特許第6388958号(P6388958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388958干渉X線撮像のための補助システムおよび投影X線装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388958
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】干渉X線撮像のための補助システムおよび投影X線装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20180903BHJP
   A61B 6/06 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   A61B6/00 330Z
   A61B6/06 333
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-555486(P2016-555486)
(86)(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公表番号】特表2017-506974(P2017-506974A)
(43)【公表日】2017年3月16日
(86)【国際出願番号】EP2015053814
(87)【国際公開番号】WO2015132095
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】102014203811.1
(32)【優先日】2014年3月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516252425
【氏名又は名称】ジーメンス ヘルスケア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Siemens Healthcare GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス メアテルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】マークス ラーディケ
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−206280(JP,A)
【文献】 特開2012−152466(JP,A)
【文献】 特開2012−024339(JP,A)
【文献】 特開平08−280656(JP,A)
【文献】 特開2012−143550(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0037059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点を形成するX線管(7.1)と、画素を形成する複数の検出器素子(2.1)を有するデジタルフラットパネル検出器(2)と、プログラムメモリを有するコンピュータシステム(11)とからなるエミッタ検出器システムを備えている、投影吸収レコードを生成するためのX線装置における患者(6)の干渉X線撮像のための補助システムであって、
1.1 移動式格子アタッチメント(3)を含み、該移動式格子アタッチメント(3)は、前記デジタルフラットパネル検出器の1つの部分領域だけをカバーし、さらに、
1.1.1 第1の干渉X線格子(G1)と、
1.1.2 前記第1のX線格子から距離をおいて照射方向に配置された第2の干渉X線格子(G2)と、
1.1.3 前記第2のX線格子(G2)を少なくとも1つの検出器素子(2.1)上方の当該第2のX線格子(G2)の平面内で段階的に変位させる変位装置(12)とを備えており、さらに
1.2 前記コンピュータシステム(11)内に記憶され実行されるコンピュータプログラム(Prg1−Prgn)を含み、該コンピュータプログラム(Prg1−Prgn)は、前記補助システムを制御し、かつ、少なくとも1つの干渉X線画像を作成し、
1.3 位置識別システムが前記移動式格子アタッチメント(3)および/または前記デジタルフラットパネル検出器(2)に配置され、さらに位置表示システムが、前記移動式格子アタッチメントによってカバーされる領域を、直接患者(6)上に表示するように設けられている、補助システムにおいて、
