特許第6388935号(P6388935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388935O−スクシニルホモセリンの生産のための微生物及びこれを用いたO−スクシニルホモセリンの生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388935
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】O−スクシニルホモセリンの生産のための微生物及びこれを用いたO−スクシニルホモセリンの生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20180903BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20180903BHJP
   C12P 13/04 20060101ALI20180903BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
   C12N1/20 A
   C12N15/31ZNA
   C12P13/04
   !C12N9/10
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-525939(P2016-525939)
(86)(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公表番号】特表2016-533730(P2016-533730A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】KR2014009970
(87)【国際公開番号】WO2015060649
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2016年4月26日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0126602
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514158497
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】セオ,チャン ツー
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソ ヤング
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨン ユーケー
(72)【発明者】
【氏名】ナ,クァン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ウム,ヒエ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ,イン キョン
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−213401(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/087039(WO,A1)
【文献】 homoserine O-acetyltransferase [chromobacterium violaceum],NCBI Protein database [online],2013年 5月15日,NCBI reference sequence: WP_011134341.1, [検索日:2017/01/27], インターネット:<URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/WP_011134341.1]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
C12N 15/31
C12P 13/04
C12N 9/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号29で表されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有するポリペプチドを発現する、O−スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物を含有する、O−スクシニルホモセリンを生産するための組成物
【請求項2】
前記エシェリキア属微生物が、大腸菌である、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
配列番号29で表されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性およびホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有する、ポリペプチドを発現する、O−スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物であって、シスタチオニンγ−シンターゼをコードする前記metB遺伝子がさらに欠損または弱化されている、エシェリキア属微生物。
【請求項4】
配列番号29で表されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性およびホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有する、ポリペプチドを発現する、O−スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物であって、ホモセリンキナーゼをコードする前記thrB遺伝子及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼをコードする前記metA遺伝子がさらに欠損または弱化されている、エシェリキア属微生物。
【請求項5】
配列番号29で表されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性およびホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有する、ポリペプチドを発現する、O−スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物であって、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ及びアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼがさらに強化されている、エシェリキア属微生物。
【請求項6】
(a)配列番号29で示されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性およびホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドを発現する、O−スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物を培地で培養する工程;及び
(b)前記微生物または培地からO−スクシニルホモセリンを得る工程を含む、O−スクシニルホモセリンの生産方法。
【請求項7】
前記エシェリキア属微生物が、大腸菌である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
シスタチオニンγ−シンターゼをコードする前記metB遺伝子がさらに欠損または弱化されている、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ホモセリンキナーゼを前記thrB遺伝子およびホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼをコードする前記metA遺伝子が、さらに欠損または弱化されている、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼが、さらに強化されている、請求項6〜9のいずれか一個に記載の方法。
【請求項11】
O−スクシニルホモセリンを生産するためのO−スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物の使用であって、前記微生物が、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性およびホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドを発現し、前記ポリペプチドが配列番号29で表されるアミノ酸配列を有する、使用。
