピーダンス変化曲線に対する局所的インピーダンス変化曲線の特性が観察されるが、吸息中及び呼息中の様々な特性が考慮されるのではなく、整合された直線の上昇から「充填容量」" Filling-Capacity "が求められ、これは換気画像に利用される大きさを表すものである(これについてはいくらか正確に説明する必要がある)。
【0009】
さらに論文"Regional Ventilation delay index: detection of tidal recruitment using electric impedance tomography", T. Muders著、Vincent JL, editor, Yearbook of Intensive Care and Emergency Medicineによれば、複数の局所的な吸息曲線が求められ、局所的な吸息曲線ごとに、それぞれ最大値の40%に達した時間が、大域的な吸息時間と関係づけられ、その結果から、平均よりも小さい又は大きい時定数を有する比較的迅速な又は比較的緩慢な領域の画像が生成される。このようにして"Regional Ventilation delay-index (RVD)"(「局所的換気遅延指標」)が、時間的な不均一性の尺度として定義される。
【0010】
しかしながらいずれの方法も、吸息曲線と呼息曲線を同時には考慮しておらず、したがってどの程度の呼吸仕事量が肺胞面に散逸しているのかを考慮していない。理想的なケースでは、弾性的に肺胞と胸郭が伸長することにより、吸入中、呼吸仕事量が肺胞面にほぼ完全に蓄積され、蓄積されたエネルギーが吐出中、受動的に再び開放される。このケースでは、吸息と呼息との間にヒステリシスは存在しない。このことは当然ながら、肺胞面においてのみあてはまる。マウスピース又は上部気管支において通常の呼吸圧力を測定する場合には、容量に依存して気道中の空気流に摩擦損失が生じることから、そのことだけで既にヒステリシスが生じる。これは、呼吸メカニズムモデルの運動方程式に合わせてデータを整合することによって、推定し算出することができる。
【0011】
人工呼吸における単純な呼吸メカニズムモデルによれば、チューブ管と気道の摩擦抵抗RとシステムコンプライアンスCとを有する1つのコンパートメントとして肺をみなし、ただし慣性と乱流の損失及び横隔膜圧力は無視するとすれば、以下のような運動方程式が得られる。
【数1】
【0012】
ここでV(t)は呼吸空気容量であり、p(t)は上方の気道圧力である。第1の項p(t)は、気道における摩擦に起因する圧力降下を表す一方、第2の項palv(t)は平均肺胞圧力と考えることができる(ここで平均肺胞圧力とは、すべての肺胞に関して平均化されたものを意味し、この平均肺胞圧力は1回の呼吸にわたり時間の関数である)。
【0013】
健康な肺の場合、吸息と呼息との間の圧力差が僅かであれば、コンプライアンスCは定数とすることができ、つまり圧力には左右されないものとすることができる。したがってこのモデルでは、容量は平均肺胞圧力Palv(t)に線形依存し、さらに平均肺胞圧力は、大域的インピーダンス変化に比例する(ここで大域的インピーダンス変化とは、個々の画素のすべての局所的インピーダンス変化の和のことである)。このため、肺胞圧力palv(t)と容量曲線V(t)との間には、つまりは大域的インピーダンス変化曲線Zglo(t)に対して、ヒステリシスが生じないことになる(ただし一般的には容量V(t)と気道圧力p(t)との間)。
【0014】
空間的及び時間的に均一な肺であるならば、局所的インピーダンス変化曲線(即ち画像平面における1つの画素のインピーダンス変化)についてもこのことが成り立つはずであって、つまり平均肺胞圧力palv(t)と局所的インピーダンス変化との間にヒステリシスが生じないことになる。しかしながら肺胞の一部が、もはや単純に弾性的な領域では動作していない場合には、そこにおいて肺胞のp―Vヒステリシスが発生する。
【0015】
