特許第6388957号(P6388957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388957
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】近接感知システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/526 20060101AFI20180903BHJP
   G01S 7/527 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   G01S7/526 K
   G01S7/527
【請求項の数】15
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-553892(P2016-553892)
(86)(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公表番号】特表2017-508962(P2017-508962A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】CN2014075192
(87)【国際公開番号】WO2015154308
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2016年8月31日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513068816
【氏名又は名称】エスゼット ディージェイアイ テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SZ DJI TECHNOLOGY CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ、ワン チェン
(72)【発明者】
【氏名】フアン、リ ミン
【審査官】 ▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−256881(JP,A)
【文献】 特開2009−300233(JP,A)
【文献】 特開2001−108739(JP,A)
【文献】 特開2003−248051(JP,A)
【文献】 特開2010−078323(JP,A)
【文献】 特開平04−062494(JP,A)
【文献】 特開昭64−088282(JP,A)
【文献】 米国特許第5131271(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52 − G01S 7/64
G01S 15/00 − G01S 15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波感知システムにおいて、
超音波信号を発信する超音波発信機と、
前記発信の結果として、残響信号およびエコー信号を含む超音波信号を受信する超音波受信機と、
前記エコー信号を増幅する利得調整可能な増幅器と、
前記超音波受信機と前記増幅器との間に単極双投スイッチを介して前記超音波受信機に接続する減衰器回路であって、前記受信した超音波信号を前記増幅器に入力する前に前記受信した超音波信号を減衰させる減衰器回路と、
前記単極双投スイッチを制御して、前記超音波信号の発信後の所定の期間中に、前記超音波受信機を前記減衰器回路を介して前記利得調整可能な増幅器と接続し、さらに、前記単極双投スイッチを制御して、前記所定の期間が経過した後に、前記超音波受信機を前記減衰器回路を介さず前記利得調整可能な増幅器と接続する、マイクロコントローラユニット(MCU)と、
を備え
前記所定の期間は、前記超音波感知システムの不感地帯期間に対応し、
実際に測定された残響信号に基づく最大振幅V、近接測定をトリガーするための最小閾値電圧V、実際に測定されたエコー信号に基づく振幅Vとした場合、
前記減衰器回路の減衰量ΔVは、
−V<ΔV<V−V
または、
ΔV>V−V
ΔV≧V−V、および
ΔV<V
を満たす、
超音波感知システム。
【請求項2】
前記超音波発信機は、前記超音波受信機である、
請求項1に記載の超音波感知システム。
【請求項3】
前記減衰器回路は、残響信号またはエコー信号の以前に測定された振幅に少なくとも部分的に基づいて選択される、
請求項1または2記載の超音波感知システム。
【請求項4】
前記超音波信号の発信と関連するエネルギー準位を増加させるブースターをさらに備える、
請求項1からの何れか1つに記載の超音波感知システム。
【請求項5】
前記MCUは、さらに、測定距離に対応するタイマ値に少なくとも部分的に基づいて、前記利得調整可能な増幅器を制御して、その利得を変動させる、
請求項1からの何れか1つに記載の超音波感知システム。
【請求項6】
前記MCUは、さらに、以前に測定されたデータに少なくとも部分的に基づいて、前記利得調整可能な増幅器を制御して、その利得を変動させる、
請求項に記載の超音波感知システム。
【請求項7】
前記利得調整可能な増幅器に接続され、前記利得調整可能な増幅器の出力を所定の閾値と比較する比較器をさらに備える、
請求項1からの何れか1つに記載の超音波感知システム。
【請求項8】
前記比較器は、前記MCUと統合される、
請求項に記載の超音波感知システム。
【請求項9】
前記利得調整可能な増幅器に接続され、前記利得調整可能な増幅器の前記出力をデジタル値に変換するアナログ−デジタル変換器(ADC)をさらに備える、
請求項またはに記載の超音波感知システム。
【請求項10】
前記比較器および前記ADCは、受信した超音波信号のピーク振幅の発生を判定するために併せて使用される、
請求項に記載の超音波感知システム。
【請求項11】
超音波を感知する方法において、
超音波信号の発信の終了後に信号を検出するステップであって、前記検出された信号は、エコー信号または残響信号であり得る、検出するステップと、
前記検出することが、前記超音波信号の前記発信の前記終了後から不感地帯期間に対応する所定の期間内に起こったかどうかを判定するステップと、
前記所定の期間内に前記信号の前記検出が起こったという判定に応じて、前記超音波信号の前記発信からの残響によって引き起こされる干渉を低減させるために、前記検出された信号を利得調整可能な増幅器で増幅させる前に減衰器回路で減衰させるステップと、
減衰された前記検出された信号を前記利得調整可能な増幅器で増幅させるステップと、
前記所定の期間が経過した後に前記信号の前記検出が起こったという判定に応じて、物体の近接を判定するために、前記検出された信号を前記減衰器回路で減衰させずに前記利得調整可能な増幅器で増幅させるステップと、
増幅された前記検出された信号を処理するステップと、
を含
実際に測定された残響信号に基づく最大振幅V、近接測定をトリガーするための最小閾値電圧V、実際に測定されたエコー信号に基づく振幅Vとした場合、
前記減衰器回路の減衰量ΔVは、
−V<ΔV<V−V
または、
ΔV>V−V
ΔV≧V−V、および
ΔV<V
を満たす、
方法。
【請求項12】
前記検出された超音波信号を減衰させるステップは、1つ以上の以前に測定された信号に少なくとも部分的に基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出された超音波信号を処理するステップは、比較器およびアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用して、ピーク振幅の発生を判定することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
測定距離および前記測定距離に関する利得と相関させる以前に測定されたデータに少なくとも部分的に基づいて、前記検出された超音波信号に利得を提供するステップをさらに含む、請求項11から13の何れか1つに記載の方法。
【請求項15】
タイマ値に少なくとも部分的に基づいて、前記検出された超音波信号に利得を提供するステップをさらに含む、請求項11から14の何れか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
物体までの距離を検出するために、超音波センサ等の近接センサが広く使用されてきた。特に、超音波センサは、一般的に、超音波トランスデューサによって超音波信号を発生させ、そして、物体から反射されて戻るエコー信号を受信する。空気等の伝播媒体を通しての伝播速度に基づいて、超音波信号の送信とエコー信号の受信との時間間隔を算出することによって、物体までの距離を決定することができる。
【0002】
従来、超音波センサの用途は、超音波トランスデューサの残留機械振動によって引き起こされる不感地帯の存在によって制限される。超音波トランスデューサは、一般的に、励起信号によって引き起こされる高周波振動または共振によって超音波信号を発生させる。例えば、電気エネルギーのパルスは、圧電トランスデューサを圧電気により所与の周波数で振動させることができ、それによって、超音波を発生させる。次いで、物体によって反射されて、伝播した超音波信号のエコーを検出し、評価して、物体までの距離を決定することができる。しかし、励起信号(例えば、電気信号)が除去されても、トランスデューサの振動は、通常、直ちに止まらない。むしろ、弾性のため、トランスデューサは、一般的に、減衰型ではあるが、ある期間にわたって振動し続ける。そのような残留振動または残響は、超音波センサによって検出することができる。残響信号は、エコー信号の検出を不明瞭にする可能性がある。不感地帯は、超音波トランスデューサを取り囲む領域であり、その中では、残響信号と区別してエコー信号を確実に検出することができない。
【0003】
既存の方法は、ソフトウェア手法または機械的な手法のいずれかを使用して、不感地帯の問題を解決しようとしている。ソフトウェア手法で、超音波信号の検出は、エコー信号として残響信号を検出することを回避するために、不感地帯に対応する期間中には機能しない。しかし、ソフトウェア手法は、単に検出することを回避するだけであり、不感地帯を低減または除去しない。すなわち、不感地帯内に位置する物体を、確実に検出することはできない。機械的な手法を使用することで、超音波センサの受信機プローブは、パッドを入れるか、または別様には物理的障壁を使用して保護することができる。この手法は、受信機プローブに到達する残響信号の振幅を低減させることによって、不感地帯を低減または除去できるが、製造の複雑さおよびコストが増加する可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、不感地帯を低減させるか、さらには排除し、それによって、生産コストを増加させることなく、最小測定距離を減少させる方法およびシステムを提供する。上で述べられるソフトウェア手法とは異なり、本発明は、不感地帯内に位置する物体を検出することを可能にし、不感地帯を効果的に低減または排除する。加えて、本発明は、回路レベルで実現され、それによって、上で述べられる機械的手法に関連する追加的な生産コストを回避する。
【0005】
本発明の一態様によれば、超音波感知システムが提供される。超音波感知システムは、超音波信号の発信を提供する超音波発信機と、発信の結果として、残響信号およびエコー信号を含む超音波信号を受信する超音波受信機と、スイッチを介して超音波受信機に接続する減衰器回路であって、受信した超音波信号を減衰させる減衰器回路と、スイッチを制御して、超音波信号の発信後の所定の期間中にだけ、超音波受信機を減衰器回路と電気的に接続するマイクロコントローラユニット(MCU)とを備える。
【0006】
ある実施形態において、超音波発信機は、超音波受信機である。所定の期間は、残響信号が検出可能である期間に対応することができる。所定の期間は、不感地帯期間に対応することができる。
【0007】
ある実施形態において、減衰器回路は、残響信号またはエコー信号の以前に測定された振幅に少なくとも部分的に基づいて選択される。
