特許第6388945号(P6388945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388945多結晶化学蒸着ダイヤモンド工具部品ならびにそれを製作、取付、および使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388945
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】多結晶化学蒸着ダイヤモンド工具部品ならびにそれを製作、取付、および使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/04 20060101AFI20180903BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20180903BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20180903BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20180903BHJP
【FI】
   C30B29/04 X
   C30B29/04 A
   B23B27/20
   B23B27/14 A
   B23K26/38 Z
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-533552(P2016-533552)
(86)(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公表番号】特表2017-504548(P2017-504548A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】EP2014075137
(87)【国際公開番号】WO2015075120
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】61/907,513
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1322837.4
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514233369
【氏名又は名称】エレメント シックス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】マクリモント マーク
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−223807(JP,A)
【文献】 特開昭62−107068(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/011902(WO,A1)
【文献】 特開平06−079504(JP,A)
【文献】 MAY; SMITH P W; ROSSER J A; K N,785 NM RAMAN SPECTROSCOPY OF CVD DIAMOND FILMS,DIAMOND AND RELATED MATERIALS,NL,ELSEVIER SCIENCE PUBLISHERS,2007年12月14日,VOL:17, NR:2,PAGE(S):199 - 203,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.diamond.2007.12.013
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/04
B23B 27/14
B23B 27/20
B23K 26/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶CVD合成ダイヤモンド工具での使用のための多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物であって、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が、
作業表面と、
取付用後部表面とを備え、
取付用後部表面の平均側方結晶粒径が10μm以上であり、
作業表面が、
(a)取付用後部表面よりも小さなダイヤモンド結晶粒と、
(b)10nm〜15μmの範囲の平均側方結晶粒径と、
(c)作業表面上に集束するレーザーによって生成されるラマン信号とを含み、前記ラマン信号が、以下の特性:
(1)半値全幅が8.0cm-1以下である、1332cm-1のsp3炭素ピーク、及び
(2)633nmのラマン励起源使用時に、バックグラウンド除去後に、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの20%以下の高さを有する、1550cm-1のsp2炭素ピーク
双方を示す、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項2】
作業表面の平均側方結晶粒径が、20nm、40nm、60nm、80nm、100nm、500nm、1μm、2μm、または5μm以上である、請求項1に記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項3】
作業表面の平均側方結晶粒径が、12μm、10μm、8μm、6μm、4μm、または2μm以下である、請求項1または2に記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項4】
取付用後部表面の平均側方結晶粒径が、12μm、14μm、16μm、18μm、20μm、30μm、40μm、または50μm以上である、請求項1から3までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項5】
作業表面の1332cm-1のsp3炭素ピークの半値全幅が、7.0cm-1、6.0cm-1、4.0cm-1、3.0cm-1、2.5cm-1、または2.0cm-1以下である、請求項1から4までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項6】
作業表面の1550cm-1のsp2炭素ピークが、633nmのラマン励起源使用時において、バックグラウンド除去後に、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの10%、5%、1%、0.1%、0.01%、または0.001%以下である、請求項1から5までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項7】
作業表面から取付用後部表面までの厚さが、200μm、400μm、600μm、800μm、1mm、1.5mm、または2mm以上である、請求項1からまでのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項8】
作業表面は、少なくとも1つの直線寸法が、少なくとも6mm、8mm、10mm、12mm、15mm、20mm、30mm、または50mmである、請求項1からまでのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項9】
摩耗部品;ドレッサ;伸線ダイ;ゲージストーン;またはカッターの形態である、請求項1からまでのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項10】
切断エッジを備え、作業表面が切断エッジから延びる、請求項1からまでのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項11】
作業表面は、表面平坦度が≦5μm、≦4μm、≦3μm、≦2μm、≦1μm、≦0.5μm、≦0.2μm、≦または0.1μmである、請求項1から10までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項12】
作業表面は、表面粗さRaが≦20nm、≦10nm、≦5nm、≦2nm、または≦1nmである、請求項1から11までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が取り付けられるホルダとを備える、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具であって、
多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物の作業表面が露出され、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面を形成するように、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が配向されている、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具。
【請求項14】
請求項13に記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を使用して、材料を加工する方法であって、
