【実施例】
【0044】
実施例1:トレオニン生産菌株ベースの親菌株の作製
(1)metB遺伝子欠損
metX遺伝子の基質特異性及び活性を把握するためにホモセリンを蓄積し、生産されたアシルホモセリン(acyl homoserine)の利用性が欠損した菌株を作製した。前記菌株の作製は、特許文献2に記載されているトレオニン生産菌株であるFTR2533(KCCM 10541)菌株をベースにした。
【0045】
前記トレオニン生産菌株であるFTR2533(KCCM 10541)菌株からシスタチオニン・シンターゼをコードするmetB遺伝子を欠損させるために、FRT one step PCR deletion法方を行った(非特許文献5)。配列番号1及び配列番号2のプライマーを用いてpKD3ベクター(非特許文献5)を鋳型としてPCR反応により欠損カセットを構成した。PCR条件は、変性94℃で30秒間; アニーリング55℃で30秒間のアニーリング及び重合反応72℃で1分間を30回繰り返した。
【0046】
<配列番号1>
5'ttactctggt gcctgacatt tcaccgacaa agcccaggga acttcatcac gtgtaggctg gagctgcttc 3'
<配列番号2>
5'ttaccccttg tttgcagccc ggaagccatt ttccaggtcg gcaattaaat catatgaata tcctccttag 3'
【0047】
その結果、得られたPCR産物を1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.2kbpの大きさのバンドからDNAを精製した。回収したDNA切片はpKD46ベクター(非特許文献5)を予め形質転換させたFTR2533菌株にエレクトロポレーションした。
【0048】
前記エレクトロポレーションのためにpKD46に形質転換したFTR2533菌株は、100μg/Lのアンピシリン(ampicillin)と5mMのアラビノース(L-arabinose)が含まれたLB培地を用い、OD600が0.6に到達するまで30℃で培養した。滅菌蒸留水で2回、10%のグリセロールで1回洗浄して使用した。エレクトロポレーションは2500Vで加えた。
【0049】
回収した菌株を25μg/Lのクロラムフェニコール(chloramphenicol)を含むLB平板培地に塗抹して37℃で一晩培養した後、耐性を示す菌株を選別した。選別された菌株は、菌株を鋳型とし、同一のプライマーを用いて、同様の条件でPCRを行った後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.2Kbで観察されることを確認することにより、metB遺伝子の欠損を確認した。確認された菌株は、再びpCP20ベクター(非特許文献5)で形質転換させてLB培地で培養し、再び同様の条件のPCRを行って1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが150bpに小さくなった最終的なmetB遺伝子欠損菌株を作製し、クロラムフェニコールマーカーが除去されたことを確認した。作製された菌株をCJMA1と命名した。
【0050】
(2)thrB遺伝子の欠損
前記作製したCJMA1菌株でホモセリンキナーゼをコードするthrB遺伝子を欠損させるために、metB遺伝子欠損時と同様のFRT one step PCR deletion方法を用いた。
【0051】
thrB欠損カセットを作製するためにpKD4ベクター(非特許文献5)を鋳型とし、配列番号3、4のプライマーを用いて、 変性94℃で30秒間;アニーリング55℃で30秒間;延長72℃で1分間の条件でPCR反応を30回行った。
【0052】
<配列番号3>
aaagaatatg ccgatcggtt cgggcttagg ctccagtgcc tgttcggtgg gtgtaggctg gagctgcttc
<配列番号4>
agacaaccga catcgctttc aacattggcg accggagccg ggaaggcaaa catatgaata tcctccttag
【0053】
その結果、得られたPCR産物を1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.6 kbpの大きさのバンドからDNAを精製した。回収したDNA切片をpKD46ベクターで予め形質転換させたCJMA1菌株にエレクトロポレーションした。回収した菌株を50μg/Lのカナマイシンを含むLB平板培地に塗抹して37℃で一晩培養した後、耐性を示す菌株を選別した。
【0054】
選別された菌株は、菌株を直接鋳型とし、配列番号3、4のプライマーを用いて、同様の条件でPCRを行った後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.6Kbと確認された菌株を選別することにより、thrB遺伝子の欠損を確認した。確認した菌株は、再びpCP20ベクターで形質転換させ、LB培地で培養し、再び同様の条件のPCRにより1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが150bpに小さくなった最終的なthrB遺伝子欠損菌株を作製し、カナマイシンマーカーが削除されたことを確認した。作製された菌株は、CJMA2菌株と命名した。
【0055】
(3)metA遺伝子の欠損
