【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載のステップを有する方法が提供されることによって解決される。この場合、内燃機関の噴射システム内の圧力履歴が、少なくとも噴射中に時間分解して取得される。1つの基準圧力履歴が、当該噴射システムの少なくとも1つの動作点に対して提供される。当該取得された圧力履歴が、この基準圧力履歴と比較され、少なくとも1つの噴射パラメータが、当該比較に応じて決定される。当該噴射パラメータの決定の根拠が、当該噴射システム内の圧力履歴であることによって、当該噴射パラメータが、それに直接に関連した物理変数によって決定される。したがって、高い精度が可能である。当該取得された圧力履歴は、噴射パラメータを決定するために基準圧力履歴と比較されるので、フィルタリング処理が不要である。その結果、位相遅れ及び情報損失が回避される。当該比較は、速く且つリアルタイムに実行可能であり、当該方法は、同時に僅かな労力で済む。全体の噴射サイクルが観察されるので、当該方法は、ロバストである。その結果、当該噴射パラメータの決定が、少しだけ選択された複数の測定点の評価、例えば当該圧力履歴の最小値又は最大値に基づかない。同時に、噴射システムに対する要求が少ない。特に、高圧ポンプの伝達周波数とインジェクタの噴射周波数との一定の割り当てが不要である。原理的には、妨害周波数が、当該方法に悪影響を及ぼさない。何故なら、取得された圧力履歴を基準圧力履歴と比較することに起因して、当該妨害周波数は、結果に影響しないからである。
【0007】
上記圧力履歴が、内燃機関の動作中に持続して取得されることが可能である。この場合、比較すべきデータ量を減少させるため、特に、取得される圧力履歴の範囲が、上記基準圧力履歴との比較のために選択される。この代わりに、当該圧力履歴が、噴射中だけ時間分解して取得されていることが可能である。この場合、噴射の開始及び/又は噴射の終了が、圧力履歴によって示されることを保証するため、好ましくは、噴射の開始前の少なくとも短い期間及び/又は噴射後の少なくとも短い期間も一緒に取得される。この場合、これらの期間は、同じインジェクタの2つの噴射事象間の時間間隔に比べて短い。当該必要な時間の付与は、特に内燃機関の制御装置によって実行される。
【0008】
上記方法の好適な実施の形態では、上記基準圧力履歴は、内燃機関のテストベンチ測定によって得られ、特に制御装置内に格納される。この代わりに、当該基準圧力履歴が、実際の内燃機関又は実際の内燃機関のモデルに対して分析又は数値計算又はシミュレートされることが可能である。また、このことは、好ましくは、リアルタイムに実行されるのではなくて、当該内燃機関の始動前の最初に実行される。この場合、当該基準圧力履歴は、上記制御装置内に格納される。
【0009】
上記方法の好適な実施の形態では、決定された少なくとも1つの噴射パラメータが、噴射を調整するために、噴射の開始及び/又は噴射量とも記される噴射される燃料量を調整するために使用される。この場合、動作点によって決まる適切な複数の目標噴射パラメータが、特にエンジン特性マップで、上記制御装置内に格納されている。当該調整を実行するため、これらの目標噴射パラメータは、決定される噴射パラメータと比較される。この場合、当該決定される噴射パラメータが、対応する目標噴射パラメータに調整される。対応する調整方法は、既知であるので、これに関しては、詳しく説明しない。
【0010】
この代わりに又はこれに加えて、上記の決定された噴射パラメータが、噴射システムを診断するために使用されることが提唱されている。当該方法の範囲内では、特に、当該噴射システムのいわゆるオンボードダイアグノーシスが有益に実行される。この場合、当該噴射システムが、噴射挙動におけるエラーに関してリアルタイムで検査される。この場合、特に好ましくは、エラー認識が、当該内燃機関の個々のインジェクタに対して実行される。この場合、エラーのあるインジェクタが確認され得る。
【0011】