前記多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面が、加工される材料と接触するように、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を配向させる工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面が、加工される材料と接触している状態で、材料と多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面との相対運動を与えることによって、材料を加工する工程とを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のある種の実施形態は、多結晶化学蒸着(CVD)ダイヤモンド工具部品に関する。本発明のある種の更なる実施形態は、多結晶CVDダイヤモンド加工物を製作する方法、前記多結晶CVDダイヤモンド加工物をホルダ内に取り付けて、多結晶CVDダイヤモンド工具部品を形成する方法、および前記多結晶CVDダイヤモンド工具部品を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いかなる用途でも、使用者は、工具材料を選択する際に、多くの要因を考慮しなければならない。当該要因としては、コスト;靱性;摩耗率/硬さ;切断エッジなどの望ましい作業表面を加工する能力;有用な寿命;要求されるサイズおよび幾可学的形状;ならびに加工される材料との化学効果に対して不活性であることが挙げられる。
理想的な工具材料は、硬く、かつ強靱な材料である。摩損用途で使用される材料のこれら2つの特性は、しばしば2つの垂直軸上に提示される。非常に単純に、摩耗は、運転単位当たりに除去される材料の量の程度である。靱性は、材料の亀裂伝播への耐性の尺度である。より硬く、より強靱で、より強く、かつより耐摩耗性の高い材料を供給する要望が現在存在している。
【0003】
ダイヤモンド材料は、多くの高性能の切断、穿孔、粉砕、および研磨工具について、一般的に好まれる材料である。ダイヤモンド材料は、様々な金属、石、電子工学および木工産業を含む、様々な産業にわたって、工具の解決策で使用されている。例としては、航空宇宙および自動車の製作、家具の生産、採石、建設、採鉱およびトンネル掘削、鉱物加工、電子部品およびデバイス製作、ならびに石油およびガス産業が挙げられる。ダイヤモンド工具部品の例としては、摩耗部品;ドレッサ;伸線ダイス;ゲージストーン(gauge stone);およびカッター、例えばブレード、または切断エッジを備える他の部品が挙げられる。
ダイヤモンドは、その硬さによって、摩耗に関して究極の材料となる。しかし、工具の作業温度において、応力下でのダイヤモンドの塑性変形性は限定されているので、鋼などの大幅に強靱な材料と比較して、急速な亀裂伝播が起こる。ダイヤモンドの耐久性を改善するこれまでの試みは、例えば、窒素含有量を変えることにより、ダイヤモンド材料を形成する方法を適合させること、または、ダイヤモンド材料の形成後に、例えば照射および/もしくは焼鈍によって、ダイヤモンド材料を処理することのいずれかに関係する。当該取組みは、ダイヤモンド工具の靱性および/または耐摩耗性を改善するために使用できることが見出された。
【0004】
ダイヤモンド工具は通常、例えば金属材料を使用して製作され得るホルダ内に取り付けられる、ダイヤモンド加工物を備える。ダイヤモンド加工物は、単結晶の天然、CVD合成、またはHPHT(高圧高温)合成ダイヤモンド材料を使用して製作され得る。あるいは、ダイヤモンド加工物は、バインダ材料のマトリックスによって結合した複数のダイヤモンド結晶粒、例えばケイ素結合ダイヤモンド、または金属溶媒を使用したダイヤモンド間結合によって結合した複数のダイヤモンド結晶粒、例えばコバルト金属溶媒を使用して形成されたPCD(HPHT多結晶ダイヤモンド)を含んでもよい。後者は通常、残留金属溶媒材料を含むが、これは、様々な範囲で、合成後に材料から浸出することがある。更に別の方法としては、ダイヤモンド加工物は、CVD成長法の結果、ダイヤモンド間結合によって直接結合し合った複数のダイヤモンド結晶粒を含む、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料を使用して、金属溶媒を何も使用せずに製作され得る。
前述のダイヤモンド材料は異なる物理的特徴を有し、特定の用途で使用されるダイヤモンド材料の種類は、用途で必要とされる特徴に依存するであろう。
【0005】
前述のように、多くの用途は、靱性および/または耐摩耗性が改善されたダイヤモンド材料を必要とするが、ある種のダイヤモンド工具用途は、ダイヤモンド工具によって加工される材料に、非常に微細な表面仕上げを提供する能力を必要とする。例えば、電子デバイス用の金属デバイスパッケージは、化粧目的のために、非常に微細な表面仕上げを必要とすることがある。また、当該用途は、ある一定の最小寸法の作業表面を有するダイヤモンド工具部品も必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態の目的は、非常に微細な表面仕上げを提供でき、かつある種の業務用途で要求される、十分に大きな寸法を有する作業表面を提供できるダイヤモンド工具部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの行った実験的研究は、多結晶CVDダイヤモンド材料が、従来のHPHT製作PCD工具よりも、表面仕上げの利点を提供することを示した。また、本発明者らは、多結晶CVDダイヤモンド材料が、非常に高品質の表面仕上げを生成できる単結晶ダイヤモンド工具と同じレベルの仕上げを提供しないことも見出した。しかし、本明細書を書いている時点では、高スペックの単結晶CVDダイヤモンド材料は、比較的小さなサイズでのみ入手可能であり、これらがより大きなサイズで入手可能である範囲で、これらは比較的希少かつ高価であって、コストは、単結晶ダイヤモンドのエッジ長と共に、急速に上昇する。更に、非常に微細な表面仕上げを必要とするある種の用途では、単結晶ダイヤモンドの形態で容易に入手可能な、または本当に入手可能な作業表面よりも大きな作業表面が必要とされる。多結晶CVDダイヤモンド工具ピースは、大幅に大きなサイズで入手可能であるが、この材料は、ある種の用途での望ましい非常に微細な表面仕上げを達成しないことが見出されている。
したがって、現在入手可能なダイヤモンド工具では、ある種の用途について、微細な表面仕上げおよび寸法サイズ要件の組合せが得られないという課題が存在する。すなわち、単結晶ダイヤモンド工具に典型的な表面仕上げを生成でき、しかも妥当なコストで大量に利用できる長いエッジ長の工具が、いくつかの機械加工市場で入手できる必要がある。
【0008】
上記に照らして、本発明者らは、多結晶CVDダイヤモンド材料が、単結晶ダイヤモンド工具によって提供される同じレベルの仕上げを与えないことについて、その原因である機構を研究した。単結晶ダイヤモンド工具と比較した場合、いくつかの要因が、多結晶CVDダイヤモンド工具によって提供される表面仕上げの悪化に寄与し得ることが結論付けられた。この要因は、
(i)多結晶CVDダイヤモンド工具の作業表面のダイヤモンド結晶粒は、使用中に欠けることがあるので、作業表面の一体性の悪化につながり、多結晶CVDダイヤモンド工具によって加工される材料の引っ掻きまたは溝を生じること、ならびに
(ii)多結晶CVDダイヤモンド工具の使用前であっても、正確で平滑なエッジおよび隣接する先導表面の供給に関する作業表面の品質は、単結晶ダイヤモンド材料と比較して、多結晶CVDダイヤモンド材料の粒状で不均一な性質により、単結晶ダイヤモンド工具で達成可能な品質よりも低いことを含む。
上記に関して、本発明者らは、多結晶CVDダイヤモンド工具は通常、多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面ではなく成長面が、工具の露出された作業表面を形成するように構成されることに更に注目した。これは、成長面が、核生成面と比較して通常、非ダイヤモンドsp2炭素の濃度が低い、品質良好で、相互成長の進んだ、ダイヤモンド材料の結晶粒で形成されているからである。したがって、成長面は、多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面と比較して、より低い摩耗率を有することが見出された。
この点について、多結晶CVDダイヤモンド材料のウエハは通常、ダイヤモンド材料の小さな結晶粒および有意量の非ダイヤモンドsp2炭素(ラマン分光法によって検出可能)を含む核生成面;ならびにダイヤモンド材料のより大きな結晶粒および、成長条件が正しく制御される場合には、より少ない量の非ダイヤモンドsp2炭素を含む成長面を備えることに注意すべきである。ダイヤモンド結晶粒径は、核生成面から成長面へと、このような多結晶CVDダイヤモンド材料のウエハの中を移動する際に増大する。
【0009】