前記CJMA2菌株でクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子の基質特異性及び活性を確認するために、FTR2533(KCCM 10541)菌株にmetB及びthrB遺伝子を欠損させたCJMA2菌株をベースに、染色体上の本来metA遺伝子を欠損させた。
【0056】
metA遺伝子を欠損させるためにFRT one step PCR deletion方法を使用した。metA遺伝子欠損カセットを作製するためにpKD3ベクター(非特許文献5)を鋳型とし、配列番号5、6のプライマーを用いて、94℃で30秒間の変性; 55℃で30秒間のアニーリング; 72℃で1分間の延長をしてPCRを30回行った。
【0057】
<配列番号5>
caatttcttg cgtgaagaaa acgtctttgt gatgacaact tctcgtgcgt gtgtaggctg gagctgcttc
<配列番号6>
aatccagcgt tggattcatg tgccgtagat cgtatggcgt gatctggtag catatgaata tcctccttag
【0058】
その結果、得られたPCR産物を1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.2kbpの大きさのバンドからDNAを精製した。回収したDNA切片をpKD46ベクターで予め形質転換させたCJMA2菌株にエレクトロポレーションした。回収した菌株をクロラムフェニコールを含むLB平板培地に塗抹して37℃で一晩培養した後、耐性を示す菌株を選別した。
【0059】
選別した菌株は、菌株を直接鋳型とし、配列番号5、6のプライマーを用いて、同様の条件でPCRを行った後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.1Kbに変化することを確認することにより、metA遺伝子の欠損を確認した。確認された菌株を再びpCP20ベクターで形質転換させ、LB培地で培養し、再び同様の条件のPCRにより1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが100bpに小さくなった最終的なmetA遺伝子欠損菌株を作製し、クロラムフェニコールマーカーが削除されたことを確認した。作製された菌株をCJM2と命名した。
【0060】
CJM2は菌株内にホモセリンが過量蓄積され、導入されるプラスミドのmetX基質特異性によりO−アセチルホモセリンまたはO−スクシニルホモセリンを生産することのできる菌株である。
【0061】
実施例2:新規なO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有するポリペプチドの選別
metA遺伝子のフィードバック調節の解除及び安定性を確保するために、KEGG website(//www.genome.jp/kegg/)でmetXと命名された10種の相同体(Orthologue)を選別してpCL1920_PCJ1ベクターにクローニングした。前記10種のベクターを用いて、前記実施例1で作製されたCJM2に形質転換した。
【0062】
このように獲得された10種の菌株を下記実施例5−(2)で言及されたフラスコ培養方法でフラスコの評価を行った。CJM2はホモセリンが蓄積される菌株でpCL1920に導入された遺伝子がホモセリンスクシニルトランスフェラ−ゼである場合、最終産物としてO−スクシニルホモセリンが獲得され、ホモセリンアセチルトランスフェラ−ゼが導入された場合は、最終産物としてO−アセチルホモセリンが獲得される。前記特性を用いて評価された10種の中からmetX遺伝子でありながら、ホモセリンスクシニルトランスフェラ−ゼをコードする遺伝子を確保した。これは、O−スクシニルホモセリンを高収率で生産可能にする特性を有するクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium Violaceum)由来のmetX遺伝子であるが(アミノ酸配列番号29、塩基配列番号36)、既存に報告されたことのない新規な活性であることを本発明者らが確認した。
【0063】
実施例3:プラスミドの作製
3−1.野生型E.coli由来のmetA遺伝子を発現するプラスミドの作製
米国生物資源センター(American Type Culture Collection)から購入した大腸菌W3110菌株(寄託番号ATCC9637)の染色体を鋳型とし、配列番号7及び配列番号8のプライマーを用いてPCRを行うことにより、ホモセリンO−スクシニルトランスファーラーゼをコードするmetA遺伝子を増幅した。
【0064】
PCRに使用したプライマーは、アメリカ国立衛生研究所のジーンバンク(NIH Gene Bank)に登録されているNC_000913の大腸菌染色体塩基配列をベースに作製し、配列番号7及び配列番号8のプライマーは、それぞれ制限酵素EcoRV部位及びHindIII部位を有している。
【0065】
<配列番号7>
5 'AATTGATATCATGCCGATTCGTGTGCCGG 3'
<配列番号8>
5 'AATTAAGCTTTTAATCCAGCGTTGGATTCATGTG 3'
【0066】
PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の重合を30回繰り返した後、68℃で10分間重合反応を行った。
【0067】
