特許第6388960号(P6388960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388960車両タンク内の極低温燃料を排出及び補充するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388960
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】車両タンク内の極低温燃料を排出及び補充するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/02 20060101AFI20180903BHJP
   F17C 9/02 20060101ALI20180903BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   F17C5/02 A
   F17C9/02
   F17C13/02 301A
【請求項の数】15
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-561648(P2016-561648)
(86)(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公表番号】特表2017-512955(P2017-512955A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】SE2014000045
(87)【国際公開番号】WO2015156709
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】ティランダー,ミカエル
【審査官】 家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許発明第19704361(DE,C1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0218941(US,A1)
【文献】 特開昭51−064614(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0083719(US,A1)
【文献】 実開平04−074138(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温燃料(33)のための車両タンク(15)を排出及び補充するためのツール(100)において、熱交換器(13)及び冷却タンク(1)を備え、前記冷却タンク(1)が、前記ツールの使用位置において垂直方向で見た場合に上部及び下部を有し、少なくとも1つの出口弁(2)を有する燃料出口(35)を備え、前記燃料出口(35)が燃料出口導管(35’)に接続され、前記燃料出口導管(35’)が、前記冷却タンク(1)の前記燃料出口(35)を前記熱交換器(13)の入口に接続するための手段を備え、前記燃料出口導管(35’)が、前記冷却タンク(1)の前記燃料出口(35)を車両タンクの入口(43)に接続するための手段を備え、前記冷却タンク(1)が更に入口(38)を備え、前記入口(38)が逆止弁(4)を介して燃料入口導管(39)に接続され、前記燃料入口導管(39)が、前記入口(38)を前記熱交換器(13)の出口に又は車両タンクの出口に接続するための手段を備え、前記熱交換器(13)の前記出口が、車両タンクの入口(43)に接続するための手段(28)を備え
前記熱交換器(13)に、前記熱交換器の前記入口(27)を前記車両タンク(15)の燃料出口(41)に接続するための手段が設けられ、前記車両タンク(15)からの燃料が、前記熱交換器(13)に導かれて前記車両タンク(15)に戻される、ことを特徴とするツール。
【請求項2】
前記出口弁(2)が燃料出口導管(35’)上に配置され、前記燃料出口導管が、前記冷却タンク(1)の前記燃料出口(35)からの方向で見た場合に前記出口弁(2)の下流で第1の燃料導管(37)と第2の燃料導管(45)とに分かれている、請求項1に記載のツール(100)。
【請求項3】
前記逆止弁(4)が、前記冷却タンク(1)からの排圧が12〜24バールで、開くように適合されている、請求項1、又は2に記載のツール。
【請求項4】
前記冷却タンク(1)への前記入口(38)が、前記ツールの前記垂直方向において前記冷却タンクの前記燃料出口(35)よりも上方に配置されている、請求項1、2、又は3に記載のツール。