【0008】
ある実施形態において、スイッチは、単極双投(SPDT)スイッチを含む。
【0009】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、超音波信号の発信と関連するエネルギー準位を増加させるブースターを備える。ブースターは、超音波信号の発信を引き起こすために使用可能である電気信号の電力レベルを向上させる。
【0010】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、エコー信号を増幅する利得調整可能な増幅器を備える。
【0011】
ある実施形態において、MCUは、さらに、超音波感知システムからの測定距離に対応するタイマ値に少なくとも部分的に基づいて、利得調整可能な増幅器を制御して、その利得を変動させる。MCUは、以前に測定されたデータに基づいて、利得調整可能な増幅器を制御し得る。
【0012】
ある実施形態において、MCUは、さらに、スイッチを制御して、所定の期間が経過した後に、減衰器回路を利得調整可能な増幅器と電気的に接続せず、超音波受信機を利得調整可能な増幅器と電気的に接続する。
【0013】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、利得調整可能な増幅器の出力を所定の閾値と比較する、利得調整可能な増幅器に接続される比較器を備える。MCUは、さらに、比較器の出力に少なくとも部分的に基づいて、利得調整可能な増幅器の利得を制御する。比較器は、MCUと統合される場合もあり、または統合されない場合もある。
【0014】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、利得調整可能な増幅器の出力をデジタル値に変換する、利得調整可能な増幅器に接続されるアナログ−デジタル変換器(ADC)を備える。利得調整可能な増幅器は、ADCの出力に少なくとも部分的に基づいて制御できる。ADCは、MCUと統合される場合もあり、または統合されない場合もある。ある実施形態において、比較器およびADCは、ピーク振幅の発生を判定するために併せて使用される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、超音波を感知する方法が提供される。本方法は、超音波信号の発信の終了後に信号を検出するステップであって、検出された信号は、エコー信号または残響信号であり得る、検出するステップと、超音波信号の検出が、超音波信号の発信の終了から所定の期間内に起こったかどうかを判定するステップと、所定の期間内に信号の検出が起こったという判定に応じて、超音波信号の発信からの残響によって引き起こされる干渉を十分に低減させるために、検出された信号を減衰させるステップと、所定の期間が経過した後に信号の検出が起こったという判定に応じて、物体の近接を判定するために、減衰させず、検出された信号を処理するステップとを含むことができる。
【0016】
ある実施形態において、所定の期間は、残響が検出可能である期間に対応する。ある実施形態において、所定の期間は、不感地帯期間に対応する。
【0017】
ある実施形態において、発信によって発信された超音波信号は、例えばブースターを使用して、超音波信号の発信前に増幅される。
【0018】
ある実施形態において、検出された超音波信号を減衰させることは、1つ以上の以前に測定された信号の振幅に少なくとも部分的に基づく。以前に測定された信号は、残響信号、エコー信号、または双方を含むことができる。
【0019】
ある実施形態において、検出された超音波信号を処理するステップは、比較器およびアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用して、ピーク振幅の発生を判定することを含む。マルチコントローラユニット(MCU)には、比較器およびADCのどちらも含まない、一方を含む、またはどちらも含むことができる。
【0020】
本明細書に記載の方法は、さらに、以前に測定されたデータに少なくとも部分的に基づいて、検出された超音波信号に利得を提供するステップを含むことができる。以前に測定されたデータは、測定距離および測定距離に適切な利得を相関させることができる。
【0021】
本明細書に記載の方法は、さらに、タイマ値に少なくとも部分的に基づいて、検出された超音波信号に利得を提供するステップを含むことができる。
【0022】
本発明の別の態様によれば、超音波感知システムが提供される。本システムは、超音波信号の発信を提供する超音波発信機と、残響信号およびエコー信号を含む、発信の結果として発生される超音波信号を受信する超音波受信機と、超音波受信機に接続可能な減衰器回路であって、エコー信号を排除せず、残響信号の実質的に全てを排除するように動作可能な減衰器回路とを備えることができる。ある実施形態において、超音波発信機は、超音波受信機である。
【0023】
減衰器回路は、所定の期間中にだけ、超音波受信機に接続できる。所定の期間は、不感地帯期間に対応する。減衰器回路は、残響信号またはエコー信号のような信号の以前に測定された振幅に少なくとも部分的に基づいて選択できる。
【0024】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、超音波信号の発信と関連するエネルギー準位を増加させるブースターを備える。ブースターは、超音波信号の発信を引き起こすために使用可能である電気信号の電圧レベルを増加させる。
【0025】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、スイッチを制御して、超音波信号の発信後の所定の期間中にだけ、超音波受信機を減衰器回路と電気的に接続するマイクロコントローラユニット(MCU)を備える。スイッチは、単極双投(SPDT)スイッチを含むことができる。
【0026】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、スイッチを介して超音波受信機に接続可能であり、減衰器回路に直列に接続される利得調整可能な増幅器であって、エコー信号を増幅する、利得調整可能な増幅器を備える。
【0027】
ある実施形態において、MCUは、さらに、超音波感知システムからの測定距離に対応するタイマ値に少なくとも部分的に基づいて、利得調整可能な増幅器を制御して、その利得を変動させる。MCUは、以前に測定されたデータに基づいて、利得調整可能な増幅器を制御し得る。
【0028】
ある実施形態において、MCUは、さらに、スイッチを制御して、所定の期間が経過した後に、減衰器回路を利得調整可能な増幅器と電気的に接続せず、超音波受信機を利得調整可能な増幅器と電気的に接続する。
【0029】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、利得調整可能な増幅器の出力を所定の閾値と比較する、利得調整可能な増幅器に接続される比較器を備える。MCUは、さらに、比較器の出力に少なくとも部分的に基づいて、利得調整可能な増幅器の利得を制御する。比較器は、MCUと統合される場合もあり、または統合されない場合もある。
【0030】
ある実施形態において、本明細書に記載の超音波感知システムは、さらに、利得調整可能な増幅器の出力をデジタル値に変換する、利得調整可能な増幅器に接続されるアナログ−デジタル変換器(ADC)を備える。利得調整可能な増幅器は、ADCの出力に少なくとも部分的に基づいて制御できる。ADCは、MCUと統合される場合もあり、または統合されない場合もある。ある実施形態において、比較器およびADCは、ピーク振幅の発生を判定するために併せて使用される。
【0031】
本発明の別の態様によれば、超音波を感知するための方法が提供される。本方法は、超音波信号の発信の終了後に超音波信号を検出するステップであって、検出された超音波信号は、エコー信号または残響信号である、検出するステップと、検出された超音波信号を減衰させ、それによって、エコー信号を排除せず、残響信号を実質的に排除するステップとを含む。ある実施形態において、検出された超音波信号の減衰は、超音波信号の発信から所定の期間内にだけ適用される。所定の期間は、不感地帯期間に対応できる。
【0032】
ある実施形態において、発信によって発信された超音波信号は、例えばブースターによって、超音波信号の発信前に増幅される。
【0033】
ある実施形態において、検出された超音波信号を減衰させるステップは、残響信号またはエコー信号の以前に測定された振幅に少なくとも部分的に基づく。
【0034】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法は、さらに、比較器およびアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用して、ピーク振幅の発生を判定するステップを含む。マルチコントローラユニット(MCU)には、比較器およびADCのどちらも含まない、一方を含む、またはどちらも含むことができる。
【0035】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法は、さらに、以前に測定されたデータに少なくとも部分的に基づいて、検出された超音波信号に利得を提供するステップを含む。以前に測定されたデータは、測定距離および測定距離に適切な利得を相関させることができる。
【0036】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法は、さらに、タイマ値に少なくとも部分的に基づいて、検出された超音波信号に利得を提供することを含む。
【0037】
本発明の別の態様によれば、超音波を感知するための方法が提供される。本方法は、以前に測定された調整可能な利得制御(AGC)データに少なくとも部分的に基づいて、受信した超音波信号に第1の利得を提供するために、増幅器を調整するステップと、以前に測定されたAGCデータに少なくとも部分的に基づいて、第1の利得よりも大きい第2の利得を提供するために、後の時点で、増幅器を調整するステップとを含む。以前に測定されたAGCデータは、測定距離および測定距離に適切な利得を相関させることができる。例えば、利得は、少なくとも部分的には、測定距離が増加するにつれて増加させることができる。
【0038】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法は、さらに、エコー信号が検出されるまで、または所定の測定時間に到達するまで、経時的に、増加する利得を提供するように増幅器を調整するステップを含む。
【0039】
ある実施形態において、所定の期間中に超音波信号が受信された場合にだけ、増幅される前に、受信した超音波信号が減衰される。所定の期間中に、受信した超音波信号は、エコー信号を排除せず、実質的に全ての残響信号を排除するように減衰させることができる。
【0040】
ある実施形態において、受信した超音波信号は、残響信号またはエコー信号の以前に測定された振幅に少なくとも部分的に基づいて減衰される。所定の期間は、不感地帯期間を含むことができる。
【0041】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法は、さらに、比較器およびアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用して、ピーク振幅の発生を判定するステップを含む。マルチコントローラユニット(MCU)には、比較器およびADCのどちらも含まない、一方を含む、またはどちらも含むことができる。
【0042】
本発明の異なる態様を、個々に、集合的に、または互いに組み合わせて認識できることを理解されたい。本明細書に記載の本発明の種々の態様は、下に記載される特定の用途のいずれかに適用され得る。本発明の他の目的および特徴は、明細書、特許請求の範囲、および添付図面を吟味することによって明らかになるであろう。