上記方法の別の好適な実施の形態では、圧力測定及び/又は取得された圧力履歴の特性に関する情報が、取得された圧力履歴を基準圧力履歴と比較することから得られる。したがって、当該基準圧力履歴との比較によって、上記噴射システムを診断することと、当該圧力履歴を取得するために設けられている圧力センサの特性を判定することとの双方が可能である。したがって、エラーを、圧力測定中に、特に当該圧力測定のために設けられている圧力センサで、当該方法の範囲内で認識し評価することも可能である。
【0012】
目標噴射量に応じた基準圧力履歴が、上記噴射システムの動作点として提供されることを特徴とする方法が有益になる。したがって、当該基準圧力履歴は、既定の噴射量、特に噴射すべき容量又は噴射すべき質量に割り当てられている。その結果、原理的には、実際の噴射量が、取得された圧力履歴を基準圧力履歴と比較することによって決定され得る。特に、当該基準圧力履歴は、当該噴射システムの共通の1つの蓄圧容器内の圧力にさらに応じて提供される。この場合、この圧力は、好ましくは噴射開始圧力である、すなわち噴射開始の時点に当該共通の蓄圧容器内に存在する圧力である。このような共通の1つの蓄圧容器は、共通のレール(コモンレール)とも記される。この場合、このような共通の1つの蓄圧容器を有する噴射システムは、コモンレール噴射システムと記される。当該共通の蓄圧容器は、複数のインジェクタに燃料を供給するために使用される。この場合、当該蓄圧容器は、異なる噴射中の個々のインジェクタの領域内の圧力の変動から当該容器の圧力を分離するために使用される。これにより、個々のインジェクタの流量配分が、その他のインジェクタの挙動からほとんど独立して実行され得る。実際に噴射される燃料の量、すなわち噴射量が、噴射開始時の当該共通の蓄圧容器内の圧力によって決まることは明らかである。それ故に、特に、当該実際に噴射される噴射量を正確に決定するためには、1つの動作点に対する基準圧力履歴が、当該目標噴射量と、当該共通の蓄圧容器内の圧力、特に噴射開始圧力との双方に応じて提供されることが重要である。この場合、当該噴射システムのこの動作点は、当該目標噴射量と当該噴射開始圧力とによって与えられている。
【0013】
噴射開始時期が、噴射パラメータとして上記比較に応じて決定される方法の実施の形態も有益になる。この代わりに又はこれに加えて、噴射量が、特に噴射される燃料容量として又は噴射される燃料質量として、当該比較に応じて有益に決定される。この代わりに又はこれに加えて、別の噴射パラメータが、当該比較に基づいて決定されることが可能である。例えば、当該方法の範囲内で、噴射の終了を噴射パラメータとして決定することも可能である。同様に、噴射期間が決定され得る。
【0014】
それぞれ1つの基準圧力履歴が、複数の動作点に対して提供される上記方法の実施の形態が有益になる。上記の取得された圧力履歴が、1つより多い基準圧力履歴と比較され、1つの比較値の最適化が実行される。複数の基準圧力履歴が、目標噴射量と共通の蓄圧容器内の圧力とに応じて格納されている。当該取得された圧力履歴は、提供された全ての基準圧力履歴又は当該記憶された基準圧力履歴のうちの選択された基準圧力履歴と比較される。この場合、当該取得された圧力履歴とそれぞれの基準圧力履歴との間の類似度を示す変数が、比較値として使用される。少なくとも当該比較のために使用される複数の基準圧力履歴のうちで、当該取得された圧力履歴に最も類似する基準圧力履歴が探索されることによって、当該比較値は最適化される。このとき、1つの目標噴射量が、各基準圧力履歴に割り当てられているので、当該取得された圧力履歴の範囲内で実際に噴射される噴射量が、当該取得された圧力履歴によって最適な比較値を提供する当該基準圧力履歴に割り当てられている目標噴射量に一致することが有益に推測される。こうして、当該実際に噴射される噴射量を、当該取得された圧力履歴を異なる複数の基準圧力履歴と何度も比較することによって決定することが可能である。
【0015】