前記移動式格子アタッチメント(3)の位置を被検体上に投影する複数の光マークを生成する装置(7.2)が、前記X線管(7.1)の領域に配置されており、
前記コンピュータプログラム(Prg1−Prgn)は、事前に記録された患者(6.1)の投影X線吸収画像において特別な関心領域(9)を特徴付け、かつ、前記複数の光マークを生成する装置により前記デジタルフラットパネル検出器(2)に当該関心領域を描写する方法をエミュレートし、これにより、前記移動式格子アタッチメント(3)は、リスト「位相画像、微分位相画像、暗視野画像、吸収画像」から、当該関心領域(9)の少なくとも1つの干渉X線画像を生成するために位置決め可能となる
ことを特徴とする補助システム。
【請求項2】
吸収格子(G0)を有する格子フロントアタッチメント(8)が、前記X線管(7.1)に設けられている、請求項1記載の補助システム。
【請求項3】
前記吸収格子(G0)は、前記格子フロントアタッチメント(8)内で可動可能に配設されている、請求項2記載の補助システム。
【請求項4】
前記移動式格子アタッチメント(3)は、前記デジタルフラットパネル検出器(2)へ直接載置されるように構成されている、請求項1から3いずれか1項記載の補助システム。
【請求項5】
前記位置識別システムは複数の位置センサ(14)を有し、前記複数の位置センサ(14)は、前記デジタルフラットパネル検出器(2)内に統合され、かつ前記移動式格子アタッチメント(3)内の位置発信器を検出する、請求項1から4いずれか1項記載の補助システム。
【請求項6】
焦点(7)を形成するX線管(7.1)と、画素を形成する複数の検出器素子(2.1)を有するデジタルフラットパネル検出器(2)と、プログラムメモリを有するコンピュータシステム(11)とを含むエミッタ検出器システムを備えている、投影吸収撮像のために構成されているX線装置(1)において、
前記X線装置(1)は、リスト「位相画像、微分位相画像、暗視野画像、吸収画像」から少なくとも1つの干渉X線画像を追加的に生成するための、請求項1からいずれか1項記載の補助システムを有していることを特徴とするX線装置(1)。
【請求項7】
前記X線装置は、次のようなタイプ、すなわちマンモグラフィシステム、Cアームシステム、ウォールスタンドを備えた胸部X線装置のようなタイプのリストからの装置である、請求項記載のX線装置(1)。
【請求項8】
前記デジタルフラットパネル検出器(2)に、前記移動式格子アタッチメント(3)のための自動位置決め装置(14)が配置されており、該自動位置決め装置(14)は、前記移動式格子アタッチメント(3)を、事前に記録された吸収レコードにおける先行のエントリに応じて位置決めする、請求項6または7記載のX線装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点を形成するX線管と、画素を形成する複数の検出器素子を有するデジタルフラットパネル検出器と、プログラムメモリを有するコンピュータシステムとからなるエミッタ検出器システムを備えている、投影吸収レコードを生成するためのX線装置における患者の干渉X線撮像のための補助システムに関する。さらに本発明は、上記の補助システムを有している、エミッタ検出器システムを備えた投影吸収レコードを生成するX線装置にも関している。
【0002】
干渉X線撮像は、X線撮像システム内への1つ、2つまたは3つの格子の導入に基づいている。典型的にはこれらの格子は、それらのビーム経路における順序に応じてG0,G1およびG2と称される。吸収格子G0は、X線源の近傍に位置し、比較的大きなX線焦点の場合でも撮像のために必要なコヒーレンス条件の維持を保障している。X線焦点が非常に小さい、すなわち100μmよりも小さい範囲にある場合には、吸収格子は不要であり、省略することが可能である。大抵は吸収格子は、平行に配置された複数の格子ラメラ(格子ウェブとも称される)からなる一次元格子として構築され、それによってコヒーレンス条件が一方向においてのみ満たされている。しかしながらそれはまた、チェス盤のように構築させることも可能であり、それによって、所要のコヒーレンス条件が両方向で満たされる。
【0003】
格子ラメラ間の距離は、典型的にはラウエ効果が満たされるように構成されている。それにより画像平面内では個々の格子切り欠きの構造的な重畳が生じる。
【0004】
