(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388930
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/10 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
H05B6/10 311
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-520470(P2016-520470)
(86)(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公表番号】特表2016-525261(P2016-525261A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2014062854
(87)【国際公開番号】WO2014202683
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】102013211563.6
(32)【優先日】2013年6月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513184828
【氏名又は名称】ベール−ヘラ サモコントロール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100074538
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 徹
(72)【発明者】
【氏名】ラーズ ヒーパー
(72)【発明者】
【氏名】カルシュテン マルクアス
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ナーゲル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス シュタライン
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル シュタインカンプ
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第00787125(GB,A)
【文献】
特表2011−501094(JP,A)
【文献】
特開2002−106801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口(12、13)と流体出口(12、13)とを有し、中に流体通路が配置されたハウジング(2)を備えた加熱装置(1)であって、前記ハウジング(2)内に交番磁界を生成する要素(30)が備えられていて、前記要素(30)が少なくとも1つの壁部によって前記流体通路から密封されて仕切られており、さらに少なくとも1つの金属製の面状加熱要素(3、8、22)が備えられていて、前記面状加熱要素(3、8、22)を前記交番磁界により加熱可能であり、前記少なくとも1つの面状加熱要素(3、8、22)が前記流体通路内に配置されている加熱装置において、
前記面状加熱要素(3、8)のうちの少なくとも1つは、磁性材料で形成されており、
前記交番磁界を生成する前記要素(30)の周囲に、前記ハウジング(2)方向において、磁性材料で形成された第1の要素(3)が設けられており、
前記交番磁界を生成する前記要素(30)の周囲に、前記ハウジング(2)の中央方向において、磁性材料で形成された第2の要素(8)が設けられており、
磁性材料で形成された前記第1の要素(3)と磁性材料で形成された前記第2の要素(8)との間に、前記第1の要素(3)および前記第1の要素(8)とは異なる、1つまたは複数の面状加熱要素(22)が配置されており、前記面状加熱要素(22)を前記交番磁界によって加熱することができ、
前記第1の要素(3)は、複数のスロットを有する、
加熱装置(1)。
【請求項2】
前記ハウジング(2)は、非導電性の材料で形成されていることを特徴とする、
請求項1に記載の加熱装置(1)。
【請求項3】
磁性材料で形成された前記第1の要素(3)および/または磁性材料で形成された前記第2の要素(8)は、それぞれ面状加熱要素(3、8、22)を形成することを特徴とする、
請求項1または2に記載の加熱装置(1)。
【請求項4】
前記面状加熱要素(3、8、22)のうちの少なくとも1つは、中空円筒体として構成され、前記中空円筒体の中を流体が流通可能であることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置(1)。
【請求項5】
