(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388941
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】ビタミンD代謝物を測定するための25−OHビタミンD誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 495/04 20060101AFI20180903BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20180903BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20180903BHJP
C07C 33/14 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
C07D495/04 103
G01N33/53 H
G01N33/53 U
G01N33/543 511D
!C07C33/14CSP
【請求項の数】23
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-532339(P2016-532339)
(86)(22)【出願日】2014年8月1日
(65)【公表番号】特表2016-532695(P2016-532695A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】EP2014066620
(87)【国際公開番号】WO2015018757
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2017年4月25日
(31)【優先権主張番号】102013215580.8
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502057669
【氏名又は名称】オルゲンテック ディアグノスティカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴキッチ ソスキッチ
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ポッペ
【審査官】
三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−503641(JP,A)
【文献】
特開2010−053118(JP,A)
【文献】
特表2002−506429(JP,A)
【文献】
Journal of the Chemical Society,1960年,pp.5176-5179
【文献】
Steroids,2000年,Vol.65,pp.281-294
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
C07B 31/00− 61/00
C07D201/00−521/00
G01N 33/48− 33/98
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
[式中、
Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルキル基、またはヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルケニル基であり、
Lは、リンカーであり、かつ
Wは、
色素、酵素、電気化学的に検出可能な基および発光基から選択される直接的に検出可能な標識基であるか、あるいはビオチン、炭水化物構造および親和性タグから選択される間接的に検出可能な標識基である]
による構造を有するビタミンD化合物。
【請求項2】
Lが、C原子、および任意にヘテロ原子、例えばN、Oおよび/またはSから選択される6〜110個の原子の鎖長を有するリンカーである、請求項1に記載のビタミンD化合物。
【請求項3】
Lが、C原子、および任意にヘテロ原子、例えばN、Oおよび/またはSから選択される8〜80個、12〜60個または30〜50個の原子の鎖長を有するリンカーである、請求項1に記載のビタミンD化合物。
【請求項4】
Lが、
式(II)
【化2】
[式中、
【化3】
Yは、−O−、または−CH2−であり、
R1およびR2は、互いに独立して、H、またはC1〜C6アルキルであり、かつ
mは、1〜30であり、かつ
nは、1〜12であり、
その際、Q1と前記基Wとが結合しており、かつQ2と式(I)によるビタミンD化合物の基体とが結合しており、かつ
【化4】
はそれぞれ、Q2と前記ビタミンD化合物の基体との結合箇所か、またはQ1と前記基Wとの結合箇所を示す]
による構造により表されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Yが、−O−であることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
【化5】
Yが、−O−であり、
R
1およびR
2が、互いに独立して、H、またはC
1〜C
6アルキルであり、mが、1〜30であり、かつ
nが、1〜12であることを特徴とする、請求項
4または5に記載の化合物。
【請求項7】
R1およびR2が、Hである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Rが、ヒドロキシ基を有するビタミンD側鎖を表す、請求項1から7までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
Rが、
式(III)
【化6】
による構造、または式(IV)
【化7】
による構造を表すことを特徴とする、請求項1から
8までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
式(Ib)
【化8】
または式(Ic)
【化9】
による構造を有する、請求項1から
9までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1から
10までのいずれか1項に記載の化合物の製造方法であって、以下のステップ:
(a)式(V)
【化10】
[式中、
Rは、請求項1から
9までのいずれか1項に定義されている通りである]
による構造を有する化合物のC−3原子のヒドロキシ基上で求核置換反応を行い、その際、前記ヒドロキシ基をC−3立体中心上での立体配置の反転下に基Xで置換することにより、式(VI)
【化11】
[式中、
Rは、請求項1から