【0043】
(参照による組み込み)
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、個別の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれが具体的にかつ個別に示され参照により組み込まれるのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0044】
本発明の新規の特徴は、添付する特許請求の範囲において、詳細に示される。本発明の特徴及び利点は、本発明の原理を利用する例示的な実施形態を示す以下の詳細な説明、および以下の付随する図面を参照することによって、より深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施形態による、超音波センサを例示する図である。
図2】本発明の実施形態に従い、超音波伝送の結果として超音波受信機によって検出された信号を例示する図である。
図3】本発明の一実施形態による、不感地帯の低減または除去を実現する方法のステップを例示するフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態による、超音波感知システムの回路図を例示する図である。
図5】本発明の一実施形態による、様々な測定距離に対応するAGC利得値(AGC値)を例示する図である。
図6】本発明の一実施形態による、時間ベースの利得制御を実現する方法のステップを例示するフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態による、ピーク振幅の発生を判定する方法のステップを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
超音波センサに関連する不感地帯を低減または排除し、それによって、最大測定距離を低減させることなく、かつ、生産コストを増加させることなく、最小測定距離を減少させる方法、システム、およびデバイスを提供する。本発明の一態様によれば、超音波を感知することに関連する不感地帯を低減または排除する方法およびシステムを提供する。ある実施形態では、不感地帯に対応する期間中に受信した信号を減衰させるように、減衰器回路が導入される。減衰器回路は、物体から反射されたときに、実質的に全ての残響信号を除去する一方で、実質的に全てのエコー信号を保存する。減衰器回路の選択および選択解除は、制御可能なスイッチによって実現され得る。減衰器回路によって提供される減衰量は、数ある因子の中でも、実際に測定された残響信号およびエコー信号の値(例えば、振幅)に基づいて設定可能であり得る。
【0047】
本発明の別の態様によれば、近接測定の精度を向上させるためにエコー信号の利得を動的に調整する方法およびシステムが提供される。具体的には、測定を開始してから経過した時間によって示される現在の測定距離に基づいて、受信した信号を増幅するために、利得調整可能な増幅器が提供され得る。利得調整可能な増幅器の利得量は、測定距離に基づいて、コントローラによって制御され得る。測定距離が長くなるほど、エコー信号がより多く減衰される傾向がある。従って、エコー信号を増幅するための利得調整可能な増幅器によってより多くの利得が提供される。ある実施形態において、利得量は、経験的測定データに基づいて、コントローラによって定期的に調整される。
【0048】
本発明の別の態様によれば、近接測定の正確さおよび精度を向上させるために、比較器と併せてアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用する方法およびシステムが提供される。特に、比較器は、近接測定をトリガーするために使用できる。ADCは、所定の期間内で、相対的なピーク振幅を受信した時点を判定するために使用できる。次いで、この時点は、エコー信号が反射された物体までの距離の算出に使用できる。ピーク振幅の時間を特定することによって、近接測定の正確さおよび精度が向上する。
【0049】
本発明の一態様によれば、超音波発信に関連する電力を増加させるための方法およびシステムが提供される。例えば、周囲環境の中の音声信号の減衰を克服すること、または、測定範囲の上限を増加させることの少なくとも一方のために、発信電力のブースティングが好ましい。発信電力を増加させるために、超音波システムの発信回路は、発信に使用される電気電力を増加させるブースターを含むことができる。一実施形態において、ブースターは、コントローラによって提供される電気信号の電圧レベルを増加させる変圧器(例えば、昇圧変圧器)によって実現できる。
【0050】
本発明の異なる態様を、個々に、集合的に、または互いに組み合わせて認識できることを理解されたい。本明細書に記載の本発明の種々の態様は、下に記載される特定の用途のいずれかに適用され得る。本発明の他の目的および特徴は、明細書、特許請求の範囲、および添付図面を吟味することによって明らかになるであろう。
【0051】
図1は、本発明の一実施形態による、超音波センサ100を例示する図である。超音波センサ100は、発信機102と、受信機104とを含む。超音波発信機は、電気信号を音声信号に変換するが、超音波受信機は、音声信号を電気信号に変換する。ある例においては、超音波受信機および超音波発信機は、別個のデバイスとして実現される。他の例においては、超音波受信機および超音波発信機は、超音波信号の発信および受信の双方を行うことができる同じデバイスによって実現される。本明細書で使用される、超音波トランスデューサという用語は、超音波発信機、超音波受信機、または双方を指すことができる。超音波発信機102から超音波受信機104への矢印は、例えば発信機102が超音波信号を能動的に発信することを止めた後に、超音波受信機に到達し得る残響106を例示する。
【0052】
ある実施形態において、超音波トランスデューサ(例えば、超音波発信機、超音波受信機、または双方)は、圧電原理を使用して構築できる。例えば、超音波トランスデューサとしては、圧電性を示す、天然材料または合成材料で作製される圧電トランスデューサが挙げられる。この材料は、例えば、ある種の結晶(例えば、石英、ベルリナイト、サッカロース、ロッシェル塩、トパーズ、または電気石群ミネラル)、骨、生物学的材料(例えば、テンドン、絹、木材、エナメル、象牙質、またはDNA)、合成結晶(例えば、ガリウムオルトエステル、またはランガサイト)、合成セラミック(例えば、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、または酸化亜鉛)、ポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデン)、有機ナノ構造、および同類のもの等、である。
【0053】
あるいは、超音波トランスデューサは、非圧電原理を使用して構築することもできる。例えば、超音波トランスデューサは、磁場に晒されたときにサイズが変化する磁歪材料を含むことができる。別の例として、超音波トランスデューサとしては、超音波に応じて移動する薄板を使用し、音声信号を電気信号に変換するために該薄板の周りの電場を変化させる、コンデンサマイクロホンが挙げられる。
【0054】
図1はまた、例示的な超音波近接センサボードによって提供される、ハードウェアピンも例示する。種々の実施形態において、ハードウェアピンの定義は、実際の用途の特定の要件に従って定義できる。種々の実施形態では、より多くのハードウェアピン、より少ないハードウェアピン、または、異なるハードウェアピン、のうち少なくとも一つのハードウェアピンが提供され得る。図1に示す実施形態において、ハードウェアピンは、以下のように定義される。
【0055】
Vcc − 電力供給源(電圧は、実際の要求によって定義される)。
【0056】
Trig/Tx − 測定を開始するための外部論理トリガー/測定結果または応答を外部コマンドに伝送するために使用されるUART(汎用非同期受信機/送信機)端子。
【0057】
Echo/Rx − パルス幅として示される測定結果/コマンドを受信するために使用されるUART受信端子。
【0058】
GND − 電力および信号のための基準接地。
【0059】
図2は、本発明の実施形態に従う、超音波発信の結果として超音波受信機によって検出された信号を例示する図である。例示されるように、励起電気信号または駆動パルス202は、超音波発信機を振動させ、超音波信号を発信させる。駆動パルス202は、時間t頃に除去される。しかし、発信機は、駆動パルス202が除去されても(すなわち、電圧レベルがゼロであっても)、直ちに振動が止まらない。代わりに、発信機は、リングダウンし続けるか、または残留的に振動し続け、超音波受信機によって受信される可能性がある残留振動信号または残響信号214を引き起こす。受信機プローブによって受信される信号レベルは、210によって表される。残響は、t=t−tの期間にわたって持続する可能性があり、該期間中に、残響信号は、抑制されなければ(例えば、信号の振幅が見掛け上減衰されなければ)、真のエコー信号の受け取りを不明瞭にする可能性がある。したがって、期間tは、不感地帯期間またはデッドゾーン期間と称され、エコー信号を残響信号と区別して確実に検出できない期間を示す。不感地帯期間中に、残響信号は、抑制されず、比較器の閾値またはトリガーレベル208をトリガーするために、十分に強くなり得る(例えば、十分な振幅を有し得る)。そのような比較器トリガー閾値は、しばしば、真のエコー信号を受信したかどうかを判定するために使用される。
【0060】
音声cの速度に基づいて、トランスデューサからの不感距離dは、d*c*tで算出することができ、その範囲内では、物体からのエコーが残響信号によって不明瞭にされる可能性があるので、物体を正確に検出できない。換言すれば、不感地帯の中の物体について、超音波信号が物体に到達してトランスデューサに戻るまでの時間は、t以下である。不感地帯は、発信(すなわち、不感地帯)に含まれるトランスデューサを取り囲む領域を指し、該領域内では、残響の存在によって物体からのエコーが不明瞭になる傾向があるので物体を正確に検出できない。明細書で使用される、不感地帯期間という用語は、tを指すために使用される。トランスデューサのリングダウン中は、真のエコー信号の検出を妨げるか、または不明瞭にする。種々の実施形態において、不感地帯の形状またはサイズは、伝播媒体、トランスデューサの材料または配置の少なくとも一方、励起信号の特徴、ならびに他の因子によって決定され得る。一般的に、近接センサの検出可能な範囲を増加させるために、特に近距離検出のために、不感地帯を低減または排除することが望まれる。
【0061】
図2には、2つの例示的な状況における受信機信号が示されている。第1のシナリオ204において、物体は、トランスデューサの不感地帯を超えて位置する。したがって、エコー信号216は、残響信号214の発生後、不感地帯期間の後に起こる。例示されるように、物体が不感地帯を超えて位置するときに、物体からのエコー信号は、残響信号によって不明瞭にされない。
【0062】
第2のシナリオ206において、物体は、トランスデューサの不感地帯内に位置する。その結果、エコー信号216は、残響信号214と同じ不感地帯期間中に起こる。例示されるシナリオにおいて、残響信号214が抑制されていなければ、真のエコー信号216の検出を不明瞭にするか、または妨げる可能性があることは明らかである。
【0063】
双方の例示的な事例において、残響信号214は、(例えば、ハードウェア減衰器回路によって)トリガー値208よりも低く抑制または別様には減衰されるように示される。従って、残響信号は、比較器を誤ってトリガーしない。さらに詳細に説明されるように、不感地帯時間中に受信した信号のそのような減衰は、不感地帯の影響を効果的に低減または除去するために使用できる。
【0064】