このように獲得したPCR産物及びCJ1プロモーター(特許文献1)を含むpCL1920プラスミドにそれぞれEcoRV及びHindIII制限酵素を処理してクローニングした。クローニングされたプラスミドを用いて大腸菌DH5αを形質転換した後、スペクチノマイシン(spectinomycin)50μg/mlを含むLBプレートで形質転換された大腸菌DH5αを選別してプラスミドを獲得した。獲得したプラスミドをpCL_Pcj1_metA(wt)と命名した。
【0068】
3−2.フィードバック耐性(Feedback-resistance)を有するmetA遺伝子を発現するプラスミドの作製
前記実施例3−1で作製されたpCL_Pcj1_metA(wt)プラスミドを鋳型とし、部位特異的突然変異キット(site directed mutagenesis kit; Stratagene、米国)を用いて、メチオニンに対するフィードバック耐性を有するmetA遺伝子(metA #11)を作製した。
【0069】
具体的には、特許文献3に開示された内容により、配列番号9と配列番号10を用いてO−スクシニルホモセリンの29番のアミノ酸をセリンからプロリンに(S29P)、配列番号11と配列番号12を用いて114番のアミノ酸をグルタミン酸からグリシンに(E114G)、配列番号13と配列番号14を用いて140番のアミノ酸をフェニルアラニンからセリンに置換(F140S)した。この時、使用したプライマー配列は下記の通りである。
【0070】
<配列番号9>
5' ATGACAACTTCTCGTGCGCCTGGTCAGGAAATTCG 3'
<配列番号10>
5' CGAATTTCCTGACCAGGCGCACGAGAAGTTGTCAT 3'
<配列番号11>
5' CGCCGCTGGGCCTGGTGGGGTTTAATGATGTCGCT 3'
<配列番号12>
5' AGCGACATCATTAAACCCCACCAGGCCCAGCGGCG 3'
<配列番号13>
5' CACGTCACCTCGACGCTGAGTGTCTGCTGGGCGGT 3'
<配列番号14>
5' ACCGCCCAGCAGACACTCAGCGTCGAGGTGACGTG 3'
【0071】
それぞれの前記変異を順次導入し、3種の変異を全て導入したmetA(#11)遺伝子を含有したプラスミドを作製した後、pCL_Pcj1_metA#11と命名した。
【0072】
3−3.デイノコッカス・ラディオデュランス由来のmetX遺伝子を発現するプラスミドの作製
米国生物資源センターから購入したデイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans ;寄託番号ATCC BAA−816D)の染色体を鋳型とし、配列番号15、及び配列番号16のプライマーを用いてPCRを行うことにより、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼをコードするmetX遺伝子を増幅した。
【0073】
PCRに使用したプライマーは、アメリカ国立衛生研究所のジーンバンクに登録されているAE000513の染色体塩基配列をベースに作製し、配列番号15、及び配列番号16のプライマーは、それぞれ制限酵素EcoRV部位及びHindIII部位を有している。
【0074】
<配列番号15>
5' AATTGATATCATGACCGCCGTGCTCGC 3'
<配列番号16>
5' AATTAAGCTTTCAACTCCTGAGAAACGCCCC 3'
【0075】
PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で5分間の重合を30回繰り返した後、68℃で7分間重合反応を行った。
【0076】
このように獲得したPCR産物及びCJ1プロモーター(特許文献1)を含むpCL1920プラスミドにそれぞれEcoRV及びHindIII制限酵素を処理してクローニングした。クローニングされたプラスミドを用いて大腸菌DH5αを形質転換した後、スペクチノマイシン(spectinomycin)50μg/mlを含むLBプレートで形質転換した大腸菌DH5αを選別してプラスミドを獲得した。獲得したプラスミドをpCL_Pcj1_dra metXと命名した。
【0077】
3−4.クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子を発現するプラスミドの作製
米国生物資源センターから購入したクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium Violaceum)菌株(寄託番号ATCC12472)の染色体を鋳型とし、配列番号17、及び配列番号18のプライマーを用いてPCRを行ってクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子を増幅した。
【0078】
PCRに用いたプライマーは、アメリカ国立衛生研究所のジーンバンクに登録されているNC_005085のクロモバクテリウム・ビオラセウム染色体の塩基配列をベースに作製し、配列番号17、及び配列番号18のプライマーは、それぞれ制限酵素EcoRV部位及びHindIII部位を有している。
【0079】
<配列番号17>
5' aatt gatatc ATGACCGACACCAACTGTTCGG 3'
<配列番号18>
5' aatt aagctt TCATGCGTTCACCTCCTTGGC 3'
