特許第6388928号(P6388928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レキット ベンキサー (ブランズ) リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6388928-フレグランス組成物 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388928
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】フレグランス組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   C11B9/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-517673(P2016-517673)
(86)(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公表番号】特表2016-524643(P2016-524643A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】GB2014051690
(87)【国際公開番号】WO2014195689
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2017年6月2日
(31)【優先権主張番号】1310108.4
(32)【優先日】2013年6月6日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1409626.7
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513184138
【氏名又は名称】レキット ベンキサー (ブランズ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】エンジェル ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ハリー サイモン
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−518840(JP,A)
【文献】 特表2004−536632(JP,A)
【文献】 特表2006−513815(JP,A)
【文献】 特開平01−256966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00− 9/02
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−99/00
A61L 9/00− 9/22
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを含むフレグランス組成物であって、
各フレグランスアコードの少なくとも30質量%が前記フレグランスアコードの主要寄与材料を含み、且つ
各フレグランスアコードのための前記主要寄与材料の匂い検知閾値(μg/L)の平均が、他の各フレグランスアコードのための主要寄与材料の匂い検知閾値(μg/L)の平均と同じ桁内にある、前記フレグランス組成物。
【請求項2】
フレグランス組成物が少なくとも3つのフレグランスアコードを備えている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
フレグランス組成物が2から5つまでのフレグランスアコードを備えている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
フレグランス組成物が3つのフレグランスアコードを備えている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
フレグランスアコードのベースノートが前記アコードのノートの15%未満を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
フレグランスアコードのベースノートが前記アコードのノートの12.5%未満を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
フレグランスアコードのベースノートが前記アコードのノートの10%未満を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
フレグランスアコードのベースノートが実質的に前記アコードのノートの7.5% ± 1.5%を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
フレグランスアコードのミドルノートが前記アコードのノートの30%超を含み、フレグランスアコードのトップノートが前記アコードのノートの30%超を含み、アコード全体のノートの%は100%に等しい、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
フレグランスアコードのミドルノートが前記アコードのノートの40%超を含み、フレグランスアコードのトップノートが前記アコードのノートの40%超を含み、アコード全体のノートの%は100%に等しい、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
フレグランス組成物においてy軸上の強度(1〜10)及びx軸上の濃度(μg/L)によってグラフで表される各フレグランスアコードの匂い勾配が、類似の勾配を有し、ここで、類似の勾配とは、互いの50%以内の勾配を意味すると理解される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
各フレグランスアコードの量組成物の全質量に基づき5〜49.9質量%である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