本発明者らは、多結晶CVDダイヤモンド材料のより小さな結晶粒の核生成面(成長面ではない)が、ダイヤモンド工具の作業表面として利用される場合、核生成面のより小さな結晶粒微細構造は、大きな結晶粒における、使用中に欠けて、加工される材料の視覚的に知覚可能な引っ掻きまたは溝につながる問題を軽減し得ることを仮定した。本発明者らは更に、使用前であっても、多結晶CVDダイヤモンド材料のより小さな結晶粒の核生成面が、ダイヤモンド工具の作業表面として利用される場合、正確で平滑なエッジおよび隣接する先導表面の提供に関する達成可能な作業表面の品質は、より大きな結晶粒の構造を有する成長面で形成された作業表面と比較して、向上するであろうことを仮定した。すなわち、微細な表面仕上げの提供に関して、多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面は、単結晶ダイヤモンド工具を使用して達成可能な表面仕上げの品質に近付き、同時に、大幅に大きなサイズで、低コストで入手可能であり、このような特色の組合せを要求する業務用途の要件を満たし得る。
【0010】
しかし、上記の取組みの1つの課題は、多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面におけるダイヤモンド材料の品質が低く、一般に有意量のsp2炭素を有し、かつ耐摩耗性が低く、これは、特にダイヤモンド材料および工具部品の高いコストを考えると、長い工具運転寿命を必要とする産業用途には不十分であることである。加えて、多結晶CVDダイヤモンド材料の低品質の核生成面の摩耗率は高いので、使用中に達成される表面仕上げの品質の比較的急速な変化をもたらし得る。
【0011】
上記に照らして、本発明者らは、より低品質のダイヤモンド材料の制御された部分が多結晶CVDダイヤモンドウエハの核生成面から除去される場合、望ましい結晶粒径と共に、低いsp2炭素含有量および成長面の耐摩耗性に近い高い耐摩耗性を有する表面を達成することが可能であることを決定した。次いで、このような表面が、ダイヤモンド工具の作業表面を形成するように、ホルダ内に取り付けられれば、下記の特徴を含む特異な特徴の組合せを有するダイヤモンド工具を提供することが可能である:
ダイヤモンド材料の小さな結晶粒を含む正確に画定された作業表面による、高品質の表面仕上げを達成する能力、
ダイヤモンド工具を製作できる大きな多結晶CVDダイヤモンドウエハを入手可能であることによる、大きな作業表面の提供、
低品質の核生成ダイヤモンド材料を、ダイヤモンド工具の作業表面を製作できる多結晶CVDダイヤモンドウエハの核生成面から除去することによる、低い摩耗率を有する作業表面の提供、および
要求されるサイズの大きな単結晶ダイヤモンド材料が本当に入手可能な範囲で、代替の大きな単結晶ダイヤモンド材料と比較して、相対的に低いコスト。
【0012】
上記に照らして、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具での使用のための多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物であって、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が、
作業表面と、
取付用後部表面とを備え、
取付用後部表面の平均側方結晶粒径が10μm以上であり、
作業表面が、
(a)取付用後部表面よりも小さなダイヤモンド結晶粒と、
(b)10nm〜15μmの範囲の平均側方結晶粒径と、
(c)作業表面上に集束するレーザーによって生成されるラマン信号とを含み、このラマン信号が、以下の特性:
(1)半値全幅が8.0cm-1以下である、1332cm-1のsp3炭素ピーク、
(2)633nmのラマン励起源使用時に、バックグラウンド除去後に、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの20%以下の高さを有する、1550cm-1のsp2炭素ピーク、および
(3)785nmのラマン励起源を使用したラマンスペクトルにおいて、局所バックグラウンド強度の10%以上である、1332cm-1のsp3炭素ピーク
のうちの1つまたは複数を示す、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が提供される。
【0013】
また、本明細書では、
本明細書で記載される多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が取り付けられるホルダとを備える、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具であって、
多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物の作業表面が露出され、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面を形成するように、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が配向されている、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具も記載される。
【0014】
また、本明細書で記載される多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を使用して、材料を加工する方法であって、
多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面が、加工される材料と接触するように、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を配向させる工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面が、加工される材料と接触している状態で、材料と多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面との相対運動を提供することによって、材料を加工する工程とを含む、方法も提供される。
【0015】
複数の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を製作する方法であって、
核生成面および成長面を有する、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層から始める工程であって、核生成面が成長面よりも小さな結晶粒を含み、成長面の平均側方結晶粒径が10μm以上である工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層の核生成面を加工して、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の部分を核生成面から除去し、加工済核生成表面を形成する工程であって、前記部分は深さが50nm〜30μmの間であり、核生成表面は、
(a)成長面よりも小さなダイヤモンド結晶粒と、
(b)10nm〜15μmの範囲の平均側方結晶粒径と、
(c)加工済核生成表面上に集束するレーザーによって生成されるラマン信号とを有し、このラマン信号が、以下の特性:
(1)半値全幅が8.0cm-1以下である、1332cm-1のsp3炭素ピーク、
(2)633nmのラマン励起源使用時に、バックグラウンド除去後に、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの20%以下の高さを有する、1550cm-1のsp2炭素ピーク、および
(3)785nmのラマン励起源を使用したラマンスペクトルにおいて、局所バックグラウンド強度の10%以上である、1332cm-1のsp3炭素ピーク
のうちの1つまたは複数を示す、工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層を切断して、それぞれの多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物の作業表面が、前記加工済核生成表面で形成されるように、複数の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を形成する工程とを含む、方法が記載される。
【0016】
また、本明細書では、複数の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を製作する別の方法であって、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層を成長基材上に成長させる工程であって、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層が核生成面および成長面を有し、核生成面が成長面よりも小さな結晶粒を含み、成長面の平均側方結晶粒径が10μm以上であり、
成長基材は、成長基材を横切る5mmの長さにわたって測定した際、表面平坦度が≦5μmであり、表面粗さRaが≦20nmであり、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の成長は、成長基材の除去後に、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層の核生成面が