9までのいずれか1項に定義されている通りであり、かつ、Xは、保護されていてもよいヒドロキシ基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよい第1級アミノ基、または保護されていてもよい第2級アミノ基である]
による構造を有する化合物を取得するステップ、
(b)標識基Wを、リンカーを介して前記式(VI)による構造を有する化合物の基Xに結合させることにより、式(I)による構造を有する化合物を取得するステップ
、この場合、前記標識基Wは、色素、酵素、電気化学的に検出可能な基および発光基から選択される直接的に検出可能な標識基であるか、あるいはビオチン、炭水化物構造および親和性タグから選択される間接的に検出可能な標識基である、
を含む、前記方法。
【請求項12】
サンプル中のビタミンDを定量的に測定するためのインビトロ法であって、請求項1から10までのいずれか1項に記載の化合物をトレーサーとして使用し、その際、検査すべきサンプルが生物学的液体である、前記インビトロ法。
【請求項13】
前記生物学的液体が、血液、血清、血漿または乳汁から選択される、請求項12に記載のインビトロ法。
【請求項14】
以下のステップ:
a)ビタミンDを含むサンプルを前記トレーサーと接触させるステップ、
b)前記トレーサーの検出量から前記サンプル中のビタミンDの総濃度を推定することができる条件下で、前記トレーサーを定量的に測定するステップ
を含み、その際、前記トレーサーの測定を免疫学的方法により行うことを特徴とする、請求項12または13に記載のインビトロ法。
【請求項15】
前記トレーサーの測定を競合的免疫学的方法により行うことを特徴とする、請求項14に記載のインビトロ法。
【請求項16】
前記トレーサーの測定のために抗体を使用し、前記抗体が前記側鎖Rを特異的に認識することを特徴とする、請求項14または15に記載のインビトロ法。
【請求項17】
前記抗体がC25上にヒドロキシ基を有するビタミンD3またはビタミンD2側鎖を特異的に認識することを特徴とする、請求項16に記載のインビトロ法。
【請求項18】
前記トレーサーを、前記サンプルに、前記化合物の最終濃度が0.2〜100ng/mlに調整される量で添加することを特徴とする、請求項12から17までのいずれか1項に記載のインビトロ法。
【請求項19】
測定すべきビタミンDがC−25上にヒドロキシ基を有し、かつ、25−ヒドロキシビタミンD3、25−ヒドロキシビタミンD2、1,25−ジヒドロキシビタミンD3、1,25−ジヒドロキシビタミンD2およびその混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項12から18までのいずれか1項に記載のインビトロ法。
【請求項20】
前記ビタミンDが25−ヒドロキシビタミンD3および/または25−ヒドロキシビタミンD2であることを特徴とする、請求項19に記載のインビトロ法。
【請求項21】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の化合物を含み、場合によっては結合されたビタミンDを遊離させるための試薬、および任意に希釈剤、担体、溶媒、補助剤、安定剤、保存剤および/または分散剤をさらに含む、ビタミンD測定用試薬。
【請求項22】
ビタミンDを請求項12から20までのいずれか1項に記載のインビトロ法で測定するための、請求項1から10までのいずれか1項に記載の化合物、または請求項21に記載の試薬の使用。
【請求項23】
請求項1に記載の式(I)による構造を有する化合物か、あるいは請求項10に記載の式(Ib)または式(Ic)による構造を有する化合物を製造するための、式(VI)
【化12】
[式中、
Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルキル基、またはヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルケニル基であり、かつ
Xは、NHR
3、OH、またはSHであり、
その際、R
3は、HまたはC
1〜C
6アルキルである]
による構造を有する化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C−3立体中心上でリンカーを介して標識基に結合されている新規のビタミンD化合物に関する。本発明はさらに、前記ビタミンD化合物の製造方法および前記化合物を製造するための中間生成物の使用にも関する。
【0002】
本発明のもう1つの対象は、本発明によるビタミンD化合物をトレーサーとして使用してビタミンDを定量的に測定するための方法である。さらに本発明は、本発明による化合物を含むビタミンD測定用試薬、およびビタミンDを測定するための前記試薬の使用に関する。
【0003】
ヒトにはビタミンDの十分な供給が不可欠である。ビタミンDの最も一般的な生理学的形態は、ビタミンD
3またはビタミンD
2である。ビタミンD
3(コレカルシフェロール)の極めて重要な生理活性誘導体は、25OHD3(25−ヒドロキシビタミンD
3またはカルシジオール)および1,25−(OH)
2D
3(1α,25−ジヒドロキシビタミンD
3またはカルシトリオール)である。一般的に、大部分のビタミンD
3は他のビタミンのように食品で摂取されるのではなく、皮膚におけるUV光の作用下に生成される。これに関して、7−ジヒドロキシコレステロールがUV照射によりプロビタミンD
3に転化され、その際、不安定な中間生成物が再構成されてビタミンD
3となる。食品では、ビタミンD
3は特に脂肪分の多い魚に含まれている。体内での生成が可能なビタミンDのもう1つの形態はビタミンD
2(カルシフェロールまたはエルゴカルシフェロール)であり、これは真菌において生成され、かつ食品での摂取が可能である。十分な量のビタミンDのもう1つの供給源は、ビタミンD
3剤およびビタミンD
2剤である。
【0004】
ビタミンDおよびその天然の誘導体は、極めて疎水性の高い分子である。血液中では、ビタミンDの運搬はビタミンD結合タンパク質(DBP)との複合体において行われる。DBPはアルブミンファミリーに属し、かつビタミンD、ビタミンD代謝物および脂肪酸を結合する。
【0005】
肝臓では、ビタミンDは、シトクロムP450によってC−25の位置で酸化される。生じる25OHD(25−ヒドロキシビタミンD
3または25−ヒドロキシビタミンD
2)は、主に循環中に存在するビタミンD代謝物である。血清中の25OHDの濃度は、ヒトのビタミンDの状態を評価するための指標としての役割を果たす。
【0006】
腎臓および他の組織においては、25OHDから、ビタミンDの生理活性形態である1,25(OH)
2Dへの転化が行われる。この1,25(OH)