フレグランス組成物が1〜90質量%のテクニカルアコードを含、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
フレグランス組成物が0〜10質量%のMOCアコードを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
バックボーンが組成物中に与えられており、前記バックボーンが匂いを放つ材料、バルク担体及び/又は溶媒の少なくとも1つを含んでいる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを有するフレグランス組成物を製造する方法であって、
各フレグランスアコードの主要寄与材料の少なくとも30質量%が、他の各フレグランスアコードと同じ桁内の平均匂い検知閾値を有するということを提供することにより、前記少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを調和させる工程
を含む、前記方法。
【請求項17】
少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを含むフレグランス組成物を発散させる工程を含む、フレグランスの慣れを弱める方法であって、
前記フレグランス組成物は、少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを含み、
各フレグランスアコードの少なくとも30質量%は、前記フレグランスアコードのための主要寄与材料を含み、且つ
各フレグランスアコードのための前記主要寄与材料の匂い検知閾値(μg/L)の平均は、他の前記フレグランスアコードのための主要寄与材料の匂い検知閾値(μg/L)の平均と同じ桁内にある、前記方法。
【請求項18】
3つの異なるフレグランスアコードを含むマルチフレグランスアコードフレグランス組成物であって、
各フレグランスアコードの少なくとも30質量%が前記フレグランスアコードのための主要寄与材料を含み、且つ
各フレグランスアコードのための主要寄与材料の匂い検知閾値(μg/L)の平均が、他の前記フレグランスアコードのための主要寄与材料の匂い検知閾値(μg/L)の平均と同じ桁内にある、前記マルチフレグランスアコードフレグランス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、フレグランス組成物、特に、これに限らないが空気清浄組成物を含める香りのある消費製品に用いるためのフレグランス組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
既知のすべてのフレグランス組成物は、単一のフレグランスアコード(fregrance accord)を含んでいる。フレグランスアコードは、単一の原料及び/又は精油からは作成することができない特定の嗅覚に関する匂いを作成するために用いられる原料の集合(collection)である。
フレグランスアコードは、フレグランスの嗅覚に関するテーマ又は特性であり、一般的には、単一の匂い又は嗅覚の方向を作成するために個々の同一性を共に失わせる複数の別個のノートからなっている。フレグランスアコードのノートは、トップノート、ミドルノート及びベースノートによって定義される。トップノートは、このノートが通常はヒトの鼻によって最初にわかるアコードの最も揮発性部分を表している。ミドルノートは、典型的には、フレグランスの大部分をしばしば与えるようにアコードの「中心」を表している。ベースノートは、典型的にはアコードの最も揮発性でない部分であり且つ最も重い分子を含み、それ故、ベースノート(1つ以上)は、通常は最も長い間残っている。フレグランスアコードは、典型的には、10%のトップノート、60%のミドルノート及び30%のベースノートで構成されている。
【0003】
パフューマーが単一のコア要素、すなわちバラを表すフレグランスアコードをつくりたい場合に、パフューマーは、希釈された純粋なバラの抽出物を簡単に与えることが消費者に受け入れられないことを知っている。分離の際に、純粋なバラの抽出物は、「かれた」及び「わずかに汚い」臭いを有し、確かに消費者がローズフレグランスから予想するものではない。その代わりに、パフューマーは、数種のフレグランス原料とバラの抽出物をブレンドして、消費者に受け入れられるものにする。たぶん、パフューマーは、「ライトグリーンノート」を与える原料を「わずかに甘いノート」を有する他の原料と一緒に選ぶであろう。これらの異なる原料の各々は、異なる揮発性を有する(すなわち、トップノート、ミドルノート又はボトムノートの1つである)。パフューマーは、バラの抽出物、ライトグリーンノート及びわずかに甘いノートの組み合わせが結果として1つのノートがその他のものと明らかに区別できないことを確実にするためにこれらの原料を注意深く一緒にブレンドする。むしろ、パフューマーは、原料が同時に及び調和して協調するようにブレンドされて、ローズフレグランスアコードからなる消費者に受け入れられる「ローズ」フレグランスアコード、すなわち単一のフレグランスアコードによるフレグランス組成物を生成することを確実にする。得られたローズフレグランスアコードは、次にフレグランス組成物全体の技術的要求によっては他の非フレグランスアコード成分ともブレンドされる。
【0004】