したがって本発明の課題は、電気インピーダンストモグラフィ装置及び対応する方法において、局所的肺胞圧力と容量とのヒステリシスを捕捉できるようにし、つまりは散逸した肺胞の呼吸仕事量もしくはそれに比例する量を、局所的に捕捉できるようにし、それらを空間的に分解して視覚的に容易に把握可能に表示できるようにすることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、請求項1の特徴を備えた電気インピーダンストモグラフィ装置、及び請求項11の特徴を備えたEIT画像シーケンスを撮影する方法によって解決される。
【0017】
本発明によれば、制御及び評価ユニットは、複数のマトリックスの時系列を評価するように構成されており、これによって画素ごとに、又は(例えば選択された1つの画像領域の)選択された画素集合に対し、少なくとも1回の吸息と少なくとも1回の呼息とにわたり、局所的インピーダンス変化を、平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量の関数として、局所的吸息曲線と局所的呼息曲線という形態で、それぞれ捕捉する。吸息曲線及び呼息曲線をグラフに描いて考察する際に対峙させる量を、平均肺胞圧力自体としてもよいし、平均肺胞圧力の線形関数、又は平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する関数としてもよい。ここで、平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する関数とは、平均肺胞圧力がどのように変化しても、その結果として、考察する量が一義的な方向で変化する、ということである。換言すれば、平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量に対し、平均肺胞圧力は可逆的に一義的にマッピングされる、ということになり、このことは当然ながら特に、線形依存する量について成り立つ。
【0018】
局所的インピーダンス変化の時系列はたしかに、既述の量について表された座標系において、離散的な値のペアから成るけれども、それらの値を個々に直線区間によって結ぶことができ、又は1つの曲線に対する所定の関数の整合によって結ぶことができる。考察する画素に関して(これらの画素はすべての画素であってもよいし、又は選択された画像領域からの画素であってもよい)、インピーダンス変化曲線が、局所的な吸息曲線及び呼息曲線として捕捉される。
【0019】
局所的なインピーダンス変化曲線は一般には閉曲線であり、その理由は、肺は1回の吸息と1回の呼息の後、再び同じ圧力−容量状態に戻るからである。局所的インピーダンス変化曲線が推移するグラフの一方の座標軸は容量に対応し、他方の座標軸は圧力に対し厳密に単調であり、特に圧力に比例しているので、各画素について一種のP−Vグラフが描かれるようになる。まったく問題のない弾性の肺領域である理想的なケースであれば、インピーダンス変化曲線の吸息部分と呼息部分は、直線として一致する。ただし一般的には非弾性の損失があることによって、吸息曲線部分と呼息曲線部分は一致せず、1つのヒステリシスループを成すことになる。
【0020】
制御及び評価ユニットはさらに、局所的な吸息曲線と呼息曲線との偏差を表すパラメータを、画素の局所的散逸値としてそれぞれ計算するように構成されている。制御及び評価ユニットは、さらに以下のように構成されている。即ち、それぞれ画素に対し、それらの局所的散逸値を、又はそれらの局所的散逸値から正規化により得られた散逸値を割り当て、複数の散逸値をまとめて1つの散逸マップを形成する。この散逸マップにおいて、各画素に対しそれらの局所的散逸値に依存するグラフィックコーティングが割り当てられており、電極平面によって規定された画像平面内で、この散逸マップをディスプレイに表示させる。
【0021】