2Dは、ビタミンD受容体(VDR)への結合後にビタミンD応答配列(VDRE)遺伝子活性を制御する。
【0007】
ビタミンDの十分な供給は、正常な骨の強化、並びにカルシウムおよびリン酸塩吸収の調節にとって重要である。1,25(OH)
2DによるVDRの活性化によって腸のカルシウム吸収の効率は約30%上昇し、かつリン酸塩吸収は約80%上昇する。25OHDの血清濃度が30ng/ml未満に低下した場合、これによって腸内でのカルシウム吸収が明らかに減少し、かつパラチロイドホルモン濃度が増加する。ビタミンDの欠乏は骨折リスクの増大を伴う骨粗鬆症の本質的な要因であると考えられ、かつ他の健康上のリスクと関連している。血清中のビタミンD濃度が食物摂取および日光曝露に依存して大きく変動するのに対して、25OHDの血清濃度はビタミンD供給の状態を調べるための良好な指標の一つであると考えられる。従って、血清中の25OHD濃度の測定は医療診断において日常的に行われている。
【0008】
血清中の25OHDの測定は、好ましくは競合的結合分析によって行われる。この場合、サンプルの25OHD濃度は、ビタミンD結合タンパク質、例えば25OHD特異的抗体からの放射性標識または化学標識されたビタミンD誘導体の排除により決定される。その際、この競合的結合アッセイにおいてトレーサーとして使用される標識されたビタミンD誘導体は、このアッセイで使用されるビタミンD結合タンパク質に高い親和性および特異性でもって結合しなければならない。
【0009】
DE69713138(Immundiagnostic Systems Ltd.)には、イムノアッセイにおいてトレーサーとして使用することができる、C20位で放射性変性された1,25−ジヒドロキシビタミンD誘導体が記載されている。
【0010】
US5,116,573(呉羽化学工業株式会社)には、C19位およびC6位で重水素またはトリチウムで標識されたビタミンD誘導体が記載されている。
【0011】
また、ビタミンD3およびビタミン誘導体の3β−ヒドロキシ基を非放射性標識基の導入に使用することもでき、その際、このヒドロキシ基は変性されてエステル架橋またはエーテル架橋となる。しかしながら、ハプテン標識されたエステル誘導体に基づくビタミンDトレーサーの有用性は、例えばpH7を上回るpH値におけるエステル架橋の不安定性や、生物学的液体および組織内でしばしば生じるエステラーゼに対するその感受性により、非常に限定的である。この問題を解決するために、ヒドロキシ基を3β−アミノプロピルエーテル誘導体に転化するための方法が開発された(Roy, A. und Ray, R., Steroids. 1995, 60: 530−533, US6291693: Holick, M.F. and Ray, US6787660: Armbruster, M.P. et al., US20080317764: Huber, E. et al., US8003400: Kobold, U.)。
【0012】
しかしながら、従来技術において記載されているビタミンD誘導体の製造方法および競合的結合アッセイにおけるトレーサーとしてのその使用は、多くの欠点を有している。放射性標識されたビタミンDトレーサーは寿命が比較的短く、かつ安定性が低い。健康および環境に関する根本的な欠点に加えて、放射性試薬の場合には貯蔵、輸送および廃棄のためのコストが高まる。
【0013】
3β−ヒドロキシ基上で変性されたビタミンD誘導体は、合成法に非常に手間がかかるという欠点、そして、可燃性が高くかつ攻撃的な試薬を厳密に嫌気的な条件下に使用しなければならないという欠点を有する。その上、この化合物は生理的条件下では部分的に安定性が低く、このことによって生物学的起源のサンプルにおけるその使用は極めて制限される。
【0014】
ビタミンDの測定に用いられるトレーサーは、合成により容易に入手でき、健康を害する可能性のある検出用の標識基を含まず、かつ自動化可能な試験法における使用に適していることが望ましい。
【0015】
従って本発明の課題は、標識されたビタミンD誘導体の合成における従来の問題を解決し、かつビタミンDを定量的に測定するための自動化された方法におけるトレーサーとしての使用に適した、標識されたビタミンD化合物を提供することである。
【0016】
従来技術に記載された標識されたビタミンD化合物並びにその製造の制限および欠点が、本発明により少なくとも部分的に解消される。
【0017】
本発明は、ビタミンDを測定するための試験方法におけるトレーサーとして適しており、かつ単純でかつ短い経路を経て合成により入手可能である、標識されたビタミンD化合物を提供する。
【0018】
驚くべきことに、C−3原子上のヒドロキシル基の求核置換によって、標識基をビタミンD基体に導入できることが見出された。この場合、C−3原子上で立体配置の反転が生じる。それにもかかわらず、得られるC−3原子上でα−立体配置の標識基を有する化合物は、競合的ビタミンD測定法におけるトレーサーとして、驚くべきことに抜群に適している。C3上での反転立体配置は、特にそれに付随して生じる、例えば血液のような生物学的液体中での例えばエステラーゼに対する安定性の向上に基づき、有利である。
【0019】
本発明は、新規のトレーサー、およびビタミンD、特に25−ヒドロキシビタミンD
3または25−ヒドロキシビタミンD
2の濃度を測定するための信頼性の高い自動化可能な方法を提供する。
【0020】
従って本発明の第1の態様は、式(I)
【化1】
[式中、
Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルキル基、またはヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルケニル基であり、
Lは、リンカーであり、かつ
Wは、ビタミンD化合物ではない標識基である]
による構造を有するビタミンD化合物に関する。
【0021】
「C
2〜C
10アルキル」という用語は、2〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。この概念には、例えばエチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、2−オクチル、3−オクチル、イソ−オクチル、n−ノニル、2−ノニル、3−ノニル、4−ノニル、イソ−ノニル、n−デシル、イソ−デシル、2−デシル、および3−デシルといった基が含まれる。各水素原子は重水素原子で置換されていてもよい。
【0022】
「C
2〜C