同様に、パフューマーが2つのコア要素、バラとバニラを表す香料混合物をつくりたい場合、パフューマーは、バラのフレグランスアコードとバニラの別個のフレグランスアコードを1:1の比で簡単に混合しない。このことにより結果として2つのアコードを同時に表していないアンバランスなフレグランスになり、このような1:1の比のフレグランスアコードにより結果として一方のフレグランスアコードがもう一方のフレグランスアコードを完全に支配して、優位でないフレグランスアコードを消費者に完全には又は実質的に完全にはわからなくするからである。その代わりに、フレグランス組成物がこれらの2つのコア要素を表すようにすることを試みるパフューマーは、バラとバニラの組み合わせを表す基本原料を注意深くブレンドして、ブレンドされた単一のバラとバニラのフレグランスアコードを作成する。これをするために、パフューマーはこれら自体原料の低嗜好に制限しなければならない。なぜなら、バラを表す任意の原料とバニラを表す任意の原料は、原料が嗅覚的に相互に相補的であるために一方の原料ともう一方の原料とを明確に区別できなくなるように当該原料を互いにブレンドすることができる場合にのみ、バラとバニラのフレグランスアコードを生成するために一緒に用いることができるからである。その代わりに、パフューマーは、協調するようにブレンドすることができるノートを有するある種の原料だけを選んで、バラとバニラのフレグランスアコードからなる消費者に許容され得る単一の「ローズ&バニラ」フレグランスアコード、すなわち単一のフレグランスアコードを有するフレグランス組成物を生成させる。
【0005】
パフューマーが香料を作成することの技術における訓練及び嗅覚の特徴を区別しフレグランス原料を組み合わせることの技術を理解するために学ぶことに長年を費やす一方で、2つのコア要素を表すバランスのとれた香料を得ることの欠点は、嗅覚の事柄において訓練されない通常の消費者には、コア要素を集合的に又は個別に区別することが困難であり得るということである。例えば、通常の消費者は上記のローズ&バニラ香料が「クリーミーで花のような」匂いを有すると思う場合があるが、パフューマーがバラとバニラ双方を同時に表すフレグランスを生成することを試みたと必ずしも認めることができない。
フレグランスアコードに加えて、フレグランス組成物は、MOCアコード及び/又はファンクショナル/テクニカルアコードを含める他のアコードを含んでいてもよい。
MOCアコード(悪臭中和)は、フレグランス組成物に加えた場合にMOC性能全体を高めることを意図する悪臭中和能力が証明された香料原料の集合である。
ファンクショナル/テクニカルアコードは、厳密な技術的要求が必要である場合にフレグランスの本体を形成する原料の集合であり、これらは匂いを放つ材料と溶媒の双方であり得る。このような一技術的要求は、フレグランスが発散するメカニズムに関係し得るものであり、これは、「トリクルダウン理論」としばしば呼ばれ、一例として連続動作発散メカニズムの場合には粘度及び/又は蒸気圧の厳密な制御が必要とされるか、又はこれらのアコードを存在させて、疎水性膜を通して運搬を援助するか、又は極性塩基に可溶化するか、又はロウソク配合物においては効率的でクリーンな燃焼を促進させることができる。
【0006】
2つのコア要素を表す消費者フレグランスエクスペリエンスを与える別のメカニズムは、相互に時間調節間隔で順次別個のフレグランスを発散させる装置に依存することである。これに適している装置としては、2本の別個のフレグランスボトルに入れ、順次各ボトルに対して熱を向けてそこからフレグランスの蒸発を加速するように構成されているAIRWICK(RTM) SYMPHONIA装置が挙げられる。このような装置において各ボトルに含有するフレグランスは、消費者がフレグランス発散の連続性に気づくことができることを容易にするために異なることができる。
AIRWICK(RTM) SYMPHONIA装置のような装置の1つの利点は、フレグランス慣れを緩和させるか又は改善させることができるということである; フレグランス慣れは、単一のフレグランスが実質的に連続する濃度で付近に残り且つ消費者がフレグランスをもはや検知することができないか又はフレグランスをかろうじて検知することしかできないような程度まで減弱している場合に起こり得る。対照的に、欠点は、このような慣れ防止装置が、例えば液体フレグランスと流体接触している芯にあてる熱を用いた、特定の自動発散メカニズムにのみ適しているので適用性が制限され、また、2つの別個のフレグランスエアゾール剤のような2つの別個の容器を収容するサイズの装置を必要とするため自動スプレーメカニズムと用いるのに適していないことである。このような慣れ防止装置は、受動的フレグランス発散物(すなわち、発散を容易にする動力手段を備えていないフレグランス発散器、例えばリードディフューザ又フレグランスジェル発散器)又はフレグランスキャンドルを含める非自動化発散装置に適用できない。本発明は、コア要素を表すだけのブレンドした単一のフレグランスアコードに配合しなくてもよく又は別個のフレグランスを連続して発散させる装置に依存することなく少なくとも2つの均等に区別できるフレグランスアコードを表す消費者フレグランスエクスペリエンスを与えることを求めるものである。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
それ故、本発明の第1の態様によれば、少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを含むフレグランス組成物であって、
各フレグランスアコードの少なくとも30質量%が前記フレグランスアコードの主要寄与材料(1つ以上)を含み、各フレグランスアコードのための前記主要寄与材料(1つ以上)の匂い検知閾値の平均が他の前記フレグランスアコード(1つ以上)のための主要寄与材料(1つ以上)の匂い検知閾値の平均と同じ桁(10倍以内:order of magnitude)内にある、前記フレグランス組成物が提供される。
匂い検知閾値(以下ODTという)は、ヒト集団がフレグランス原料を検知する最小限レベルの定量的表現を示すものである。ODTは、分子の形状、極性、部分電荷、立体化学及び分子量が含まれるいくつかの因子によって定量される。原料の検知閾値に関与するヒトの鼻の嗅覚メカニズムはよく理解されてなく且つ正確に予測することができないので、原料のODTを定量する試験は広範囲なヒト感覚試験で測定され、訓練されたテスターがテスターの集団の50%だけが匂いの存在を検知することができるまで減少する量の匂いにさらされる。ほとんどの原料のODTは低濃度であるけれども、興味深いことに、ODT濃度よりわずか10〜50倍の濃度が、典型的には、ヒトが検知し得る最大強度であり、ヒトにおける視覚の最大強度は、典型的には、対応する光学強度の約500,000倍である。このように、においは具体的な匂いの強度又は濃度を定量化することよりはむしろ具体的な匂いの有無を確認することにしばしば関係している。