【0080】
PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の重合を30回繰り返した後、68℃で10分間重合反応を行った。
【0081】
このように獲得したPCR産物及びCJ1プロモーター(特許文献1)を含むpCL1920プラスミドにそれぞれEcoRV及びHindIII制限酵素を処理してクローニングした。クローニングしたプラスミドを用いて大腸菌DH5αを形質転換した後、スペクチノマイシン(spectinomycin)50μg/mlを含むLBプレートで形質転換した大腸菌DH5αを選別してプラスミドを獲得した。獲得したプラスミドをpCL_Pcj1_cvi metXと命名した。
【0082】
3−5.生合成遺伝子の強化用2copy菌株作製のためのプラスミド
(1)ppc遺伝子挿入用pSG76cベクターの作製
本実施例では、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylase)をコードするppc遺伝子を含むE.coliの染色体DNAを挿入用ベクターであるpSG76c−2ppcを作製した。
【0083】
アメリカ国立衛生研究所の遺伝子銀行(NIH GenBank)を根拠にしてppc遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号gi:89110074)を確保し、これに基づいてppc遺伝子の−200部分からppc ORFを含有し、制限酵素EcoRI部位とSacI部位を含有しているプライマー(配列番号19、配列番号20)と制限酵素SacI部位とKpnI部位を含有しているプライマー(配列番号21、配列番号22)を合成した。
【0084】
<配列番号19>
5' gccggaattc tgtcggatgc gatacttgcg c 3'
<配列番号20>
5' gaaggagctc agaaaaccct cgcgcaaaag 3'
<配列番号21>
5' gccggagctc tgtcggatgc gatacttgcg c 3'
<配列番号22>
5' gaagggtacc agaaaaccct cgcgcaaaag 3'
【0085】
大腸菌W3110の染色体DNAを鋳型とし、前記配列番号19、20と配列番号21、22のプライマーを用いてPCRを行った。重合酵素はPfuUltraTM高−信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で5分間の重合を30回繰り返した後、68℃で7分間重合反応を行った。その結果、EcoRIとSacIそしてSacIとKpnI制限酵素認識部位を含有した約3.1kbの増幅されたppc遺伝子を獲得した。
【0086】
前記PCRによって獲得したppc遺伝子の末端に制限酵素EcoRIとSacIそしてSacIとKpnIを処理し、制限酵素EcoRI、KpnIで処理したpSG76c(非特許文献6)ベクターに接合(ligation)することにより最終的に2コピー(copy)のppc遺伝子がクローニングされたpSG76c−2ppc組み換えベクターを作製した。
【0087】
(2)aspC挿入用pSG76cベクターの作製
本実施例では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase)をコードするaspC遺伝子を含むE.coliの染色体DNAを挿入用ベクターであるpSG76c−2aspCを作製した。
【0088】
アメリカ国立衛生研究所の遺伝子銀行を根拠にaspC遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号gi:85674274)を確保し、これに基づいてaspC遺伝子の−200部分からaspC ORFを含有し、制限酵素SacIを含有しているプライマー(配列番号23、配列番号24)を合成した。
【0089】
<配列番号23>
5' tccgagctca taagcgtagc gcatcaggca 3'
<配列番号24>
5' tccgagctcg tccacctatg ttgactacat 3'
【0090】
大腸菌W3110の染色体DNAを鋳型とし、前記配列番号23、24のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。重合酵素はPfuUltraTM高−信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の重合を30回繰り返した後、68℃で7分間重合反応を行った。その結果、BamHI制限酵素の認識部位を含有した約1.5kbの増幅されたaspC遺伝子を獲得した。
【0091】
前記PCRを行って獲得したaspC遺伝子の末端に制限酵素BamHIを処理し、制限酵素BamHIで処理されたpSG76cベクターに接合することにより、最終的に2copyのaspC遺伝子がクローニングされたpSG76c−2aspC組み換えベクターを作製した。
【0092】
(3)asd挿入用pSG76cベクターの作製
本実施例では、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aspartate-semialdehyde dehydrogenase)をコードするasd遺伝子を含むE.coliの染色体DNAを挿入用ベクターであるpSG76c−2asdを作製した。
【0093】