上記の比較を開始するため、内燃機関のその時の1つの動作点が、特に制御装置によって提供される。この動作点は、特に、噴射の検出時にそのインジェクタを制御するためにも使用される。上記噴射システムの、一般に上記の目標噴射量及び共通の蓄圧容器内の圧力に加えて別のパラメータを含む1つの動作点が、部分集合として、当該内燃機関の動作点にほぼ一致する。この場合、当該制御装置によって提供された動作点に対して格納されている基準圧力履歴が、当該比較を開始するための開始基準圧力履歴として選択される。
【0016】
特に、提供又は格納された全ての基準圧力履歴が、同じ1つの噴射開始時期を有する。この場合、実際の噴射開始時期が、好ましくは上記比較中に決定される基準圧力履歴に対する取得された圧力履歴の時間差から決定される。
【0017】
以上により、上記方法の範囲内で、取得された圧力履歴を基準圧力履歴と比較することによって、噴射開始時期と実際に噴射される噴射量との双方を決定することが可能である。
【0018】
上記圧力履歴が、時間の単位で、特にmsで時間分解して取得されることが可能である。この代わりに、当該圧力履歴が、内燃機関の回転軸の角度の単位で、特にクランク軸の角度の単位で時間分解して取得されることが可能である。しかしながら、この場合、さらに、当該内燃機関の回転数又は場合によっては実際に使用される軸の回転数を一緒に考慮することが可能である。上記基準圧力履歴は、特に当該圧力履歴と同じ単位で提供される。その結果、上記比較前の換算が不要である。当該圧力履歴及び/又は基準圧力履歴が、どの単位で提供されるかに関係なく、好ましくは等間隔の複数の点が取得又は使用される。したがって、これらの点は、互いに一定の時間間隔を有する。その結果、時間軸又は角度軸に対する明示の取得又は格納が不要である。この場合、むしろ、当該時間値又は角度値は、当該圧力履歴に対して取得されたこれらの点のインデックス又はこれらの点の順序から得られる。その結果、データが著しく低減される。
【0019】
上記方法は、特に、複数のインジェクタを有する内燃機関の各インジェクタに対して実行される。この場合、上記噴射パラメータをインジェクタごとに評価すること、及び、インジェクタごとの噴射の調整及び/又は上記噴射システムのインジェクタごとの診断のために使用することが、当該方法の範囲内で容易に可能である。
【0020】
上記内燃機関の1つのインジェクタの1つの単一アキュムレータ内の圧力履歴が取得される方法が有益になる。この場合、当該内燃機関の噴射システムが、複数のインジェクタを有する。これらのインジェクタは、特定の燃料容量のための単一アキュムレータを有する。噴射される燃料が、噴射中にこれらの単一アキュムレータから取り出される。その結果、個々のインジェクタ内に単一アキュムレータを有しない噴射システムに比べて、これらのインジェクタが、非常に効率的に互いに分離される。したがって、別のインジェクタの噴射事象が、対象となるインジェクタの単一アキュムレータの圧力にほとんど又は全く影響しない。これにより、当該対応する方法は、非常に高い精度を有する。何故なら、当該個々のインジェクタが、個別の蓄勢容積を介して互いに分離されているからである。したがって、当該方法の範囲内では、各インジェクタに対する少なくとも1つの噴射パラメータの別々の決定が、容易に可能である。
【0021】
この代わりに、インジェクタに向かう燃料管内の圧力履歴が取得される方法の実施の形態が有益になる。この場合、圧力履歴のための測定箇所が、特に当該インジェクタに可能な限り近く設置される。このような方法でも、少なくとも1つの噴射パラメータのインジェクタごとの決定が可能である。共通の蓄圧容器のインジェクタを切り離す絞り弁の下流の圧力履歴が取得されることによって、当該方法のこの実施の形態の精度が向上され得る。当該インジェクタを当該共通の蓄圧容器から水圧的に分離するため、当該絞り弁が、当該燃料管内に設けられている。その結果、噴射中の当該インジェクタ内の圧力変動が、当該共通の蓄圧容器内の圧力に影響しないか又はほとんど影響しない。反対に、例えば、別のインジェクタ内の噴射事象に起因する当該共通の蓄圧容器内の圧力変動が、当該絞り弁の下流の管部分内にほとんど影響しないか又は全く影響しない。いずれにしても、当該絞り弁が、2つの方向の圧力変動を緩和させる。したがって、当該少なくとも1つの噴射パラメータをインジェクタごとに非常に高い精度で決定することが、当該絞り弁の下流の圧力履歴を取得することによって可能である。