【請求項12】
前記エシェリキア属微生物が大腸菌である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
シスタチオニンγ−シンターゼをコードする前記metB遺伝子が、さらに欠損または弱化されている、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
ホモセリンキナーゼをコードする前記thrB遺伝子及びホモセリンOスクシニルトランスフェラーゼをコードする前記metA遺伝子が、さらに欠損または弱化されている、請求項11〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼがさらに強化されている、請求項11〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
ホモセリンスクシニルトランスフェラーゼとしての単離されたペプチドの使用であって、前記ペプチドが配列番号29のアミノ酸配列を有する、使用。
【請求項17】
請求項16に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドの使用であって、前記ポリヌクレオチドが配列番号36のヌクレオチド配列を有する、使用。
【請求項18】
メチオニンを生産する方法であって、
(a)配列番号29で表されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性およびホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有する、ポリペプチドを発現する、O−スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物を培地で培養する工程、
(b)前記微生物または前記培地からO−スクシニルホモセリンを得る工程、ならびに
(c)前記O−スクシニルホモセリンからメチオニンを生産する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有する分離されたポリペプチド、前記ポリペプチドを発現するO−スクシニルホモセリン生産微生物及びこれを用いてO−スクシニルホモセリンを生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然界に存在する大部分の微生物は、メチオニンを生合成するためにO−スクシニルホモセリン(O-succinyl homoserine)またはO−アセチルホモセリン(O-acetyl homoserine)を中間体として用いることが知られている。一般的に、O−スクシニルホモセリンは、ホモセリン(Homoserine)にスクシニルCoA(Succinyl-coA)のスクシニルグループ(Succinyl group)を結合させるO−スクシニルトランスフェラ-ゼ(homoserine O-succinyltransferase、MetA)により生産され、O−アセチルホモセリンは、ホモセリン(homoserine)にアセチルCoA(acetyl-coA)のアセチルグループ(acetyl group)を結合させるホモセリンO-アセチルトランスフェラ-ゼ(homoserine O-acetyltransferase、MetX)により生産される。即ち、中間体のうち、O−スクシニルホモセリンの生産において、metAは生産菌株の開発に非常に重要な遺伝子の一つである。一方、MetXはMetAとは異なり、フィードバック阻害を受けず、酵素の安定性も高いことが知られている。
【0003】
O−スクシニルホモセリンは、メチオニン生合成経路でシスタチオニンγ−シンターゼ(cystathionine gamma synthase)をコードするmetB遺伝子欠損菌株を用いて生成することができる。しかし、O−スクシニルホモセリン生産菌株は、L−メチオニン要求性を示す。このような理由から、培地に添加されたメチオニンによりホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼがフィードバック阻害(feedback inhibition)を受けて活性が抑制され、最終的には、高濃度のO−スクシニルホモセリンを得ることができなくなる。
【0004】
したがって、従来の多くの特許は、フィードバック調節システムからmetAのフィードバック阻害を解除する研究に集中していた。しかし、metAによりコードされるホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼは、野生型タンパク質自体でも安定性が低く、フィードバック解除のために変異を導入すると、不安定性がより増大するという問題を抱えている。高い生産能を有するO−スクシニルホモセリン生産菌株の開発のためにはmetA遺伝子のフィードバック阻害が除去され、酵素の安定性を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許番号第0620092号公報
【特許文献2】国際特許WO05/075625号公報
【特許文献3】国際公開特許WO2008127240号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Karlin及びAltschul, Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)
【非特許文献2】Methods Enzymol., 183, 63(1990)
【非特許文献3】「Biochemical Engineering」by James M. Lee, Prentice-Hall International Editions, pp 138-176
【非特許文献4】「Manual of Methods for General Bacteriology」by the AmericanSociety for Bacteriology、Washington DC、米国、1981年
【非特許文献5】PNAS(2000)vol97:P6640-6645
【非特許文献6】J Bacteriol.1997 Jul; 179(13):4426-8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したmetAのフィードバック阻害現象と不安定性の問題を解決するために、本発明者らはメチオニンによるフィードバック阻害を受けず、酵素の安定性が確保されたホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼを見出すために鋭意努力した結果、そのような活性を有する新規な酵素を探索した。このように探索した候補遺伝子を選別し、これをエシェリキア属微生物に導入してフラスコ培養した結果、O−スクシニルホモセリンが生成されることを確認した。このように選別された遺伝子は、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有し、メチオニンに対するフィードバック阻害に耐性を有することを確認し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下を提供する。
[1]配列番号29で表されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性(resistance to feedback inhibition)及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ(Homoserine Succinyltransferase)活性を有する分離されたポリペプチド。
[2]上記[1]のポリペプチドをコードする配列番号36の塩基配列を有する分離されたポリヌクレオチド。
[3]配列番号29で表されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック阻害に対する耐性(feedback resistant)及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ(Homoserine Succinyltransferase)活性を有するポリペプチドを発現する、O−スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物。
[4]上記エシェリキア属微生物は、大腸菌(Escherichia coli)であることを特徴とする、上記[3]に記載のエシェリキア属微生物。