アメリカ国立衛生研究所の遺伝子銀行を根拠にasd遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号gi:89110578)を確保し、これに基づいてasd遺伝子の−200部分からasd ORFを含有し、制限酵素EcoRI、XbaIを含有しているプライマー(配列番号25、配列番号26)とXbaIとEcoRIを含有しているプライマー(配列番号27、配列番号28)を合成した。
【0094】
<配列番号25>
5' ccggaattcc caggagagca ataagca 3'
<配列番号26>
5' ctagtctaga tgctctattt aactcccg 3'
<配列番号27>
5' ctagtctaga ccaggagagc aataagca 3'
<配列番号28>
5' ccggaattct gctctattta actcccg 3'
【0095】
大腸菌W3110の染色体DNAを鋳型とし、前記配列番号25、26と配列番号27、28のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。重合酵素はPfuUltraTM高−信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCR条件は、 96℃で30秒間の変性;50℃で30秒間のアニーリング;及び68℃で2分間の重合反応を30回繰り返した。その結果、EcoRI、XbaIそしてXbaI、EcoRI制限酵素認識部位を含有した約1.5kbの増幅されたasd遺伝子を獲得した。
【0096】
前記PCRを行って獲得したasd遺伝子の末端に含まれた制限酵素EcoRIそしてXbaIを処理し、制限酵素EcoRIで処理されたpSG76cベクターに接合することにより、最終的に2copyのasd遺伝子がクローニングされたpSG76c−2asd組換えベクターを作製した。
【0097】
実施例4:野生型ベース親菌株の作製
(1)ppc、aspC、asd遺伝子強化
前記実施例3−5で作製したpSG76c−2ppc、pSG76c−2aspC、pSG76c−2asdベクターを用いて、米国生物資源センター から購入した大腸菌W3110菌株(寄託番号ATCC9637)に形質転換して、LB−Cm(酵母エキス10g/L、NaCl 5g/L、Tryptone 10g/L、クロラムフェニコール 25μg/L、寒天 15g/L)プレート培地に塗抹した後、クロラムフェニコール耐性を有するコロニーを選抜した。選別された形質転換体は、pSG76c−2ppcベクターが誘電体のppcの部分に一次で挿入された菌株である。
【0098】
確保された2copyのppc遺伝子が挿入された菌株は、pSG76cベクター内に存在するI−SceIの部分を切断する制限酵素I−SceIを発現するベクターであるpST76−AscePを形質転換し、LB−Ap(酵母エキス10g/L、NaCl 5g/L、Tryptone 10g/L、アンピシリン 100μg/L、寒天15g/L)プレート培地に塗抹し、30℃で生長する菌株を選別した。
【0099】
このように成長した菌株は、ppc遺伝子が2copyに増幅されたり、最初の1 copyに戻ることができるが、配列番号30、配列番号31のプライマーを用いてPCRを行い、1%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが6.5kbと大きくなった2copy ppc菌株を選別した。前記過程を経ると、ppc遺伝子がさらに挿入され、pSG76cベクターが削除されるようになる。
【0100】
前記のような方法でpSG76c−2aspC、pSG76c−2asdベクターを用いて順番にw3110菌株にppc、asd、aspCが2copyに増幅された菌株を作製した。この過程でaspC 2copy作製は、配列番号32、配列番号33でPCRを行い、1%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが3.2kbに大きくなったことにより確認でき、asd 2copyの制作は、配列番号34、配列番号35でPCRを行い、1%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが3.2kbに大きくなったことにより確認することができた。このように作製された菌株をCJW2と命名した。
【0101】
<配列番号30>
CTGGCTCAATTAATCAGGCTC
<配列番号31>
CGAGGGTGTTAGAACAGAAGT
<配列番号32>
TGGTGAACTACTTTGAAGTGG
<配列番号33>
TGCGGCACGAGCGCCTTATCC
<配列番号34>
GCTCGTAGGCTAAGAAATGCC
<配列番号35>
CAGGTAAGGCTGTGAATACTC
【0102】
(2)metB、thrB及びmetA遺伝子の欠損
前記方法で作製されたCJW2菌株を用いて前記実施例3−1と同様の方法でmetB、thrB及びmetA遺伝子が欠損した菌株を作製し、CJW2Hと命名した。CJW2Hは菌株内にホモセリンが過量で蓄積され、導入されるプラスミドのmetX基質特異性によりO−アセチルホモセリンまたはO−スクシニルホモセリンを生産することができる菌株である。
【0103】
実施例5:実験菌株の作製
(1)菌株の作製