【0008】
フレグランスアコードの「主要寄与材料」は、本明細書においてはアコードの嗅覚同一性の必須要素とほとんど同義であるフレグランスアコードにおける原料(1つ以上)として確認される。当業者、すなわち、訓練されたパフューマーは、典型的には6〜20種の異なる材料を数えるが、典型的にはこれらの材料の少数だけが主要寄与材料である原料の集合からフレグランスアコードが構成されることを理解するであろう。
ほとんどの訓練されたパフューマーは、具体的な原料が具体的なフレグランスアコードのための主要寄与材料であるか否かを知っている。しかしながら、芳香作成が一部サイエンス及び一部芸術性であるので且つ特定の原料が特定のフレグランスアコードのための主要寄与材料であるか否かの場合の定められた定義がないので、本質的には、あらゆる訓練されたパフューマーが特定のフレグランスアコードのための主要寄与材料を表すために特定の原成分を常に考慮するか否かに関して主観に小さな幅が常にある。しかし、当業者、例えば訓練されたパフューマーについては、パフューマーとして訓練後に共通の一般知識と共に全体として本明細書の内容を読み取り、このような主観がある原料で実験する過度の負担を存在させないことを理解する気持ちをもっている。
【0009】
本発明の本発明者らは、驚くべきことに、単一のバランスのとれた嗅覚の方向をもっているバランスのとれたフレグランス組成物を作成する標準の香料慣例と矛盾するにもかかわらず、訓練されたパフューマーにだけよりはむしろ平均的な消費者によって充分明らかに区別できるフレグランス組成物の存続期間又は存続期間の大半にわたって実質的に同時に及び/又は実質的に連続して各フレグランスアコードの匂いを示す本発明に従って測定されたようにしてアンバランスなフレグランス組成物を製造することが可能であることを見出した。言い換えれば、平均的な消費者に対して、本発明のフレグランス組成物は、フレグランスを感じるいかなる点でも単一のフレグランスアコードを表すが、検知することができる具体的なフレグランスアコードは、後に詳述される、それぞれの匂い勾配によって定義されるように相互に相対して各フレグランスアコードの消散の依存を時間が経つにつれて変動させる。それ故、本発明のフレグランス組成物は、単一の嗅覚の方向をもっているフレグランス組成物にブレンドすることなく且つ別個のフレグランス組成物を連続して発散させる装置に依存することなく少なくとも2つの区別できるフレグランスを表す消費者フレグランスエクスペリエンスを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】5つのフレグランス原料、すなわち、メンテンチオール、ジフェニルオキシド、リモネン、コラノール及びメロナールの匂い勾配を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましくは、フレグランス組成物は少なくとも3つのフレグランスアコードを備えている。更により好ましくは、フレグランス組成物は2〜5つのフレグランスアコードを備えている。しかしながら、最も好ましくは、フレグランス組成物は3つのフレグランスアコードを備えている。フレグランス組成物は理論的には任意の数の異なるフレグランスアコードを備えていることができるが、アコードの数が多いほど相互に充分にブレンドするアコードを見出すことが難しく且つ平均的な消費者がアコード間で区別することが難しくなる。3つの異なるフレグランスアコードは、充分に広範囲の嗅覚の方向を混合だけでなく平均的な消費者が前記アコードを容易に区別することができるように選ばせることを可能にするので最適数のアコードであると考えられる。
好ましくは、フレグランスアコードのベースノート(1つ以上)は、前記アコードの15%未満のノートを含んでいる。更により好ましくは、フレグランスアコードのベースノート(1つ以上)は、前記アコードのノートの12.5%未満を含み、更により好ましくは、フレグランスアコードのベースノート(1つ以上)は、前記アコードのノートの10%未満を含み、最も好ましくは、フレグランスアコードのベースノート(1つ以上)は、実質的に前記アコードのノートの7.5% ± 1.5%を含んでいる。
【0012】
ほとんどの訓練されたパフューマーは、具体的な原料がベースノートとして分類されるか否かを知っている。しかしながら、ベースノート/ミドルノート/トップノート間の境界のために定められた定義がないので、本質的にはあらゆる訓練されたパフューマーがトップノート、ミドルノート又はベースノートを表すために特定の原成分を常に考慮するか否かに関して主観に小さな幅が常にある。しかし、当業者、例えば訓練されたパフューマーについては、パフューマーとして訓練後に共通の一般知識と共に全体として本明細書の内容を読み取り、このような主観がある原料で実験する過度の負担を存在させないこと理解する気持ちをもっている。
フレグランスアコードのベースノート(1つ以上)が、好ましくは前記アコードの15%未満のノートを含んでいるので、ミドルノート及びトップノートは、好ましくは共同で前記アコードのノートの少なくとも85%を含んでいる。フレグランスアコードのミドルノート(1つ以上)が前記アコードのノートの30%超を含むことが特に好ましく、フレグランスアコードのトップノート(1つ以上)は前記アコードのノートの30%超を含み、アコード全体のノートの%は100%に等しい。より好ましくは、フレグランスアコードのミドルノート(1つ以上)は前記アコードのノートの35%超を含み、フレグランスアコードのトップコート(1つ以上)は前記アコードのノートの35%超を含み、アコード全体のノートの%は100%に等しい。最も好ましくは、フレグランスアコードのミドルノート(1つ以上)は、前記アコードのノートの40%超を含み、フレグランスアコードのトップノート(1つ以上)は前記アコードのノートの40%超を含み、アコード全体のノートの%は100%に等しい。