10アルケニル」という用語は、2〜10個の炭素原子を有するアルケニル基を表す。これらは直鎖状であっても分岐状であってもよく、かつZ型で存在していてもE型で存在していてもよい。そのような基には、ビニル、プロペニル、1−ブテニル、イソ−ブテニル、2−ブテニル、1−ペンテニル、(Z)−2−ペンテニル、(E)−2−ペンテニル、(Z)−4−メチル−2−ペンテニル、(E)−4−メチル−2−ペンテニル、ペンタジエニル、例えば1,3−または2,4−ペンタジエニル、(E)−5,6−ジメチルヘプト−3−エニル、および(Z)−5,6−ジメチルヘプト−3−エニルが含まれる。各水素原子は重水素原子で置換されていてもよい。
【0023】
「標識基」という用語は、物理的、化学的および/または生化学的方法により検出可能であり、かつ標識される分子の使用との相容性を示し、かつ特に非放射性である基を表す。この場合、これは式(I)による構造を有するビタミンD化合物ではない。
【0024】
「リンカー」という用語は、式(I)によるビタミンD骨格と標識基とを結合する分子スペーサーを表す。
【0025】
一実施形態においては、前記リンカーは、C原子、および任意にヘテロ原子、例えばN、Oおよび/またはSから選択される6〜110個の原子の鎖長を有することを特徴とする。前記鎖長は、好ましくは原子8〜80個、12〜60個、または30〜50個の長さである。前記リンカー中に任意に含まれるヘテロ原子は、好ましくはNおよび/またはOである。
【0026】
一実施形態においては、前記リンカーは、式(II)
【化2】
[式中、
【化3】
Yは、−O−、または−CH
2−であり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、H、またはC
1〜C
6アルキルであり、かつ
mは、1〜30であり、かつ
nは、1〜12であり、
その際、Q
1と前記基Wとが結合しており、かつQ
2と式(I)によるビタミンD化合物の基体とが結合しており、かつ
【化4】
はそれぞれ、Q
2と前記ビタミンD化合物の基体との結合箇所か、またはQ
1と前記基Wとの結合箇所を示す]
により表される。各水素原子は重水素原子で置換されていてもよい。
【0027】
「C
1〜C
6アルキル」という用語は、1〜6個の炭素原子、特に1〜3個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。これらの基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシルおよびイソ−ヘキシルが含まれる。各水素原子は重水素原子で置換されていてもよい。
【0028】
好ましい実施形態は、以下のことを特徴とする:
【化5】
Yは、−O−、または−CH
2−であり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、H、またはC
1〜C
6アルキルであり、かつ
mは、1〜30であり、かつ
nは、1〜12であるか、
または、
【化6】
Yは、−O−、または−CH
2−であり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、H、またはC
1〜C
6アルキルであり、かつ
mは、1〜30であり、かつ
nは、1〜12である。
【0029】
もう1つの好ましい実施形態は、以下のことを特徴とする:
【化7】
Yは、−O−であり、
R
1およびR
2は、互いに独立して、H、またはC
1〜C
6アルキルであり、特にHであり、
mは、1〜30であり、かつ
nは、1〜12である。
【0030】
式(II)によるリンカーにおける基Yは、好ましくは−O−である。
【0031】
他の好ましい一実施形態においては、前記ビタミンD化合物は、式(Ia)
【化8】
[式中、
Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルキル基、またはヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルケニル基であり、
mは、1〜30であり、かつ
Wは、ビタミンD化合物ではない標識基である]
による構造を有する。
【0032】
もう1つの好ましい実施形態においては、前記ビタミンD化合物は、式(Ib)
【化9】
または式(Ic)
【化10】
による構造を有する。
【0033】
前記標識基Wは、一方では直接的に検出可能な基であることができ、また他方では間接的に検出可能な基であることができ、例えば相補的に検出可能な結合パートナーとの結合により検出可能な基であることができる。
【0034】
直接的に検出可能な基とは、例えば色素、酵素、電気化学的に検出可能な基、または例えば光学的方法により検出可能な発光基、例えば蛍光基、燐光基若しくは化学発光基である。
【0035】
電気化学的に検出可能な基とは、反応パートナーと電子移動反応を生じうる基と理解されるべきであり、その際、電子は一方の反応パートナーから他方の反応パートナーへと移動する。前記検出可能な基が還元されかつ前記反応パートナーが酸化されるか、または前記検出可能な基が酸化されかつ前記反応パートナーが還元されるかのいずれかである。
【0036】
蛍光基とは、励起後に、予め吸収されたエネルギーよりも低いエネルギーの光を自発的に発する蛍光色素であると理解されるべきである。好ましくは、前記蛍光基は、色素、例えばフルオレセイン、ローダミン、スチルベン、蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)および赤色蛍光タンパク質(RFP)、クマリン、キニーネ、アロフィコシアニン、合成蛍光ラベル、または合成蛍光マーカー、例えばATTO染料(ATTO−TEC GmbH、Siegen)、Alexa−Fluor(分子プローブ、Invitrogen Corp.、Carlsbad)およびシアニン、例えばCy3、Cy5およびCy7、並びにその誘導体である。
【0037】
燐光基とは、励起後に比較的長期間にわたって発光し、それにより1秒未満ないし数時間の残光が生じる化学基であると理解されるべきである。
【0038】
化学発光基とは、化学反応によって可視光領域または赤外領域の電磁放射線を放出する化学基である。化学発光標識には、ルミノール、アクリジニウムエステルおよびポリヒスチジン標識が含まれる。
【0039】
間接的に検出可能な基は、例えば、標識されたアビジンまたはストレプトアビジンにより検出可能なビオチン、標識された特異的抗体により検出可能な抗原およびハプテン、レクチンにより検出可能な炭水化物構造、または親和性タグである。
【0040】
ビオチニルという用語には、ビオチニル誘導体がストレプトアビジンまたはアビジンに結合する限り、このビオチニル誘導体も含まれる。
【0041】
好ましい一実施形態においては、Wは、ビオチニル、蛍光基または化学発光基である。
【0042】