【請求項5】
前記冷却タンク(1)内部で前記冷却タンク(1)の前記入口(38)にスプレーデバイス(50)が接続され、前記スプレーデバイスが前記冷却タンク(1)の前記上部に燃料をスプレーするように適合されている、請求項4に記載のツール。
【請求項6】
前記冷却タンク(1)の前記上部にガス出口(44)が配置されている、請求項1からのいずれか1項に記載のツール。
【請求項7】
前記ガス出口(44)が、1つ又はいくつかの弁(8、6)を介して1つ又はいくつかのガス出口導管に接続されている、請求項6に記載のツール。
【請求項8】
1つのガス出口導管に、24バールの出口圧力で自動的に開くように適合された安全弁(6)が設けられている、請求項7に記載のツール。
【請求項9】
1つのガス出口導管(44’)に、手動で開閉するように適合された出口弁(9)が設けられている、請求項7又は8に記載のツール。
【請求項10】
前記ツールが携帯型である、請求項1からのいずれか1項に記載のツール。
【請求項11】
極低温燃料(33)のための車両タンク(15)を排出及び補充するためのシステムにおいて、前記システムが、請求項1から10のいずれか1項に記載のツールと、車両上に配置された極低温燃料のための車両タンク(15)とを備え、前記車両タンク(15)の使用位置において垂直方向で見た場合に前記車両タンク(15)が上部及び下部を有し、前記車両タンク(15)が燃料用の出口(41)及び燃料用の入口(43)を備えることを特徴とする、システム。
【請求項12】
前記システムが追加の冷却タンクを備え、前記冷却タンクが、燃料用の出口と、燃料用の入口と、前記出口及び前記入口をそれぞれ前記システム内の他の構成要素に接続するための手段と、を提示する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
極低温燃料のための車両タンク(15)から極低温燃料を排出するための方法において、前記方法が、
A)請求項1から10のいずれか1項に記載のツールを提供するステップと、
B)前記ツールを車両タンクに接続することによって請求項11又は12に記載のシステムを形成するステップであって、前記車両タンクが極低温の加圧燃料を収容する供給タンクを構成し、これが前記ツールの前記冷却タンクに移送されることによって受容タンクを構成する、ステップと、
C)液体極低温燃料を前記ツールの前記熱交換器に通過させることによって前記液体極低温燃料を気体状態に変化させるステップと、
D)前記熱交換器で変化した前記燃料を注入することによって前記供給タンク内に吐出圧力を発生させるステップと、
E)前記燃料を前記供給タンクから前記受容タンクへ移送するステップであって、前記供給タンク内の前記増加した圧力が前記供給タンクから前記受容タンクへの前記燃料移送を引き起こす、ステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記車両タンクが前記供給タンクであり、ステップC)における前記液体極低温燃料が前記車両タンクから前記車両タンクの出口を介して取得される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記供給タンク内の作業圧力が2〜7バールであり、前記受容タンク内の圧力が前記供給タンク内の前記圧力よりも少なくとも1バール低い、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両タンク内の極低温燃料(cryogenic fuel)を排出及び補充するためのツール、システム、及び方法に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス、作業車のような商用車両に適用することができる。本発明は商用車両に関連付けて記載されるが、このタイプの車両に限定されず、例えば掘削機のような作業機等の他の車両においても使用可能である。
【背景技術】
【0003】
極低温ガスが強可燃性を有する場合があるので、極低温ガスを用いた作業に火災の危険があることはこの分野では常識である。極低温燃料を商用車両の動力燃料として用いる場合、例えば車両の点検又は修理のようなあらゆる工場作業で安全上の危険が増大することになる。修理又は点検の間、火災を起こす恐れのある機器が用いられることがあり、場合によっては、例えばアーク溶接による炎上が起こり得る。従って、この種の商用車両で作業を行う際の危険を最小限に抑えるため、作業場で作業を始める前に燃料タンクから極低温燃料を取り除かなければならない。