(a)成長面よりも小さなダイヤモンド結晶粒と、
(b)10nm〜15μmの範囲の平均側方結晶粒径と、
(c)加工済核生成表面上に集束するレーザーによって生成されるラマン信号とを有するように制御され、このラマン信号が、以下の特性:
(1)半値全幅が8.0cm-1以下である、1332cm-1のsp3炭素ピーク
(2)633nmのラマン励起源使用時に、バックグラウンド除去後に、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの20%以下の高さを有する、1550cm-1のsp2炭素ピーク、および
(3)785nmのラマン励起源を使用したラマンスペクトルにおいて、局所バックグラウンド強度の10%以上である、1332cm-1のsp3炭素ピーク
のうちの1つまたは複数を示す、工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層を切断して、それぞれの多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物の作業表面が、前記核生成面で形成されるように、複数の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を形成する工程とを含む、方法も記載される。
より良好な本発明の理解のために、およびどのように本発明が実施され得るかを示すために、本発明の実施形態を、添付図面を参照して、単に例として以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を示す図である。
図2】ホルダに取り付けられた多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を備える、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を示す図である。
図3】多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を使用して、材料を加工する方法を示す図である。
図4】複数の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を製作する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態による多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2を示す。多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2は、作業表面4、取付用後部表面6、および切断エッジ8を備え、作業表面4は切断エッジ8から延びる。メタライズコーティング10は、取付用後部表面6と結合してもよく、これにより、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2がホルダに、例えば金属ろう付け接合によって、容易に設置され得るようになっている。
作業表面4は、取付用後部表面6よりも小さなダイヤモンド結晶粒を含む。これは、後述のように、作業表面4が、成長状態の多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の加工済核生成面から形成され、取付用後部表面6が、多結晶CVD合成ダイヤモンドの加工済成長面で形成されたことを示す。作業表面4の平均側方結晶粒径は、10nm〜15μmの範囲にあるのに対し、取付用後部表面6の平均側方結晶粒径は、10μm以上である。
【0019】
この点について、作業表面4は、小さな、制御された、明確な結晶粒径を有し、これは使用時に微細な表面仕上げを達成するのに適する。対照的に、取付用後部表面6は、大きな、よく相互成長したダイヤモンド結晶粒構造を有し、これは作業表面4に機械的支持を提供する。
作業表面4および取付用後部表面6の正確な平均側方結晶粒径は、加工される材料の種類および必要とされる望ましい表面仕上げを含む、特定の用途に依存するであろう。例えば、作業表面4の平均側方結晶粒径は、20nm、40nm、60nm、80nm、100nm、500nm、1μm、2μm、もしくは5μm以上、および/もしくは12μm、10μm、8μm、6μm、4μm、もしくは2μm以下、ならびに/または前述の上限および下限の任意の組合せであってもよい。更に、取付用後部表面の平均側方結晶粒径は、12μm、14μm、16μm、18μm、20μm、30μm、40μm、または50μm以上であってもよい。
【0020】
上記に関して、多結晶CVDダイヤモンド表面の平均側方結晶粒径は、走査型電子顕微鏡法(SEM)を使用して測定できる。多結晶CVDダイヤモンド材料の表面のSEM画像は、結晶粒間の境界を示すので、個別の結晶粒を特定し、計数できるようになっている。したがって、多結晶CVDダイヤモンド表面のエリアは、SEMを使用して撮像でき、この時、画像を横切る線に沿ったダイヤモンド結晶粒の総数を計数した後、線の長さを線に沿った結晶粒の数で割って、平均側方結晶粒径を得ることができる。SEM画像を横切るいくつかの線は、この方法で分析でき、これは垂直方向でもよく、撮像エリアを横切る側方結晶粒径について、平均値を計算できる。
【0021】
上記のように、作業表面4および取付用後部表面6に適した結晶粒径構造の選択に加えて、作業表面4が、低いsp2炭素含有量の良質なダイヤモンド材料で形成されることを確実にすることも重要である。本明細書の発明の概要セクションに記載されるように、多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面におけるダイヤモンド材料の品質は低く、一般に有意量のsp2炭素を有し、かつ耐摩耗性が低く、これは、特にダイヤモンド材料および工具部品の高いコストを考えると、長い工具運転寿命を必要とする産業用途には不十分である。加えて、多結晶CVDダイヤモンド材料の低品質の核生成面の摩耗率は高いので、使用中に達成される表面仕上げの品質の比較的急速な変化をもたらし得る。したがって、多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面が作業表面4として使用される場合、高いsp2炭素および低い耐摩耗性を有する低品質の核生成材料が、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2の製作中に確実に除去されることが重要である。
【0022】
ラマン分光法は、局所的領域のsp2炭素含有量を測定するために、特に有用な技術であることが見出されている。ラマン分光法は、典型的には、500nm〜1000nmの光波長を使用し、この光波長は、ダイヤモンドの表面上に集束する際に、おおよそ1μm3の表面体積をサンプリングするであろう。非ダイヤモンド炭素ピークは、1580cm-1−グラファイト;1350〜1580cm-1−ナノ結晶グラファイト;ならびに1550〜1500cm-1−アモルファス炭素およびグラファイト相を含む。合成ダイヤモンド材料のラマンスペクトルにおいて、sp3でない結合炭素が、有意な程度に明らかであれば、その材料の耐摩耗性低下することになることが見出された。したがって、好ましくはsp2炭素含有量は、材料のラマンスペクトルにおいて、有意な非ダイヤモンド炭素ピークを全く示さないほど、十分に低い。
【0023】
sp3ダイヤモンドラマンピークは、おおよそ1332cm-1に存在する。sp3ダイヤモンドラマンピークの幅は、ダイヤモンド材料の結晶の品質を示すことが知られている。ある種の実施形態によると、作業表面4の領域上に集束するレーザーによって生成されるラマン信号の示す1332cm-1のsp3炭素ピークは、半値全幅が8.0cm-1、7.0cm-1、6.0cm-1、5.0cm-1、4.0cm-1、3.0cm-1、2.5cm-1、または2.0cm-1以下である。当該ラマン信号パラメータは、多結晶CVDダイヤモンド材料の成長面から形成される作業表面でこれまでに達成されているが、本発明の実施形態は、非常に高品質な機械加工表面仕上げの達成により適する、小さな粒状構造を含む多結晶CVDダイヤモンド材料の加工済核生成表面から形成される作業表面で、当該パラメータを提供する。
【0024】
ある種の実施形態によると、作業表面4の領域上に集束するヘリウム−ネオンレーザー(633nm)をラマン励起源として使用することにより、バックグラウンド除去後に、1550cm-1付近のsp2炭素ピークが、1332cm-1付近に存在するsp3ダイヤモンドラマンピークの高さの20%、10%、5%、1%、0.1%、0.01%、または0.001%以下のダイヤモンドラマンスペクトルが生じる。あるいは、sp2炭素の量は、おおよそ1332cm-1に存在するsp3ダイヤモンドラマンピークの高さを、sp2炭素などの不純物に起因するピークへの局所バックグラウンドの高さと比較して測定することによって、評価されてもよい。ある種の実施形態によると、作業表面4の領域上に集束する785nmのラマン励起源を使用することにより、ラマンスペクトルにおいて、おおよそ1332cm-1のsp3炭素ピークが、局所バックグラウンド強度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%以上のダイヤモンドラマンスペクトルが生じる。再度、当該ラマン信号パラメータは、多結晶CVDダイヤモンド材料の成長面から形成される作業表面でこれまでに達成されているが、本発明の実施形態は、非常に高品質な機械加工表面仕上げの達成により適する、小さな粒状構造を含む多結晶CVDダイヤモンド材料の加工済核生成表面から形成される作業表面で、当該パラメータを提供する。ある種の実施形態は、上記で概説したラマン測定パラメータのうちの3つ全てを満たしてもよい。