[5]シスタチオニンγ−シンターゼ(cystathionine gamma synthase)をコードするmetB遺伝子がさらに欠損または弱化された、上記[3]に記載のエシェリキア属微生物。
[6]ホモセリンキナーゼ(homoserine kinase)をコードするthrB遺伝子及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ(homoserine O-succinyltransferase)をコードするmetA遺伝子がさらに欠損または弱化された、上記[3]に記載のエシェリキア属微生物。
[7]上記微生物は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylase)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase)及びアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aspartate-semialdehyde dehydrogenase)がさらに強化された、上記[3]に記載のエシェリキア属微生物。
[8](a)上記[3]〜[7]のいずれか一項の微生物を培地で培養する段階;及び
(b)上記微生物または培地からO−スクシニルホモセリンを得る段階を含む、O−スクシニルホモセリンの生産方法。
本発明は、メチオニンによるフィードバック阻害に耐性及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有する、分離された新規なポリペプチドを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、また、前記分離された新規なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、また、前記分離された新規なポリペプチドを発現するO−スクシニルホモセリン生産微生物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、また、前記微生物を用いてO−スクシニルホモセリンを生産する方法を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分離された新規なメチオニンに対するフィードバック阻害に耐性を有し、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有するポリペプチドを含むO−スクシニルホモセリン生産微生物は、メチオニンに対するフィードバック阻害に耐性を有し、高収率でO−スクシニルホモセリンを生産することができるため、これを前駆体とするL−メチオニンを高収率で生産するのに有用に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記目的を達成するための一つの様態として、本発明は、メチオニンによるフィードバック阻害に耐性を有し(feedback resistant)、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラ-ゼ(Homoserine O-Succinyltransferase)活性を有する分離された新規なポリペプチドを提供する。
【0014】
本発明における用語「ホモセリンO-スクシニルトランスフェラ-ゼ活性(activity of homoserine O-succinyltransferase)」とは、メチオニン生合成の過程でホモセリン(Homoserine)をO-スクシニルホモセリン(O-succinyl homoserine)に転換する活性を意味する。
【0015】
本発明における用語 「フィードバック阻害(feedback inhibition)」とは、メチオニン生合成においてメチオニンがホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼの酵素活性を抑制することを意味する。
【0016】
本発明においてポリペプチドは、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有する配列番号29のアミノ酸配列を有し、メチオニンフィードバック阻害に耐性を有することを特徴とする。本発明で提示したホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性及びメチオニンに対するフィードバック阻害に耐性を有する限り、前記ポリペプチドのアミノ酸配列に対して80%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、特に具体的には97%以上の相同性を有するポリペプチドも本発明に含まれる。前記アミノ酸配列に対する相同性は、例えば、文献によるアルゴリズムBLAST(参照:非特許文献1)やPearsonによるFASTA(参照:非特許文献2)を用いて決定することができる。このようなアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(参考:www.ncbi.nlm.nih.gov) 。
【0017】
本発明のもう一つの態様は、前記ポリペプチドをコードする分離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0018】
前記ポリペプチドは、具体的には、配列番号36のポリヌクレオチド配列によりコードすることができ、コドンの縮退性により、これと80%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、特に具体的には、97%以上の相同性を有するポリヌクレオチドも本発明に含まれる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0019】
また、本発明の別の態様は、前記ポリヌクレオチドが作動可能に含まれているベクターを提供する。
【0020】
本発明における用語「ベクター」とは、適当な宿主内で目的タンパク質を発現させるべく、適切な調節配列に作動可能に連結された前記目的タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドの塩基配列を含有するDNA産物を意味する。前記調節配列は、転写を開始することのできるプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適当なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び翻訳の終結を調節する配列を含む。ベクターは、適切な宿主内に形質転換された後、宿主ゲノムとは無関係に複製または機能することができ、ゲノムそのものに組み込むことができる 。
【0021】
本発明において用いられるベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、当業界で知られている任意のベクターを利用することができる。
【0022】
本発明のもう一つの態様は、メチオニンに対するフィードバック阻害に対する耐性(feedback resistant)を有し、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラ-ゼ(Homoserine Succinyltransferase)活性を有するポリペプチドを発現する、O−スクシニルホモセリン(O-succinyl homoserine)を生産する微生物を提供する。
【0023】
本発明における用語「O−スクシニルホモセリン(O−succinyl homoserine)を生産する微生物」とは、O−スクシニルホモセリンを生産し、細胞内外で蓄積することのできる微生物であってもよい。
【0024】
前記O-スクシニルホモセリンを生産する微生物には、原核及び真核微生物菌株を含む。例えば、O-スクシニルホモセリンを生産するエシェリキア(Escherichia)属、エルウイニア(Erwinia)属、セラチア(Serratia)属、プロビデンシア(Providencia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属及びブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物菌株が含まれるが、これに限定されない。具体的には、エシェリキア(Escherichia)属に属する微生物菌株、例えばエシェリキア大腸菌(Escherichia coli)を用いてもよい。
【0025】