前記交番磁界を生成する前記要素は、交流電源に接続可能なコイル(30)によって形成されていることを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱装置(1)。
【請求項6】
前記交番磁界を生成する前記要素(30)内に生じる熱量、および/または前記交番磁界を生成する前記要素(30)を開ループおよび/または閉ループ制御する制御ユニット内に生じる熱量は、前記流体を加熱するために利用可能であることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱装置(1)。
【請求項7】
前記スロットにより形成された個々の部分は、一部が半径方向内側に偏倚されおり、一部が半径方向外側に偏倚されている、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体入口と流体出口とを有し、中に流体通路が配置されたハウジングを備えた加熱装置であって、前記ハウジング内に交番磁界を生成する要素が備えられていて、この要素が少なくとも1つの壁部によって前記流体通路から密封されて仕切られており、さらに少なくとも1つの金属製の面状加熱要素が備えられていて、この面状加熱要素を前記交番磁界により加熱可能であり、前記少なくとも1つの面状加熱要素が前記流体通路内に配置されている加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において加熱装置は公知である。例えば、いわゆるPTC加熱要素を有する空気側の加熱装置が存在し、これらのPTC加熱要素は通電され、この通電により加熱される。PTC要素に接触している空気側の薄層を介して、流通する空気に熱が伝達される。しかし、これらの加熱装置は、液状の媒体にとって必要である構造とは基本的に異なった構造を有している。
【0003】
液状媒体用の加熱装置は閉じられたハウジングを具備し、流体通路を有するように形成されていて、流体通路と流体出口とを備えており、前記ハウジング内に加熱要素が張り出していて、この加熱要素がPTC要素で加熱される。
【0004】
液状媒体用のこの加熱装置が有する短所は、加熱されるべき液状媒体が流通する流体通路とは異なる領域で熱が生成されるという点である。これにより、境界抵抗が存在することで加熱の遅延が生じ、これが短所とみなされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、流体を誘導加熱することに適しており、特に、低コストの、かつ複雑でない構成を特徴とする加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこの課題は、請求項1に記載の特徴を備えた加熱装置によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一実施例は、流体入口と流体出口とを有し、中に流体通路が配置されたハウジングを備えた加熱装置であって、前記ハウジング内に交番磁界を生成する要素が備えられていて、この要素が少なくとも1つの壁部によって前記流体通路から密封されて仕切られており、さらに少なくとも1つの金属製の面状加熱要素が備えられていて、この面状加熱要素を前記交番磁界により加熱可能であり、前記少なくとも1つの面状加熱要素が前記流体通路内に配置されていて、前記面状加熱要素のうちの少なくとも1つが磁性材料で形成されている加熱装置に関する。
【0008】
これにより、前記交番磁界を生成する前記要素は前記流体通路と前記流体通路を通る流体流れとの外側に配置されており、前記面状加熱要素は前記流体通路と従ってまた前記流体流れとの中に配置されている。これにより、好ましくは、この電気システムの分離、すなわち前記流体通路の外部における前記交番磁界を生成する前記要素と前記流体通路の内部における前記加熱される面状加熱要素との間の分離が実現される。
【0009】
少なくとも1つの磁性面状加熱要素を備えることによって、前記交番磁界の遮蔽を実現することができる。このことは、隣接する電気的または電子的な諸機構の非意図的な作用を回避するために有効である。前記磁性面状加熱要素によって、前記交番磁界の拡大を軽減すること、または完全に阻止することが可能である。
【0010】
また好ましいのは、実質上、前記交番磁界を生成する前記要素の周囲に、前記ハウジング方向において、磁性材料で形成された第1の要素が設けられている場合である。
【0011】