【0025】
上記の作業表面の特徴に加えて、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物は、厚さと長さの両方に関して、比較的大きな寸法を有するように製作されてもよい。
【0026】
作業表面から取付用後部表面までの比較的大きな厚さは、いくつかの理由のために有用である。この理由としては、(i)作業表面を支持するバルクの多結晶CVDダイヤモンド材料を提供すること、(ii)作業表面の相当な摩耗を許容し、同時に、更なる使用のために、幾可学的形状および一体性をなお維持して寿命を延ばすこと、(iii)加工物をより大きな範囲の幾可学的形状に製作することを可能にすること、ならびに(iv)より厚い多結晶CVDダイヤモンド材料の成長によって、作業表面に更なる機械的支持を提供する、10μm以上の平均側方サイズを有する、より大きなμmスケールのダイヤモンド結晶粒のより良好な相互成長が生じること、である。例えば、作業表面から取付用後部表面までの厚さは、200μm、400μm、600μm、800μm、1mm、1.5mm、または2mm以上であってもよい。正確な厚さは、具体的な用途、ならびにその工具の幾可学的形状、機械的強度、および寿命に関する要件に依存するであろう。
【0027】
上記のよく相互成長したμmスケールの多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を提供することによって、比較的高い引張破断強度を有する頑強な加工物を達成することが可能である。例えば、加工物は、作業表面を引っ張った状態での引張破断強度が、厚さ200〜500μmでは≧760MPa×n;厚さ500〜750μmでは≧700MPa×n;厚さ750〜1000μmでは≧650MPa×n;厚さ1000〜1250μmでは≧600MPa×n;厚さ1250〜1500μmでは≧550MPa×n;厚さ1500〜1750μmでは≧500MPa×n;厚さ1750〜2000μmでは≧450MPa×n;または厚さ≧2000μmでは≧400MPa×n(式中、倍率nは1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8、または2である)であってもよい。更に、加工物は、取付用後部表面を引っ張った状態での引張破断強度が、厚さ200〜500μmでは≧330MPa×n;厚さ500〜750μmでは≧300MPa×n;厚さ750〜1000μmでは≧275MPa×n;厚さ1000〜1250μmでは≧250MPa×n;厚さ1250〜1500μmでは≧225MPa×n;厚さ1500〜1750μmでは≧200MPa×n;厚さ1750〜2000μmでは≧175MPa×n;または厚さ≧2000μmでは≧150MPa×n(式中、倍率nは1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8、または2である)であってもよい。
【0028】
上記の厚さおよび頑強さに加えて、少なくとも1次元で比較的大きな作業表面は、ある種の用途で必要とされ、また、この発明の実施形態は、単結晶ダイヤモンド工具を使用して達成可能な機械加工表面仕上げに近い、非常に高品質な機械加工表面仕上げが必要とされる用途に特に適し、それだけでなく、作業表面のサイズが、単結晶ダイヤモンドの形態で、少なくとも妥当なコストで容易に入手可能なサイズよりも大きい場合にも適する。したがって、多結晶CVDダイヤモンド加工物の作業表面は、少なくとも1つの直線寸法が、少なくとも6mm、8mm、10mm、12mm、15mm、20mm、30mm、または50mmであってもよい。当該寸法は、多結晶CVDダイヤモンド材料を使用して、容易に達成可能である。
【0029】
更に、製作中に、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物は、輪郭のはっきりした平坦で平滑な作業表面を有するように加工されてもよく、このような作業表面は、非常に高品質な機械加工表面仕上げを達成するために有利である。例えば、作業表面は、所望の形態からのピークから谷への偏差によって定義される表面平坦度が≦5μm、≦4μm、≦3μm、≦2μm、≦1μm、≦0.5μm、≦0.2μm、≦もしくは0.1μmであってもよく、かつ/または表面粗さRaが≦20nm、≦10nm、≦5nm、≦2nm、もしくは≦1nmであってもよい。用語「表面粗さRa」(時には「中心線平均」または「c.l.a.」と呼ばれる)は、British Standard BS 1134 Part 1およびPart 2によると、0.08mmの長さにわたって、例えば触針表面形状測定装置によって測定される、平均線からの表面プロファイルの絶対偏差の算術平均を指す。
【0030】
上記の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物は、様々な機械的工具用途で使用され得ることが予想される。例えば、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物は、摩耗部品;ドレッサ;伸線ダイ;ゲージストーン;またはカッターの形態であってもよい。特に好ましい用途は、高精度金属機械加工、例えばアルミニウム機械加工のための用途である。このような場合には、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物は、図1に示されるように、切断エッジ8および切断エッジから例えば垂直方向に延びる作業表面4を備えてもよい。
当該工具用途では、上記の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2は、図2に示されるように、ホルダ20に取り付けられる。具体的な設置構成は、特定の用途に依存するであろうが、典型的にはダイヤモンド工具は、金属または金属炭化物のホルダ内に取り付けられる。工具ピースの具体的な幾可学的形状にかかわらず、キーとなる特色は、これまでに定義された多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2の作業表面4が露出され、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面を形成するように、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2が配向されていることである。
【0031】
多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2は、例えば金属ろう付け接合22によって、ホルダに取り付けてもよい。これまでに記載したように、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物2の取付用後部表面には、金属ろう付けの良好な接着を可能にするためのメタライズコーティング10が設けられてもよい。メタライズコーティングは、ダイヤモンド表面に接着するチタンなどの炭化物形成金属を含んでもよい。典型的な金属ろう付け接合との良好な接着性を達成するために、金などの更なる結合層が、炭化物形成層の上に設けられてもよい。使用時に、高温でのチタン層と金層との間の有害反応を防ぐために、白金などの不活性バリア層が、炭化物形成層と結合層との間に設けられてもよい。ホルダへのろう付け接合部は、金を含んでもよく、または代わりに、銅および銀を含んでもよい。他の代案も、当技術分野で既知である。
図3は、上記の多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を使用して、材料を加工する方法を示す。方法は、作業表面4が加工される材料32と接触するように、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具30を配向させる工程を含む。材料の加工は、その後、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面が、加工される材料と接触している状態で、材料32と多結晶CVD合成ダイヤモンド工具30の作業表面4との相対運動を提供することによって達成される。この相対運動は、材料32を動かすこと、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具30を動かすこと、または材料と工具の両方を動かすことによって達成され得る。これらのいずれの場合でも、重要な特色は、加工される材料と接触し、これを加工する多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面が、本明細書で定義される通りであることである。通常、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面は、加工される材料に相当な力で押し付けられるが、この力は、工具の幾可学的形状、加工される材料の種類、および所望の表面仕上げに依存するであろう。