本発明の減衰技法を使用することで、真のエコー信号は、また、それが不感地帯期間中に起こる場合にも減衰される可能性がある。しかし、エコー信号は、一般的に、特に近距離内で残響信号よりも強い。したがって、残響信号を除去する(例えば、振幅を比較器のトリガー値未満に低減させる)一方で、真のエコー信号を保存する(例えば、依然として振幅を比較器のトリガー値より大きいままにする)ように、残響信号を減衰させることが可能である。残響は、一般的に、受信機プローブに到達する頃には既に弱められている。残響信号の電力の低減に寄与する他の因子としては、受信機と発信機との距離、発信機の発射角度、または、他の因子の少なくとも一つが挙げられる。例えば、超音波発信機の発射角度は、一般的に、180度に到達できない。例示的な発射角度としては、30、60、90、120、および150度が挙げられるが、それらに限定されない。対照的に、受信機(すなわち、不感地帯)の近くに位置する物体によって反射されるエコーは、一般的に、あまり弱められず、また一般的に、非常に小さい角度で直接受信機に入り、信号の大部分の電力を保つ。これらの因子に基づいて、エコー信号は、一般的に、不感地帯期間中に検出される残響信号よりも強い。したがって、減衰量を調整することによって、実質的に全ての残響信号を除去する一方で、不感地帯期間内のエコー信号の大部分を保存することが可能である。シナリオ206で示されるように、受信機に接続される減衰器回路によって減衰される場合であっても、残響信号214は、実質的にまたは完全に除去できる(例えば、減衰された残響信号214の振幅が、トリガー値208未満である)。一方で、真のエコー信号216を実質的に保存する(例えば、減衰されたエコー信号の振幅が、依然としてトリガー値208よりも大きい)ことができる。
【0065】
本発明の一態様によれば、近接感知システムの不感地帯を低減または排除する方法およびシステムが提供される。図3は、本発明の一実施形態による、不感地帯の低減を実現する方法のステップを例示する過程300を示す。過程300(または本明細書に記載の任意の他の過程、もしくは変形例、または、それらの組み合わせの少なくとも一つ)のいくつかまたは全ての態様は、実行可能命令によって構成される1つ以上のコンピュータ、プロセッサ、または制御システムの制御下で行われ得る。また、その態様は、1つ以上のプロセッサ上で、ハードウェアによって、またはそれらの組み合わせで選択的に実行するコード(例えば、実行可能命令、1つ以上のコンピュータプログラム、または1つ以上のアプリケーション)として実現され得る。コードは、例えば、1つ以上のプロセッサによって実行可能な複数の命令を含むコンピュータプログラムの形態で、コンピュータ読み出し可能な記憶媒体に記憶され得る。コンピュータ読み出し可能な記憶媒体は、非一時的であり得る。動作が説明される順序は、限定するものとして解釈されることを意図するものではなく、過程を実現するために、任意の数の説明される動作は、任意の順序または並列、の少なくとも一方で組み合わせられ得る。例えば、過程300の態様は、図4に例示するような、超音波センサシステムの構成部品によって実現できる。
【0066】
一実施形態において、過程300は、ステップ302で、超音波信号の発信の終了後に信号を検出する。超音波信号の発信は、図1図2に記載の様式で起こる可能性がある。例えば、電気エネルギーのパルスは、圧電発信機に印加することができ、該圧電発信機を振動または共振させ、それによって、音波を発生させる。電気エネルギーが発信機から除去されると、発信が終了したとみなされる。しかし、上で論じられるように、発信機の振動または共振は、直ちに止まらない。むしろ、発信機は、ある期間にわたって振幅が減衰しても振動し続ける。そのような残響は、受信機によって検出し、電気信号(すなわち、残響信号)に変換できる。発信された超音波信号が物体によって反射された場合も、エコーは、受信機によって検出し、電気信号(すなわち、エコー信号)に変換できる。受信機の観点から、検出された電気信号は、エコー信号または残響信号であり得る。
【0067】
過程300は、さらに、ステップ304で、図2で論じられるように、検出された信号が超音波センサと関連する不感地帯期間内に検出されたかどうかを判定する。例えば、信号の検出が、超音波信号の発信の終了から所定の期間内に起こったかどうかを判定できる。所定の期間は、不感地帯期間に対応する、図2において上で論じられる時間間隔tとできる。一実現形態において、超音波センサと関連するタイマは、超音波信号の発信の終了時に、または発信の開始時に開始される。現在のタイマ値は、所定の不感地帯期間(例えば、t)と比較して、不感地帯期間で信号が検出されたかどうかを判定する。
【0068】
信号が不感地帯期間内に検出された場合、検出された信号は、ステップ306で、信号の電力(例えば、振幅)を低減させるために減衰される。検出された信号は、不感地帯期間中に減衰されるエコー信号または残響信号であり得る。しかし、近距離内で、エコー(および検出されたエコー信号)は、残響(および検出された残響信号)よりも強い傾向がある。これは、残響が、一般的に、受信機プローブに到達する頃には既に弱められているからである。残響信号の低減された電力に寄与する他の因子としては、受信機と発信機との距離、発信機の発射角度、または、他の因子の少なくとも一つが挙げられる。例えば、超音波発信機の発射角度は、一般的に、180度に到達できない。例示的な発射角度としては、30、60、90、120、および150度が挙げられるが、それらに限定されない。対照的に、受信機(すなわち、不感地帯)の近くに位置する物体によって反射されるエコーは、一般的に、あまり弱められず、また一般的に、非常に小さい角度で直接受信機に入り、信号の大部分の電力を保つ。これらの因子に基づいて、エコー信号は、一般的に、不感地帯期間中に検出される残響信号よりも強い。したがって、減衰量を調整することによって、実質的に全ての残響信号を除去できる。一方で、不感地帯期間内のエコー信号の大部分を保存することが可能である。
【0069】
一実施形態において、減衰量は、実際に測定された残響信号またはエコー信号の少なくとも一方の振幅に基づいて選択される。例えば、実際に測定された残響信号に基づく最大振幅(または他の適切な値)がVであり、近接測定をトリガーするための最小閾値電圧(以下、トリガー値)がVである場合、減衰量は、任意の振動残留信号の振幅がトリガー値V以下に低減されることを確実にするために、V−V以上に設定され得る。一方で、エコー信号が、減衰後であっても、依然として近接測定をトリガーするのに十分な強さであることを確実にするために、減衰量は、V−V未満に設定することができ、ここで、Vは、実際に測定されたエコー信号に基づく最小振幅(または他の適切な値)である。したがって、減衰量ΔVは、以下のように選択できる。
−V<ΔV<V−V
【0070】
代替の実施形態において、減衰量は、受信した残響信号Vとトリガー値Vの差分を超えるが、受信したエコー信号とトリガー値との差分を下回らないように選択できる。しかし、減衰量は、エコー信号を保存するために、依然として最小エコー信号未満にする必要がある。換言すれば、
ΔV>V−V
ΔV≧V−V、および
ΔV<Vである。
【0071】
別の代替的な実施形態において、減衰量ΔVは、V<ΔV<Vのように、測定された残響信号よりも大きくなるように設定できる。種々の実施形態において、V、V、または、Vの少なくとも一つの値は、試験または較正測定に基づいて決定される。例えば、上の値のいずれかは、測定された値の平均、中間、最大、最小、または任意の他の導出値であり得る。
【0072】
ある実施形態において、減衰が適用された後に、残響信号は、ゼロに低減される一方で、エコー信号は、トリガー値未満の非ゼロ値に低減させ得る。そのような実施形態では、減衰されたエコー信号にトリガー値を超えさせて近接測定処理をトリガーするために、減衰後の増幅が必要であり得る。また、不感地帯期間外に受信したエコー信号を検出して伝播媒体によって引き起こされる減衰を補償するためにも、増幅が必要である可能性がある。全般に、物体が超音波受信機から遠く離れるほど、その物体によって反射されるエコー信号がより減衰される。エコー信号のより大きい減衰を補償するために、測定範囲が増加するにつれて、より大きい増幅または利得を適用できる。動的に調整される利得制御を提供する方法は、本開示の他の場所でより詳細に論じられる。
【0073】
さらに図3を参照すると、検出された信号が不感地帯期間外で検出されたと判定された(例えば、タイマ値が不感地帯期間よりも大きい)場合、残留信号は、それまでに最小トリガー値未満に減衰されたものとみなされ、検出された信号は、おそらくエコー信号であるので、検出された信号の減衰は、不要である(すなわち、ステップ306をスキップする)。ある実施形態において、減衰は、タイマの値に従ってオンおよびオフされ、超音波発信の開始時または終了時に開始され得る。タイマの値が不感地帯期間内であるときには、減衰がオンにされて、受信した信号を減衰させる。タイマの値が不感地帯期間を超えたときには、減衰がオフにされて、受信した信号は、それ以上減衰されない。代替の実施形態において、減衰器は、不感地帯期間中に、またはそれを超えて、異なる程度の減衰を提供し得る。例えば、不感地帯期間中には、不感地帯期間外よりも大きい減衰が提供され得る。
【0074】
信号が減衰されるかどうかにかかわらず、過程300は、ステップ308で、信号をさらに処理する。ある実施形態において、ステップ308で信号を処理することは、信号が減衰されるかどうかにかかわらず、信号を増幅することを含むことができる。上で論じられるように、近接測定処理をトリガーするのに十分であるレベルまでエコー信号の電力を増加させるために、そのような増幅が必要であり得る。ある実施形態において、ステップ308で信号を処理することは、超音波信号の送信とエコーの受信との間の時間を算出し、それによって、物体までの距離を測定することを含み得る。下でさらに詳細に説明されるように、近接測定の正確さおよび精度を向上させる方法が提供される。
【0075】
図4は、本発明の一実施形態による、超音波感知システム400の回路図を例示する。ある実施形態において、超音波感知システム400は、図4で示される構成部品よりも多いまたは少ない構成部品を含み得る。超音波感知システム400は、本明細書で論じられる技法の態様を実現する。例えば、超音波感知システムは、例えば、図3で論じられるように、受信した信号の時間ベースの減衰を適用することによって、不感地帯を低減または排除し、超音波感知システムの測定範囲を増加させることができる。また、超音波感知システム400は、超音波発信のエネルギーを増加させること、または、受信した信号を増幅すること、の少なくとも一方によって、超音波感知システムの測定範囲の上限を維持し、さらには増加させることができる。また、超音波感知システム400は、ピーク振幅の発生を判定するために、受信した信号の動的利得を制御し、アナログ−デジタル変換器(ADC)を使用することによって、近接測定の信頼性および精度を向上させることができる。
【0076】
超音波感知システム400は、超音波発信機402と、超音波受信機404とを備える。超音波発信機402は、発信機回路に接続され、超音波受信機404は、受信機回路に接続される。発信機回路および受信機回路の一方または双方は、コントローラ412によって少なくとも部分的に制御できる。超音波発信機402は、電気信号に応じて超音波信号を発信し、超音波受信機404は、受信した音声信号を電気信号に変換する。例えば、超音波発信機402または超音波受信機404の少なくとも一方は、図1に関して論じられる圧電トランスデューサによって実現できる。超音波発信機402および超音波受信機404は、別個のデバイスとして例示されているが、ある実施形態において、それらは、1つの単一圧電トランスデューサ等の単一のデバイスによって実現できる。
【0077】