1つの有利な実施形態によれば、考察される各画素の吸息曲線と呼息曲線は、閉曲線として捕捉され、これらの曲線は、非弾性的なケースであれば(磁化の閉曲線のように)ヒステリシスループと呼ばれる。この実施形態によれば、制御及び評価ユニットはさらに以下のように構成されている。即ち、吸息曲線と呼息曲線との偏差を表すパラメータとして、吸息部分と呼息部分との間に位置する面積を画素のヒステリシス面積として計算し、考察される各画素に対しその画素のヒステリシス面積を、散逸値として割り当て、又はそれらの散逸値から正規化によって得られた散逸値として割り当て、それらの散逸値をまとめて1つの散逸マップを形成する。この散逸マップにおいて、各画素に対し、そのヒステリシス値に依存するグラフィックコーティングが割り当てられており、画像平面のヒステリシスマップをディスプレイに表示させる。
【0022】
散逸マップを表示することの利点は、局所的インピーダンス変化曲線の局所的な吸息曲線部分も呼息曲線部分も用いられることから、1回の完全な呼吸動作の間に、局所的な肺胞の呼吸仕事量損失を迅速に捕捉できることである。機械的エネルギーは、健康な肺胞の場合であれば一般的に弾性的に蓄積されるので、肺胞の呼吸仕事量損失は、呼吸中の非弾性的な妨害を表し、これは病気の肺の場合に、及び/又は、呼吸器のパラメータが最適に調整されていない場合に、発生する可能性がある。
【0023】
吸息曲線と呼息曲線との偏差を表すパラメータに関する別の例として例えば、吸息曲線と呼息曲線の積分の差の絶対値を、両方の共通の呼吸領域にわたって用いることができる。これらの曲線間の面積によって、閉曲線ではない場合であっても、偏差を表すパラメータが供給され、閉曲線のケースであれば、これはヒステリシス面積に相応する。
【0024】
1つの有利な実施形態によれば、肺横断面の考察されるすべての画素の局所的インピーダンス変化曲線が、1つの共通の係数によって正規化され、この場合、正規化されたすべての局所的インピーダンス変化曲線の合計が、別個に求められた呼吸容量曲線と等しくなるように、正規化が行われる。このようにすれば、正規化された局所的インピーダンス変化曲線を、容量曲線と捉えることができる。別個に求められる呼吸容量曲線を例えば、患者の人工呼吸を実施している呼吸器によって供給することができる。
【0025】
制御及び評価ユニットにより用いられる、平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量を、制御及び評価ユニットにより様々な手法で求めることができる。1つの有利な実施形態によれば、制御及び評価ユニットは、別個に求められた呼吸の圧力と容量の曲線を受け取り、この曲線に基づき呼吸メカニズムモデルを利用して平均肺胞圧力を求め、平均肺胞圧力自体を上述の量として用いる。これは例えば、上述の運動方程式のパラメータRとCに関して最小自乗により行うことができ、この場合、呼吸の圧力と容量の曲線p(t)及びV(t)は、患者に対し人工呼吸を行う呼吸器からのものである。この場合、平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量は、平均肺胞圧力に線形依存する量である。
【0026】
別の選択肢として、制御及び評価ユニットを以下のように構成することができる。即ち、平均肺胞圧力に線形依存する(つまりは平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する)量として、別個に求められた呼吸容量曲線を利用し、この呼吸容量曲線は、弾性変形が行われているとすれば、平均肺胞圧力の線形関数である。別個に求められた容量曲線を、ここでも呼吸器からのものとすることができる。
【0027】
1つの別の択一的な実施形態によれば、制御及び評価ユニットをさらに以下のように構成することができる。即ち、平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量として、この量に線形依存する量を利用し、この量は、すべての局所的インピーダンス変化曲線の合計から求められた大域的インピーダンス変化曲線の形態であり、さらにこの大域的インピーダンス変化曲線は呼吸容量曲線に比例し、つまり弾性変形が行われているとすれば、平均肺胞圧力曲線に比例する。
【0028】