【0022】
この代わりに、噴射システムの共通の蓄圧容器内の圧力履歴が取得される方法が有益になる。この場合、当該方法は、採算性が非常に良い。何故なら、圧力センサが、当該共通の蓄圧容器の領域内に必ず設けられているからである。この場合、この圧力センサの信号が、専ら当該方法の範囲内で適切に評価される。すなわち、追加のセンサが不要である。この場合も、少なくとも1つの噴射パラメータのインジェクタごとの決定が可能である。何故なら、時間位置に対する当該共通の蓄圧容器内の圧力変化が、個々のインジェクタの噴射事象に割り当てられ得るからである。この場合、このような割り当ては、制御装置によって容易に実行され得る。この制御装置は、当該個々のインジェクタを、これらのインジェクタにそれぞれ割り当てられた時点に制御する。この場合、内燃機関の既知の点火順序も、当該評価のために使用され得る。しかしながら、当該方法のこの実施の形態では、精度が、上記の実施の形態の場合よりも低いことが分かっている。この実施の形態によれば、一般に、当該内燃機関のシリンダ又はインジェクタごとの調整が可能でない。何故なら、当該調整のための精度が十分でないからある。しかしながら、当該精度は、当該噴射システムのための特にオンボードダイアグノーシスを目的としたエラー認識を実行できるようにするためには十分に足りる。すなわち、この場合は、要求される精度は、噴射を調整するための精度よりも低い。この場合、当該方法は、例えば噴射量又は噴射開始時期のような噴射パラメータが決定され得るだけではなくて、当該噴射開始時期及び当該噴射量と同様に、特に噴射終了時期及び/又は噴射期間が、取得された圧力履歴を基準圧力履歴と比較することに基づいて容易に決定され得るという利点を奏する。それ故に、当該方法の範囲内では、当該噴射のオンボードダイアグノーシスのためのシステムに対する既存の要求を満たすことが可能であるだけではなくて、場合によっては、その後にこのようなシステムに指定される要求を満たすことも可能である。
【0023】
取得された圧力履歴と少なくとも1つの基準圧力履歴との相互相関関数が計算されることによって、上記比較が実行される方法の実施の形態も有益になる。この場合、相互相関関数K(τ)が、その普遍性を制限することなしに、時間に依存する2つの関数x(t)、y(t)に対して、以下の方程式:
【0024】
【数1】
によって与えられている。
【0025】
離散時点t
0,t
0+iΔt,...,t
0+NΔt(i=1,...,N)に対する離散信号に対しては、相互相関関数corr(k)が、
【0026】
【数2】
によって与えられている。
【0027】
上記類似度と、2つの信号間又は曲線間又はデータセット間の偏差、ここでは、特に、取得された圧力履歴と基準圧力履歴との間の偏差が、上記相互相関関数に基づいて算定され得る。当該方法の好適な実施の形態では、噴射パラメータとしての噴射開始時期が、当該基準圧力履歴に対する当該取得された圧力履歴の偏差から決定される。当該相互相関関数は、類似度の目安として及び当該取得された圧力履歴と当該基準圧力履歴との間の偏差に対する目安として簡単に且つ速く計算され得る。
【0028】
取得された圧力履歴と基準圧力履歴との相関率が、比較値として計算されることを特徴とする方法も有益になる。この場合、当該相関率は、互いに比較される圧力履歴の類似度に対する目安である。これらの圧力履歴が、最も類似しているときに、当該相関率は、最大である。当該相互相関関数の最大値又は当該相互相関関数による積分、すなわち当該相互相関関数によって計算された面積を、比較値として使用することも可能である。当該比較値、特に当該相関率は、取得された圧力履歴を1つより多い基準圧力履歴と比較することによって最大にされる。この場合、当該取得された圧力履歴との相関時に最大の相関率を与える基準圧力履歴が発見される。噴射量が、最大の相関率を有する基準圧力履歴に割り当てられた目標噴射量として確定される。したがって、最終的には、当該取得された圧力履歴に最も類似する基準圧力履歴が発見される。この場合、実際に噴射される噴射量が、当該目標噴射量に一致するとみなされる。この基準圧力履歴は、この目標噴射量に対して格納されている。