【0013】
アコードの中の各フレグランス原料は、時間が経つにつれて濃度が低下するように匂いの強度がどのように低下するかを記載している匂い勾配を有する。典型的には、匂い勾配はy軸上の強度(1〜10)とx軸上の濃度(μg/L)によってグラフで表され、この勾配は匂い勾配を定義するものである。好ましくは、フレグランス組成物中の各フレグランスアコードの匂い勾配は類似の勾配を有する。図1は、5つのフレグランス原料、すなわち、メンテンチオール、ジフェニルオキシド、リモネン、コラノール及びメロナールの匂い勾配を示すグラフであり、メラノールは別として全て異なってはいるが類似の匂い勾配を示していることが分かるが、メラノールは類似の匂い勾配を示していない。本発明に関連して、「類似の」傾きは、好ましくは互いの50%以内の勾配を意味すると理解される。図1を参照すると、ジフェニルオキシドの匂い勾配の傾きは82.83であり、コラノールの匂い勾配の傾きは66.67であり、これらの勾配は相互に50%以内であるので、類似であるとみなされる。メラノールの匂い勾配の傾きは24.24であり、ジフェニルオキシド又はコラノールの匂い勾配の傾きの50%以内でないので、匂い勾配は類似ではない。本発明に関連して、「類似の」傾きは、より好ましくは互いの40%以内の傾きを意味すると理解され、更により好ましくは互いの30%以内の傾きを意味すると理解される。
異なる発散方式は、種々の配合課題を示すことがあり得る。『即時作用』方式、例えばエアゾール配合内容物が等しく分散され且つ圧力下で保持される自動エアゾール方式であるフレグランスの場合には、これにより各フレグランスアコードを揮発性に関係なく等しく放出することが可能になる。これに対して、『連続作用』方式、例えば灯芯送達システムを用いて液体を吸い上げ作用によって揮発のためのヒーターに送達する場合には、揮発性はかなり重要である。
【0014】
発散方式が揮発性感受性である場合、好ましくは、各フレグランスアコードのトップノート、ミドルノート及びベースノートの揮発性は類似である。より好ましくは、各フレグランスアコードのトップノート、ミドルノート及びベースノートの揮発性は下記の調合法に従って定義される。すなわち、
トップノート ≧ 40%、蒸気圧 > 0.1mmHg;
ミドルノート ≧ 40%、蒸気圧範囲 0.1mmHg〜0.001mmHg; 及び
ベースノート ≧ 5%、蒸気圧 < 0.001mmHg。
更により好ましくは、各フレグランスアコードのトップノート、ミドルノート及び
ベースノートの揮発性は下記の調合法に従って定義される。すなわち、
トップノート ≧ 45%、蒸気圧 > 0.1mmHg;
ミドルノート ≧ 42.5%、蒸気圧範囲 0.1mmHg〜0.001mmHg; 及び
ベースノート ≧ 6%、蒸気圧 < 0.001mmHg。
最も好ましくは、各フレグランスアコードのトップノート、ミドルノート及び
ベースノートの揮発性は下記の調合法に従って定義される。すなわち、
トップノート ≒ 47.5%、蒸気圧 > 0.1mmHg;
ミドルノート ≒ 45%、蒸気圧範囲 0.1mmHg〜0.001mmHg; 及び
ベースノート ≒ 7.5%、蒸気圧 < 0.001mmHg。
【0015】
各フレグランスアコードの少なくとも30質量%が前記フレグランスアコードの主要寄与材料(1つ以上)を含んでいること及び前記主要寄与材料(1つ以上)のODT閾値の平均が、その他のフレグランスアコードのための主要寄与材料(1つ以上)のODT閾値の平均と同じ桁内でなければならないことが基本的要求である。好ましくは、フレグランスアコードの残りの%においてアコードの少なくとも主要寄与材料(1つ以上)を圧倒する傾向がある顕著な嗅覚ノートは避けられる。香料の当業者は、このような顕著な嗅覚ノートを承知し且つその位置を理解して、前記顕著な嗅覚ノートの位置がフレグランスアコードの主要寄与材料(1つ以上)の範囲内でない場合には、アコードは本発明の組成物とおそらく適合せず且つ/又はフレグランスアコードは顕著な嗅覚ノートを最小にするか又は除去する改良を必要とすることになる。
各フレグランスアコードの主要寄与材料(1つ以上)は匂いの寄与を有し、好ましくは主要寄与材料の匂いの寄与は類似である。匂いの寄与は、ODT/蒸気圧として表され、原料の注目すべき特性の基準である。本発明のフレグランス組成物において用いられる原料の匂い寄与を理解することは、パフューマーが具体的な原料が特に高い又は低い匂いの寄与を有し得ることを求めることができることによって組成物の作成を微調整するために使用することができ、そのパフューマーがそれをどのように最良に含めるか決定することができる。例えば、高レベルの匂いの寄与を有する原料が本発明の組成物に用いるために考慮されるべきであり且つそれがフレグランスアコードの1つにおいて主要寄与材料でなかった場合には、パフューマーは高レベルのその匂いの寄与がフレグランスアコードを嗅覚的に妨害させ得るので含めないことを選ぶことになるか、又はパフューマーはそれを相対的に少量でのみ含めることになる。
【0016】
本発明のフレグランス組成物に存在してもよい他の成分としては、溶媒; フリーラジカル捕捉剤; U.V阻害剤; 染料等の1つ以上が挙げられる。
本発明のフレグランス組成物は、>99質量%のフレグランスアコードを含んでいてもよい。好ましくは、本発明のフレグランス組成物中の各フレグランスアコードは、組成物の5〜49.9質量%を含んでいてもよい。より好ましくは、本発明のフレグランス組成物中の各フレグランスアコードは、組成物の5〜33質量%を含んでいてもよい。更により好ましくは、本発明のフレグランス組成物中の各フレグランスアコードは、組成物の5〜30質量%を含んでいてもよい。