前記O−スクシニルホモセリンを生産する微生物は、L−リジン、L−トレオニンまたはL−イソロイシン生産菌株を用いて製造することもできる。具体的には、L−トレオニン生産菌株を用いて製造することができる。L−トレオニン生産菌株は、L−トレオニン及びO−スクシニルホモセリンの前駆体であるホモセリンまでの合成が既に円滑に行われる菌株であるため、これを活用して、大量のメチオニン前駆体、即ち、O−スクシニルホモセリンを合成することができる。
【0026】
本発明において、前記ポリペプチドの発現は、前記ポリペプチドをコードする遺伝子を作動可能に含まれている組み換えベクターで形質転換されるか、または前記ポリペプチドを暗号化するポリヌクレオチドを染色体内に挿入することによって達成できるが、特にこれに限定されるものではない。
【0027】
本発明における用語「形質転換」とは、目的タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入して宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドが暗号化するタンパク質を発現することができるようにすることを意味する。導入されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内での発現さえ行われれば、宿主細胞の染色体に挿入されて位置するか、または染色体外に位置することができる。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現することができるものであれば、如何なる形で導入されても構わない。例えば、前記ポリヌクレオチドは、それ自体で発現されるのに必要なすべての要素を含むポリヌクレオチド構造体である発現カセット(expression cassette)の形で宿主細胞に導入することができる。前記発現カセットは、通常、前記遺伝子のオープンリーディングフレーム(open reading frame、以下「ORF」と略称する)に作動可能に連結されているプロモーター、転写終結シグナル、リボソーム結合部位、及び翻訳終結シグナルを含む。本発明で使用されるプロモーターは、宿主細胞内で目的タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドの転写を高い頻度で開始するものであれば、特に限定されず、当業界で知られている任意のプロモーターを利用することができる。具体的には、T7プロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、CJ1プロモーター(特許文献1)などを用いることができる。
【0028】
本発明の具体的な実施態様において、前記微生物は、シスタチオニンγ−シンターゼ(cystathionine gamma synthase)をコードするmetB遺伝子をさらに欠損または弱化させることができる。
【0029】
本発明の具体的な実施態様において、前記微生物は、ホモセリンキナーゼ(homoserine kinase)をコードするthrB遺伝子及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ(homoserine O-succinyltransferase)をコードするmetA遺伝子をさらにより一層欠損または弱化させることができる。
【0030】
また、本発明の具体的な実施形態として、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylase)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase)及びアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aspartate-semialdehyde dehydrogenase)をさらに強化させるエシェリキア属微生物であってもよい。
【0031】
本発明において、前記遺伝子の配列は、米国生物工学情報センター(NCBI)のようなデータベースから得られる。
【0032】
本発明における用語「欠損(deletion)」とは、目的遺伝子の開始コドンに該当する塩基配列から終止コドンまでの塩基配列領域、あるいはその調節部位の塩基配列のうち一部あるいは全部を、染色体の内部から除去した形を意味する。
【0033】
本願における用語「弱化(weakening)」とは、微生物菌株において相応するポリヌクレオチドによりコードされる1つ以上の酵素に対する細胞内活性を除去または減少させることを意味するが、例えば、遺伝子の発現調節配列及び5’−UTR部位の塩基配列を変形させることにより、タンパク質の発現を弱化させたり、開始コドンの交換、該遺伝子のORF部位に突然変異を導入することにより、タンパク質の活性を弱化させることができる。
【0034】
本願における用語「強化(enhancing)」とは、相応するポリヌクレオチドによりコードされる酵素の細胞内活性の増加をいう。酵素の細胞内活性の増進は、遺伝子の過剰発現により、またはポリヌクレオチド配列自体の変異導入により行うことができる。
【0035】
前記ポリヌクレオチドの過剰発現は、発現調節配列の置換または突然変異による変形、開始コドンの交換、前記ポリヌクレオチドをさらに染色体に挿入すること、またはベクターを通じて導入することによるコピー数の増加、またはその組み合わせによるものであってもよい。
【0036】
前記発現調節配列は、それと作動可能に連結されたポリヌクレオチドの発現を調節する配列であり、例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、サイレンサー、シャイン・ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列などが含まれる。前記開始コドンは、TTGまたはGTGからなる開始コドンをATGで置換することにより、当該遺伝子の酵素活性を増加させたり、その反対に交換して弱化させることができる。前記ポリヌクレオチドは、染色体内の特定の位置に挿入されることにより、コピー数が増加したものであってもよい。前記特定の位置は、例えば、トランスポゾンまたはインタージェニック(intergenic)部位などを含むことができる。また、前記ポリヌクレオチドは、発現ベクター内に挿入され、その発現ベクターを宿主細胞内に導入することにより、コピー数が増加したものであってもよい。
【0037】
本発明のもう一つの態様は、前記微生物を培地で培養してO−スクシニルホモセリンを生産する段階及び前記微生物または培地からO−スクシニルホモセリンを得る段階を含む、O−スクシニルホモセリンの生産方法を提供する。
【0038】
前記製造されたO−スクシニルホモセリン生産菌株の培養過程は、当業界で知られている適当な培地と培養条件に応じて行うことができる。このような培養過程は、当業者であれば、選択された菌株に応じて容易に調整して用いることができる。前記培養方法の例には、回分式、連続式及び流加式培養が含まれるが、これに限定されるものではない。このような多様な培養方法は、例えば、非特許文献3に開示されている。
【0039】
培養に使用される培地は、特定の菌株の要求条件を適切に満足させるものでなければならない。様々な微生物の培地は、例えば、非特許文献4に開示されている。前記培地は、様々な炭素源、窒素源、及び微量元素成分を含む。使用される炭素源の例には、グルコース、ショ糖、乳糖、果糖(fructose)、マルトース、澱粉、セルロースのような炭水化物、大豆油、ひまわり油、ヒマシ油、ココナッツ油のような脂肪、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸のような脂肪酸、グリセロール及びエタノールのようなアルコール、酢酸のような有機酸が含まれる。これらの炭素源は、単独または組み合わせて使用することができる。使用することのできる窒素源の例には、ペプトン、酵母エキス、肉汁、麦芽エキス、トウモロコシ浸漬液(CSL)、及び大豆ミールのような有機窒素源、及び尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムのような無機窒素源が含まれる。これらの窒素源は、単独または組み合わせて使用することができる。前記培地にはリン源として、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、及び相応するナトリウム−含有塩が含まれてもよい。また、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄のような金属塩を含むことができる。この他、アミノ酸、ビタミン、及び適切な前駆体などが含まれてもよい。これらの培地や前駆体は、培養物に回分式または連続式で添加することができる。