【0029】
上記の比較値の最適化又は相関率の最大化の範囲内では、−既に説明したように−好ましくは、制御装置によって予め設定されている1つの動作点によって決定されている1つの基準圧力履歴によって開始される。このとき、当該方法の1つの実施の形態では、この動作点の近傍で、当該相関率の1つの極大値を探索することが可能である。この場合、任意の探索方法が、基本的に使用可能である。この場合、当該探索方法では、好ましくは、勾配が作成される。例えば、いわゆる山登り法にしたがう探索アルゴリズムが使用可能である。当該方法の別の実施の形態では、当該相関率の1つの最大値が、特に統計学的な探索方法を用いて全ての基準圧力履歴にわたって探索されることも可能である。これにより、場合によっては、当該方法の精度が、さらに向上され得る。しかしながら、一般には、最初に予め設定されている動作点の近傍で、1つの極大値を探索することで十分である。何故なら、エラーが、噴射システム内に少なくとも存在しないときは、実際に存在する動作点が、当該制御装置によって予め設定されている動作点から大幅に外れるはずがないからである。反対に、適切な極大値が、当該最初の動作点の既定の近傍で発見され得ないときは、当該噴射システム内のエラーに気づくことが可能である。
【0030】
少なくとも1つの基準圧力履歴が、圧縮データセットとして提供されることを特徴とする方法も有益になる。これにより、格納されたデータ量を明らかに減少させることが可能である。その結果、第一には、当該方法は、内燃機関内で又は内燃機関の制御装置上で使用可能になる。すなわち、ここで提供されるメモリリソースは限定されている。それぞれの基準圧力履歴を得るため、当該圧縮データセットは、特にその比較前に特に復帰される。
【0031】
この場合、上記圧縮データセットが、主成分分析によって基準圧力履歴から計算されることを特徴とする方法が有益になる。この場合、当該圧縮データセットが、逆主成分分析によって復帰される。当該主成分分析は、特に、膨大なデータセットを構築し簡略化するために使用される統計学的な分析方法である。
【0032】
上記の方法の1つの実施の形態では、具体的には:1つの基準圧力履歴が、その普遍性を制限することなしに、一次元の列ベクトルとして、噴射システムの各動作点に対して表記される。これらの列ベクトルは、マトリックスに対して配置されている。この場合、このマトリックスの複数の行位置が、異なる動作点に相当する。以上により、1つのマトリックスが作成される。このマトリックスは、その列インデックスに沿って、時間と共に増大する複数の圧力値を含む。その一方で、行インデックスは、保持された行インデックスの場合には異なる動作点を示す。このマトリックスは、主軸変換される、すなわち新しい基底を有するベクトル空間に変換される。データセットの共分散マトリックスが対角化されるように、当該新しい基底が選択される。この場合、データセットの複数のデータが、相関を失う。この場合、このデータセットの個々の要素の統計学的な依存性が、互いに最小にされる。同時に、一般には当該変換されたマトリックスの第1列ベクトルである第1主成分が、このデータセット内の全区分の大部分を占めるように、複数の座標軸の順序が分類し直される。この場合、第2主成分、すなわち一般には第2列ベクトルが、その次に大きい部分を占める。したがって、この場合、これらの列ベクトルは連なっている。このとき、このデータセットの重要な情報が、当該第1主成分中に挿入されている。この場合、その後方の主成分は、当該全区分の本質的により少ない部分を占める、すなわち本質的により少ない情報内容を含む。それ故に、無視できない情報損失が、削除によって発生することなしに、当該後方の主成分を代用なしに削除することが可能である。当該方法の希望した精度に応じて、より多い又はより少ない主成分が、当該分析中に考慮され得る。