第1の位相格子G1を用いることにより、第1の格子G1から所定の距離において格子の自己像を生成するタルボ効果が使用される。格子G1の自己像は、ビーム経路内に被検体を挿入することによって干渉される。この干渉からは、吸収、微分位相シフト並びに暗視野に関する画像情報を得ることができる。
【0005】
医療用のデジタルフラットパネル検出器が使用されている場合、一般的にこの検出器の分解能は、干渉パターンを読み取るために十分ではない。そのためさらなる格子G2の導入が必要となる。この格子は、その格子周期に関して、格子G1の未干渉の自己像に適合化される。画像情報は、1つの格子、典型的には格子G2の変位と、オブジェクトなしの画像およびオブジェクトありの画像の読み取りとによって得ることができる。基本的には、干渉X線画像の生成のために相応に組み込まれた格子装置を有するX線装置が公知である。例えばこれに関しては、独国特許出願公開第102006015355号明細書(DE102006015355A1)またはPfeifferによる公知文献“Phase retrieval and differential phase−contrast imaging with low−brilliance X−ray sources, Nature Physics, 258−261, 2006”が参照される。
【0006】
そこに示されているX線装置の1つの問題は、そこに必要とされる大きさのX線光学格子の製造が非常に複雑であり、現在は50mm×50mmの大きさの格子しか製造することができないため、結果としてその構造が非常に高価なものになっている点にある。そのような複数の格子のモジュールアセンブリも同様に大きな問題をもたらす。
【0007】
それ故本発明の課題は、干渉X線画像を生成する単純な既存の投影X線装置が少なくともそこに用いられているデジタルフラットパネル検出器の比較的小さな部分領域の使用のもとで利用できる解決手段を見つけることにある。
【0008】
前記課題は、独立請求項に記載の特徴によって解決される。本発明の好ましい改善形態は、従属請求項の態様である。
【0009】
本発明者らは、デジタルフラットパネル検出器を備えた既存の投影X線装置に、少なくとも2つの干渉X線格子からなる補助システムを装備させることと、それを用いて干渉X線撮像を実施することが可能であることを認識した。これに対して、例えばマンモグラフィシステム、胸部X線システムまたはCアームシステムも、対応する移動式格子アタッチメントを用いて補助することが可能である。本発明によれば、その際のX線装置の運転プログラムも相応のプログラム補助によって支援され、それによってX線装置のコンピュータは、さらに、補助装置の制御のために用いられ、干渉測定の際の画像データの評価も担う。従ってそのような補助システムによって実施可能な干渉測定を用いることにより、通常の吸収画像の他に、微分位相画像も暗視野画像も生成することができるようになる。評価のためには、少なくとも2つ、あるいは3つ全ての画像がマージ可能か、または相互に平行して表示可能である。ここで使用される投影X線装置に応じて、この干渉X線画像も投影画像である。
【0010】
それに従って本発明者らは、焦点を形成するX線管と、画素を形成する複数の検出器素子を有するデジタルフラットパネル検出器と、プログラムメモリを有するコンピュータシステムとからなるエミッタ検出器システムを備えている、投影吸収レコードを生成するためのX線装置における患者の干渉X線撮像のための補助システムを提案した。このシステムは、
移動式格子アタッチメントを含み、該移動式格子アタッチメントは、
第1の干渉X線格子と、
前記第1のX線格子から距離をおいて照射方向に配置された第2の干渉X線格子と、
前記第2のX線格子を少なくとも1つの検出器素子上方の当該第2のX線格子の平面内で段階的に変位させる変位装置とを備えており、さらに
前記コンピュータシステム内に記憶され実行されるコンピュータプログラムを含み、該コンピュータプログラムは、補助装置を制御し、少なくとも1つの干渉X線画像を作成する。
【0011】
基本的には、X線装置に使用される焦点が所要のコヒーレンス条件を満たすために十分に小さい場合には、上述した補助システムを用いて投影干渉撮像を実現することは可能である。しかしながら使用するX線管が過度に大きい焦点を有している場合には、コヒーレンス条件をラメラ状の格子構造のもとで少なくとも一方向において満たすために、吸収格子を備えた格子フロントアタッチメントをX線管に取り付けることが可能である。また代替的に、コヒーレンス条件が両方向で満たされるように、チェス盤状の構造を選択することも可能である。この手段は、干渉画像のために過度に長い測定時間を必要としないくらい十分に高い線量をもたらすX線管への使用も許容する。