【0040】
また、培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸及び硫酸のような化合物を培養物に適切な方法で添加して培養物のpHを調整することができる。また、培養中に脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制することができる。また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素−含有気体(例えば、空気)を注入する。培養物の温度は、通常20℃〜45℃、具体的には、25℃〜40℃である。培養期間は、所望のO−スクシニルホモセリンの生成量が得られるまで継続することができ、具体的には10〜160時間である。
【0041】
本発明の方法で生産したO−スクシニルホモセリンは、シスタチオニンγ−シンターゼ(cystathionine gamma synthase)またはO−スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-succinylhomoserine sulfhydrylase)によりメチオニンに転換することができる。また、本発明の方法で製造したO−スクシニル−L−ホモセリンとCHSHを反応させることによって、L−メチオニン以外にもコハク酸を別途の生産工程を行うことなく副産物として得ることができる。
【0042】
本発明のもう一つの態様は、配列番号29で表されるアミノ酸配列を有し、メチオニンによるフィードバック耐性(feedback resistant)及びホモセリンO−スクシニルトランスフェラ−ゼ(Homoserine Succinyltransferase)活性を有するポリペプチドのO−スクシニルホモセリン生産用途に関する。本発明において、分離された新規な前記ポリペプチドがメチオニンに対するフィードバック阻害に耐性を有し、高収率でO−スクシニルホモセリンを生産することができることを究明したところ、前記ポリペプチドは、O−スクシニルホモセリン生産用途として用いることができる。
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例により制限されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1:トレオニン生産菌株ベースの親菌株の作製
(1)metB遺伝子欠損
metX遺伝子の基質特異性及び活性を把握するためにホモセリンを蓄積し、生産されたアシルホモセリン(acyl homoserine)の利用性が欠損した菌株を作製した。前記菌株の作製は、特許文献2に記載されているトレオニン生産菌株であるFTR2533(KCCM 10541)菌株をベースにした。
【0045】
前記トレオニン生産菌株であるFTR2533(KCCM 10541)菌株からシスタチオニン・シンターゼをコードするmetB遺伝子を欠損させるために、FRT one step PCR deletion法方を行った(非特許文献5)。配列番号1及び配列番号2のプライマーを用いてpKD3ベクター(非特許文献5)を鋳型としてPCR反応により欠損カセットを構成した。PCR条件は、変性94℃で30秒間; アニーリング55℃で30秒間のアニーリング及び重合反応72℃で1分間を30回繰り返した。
【0046】
<配列番号1>
5'ttactctggt gcctgacatt tcaccgacaa agcccaggga acttcatcac gtgtaggctg gagctgcttc 3'
<配列番号2>
5'ttaccccttg tttgcagccc ggaagccatt ttccaggtcg gcaattaaat catatgaata tcctccttag 3'
【0047】
その結果、得られたPCR産物を1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.2kbpの大きさのバンドからDNAを精製した。回収したDNA切片はpKD46ベクター(非特許文献5)を予め形質転換させたFTR2533菌株にエレクトロポレーションした。
【0048】
前記エレクトロポレーションのためにpKD46に形質転換したFTR2533菌株は、100μg/Lのアンピシリン(ampicillin)と5mMのアラビノース(L-arabinose)が含まれたLB培地を用い、OD600が0.6に到達するまで30℃で培養した。滅菌蒸留水で2回、10%のグリセロールで1回洗浄して使用した。エレクトロポレーションは2500Vで加えた。
【0049】
回収した菌株を25μg/Lのクロラムフェニコール(chloramphenicol)を含むLB平板培地に塗抹して37℃で一晩培養した後、耐性を示す菌株を選別した。選別された菌株は、菌株を鋳型とし、同一のプライマーを用いて、同様の条件でPCRを行った後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.2Kbで観察されることを確認することにより、metB遺伝子の欠損を確認した。確認された菌株は、再びpCP20ベクター(非特許文献5)で形質転換させてLB培地で培養し、再び同様の条件のPCRを行って1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが150bpに小さくなった最終的なmetB遺伝子欠損菌株を作製し、クロラムフェニコールマーカーが除去されたことを確認した。作製された菌株をCJMA1と命名した。
【0050】
(2)thrB遺伝子の欠損
前記作製したCJMA1菌株でホモセリンキナーゼをコードするthrB遺伝子を欠損させるために、metB遺伝子欠損時と同様のFRT one step PCR deletion方法を用いた。
【0051】
thrB欠損カセットを作製するためにpKD4ベクター(非特許文献5)を鋳型とし、配列番号3、4のプライマーを用いて、 変性94℃で30秒間;アニーリング55℃で30秒間;延長72℃で1分間の条件でPCR反応を30回行った。
【0052】
<配列番号3>
aaagaatatg ccgatcggtt cgggcttagg ctccagtgcc tgttcggtgg gtgtaggctg gagctgcttc
<配列番号4>
agacaaccga catcgctttc aacattggcg accggagccg ggaaggcaaa catatgaata tcctccttag
【0053】
その結果、得られたPCR産物を1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.6 kbpの大きさのバンドからDNAを精製した。回収したDNA切片をpKD46ベクターで予め形質転換させたCJMA1菌株にエレクトロポレーションした。回収した菌株を50μg/Lのカナマイシンを含むLB平板培地に塗抹して37℃で一晩培養した後、耐性を示す菌株を選別した。
【0054】
選別された菌株は、菌株を直接鋳型とし、配列番号3、4のプライマーを用いて、同様の条件でPCRを行った後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.6Kbと確認された菌株を選別することにより、thrB遺伝子の欠損を確認した。確認した菌株は、再びpCP20ベクターで形質転換させ、LB培地で培養し、再び同様の条件のPCRにより1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが150bpに小さくなった最終的なthrB遺伝子欠損菌株を作製し、カナマイシンマーカーが削除されたことを確認した。作製された菌株は、CJMA2菌株と命名した。
【0055】
(3)metA遺伝子の欠損
前記CJMA2菌株でクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子の基質特異性及び活性を確認するために、FTR2533(KCCM 10541)菌株にmetB及びthrB遺伝子を欠損させたCJMA2菌株をベースに、染色体上の本来metA遺伝子を欠損させた。
【0056】
metA遺伝子を欠損させるためにFRT one step PCR deletion方法を使用した。metA遺伝子欠損カセットを作製するためにpKD3ベクター(非特許文献5)を鋳型とし、配列番号5、6のプライマーを用いて、94℃で30秒間の変性; 55℃で30秒間のアニーリング; 72℃で1分間の延長をしてPCRを30回行った。
【0057】
<配列番号5>
caatttcttg cgtgaagaaa acgtctttgt gatgacaact tctcgtgcgt gtgtaggctg gagctgcttc
<配列番号6>