本発明の一態様によれば、超音波発信に関連する電力を増加させる方法およびシステムが提供される。ある状況において、例えば、周囲環境の中の音声信号の減衰を克服すること、または測定範囲の上限を増加させること、の少なくとも一方のために、発信電力のブースティングが好ましい。例えば、音声波は、カーペット、スポンジ、および同類のもの等の、波動吸収材料によって吸収される。したがって、カーペットを敷いた部屋で近接を測定するときには、そのような減衰を補償するために、超音波発振電力を増加させることが必要であり得る。また、発信させる音声がより多くの電力を有するほど、音声が遠く離れた物体に到達し、エコーが検出可能なレベルで戻ってくる可能性がより高くなる。したがって、発信電力を増加させることで、超音波感知システムの測定範囲の上限を増加させることができる。
【0078】
発信電力を増加させるために、超音波発信機402は、発信に使用される電力を増加させるブースター回路422(以下ブースター)に接続できる。一実施形態において、ブースター422は、コントローラによって提供される電気信号の電圧レベルを増加させる変圧器(例えば、昇圧変圧器)によって実現できる。従来のインバータ回路は、一般的に、超音波発信機を駆動するために、使用電圧の2倍しか供給することができない。送信された超音波におけるそのような制限された電力の増加は、周囲環境の中のスポンジ、カーペット、および同類のもの等の波動吸収材料によって引き起こされる減衰効果を補償するには不十分であり得る。対照的に、ブースター回路は、動作電圧の6倍ほどの(またはハードウェア設計に依存してそれ以上の)発信電圧に高めることができる。大幅に向上した発信電力によって、周囲環境の中に波動吸収材料が存在する場合であっても、反射波をより容易に受信し、それを使用して、受信回路をトリガーできる。
【0079】
ブースター422は、電気信号の電圧レベルを増加させ、増加された電圧レベルは、超音波受信機404と関連する電圧の範囲内にとどまることが好ましい。さらに、追加的な機構が(例えば、コントローラ412からの駆動電流が十分でないときに)必要とされ得、また、出力電流を増加させ、発信電力を最大にするために、発信機回路の一部として実現され得る。
【0080】
本発明の別の態様によれば、超音波感知システム400は、不感地帯の影響を低減させるための、またはゼロ不感地帯を実現する(例えば、不感地帯のサイズをゼロに低減する)ための方法を提供する。この方法は、図3に関連して論じられる方法に類似し得る。上で論じられるように、残響は、不感地帯期間中にエコー信号と間違えられる可能性がある残響信号の発生を引き起こす可能性がある。本発明は、不感地帯期間中にだけ、超音波受信機404を減衰器回路408と電気的に接続することによって、回路レベルで上の問題に対処する。その結果、残響信号の実質的に全てを減衰または除去する一方で、全てではないとしても、エコー信号の大部分が通過することを可能にすることができる。受信した信号の減衰が回路レベルで実現されるので、上で論じられる残響の機械的抑制のコストと比較して、コスト増加が僅かである。
【0081】
本発明の一実施形態において、超音波受信機404は、スイッチ406に接続される。スイッチ406は、コントローラ412によって提供されるスイッチ制御信号420によって制御可能である。スイッチ制御信号420は、受信した信号を減衰させるように、不感地帯期間中に、スイッチ406に超音波受信機404および減衰器回路408を電気的に接続させることができる。スイッチ制御信号420はまた、受信した信号が不感地帯期間外で減衰されないように、スイッチ406に超音波受信機404および減衰器回路408を電気的に接続解除させることもできる。ある実施形態において、減衰器回路408を接続または接続解除する判定は、タイマ(図示せず)の値に基づく。例えば、タイマは、発信機回路が超音波発信機に超音波信号を発信させるのを止めたときに開始できる。累算されたタイマ値が不感地帯期間を超えない限り、スイッチ406は、減衰器回路408が選択された状態を維持できる。しかし、タイマ値が不感地帯期間に到達するかまたはそれを超えたときに、スイッチ制御信号420は、スイッチ406に減衰器回路から接続解除させる。
【0082】
ある実施形態において、スイッチ406は、単極双投(SPDT)スイッチを含むことができ、または任意の極数または投数の少なくとも一方を含み得る。他の実施形態において、スイッチは、マルチプレクサ(mux)デマルチプレクサ(demux)を含むことができる。スイッチ406はまた、パワー金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、ソリッドステートリレー、パワートランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、または同類のもの等の、電気スイッチも含むことができる。
【0083】
種々の実施形態において、減衰器回路408は、電気信号の電力を低減させるために、分圧器ネットワークを形成する1つ以上の受動構成要素を含むことができる。例えば、減衰器回路408は、ダイオードおよびコンデンサ、または抵抗器およびコンデンサを含むことができる。減衰器回路の構成要素は、Π型またはT型等の任意の配設に従って配設され得る。
【0084】
種々の実施形態において、減衰器回路408のパラメータは、エコー信号を排除せず、残響信号を低減または排除するために、異なる状況に適応するように設定可能であり得る。パラメータは、残響信号またはエコー信号の少なくとも一方の、実際のまたは以前の少なくとも一方の測定に基づいて調整され得る。例えば、(例えば、オシロスコープで測定されるような)実際の残響信号またはエコー信号の少なくとも一方の振幅に基づいて、減衰器回路の受動構成部品のパラメータは、図3に関連して論じられるように、所望の減衰量を達成するように選択され得る。例えば、コンデンサの静電容量または抵抗器の抵抗は、残響信号の振幅をトリガー値未満、または、ほぼゼロにするのに十分な程度の少なくとも一方に、全減衰量を増加または減少させるように選択できる。
【0085】
種々の実施形態において、実際に測定された残響信号またはエコー信号の少なくとも一方と関連する特性(例えば、振幅)は、様々な因子によって判定され得る。この因子には、超音波発信機/受信機のパラメータまたは性質、超音波発信機/受信機の取り付け位置または方法(例えば、発信機プローブと受信機プローブとの距離、パッドを入れる等の機械的振動の低減が適所にあるかどうか、等)、伝播媒体、周囲環境の中の物体、および同類のもの等、がある。例えば、類似する方法を使用して取り付けられた異なる超音波プローブは、異なる残響信号またはエコー信号の少なくとも一方を生成し得る。同じ超音波プローブであっても、異なるように取り付けられると、異なる残響信号またはエコー信号の少なくとも一方を生成し得る。
【0086】
本発明の別の態様によれば、近接測定の精度または範囲の少なくとも一方を向上させるために、エコー信号の増幅に関連する利得を動的に調整する方法およびシステムが提供される。既存の超音波センサは、固定利得増幅器を含むことがある。利得量は、最大測定距離に到達するために必要とされる利得によって決定される。ある状況下で、そのような固定利得制御は、不正確な測定結果をもたらす可能性がある。特に、混雑した環境において、最大測定距離よりも近くにある物体は、比較器の誤ったトリガーを引き起こし、不正確な測定をもたらす可能性がある。例えば、地面に対する近接測定中に、発信機プローブの発信範囲内にある地面に箱がある場合、最大測定距離に基づく固定利得によって引き起こされる過剰増幅のため、箱からのエコーが最初に受信機プローブに到達する可能性がある。これに対して、本発明によって説明される調整可能な利得制御手法を使用すると、利得値は、測定距離に基づいて提供される。したがって、より短い測定距離にはより小さい利得が提供され、それによって、近距離物体からのエコーの過剰増幅を回避する。このように、超音波感知システムの測定精度は、本発明によって向上する。
【0087】
実例となる実施形態において、超音波感知システム400は、利得調整可能な増幅器410を含む。該利得調整可能な増幅器は、コントローラ412によって動的に提供される調整可能な利得制御(AGC)信号418に従って、受信した信号を増幅する。一実施形態において、利得調整可能な増幅器410は、スイッチ406を介して、超音波受信機404に電気的に接続できる。不感地帯期間中に、利得調整可能な増幅器410は、減衰器回路408によって減衰された信号を増幅するように、減衰器回路408と直列に接続できる。減衰されたエコー信号にトリガー値を超えさせて近接測定処理をトリガーするために、そのような減衰後の増幅が必要であり得る。減衰器回路408を(例えば、スイッチ406を介して)バイパスして、受信した信号を直接増幅するために、不感地帯期間を超えて利得調整可能な増幅器410を使用できる。不感地帯期間外に受信したエコー信号のそのような増幅は、伝播媒体(例えば、空気、水)によって引き起こされる減衰を補償するために使用することができ、近接測定の範囲および精度を向上させる。
【0088】
ある実施形態において、利得調整可能な増幅器410によって提供される利得は、測定距離に基づいて動的に調整される。超音波信号が発信されると、超音波感知システムの測定距離は、発信された信号がさらに遠くに伝播されるにつれて増加する。測定距離が遠くなるほど、伝播媒体によって引き起こされる減衰により、エコー信号がより多く減衰される。したがって、全般的に、測定距離が経時的に増加するにつれて増加する減衰を補償するために、受信した信号にはより多くの利得を提供する必要がある。一実施形態において、利得調整可能な増幅器410によって提供される利得は、測定距離が増加するにつれて、(AGC信号418に従って)段階的に増加するように動的に調整される。調整された利得は、以前に提供された利得と同じかまたはそれよりも多くなり得る。
【0089】
ある事例において、超音波信号の正確な減衰特性は、伝播媒体(例えば、空気、水)、発信周波数、発信機/受信機特性、取り付け方法、および他の因子に依存して変動し得る。このように、AGC信号418と利得調整可能な増幅器410によって提供される利得は、変動する測定距離で、(例えば、比較器によって割り込みをトリガーするのに十分な)トリガー値または検出可能なレベルに到達するまで、受信したエコー信号を高めるために必要とされる実際の動作利得の経験的測定に少なくとも部分的に基づいて提供できる。あるいは、利得は、受信した信号の強度に基づいて、自動的に調整できる。例えば、利得は、例えば直線的または指数関数的な様式で、受信信号の強度に比例し得る。
【0090】
図5は、本発明の一実施形態による、種々の測定距離または測定範囲と関連するAGC利得値(AGC値)を例示する。所与の測定距離または測定範囲について、その測定距離または測定範囲から受信したエコー信号を(例えば、比較器によって画定されるトリガー値を超える)検出可能なレベルまで増幅するために、対応するAGC利得が必要とされる。図5の左側の表は、左欄に測定範囲(「範囲」)をセンチメートル(cm)で示し、右欄に対応するAGC値(「POT AGC値」)を対数のデシベル(dB)で示す。AGC値は、入力エコー信号および利得調整可能な増幅器によって増幅された出力信号に基づいて導出することができ、また、入力信号が増幅された程度を示すことができる。一実施形態において、AGC値は、電位差計または他の測定機器によって測定され得る。したがって、図5で示されるデータは、AGC値と測定距離との相関を例示する。図5の左側のグラフは、同じデータを例示する。図5の表およびグラフで示されるように、AGC値は、一般的に、測定距離が増加するにつれて増加する。ある事例において、AGC値は、2つ以上の連続する測定範囲に対して同じ状態を維持する。測定距離に加えて、AGC値はまた、発信機/受信機プローブ、取り付け方法、伝播媒体、および他の因子に基づいても変動し得る。
【0091】