【0032】
図4は、これまでに記載した多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を複数製作する方法を示す。方法は、
核生成面42および成長面44を有する、図4(a)に示される多結晶CVD合成ダイヤモンド材料40の層から始める工程であって、核生成面が成長面よりも小さな結晶粒を含み、成長面の平均側方結晶粒径が10μm以上である工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料40の層の核生成面42を、図4(b)に示されるように加工して、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の部分46を核生成面から除去し、図4(c)に示される、加工済核生成表面48を形成する工程であって、前記部分は深さが50nm〜30μmの間であり、加工済核生成表面48は、
(a)成長面よりも小さなダイヤモンド結晶粒と、
(b)10nm〜15μmの範囲の平均側方結晶粒径と、
(c)加工済核生成表面上に集束するレーザーによって生成されるラマン信号とを有し、このラマン信号が、以下の特性:
(1)半値全幅が8.0cm-1以下である、1332cm-1のsp3炭素ピーク、
(2)633nmのラマン励起源使用時に、バックグラウンド除去後に、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの20%以下の高さを有する、1550cm-1のsp2炭素ピーク、および
(3)785nmのラマン励起源を使用したラマンスペクトルにおいて、局所バックグラウンド強度の10%以上である、1332cm-1のsp3炭素ピーク
のうちの1つまたは複数を示す、工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料40の層を、図4(d)に示されるように切断して、それぞれの多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物50の作業表面が、前記加工済核生成表面48で形成されるように、複数の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物50を形成する工程とを含む。
【0033】
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層は、自立ウエハの形態であってもよく、または、核生成面が露出され、成長面が支持基材に結合した状態で、支持基材上に配設された多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層の形態であってもよい。したがって、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物は、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の独立ピースの形態、または、作業表面が露出され、取付用後部表面が支持基材に結合した状態で、支持基材上に配設された多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層の形態のいずれかであろう。
【0034】
この発明の実施形態の出発点として使用される多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の適切な独立ウエハは、Element Six Limitedから入手可能である。機械的グレード、熱的グレード、および光学グレードを含む、様々なグレードの多結晶CVD合成ダイヤモンド材料が入手可能である。機械的グレードは、本発明の実施形態での使用に適するが、本発明者らは、多くの異なるグレードの多結晶CVDダイヤモンド材料が、核生成表面において、およびその近くで、同様の結晶粒構造およびサイズを共有し得ることに注目している。したがって、本発明の実施形態で使用される多結晶CVDダイヤモンド材料のグレードは、機械的グレードとしてこれまでに特定されたものに限定されなくてもよい。例えば、より高い熱伝導率のグレードであって、典型的に、研磨/機械的テストで不十分に働くと示されたグレードが、本発明のある種の実施形態において、非常に高品質の機械加工表面仕上げを達成するために有用であり得ることも予想される。これは、当該多結晶CVDダイヤモンドグレードのより高い熱伝導率により、局所工具先端温度がより低くなるであろうことによる。したがって、多結晶CVDダイヤモンド材料の熱伝導率は、1000Wm-1-1、1200Wm-1-1、1400Wm-1-1、1600Wm-1-1、1800Wm-1-1、1900Wm-1-1、2000Wm-1-1、2100Wm-1-1、または2200Wm-1-1以上であってもよい。
【0035】
核生成面加工工程を考慮すると、より低品質の核生成ダイヤモンド材料は、50nmおよび30μmの範囲の深さまで表面を加工することによって除去される。この加工工程が浅すぎる場合、低品質の核生成ダイヤモンド材料が、最終的に、ダイヤモンド工具ピースの作業表面を形成するであろう表面上に残ることがあり、これは、低い性能および短い工具寿命につながる。これまでに記載したように、ラマン分光法は、加工済核生成表面のダイヤモンド材料の品質を測定して、sp2炭素が、ダイヤモンド加工物の作業表面を形成することになる表面上にほとんど残っていないことを確実にするために使用され得る。逆に、加工工程が深すぎる場合、最終的にダイヤモンド加工物の作業表面を形成するであろうダイヤモンド結晶粒の平均側方結晶粒径は大きくなりすぎ、非常に高品質な機械加工表面仕上げは不可能である。SEM分析は、正しい粒状表面構造を確実に達成するために使用され得る。したがって、本発明者らは、低品質の核生成ダイヤモンド材料を除去すると共に、非常に高品質な機械加工表面仕上げの達成に適した結晶粒径を有する表面を保持することを可能にする、最適な深さ範囲があることを見出した。
【0036】
前述の深さ範囲内において、核生成面が加工される具体的な深さは、ある程度、特定の用途およびその特定の用途のための望ましい粒状構造に依存するであろう。例えば、核生成面から除去される多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の部分の深さは、20μm、15μm、10μm、もしくは5μm以下および/または100nm、200nm、300nm、500nm、もしくは1μm以上であってもよい。
【0037】
多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面の部分を、望ましい深さまで除去するのに適した表面加工工程は、当技術分野で既知であり、下記のうちの1つまたは複数を含む。
機械的ラッピングおよび研磨技術;
適切なガス化学物質を使用したプラズマエッチングなどのエッチング技術を含む化学技術。ガス化学物質としては、例えば、水素、酸素、アルゴン(または他の不活性ガス)、および塩素(または他のハロゲン化物)のうちの1つ以上が挙げられる。低い表面粗さのダイヤモンド表面仕上げを達成するエッチング技術の例は、WO2008/090511に記載されている;
機械的および化学的な加工機構を組み合わせる化学機械加工(CMP)技術。これは、研磨グリット粒子、および加工される超硬材料の表面と反応して表面の化学組成を変化させ、除去をより容易にする化学的構成要素を含む、CMPスラリーを利用する。当該加工は他の材料で利用されており、超硬材料、例えばダイヤモンドを含む超硬材料で、現在開発中である;
レーザービーム切断/切除。レーザー切断は、合成ダイヤモンド製品の切断のための業界標準である;
高エネルギー粒子ビーム切断/切除。電子ビーム切断は、過去にはダイヤモンド製品の切断のために提案されており、最近では、レーザー切断と比較して、相当に速い速度で超硬材料を切断するよう適応している;
放電加工(EDM)。この技術は、ホウ素をドープしたダイヤモンド材料などの導電性超硬材料を切断するために有用である;ならびに
集束イオンビーム(FIB)表面加工。この技術は、ダイヤモンドなどの超硬材料の加工のために、当技術分野で既知である。
【0038】
理想的に、表面下の損傷をほとんど付与しない加工方法を使用して、制御された均一な方法で、望ましい量を除去するべきである。このような技術としては、微細グレード研磨ホイールでの研磨またはCMP加工を挙げることができる。また、多結晶CVDダイヤモンドウエハの成長表面も一般に加工され、ダイヤモンド加工物を取り付けるための平滑で平坦な基準表面を提供する。
【0039】