磁性材料で形成された要素は、前記交番磁界の拡大を低減するために、または完全に抑制するために用いることができる。このことは、前記拡大を制限することによって、隣接する電気的または電子的な諸システムの非意図的で不都合な作用を回避することができるので、特に有利である。また、前記拡大を制限することによって、隣接して配置された金属構造物の非意図的な加熱を回避することができる。
【0012】
有利には、「周囲に設ける」ということが意味することは、前記交番磁界を生成する前記要素の周囲に、特に前記交番磁界の拡大方向において、前記交番磁界の拡大が低減または完全に防止されるように、磁性材料で形成された要素が設けられていることである。その際、前記磁性材料は前記交番磁界に対する遮蔽物となる。前記交番磁界を生成する前記要素が実質上中空円筒状のコイルである場合、本発明において例えば、前記コイルがこの中空円筒状の要素に差し込まれていることによって、前記コイルの周囲に前記中空円筒状の要素を設けておくことができるであろう。
【0013】
この場合、前記交番磁界を生成する前記要素を磁性材料で形成された前記要素に物理的に接触させておくこと、またはこの磁性材料の要素をコーティング状に完全に包囲することが不必要である。有利には、その際、磁性材料で形成された前記要素は、実質上、前記交番磁界を生成する前記要素の形態に相応して構成されている。
【0014】
さらにまた好ましいのは、前記ハウジングが非導電性の材料で形成されている場合である。
【0015】
例えばプラスチックのような非導電性の材料は、これにより本加熱装置の総重量を低減することができるので特に有利である。また、これによって前記ハウジングの成形および製造もより容易になり、コストも低下する。
【0016】
また好都合であるのは、実質上、前記交番磁界を生成する前記要素の周囲に、前記ハウジングの中央方向において、磁性材料で形成された第2の要素が設けられている場合である。
【0017】
前記交番磁界が外方向に前記ハウジングに向かって拡大することを制限することと同様に、前記交番磁界が内方向に前記ハウジングの中央に向かって拡大することを磁性材料で形成された要素で制限することができる。この場合、有利には、前記ハウジングの内部に前記交番磁界の影響を受けない領域を設けることができる。
【0018】
さらにまた有利であるのは、磁性材料で形成された前記第1の要素と磁性材料で形成された前記第2の要素との間に1つまたは複数の面状加熱要素が配置されており、この面状加熱要素を前記交番磁界によって加熱することができる場合である。
【0019】
前記面状加熱要素をこのようにして前記交番磁界によって加熱することができ、その一方で、前記交番磁界は外方向、かつ前記ハウジングの中央方向においてその拡大が制限される。
【0020】
また好ましいのは、磁性材料で形成された前記第1の要素および/または磁性材料で形成された前記第2の要素がそれぞれ面状加熱要素を形成する場合である。
【0021】
磁性材料で形成された前記要素も面状加熱要素を形成することができ,これにより、全体的に本加熱装置のコンパクトな構造を実現することが可能となる。
【0022】
また有利であるのは、前記面状加熱要素のうちの少なくとも1つが1つまたは複数の開口部を有し、この開口部の中を流体が流通可能な場合である。
【0023】
流体が周囲を流通可能、または中を流通可能である開口部によって、全体的に最適な流体流れを実現できる。さらに、前記流体の撹拌を改良することができ、このことは、温度均一性を向上させることに役立つ。これにより、全体的に本加熱装置の効率が改善される。
【0024】
さらにまた好都合であるのは、前記各面状加熱要素における前記1つまたは複数の開口部によって、前記各面状加熱要素の出発材料の材料量と比較して最大0%〜50%の材料量、好ましくは10%〜40%の材料量、なお好ましくは20%〜30%の材料量が取り除かれる場合である。
【0025】
前記面状加熱要素のために残った最小限の材料量を備えることによって、前記交番磁界を十分に制限するために遮蔽作用が変わりなく十分に強力であることを保証することが可能となる。このことが特に当てはまるのは、磁性材料で製造されていて、前記ハウジングの中央領域または前記ハウジングの内面の1つに配置されており、とりわけ前記交番磁界の拡大を制限するという目的を果たす面状加熱要素に対してである。
【0026】
本発明の特に好都合な別態様では、前記交番磁界を生成する前記要素を交流電源に接続可能なコイルによって形成しておくことが可能である。
【0027】
さらにまた好ましいのは、前記交番磁界を生成する前記要素内に生じる熱量、および/または前記交番磁界を生成する前記要素を制御および/または調整する制御ユニット内に生じる熱量が前記流体を加熱するために利用可能である場合である。
【0028】