特定の環境における特定の超音波感知システムに対して適切なAGC値を提供するために、超音波感知システムを使用する前に、試験測定を行って、(図5で例示される値等の)AGC値を測定、または算出の少なくとも一方をすることができる。試験測定中に、測定距離を変動させるためのエコー信号を(例えば、発振器を使用して)解析して、エコー信号の振幅を決定できる。例えば、測定距離は、固定間隔(例えば、10cm)で漸増させることができる。受信したエコー信号の振幅に基づいて、増幅器のAGC値を調整して、エコー信号にトリガー値(例えば、比較器をトリガーする閾値)を超えさせることができる。実際の近接測定中に、そのような試験測定から導出されるAGC値は、利得制御信号を利得調整可能な増幅器に提供して、所望の利得量を達成するように、超音波感知システムのコントローラによって使用できる。一定の音声の伝播速度のため、測定距離の変化が、伝播の開始から経過した時間に比例すると想定すると、図5の表およびグラフで示される測定距離は、超音波信号の発信を開始して経過した時間量に変換できる。ある実施形態では、特定のセンサまたは条件の少なくとも一方に対するAGC値について、ルックアップテーブルまたは類似するデータ構造を作成し、使用できる。そのようなルックアップテーブルに基づいて、時間ベースの利得制御方法を提供して、図5で例示される距離ベースの利得制御を近似させることができる。
【0092】
図6は、本発明の一実施形態による、本明細書に記載の時間ベースの利得制御を実現する過程600のステップを例示するフローチャートである。特に、過程600は、動的に調整された利得制御を利得調整可能な増幅器に提供して、入力信号の減衰の変動を補償するために使用できる。例えば、利得量は、以前に測定または算出の少なくとも一方を行ったAGCデータに基づいて、時間が長くなるにつれて調整する(例えば、漸増させるか、または同じに保つ)ことができる。一実施形態において、過程600の態様は、図4に示すコントローラ412によって実現できる。
【0093】
一実施形態において、過程600は、ステップ602で、所定の割り込みを待機する。そのような所定の割り込みは、例えば、割り込みハンドラまたは割り込み処理ルーチン(ISR)による処理を必要とする、所定のイベントの発生を示すことができる。例えば、そのような割り込みは、入力信号が所定のトリガー値よりも大きいときに、比較器によってトリガーされ得る。別の例として、割り込みは、アナログ−デジタル変換器(ADC)の出力が所定の閾値に到達したときにトリガーされ得る。
【0094】
ステップ604で、割り込みが起こったかどうかが判定される。起こった場合、過程600は、ステップ602で、例えばISRを実行して物体に対する近接を算出することによって、割り込みを処理する。起こっていない場合、過程600は、待機ステップ602に戻る。
【0095】
一実施形態において、過程600は、ステップ606で、所定の時間増分Δtを経過したかどうかを判定する。経過した場合、ステップ608で、AGC利得値が調整される。経過していない場合、過程600は、待機ステップ602に戻る。したがって、AGC利得値は、固定時間間隔で調整される。時間間隔Δtは、任意の恣意的な時間間隔に設定可能とし得る。あるいは、AGC値は、様々な時間間隔で、または所定のイベントに応じて調整できる。ある実施形態において、AGC利得値を調整するステップは、現在の測定距離または同等に現在の経過時間に対応する適切なAGC値を決定するために、図5で例示されるような経験的AGCデータまたはそれらの変形例をルックアップすることを含むことができる。例えば、現在のタイマ値に基づいて、図5の表に従って、現在の測定距離が(超音波信号の伝播速度に基づいて)70〜80cmの範囲内であり、対応するAGC値が9dBであると決定され得る。また、AGC値は、比較器またはアナログ−デジタル変換器(ADC)の少なくとも一方からの出力、超音波感知システムと関連付けられる種々のパラメータ、および同類のもの等の、他の因子に基づいて調整することも可能である。これらの因子の一部もしくは全部に基づいて、所望の利得量を達成するために、適切な制御信号がAGC値によって発生され、利得調整可能な増幅器に提供され得る。ある実施形態において、過程600は、最大測定距離に対応する期間が終了するまで継続される。そのような最大測定距離は、設定可能とし得る。
【0096】
本発明の別の態様によれば、近接測定の正確さおよび精度を向上させるために、比較器と併せてアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用する方法およびシステムが提供される。例えば、図4の超音波感知システム400は、比較器414と、ADC416とを含み、それぞれ、利得調整可能な増幅器410に接続される。比較器414は、利得調整可能な増幅器410からの入力信号を所定のトリガー値(例えば、電圧)と比較して、入力信号が所定のトリガー値よりも大きいかどうかの指示を提供できる。例えば、比較器414は、入力信号がトリガー値よりも大きい場合には「1」を出力し、そうでない場合には「0」を出力し得る。ある実施形態において、比較器の出力(例えば、「1」)は、図6で論じられるような割り込みをトリガーすることができ、ISRの実行を引き起こす。ADC416は、アナログ信号を、信号の振幅(例えば、電圧)を表すデジタル信号に変換するように構成できる。ある事例において、ADCの出力は、割り込みをトリガーするために使用できる。例えば、そのような割り込みは、ADCの出力が所定の閾値を超えたときにトリガーできる。ある実施形態において、比較器414またはADC416の少なくとも一方は、図4で例示されるような、コントローラ412の一部として、またはそれと統合できる。あるいは、比較器414またはADC416の少なくとも一方は、コントローラ412の外部とすることができる。
【0097】
ある実施形態において、比較器414およびADC416は、エコー信号の測定の精度および正確さを向上させるために併せて使用できる。特に、比較器414は、近接測定をトリガーするために使用することができ、ADC416からの測定値は、所定の期間内で、相対的なピーク振幅を受信した時点を決定するために使用できる。次いで、この時点は、エコー信号を受信した物体までの距離の算出に使用できる。ピーク振幅の時間を特定することによって、近接測定の精度が向上する。
【0098】
一般的に、物体に対する近接度は、超音波信号の発信と、物体によって反射された超音波信号の受信との時間間隔に基づいて算出される。超音波信号の発信は、一般的に、発信波のピークの発信時にある。超音波信号の受信時間が、反射波によって比較器がトリガーされる時間に設定された場合、(例えば、ピーク振幅未満の)反射波によって比較器がトリガーされたときと、ピーク振幅に到達したときとの間に期間があるので、測定が正確であるとは言い難い。ADCによって、反射波のピークの値およびピークの値が検出されたときを検出することは、比較的容易である。次いで、ピーク値が検出された時間を、物体までの距離を算出するために使用することができ、それによって、測定の精度を向上させる。
【0099】
図7は、一実施形態による、ピーク振幅の発生を判定する過程700のステップを例示するフローチャートである。過程700は、例えば、コントローラ412または他の場所に組み込まれるソフトウェア、ハードウェア、またはそれらの組み合わせによって実現できる。
【0100】
ある実施形態において、過程700は、ADCの測定準備ができていると判定するステップを含む。ある事例において、ADCは、受信した信号によって比較器がトリガーされた後に、測定のために起動される。加えて、ADCは、ある時間間隔にだけ測定を行い得る。そのような時間間隔は、ADCの製造業者、ADCのユーザ(例えば、開発者、エンドユーザ等)、または同類のものによって設定可能とされ得る。
【0101】
ADCの測定準備ができているとき、ステップ704で、ADCを使用して現在のADC値ADCcurrが取得される。ADC値は、ADCに対する入力信号のデジタル化された振幅値を表す。現在のADC値ADCcurrは、ステップ706で、以前に取得されたADC値ADColdと比較され、ADCcurr>ADColdであるかどうかを判定され得る。典型的な実施形態において、ADColdは、直前の測定におけるADC値である。ある実施形態において、ADColdは、(例えば、ステップ708で、またはその後で)最初のADCの測定時、またはピーク振幅の各検出の後の少なくとも一方に、0に設定される。
【0102】
現在のADC値が以前に取得したADC値よりも大きいと判定された場合は、ピーク振幅がまだ到着していないことを意味し得る。したがって、過程700は、ステップ702に進み、測定の次の段階を開始する。しかし、以前に取得されたADC値が現在のADC値以上であった場合は、ピークに到達したことを意味する。ステップ708で、現在のタイマ値tpeakが記録される。ある実施形態において、タイマは、超音波信号の発信時に開始される。このように、tpeakは、超音波信号の発信と、物体によって反射された超音波信号のピークの受信との時間間隔を表す。
【0103】
ある実施形態において、過程700は、超音波センサの測定範囲内の1つを超える物体を検出するために使用され得る。よって、1つを超えるtpeakが存在する可能性があり、それぞれ、異なる物体と関連する。多数のピーク振幅値の検出を実現するために、過程700は、測定時間が終了していない限り、上の過程を繰り返して多数のtpeakを導出するステップを含むことができる。測定の繰り返しを開始する前に、ADColdは、0にリセットされ得る。測定時間は、一般的に、過程700を実現する近接感知システムからの最大距離を測定するために必要とされる期間を指す。測定時間は、近接感知システムの特性、周囲環境または、製造業者、ユーザ、顧客等によって設定可能なもの、の少なくとも一つによって決定され得る。
【0104】
ある実施形態において、過程700は、ステップ710で、測定時間が終了したかどうかを判定することを含む。測定時間が終了した場合は、ステップ712で、1つ以上のtpeak値が返される。一方で、測定時間が終了していない場合、過程700は、ステップ702にループバックして、ピーク振幅値が起こったときを判定する別の繰り返しを開始することを含む。
【0105】
図4を再度参照すると、ある実施形態において、比較器414またはADC416の少なくとも一方は、上で論じられる利得調整可能な増幅器410またはスイッチ406の少なくとも一方を制御するために使用できる。例えば、AGC信号418またはスイッチ制御信号420の少なくとも一方は、比較器414またはADC416の少なくとも一方からの出力に基づいて発生され得る。
【0106】
ある実施形態において、コントローラ412は、単一の集積回路基板上にマイクロコントローラユニット(MCU)を含むことができる。ある他の実施形態において、コントローラ412は、分散コンピューティングシステムを含むことができる。コントローラ412は、処理ユニット424と、メモリ426と、入力/出力周辺機器(図示せず)とを含むことができる。処理ユニット424は、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))等の、1つ以上のプロセッサを含むことができる。処理ユニット424は、メモリ426に動作可能に接続できる。メモリ426は、一時的記憶媒体、または非一時的記憶媒体の少なくとも一方の1つ以上のユニットを含むことができる。記憶媒体は、1つ以上のルーチンもしくは関数を行うために処理ユニット424によって実行可能なデータ、論理、コード、もしくはプログラム命令の少なくとも一つを記憶する。例えば、メモリユニットとしては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(PROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、および同類のものが挙げられ得る。メモリ426のメモリユニットは、図5で論じられるAGC値またはそれらの変形例等のデータ、比較器、ADC、タイマ、センサ、または同類のもの等からのデータ等を含む入力/出力データ、処理ユニット424からの処理結果、および同類のものを記憶できる。加えて、メモリ426のメモリユニットは、本明細書に記載の方法の任意の適切な実施形態を行うために、動作パラメータまたは論理の少なくとも一方、処理ユニット424によって実行可能なコードまたはプログラム命令の少なくとも一方を記憶できる。例えば、処理ユニット424は、図3で論じられる時間ベースの減衰を実現するために、処理ユニット424の1つ以上のプロセッサにスイッチ制御信号420をスイッチ406に提供させる命令を実行できる。加えて、処理ユニット424は、図6に関して論じられるような、受信した信号の距離ベースの増幅を実現するように、処理ユニット424の1つ以上のプロセッサにAGC制御信号を利得調整可能な増幅器410に提供させる命令を実行できる。さらに、処理ユニット424は、上で論じられるような比較器およびADCからの入力に基づいて、処理ユニット424の1つ以上のプロセッサにピーク振幅の(タイミングを含む)発生を判定させる命令を実行できる。図4は、単一の処理ユニット424および単一のメモリ426を表しているが、当業者は、これが限定することを意図しないこと、また、システム400が複数の処理ユニットまたはメモリのメモリユニットの少なくとも一方を含むことができることを認識するであろう。