本発明のフレグランス組成物は、0〜90質量%のテクニカルアコードを含んでいてもよい。好ましくは、本発明のフレグランス組成物は、1〜90質量%のテクニカルアコードを含んでいてもよい。より好ましくは、本発明のフレグランス組成物は、10〜95質量%のテクニカルアコードを含んでいてもよい。更により好ましくは、本発明のフレグランス組成物は、20〜85質量%のテクニカルアコードを含んでいてもよい。
【0017】
テクニカルアコード原料の限定されない例としては、ベンジルアセテート; ベンジルアルコール(フェニルメタノール); リナロール(3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール); リナリルアセテート(1,5-ジメチル-1-ビニル-4-ヘキセニルアセテート); ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(1-(2-メトキシプロポキシ)-2-プロパノール); トリプロピレングリコールモノメチルエーテル((2-(2-メトキシメチルエトキシ)メチルエトキシ)プロパノール); Isopar TM M(イソパラフィン炭化水素留出物); イソプロピルミリステート(3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン-3-オール); ベンジルベンゾエート; イソボルニルアセテート(1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-イルアセテート)が挙げられる。
本発明のフレグランス組成物は、0〜20質量%のMOCアコードを含んでいてもよい。本発明のフレグランス組成物は、好ましくは0〜15質量%のMOCアコードを含んでいてもよい。本発明のフレグランス組成物は、より好ましくは0〜10質量%のMOCアコードを含んでいてもよい。MOCアコード原料の限定されない例としては、悪臭の認識を低減させることが知られている原料、例えばアルデヒドの種々の組み合わせ及び/又は他の既知のMOCアコード原料が挙げられる。
本発明のフレグランス組成物は、0〜10質量%のUV阻害剤(1つ以上)を含んでいてもよい。本発明のフレグランス組成物は、好ましくは0〜4質量%のUV阻害剤(1つ以上)を含んでいてもよい。
本発明のフレグランス組成物は、0〜5質量%の抗酸化剤(1つ以上)を含んでいてもよい。本発明のフレグランス組成物は、好ましくは0〜2質量%の抗酸化剤(1つ以上)を含んでいてもよい。
本発明のフレグランス組成物は、0〜1質量%の染料(1つ以上)を含んでいてもよい。本発明のフレグランス組成物は、好ましくは0〜0.5質量%の染料(1つ以上)を含んでいてもよい。
【0018】
好ましくは、バックボーンは組成物中に与えられ、前記バックボーンは匂いを放つ材料、バルク担体及び/又は溶媒を含んでいてよく、これらはフレグランスアコードの嗅覚の組み合わせ及びフレグランス組成物の技術的要求に応じて変動され得る。バックボーンの目標は、嗅覚的に完全で調和のとれたように検知される最終フレグランス組成物を容易にするためにフレグランスアコードに基礎を与えることである。ここで「完全で調和のとれた」は、フレグランス組成物の作成者が2つ以上のフレグランスアコードをもっている組成物を作成したい場合には、嗅覚的に相互に目立つその2つのアコードをもつよりもフレグランスのバックグラウンド又はベースラインがフレグランスアコード間で移行を嗅覚的に滑らかにするために与えられてもよいので、フレグランスのエクスペリエンス全体に影響することを意味することが理解される。バックボーン材料は、フレグランスアコード原料として又はテクニカルアコード原料として分類される材料であってもよい。しかしながら、フレグランスアコード原料として分類され得るバックボーン材料は、フレグランスアコードのための主要寄与材料ではない。それ故この目標のため、バックボーンの任意の成分がフレグランスアコードの認識又は性能全体を補足することが重要である。バックボーン成分は、相互に及びフレグランスアコードに相対して様々なODTを有してもよいが、任意のバックボーン成分がフレグランスアコード間のバランスを実質的に中断しないか又は実質的に妨害しない匂い寄与材料をもっていなければならないので、時間が経つにつれてそれぞれの各フレグランスアコードを動的に表す得られた消費者フレグランスエクスペリエンスは破壊されない。
【0019】
バックボーン材料として有効であり得る材料の限定されない例としては、ベンジルアセテート; エチルアセトアセテート(エチル3-オキソブタノエート); リナリルアセテート(1,5-ジメチル-1-ビニル-4-ヘキセニルアセテート); ダルタノール((-)-(1'r,E)-2-エチル-4-(2',2',3'-トリメチル-3'-シクロペンテン-1'-イル)-2-ブテン-1-オール); Verdox(2-T-ブチルシクロヘキシルアセテート); シトラール(3,7-ジメチル-2,6-オクタジエナール); クマリン(2-クロメノン); Zestover(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド); ジヒドロミルセノール((+-)-2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール); Iso E super (1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチル-7-アセチルナフタレン); リモネン(1-メチル-4-(1-メチルエテニル)-シクロヘキセン); ヘキシルアセテート; ベンジルベンゾエート; ネオノニルアセテート(3,5,5-トリメチルヘキシルアセテート); Pipol(蒸留); Dowanol TPM; Isopar M; リナロールが挙げられる。
従って、本発明の第2の態様によれば、少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを有するフレグランス組成物を製造する方法であって、