他の好ましい一実施形態においては、Wは、ビオチニルである。
【0043】
前記基Rは、好ましくはビタミンD側鎖であり、特にOH基を有するビタミンD側鎖であり、例えば式(III)
【化11】
による構造、または式(IV)
【化12】
による構造である。
【0044】
特に好ましくは、Rは式(III)による構造を有する。
【0045】
第2の態様には、式(I)による構造を有するビタミンD化合物の製造方法であって、以下のステップ:
(a)式(V)
【化13】
[式中、
Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルキル基、またはヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルケニル基である]
による構造を有する化合物のC−3原子のヒドロキシ基上で求核置換反応を行い、その際、前記ヒドロキシ基をC−3立体中心上での立体配置の反転下に基Xで置換することにより、式(VI)
【化14】
[式中、
Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルキル基、またはヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルケニル基であり、かつ、Xは、保護されていてもよいヒドロキシ基、保護されていてもよいチオール基、保護されていてもよい1級アミノ基、または保護されていてもよい2級アミノ基である]
による構造を有する化合物を取得するステップ、
(b)ビタミンD化合物ではない標識基Wを、リンカーを介して前記式(VI)による構造を有する化合物の基Xに結合させることにより、式(I)による構造を有する化合物を取得するステップ
を有する、前記方法が含まれる。
【0046】
ステップ(a)において実施される求核置換反応には、好ましくは、アルコール(V)と、アルキルホスフィン、例えばトリ−n−ブチルホスフィンまたはアリールホスフィン、例えばトリフェニルホスフィンまたはジフェニル(2−ピリジル)ホスフィン、アルキルアゾジカルボキシレート、例えばジエチルアゾジカルボキシレートまたはジイソプロピルアゾジカルボキシレートと、求核性基X、好ましくは弱酸性の求核性基とを、適した溶媒中で、例えばテトラヒドロフランまたはジエチルエーテル中で反応させることが含まれる。
【0047】
前記求核性基Xは、保護された形態で導入されてもよいし、遊離形態で導入されてもよい。好ましくは、前記基X基は保護された形態で導入される。
【0048】
「保護された」形態とは、当業者によく知られている、例えば官能基に応じて適した保護基を有する前駆体基を意味し、その際、この保護された形態を、従来技術において知られている方法により、相応する保護されていない基に変換することができる。
【0049】
前記基Xを導入するための化合物は、好ましくは、イミド、アミン、アジ化水素酸、カルボン酸、アルコール、チオール、チオカルボン酸またはその塩を含む群から選択される。前記化合物は、好ましくはイミド、アミンまたはアジ化水素酸であり、より好ましくはイミドまたはアジ化水素酸であり、最も好ましくはフタルイミドまたはその塩である。これらの基を、必要に応じて、当業者に知られている相応する方法によって脱保護し、相応するヒドロキシ基、チオール基、第1級アミノ基または第2級アミノ基にすることができる。例えば、フタルイミドを、適当な溶媒中の第1級アミン、例えばメチルアミンまたはヒドラジンにより、相応する第1級アミンに変換することができる。
【0050】
前記基Rは、好ましくはビタミンD側鎖であり、好ましくはOH基を有するビタミンD側鎖であり、例えば式(III)による構造、または式(IV)による構造である。
【0051】
式(VI)による構造を有する化合物中の基Xへの上記で定義されたリンカーを介した上記で定義された標識基Wのステップ(b)における結合は、当業者に知られている方法により行われる。好ましくは、すでに標識基Wと結合しているリンカーが前記基Xに結合される。この場合、好ましくは、前記リンカーは、Xと反応する基、例えば脱離基、例えばN−ヒドロキシスクシンイミジルを有し、この基は前記基Xで置換されることができ、それにより前記基Xは前記リンカーと結合され、それにより式(I)による構造を有する化合物が生成される。
【0052】
本発明の第3の態様は、トレーサーとしての式(I)による構造を有する化合物を用いた、サンプル中のビタミンDを定量的に測定するためのインビトロ法に関する。
【0053】
「トレーサー」という用語は、直接的に検出可能であるかまたは間接的に検出可能である基を有する化合物を表し、例えば相補的に検出可能な結合パートナーとの結合により検出可能な基を有する化合物を表す。好ましくは、前記検出は化学的、物理的または生化学的方法を用いて行われ、好ましくは物理的方法および生化学的方法を用いて、例えば分光法または免疫学的アッセイを用いて行われる。
【0054】
別段の記載がない限り、「ビタミンD」という用語には、ビタミンD2骨格、またはビタミンD3骨格、または構造式(VII)若しくは(VIII)によるビタミンD3骨格を有する、全ての天然に存在する化合物が含まれる。
【0055】
【化15】
【0056】
構造式(VII)および(VIII)中の炭素原子の番号付けは、ステロイド命名法に従って示されている。25−ヒドロキシビタミンDは、構造式(VII)または(VIII)の25位でヒドロキシル化されているビタミンD代謝物、すなわち25−ヒドロキシビタミンD
2および25−ヒドロキシビタミンD
3を表す。他のヒドロキシビタミンD化合物は、例えば1,25−ジヒドロキシビタミンDまたは24,25−ジヒドロキシビタミンDである。
【0057】
1,25−ジヒドロキシビタミンDは、構造式(VII)および(VIII)の1位および25位でヒドロキシル化されているビタミンDの活性形態(いわゆるDホルモン)を表す。
【0058】
他のよく知られたビタミンD化合物は、24,25−ジヒドロキシビタミンD2、24,25−ジヒドロキシビタミンD3、およびC3−エピ−25−ヒドロキシビタミンDである。
【0059】
一実施形態においては、前記インビトロ法は以下のステップを含む:
(a)ビタミンDを含むサンプルをトレーサーと接触させるステップ、
(b)前記トレーサーの検出量から前記サンプル中のビタミンDの総濃度を推定することができる条件下で、前記トレーサーを定量的に測定するステップ。
【0060】
ステップ(a)におけるビタミンDは遊離形態で存在することができる。他の一実施形態においては、ビタミンDは結合された形態で存在し、かつステップ(a)はさらに、結合されたビタミンDの遊離を含む。
【0061】