【0012】
吸収格子の使用において、好ましくは、吸収格子は格子フロントアタッチメント内で可動に配置される。それにより例えばこの格子は、干渉検査のためにビーム経路内に押し込むかまたは傾斜させることが可能になる。それに対して、通常の吸収レコードの場合にはビーム経路から除去される。
【0013】
さらにこの補助システムは、次のように構成することが可能である。すなわち、2つの干渉格子を有する格子アタッチメントが、フラットパネル検出器に直接載置されるように構成することが可能である。大抵の場合、フラットパネル検出器は、投影吸収撮像の場合に、患者の比較的近くに配置される。しかしながら格子アタッチメントは、2つの干渉格子間の所要の距離に基づいて無視できない構造高さを有しているので、補助システムを使用する場合には、フラットパネル検出器と患者との間で、それらの間に格子アタッチメントを配置できるようにするために、相応の距離を維持しなければならない。検査のために使用されるビーム経路の開きに基づいて、格子アタッチメントを用いて検査される領域の拡大も相応に生じる。それは例えばマンモグラフィ検査の場合、典型的には1.3倍乃至2倍の拡大倍率の範囲にある。
【0014】
大抵のケースにおいて、本発明に係る補助システムは、フラットパネル検出器上の格子アタッチメントが、フラットパネル検出器の1つの部分領域のみをカバーするように構成される。それに応じてそこでは格子アタッチメントの位置を決定する必要がある。この目的のために、本発明によれば、位置識別システムが設けられていてもよく、これは例えば格子アタッチメントに、および/またはフラットパネル検出器に配置され、さらに位置表示システムが存在すべきであり、それによって、補助システムによってカバーされた領域が患者やその画像表示部に直接表示される。その際、フラットパネル検出器に載置された格子アタッチメントと患者上の干渉走査領域の位置表示との間で結合が生じる。患者への表示に対して代替的に若しくは補足的に、モニタ上にも、写真画像レコード内の若しくは先行時点で生成された患者の吸収X線レコード内の格子アタッチメントによってカバーされた領域をフラットパネル検出器上の格子アタッチメントの位置決めに応じて表示することも可能である。それにより操作者は、干渉格子の所望の位置決めを簡単に行うことができる。
【0015】
相応に位置識別システムは、フラットパネル検出器内に統合され、かつ格子アタッチメント内の位置発信器を検出する複数の位置センサを有していてもよい。さらに格子アタッチメントの位置を、被検体上に投影する複数の光マークを生成する装置が、X線管の領域に配置されていてもよい。
【0016】
さらなる変形形態によれば、コンピュータプログラムは、被検体の事前に記録された投影X線吸収画像において特別な関心領域を特徴付けて、当該領域を複数の光マークを生成する装置により、フラットパネル検出器に描写する方法もエミュレートし、これにより、格子アタッチメントは、当該領域の少なくとも1つの干渉X線画像を生成するために位置決めされ得る。この場合、少なくとも1つの干渉X線画像は、干渉測定データから得られる位相画像および/または微分位相画像および/または暗視野画像および/または吸収画像であり得る。ここでは、本発明の範囲に対して、干渉X線撮像の概念の下では上記した画像の組み合わせも、場合によっては重み付けされた組み合わせも含まれることを述べておく。またこの場合の重み付けは、自動的に行うこともできるし、少なくとも1つの重み付け係数を手動で調整することによって制御することもできる。
【0017】
上述の補助装置の他に、本発明者らは、X線装置も提案しており、このX線装置は、投影吸収撮像のために構成されており、焦点を形成するX線管と、画素を形成する複数の検出器素子を有するデジタルフラットパネル検出器と、プログラムメモリを有するコンピュータシステムとを含むエミッタ検出器システムを備えており、この場合このX線装置は、前述した干渉X線画像の少なくとも1つを付加的に生成するための本発明に係る補助システムを有している。
【0018】
特に前記補助システムを、マンモグラフィシステム、Cアームシステム、またはウォールスタンドを備えた胸部X線装置と組み合わせることが提案される。
【0019】