1つの有利な実施形態によれば、制御及び評価ユニットを以下のように構成することができる。即ち、平均肺胞圧力に厳密に単調に依存する量を、この量が呼息終了時には呼息終末圧力(PEEP)と等しく、吸息終了時には最大吸息圧力(PMAX)と等しくなるよう、正規化して、局所的インピーダンス変化曲線がp―V曲線として表されるようにする。
【0029】
1つの択一的な実施形態によれば、制御及び評価ユニットを、以下のようにしてヒステリシス面積を正規化するように構成することができる。即ち、各ヒステリシス面積を、局所的インピーダンス変化曲線における各呼吸終末値間の差と、平均肺胞圧力に比例する量の各呼吸終末値間の差との積によって除算して、正規化されたヒステリシス面積が、0(ヒステリシスなし)と1(最大ヒステリシス)との間で生じるようにする。このことが具体的に意味するのは、ヒステリシス曲線の周囲に、このヒステリシス曲線を取り囲む矩形(この矩形の辺は座標軸に平行)を形成し、ヒステリシス曲線が占める面積を周囲に形成した矩形の面積で除算する、ということである。理想的に弾性的なケースであれば、ヒステリシス曲線の面積は0であり、つまり正規化されたヒステリシス値は0である。これとは逆に著しく極端なケースでは、ヒステリシス曲線が矩形の直線的推移に従って推移し、したがってヒステリシス面積と矩形の面積とが等しくなり、極端なヒステリシス値1が生じる。
【0030】
1つの有利な実施形態によれば、必要に応じて正規化された各ヒステリシス面積に、以下のようにして極性符号を割り当てるように、制御及び評価ユニットを構成することができる。即ち、局所的インピーダンス変化曲線の呼息曲線部分が、平均肺胞圧力に比例する量の関数として、吸息曲線部分の上方に位置しているか否かを検査し、検査の結果が肯定であれば、+の極性符号を割り当て、検査の結果が否定であれば、−の極性符号を割り当てる。このような極性符号の割り当てを、逆にして行ってもよい。
【0031】
さらに制御及び評価ユニットを、以下のように構成することができる。即ち、散逸マップを、カラー又はグレー値のスカラー量の形式のグラフィックコーティングによって、ディスプレイに表示させる。
【0032】
制御及び評価ユニットをさらに、平均化された散逸マップを以下のようにして形成するように、構成することができる。即ち、考察される画素ごとに、複数の呼吸動作にわたり局所的インピーダンス変化曲線を捕捉して平均化し、平均化された局所的インピーダンス変化曲線に基づき散逸マップを求めるか、又は、複数の呼吸動作における複数の散逸マップを平均化し、平均化された散逸マップを表示させる。
【0033】
1つの有利な実施形態によれば、制御及び評価ユニットをさらに以下のように構成することができる。即ち、1つの散逸マップに対し、散逸マップの値又はそれらの絶対値の平均値形成、散逸マップの値又はそれらの絶対値の合計、又は、散逸マップのすべての値又は絶対値の最大値の特定によって、1つの大域的肺胞散逸値を割り当て、この大域的肺胞散逸値を数値として又はグラフとしてディスプレイに表示させる。
【0034】
本発明はさらに、患者の胸部周囲に分散されて1つの電極平面を成す複数の電極によって、胸部の横断面のEIT画像シーケンスを撮影する方法にも関する。この方法によれば、給電用の電極ペアとして、1つの電極ペアに交流電流又は交流電圧を供給し、残りの電極ペアのうち複数の電極ペアから、電圧信号又は電流信号を測定信号として取り出し、複数の電極ペアのうち、別の電極ペアを順次、給電用の電極ペアとして駆動し、測定信号全体から、所定の再構成アルゴリズムを用いて、複数の画素から成る1つのマトリックスを再構成し、このマトリックスは、電極平面における画素ごとのインピーダンス変化の分布を表し、インピーダンス変化のマトリックスを、所定の時間にわたり繰り返し再構成して、順次連続する少なくとも1回の吸息と少なくとも1回の呼息とにわたり、局所的インピーダンス変化の複数のマトリックスの時系列を取得する。
【0035】