「結合されたビタミンDの遊離」という用語は、タンパク質、特にDBP(生物学的サンプル中でビタミンDはこのタンパク質に結合していることができる)との複合体からのビタミンDの完全なまたは部分的な分離を意味する。好ましくは、実質的に、サンプル中に存在する全てのビタミンDが遊離される。本明細書において、「実質的に」とは、ビタミンDの少なくとも90%、95%、98%、好ましくは少なくとも99%が遊離されることを意味する。
【0062】
適した遊離剤は当業者によく知られており、有機物質、例えばパモ酸、または8−アニリノ−1−ナフタレンスルホン酸(8−ANS)、無機物質、例えばアルカリ塩基を、還元剤または生化学的物質、例えばセリンプロテイナーゼKと組み合わせたものが含まれる。
【0063】
特に適しているのは、少なくとも1種のハイドロトロープ物質、例えばトルエンスルホン酸、少なくとも1種の遷移金属塩、例えば鉄(III)塩、例えば塩化鉄(III)またはクエン酸鉄(III)、および場合により錯化剤、例えばクエン酸塩、EDTAおよび/またはその塩を含む遊離試薬であり、例えばDE102013205055.0に記載されているものである。
【0064】
ステップ(b)による前記ビタミンDの測定は、時間的にステップ(a)の後に、またはステップ(a)と一緒に行うことができる。好ましくは、ステップ(b)はステップ(a)と同時に行われ、それにより、サンプル中のビタミンDを測定するためのワンステップ法が提供される。
【0065】
ステップ(b)におけるビタミンDの総濃度の測定は、好ましくは免疫学的方法におけるトレーサーの測定により行われ、その際、前記トレーサーが免疫学的パートナーに結合し、それにより免疫複合体が形成される。「免疫学的結合パートナー」という用語には抗体が含まれる。
【0066】
特に好ましくは、ステップ(b)においてビタミンDの濃度を測定するために、競合的免疫学的方法が使用される。
【0067】
適した競合試験形式は、当業者によく知られている。典型的な競合的結合アッセイにおいては、トレーサー、すなわちビタミンDの標識された形態を有する受容体または抗体と、試験されるべきサンプルとが接触される。その場合、受容体または抗体に結合された状態で検出されるトレーサーの量が、サンプル中の未標識のビタミンDの含分の指標となる。あるいは、競合的結合アッセイは、トレーサーに結合された受容体または抗体と試験されるべきサンプルとを接触させ、排除されたトレーサーの量を測定し、これがサンプル中のビタミンDの量の指標となることを含む。前記トレーサーは上記で定義された標識基を有し、これは特にビオチニル、上記で定義されている通りの蛍光基または化学発光基から選択される。
【0068】
最も好ましい実施形態においては、ビオチン標識トレーサーが使用され、かつ検出は、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンによって行われる。
【0069】
特に、ステップ(b)においてトレーサーを測定するために抗体が使用され、この抗体は、式(I)による構造を有する化合物の側鎖Rを特異的に認識し、かつ、C−25原子上にヒドロキシ基を有するビタミンD3側鎖またはビタミンD2側鎖を特異的に認識する。
【0070】
前記トレーサーは、サンプルに好ましくは以下の量で添加され、すなわち、前記トレーサーが0.2〜100ng/ml、特に5〜50ng/mlの最終濃度となるように調節されるような量で添加される。
【0071】
試験されるべきサンプルは、好ましくは生物学的流体であり、例えば血液、血清、血漿または乳汁から選択される。サンプルは、通常は、生物、好ましくは哺乳動物、例えばヒトに由来する。
【0072】
本発明による方法により測定されるべきビタミンDは、C−25原子上にヒドロキシ基を有し、かつ例えば、25−ヒドロキシビタミンD3、25−ヒドロキシビタミンD2、1,25−ジヒドロキシビタミンD3、1,25−ジヒドロキシビタミンD2、およびそれらの混合物を含む。特に好ましくは、前記ビタミンD化合物は、25−ヒドロキシビタミンD3および/または25−ヒドロキシビタミンD2である。
【0073】
本発明の第4の態様は、式(I)による化合物を含むビタミンD測定用試薬に関する。
【0074】
好ましくは、前記試薬は、結合されたビタミンDを遊離させるための試薬、および任意に希釈剤、担体、溶媒、補助剤、安定剤、保存剤および/または分散剤をさらに含む。
【0075】
前記試薬は、好ましくは乾燥試薬または湿潤試薬として存在する。
【0076】
本発明の第5の態様は、ビタミンDを特に上記の本発明によるインビトロ法で測定するための上記の試薬の使用である。
【0077】
本発明の第6の態様は、トレーサー化合物を製造するための、すなわち式(I)、式(Ia)、式(Ib)または式(Ic)による構造を有する化合物を製造するための、特に式(I)、式(Ib)または式(Ic)による構造を有する化合物を製造するための、式(VI):
【化16】
[式中、
Rは、ヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルキル基、またはヒドロキシ基で置換されていてもよいC
2〜C
10アルケニル基であり、
Xは、NHR
3、OH、またはSHであり、かつ
R
3は、HまたはC
1〜C
6アルキルである]
による構造を有する化合物の使用である。
【0078】
各水素原子は重水素原子で置換されていてもよい。
【0079】
前記基Rは、式(III)または式(IV)による構造と同様に、好ましくはビタミンD側鎖であり、好ましくはOH基を有するビタミンD側鎖である。
【0080】
さらに、本発明を以下の図面および実施例により詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】25−ヒドロキシビタミンD3(1)からエピマー3α N−フタルイミド誘導体(2)への変換、アミノ誘導体(3)への脱保護、およびNHS−PEG
12−ビオチンとの反応による3α−[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3(4)への変換による、ビオチン25−OHビタミンD3トレーサー試薬の合成を示す図。
【
図2】ビオチン−25OHD3トレーサー試薬による、所定の25OHD3の濃度の競合的排除の特性決定を示す図。特異的25OHD競合のELISA検出のために、ビタミンDフリー血清マトリックス(SerCon,Seracare Inc.)中の25OHD3の、濃度0、5、10、20、20、50、100、200、300ng/mlの希釈系列を、7.5ng/mlのビオチン−25OHDトレーサー試薬の存在下に、80μlのビタミンD遊離試薬と混合し、これを、抗25OHD抗体でコーティングされたマイクロタイタープレートウェルに施与した。トレーサーの結合を、競合する25OHDの濃度の関数として、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンおよびテトラメチルベンジジン(TMB)呈色反応を用いて、OD 450nmの測定により求めた。