【0107】
ある実施形態において、コントローラ412はまた、複数の入力/出力周辺機器(図示せず)も含むことができる。例えば、コントローラ412は、1つ以上の離散入力/出力ビットを含むことができ、個々のパッケージピンの論理状態の制御または検出の少なくとも一方を可能にする。また、コントローラ412は、シリアルポート(例えば、汎用非同期受信機/送信機(UART))等の1つ以上のシリアル入力/出力を含むこともできる。コントローラ412はまた、システム相互接続のための、Inter−Integrated Circuit(IC)、シリアルペリフェラルインターフェース(SPI)バス、コントローラエリアネットワーク(CAN)バス、または同類のもの等の、1つ以上のシリアル通信インターフェースも含むことができる。ある事例において、コントローラ412はまた、タイマ、イベントカウンタ、パルス幅変調(PWM)発生器、クロック発生器(例えば、石英タイミング水晶、共振器、またはRC回路のための発振器)、および同類のもの等の、1つ以上の周辺機器も含むことができる。ある事例において、コントローラ412また、1つ以上のデジタル−アナログ変換器、回路内プログラミングまたはデバッギングサポートの少なくとも一方、USBおよびイーサネット(登録商標)サポート、ならびに同類のものも含むことができる。
【0108】
本発明の方法およびシステムは、超音波感知システムとの関連において説明されるが、本発明の方法およびシステムの態様はまた、レーダー、ソナー、ライダーまたは他の感知技術を使用する多種多様な近接感知システムにも適用できることを認識されたい。
【0109】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法およびシステムは、可動物体によって使用でき、目標物体(例えば、潜在的な障害物)への近接、地理的特徴の場所、人工構造物の場所、および同類のもの等の、可動物体または周囲環境の少なくとも一方に関する情報を提供する。そのような情報は、可動物体の(例えば、並進で最大3自由度および回転で最大3自由度に関する)空間的配置、速度、または加速度の少なくとも一つを感知するために、可動物体によって使用され得る。加えて、情報は、可動物体の動作を支援できる。この支援は、経路の計画、所定の飛行経路に沿った可動物体の自律航法、障害物回避、および同類のものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0110】
可動物体(例えば、UAV)は、1つ以上のセンサを含み得る。このセンサは、可動物体の(例えば、最大で3つの平行移動度および最大で3つの回転度に関する)空間的配置、速度、または加速度の少なくとも一つを感知し得る。1つ以上のセンサとしては、全地球測位システム(GPS)センサ、行動センサ、慣性センサ、近接センサ(例えば、超音波センサまたはライダーセンサの少なくとも一方)、画像センサ、および同類のものが挙げられる。ある実施形態において、近接センサは、回転して(例えば、360°回転して)、可動物体を取り囲む複数の物体の距離および位置情報を取得できる。取り囲む物体の距離および位置情報は、解析して、可動物体の空間的配置、運動の少なくとも一方を決定すること、または可動物体のナビゲーションを支援すること、の少なくとも一方を可能とする。
【0111】
可動物体はまた、可動物体、またはその構成部品の少なくとも一方の動作を制御するためのコントローラも含み得る。可動物体はまた、ユーザによって遠隔で制御するか、または可動物体内またはその上の乗員によって局所的に制御することもできる。ある実施形態において、可動物体は、無人航空機(UAV)等の無人可動物体である。UAV等の無人可動物体は、可動物体に搭乗する乗員がいない場合がある。可動物体は、人間もしくは自律制御システム(例えば、コンピュータ制御システム)、またはそれらの任意の適切な組み合わせによって制御できる。可動物体は、人工知能とともに構成されるロボット等の、自律または半自律ロボットとできる。
【0112】
ある実施形態において、本明細書に記載の方法およびシステムの態様は、可動物体、遠隔制御デバイス、またはそれらの組み合わせによって実現できる。例えば、近接感知システム400のコントローラ412は、可動物体の動作を制御することもできる、可動物体に内蔵されたコントローラ、または、遠隔制御デバイスもしくは基地局端末等の、可動物体に内蔵されないコントローラによって実現できる。例えば、図4のスイッチまたは利得調整可能な増幅器の少なくとも一方の制御信号は、可動物体または遠隔制御デバイスの少なくとも一方のコントローラによって提供できる。別の例として、近接測定および算出は、可動物体、遠隔制御デバイス、基地局、またはいくつかのサードパーティのデバイスのコントローラによって行うことができる。種々の実施形態において、近接感知システムのコントローラは、可動物体のコントローラと別体であり得るか、または統合され得る。ある実施形態では、同じ遠隔制御デバイスが、可動物体および近接感知システムを制御するように動作可能であり得る。他の実施形態では、別個のリモートコントロールデバイスが、可動物体および近接感知システムを制御するために使用され得る。ある実施形態において、本明細書に記載の近接感知システムによって提供されるデータは、可動物体または可動物体を取り囲む環境の少なくとも一方に関する位置、姿勢、または他の状態情報の少なくとも一つを提供するために、単独で使用され得る。また、そのデータは、可動物体に内蔵されるか、内蔵されないかの少なくとも一方の他のセンサまたは感知システムからのデータと併せて使用され得る。このセンサまたは感知システムは、例えば、GPSセンサ、行動センサ、慣性センサ、近接センサ、画像センサ、および同類のもの等、である。
【0113】
本発明における可動物体は、空気中で(例えば、固定翼機、回転翼航空機、または固定翼も回転翼も有さない航空機)、水中で(例えば、船舶または潜水艦)、地上で(例えば、車、トラック、バス、バン、オートバイ、自転車等の自動車、杖、釣竿等の可動構造またはフレーム、または列車)、地下で(例えば、地下鉄)、宇宙で(例えば、宇宙飛行機、衛星、または宇宙探査機)等の任意の適切な環境の中で、またはこれらの環境の任意の組合せの中で移動きる。可動物体は、人間または動物等の生体に載置できる。適切な動物は、鳥類、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ウマ科の動物、ウシ科の動物、羊、豚、イルカ、齧歯動物、または昆虫を含み得る。
【0114】
可動物体は6自由度(例えば、並進で3自由度と回転で3自由度)に関する環境内で自由に移動可能であり得る。一方、可動物体の移動は、所定の経路、軌道、または位置等によって、1つ以上の自由度に関して制約されることがある。移動は、エンジンまたはモータ等の任意の適切な作動機構によって実現できる。可動物体の作動機構は、電気エネルギー、磁気エネルギー、太陽エネルギー、風力エネルギー、重力エネルギー、化学エネルギー、核エネルギー、またはその任意の適切な組合せ等の任意の適切なエネルギー源によって電力を供給され得る。
【0115】
ある事例において、可動物体は、有人または無人の輸送機であり得る。適切な輸送機は、水上輸送機、航空機、宇宙船、または、地上車を含み得る。例えば、航空機は固定翼機(例えば、飛行機、グライダー)、回転翼航空機(例えば、ヘリコプター、回転翼機)、固定翼と回転翼の両方を有する航空機、またはどちらも有さない航空機(例えば、小型飛行船、熱気球)であり得る。航空機は、空気中を自己推進する等、自走式であり得る。自走式車両は、1つ以上のエンジン、モータ、車輪、車軸、磁石、回転翼、プロペラ、羽根、ノズル、またはその任意の適切な組合せを含んだ推進システム等の推進システムを利用できる。また、推進システムは、可動物体が表面から離陸する、表面に着陸する、その現在位置または向きの少なくとも一方を維持する(例えば、ホバーリングする)、向きまたは位置の少なくとも一方を変更可能に使用できる。
【0116】
例えば、推進システムは、1つ以上の回転翼を含む得る。回転翼は、中心シャフトに取り付けられる1つ以上の羽根(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれを超える羽根)を含み得る。羽根は、中央シャフトを中心に対称的または非対称的に配置できる。羽根は、中央シャフトの回転によって回転させることができ、適切なモータまたはエンジンによって駆動できる。羽根は、時計回りの回転または反時計回りの回転の少なくとも一方で回転し得る。回転翼は、水平回転翼(水平の回転面を有する回転翼を指し得る)、垂直に配向された回転翼(垂直の回転面を有する回転翼を指し得る)、または水平位置と垂直位置との間の中間角度に傾斜させた回転翼とし得る。ある実施形態において、水平配向された回転翼は、回転して可動物体に揚力を与え得る。垂直に配向された回転翼は、回転して可動物体に推進力を与え得る。水平位置と垂直位置との間の中間角度に配向された回転翼は、回転して可動物体に揚力および推進力の双方を与え得る。1つ以上の回転翼は、別の回転翼の回転によって生成されるトルクに反作用するトルクを提供するために使用され得る。
【0117】
可動物体は任意の適切なサイズまたは寸法の少なくとも一方を有し得る。ある実施形態において、可動物体は、輸送機内部にまたは輸送機上に人間の乗員を備えるためのサイズまたは寸法の少なくとも一方を有し得る。また、可動物体は、可動物体内部にまたは可動物体上に人間の乗員を備えることができるサイズまたは寸法の少なくとも一方より、小さいサイズまたは寸法の少なくとも一方であってよい。可動物体は、人間によって持ち上げられるまたは支持されるのに適したサイズまたは寸法の少なくとも一方であり得る。また、可動物体は、人間によって持ち上げられるか支持されるのに適したサイズまたは寸法の少なくとも一方よりも大きいことがある。ある実施例においては、可動物体は、約2cm以下、5cm以下、10cm以下、50cm以下、1m以下、2m以下、5m以下、または10m以下の最大寸法(例えば、長さ、幅、高さ、直径、対角線)を有し得る。可動物体の最大寸法は、約2cm以上、5cm以上、10cm以上、50cm以上、1m以上、2m以上、5m以上、または10m以上であり得る。例えば、可動物体の対向する回転翼の軸間距離は、約2cm以下、5cm以下、10cm以下、50cm以下、1m以下、2m以下、5m以下、または10m以下であってよい。あるいは、対向する回転翼の軸間の距離は、約2cm以上、5cm以上、10cm以上、50cm以上、1m以上、2m以上、5m以上、または10m以上であってよい。
【0118】