この場合特に好ましくは、このX線装置は、そのフラットパネル検出器に、格子アタッチメントのための自動位置決め装置を有しており、該位置決め装置は、格子アタッチメントを、事前に記録された吸収レコードにおける先行のエントリに応じて位置決めするように構成されている。この場合、補足されたコンピュータソフトウェア内には、格子アタッチメントの自動的な位置決めを実施する相応のルーチンが含まれる。
【0020】
以下では本発明を、好ましい実施形態に基づき、図面を用いてより詳細に説明するが、ここでは、本発明の理解のために必要な特徴だけが示されている。そこでは次の参照符号が使用されている。すなわち、1:X線装置、2:フラットパネル検出器、2.1:検出器素子、3:格子アタッチメント、4:圧迫プレート、5:圧迫プレート、6:被検体、6.1:患者、7:焦点、7.1:X線管、7.2:記録および表示システム、8:格子フロントアタッチメント、9:特別な関心領域、10:コーンビーム、10.1:制限されたコーンビーム、11:コンピュータ/計算機システム、12:変位装置、13:可動遮蔽部、14:センサ/アクチュエータ、15:部分領域、G0:吸収格子、G1:第1の干渉格子、G2:第2の干渉格子、Prg−Prg:コンピュータプログラムが使用されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】干渉X線撮像のための補助システムを備えたマンモグラフィシステムの概略図
図2】干渉X線撮像のための補助システムを備えたCアームシステムの概略図
図3】干渉X線撮像のための補助システムを備えた胸部X線装置の概略図
【0022】
発明を実施するための形態
図1には、第1の変化実施形態において概略的にマンモグラフィシステム1が示されており、このマンモグラフィシステムでは、(詳細には示されていない)X線管において焦点7を用いてコーンビーム10が生成され、このコーンビームは、電子フラットパネル検出器2の方に配向されている。フラットパネル検出器2は、多数の検出器素子2.1を有しており、これらの検出器素子は、1つの平面に配置されており、それによって各検出器素子2.1は、画像再生のためにX線画像の1つの画素を形成している。焦点7の下流側のビーム経路内では、X線管に、吸収格子G0を有する格子フロントアタッチメント8が配置されており、この格子フロントアタッチメントは、並列に配置された多数の格子ウェブ若しくは格子ラメラを用いて、非常に狭幅な多数のX線源を形成し、それによって干渉検査のためのコヒーレンス条件を充足している。被検体、すなわち女性患者の乳房6は、マンモグラフィX線記録の際に通常であるように2つの圧迫プレート4,5の間に位置している。先行するX線吸収撮像に基づいて、特別な関心領域9が発見されており、この関心領域は、ここに示されている干渉検査によってより正確に観察されるべきである。それに応じて、移動式格子アタッチメント3が、乳房とフラットパネル検出器2との間のビーム経路内に設けられている。それによって検査すべき乳房の領域は、フラットパネル検出器2上の部分領域15に相応しており、それに対して格子アタッチメント3が投影される。相応に制限されたコーンビーム10.1は、一点鎖線によって示されている。格子アタッチメント3内には、照射方向において相前後して面平行に配置された第1の干渉格子G1とそこから離間されて配置された第2の干渉格子G2とが存在している。本実施形態によれば、第2の格子G2は、1つ以上のアクチュエータの形態の変位装置12と接続されており、それによってこの格子は、下流側に存在する検出器素子の吸収値から、それ自体公知の方法でX線放射の位相情報を得るために、各測定の前に漸進的に変位可能である。
【0023】
基本的には、2つの格子G1およびG2は、互いに所定の固定の距離に配置することが提案されており、この距離は、検査に使用されるX線エネルギーに適合化されている。しかしながら本発明の範囲内には、格子G1とG2との間の設定可能な距離のための付加的な設定装置を意図した移動式格子アタッチメントの変化形態も含まれ、それによって、様々なX線エネルギーへの適合化が可能である。
【0024】