上記の核生成表面材料の除去に加えて、またはその代案として、多結晶CVDダイヤモンド材料の初期段階の成長を制御して、核生成表面材料のsp2炭素含有量を減少させること、ならびに上記の小さな結晶粒径および低いsp2含有量の組合せを有する作業表面を達成することも可能である。例えば、下記の方法論を使用して、多結晶CVDダイヤモンド材料を成長させてもよい。この方法論は、
基材を提供する工程と、
前記基材の表面にシード添加する工程と、
化学蒸着(CVD)技術を使用して、前記表面上にダイヤモンド核生成層を成長させる工程と、
より厚い多結晶CVDダイヤモンド材料の層を、ダイヤモンド核生成層の上に成長させる工程とを含み、
下記の技術:
(a)シード添加工程でナノ結晶ダイヤモンド粉末を使用する技術であって、ナノ結晶ダイヤモンド粉末は、平均粒径が200nm以下であり、かつD90粒径が500nm以下であり、これにより、基材表面に形成される溝のサイズを減少させ、その結果として、より大きなシード粒子を利用するシード添加プロセスと比較して、基材表面上のダイヤモンド成長中の空隙の形成を減少させる技術と、
(b)ダイヤモンド核生成層を製作するために、交互のCVDダイヤモンド成長工程と非ダイヤモンド炭素のエッチング工程とを使用する技術であって、この技術が、第1の厚さのダイヤモンド層を、化学蒸着によって成長させる工程と、前記ダイヤモンド層の少なくとも一部をエッチングする工程と、前記成長および前記ダイヤモンド層の少なくとも一部をエッチングする工程を、前記ダイヤモンド層の全体としての厚さが第2の厚さに達するまで繰り返す工程とを含み、前記ダイヤモンド層の少なくとも一部をエッチングする前記工程が、非ダイヤモンド相をダイヤモンド相よりも優先的にエッチングし、これにより、ダイヤモンド核生成層におけるダイヤモンド相の割合を、非ダイヤモンド相に対して増加させる技術と、
(c)シード添加後かつその上のダイヤモンド核生成層の成長前に、基材表面に適用される成長前エッチング工程を使用する技術であって、結晶シードがシード添加工程中に基材表面上に堆積され、成長前エッチング工程が、基材表面上の結晶シードよりも、基材表面を優先的にエッチングし、かつ基材表面を平らにするように選択された化学物質を使用するエッチングを含み、これにより、結晶シードにより提供される核生成部位と比較して、基材表面上に、鋭い溝エッジにより形成される核生成部位を減少させる技術とのうちの少なくとも1つを適用することを更に含む方法論である。
【0040】
前述の技術は、微細なナノ粒子のシード添加を使用して、核生成密度を増加させ、かつ基材の溝を減少させて、空隙の形成および非ダイヤモンド炭素相を減少させることと;初期段階の成長中に、交互の成長およびエッチング手順を使用して、非ダイヤモンド炭素を減少させ、結晶粒径を増加させることと;基材表面上の核生成を、シードと比較して減少させて、結晶ドメインを増加させると共に、その結果として、初期段階の成長中に、ダイヤモンド結晶粒径を増加させるように選択された成長前エッチングを使用することとを伴う。有利には、これらの技術は、一緒に適用される2つまたは3つ全ての技術で組み合わせて使用され得る。例えば、ナノ結晶粉末は核生成密度を増加させ、空隙の形成および非ダイヤモンド炭素を減少させて、これにより熱伝導率を増加させることができるが、核生成密度が高すぎる場合、結晶ドメインサイズが減少することがあり、より多い結晶粒境界が生じ、これは熱伝導率を低下させるであろう。したがって、技術(a)および(c)を組み合わせて適用して、高いが制御された核生成が提供されることを可能にしてもよく、これにより、核生成密度対結晶ドメインサイズの最適化を可能にすると共に、空隙の形成、非ダイヤモンド炭素、および他の欠陥を減少させてもよい。その後、多結晶CVDダイヤモンド成長の初期段階の間に、技術(b)を使用して、非ダイヤモンド炭素の量を更に減少させると共に、より高品質なバルク多結晶CVDダイヤモンド成長相に進む前に、核生成層の厚さを減少させてもよい。
【0041】
上記のように、多結晶CVDダイヤモンド材料のウエハの成長および加工の後、ウエハは複数のダイヤモンド加工物に切断される。切断は、典型的には、レーザーを使用して行われるであろうが、他の切断方法、例えばe−ビーム切断を利用してもよい。ある種の実施形態では、切断後に、ダイヤモンド加工物を更に表面加工してもよい。例えば、標準微粉砕技術を使用して、エッジ加工を完了してもよい。ダイヤモンド工具のエッジの品質および寿命は、より少ない表面および表面下の損傷を付与するプロセス、例えばレーザー成形プロセスの使用により、更に向上し得る。
【0042】
本明細書で記載される多結晶CVDダイヤモンド加工物を達成するための別の合成方法を使用してもよく、この方法は、成長状態の多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面の合成後の加工の必要性を回避する。このような方法は、非常に平坦で低い表面粗さの成長基材を利用し、かつシード添加および初期段階のダイヤモンド成長技術、例えば上記の技術を使用した、初期段階のダイヤモンド成長の注意深い制御を利用して、良質な核生成面のダイヤモンド材料を達成し得る。この場合、成長状態の多結晶CVDダイヤモンド材料の核生成面が十分に良好に形成され得るので、成長基材の除去後に、核生成面の表面加工は必要ではない。
【0043】
例えば、成長基材は、成長基材を横切る5mmの長さにわたって測定される表面平坦度が、≦5μm、≦4μm、≦3μm、≦2μm、≦1μm、≦0.5μm、≦0.2μm、≦または0.1μmであってもよい。更に、成長基材は、表面粗さRaが≦20nm、≦10nm、≦5nm、≦2nm、または≦1nmであってもよい。このような成長基材は、例えば、炭化物を形成する高融点金属基材、例えばタングステンまたはシリコンウエハで形成され得る。成長基材の成長表面は、その上にダイヤモンドを成長させる前に、高い平坦度および低い表面粗さに加工される。これまでに記載したシード添加および初期段階のダイヤモンド成長プロセスと組み合わせて使用する場合、高い平坦度および低い表面粗さを有する低いsp2ダイヤモンド核生成面が達成され得る。したがって、本明細書で記載される複数の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を製作する別の方法であって、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層を成長基材上に成長させる工程であって、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層が核生成面および成長面を有し、核生成面が成長面よりも小さな結晶粒を含み、成長面の平均側方結晶粒径が10μm以上であり、
成長基材は、成長基材を横切る5mmの長さにわたって測定される表面平坦度が≦5μmであり、表面粗さRaが≦20nmであり、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の成長は、成長基材の除去後に、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層の核生成面が
(a)成長面よりも小さなダイヤモンド結晶粒と、
(b)10nm〜15μmの範囲の平均側方結晶粒径と、
(c)加工済核生成表面上に集束するレーザーによって生成されるラマン信号とを有するように制御され、このラマン信号が、
(1)1332cm-1のsp3炭素ピークは、半値全幅が8.0cm-1以下であること、
(2)1550cm-1のsp2炭素ピークは、633nmのラマン励起源使用時に、バックグラウンド除去後の高さが、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの20%以下であること、および
(3)1332cm-1のsp3炭素ピークが、785nmのラマン励起源を使用したラマンスペクトルにおいて、局所バックグラウンド強度の10%以上であること、
の特徴のうちの1つまたは複数を示す、工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層を切断して、それぞれの多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物の作業表面が、前記核生成面で形成されるように、複数の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物を形成する工程とを含む、方法が提供される。
【0044】
要約すると、この発明の実施形態は、多結晶CVDダイヤモンド材料の異方性材料特性を、注意深い成長および/または加工制御と組み合わせて利用して、非常に高品質な機械加工表面仕上げを可能にするダイヤモンド工具を提供する。本発明の実施形態は、アルミニウムおよび他の材料の機械加工用途において、単結晶ダイヤモンド工具を補完し、また、非常に高品質な機械加工表面仕上げを達成できる長いエッジ長の工具を必要とする用途のための解決策を提供する。
【0045】