【0004】
極低温燃料タンクからの排出には困難が伴う。燃料を液体状態に保つには温度が極めて低くなければならず、少なくとも周囲の温度に対して−160度低くなければならないからである。従って、タンクからの排出は燃料の低温を維持しながら行われるべきである。温度が上昇すると、燃料は気体状態に変化し、これは体積がかなり増大することを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在の解決策では、商用車両を点検する前に、燃料タンクに接続された導管を介して燃料を気体状態に変化させ、導管の出口でこれを燃焼させることが多い。この手順は時間のかかるものであり、2〜3リットルの液体状態の燃料を燃焼させるために数時間を要し得る。更に、事故の危険性が明白であるため、燃えている炎を監視しなければならない。結果として、この手順では時間も労力も費やされる。また、この手順は保護された状況のもとで安全規則を守りながら実行しなければならず、これが問題となる可能性がある。例えばこの場合、作業場に隣接したエリアで正しい安全距離を確定するのが難しいことがある。
【0006】
更に、燃料を燃焼させる場合、燃料は完全に無駄になるので、リソースの無駄が生じる。
【0007】
US20220083719A号が開示する配送タンクは、配送タンク内の圧力を維持しながら、配送タンク内の燃料をポンプで汲み出して、配送タンクから顧客タンクに燃料を移送する。更に、燃料を顧客タンクへ送るパイピングシステムが設けられている。ポンプで汲み上げた燃料を分流器によって分流させ、その燃料の一部を熱交換器が加熱又は冷却した後、配送タンクに戻す。その燃料の一部における熱の分配をセンサが制御する。
【0008】
これは、例えば点検作業の前に燃焼によって除去しなければならない燃料を処理するように機能し得るが、前述のことから明らかなように、処理プロセスにおいてどのように燃料を処理し回収するかに関して、また安全性の観点からも、やはり欠点と問題がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、車両タンク内の極低温燃料の排出及び補充に関して改良された機能を有するツール、システム、及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの目的は、商用車両のような車両において極低温燃料の排出及び補充を可能にするためのツール、システム、及び方法を生成することである。本発明の目的は、請求項1に記載されたツールによって、更にそれ以降の請求項におけるシステム及び方法によって達成される。
【0011】
本明細書に記載される、極低温燃料のための車両タンクを排出及び補充するためのツールは、熱交換器及び冷却タンクを備え、冷却タンクが、ツールの使用位置において垂直方向で見た場合に上部及び下部を有し、少なくとも1つの出口弁を有する出口を備え、この出口が、少なくとも1つの出口弁を介して第1の燃料導管及び第2の燃料導管に接続され、第1の燃料導管が、第1の燃料導管を熱交換器の入口に接続するための手段を備え、第2の燃料導管が、第2の燃料導管を車両タンクの入口に接続するための手段を備え、冷却タンクが更に入口を備え、この入口が逆止弁を介して燃料入口導管に接続され、燃料入口導管が、入口を熱交換器の出口に又は車両タンクの出口に接続するための手段を備え、熱交換器の出口が、車両タンクの入口に接続するための手段を備えることを特徴とする。
【0012】
熱交換器に、この熱交換器の入口を車両タンクの燃料出口に接続するための手段を設けることができる。「接続するための手段」という表現は、例えば2つのタンク又はタンクと熱交換器のような2つの要素間で機能的な接続を確立するために必要なあらゆる接続デバイス、弁、パイプ、及びホースを指す。
【0013】
簡略化のため、ツールを車両タンクに接続するために必要な、動作状態の車両には通常搭載されていない弁、コネクタ、ホースなどのような機器は、ツールが移送システムにおいてセットアップされた場合、ツールの部品と見なされる。これについては以下で説明する。しかしながらこのような機器は、容易に交換可能である標準的な構成要素から構成され、ツールに対する限定とは見なされない。従って、以下で記載する燃料移送システムにおいて機能的接続を確立するのに必要な接続デバイス、弁、パイプ、及びホースは、適切なものであればいずれも使用可能である。