各フレグランスアコードの少なくとも30質量%の主要寄与材料(1つ以上)が他の各フレグランスアコードと同じ桁内で平均匂い検知閾値を有するということを提供することにより、少なくとも2つのフレグランスアコードを調和させる工程
を含む、前記方法が提供される。
【0020】
従って、本発明の第3の態様によれば、少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを含むフレグランス組成物を発散させる工程を含むフレグランスの慣れを弱める方法であって、
前記フレグランス組成物が少なくとも2つの異なるフレグランスアコードを含み、各フレグランスアコードの少なくとも30質量%が前記フレグランスアコードのための主要寄与材料(1つ以上)を含み、且つ各フレグランスアコードの主要寄与材料(1つ以上)の匂い検知閾値の平均が他の前記フレグランスアコード(1つ以上)の主要寄与材料(1つ以上)の匂い検知閾値の平均と同じ桁内にある、前記方法が提供される。
従って、本発明の第4の態様によれば、3つの異なるフレグランスアコードを含むマルチフレグランスアコードフレグランス組成物であって、
各フレグランスアコードの少なくとも30質量%が前記フレグランスアコードの主要寄与材料(1つ以上)を含み、且つ各フレグランスアコードの主要寄与材料(1つ以上)の匂い検知閾値の平均が他の前記フレグランスアコード(1つ以上)の主要寄与材料(1つ以上)の匂い検知閾値の平均と同じ桁内にある、前記組成物が提供される。
本明細書に記載されている特徴のいずれもが上記態様のいずれもと任意の組み合わせで組み合わせられていてもよい。
【実施例】
【0021】
実施態様の説明
ここで、本発明のフレグランス組成物の実施態様を単に一例として記載する。下記の実施例の各々は、電気ディフューザーと用いるのに適しているように配合された少なくとも2つのフレグランスアコードを含むフレグランス組成物に関する。電気ディフューザーは、チムニー等に隣接したヒーターを備え、このようなディフューザーと用いるのに適した容器はその中に芯が挿入された液体リザーバをもち、芯はリザーバから伸びて、容器の上に突き出ており、使用時に、リザーバより遠位の芯の末端がヒーターに隣接するようにチムニーの中に伸びて、そこから放射される熱が芯から周囲の環境へ液体を蒸発させることができる。
【0022】
実施例1
フレグランス組成物は、3つの別個のフレグランスアコードの組み合わせから製造されており、フレグランスアコードはマシュマロ、ラズベリー及びローズをそれぞれ表している。
【0023】
【0024】
調和のとれたODT値
ローズアコード = アコードの41%がそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は5.51×10-4μg/lの平均ODTを有する
マシュマロアコード = アコードの31%がそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は1.60×10-4μg/lの平均ODTを有する
ラズベリーアコード = アコードの30%がそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は2.48×10-4μg/lの平均ODTを有する
各フレグランスアコードの主要寄与材料に対するODTの平均を求めるために、単一のフレグランスアコードの中の各主要寄与材料のODTを合計し、そのフレグランスアコードの中の主要寄与材料の数で割った。
【0025】
ノートの比率及びその蒸気圧
実施例1において、トップノート、ミドルノート及びベースノートは、以下の通りであった:
トップ - 47.5%のノート、蒸気圧 >0.1mmHg
ミドル - 45%のノート、蒸気圧 0.1mmHg〜1.0×10-3mmHg
ベース - 7.5%のノート、蒸気圧 <1.0×10-3mmHg
3つのフレグランスアコードすべてが類似の匂い勾配を有し、各フレグランスアコードの主要寄与材料でない中には顕著な嗅覚ノートが実質的になかった。
3つのフレグランスアコードは、各フレグランスアコードの少なくとも30%がそのフレグランスアコードの中に主要寄与材料を含むように本発明に関連して適合しており、各アコードの中の主要寄与材料の平均ODT閾値がその他のフレグランスアコードの主要寄与材料の平均ODT閾値と同じ桁を有する。また、各フレグランスアコードは、そのアコードのノートの15%未満をつくるベースノートを有し、全体として、前記組成物のノートの15%未満であるベースノートを含むフレグランス組成物をもたらした。
【0026】
バックボーン成分は、1.40×10-2μg/lから2.71×10-5μg/lまでの範囲にある平均ODT値を有する匂いを放つ材料、4.10×10-3μg/lから2.00×10-5μg/lの範囲にあるバルク担体及びODT値のない溶媒を含み、バックボーン成分のいずれもがフレグランスアコードの認識又は性能全体を妨害しない匂い寄与をもっていなかった。
フレグランスを官能評価ブースの中で発散させた後に、盲検で均衡のとれた無作為での逐次単項試験プロトコールの一部として経験のある官能評価パネルのメンバーをそれにさらした。メンバーは、最低20人のパネリスト、男性と女性両方を含んだ。実施例1をローズ、マシュマロ及びベリーを表す概念的に調和のとれた特徴的な嗅覚概念と一緒に示し、パネリストがブースにさらされるたびに、どの嗅覚概念の香りがしたかを記録するために彼らに尋ねた。彼らが以前に表明した嗅覚概念と異なる嗅覚概念の香りがしたことを表明した場合には、「変更」として(パネリストに気づかれずに)記録された。
試験の終わりにおいて理論的な分布は100%変更と0%変更なしであったが、1つを超える特徴的なフレグランスアコードを示しているフレグランスを表すと予想された/実際的な分布は70%変更と30%変更なしであった。記録された結果をカイ二乗検定にかけた。
得られた結果は、95%の信頼レベルで、実施例1がマルチフレグランスアコード・フレグランスとして有意に有効であることを示した。