【0033】
上記圧縮データセットを復帰するために必要なデータが、最初のデータセットから算定された、保持されている時間インデックスに対する複数の動作点と、対応する複数の標準偏差と、主成分分析中に計算された複数の主成分と、これらの主成分の相関率の逆数とに関する平均化に由来する複数の平均値を有する。
【0034】
上記方法は、非常に大きいデータセットの場合に非常に有益である。例としては、複数の基準圧力履歴に対するそれぞれ501個の測定点を1000個の動作点に対して有する1つのデータセットが、普遍性を制限することなしに考慮されなければならない。したがって、当該最初のデータセットは、501,000個のデータ点を有する。このとき、普遍性を制限することなしに、当該方法を十分な精度で実行するためには、4つの主成分で十分である。最後に記憶されたデータ、すなわち圧縮データセットは、複数の動作点に関する平均化時の複数の平均値に対する501個の値と、複数の標準偏差に対する501個の値と、1000個の動作点での4つの主成分に対する4,000個の値と、1つの基準圧力履歴当たりの501個の点での複数の主成分の相関率の逆数に対する2,004個の値とを有する。したがって、これらのデータ点の数が、全部で7,006個まで積算される。これは、最初の501,000個のデータ点の1%だけになる。圧縮率は、当該最初のデータセットの増大する大きさと共に増大する。
【0035】
上記主成分分析は、複数の基準圧力履歴から1つの圧縮データセットを生成するために大きい潜在能力を有し、第一に、このような方法を内燃機関の制御装置内で有益に実行すること又は対応するデータ量を内燃機関の制御装置内に格納することを可能にすることが分かっている。すなわち、さもなければ、現状の制御装置では、当該方法を実行するために望ましい数の基準圧力履歴を十分な分解能で制御装置のメモリ領域内に提供することは全く不可能であろう。
【0036】
上記主成分分析は、データを減少させるために又はデータセットを圧縮させるために好ましくは最初に1回だけ実行される。この場合、圧縮データセットが、制御装置内に格納される。上記比較のために望ましい1つの基準圧力履歴を提供するため、当該データセットは、この基準圧力履歴を取得された圧力履歴と比較する前に復帰される。このことは、非常に速く且つ僅かな労力だけで当該制御装置内で実行され得る。
【0037】
上記のデータの著しい減少には、複数の基準圧力履歴のためのメモリ空間の提供に関連して発生するコストが削減されるという利点がある。一方ではデータセットの圧縮と、他方ではその復帰とが、ソフトウェア・ソリューションとしてほぼ実費ベースで実行される。以上により、噴射をモデルベースで調整するための圧縮されたデータ及び/又は噴射システムの診断が、当該方法の範囲内で提供される。
【0038】
上記課題は、請求項10に記載の特徴を有する内燃機関が提供されることによっても解決される。この内燃機関は、少なくとも1つのインジェクタを有する噴射システムを備える。さらに、この内燃機関は、圧力センサを有する。この圧力センサは、噴射中の噴射システム内の圧力履歴を時間分解して取得するように構成されていて、特に当該取得のために適するように設けられている。さらに、上記の方法の実施の形態を実行するために配置されている制御装置が設けられている。この場合、当該方法に関連して既に説明した利点が奏される。
【0039】
上記方法が、上記制御装置のハードウェア構造体内に実装されていることによって、この制御装置が、当該方法を実行するために設けられていることが可能である。この代わりに、命令を含むコンピュータプログラムプロダクトが、当該制御装置内に格納されていることが可能である。当該コンピュータプログラムプロダクトが、当該制御装置上で進行するときに、上記の実施の形態にしたがう方法が、当該命令に基づいて実行される。
【0040】
それ故に、命令を含むコンピュータプログラムプロダクトも有益になる。上記方法が、計算機上で、特に内燃機関の制御装置上で進行するときに、上記の複数の実施の形態のうちの1つの実施の形態にしたがう方法が、当該命令に基づいて実行される。