この発明は、実施形態を参照して、特に示され、記載されているが、当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がなされ得ることを理解するであろう。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕多結晶CVD合成ダイヤモンド工具での使用のための多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物であって、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が、
作業表面と、
取付用後部表面とを備え、
取付用後部表面の平均側方結晶粒径が10μm以上であり、
作業表面が、
(a)取付用後部表面よりも小さなダイヤモンド結晶粒と、
(b)10nm〜15μmの範囲の平均側方結晶粒径と、
(c)作業表面上に集束するレーザーによって生成されるラマン信号とを含み、前記ラマン信号が、以下の特性:
(1)半値全幅が8.0cm-1以下である、1332cm-1のsp3炭素ピーク、
(2)633nmのラマン励起源使用時に、バックグラウンド除去後に、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの20%以下の高さを有する、1550cm-1のsp2炭素ピーク、および
(3)785nmのラマン励起源を使用したラマンスペクトルにおいて、局所バックグラウンド強度の10%以上である、1332cm-1のsp3炭素ピーク
のうちの1つまたは複数を示す、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔2〕作業表面の平均側方結晶粒径が、20nm、40nm、60nm、80nm、100nm、500nm、1μm、2μm、または5μm以上である、前記〔1〕に記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔3〕作業表面の平均側方結晶粒径が、12μm、10μm、8μm、6μm、4μm、または2μm以下である、前記〔1〕または〔2〕に記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔4〕取付用後部表面の平均側方結晶粒径が、12μm、14μm、16μm、18μm、20μm、30μm、40μm、または50μm以上である、前記〔1〕から〔3〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔5〕作業表面の1332cm-1のsp3炭素ピークの半値全幅が、7.0cm-1、6.0cm-1、4.0cm-1、3.0cm-1、2.5cm-1、または2.0cm-1以下である、前記〔1〕から〔4〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔6〕作業表面の1550cm-1のsp2炭素ピークが、633nmのラマン励起源使用時において、バックグラウンド除去後に、1332cm-1のsp3炭素ピークの高さの10%、5%、1%、0.1%、0.01%、または0.001%以下である、前記〔1〕から〔5〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔7〕作業表面の1332cm-1のsp3炭素ピークが、785nmのラマン励起源を使用したラマンスペクトルでの局所バックグラウンド強度の20%、30%、40%、50%、60%、または70%以上である、前記〔1〕から〔6〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔8〕作業表面から取付用後部表面までの厚さが、200μm、400μm、600μm、800μm、1mm、1.5mm、または2mm以上である、前記〔1〕から〔7〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔9〕作業表面は、少なくとも1つの直線寸法が、少なくとも6mm、8mm、10mm、12mm、15mm、20mm、30mm、または50mmである、前記〔1〕から〔8〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔10〕摩耗部品;ドレッサ;伸線ダイ;ゲージストーン;またはカッターの形態である、前記〔1〕から〔9〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔11〕切断エッジを備え、作業表面が切断エッジから延びる、前記〔1〕から〔10〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔12〕作業表面を引っ張った状態での引張破断強度が、厚さ200〜500μmでは≧760MPa×n;厚さ500〜750μmでは≧700MPa×n;厚さ750〜1000μmでは≧650MPa×n;厚さ1000〜1250μmでは≧600MPa×n;厚さ1250〜1500μmでは≧550MPa×n;厚さ1500〜1750μmでは≧500MPa×n;厚さ1750〜2000μmでは≧450MPa×n;または厚さ≧2000μmでは≧400MPa×nであり、式中、倍率nは1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8、または2である、前記〔1〕から〔11〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔13〕取付用後部表面を引っ張った状態での引張破断強度が、厚さ200〜500μmでは≧330MPa×n;厚さ500〜750μmでは≧300MPa×n;厚さ750〜1000μmでは≧275MPa×n;厚さ1000〜1250μmでは≧250MPa×n;厚さ1250〜1500μmでは≧225MPa×n;厚さ1500〜1750μmでは≧200MPa×n;厚さ1750〜2000μmでは≧175MPa×n;または厚さ≧2000μmでは≧150MPa×nであり、式中、倍率nは1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8、または2である、前記〔1〕から〔12〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔14〕作業表面は、表面平坦度が≦5μm、≦4μm、≦3μm、≦2μm、≦1μm、≦0.5μm、≦0.2μm、≦または0.1μmである、前記〔1〕から〔13〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔15〕作業表面は、表面粗さRaが≦20nm、≦10nm、≦5nm、≦2nm、または≦1nmである、前記〔1〕から〔14〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔16〕熱伝導率が1000Wm-1-1、1200Wm-1-1、1400Wm-1-1、1600Wm-1-1、1800Wm-1-1、1900Wm-1-1、2000Wm-1-1、2100Wm-1-1、または2200Wm-1-1以上である、前記〔1〕から〔15〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔17〕多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が、多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の独立ピースの形態、または、作業表面が露出され、取付用後部表面が支持基材に結合した状態で、支持基材上に配設された多結晶CVD合成ダイヤモンド材料の層の形態である、前記〔1〕から〔16〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物。
〔18〕前記〔1〕から〔17〕までのいずれかに記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が取り付けられるホルダとを備える、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具であって、
多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物の作業表面が露出され、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面を形成するように、多結晶CVD合成ダイヤモンド加工物が配向されている、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具。
〔19〕前記〔18〕に記載の多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を使用して、材料を加工する方法であって、
前記多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面が、加工される材料と接触するように、多結晶CVD合成ダイヤモンド工具を配向させる工程と、
多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面が、加工される材料と接触している状態で、材料と多結晶CVD合成ダイヤモンド工具の作業表面との相対運動を与えることによって、材料を加工する工程とを含む、方法。
図1
図2
図3
図4