【0027】
実施例2
フレグランス組成物を3つの別個のフレグランスアコードの組み合わせから製造し、アコードはそれぞれレッドベリー、グルマン及びウォーターミントを表している。
調和のとれたODT値
レッドベリーアコード = アコードの73%はそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は1.23×10-4μg/lの平均ODTを有する
グルマンアコード = アコードの32%はそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は1.54×10-4μg/lの平均ODTを有する
ウォーターミントアコード = アコードの35%はそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は2.24×10-4μg/lの平均ODTを有する
各フレグランスアコードの主要寄与材料に対するODTの平均を求めるために、単一のフレグランスアコードの中の各主要寄与材料のODTを合計し、そのフレグランスアコードの中の主要寄与材料の数で割った。
【0028】
3つのフレグランスアコードは、各フレグランスアコードの少なくとも30%がそのフレグランスアコードの中に主要寄与材料を含むように本発明に関連して適合しており、各アコードの中の主要寄与材料の平均ODT閾値がその他のフレグランスアコードの主要寄与材料の平均ODT閾値と同じ桁を有する。また、各フレグランスアコードは、そのアコードのノートの15%未満をつくるベースノートを有し、全体として、前記組成物のノートの15%未満であるベースノートを含むフレグランス組成物をもたらした。
実施例1と同様に、実施例2のフレグランスを官能評価ブースの中で発散させた後に、盲検で均衡のとれた無作為での逐次単項試験プロトコールの一部として経験のある官能評価パネルのメンバーをそれにさらした。メンバーは、最低20人のパネリスト、男性と女性両方を含んだ。実施例2をベリー、グルマン及びウォーターミントを表す概念的に調和のとれた特徴的な嗅覚概念と一緒に示し、パネリストがブースにさらされるたびに、どの嗅覚概念の香りがしたかを記録するために彼らに尋ねた。彼らが以前に表明した嗅覚概念と異なる嗅覚概念の香りがしたことを表明した場合には、「変更」として(パネリストに気づかれずに)記録された。
試験の終わりにおいて理論的な分布は100%変更と0%変更なしであったが、1つを超える特徴的なフレグランスアコードを示しているフレグランスを表すと予想された/実際的な分布は70%変更と30%変更なしであった。記録された結果をカイ二乗検定にかけた。
得られた結果は、95%の信頼レベルで、実施例2がマルチフレグランスアコード・フレグランスとして有意に有効であることを示した。
【0029】
実施例3
実施例3は、実施例1の変形例であり、フレグランスアコードを嗅覚的にバックボーンに対して集団でより顕著にするためにフレグランスアコードの主要寄与材料の一部を置換、付加又はその量の変更によって変化させ、バックボーン成分は元のままにした。
【0030】
【0031】
調和のとれたODT値
ローズアコード = アコードの33%はそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は6.10×10-4μg/lの平均ODTを有する
マシュマロアコード = アコードの40%はそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は1.60×10-4μg/lの平均ODTを有する
ラズベリーアコード = アコードの30%はそのための主要寄与材料からつくられ、主要寄与材料は3.17×10-4μg/lの平均ODTを有する
各フレグランスアコードの主要寄与材料に対するODTの平均を求めるために、単一のフレグランスアコードの中の各主要寄与材料のODTを合計し、そのフレグランスアコードの中の主要寄与材料の数で割った。
3つのフレグランスアコードは、各フレグランスアコードの少なくとも30%がそのフレグランスアコードの中に主要寄与材料を含むように本発明に関連して適合しており、各アコードの中の主要寄与材料の平均ODT閾値がその他のフレグランスアコードの主要寄与材料の平均ODT閾値と同じ桁を有する。また、各フレグランスアコードは、そのアコードのノートの15%未満をつくるベースノートを有し、全体として、前記組成物のノートの15%未満であるベースノートを含むフレグランス組成物をもたらした。
【0032】
特に、マシュマロアコードは、そのアコードの主要寄与材料の全体の質量%を増加させることによってバニラ成分を増加させた。
ラズベリーアコードにおいて、低ODTを有するラズベリーケトンの質量%を低下させつつ追加の主要寄与材料を含めた。
ローズアコードにおいて、パフューマーはフェニルエチルアルコールの質量%を低下させつつ主要寄与材料の1つを置換した。
前の実施例と同様に、フレグランスを官能評価ブースの中で発散させた後に、盲検で均衡のとれた無作為での逐次単項試験プロトコールの一部として経験のある官能評価パネルのメンバーをそれにさらした。メンバーは、最低20人のパネリスト、男性と女性両方を含んだ。実施例3をローズ、マシュマロ及びベリーを表す概念的に調和のとれた特徴的な嗅覚概念と一緒に示し、パネリストがブースにさらされるたびに、どの嗅覚概念の香りがしたかを記録するために彼らに尋ねた。彼らが以前に表明した嗅覚概念と異なる嗅覚概念の香りがしたことを表明した場合には、「変更」として(パネリストに気づかれずに)記録された。
試験の終わりにおいて理論的な分布は100%変更と0%変更なしであったが、1つを超える特徴的なフレグランスアコードを示しているフレグランスを表すと予想された/実際的な分布は70%変更と30%変更なしであった。記録された結果をカイ二乗検定にかけた。
得られた結果は、95%の信頼レベルで、実施例3がマルチフレグランスアコード・フレグランスとして有意に有効であることを示した。
図1