【0041】
上記コンピュータプログラムプロダクトが記憶されている記憶媒体も有益になる。この場合、当該記憶媒体が、内燃機関用の制御装置として構成されていることが可能である。
【0042】
また、上記の方法の実施の形態を実行するために設けられている制御装置が、単体で有益になる。
【0043】
上記制御装置が、内燃機関を総合的に制御する当該内燃機関のエンジン制御装置として構成されていることが可能である。この代わりに、独立した制御装置が、上記方法を実行するために設けられていることが可能である。この場合、特に、当該独立した制御装置が、上記噴射システムに付設されているか又は当該噴射システムの構成要素であることが可能である。
【0044】
上記内燃機関は、特にストロークピストンエンジンとして構成されていて、好ましくは複数のシリンダを有する。この場合、特に少なくとも1つのインジェクタが、各シリンダに付設されている。この場合、当該方法は、全てのインジェクタ及び/又は内燃機関のシリンダに対して実行される。その結果、噴射のインジェクタごとの調整若しくはシリンダごとの調整及び/又は噴射システムの診断が可能である。
【0045】
好適な実施の形態では、上記内燃機関は、特により重い陸上車両又は水上車両、例えば鉱山車両、列車を駆動するために使用される。この場合、当該内燃機関は、機関車若しくは軌道車両で使用されるか又は船舶によって使用される。防衛のために使用される車両、特に戦車を駆動させるために内燃機関を使用することも可能である。当該内燃機関の1つの実施の形態が、特に固定式にも使用される、例えば固定式のエネルギー供給のために非常用発電運転、連続負荷運転又はピーク負荷運転で使用される。この場合、当該内燃機関は、特に発電機を稼働させる。補助動力装置、例えば掘削プラットフォーム上の消化ポンプを稼働させるために当該内燃機関を固定式に使用することも可能である。当該内燃機関は、特にディーゼルエンジンとして、ガソリンエンジンとして、天然ガス若しくはバイオガス若しくは特殊ガス又はその他の適切なガスで稼働させるためのガスエンジンとして構成されている。特に、当該内燃機関が、ガスエンジンとして構成されている場合、当該内燃機関は、固定式にエネルギーを生成するための火力発電所内で使用するために適している。
【0046】
上記制御装置が、少なくとも1つのメモリ領域を有することを特徴とする内燃機関が有益になる。この場合、噴射システムの少なくとも1つの動作点に対する少なくとも1つの基準圧力履歴が、当該メモリ領域内に格納されている。当該制御装置は、圧力履歴を取得するために圧力センサに作用接続されている。この場合、当該制御装置は、取得された圧力履歴を少なくとも1つの基準圧力履歴と比較するために設けられている比較手段を有する。少なくとも1つの噴射パラメータを当該比較に応じて決定するため、当該制御装置は、手段をさらに有する。
【0047】
上記噴射システムが、共通の蓄圧容器及び複数のインジェクタを有することを特徴とする内燃機関も有益になる。この場合、当該インジェクタに付設された燃料管が、当該蓄圧容器から各インジェクタまで敷設されている。したがって、当該噴射システムは、共通のレールを有する噴射システムとして又はコモンレール噴射システムとして構成されている。特に好適な実施の形態では、これらのインジェクタはそれぞれ、単一アキュムレータを有する。当該共通の蓄圧容器に対するこれらのインジェクタ内の圧力変化が、当該単一アキュムレータによって緩和されている。
【0048】
この代わりに又はこれに加えて、各燃料管は、蓄圧容器と燃料管に付設されたインジェクタとの間に配置されている絞り弁を有する。この場合、当該インジェクタに起因する圧力波が、この絞り弁で反射する。その結果、当該圧力波は、共通の蓄圧容器内まで伝播しない。その結果、個々のインジェクタが、当該蓄圧容器から非常に良好に且つ互いに分離される。この場合、全ての燃料管が、当該絞り弁から当該インジェクタまでの管の長さに等しいことが有益に提唱されている。