【
図3】所定の25OHD3および25OHD2の濃度を有する血清(6PLUS1マルチレベル血清キャリブレーターセット 25−OHビタミンD3/D2、Chromsystems GmbH)およびビタミンDフリー血清マトリックス(SerCon,Seracare Inc.)中のその希釈物の比較分析を示す図。HPLCおよびLC−MS/MSで定められた25−OHD3/D2濃度と、自動Aleria(登録商標)システム(ORG270,ORGENTEC)における直接的な25−OHビタミンD3/D2測定法とが高度に一致することが判明した。
【
図4】25−OHビタミンD誘導体の希釈物の回収率の比較測定を示す図。37℃で24時間のインキュベーション後の、ビタミンDフリー血清マトリックス中の3α−[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD
3(VD1)および3β−3’[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]アミドプロピルエーテル−25−ヒドロキシビタミンD
3(VD2)は、C3原子上で(S)−立体配置で存在するVD2に対する、C原子上で(R)−立体配置で存在する誘導体VD1の高い血清安定性を示す。
【0082】
実施例1:3α−[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3の合成(
図1)
1H−NMR(300MHz)スペクトルを、Bruker AC300(Bruker, Karlsruhe, Bruker)で、溶媒CDCl
3を用いて記録した。評価を、内部標準物質としてテトラメチルシランを用いてppmで行った。質量スペクトルを、Varian MAT 311分光計(70eV、EI)で測定した。分析用薄膜クロマトグラフィーのために、F.256シリカゲルプレート(Merk Darmstadt,ドイツ)を使用した。クロマトグラフィーによる精製を、シリカゲルカラム230−400メッシュASTM中で行った。全ての試薬をSigma Aldrichより購入した。
【0083】
1.1:3α−フタルイミド−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3の合成
テトラヒドロフラン(2.0ml)中の25−ヒドロキシビタミンD3(10.0mg、25μmol)、フタルイミド(4.5mg、31.25μmol)、トリフェニルホスフィン(8.2mg、31.25μmol)およびジエチルアゾジカルボキシレート(5.4mg、31.25μmol)の溶液を、室温で24時間撹拌した。ヘキサン(2.0ml)の添加後、この混合物をシリカゲルフィルターによりろ過した。溶媒の除去後、固体を5mlの10%Na
2CO
3中に取り込み、かつジエチルエーテル各10mlで2回抽出した。合一したエーテル相をMgSO
4上で乾燥させ、かつ真空下に濃縮して無色の油にした。この生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。3α−フタルイミド−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3(
図1、式2)を、無色の油の形態で単離した(7.3mg)。
【0084】
【化17】
【0085】
1.2:3α−アミノ−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3の合成
3α−フタルイミド−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3(2)(7.2mg、13.5mmol)を、エタノール中の8Mのメチルアミン0.5ml中に窒素下に溶解させた。この混合物をまず室温で2時間撹拌し、次いで4℃で16時間撹拌した。溶媒を減圧下に蒸発させ、残留物を5mlの10%Na
2CO
3中に取り込み、かつジエチルエーテル各10mlで3回抽出した。合一したエーテル相をMgSO
4上で乾燥させ、かつ真空下に濃縮して無色の油にした。この生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。3α−アミノ−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3を、無色の油として単離した(4)(5.2mg)。
【0086】
【化18】
【0087】
1.3:3α−[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3の合成
3α−アミノ−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3(3)(5.2mg、12.9μmol)、トリエチルアミン(0.02μL)、NHS−PEG
12−ビオチン(9.4mg、10.0μmol、Thermo Scientific, Prod.No.21312)を、ジメチルホルムアミド0.2ml中に溶解させ、かつ室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下に蒸発させ、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。その際、3α−[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3(4)5.9mgが無色のロウの形態で得られた。
【0088】
【化19】
【0089】
実施例2:ビタミンD遊離試薬の製造
トルエンスルホン酸ナトリウムを水中に溶解させ、かつ1Mのクエン酸ナトリウムおよび1Mの塩化鉄(III)のストック溶液を用いて、1Mのトルエンスルホン酸ナトリウム、100mMのクエン酸ナトリウムおよび50mMの塩化鉄(III)の最終濃度に調整した。
【0090】
実施例3:固相への25−OHD抗体の結合
25−OH−ビタミンD3または25−OH−ビタミンD2に対する抗体を、トリス生理食塩水緩衝液中でpH8.0で1μg/mlの濃度に希釈した。マイクロタイタープレート(Maxisorb,Nunc)のウェルにこの抗体の前希釈物100μlをコーティングし、37℃で乾燥させ、かつ試験を実施するまで4℃で貯蔵した。
【0091】
実施例4:競合的結合分析