【0014】
ツールの出口弁は、ツールの冷却タンクの出口から発する出口導管上に配置することができる。出口導管は、第1の燃料導管を構成する1つの分岐と第2の燃料導管を構成する1つの分岐とに分かれている。分岐点は、冷却タンクの出口からの方向で見た場合に出口弁の下流に配置されている。
【0015】
冷却タンクの入口への燃料入口導管上に配置された逆止弁は、冷却タンクからの所定の背圧12〜24バール、例えば14〜18バールで、好ましくは冷却タンクからの背圧が16バールで開くように適合することができる。従って逆止弁は、冷却タンク内の圧力が所定の背圧を超えない限り、燃料が冷却タンクから出て燃料入口導管を介して逆流するのを防止する。
【0016】
冷却タンクの入口は、ツールの垂直方向において冷却タンクの出口よりも上方に配置することが好都合であり得る。このようにして、冷却タンクの下部からの液体燃料の除去、及び冷却タンクの上部への気体燃料又は液体燃料の供給を容易にする。
【0017】
冷却タンク内部で冷却タンクの入口にスプレーデバイスを接続することができる。スプレーデバイスは、冷却タンクの上部に燃料をスプレーするように適合されている。この目的のため、スプレーデバイスに1つ又はいくつかのスプレーノズルを設けることができ、これらは例えば冷却タンク内に延出するパイプに沿って配置することができる。スプレーデバイスは極低温燃料を冷却タンク内に散布することができ、これによって、冷却タンクに燃料を補充する際に、冷却タンクが空であるか又は少量の液体燃料のみを収容している初期段階で、冷却タンクの壁を急速に冷却することができる。このようにして、液体極低温燃料の不必要な気化を最小限に抑えることができる。
【0018】
更に、冷却タンクの上部にガス出口を配置することができる。このようなガス出口は、1つ又はいくつかの弁を介して1つ又はいくつかのガス出口導管に接続することができる。例えば、1つのガス出口導管に、例えば24バールの所定の最高許容出口圧力で自動的に開いて開放状態を維持するように適合された安全弁を設けることができる。
【0019】
極低温タンクを相互に接続するために断熱導管を用いるにもかかわらず、またタンクも断熱されているにもかかわらず、タンク内の液体極低温燃料はある程度気体状態に変化する可能性がある。この結果、車両タンク及びツールの冷却タンクの双方において望ましくないほど高い過圧が発生することがある。
【0020】
従って、冷却タンクに、タンク内の圧力に応答して自動的に開閉するリリーフ弁を設けることが望ましい場合がある。リリーフ弁は、タンク内の圧力を、例えば14バールから18バールまで、例えば16バールまでに調節するように適切に適合することができる。
【0021】
冷却タンクの上部のガス出口は、機械的又は電気的な制御手段によって手動で開閉するように適合された出口弁を設けたガス出口導管を備えることができる。このような制御可能な弁により、冷却タンク内の圧力を手動で調整することで、特に補充プロセスの初期に起こり得る、冷却タンクに注入された燃料の気化により生じる冷却タンク内の望ましくない圧力増大の発生を打ち消すことができる。冷却タンクの補充中、出口弁を調整することによって、冷却タンク内の圧力を例えば1バール等の所定の値付近に維持すると好都合であり得る。
【0022】
従って、ツールの冷却タンク内の圧力を調節するために余分なガスを抜くことは適切な安全措置である。しかしながら、燃料を抜くことで貴重な燃料が無駄になるのでリソースの無駄が生じる。抜いたガスも利用できるようにするため、排出及び補充システムは、適切な時点で、抜いたガスを冷却タンクに戻すための手段を備えることができる。あるいは、抜いたガスを車両タンク又は双方のタンクに送ることができる。抜いたガスを一方又は双方のタンクに戻すことは、燃料を無駄にせず、車両燃料として用いるために回収することを意味する。しかしながら、燃料を戻すことは、過剰な過圧の発生を防ぐためにタンク内で所定の上限値未満の圧力を維持するように制御して行わなければならない。むろん、抜いたガスを収集して他の目的に使用することも可能である。
【0023】