現在の良好な品質の格子は、約50mm×50mmのサイズまでしか投影することができず、1つの大きな格子のための複数の個別格子のモジュールアッセンブリは非常に手間をかけた場合にしか高品質を達成することができないので、格子アタッチメントによってカバーされるフラットパネル検出器上の面積部分も、好ましくはこのレベル範囲内で変動する。さらに干渉測定のためには比較的高い線量出力が用いられなければならないので、この実施形態では、付加的にさらに、複数の個別可動遮蔽部13を有する任意の遮蔽システムを説明する。これらの可動遮蔽部13は、好ましくは、格子アタッチメント3が行う位置決めに基づいて、あるいは既にモニタ上で画定された特別な関心領域9に基づいて自動的に設定される。
【0025】
マンモグラフィからは、基本的にその上で乳房が位置付けされて上から圧迫プレートを用いて圧縮されるいわゆる拡張テーブルが公知である。この拡張テーブルを使用した場合、上側の検出器カバーは、付加的な吸収体による画像信号の減衰を可及的に僅かに抑えるためにこの拡張テーブルによって置き換えることが可能である。本発明によれば、格子アタッチメント3は、そのような拡張テーブルを利用することができ、検出器と拡張テーブルの圧迫プレートとの間に挿入され得る。また代替的に、格子アタッチメントは、そのような可変の載置可能な拡張テーブルに統合されていてもよく、その場合には、好ましくは、自動位置決め装置も格子アタッチメント3のために設けられていてもよい。
【0026】
本発明の実施形態によれば、格子アタッチメント3は、有線接続を介してコンピュータ11に接続されている。それによりこのコンピュータは、その中に記憶され実行されるプログラムPrg−Prgを用いて、マンモグラフィシステムの制御の他に、補助装置を制御することも可能になる。いずれにせよ基本的には本発明の範囲内では、補助装置のそのような接続が無線で、例えば安全なブルートゥース接続またはWLAN接続を介して行われる場合もある。もちろんこのためには、通常の送信器と受信器を、補助システム内に、特に格子アタッチメント3内とコンピュータ11内に存在させなければならない。
【0027】
ここで説明した、干渉検査のための付加的な補助を用いたマンモグラフィシステムによれば、付加的な例えば患者の選択された部分領域に対する位相コントラストレコードまたは暗視野レコードの形態の干渉画像情報によって改善された微分位相診断が安価な方法で可能になる。この場合提案された補助システムは、既存のマンモグラフィシステムで容易に用いることが可能である。
【0028】
補助システムの他の適用においては、この補助システムを、図2に例示的に示されるようなそれ自体公知のCアームシステム1につなげて使用することもできる。このCアームシステム1は、X線管7.1と反対側にあるデジタルフラットパネル検出器2とからなる、Cアームに配置された可動のエミッタ検出器システムを有している。X線管7.1には、格子フロントアタッチメント8が配設されており、その中には必要に応じて前置接続可能な吸収格子G0が存在する。その他にもまたX線管には、光ベースの記録および表示システム7.2が設けられている。これにより患者載置台に横たわる患者6.1を、コンピュータ11のモニタ上に表示することができ、光マークを患者6.1に生成することができるようになる。さらに本発明によれば、フラットパネル検出器2上に、2つの干渉格子G1およびG2が存在する格子アタッチメント3が載置される。さらに検出器2には、2つのセンサおよび/またはアクチュエータ14が格子アタッチメント3のために設けられており、それにより一方では、格子アタッチメント3の位置を検出することができるようになり、かつ/またはコンピュータ11を介した制御によって駆動制御できるようになる。従って格子アタッチメント3の場合によっては手動または半手動の位置決めに応じて、記録および表示システム7.2を使用して格子アタッチメント3の投影位置が患者6.1に表示可能となる。また代替的に、コンピュータ11における患者6.1の画像若しくはX線撮像の相応のマーキングによっても格子アタッチメント3の所望の位置が操作者によって又は自動的に決定され得る。それによりシステムは、そのことに基づいて格子アタッチメント3の正確な位置決めを行う。格子アタッチメント3の位置決めに応じて、X線管から照射されるビーム束も、制御可能な遮蔽部を用いて、検出器2の干渉検査すべき部分領域に制限することが可能である。
【0029】