ビタミンDフリー血清マトリックス(Seracon,Seracare Inc.)に所定の濃度の25−OHD3を混合した。濃度系列各80μlを、トレーサーとしての実施例1からの3α−[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD3(25OHD−ビオチン−トレーサー試薬)をプレコートしたマイクロタイターウェル中に充填し、かつこのトレーサー試薬の可溶化のために室温(20〜27℃)で5分間インキュベートした。次いで、サンプルのビタミンDをDBPとの複合体から解離する実施例2からの遊離試薬80μlをサンプルバッチに添加し、混合した。このビタミンD遊離試薬で希釈されたサンプル100μlを、25OHD−抗体がコーティングされたウェル中に移し、室温で30分間インキュベートした。ここで、サンプル中に含まれる25OHDは、25OHD抗体上の結合部位に関して25OHDビオチントレーサーと競合する。次いで、サンプルバッチを除去し、ウェルを洗浄緩衝液各200μlで3回すすいだ。抗体に結合したビオチン−25OHDトレーサーの検出を、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンおよびテトラメチルベンジジン(TMB)呈色反応を用いて行った。50mMのリン酸100μlを添加することによって基質反応を停止した後、450nmでの光学密度の測定を行った。これに関して、
図2に示す通り、すでに5ng/mlの25OHD3の濃度で、ビオチン−25OHDトレーサーの特異的競合が検出された。
【0092】
実施例5:自動化試験システムAlegria(登録商標)25−OHビタミンD3/D2試験システムにおける血清または血漿中の25−ヒドロキシビタミンDの測定
HPLC+LC−MS/MSをベースとする25OHD3/D2測定法と、自動化Alegria(登録商標)25−OHビタミンD3/D2試験システム(ORG270,Orgentec Diagnostika GmbH)との相関関係を調べるために、血清サンプルまたは血漿サンプルを、その25OHD3/D2濃度について、HPLC+LC−MS/MSをベースとする方法により特性決定し、(6PLUS1マルチレベル血清キャリブレーターセット25−OHビタミンD3/D2、Chromsystems GmbH)、かつこれらからの希釈系列を測定まで分割して−20℃で貯蔵した。
【0093】
測定のために、サンプル各80μlをAlegria(登録商標)試験片のウェルAに装入した。その際、試験片の8個のウェルは、実施例2からのビタミンD遊離試薬、ストレプトアビジン−HRP共役体、TMB基質、25OHDキャリブレーター溶液および25−OHDの抗体がコーティングされたウェルをそれぞれ1回のサンプル測定のために含んでいた。試験処理をAlegria(登録商標)自動装置で自動的に行った。その際、1つの試験片内で、それぞれサンプルおよび試験片内部キャリブレーターを、25OHDビオチントレーサーおよびビタミンD遊離試薬と混合して、これを25OHD抗体でコーティングされたウェルに移し、30分間インキュベートした後に洗浄した。抗体に結合されたビオチン−25OHDトレーサーの検出を、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンおよびテトラメチルベンジジン(TMB)呈色反応を用いて、650nmでの光学密度を測定することにより行った。
【0094】
図3に示すように、HPLCおよびLC−MS/MSによって決定された血清サンプル中の25−OHD3/D2濃度と、自動化Alegria(登録商標)システムにおける直接的な25−OHビタミンD3/D2測定法とは高度に一致していることが認められた。
【0095】
実施例6:25−OHビタミンD誘導体の血清安定性の測定
ビオチン−25−OΗビタミンD誘導体の血清安定性の比較試験のために、試験化合物をビタミンDフリー血清マトリックス(Seracon、Seracare Inc.)中に取り込んだ。第1のバッチ(VD1)において、C3原子上で非天然の(R)−立体配置で存在する25−OHビタミンD誘導体である、実施例1による3α−[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD
3を、ビタミンDフリー血清マトリックス中で3ng/mlの濃度に調整した。第2のバッチ(VD2)において、C3原子上で天然の(S)−立体配置で存在する25−OHビタミンD誘導体である、US20080317764による3β−3’[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]アミドプロピルエーテル−25−ヒドロキシビタミンD
3を、ビタミンDフリー血清マトリックス中で3ng/mlの濃度に調整した。
【0096】
それぞれ1mlのバッチVD1およびVD2のアリコートを、−20℃で貯蔵するかあるいは37℃で24時間インキュベートした。次いで、サンプルを室温(22℃)で1時間平衡化した。−20℃で貯蔵された参照サンプルと37℃で24時間インキュベートされたサンプル各500μlを、実施例2による遊離試薬各500μlと混合した。ビタミンD遊離試薬で希釈されたサンプル100μlを、実施例3による25OHD抗体でコーティングされたウェルに移し、室温で30分間インキュベートし、それによって、サンプル中に存在するビオチン25−OHビタミンD誘導体が25OHD抗体に結合する。
【0097】
次いで、サンプルバッチを除去し、ウェルを洗浄緩衝液各200μlで3回すすいだ。抗体に結合されたビオチン−25−OΗビタミンD誘導体の検出を、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジンおよびテトラメチルベンジジン(TMB)呈色反応を用いて行った。50mMのリン酸100μlを添加することによって基質反応を停止した後、450nmでの光学密度の測定を行った。
【0098】
その際、
図4に示す通り、37℃で24時間インキュベートした後のバッチVD1中の3α−[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]−25−ヒドロキシ−デオキシビタミンD
3誘導体によって、−20℃で貯蔵された参照サンプルに対して回収率が95.2%であることが判明した。バッチVD2中に存在する3β−3’[α−ビオチンアミド−ω−ドデカ(エチレングリコール)−アミド]アミドプロピルエーテル−25−ヒドロキシビタミンD
3誘導体は、明らかにより低い血清安定性を示す。この場合、37℃で24時間インキュベートした後に、−20℃で貯蔵された参照サンプルに対してわずか71.5%の回収率しか検出されなかった。