このことは、例えば、熱を生成する領域と流体との間において熱伝導性の結合を生じさせる熱橋を介して実現できる。
【0029】
また有利であるのは。前記面状加熱要素の片側または両側において流体が流通可能である場合である。
【0030】
前記面状加熱要素は、好ましくは、前記流体通路内を流通する流体に直接接触している。これにより前記流体は迅速に加熱される。
【0031】
さらにまた特に有利であり得るのは、前記面状加熱要素の両側において流体が流通可能であり、前記面状加熱要素の一方の側における前記流体の流動方向が前記面状加熱要素のもう一方の側における流動方向と同じ方向または逆方向である場合である。これによって、前記流体は連続的にまず前記面状加熱要素の一方の側を通過し、その後もう一方の側を通過するように案内される。これにより加熱の効率が向上する。
【0032】
好ましい一実施例は、交番磁界を生成する前記要素が実質上中空円筒状の要素であることを特徴とする。
【0033】
また好ましいのは、前記面状加熱要素が実質上中空円筒状の要素である場合である。
【0034】
さらにまた好ましいのは、交番磁界を生成する前記要素が中空円筒状の要素であり、少なくとも1つの面状加熱要素が、半径方向において、前記交番磁界を生成する前記中空円筒状の要素の内側および/または外側に配置されている場合である。これによって、構造スペースの点で有利な加熱装置を実現することができる。
【0035】
また好ましいのは、半径方向において、前記交番磁界を生成する前記中空円筒状の要素の内側および外側に1つまたは複数の中空円筒状の面状加熱要素が配置されている場合である。またこれによって熱出力を増大することができる。
【0036】
さらにまた、交番磁界を生成する前記要素は実質上中空円筒状のコイルであることが可能である。
【0037】
また有利であるのは、前記制御ユニットが前記ハウジングに結合されている場合、または前記ハウジング内に組み込まれている場合である。
【0038】
さらにまた有利であり得るのは、前記ハウジングが磁界吸収材料または交番磁界に対して不透明な材料から成る場合である。
【0039】
また好都合であるのは、前記壁部が磁界に対して透明な材料から成る場合である。
【0040】
本発明の有利な別態様が従属請求項および以下の図説において説明されている。
【0041】
以下において、本発明について実施例に基づき図面を参照しながら詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る加熱装置を示す図であり、外部ハウジングがただ部分的にかつ透過的に示されている。
【
図2】
図1の加熱装置の別の図であり、加熱装置内の中央の管が部分断面図として示されており、これにより、管の内部の流路および心棒が見て取れる。
【
図3】
図1および
図2の加熱装置を示すさらに別の図であり、交番磁界を生成するコイルが示されており、交番磁界の生成によって加熱装置内部の加熱要素を加熱することができる。
【実施例】
【0043】
図1は加熱装置1を示す図である。前記加熱装置1はハウジング2によって形成されており、このハウジングは上方が蓋部6によって密閉され、下方が蓋部7によって密閉されている。この場合、前記ハウジング2は中空円筒状の形態を有する。前記ハウジング2の内部には面状加熱要素3が配置されており、この面状加熱要素も中空円筒体として形成されている。前記面状加熱要素3は前記ハウジング2により形成された中空円筒内に嵌め込まれている。
【0044】
前記面状加熱要素3は半径方向において周回状に複数のスロットを有し、これらのスロットは前記面状加熱要素3の外面を複数の部分に区分する。前記スロットにより形成された前記各部分は異なる方向に前記面状加熱要素3の基底面から偏倚されている。前記部分は一部が半径方向において前記面状加熱要素3の中心へ偏倚されおり、また一部が半径方向に外側へ前記ハウジング2に向かって偏倚されている。
【0045】
前記面状加熱要素3の内部にはさらに別の面状加熱要素22が配置されている。この面状加熱要素22も中空円筒体として形成されている。前記外側の面状加熱要素3とは異なり、前記面状加熱要素22は異形成形されておらず、平滑な円筒状の外装面を有する。
【0046】
前記面状加熱要素3はその偏倚された部分のうちの幾つかが、前記ハウジング2の内壁に、および前記面状加熱要素22における外側を向いた面に当接することができる。
【0047】
前記面状加熱要素2の内部にはコイルハウジング4が配置されており、このコイルハウジングも中空円筒状に形成されている。前記コイルハウジング4の外径は前記面状加熱要素22の内径よりも小さい。前記面状加熱要素22の外径は前記面状加熱要素3の内径よりも小さく、前記面状加熱要素3の外径は前記ハウジング2の内径よりも小さい。