前記実施例1−(3)及び4−(2)で作製された大腸菌CJM2とCJW2H菌株をコンピテントセル(competent cell)として作製し、コンピテントセルに電気穿孔方法(electroporation)で、実施例3−1、3−2、3−3、3−4で作製されたpCL_Pcj1_metA(wt)、pCL_Pcj1_metA#11、pCL_Pcj1_dra metX、pCL_Pcj1_cvi metXの4種のプラスミドをそれぞれ導入した。
【0104】
(2)フラスコ培養実験
その後、4種のプラスミドが導入されたそれぞれの菌株が生産するメチオニン前駆体の種類と生産量を比較するためにフラスコのテストを行った。フラスコのテストは、それぞれの菌株をLBプレートでストリーキング(streaking)し、31℃の培養器に16時間培養した後、単一コロニーをLB培地3mlに接種した後、200rpm/31℃の培養器で16時間培養することにより行った。
【0105】
250mlのフラスコに、下記表1のメチオニン前駆体生産培地25mlを入れ、先に培養した培養液を500μlずつ投入した。その後、フラスコを200rpm/31℃の培養器で40時間培養した後、HPLCを用い、それぞれのプラスミドが導入された菌株から得られるメチオニン前駆体の種類及び量を比較し、その結果を下記表2及び表3に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
その結果、前記表2及び表3によると、E.coli野生型metA遺伝子及びフィードバック阻害に耐性を有するmetA#11遺伝子をそれぞれ含む菌株であるCJM2 pCL_Pcj1_metA(wt)、CJM2 pCL_Pcj1_metA#11、CJW2H pCL_Pcj1_metA(wt)及びCJW2H pCL_Pcj1_metA#11によってはO−スクシニルホモセリンが生産され、それぞれのデイノコッカス・ラディオデュランス由来のmetX遺伝子を含む菌株であるCJM2 pCL_Pcj1_dra metX及びCJW2H pCL_Pcj1_dra metXによってはO−アセチルホモセリンが生産されたことが分かった。
【0110】
クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子の場合は、metA遺伝子に比べて、他のmetX相同遺伝子(orthologues)と高い相同性(homology)を有するが、基質特異性の面では、一般的に報告されたmetX遺伝子とは異なり、スクシニルホモセリンを生産するホモセリンスクシニルトランスフェラ−ゼであることが分かる。
【0111】
また、E.coli野生型metA(wt)遺伝子が導入された場合は、培地に添加される0.3g/Lのメチオニンによるフィードバック阻害現象によりO−スクシニルホモセリンが約1g/L程度生成される現象を示すが、クロモバクテリウム・ビオラ
セウム由来のmetX遺伝子が導入された場合は、遺伝子変異の導入なしに野生型そのものでも、培地に添加されたメチオニンによるフィードバック阻害現象を起こさずにO−スクシニルホモセリンが生産されることが分かった。
【0112】
pCL_Pcj1_cvi metXが導入されたCJM2菌株(CJM2 pCL_Pcj1_cvi metX)を2013年06月20日付で韓国ソウル特別市西大門区弘済1洞361−221番地に所在するブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国種菌協会付設韓国微生物保存センターに受託番号KCCM11433Pとして寄託した。
【0113】
(3)大型発酵槽培養実験
CJM2 pCL_Pcj1_cvi metX及びCJW2H pCL_Pcj1_cvi metX菌株を用いてメチオニン前駆体であるO−スクシニルホモセリンを大量生産するために5Lの発酵槽培養を行った。
【0114】
スペクチノマイシン抗生剤が含有された平板LB培地にCJM2 pCL_Pcj1_cvi metX及びCJW2H pCL_Pcj1_cvi metX菌株を接種して31℃で一晩培養した。その後、単一のコロニーをスペクチノマイシンが含まれた10mlのLB培地に接種した後、31℃で5時間培養し、この培養液2mlを再び200mlのシード(Seed)培地を含む1000mlの三角フラスコに接種した。そして、再び31℃、200rpmで3〜10時間培養した後、シード培養液255mlを5Lの発酵槽の主培地1.7Lに接種して流加式培養(Fed batch)発酵法でシード培地を1.3L消費させて50〜100時間培養した。
【0115】
培養過程で使用した詳細な培地成分を下記表4に示す。このように培養した発酵液からO−スクシニルホモセリンの濃度をHPLCで分析し、その結果を下記表5に示した。
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
前記表5に示したように、トレオニン生産菌株を親菌株にしてクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子が導入された菌株であるCJM2 pCL_Pcj1_cvi metXは、高レベルでO−スクシニルホモセリンを蓄積することが分かった。
【0119】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形で実施されうることを理解できるであろう。これに関連し 、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0120】