aatccagcgt tggattcatg tgccgtagat cgtatggcgt gatctggtag catatgaata tcctccttag
【0058】
その結果、得られたPCR産物を1.0%のアガロースゲルで電気泳動した後、1.2kbpの大きさのバンドからDNAを精製した。回収したDNA切片をpKD46ベクターで予め形質転換させたCJMA2菌株にエレクトロポレーションした。回収した菌株をクロラムフェニコールを含むLB平板培地に塗抹して37℃で一晩培養した後、耐性を示す菌株を選別した。
【0059】
選別した菌株は、菌株を直接鋳型とし、配列番号5、6のプライマーを用いて、同様の条件でPCRを行った後、1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.1Kbに変化することを確認することにより、metA遺伝子の欠損を確認した。確認された菌株を再びpCP20ベクターで形質転換させ、LB培地で培養し、再び同様の条件のPCRにより1.0%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが100bpに小さくなった最終的なmetA遺伝子欠損菌株を作製し、クロラムフェニコールマーカーが削除されたことを確認した。作製された菌株をCJM2と命名した。
【0060】
CJM2は菌株内にホモセリンが過量蓄積され、導入されるプラスミドのmetX基質特異性によりO−アセチルホモセリンまたはO−スクシニルホモセリンを生産することのできる菌株である。
【0061】
実施例2:新規なO−スクシニルトランスフェラ−ゼ活性を有するポリペプチドの選別
metA遺伝子のフィードバック調節の解除及び安定性を確保するために、KEGG website(//www.genome.jp/kegg/)でmetXと命名された10種の相同体(Orthologue)を選別してpCL1920_PCJ1ベクターにクローニングした。前記10種のベクターを用いて、前記実施例1で作製されたCJM2に形質転換した。
【0062】
このように獲得された10種の菌株を下記実施例5−(2)で言及されたフラスコ培養方法でフラスコの評価を行った。CJM2はホモセリンが蓄積される菌株でpCL1920に導入された遺伝子がホモセリンスクシニルトランスフェラ−ゼである場合、最終産物としてO−スクシニルホモセリンが獲得され、ホモセリンアセチルトランスフェラ−ゼが導入された場合は、最終産物としてO−アセチルホモセリンが獲得される。前記特性を用いて評価された10種の中からmetX遺伝子でありながら、ホモセリンスクシニルトランスフェラ−ゼをコードする遺伝子を確保した。これは、O−スクシニルホモセリンを高収率で生産可能にする特性を有するクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium Violaceum)由来のmetX遺伝子であるが(アミノ酸配列番号29、塩基配列番号36)、既存に報告されたことのない新規な活性であることを本発明者らが確認した。
【0063】
実施例3:プラスミドの作製
3−1.野生型E.coli由来のmetA遺伝子を発現するプラスミドの作製
米国生物資源センター(American Type Culture Collection)から購入した大腸菌W3110菌株(寄託番号ATCC9637)の染色体を鋳型とし、配列番号7及び配列番号8のプライマーを用いてPCRを行うことにより、ホモセリンO−スクシニルトランスファーラーゼをコードするmetA遺伝子を増幅した。
【0064】
PCRに使用したプライマーは、アメリカ国立衛生研究所のジーンバンク(NIH Gene Bank)に登録されているNC_000913の大腸菌染色体塩基配列をベースに作製し、配列番号7及び配列番号8のプライマーは、それぞれ制限酵素EcoRV部位及びHindIII部位を有している。
【0065】
<配列番号7>
5 'AATTGATATCATGCCGATTCGTGTGCCGG 3'
<配列番号8>
5 'AATTAAGCTTTTAATCCAGCGTTGGATTCATGTG 3'
【0066】
PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の重合を30回繰り返した後、68℃で10分間重合反応を行った。
【0067】
このように獲得したPCR産物及びCJ1プロモーター(特許文献1)を含むpCL1920プラスミドにそれぞれEcoRV及びHindIII制限酵素を処理してクローニングした。クローニングされたプラスミドを用いて大腸菌DH5αを形質転換した後、スペクチノマイシン(spectinomycin)50μg/mlを含むLBプレートで形質転換された大腸菌DH5αを選別してプラスミドを獲得した。獲得したプラスミドをpCL_Pcj1_metA(wt)と命名した。
【0068】
3−2.フィードバック耐性(Feedback-resistance)を有するmetA遺伝子を発現するプラスミドの作製
前記実施例3−1で作製されたpCL_Pcj1_metA(wt)プラスミドを鋳型とし、部位特異的突然変異キット(site directed mutagenesis kit; Stratagene、米国)を用いて、メチオニンに対するフィードバック耐性を有するmetA遺伝子(metA #11)を作製した。
【0069】
具体的には、特許文献3に開示された内容により、配列番号9と配列番号10を用いてO−スクシニルホモセリンの29番のアミノ酸をセリンからプロリンに(S29P)、配列番号11と配列番号12を用いて114番のアミノ酸をグルタミン酸からグリシンに(E114G)、配列番号13と配列番号14を用いて140番のアミノ酸をフェニルアラニンからセリンに置換(F140S)した。この時、使用したプライマー配列は下記の通りである。
【0070】
<配列番号9>
5' ATGACAACTTCTCGTGCGCCTGGTCAGGAAATTCG 3'
<配列番号10>
5' CGAATTTCCTGACCAGGCGCACGAGAAGTTGTCAT 3'
<配列番号11>
5' CGCCGCTGGGCCTGGTGGGGTTTAATGATGTCGCT 3'
<配列番号12>
5' AGCGACATCATTAAACCCCACCAGGCCCAGCGGCG 3'
<配列番号13>
5' CACGTCACCTCGACGCTGAGTGTCTGCTGGGCGGT 3'
<配列番号14>
5' ACCGCCCAGCAGACACTCAGCGTCGAGGTGACGTG 3'
【0071】
それぞれの前記変異を順次導入し、3種の変異を全て導入したmetA(#11)遺伝子を含有したプラスミドを作製した後、pCL_Pcj1_metA#11と命名した。
【0072】
3−3.デイノコッカス・ラディオデュランス由来のmetX遺伝子を発現するプラスミドの作製
米国生物資源センターから購入したデイノコッカス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans ;寄託番号ATCC BAA−816D)の染色体を鋳型とし、配列番号15、及び配列番号16のプライマーを用いてPCRを行うことにより、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼをコードするmetX遺伝子を増幅した。
【0073】
PCRに使用したプライマーは、アメリカ国立衛生研究所のジーンバンクに登録されているAE000513の染色体塩基配列をベースに作製し、配列番号15、及び配列番号16のプライマーは、それぞれ制限酵素EcoRV部位及びHindIII部位を有している。
【0074】
<配列番号15>
5' AATTGATATCATGACCGCCGTGCTCGC 3'
<配列番号16>
5' AATTAAGCTTTCAACTCCTGAGAAACGCCCC 3'
【0075】
PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で5分間の重合を30回繰り返した後、68℃で7分間重合反応を行った。
【0076】
このように獲得したPCR産物及びCJ1プロモーター(特許文献1)を含むpCL1920プラスミドにそれぞれEcoRV及びHindIII制限酵素を処理してクローニングした。クローニングされたプラスミドを用いて大腸菌DH5αを形質転換した後、スペクチノマイシン(spectinomycin)50μg/mlを含むLBプレートで形質転換した大腸菌DH5αを選別してプラスミドを獲得した。獲得したプラスミドをpCL_Pcj1_dra metXと命名した。
【0077】
3−4.クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子を発現するプラスミドの作製