本明細書に記載されるツールは携帯型にすることができる利点がある。その場合、携帯型ツールは例えば、従来のパレットリフターによる移動が可能なサイズを有する。携帯サイズの冷却タンクは、例えば内部容積を300L〜700Lとすることができる。ツールの冷却タンクは少なくとも450L、好ましくは少なくとも550Lを収容すると有利であり得る。このような容積の場合、一般的なサイズの車両タンクに満杯に収容された内容物をツールの冷却タンクに移送できるからである。更に、ツールは、冷却タンク及び熱交換器が相互に個別に切断、保管、及び移動できる別個の部品であるように設計することができる。
【0024】
また、極低温燃料のための車両タンクを排出又は補充するためのシステムを提供する。このシステムは、本明細書に記載されるツールと、車両上に配置された極低温燃料のための車両タンクとを備え、車両タンクは、使用位置において垂直方向で見た場合に上部及び下部を提示し、車両タンクは燃料用の出口及び燃料用の入口を備えている。
【0025】
車両タンクを排出及び補充するためのシステムは追加の冷却タンクを備えることができ、この冷却タンクは、燃料用の出口と、燃料用の入口と、出口及び入口をそれぞれシステム内の他の構成要素に接続するための接続手段と、を提示する。ツールの冷却タンクの入口及び出口に関してすでに記載したように、車両タンク及び/又はシステムに含まれる他のいずれの冷却タンクの入口も、垂直方向において冷却タンクの出口よりも上方に配置されている。
【0026】
更に、車両タンク及び/又はシステムに含まれるいずれかの追加の冷却タンクにも、ツールの冷却タンクに関してすでに記載したように、タンクの上部に1つ又はいくつかのガス導管及び弁を有するガス出口を設けることができる。
【0027】
一部の長距離運搬車両には特大の燃料タンクが搭載されている。例えばこれらを点検する場合、タンクが大量の燃料を収容しているために、ツールの冷却タンクが燃料の全量を収容できないことがある。このような場合、燃料を移送するために追加の体積(volume)を利用することが有利である。また、通常サイズのタンクにおいても、ツールの冷却タンクが充分な量の燃料を収容できない問題が生じ得る。この問題を軽減するため、システムはそのような場合に少なくとも1つの追加の一時的な冷却タンクを備えてもよい。
【0028】
また、極低温燃料のための2つのタンク間で極低温燃料を移送するための方法が提供される。この方法は以下のステップを備える。
A)冷却タンク及び熱交換器を備えた、本明細書に記載する種類のツールを提供するステップ。
B)ツールを車両タンクに接続することによって本明細書に記載する種類のシステムを形成するステップであって、車両タンク及びツールの冷却タンクの一方が極低温の加圧燃料を収容する供給タンクを構成し、これが車両タンク及びツールの冷却タンクの他方に移送されることによって受容タンクを構成する、ステップ。
C)液体極低温燃料をツールの熱交換器に通過させることによって液体極低温燃料を気体状態に変化させるステップ。
D)熱交換器で変化した燃料を注入することによって供給タンク内に吐出圧力を発生させるステップ。
E)燃料を供給タンクから受容タンクへ移送するステップであって、供給タンク内の増大した圧力が供給タンクから受容タンクへの燃料移送を引き起こす、ステップ。
【0029】
従って、本明細書に記載されるツールは、車両タンク及びツールタンクの一方から他方のタンクへの排出を可能とする。つまり、例えば車両を点検する前に、全く同一のツールを用いて、まず車両タンクから燃料を排出し、その後燃料を車両タンクに戻すことができる。排出の2方向の切り換えは、車両タンク及びツールタンクの様々な入口及び出口間で単にホースを切り換えることによって行われる。この方法の基本となるのは、システムに存在する液体燃料の一部を熱交換器に分流してそこで気化させ、この気体燃料を排出対象のタンクに送って圧力を増大させ、燃料を他方のタンク内へ吐出することである。
【0030】
車両タンクから燃料を排出する場合、従ってこれが供給タンクである場合、気化ステップC)における液体極低温燃料は、車両タンクから車両タンクの出口を介して取得することができる。
【0031】
あるいは、受容タンクすなわちツールの冷却タンクに少量の液体極低温燃を収容することができる場合、ステップC)における液体極低温燃料は、ツールの冷却タンクからツールの冷却タンクの出口を介して取得することができる。
【0032】