【0048】
構成に応じて、前記面状加熱要素3の基底面から偏倚された前記部分は一方では前記ハウジング2の内面に当接し、もう一方で前記面状加熱要素22の外面に当接していてもよい。
【0049】
図1において断面図として示されている前記コイルハウジング4の内部には凹部5が備えられており、この凹部は半径方向に周回状に形成されている。この凹部5にはコイル体を嵌め込むことができる。前記コイル体は
図1には示されていない。
【0050】
前記コイルハウジング4の中心には管8が配置されている。この管8も中空円筒状に形成されている。前記管8の外径は前記中空円筒状に形成されたコイルハウジング4の内径よりも小さい。前記管8はその下端領域が前記下方蓋部7で支持されている。前記管8の上端領域において前記上方蓋部6と前記管8との間に空隙が存在する。前記コイルハウジング4と前記下方蓋部7との間には空隙9が設けられている。これに対して、前記コイルハウジング4の上端領域は前記上方蓋部6に面状に当接している。前記管8は、それが誘導加熱可能である限りにおいて、また面状加熱要素でもある。
【0051】
前記ハウジング2と前記面状加熱要素22との間には通路11が形成されており、この通路内に前記面状加熱要素3が嵌め込まれている。前記面状加熱要素22と前記コイルハウジング4との間には通路10が形成されている。最後に、前記コイルハウジング4と管8との間に通路14が形成されている。これらの通路10、11、14の中を流体が流通できる。その詳細な貫流順序は以下の諸図で示される。
【0052】
前記上方蓋部6は、それが前記ハウジング2を上方に向かって流体密に密閉するように形成されている。そのために前記蓋部6はその半径方向に周回する溝を有する円筒状部分が前記ハウジング2の内部に張り出している。上述したように、前記コイルハウジング4は前記ハウジング2の内部において前記蓋部6の表面に当接しており、これにより、前記コイルハウジング4と前記蓋部6との間に流体が流れることはできない。
【0053】
前記面状加熱要素22と前記蓋部6との間には空隙15が設けられており、これにより、前記通路10と前記通路11との間において前記面状加熱要素22を越えて流体の流れが生じ得る。
【0054】
前記下方蓋部7は前記ハウジング2を下方に向かって流体密に密閉する。このために前記蓋部7は円筒状部分を有していて、この円筒状部分はその半径方向の縁面に半径方向に周回する溝を有し、前記蓋部7のこの円筒状部分が前記ハウジング2内に嵌め込まれている。その際、前記蓋部7あるいは前記蓋部6の円筒状の形態は前記ハウジング2の内輪郭に合致しており、これにより、前記蓋部6、7と前記ハウジング2との間に厳密に適合した着座を得ることができる。
【0055】
前記下方蓋部7は前記第1の円筒状領域に続いて第2の円筒状領域を有し、この第2の円筒状領域は前記下方の第1の円筒状領域よりも小さな外径を有する。直径が小さいこの上方の円筒状領域上に前記管8が着座している。
【0056】
前記コイルハウジング4と前記蓋部7との間には前記空隙9が設けられている。この空隙9によって前記コイルハウジング4と前記蓋部7との間に流体が流れることができる。前記面状加熱要素22は前記下方蓋部7における前記上方の円筒状領域を伝って摺動されて、前記下方の円筒状領域上に着座している。前記上方の円筒状領域と前記面状加熱要素22との間には、例えばボルト継手、接着部またはリベット締めのような締結要素を備えておくことができる。このようにして前記面状加熱要素22を前記下方蓋部7に結合することができる。また前記管8も同様の締結具を介して前記下方蓋部7に結合することが可能である。
【0057】
前記下方蓋部7は第1の流体接続部12を有し、この流体接続部は前記蓋部7における前記上方円筒状部分の半径方向の面に配置されている。さらに前記蓋部7は第2の流体接続部13を有し、この第2の流体接続部は前記蓋部7の下面に配置されている。前記流体接続部12あるいは前記流体接続部13はそれぞれ前記加熱装置1の流動方向に応じて流体入口としても流体出口としても機能することができる。前記蓋部7の内部にはバッフルが備えられており、このバッフルは半径方向に延在する前記流体接続部12を軸方向に転向させる。
【0058】
図2は、既に
図1で示された前記加熱装置1を示す類似の図である。しかし、
図1とは異なり、前記加熱装置1の内部における前記管8が前記管8の中心軸線に沿った断面図として示されている。ここでは心棒20が見て取れ、この心棒は前記管8の内部に延在する。実質上下向きに先細る端部を有して棒状に形成された前記心棒20と前記管8の内壁との間にさらに別の通路21が形成されている。この通路21内も流体が流通可能である。