【0049】
上記圧力センサが、共通の蓄圧容器内の圧力を取得するように、この圧力センサが配置されていることを特徴とする内燃機関が有益になる。この場合、当該圧力センサは、当該蓄圧容器に好ましくは直接に配置されている。この代わりに、−特に絞り弁の下流の−燃料管内の圧力が、当該圧力センサを用いて取得可能であるように、この圧力センサが配置されていることが有益になる。この場合、この圧力センサは、当該燃料管に又はその中に特に直接に配置されている。
【0050】
この代わりに、1つのインジェクタの1つの単一アキュムレータ内の圧力が取得可能であるように、上記圧力センサが配置されている実施の形態が有益になる。この場合、当該圧力センサは、当該単一アキュムレータの領域内でそのインジェクタに好ましくは直接に配置されている。
【0051】
上記圧力センサは、特に歪みセンサ又は歪みゲージとして構成されている。
【0052】
追加の圧力センサが、上記共通の蓄圧容器内の圧力を取得するために設けられている内燃機関の実施の形態も有益になる。当該方法の範囲内で使用される圧力センサが、燃料管又は1つのインジェクタの1つの単一アキュムレータ内の圧力を取得するように、当該圧力センサが配置されている場合に、このことは、特に有益である。当該追加の圧力センサは、特に当該蓄圧容器に特に直接に設けられている。当該蓄圧容器内の圧力を監視するため、及び/又は、噴射システムの1つの動作点を決定するため、いずれにしても、このような圧力センサは、通常はコモンレール噴射システムに設けられている。この場合、特に噴射開始圧力が取得される。制御装置が、当該共通の蓄圧容器内の圧力に応じて当該噴射システムの1つの動作点を決定するために設けられている。当該噴射システムのその時の動作点を決定するため、特に、当該制御装置は、1つの噴射開始圧力を決定するために設けられている。
【0053】
最後に、上記噴射システムの1つの動作点を与えるために配置されていることを特徴とする内燃機関が有益になる。この場合、当該動作点は、特に好ましくは負荷に応じて予め設定される。特に、上記制御装置は、1つの目標噴射量と1つの目標噴射開始時期とを−特にシリンダごとに及びインジェクタごとに−確定する。同時に、当該制御装置によって予め設定されている圧力が、好ましくは高圧ポンプによって蓄圧容器内で発生され、及び/又は、その時に当該蓄圧容器内に存在する圧力が、取得されると共に、その動作点を決定するために使用される。さらに、当該制御装置は、予め設定されている動作点に応じて、1つの第1基準圧力履歴を選択するように設けられている。この場合、この第1基準圧力履歴が、比較中に、取得された圧力履歴と最初に比較される。当該比較は、当該噴射システム及び内燃機関の機能にエラーがない場合は、当該噴射システムの実際に存在する動作点が、当該制御装置によって予め設定されている動作点の近傍に必ず存在するはずであるという技術思想に基づいている。
【0054】
これに加えて又はこの代わりに、特に、上記制御装置は、予め設定されている動作点に応じて、少なくとも1つのインジェクタを制御するように設けられている。この場合、既定の量の燃料が、既定の時点に当該インジェクタに付設された内燃機関のシリンダに供給されるように、当該インジェクタは始動される。
【0055】
好ましくは、上記制御装置は、少なくとも1つの噴射パラメータを調整するために、特に噴射開始時期及び/又は噴射量を調整するために設けられている。この場合、実際の噴射パラメータと目標噴射パラメータとの当該調整に関連する偏差が、特に上記方法の範囲内で算定される。
【0056】
一方では上記方法と他方では上記内燃機関との説明は、互いに補完すると解し得る。特に、当該方法に関連して明確に又は暗示的に説明した当該内燃機関の特徴は、好ましくは当該内燃機関の実施の形態の個々の特徴又は互いに組み合わせた特徴である。反対に、当該内燃機関に関連して明確に又は暗示的に説明した方法ステップは、当該方法の実施の形態の個々の方法ステップ又は互いに組み合わせた方法ステップである。
【0057】
以下に、本発明を図面に基づいて詳しく説明する。