ある実施形態において、可動物体は、100cm×100cm×100cm未満、50cm×50cm×30cm未満、または、5cm×5cm×3cm未満の体積を有し得る。可動物体の総体積は、約1cm以下、2cm以下、5cm以下、10cm以下、20cm以下、30cm以下、40cm以下、50cm以下、60cm以下、70cm以下、80cm以下、90cm以下、100cm以下、150cm以下、200cm以下、300cm以下、500cm以下、750cm以下、1000cm以下、5000cm以下、10,000cm以下、100,000cm以下、1m以下、または、10m以下であり得る。逆に、可動物体の総体積は、約1cm以上、2cm以上、5cm以上、10cm以上、20cm以上、30cm以上、40cm以上、50cm以上、60cm以上、70cm以上、80cm以上、90cm以上、100cm以上、150cm以上、200cm以上、300cm以上、500cm以上、750cm以上、1000cm以上、5000cm以上、10,000cm以上、100,000cm以上、1m以上、または、10m以上でもあり得る。
【0119】
ある実施形態において、可動物体は、32,000cm以下、20,000cm以下、10,000cm以下、1,000cm以下、500cm以下、100cm以下、50cm以下、10cm以下、または5cm以下の専有面積(あるいは可動物体によって包囲される側面方向断面積)を有し得る。逆に、専有面積は約32,000cm以上、20,000cm以上、10,000cm以上、1,000cm以上、500cm以上、100cm以上、50cm以上、10cm以上、または5cm以上であり得る。
【0120】
ある実施形態において、可動物体の重量は1000kg以下であり得る。可動物体の重量は、約1000kg以下、750kg以下、500kg以下、200kg以下、150kg以下、100kg以下、80kg以下、70kg以下、60kg以下、50kg以下、45kg以下、40kg以下、35kg以下、30kg以下、25kg以下、20kg以下、12kg以下、10kg以下、9kg以下、8kg以下、7kg以下、6kg以下、5kg以下、4kg以下、3kg以下、2kg以下、1kg以下、0.5kg以下、0.1kg以下、0.05kg以下、または0.01kg以下であり得る。逆に、可動物体の重量は約1000kg以上、750kg以上、500kg以上、200kg以上、150kg以上、100kg以上、80kg以上、70kg以上、60kg以上、50kg以上、45kg以上、40kg以上、35kg以上、30kg以上、25kg以上、20kg以上、12kg以上、10kg以上、9kg以上、8kg以上、7kg以上、6kg以上、5kg以上、4kg以上、3kg以上、2kg以上、1kg以上、0.5kg以上、0.1kg以上、0.05kg以上、または0.01kg以上であり得る。
【0121】
ある実施形態において、可動物体は可動物体が支持する積載物に比して小さいことがある。積載物は、以下にさらに詳細に説明するように、搭載物または支持機構の少なくとも一方を含んでよい。ある実施例においては、可動物体重量と積載物重量の割合は、約1:1を超えてよい、未満であってよい、または等しくてよい。また、他の実施例においては、可動物体重量と積載物重量の割合は約1:1を超えてよい、未満であってよい、または等しくてよい。また、支持機構重量と積載物重量の割合は、約1:1を超えてよい、未満であってよい、または等しくてよい。必要とされる場合には、可動物体重量と積載物重量の割合は、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10以下またはさらに小さいことがある。逆に、可動物体重量と積載物重量の割合は、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1以上またはさらに大きいことがある。
【0122】
ある実施形態において、可動物体の消費エネルギーが低いことがある。例えば、可動物体は約5W/時、4W/時、3W/時、2W/時、1W/時未満、または以下のエネルギーを使用し得る。また、他の実施例では、可動物体の支持機構の消費エネルギーが低いことがある。例えば、支持機構は約5W/時、4W/時、3W/時、2W/時、1W/時未満、または以下のエネルギーを使用し得る。また、可動物体の搭載物の消費エネルギーは、約5W/時、4W/時、3W/時、2W/時、1W/時未満、または以下等の低いエネルギーであり得る。
【0123】
本発明の好ましい実施形態を、本明細書に図示し説明したが、このような実施形態は、例示のみを目的としていることは当業者には明らかであろう。本発明を逸脱することなく、多くの変形実施形態、変更、代替形態を当業者は着想するであろう。本発明を実施するにあたり、本明細書に記載した発明の実施形態の様々な代替形態を採用し得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定め、それにより特許請求の範囲の方法及び構造、並びにそれらの均等物を網羅することを目的としている。
[項目1]
超音波感知システムにおいて、
超音波信号を発信する超音波発信機と、
上記発信の結果として、残響信号およびエコー信号を含む超音波信号を受信する超音波受信機と、
スイッチを介して上記超音波受信機に接続する減衰器回路であって、上記受信した超音波信号を減衰させる減衰器回路と、
上記スイッチを制御して、上記超音波信号の発信後の所定の期間中に、上記超音波受信機を上記減衰器回路と電気的に接続するマイクロコントローラユニット(MCU)と、
を備える、
超音波感知システム。
[項目2]
上記超音波発信機は、上記超音波受信機である、
項目1に記載の超音波感知システム。
[項目3]
上記所定の期間は、上記超音波感知システムの不感地帯期間に対応する、
項目1に記載の超音波感知システム。
[項目4]
上記減衰器回路は、残響信号またはエコー信号の以前に測定された振幅に少なくとも部分的に基づいて選択される、
項目1に記載の超音波感知システム。
[項目5]
上記超音波信号の発信と関連するエネルギー準位を増加させるブースターをさらに備える、
項目1に記載の超音波感知システム。
[項目6]
上記エコー信号を増幅する利得調整可能な増幅器をさらに備える、
項目1に記載の超音波感知システム。
[項目7]
上記MCUは、さらに、測定距離に対応するタイマ値に少なくとも部分的に基づいて、上記利得調整可能な増幅器を制御して、その利得を変動させる、
項目6に記載の超音波感知システム。
[項目8]
上記MCUは、さらに、以前に測定されたデータに少なくとも部分的に基づいて、上記利得調整可能な増幅器を制御して、その利得を変動させる、
項目7に記載の超音波感知システム。
[項目9]
上記MCUは、さらに、上記スイッチを制御して、上記所定の期間が経過した後に、上記減衰器回路を上記利得調整可能な増幅器と電気的に接続せず、上記超音波受信機を上記利得調整可能な増幅器と電気的に接続する、
項目6に記載の超音波感知システム。
[項目10]
上記利得調整可能な増幅器に接続され、上記利得調整可能な増幅器の出力を所定の閾値と比較する比較器をさらに備える、
項目6に記載の超音波感知システム。
[項目11]
上記比較器は、上記MCUと統合される、
項目10に記載の超音波感知システム。
[項目12]
上記利得調整可能な増幅器に接続され、上記利得調整可能な増幅器の上記出力をデジタル値に変換するアナログ−デジタル変換器(ADC)をさらに備える、
項目10に記載の超音波感知システム。
[項目13]
上記比較器および上記ADCは、受信した超音波信号のピーク振幅の発生を判定するために併せて使用される、
項目12に記載の超音波感知システム。
[項目14]
超音波を感知する方法において、
超音波信号の発信の終了後に信号を検出するステップであって、上記検出された信号は、エコー信号または残響信号であり得る、検出するステップと、
上記超音波信号の上記検出が、上記超音波信号の上記発信の上記終了から所定の期間内に起こったかどうかを判定するステップと、
上記所定の期間内に上記信号の上記検出が起こったという判定に応じて、上記超音波信号の上記発信からの残響によって引き起こされる干渉を十分に低減させるために、上記検出された信号を減衰させるステップと、
上記所定の期間が経過した後に上記信号の上記検出が起こったという判定に応じて、物体の近接を判定するために、減衰させなく、上記検出された信号を処理するステップと、
を含む、方法。
[項目15]
上記所定の期間は、不感地帯期間に対応する、項目14に記載の方法。
[項目16]
上記検出された超音波信号を減衰させるステップは、1つ以上の以前に測定された信号に少なくとも部分的に基づく、項目14に記載の方法。
[項目17]
上記検出された超音波信号を処理するステップは、比較器およびアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用して、ピーク振幅の発生を判定することを含む、項目14に記載の方法。
[項目18]
測定距離および上記測定距離に適切な利得を相関させる以前に測定されたデータに少なくとも部分的に基づいて、上記検出された超音波信号に利得を提供するステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
[項目19]
タイマ値に少なくとも部分的に基づいて、上記検出された超音波信号に利得を提供するステップをさらに含む、項目14に記載の方法。
[項目20]
超音波を感知する方法において、
超音波信号の発信の終了後に、超音波信号を検出するステップであって、上記検出された超音波信号は、エコー信号または残響信号である、検出するステップと、
上記検出された超音波信号を減衰させ、上記エコー信号を排除せず、上記残響信号を実質的に排除するステップと、
を含む、方法。
[項目21]
上記検出された超音波信号の上記減衰は、上記超音波信号の上記発信から所定の期間内にだけ適用される、項目20に記載の方法。
[項目22]
上記検出された超音波信号を減衰させることは、残響信号またはエコー信号の以前に測定された振幅に少なくとも部分的に基づく、項目20に記載の方法。
[項目23]
比較器およびアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用して、ピーク振幅の発生を判定するステップをさらに含む、項目20に記載の方法。
[項目24]
以前に測定されたデータに少なくとも部分的に基づいて、上記検出された超音波信号に利得を提供するステップをさらに含む、項目20に記載の方法。
[項目25]
超音波を感知する方法において、
以前に測定された調整可能な利得制御(AGC)データに少なくとも部分的に基づいて、受信した超音波信号に第1の利得を提供するために、増幅器を調整するステップと、
上記以前に測定されたAGCデータに少なくとも部分的に基づいて、上記第1の利得よりも大きい第2の利得を提供するために、後の時点で、上記増幅器を調整するステップと、
を含む、方法。
[項目26]
上記以前に測定されたデータは、測定距離および上記測定距離に適切な利得を相関させる、項目25に記載の方法。
[項目27]
エコー信号が検出されるまで、または所定の測定時間に到達するまで、経時的に、増加する利得を提供するように上記増幅器を調整するステップをさらに含む、項目25に記載の方法。
[項目28]
所定の期間中に上記超音波信号が受信された場合にだけ、増幅される前に、上記受信した超音波信号が減衰される、項目25に記載の方法。
[項目29]
上記所定の期間中に、上記受信した超音波信号は、エコー信号を排除せず、実質的に全ての残響信号を排除するように減衰される、項目28に記載の方法。
[項目30]
比較器およびアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用して、ピーク振幅の発生を判定するステップをさらに含む、項目25に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7