米国生物資源センターから購入したクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium Violaceum)菌株(寄託番号ATCC12472)の染色体を鋳型とし、配列番号17、及び配列番号18のプライマーを用いてPCRを行ってクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子を増幅した。
【0078】
PCRに用いたプライマーは、アメリカ国立衛生研究所のジーンバンクに登録されているNC_005085のクロモバクテリウム・ビオラセウム染色体の塩基配列をベースに作製し、配列番号17、及び配列番号18のプライマーは、それぞれ制限酵素EcoRV部位及びHindIII部位を有している。
【0079】
<配列番号17>
5' aatt gatatc ATGACCGACACCAACTGTTCGG 3'
<配列番号18>
5' aatt aagctt TCATGCGTTCACCTCCTTGGC 3'
【0080】
PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の重合を30回繰り返した後、68℃で10分間重合反応を行った。
【0081】
このように獲得したPCR産物及びCJ1プロモーター(特許文献1)を含むpCL1920プラスミドにそれぞれEcoRV及びHindIII制限酵素を処理してクローニングした。クローニングしたプラスミドを用いて大腸菌DH5αを形質転換した後、スペクチノマイシン(spectinomycin)50μg/mlを含むLBプレートで形質転換した大腸菌DH5αを選別してプラスミドを獲得した。獲得したプラスミドをpCL_Pcj1_cvi metXと命名した。
【0082】
3−5.生合成遺伝子の強化用2copy菌株作製のためのプラスミド
(1)ppc遺伝子挿入用pSG76cベクターの作製
本実施例では、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylase)をコードするppc遺伝子を含むE.coliの染色体DNAを挿入用ベクターであるpSG76c−2ppcを作製した。
【0083】
アメリカ国立衛生研究所の遺伝子銀行(NIH GenBank)を根拠にしてppc遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号gi:89110074)を確保し、これに基づいてppc遺伝子の−200部分からppc ORFを含有し、制限酵素EcoRI部位とSacI部位を含有しているプライマー(配列番号19、配列番号20)と制限酵素SacI部位とKpnI部位を含有しているプライマー(配列番号21、配列番号22)を合成した。
【0084】
<配列番号19>
5' gccggaattc tgtcggatgc gatacttgcg c 3'
<配列番号20>
5' gaaggagctc agaaaaccct cgcgcaaaag 3'
<配列番号21>
5' gccggagctc tgtcggatgc gatacttgcg c 3'
<配列番号22>
5' gaagggtacc agaaaaccct cgcgcaaaag 3'
【0085】
大腸菌W3110の染色体DNAを鋳型とし、前記配列番号19、20と配列番号21、22のプライマーを用いてPCRを行った。重合酵素はPfuUltraTM高−信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で5分間の重合を30回繰り返した後、68℃で7分間重合反応を行った。その結果、EcoRIとSacIそしてSacIとKpnI制限酵素認識部位を含有した約3.1kbの増幅されたppc遺伝子を獲得した。
【0086】
前記PCRによって獲得したppc遺伝子の末端に制限酵素EcoRIとSacIそしてSacIとKpnIを処理し、制限酵素EcoRI、KpnIで処理したpSG76c(非特許文献6)ベクターに接合(ligation)することにより最終的に2コピー(copy)のppc遺伝子がクローニングされたpSG76c−2ppc組み換えベクターを作製した。
【0087】
(2)aspC挿入用pSG76cベクターの作製
本実施例では、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase)をコードするaspC遺伝子を含むE.coliの染色体DNAを挿入用ベクターであるpSG76c−2aspCを作製した。
【0088】
アメリカ国立衛生研究所の遺伝子銀行を根拠にaspC遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号gi:85674274)を確保し、これに基づいてaspC遺伝子の−200部分からaspC ORFを含有し、制限酵素SacIを含有しているプライマー(配列番号23、配列番号24)を合成した。
【0089】
<配列番号23>
5' tccgagctca taagcgtagc gcatcaggca 3'
<配列番号24>
5' tccgagctcg tccacctatg ttgactacat 3'
【0090】
大腸菌W3110の染色体DNAを鋳型とし、前記配列番号23、24のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。重合酵素はPfuUltraTM高−信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCR条件は、94℃で3分間変性した後、94℃で30秒間の変性、56℃で30秒間のアニーリング、68℃で2分間の重合を30回繰り返した後、68℃で7分間重合反応を行った。その結果、BamHI制限酵素の認識部位を含有した約1.5kbの増幅されたaspC遺伝子を獲得した。
【0091】
前記PCRを行って獲得したaspC遺伝子の末端に制限酵素BamHIを処理し、制限酵素BamHIで処理されたpSG76cベクターに接合することにより、最終的に2copyのaspC遺伝子がクローニングされたpSG76c−2aspC組み換えベクターを作製した。
【0092】
(3)asd挿入用pSG76cベクターの作製
本実施例では、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aspartate-semialdehyde dehydrogenase)をコードするasd遺伝子を含むE.coliの染色体DNAを挿入用ベクターであるpSG76c−2asdを作製した。
【0093】
アメリカ国立衛生研究所の遺伝子銀行を根拠にasd遺伝子の塩基配列情報(NCBI登録番号gi:89110578)を確保し、これに基づいてasd遺伝子の−200部分からasd ORFを含有し、制限酵素EcoRI、XbaIを含有しているプライマー(配列番号25、配列番号26)とXbaIとEcoRIを含有しているプライマー(配列番号27、配列番号28)を合成した。
【0094】
<配列番号25>
5' ccggaattcc caggagagca ataagca 3'
<配列番号26>
5' ctagtctaga tgctctattt aactcccg 3'
<配列番号27>
5' ctagtctaga ccaggagagc aataagca 3'
<配列番号28>
5' ccggaattct gctctattta actcccg 3'
【0095】
大腸菌W3110の染色体DNAを鋳型とし、前記配列番号25、26と配列番号27、28のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った。重合酵素はPfuUltraTM高−信頼DNAポリメラーゼ(Stratagene)を使用し、PCR条件は、 96℃で30秒間の変性;50℃で30秒間のアニーリング;及び68℃で2分間の重合反応を30回繰り返した。その結果、EcoRI、XbaIそしてXbaI、EcoRI制限酵素認識部位を含有した約1.5kbの増幅されたasd遺伝子を獲得した。
【0096】
前記PCRを行って獲得したasd遺伝子の末端に含まれた制限酵素EcoRIそしてXbaIを処理し、制限酵素EcoRIで処理されたpSG76cベクターに接合することにより、最終的に2copyのasd遺伝子がクローニングされたpSG76c−2asd組換えベクターを作製した。
【0097】
実施例4:野生型ベース親菌株の作製
(1)ppc、aspC、asd遺伝子強化