【0059】
可能な一貫流順序では、前記流体接続部13を介して流体が前記管8の内部における前記通路21内へ流入することができるであろう。そこでは、前記心棒20の周囲を流体が流れる。前記流体は上方へ前記通路21を通って前記蓋部6まで流れる。前記管8と前記蓋部6との間には空隙が設けられており、これにより、前記流体は前記管8から流出することができ、前記管8と前記コイルハウジング4との間に形成された前記通路14内へ流入することができる。そこでは前記流体は下方へ流れることができ、前記コイルハウジング4と前記蓋部7との間に形成された前記空隙9を通って、最終的に、前記面状加熱要素22と前記コイルハウジング4との間に形成された前記通路10内へ流入することができる。前記上方領域には、前記面状加熱要素22と前記蓋部6との間に空隙15が設けられており、この空隙を通って前記流体は前記面状加熱要素22と前記ハウジング内壁との間に形成された前記通路11内へ流入することができる。前記通路11に沿って前記流体は下方へ流れることができ、最終的に前記蓋部7における前記流体接続部12を介して前記加熱装置1から流出することができる。この場合、前記面状加熱要素3によって前記通路11はさらに別の部分通路に区分され、これらの部分通路内も前記流体は流通することが可能である。
【0060】
図3は前記加熱装置1のさらに別の模式図である。
図1および
図2と異なり、
図3には前記コイルハウジング4内にコイル体30が示されている。前記コイル体30は中空円筒状の単巻コイルによって形成されている。あるいはまた、複巻コイル、特に二重巻きコイルを備えることも可能である。
【0061】
前記コイル体30に例えば交流電圧を通電させることによって、前記加熱装置1内に磁界を生成することができる。この場合、前記管8も前記面状加熱要素3および22も金属材料で形成されている。
【0062】
前記コイル体30により生成される交番磁界によって、前記管8と前記面状加熱要素3および22とを加熱することができる。前記面状加熱要素3および22と前記管8とのいずれにおいても流体が通過することができ、この流体は通過する際に前記面状加熱要素3および22あるいは前記管8から熱を吸収する。
【0063】
前記面状加熱要素3あるいは前記管8は有利には磁性材料で形成されている。こうすることで、前記コイル体30によって生成される交番磁界の空間的な拡がりを抑制することが可能となる。このことは、前記ハウジング2の外部における前記交番磁界の作用を可能な限り最小限に抑えるために特に有利である。さらにまた、磁性材料から成る管8を介して前記加熱装置1における交番磁界のない内部領域を実現することができる。
【0064】
前記交番磁界の抑制は、隣接する電気的または電子的な諸システムとの不所望な相互作用を可能な限り回避するために特に有利である。さらにまた、他の金属材料の非意図的な加熱を防止するためにも有利である。また、前記交番磁界を局所的な所定のスペースに制限することによって、交番磁界の拡散による損失が小さくなるので、前記加熱装置1の効率を全体的に向上させることができる。
【0065】
有利な一実施態様において、特に前記面状加熱要素3が磁性材料で形成されている場合、前記ハウジング2を非金属材料または非導電性材料あるいは非磁性材料、例えばプラスチックで形成しておくことも可能である。
【0066】
図1〜
図3に示されているような前記加熱装置1の実施態様は単に例示である。
図1〜
図3およびそれに付随する説明によって何ら制限も加えられることはない。
図1〜
図3において特に示されている実施態様は、複数の中空円筒体を互いに相対的に配置することによって通路を形成し、これらの通路内を流体が流れることができる。前記加熱装置1の本発明に係る原理はまた加熱装置における別成形の要素に転用することも可能である。
【0067】
特に個々の要素の材料選定、寸法および互いに対する配置に関して、
図1〜
図3は単に例示としての実施態様を示しているに過ぎず、何ら制限的な性質を有するものではない。前記諸実施例の各特徴は互いに組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 加熱装置
2 ハウジング
3 面状加熱要素、磁性材料で形成された第1の要素
4 コイルハウジング
5 凹部
6 蓋部
7 蓋部
8 管、面状加熱要素、磁性材料で形成された第2の要素
9 空隙
10 通路
11 通路
12 流体接続部、流体入口、流体出口
13 流体接続部、流体出口、流体入口
14 通路
15 空隙
20 心棒
21 通路
22 面状加熱要素
30 コイル体、交番磁界を生成する要素