ここで補足的に留意すべきことは、格子アタッチメント3を、比較的不安定なCアームではなく、直接Cアームの懸架装置にまたは直接検査室の天井若しくは床に固定することも、有利であり得る点である。Cアームとは逆に僅かな重量に基づいて、はるかに安定した位置決めが設定され、これらを時間的に良好に維持することが可能となる。格子G1およびG2を有する格子アタッチメント3は、これによってCアームに対して平行に移動することができ、但しこれの技術的振動面からは切り離される。このことは、振動若しくは相対運動の影響は、どのオブジェクト間で相対運動が生じているかに強く依存しているので、有利である。最大の安定性は、格子G1とG2との間で必要とされる。なぜなら、ここでは既に数μmの相対運動が画像品質に悪影響を及ぼすからである。それに対してX線管と検出器との間の相対運動は、一桁から二桁のレベル範囲で大きくてもよく、それが画像品質に強く悪影響を及ぼすことはない。
【0030】
本発明に係る補助システムのさらなる適用ケースは、胸部X線装置1を概略的に示した図3を用いて説明する。そのような胸部X線装置は、業界内ではバッキーウォールスタンドとも称されている。この装置は、可動なフレームに固定されたX線管7.1を有しており、このX線管からはコーンビーム10が、通常は水平方向に、相対向する側のフラットパネル検出器2に向けて配向されている。この場合フラットパネル検出器2は、ここでは詳細には図示されていない機構を介してX線管7.1と次のように連結されている。すなわちフラットパネル検出器2が、X線管7.1の垂直移動と常に連動する一方で、X線管7.1の自由な水平移動が可能であるように連結されている。そのような移動のもとで、コーンビーム10の拡張だけは調整可能な遮蔽部によって変更され、それによって不要な放射線量が、検出器外に放射されることはない。
【0031】
本発明によれば、フラットパネル検出器2の部分領域15のための干渉検査を可能にする格子アタッチメント3は、検出器2の前に置かれている。ここでは両格子G1およびG2は、所要の距離で固定的に組み込まれていてもよいし、それらは異なる所定の間隔で挿入することができ、あるいは格子の間隔を自動的に設定調整する自動設定装置が置かれていてもよい。この装置は、格子G1およびG2が互いに高精度に配向されるように構成されている。さらにまた、焦点若しくは吸収格子と検出器との間の区間の自動測定を介して、格子G1およびG2の自動的な新たな位置決めを実施することが可能である。それにより干渉検査のために必要な距離条件が維持される。
【0032】
格子アタッチメント3内にここでも2つの格子G1およびG2が収容されているならば、ここでは格子G1が摺動可能に配置される。X線コーンビーム10若しくは制限されたX線コーンビーム10.1の発散に基づいて、やや多くのスペースが変位装置12のために存在している。
【0033】
基本的にはここでも、格子アタッチメント3の位置決めを所望のやり方で手動、半手動若しくは全自動で実施するために、格子アタッチメント3のための自動位置決め装置および/または位置決定装置および/または光ベースの記録および/または表示システムを、患者6.1の前方で使用することが可能である。
【0034】
その後の干渉検査自体は、付加的にコンピュータ11内にインストールされているコンピュータプログラムPrg−Prgを使用して実施される。その結果、ここでも選択された部分領域の位相コントラストレコードおよび暗視野レコードが生成され得る。それらは個別に若しくは重み付けされた組み合わせにおいて、または吸収レコードとの組み合わせにおいても表示することが可能である。
【0035】
特に、ここに記載する補助システムは、公知の方法でバッキーウォールスタンドに挿入することができる移動式検出器に繋げて使用することもできる。
【0036】
本発明は、好適な実施形態によって詳細に図示され、説明もしてきたが、本発明は、開示された例によって限定されるものではなく、その他の変化形態が、本発明の権利範囲から逸脱することなく、当業者によってそこから導き出すことが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 X線装置
2 フラットパネル検出器
2.1 検出器素子
3 格子アタッチメント
4 圧迫プレート
5 圧迫プレート
6 被検体
6.1 患者
7 焦点
7.1 X線管
7.2 記録および表示システム
8 格子フロントアタッチメント
9 特別な関心領域
10 コーンビーム
10.1 制限されたコーンビーム
11 コンピュータ/計算機システム
12 変位装置
13 可動遮蔽部
14 センサ/アクチュエータ
15 部分領域
G0 吸収格子
G1 第1の干渉格子
G2 第2の干渉格子
Prg−Prg コンピュータプログラム
図1
図2
図3