前記実施例3−5で作製したpSG76c−2ppc、pSG76c−2aspC、pSG76c−2asdベクターを用いて、米国生物資源センター から購入した大腸菌W3110菌株(寄託番号ATCC9637)に形質転換して、LB−Cm(酵母エキス10g/L、NaCl 5g/L、Tryptone 10g/L、クロラムフェニコール 25μg/L、寒天 15g/L)プレート培地に塗抹した後、クロラムフェニコール耐性を有するコロニーを選抜した。選別された形質転換体は、pSG76c−2ppcベクターが誘電体のppcの部分に一次で挿入された菌株である。
【0098】
確保された2copyのppc遺伝子が挿入された菌株は、pSG76cベクター内に存在するI−SceIの部分を切断する制限酵素I−SceIを発現するベクターであるpST76−AscePを形質転換し、LB−Ap(酵母エキス10g/L、NaCl 5g/L、Tryptone 10g/L、アンピシリン 100μg/L、寒天15g/L)プレート培地に塗抹し、30℃で生長する菌株を選別した。
【0099】
このように成長した菌株は、ppc遺伝子が2copyに増幅されたり、最初の1 copyに戻ることができるが、配列番号30、配列番号31のプライマーを用いてPCRを行い、1%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが6.5kbと大きくなった2copy ppc菌株を選別した。前記過程を経ると、ppc遺伝子がさらに挿入され、pSG76cベクターが削除されるようになる。
【0100】
前記のような方法でpSG76c−2aspC、pSG76c−2asdベクターを用いて順番にw3110菌株にppc、asd、aspCが2copyに増幅された菌株を作製した。この過程でaspC 2copy作製は、配列番号32、配列番号33でPCRを行い、1%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが3.2kbに大きくなったことにより確認でき、asd 2copyの制作は、配列番号34、配列番号35でPCRを行い、1%のアガロースゲル上で遺伝子の大きさが3.2kbに大きくなったことにより確認することができた。このように作製された菌株をCJW2と命名した。
【0101】
<配列番号30>
CTGGCTCAATTAATCAGGCTC
<配列番号31>
CGAGGGTGTTAGAACAGAAGT
<配列番号32>
TGGTGAACTACTTTGAAGTGG
<配列番号33>
TGCGGCACGAGCGCCTTATCC
<配列番号34>
GCTCGTAGGCTAAGAAATGCC
<配列番号35>
CAGGTAAGGCTGTGAATACTC
【0102】
(2)metB、thrB及びmetA遺伝子の欠損
前記方法で作製されたCJW2菌株を用いて前記実施例3−1と同様の方法でmetB、thrB及びmetA遺伝子が欠損した菌株を作製し、CJW2Hと命名した。CJW2Hは菌株内にホモセリンが過量で蓄積され、導入されるプラスミドのmetX基質特異性によりO−アセチルホモセリンまたはO−スクシニルホモセリンを生産することができる菌株である。
【0103】
実施例5:実験菌株の作製
(1)菌株の作製
前記実施例1−(3)及び4−(2)で作製された大腸菌CJM2とCJW2H菌株をコンピテントセル(competent cell)として作製し、コンピテントセルに電気穿孔方法(electroporation)で、実施例3−1、3−2、3−3、3−4で作製されたpCL_Pcj1_metA(wt)、pCL_Pcj1_metA#11、pCL_Pcj1_dra metX、pCL_Pcj1_cvi metXの4種のプラスミドをそれぞれ導入した。
【0104】
(2)フラスコ培養実験
その後、4種のプラスミドが導入されたそれぞれの菌株が生産するメチオニン前駆体の種類と生産量を比較するためにフラスコのテストを行った。フラスコのテストは、それぞれの菌株をLBプレートでストリーキング(streaking)し、31℃の培養器に16時間培養した後、単一コロニーをLB培地3mlに接種した後、200rpm/31℃の培養器で16時間培養することにより行った。
【0105】
250mlのフラスコに、下記表1のメチオニン前駆体生産培地25mlを入れ、先に培養した培養液を500μlずつ投入した。その後、フラスコを200rpm/31℃の培養器で40時間培養した後、HPLCを用い、それぞれのプラスミドが導入された菌株から得られるメチオニン前駆体の種類及び量を比較し、その結果を下記表2及び表3に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
その結果、前記表2及び表3によると、E.coli野生型metA遺伝子及びフィードバック阻害に耐性を有するmetA#11遺伝子をそれぞれ含む菌株であるCJM2 pCL_Pcj1_metA(wt)、CJM2 pCL_Pcj1_metA#11、CJW2H pCL_Pcj1_metA(wt)及びCJW2H pCL_Pcj1_metA#11によってはO−スクシニルホモセリンが生産され、それぞれのデイノコッカス・ラディオデュランス由来のmetX遺伝子を含む菌株であるCJM2 pCL_Pcj1_dra metX及びCJW2H pCL_Pcj1_dra metXによってはO−アセチルホモセリンが生産されたことが分かった。
【0110】
クロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子の場合は、metA遺伝子に比べて、他のmetX相同遺伝子(orthologues)と高い相同性(homology)を有するが、基質特異性の面では、一般的に報告されたmetX遺伝子とは異なり、スクシニルホモセリンを生産するホモセリンスクシニルトランスフェラ−ゼであることが分かる。
【0111】
また、E.coli野生型metA(wt)遺伝子が導入された場合は、培地に添加される0.3g/Lのメチオニンによるフィードバック阻害現象によりO−スクシニルホモセリンが約1g/L程度生成される現象を示すが、クロモバクテリウム・ビオラ
セウム由来のmetX遺伝子が導入された場合は、遺伝子変異の導入なしに野生型そのものでも、培地に添加されたメチオニンによるフィードバック阻害現象を起こさずにO−スクシニルホモセリンが生産されることが分かった。
【0112】
pCL_Pcj1_cvi metXが導入されたCJM2菌株(CJM2 pCL_Pcj1_cvi metX)を2013年06月20日付で韓国ソウル特別市西大門区弘済1洞361−221番地に所在するブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国種菌協会付設韓国微生物保存センターに受託番号KCCM11433Pとして寄託した。
【0113】
(3)大型発酵槽培養実験
CJM2 pCL_Pcj1_cvi metX及びCJW2H pCL_Pcj1_cvi metX菌株を用いてメチオニン前駆体であるO−スクシニルホモセリンを大量生産するために5Lの発酵槽培養を行った。
【0114】
スペクチノマイシン抗生剤が含有された平板LB培地にCJM2 pCL_Pcj1_cvi metX及びCJW2H pCL_Pcj1_cvi metX菌株を接種して31℃で一晩培養した。その後、単一のコロニーをスペクチノマイシンが含まれた10mlのLB培地に接種した後、31℃で5時間培養し、この培養液2mlを再び200mlのシード(Seed)培地を含む1000mlの三角フラスコに接種した。そして、再び31℃、200rpmで3〜10時間培養した後、シード培養液255mlを5Lの発酵槽の主培地1.7Lに接種して流加式培養(Fed batch)発酵法でシード培地を1.3L消費させて50〜100時間培養した。
【0115】
培養過程で使用した詳細な培地成分を下記表4に示す。このように培養した発酵液からO−スクシニルホモセリンの濃度をHPLCで分析し、その結果を下記表5に示した。
【0116】
【表4】
【0117】
【表5】
【0118】
前記表5に示したように、トレオニン生産菌株を親菌株にしてクロモバクテリウム・ビオラセウム由来のmetX遺伝子が導入された菌株であるCJM2 pCL_Pcj1_cvi metXは、高レベルでO−スクシニルホモセリンを蓄積することが分かった。
【0119】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形で実施されうることを理解できるであろう。これに関連し 、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。本発明の範囲は前記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0120】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]