本発明の特徴によれば、画素ごとに、又は、考察される複数の画素から成る選択された集合について、複数のマトリックスの時系列からそれぞれ局所的インピーダンス変化を、肺胞圧力に厳密に単調に依存する量の関数として、少なくとも1回の吸息と少なくとも1回の呼息とにわたり、局所的な吸息曲線及び呼息曲線の形態で捕捉し、局所的な吸息曲線と呼息曲線との偏差を表すパラメータを、局所的散逸値として算出し、考察されるすべての画素の局所的散逸値をまとめて1つの散逸マップを形成し、この散逸マップにおいて、各画素に、それらの画素の散逸値に依存するグラフィックコーティングを割り当て、電極平面により規定される画像平面内で散逸マップをディスプレイに表示させる。
【0036】
本発明に関連して考察される、順次連続する少なくとも1回の吸息及び少なくとも1回の呼息は、典型的には、1回の吸息及びそれに続く1回の呼息を伴う1回の呼吸動作である。ただし基本的には、最初に呼息から開始し、それに続く吸息を考察してもよく、さらに基本的にはさらに後続の複数の吸息及び複数の呼息を、分析に関与させてもよい。
【0037】
次に、実施例に基づき本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】電気インピーダンストモグラフィ装置を示す概略ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1にブロック図として概略的に示されたEIT装置によれば、例えば16電極システムが用いられ、この場合、電極1を胸郭の周囲に環状に取り付けることができる。EIT装置のデータ取得ユニット2によって、(好ましくは)隣り合う電極から成る1つのペアを介した電流給電と、その他の隣り合う複数の電極ペアを介した電圧測定とが行われ、というようにしながら、その後、複数の又はすべての隣り合う電極ペアが、一度は給電用の電極ペアとなるまで、さらに別の隣り合う電極ペアを介した電流給電が行われる。これによって得られた測定電圧のことを、フレームとも称する。この場合、複数の測定電圧から成る1つのフレームは、10Hz〜50Hzのフレームレートで記録可能な208個の電圧値から成る。16個の隣り合う電極のペア各々を1回、給電用の電極ペアとして用いれば、16電極システムにおいて208の測定電圧という個数が得られ、この場合、残りの14個の電極のうち、それぞれ隣り合う電極から成る13個のペアが存在し、それらの電極間で測定電圧が捕捉され、1巡したときに16×13=208の測定電圧が捕捉される。これが、16電極システムを備えたEIT装置の典型的な制御手法である。ただしEIT装置を技術的実装において、存在する電極のすべてを電流又は電圧の給電に利用するのではなく、給電の際にいくつかの電極又は電極ペアを飛び越すようにすることも考えられる。同様に、存在する電極のすべてにおいて電圧測定又は電流測定を行うのではなく、いくつかの電極又は電極ペアを飛び越して、測定の際に抜かすことも考えられる。
【0040】
この実施例の場合、208個の電圧時系列u(t),u(t)...u208(t)は、バスシステム3を介して、EIT装置の記憶ユニット4または外部の記憶ユニットへ導かれる。測定された電圧から、1024個の(相対的な)インピーダンス変化Z(t),Z(t)...Z1024(t)が再構成され、これらは32×32個の画素を含む1つの画像として結像される。この再構成及びその後の分析を、オンラインでも実施できるし、時間的又は空間的にずらしてオフラインでも実施できる。このため、そのあとで発生するデータを、バスシステムを介してEITシステムの内部に記憶させてもよいし、又は、外部の記憶装置に記憶させてもよい。以下では、これら両方の可能性を区別しない。
【0041】
計算モジュールは、208個の電圧時系列u(t),u(t)...u208(t)から、1024個の相対的なインピーダンス変化Z(t),Z(t)...Z1024(t)の時系列を再構築し、それらを局所的インピーダンスモジュール5に供給する。予め定められた又はデータから求められた画素マスク9によって、情報を担っている「換気された」画素(ピクセル)i=[1,2,...N]のみが選択され、つまり図1に示された周縁領域6がマスクされる。
【0042】
情報を担うすべての画素について局所的インピーダンス変化を合計することによって、総インピーダンス変化又は大域的インピーダンス変化Zglo(t)が求められる。この大域的インピーダンス変化Zglo(t)は、呼吸容量に比例しており、したがってこれは、平均肺胞圧力に線形依存つまりは厳密に単調に依存する量である。
【0043】
この場合、Zglo(t)は、平均肺胞圧力を表す(これに厳密に単調に依存する)量として用いられる。図1には一例として、3つの画素の局所的インピーダンス変化曲線が、Zglo(t)の関数として示されている。ここでは吸息曲線7は実線で、呼息曲線8は破線で示されている。この吸息曲線7と呼息曲線8との間に、ヒステリシスループ9が存在している。このヒステリシスループ9は、上述の吸息曲線7と呼息曲線8とを完全に含む最小の矩形10を求めることによって、画素ごとに正規化され、この正規化にあたり、i番目の画素のヒステリシス面積Hは、外接する最小の矩形の面積Rによって除算される。
【0044】
大域的インピーダンス変化曲線を、平均肺胞圧力を表す量として使用し、散逸値を計算するため包囲する矩形面積によってヒステリシス面積を正規化することによって、例えば呼吸器などから別個に求められる圧力と容量の曲線に関する情報がなくても、散逸マップを求めることができる、という利点が得られる。個々の散逸値の結果は、それ自体に関連づけられた相対的な量であることから、この定義によれば、換気の割合が少ない領域は正規化によって、換気の割合が高い領域と等価に扱われる。その理由は、目下の肺胞の肺領域は、病気の場合には換気が悪い状態で非弾性的に動作する可能性があるからである。
【0045】
1回の呼吸の大域的インピーダンス変化曲線Zglo(t)は、ピクセルマスク内のN個のすべての局所的インピーダンス変化曲線Z(t)の合計によって形成され、ここでNは、ピクセルマスク内で考察される画素の個数である。
【数2】
【0046】
バイアスを回避する目的で、目下分析されている画素を、そのつど平均値形成から取り除くこともできる。ついで、目下分析されている画素iの局所的インピーダンス変化曲線Z(t)と、大域的インピーダンス変化Zglo(t)との関係が、吸息tinspの開始からtmaxにおけるその終了までの吸息フェーズについては、曲線Zinsp(Zglo(t))として考察され、tmaxにおける開始からtexpにおける終了までの呼息フェーズについては、曲線Zesp(Zglo(t))として、ピクセルマスク内で考察されるすべての画素iに関して考察される。
【0047】
各画素iについて極性符号を伴うヒステリシス面積Hは、次式の通りとなる。
【数3】
【0048】
各画素iについて周囲を取り囲む最小の矩形の面積は、次式の通りとなる。
【数4】
【0049】
散逸マップにおける画素iの散逸値として、正規化されたヒステリシス面積
【数5】
が定義される。この場合、散逸値は、−100%〜+100%までの範囲にあり、ディスプレイ11にカラーコーティングして表示させることができる。
【0050】
絶対値に関して0%を中心とする小さいD値の場合には、ヒステリシス特性はなく、例えば図1のグラフZ(t)に示されているように、肺胞は弾性領域で動作している。図1の3つのグラフのうちZ(t)に関する一番下のグラフに示されているように、例えば50%を超えるDi値は、非弾性的な作用によって散逸した仕事量損失の占める割合が高いことを示唆している。比較的大きい負のD値については、解釈はそれほど明確ではない。たいていは、この種の値を有する画素は、換気が行われていない画素の分類に属し、流体の移動を示唆している可能性がある。
【0051】
個々の画素の局所的散逸値から、散逸マップについて平均値を形成することによって、大域的散逸値がスカラー量として定義される。
【数6】
【0052】
このようにして定義された平均的又は大域的な散逸値を、ディスプレイ11において別個のフィールド12に数値として表示することができる。
図1