ツールの冷却タンクが供給タンクである場合、ステップC)における液体極低温燃料は、ツールの冷却タンクから冷却タンクの出口を介して取得することができる。点検作業の後に車両タンクを補充する場合、一般に、方法ステップC)で利用され得る液体燃料は車両タンク内に存在しない。しかしながら、車両の使用中に通常の補充として補充が行われる場合、車両タンク内に多少の液体燃料が残っていることがある。そのような場合は、むろんこの燃料を方法ステップC)で用いることができる。
【0033】
供給タンク内の作業圧力は2〜7バールとすることができ、例えば3〜5バール、又は3バールである。受容タンク内の圧力は供給タンク内の圧力よりも少なくとも1バール低くなければならず、例えば供給タンク内の圧力よりも少なくとも2バール低い。
【0034】
記載されるツールは、例えば作業場で商用車両を点検する場合に、車両タンクからの迅速かつ効率的な排出を可能とするので、強可燃性の極低温燃料が発火する危険なく点検作業が可能となる。点検作業の完了後、本明細書に記載するようにホースを逆にしてから燃料をタンクに戻すことができる。ここで作業場の訪問は終了となり得る。断熱冷却タンクによって、更に断熱導管によっても、気体状態の極低温燃料の温度を燃料の沸点未満に維持することができる。これは例えば、主にメタンから成る燃料では摂氏−163℃未満である。
【0035】
極低温燃料を車両タンクから排出すること及び車両タンクへ戻すことは双方とも、本明細書に記載するツールを用いて、迅速かつ円滑に高い安全性で実行可能である。セットアップの時間を含めて、タンク排出のプロセス全体は約30分から1時間を要する。タンクの補充も等しい時間量を要する。これは、絶えず監督しながら燃料を燃焼させることでタンクから極低温燃料を排出するこれまで使用されてきた方法と比較するべきである。これまでの方法は、排出対象のタンクに燃料が多く残っている場合に数時間を要し得るプロセスである。従って、本明細書に記載するツールは大幅な時間の節約を可能とし、当然これによって車両点検のコストは、労働コストの点でも、点検作業のため車両を使用していないときに生じる収入損失の点でも、大きく削減される。また、経済的な観点から、燃料を車両に戻して再び使用する前の、車両外で燃料を保管する時間を短縮することが重要である。冷却された加圧燃料を断熱冷却タンクで保管する場合であっても、タンク内の温度は時間と共に上昇し、燃料は徐々に気体状態に変化する。安全上の理由から、生成された余分なガスは徐々にタンクから抜かれるが、この結果として、抜かれたガスを回収するために特別な措置を取らない場合、時間の経過と共に燃料の損失が増大する。
【0036】
極低温燃料は、液体状態を保つために極めて低い温度での保管及び取り扱いを必要とする燃料である。極低温燃料の一例は、沸点が摂氏約−163℃の液化天然ガス(LNG)である。このため、商用車両の燃料としてLNGを用いる場合、燃料システムの良好な断熱が必要である。車両タンクから冷却タンクへのLNGの移送は、タンク間の断熱導管によって可能となる。従って、車両タンクを排出及び補充するためのシステムにおいて、冷却タンクの弁と車両タンクの弁との間の接続を、断熱導管によって構成することができる。導管は、好ましくは可撓性であり、例えばホースによって構成することができる。温度を低く保つため、断熱燃料タンクが有利に用いられ、冷却タンクも有利に断熱される。導管が充分に厚い断熱材によって断熱されてタンク間に配置されることで、極めて低い温度を維持することが容易になる。断熱材として用いるのに適切な1つの材料はポリウレタンフォームである。別の可能性として、極めて低い温度による氷形成が、充分な断熱として機能することが考えられる。
【0037】
本明細書に記載される、車両タンクにおいて極低温燃料を排出及び補充するためのツール及びシステムは、作業場外の状況における使用にも好都合である場合がある。例えばこのツールは、商用車両が巻き込まれた交通事故において、車両タンク内に燃料が残っていると火災の危険がある場合に有用であり得る。大きくて扱いにくいタンクは、スペースが充分でない作業場や狭い施設では不都合が生じることがある。また、車両タンクから極低温燃料を排出して、別の車両タンクに同じ燃料を補充する状況もあり得る。こういった状況を改善するため、ツールを携帯型とすることができる。また、車両タンクからの排出のため、及び吐出された極低温燃料を車両タンクに戻すまで一時的に保管するために、2つ以上のより小型のツールを用いることも可能である。
【0038】
一時的なタンクは、多くの状況において車両タンクを排出及び補充するための円滑な解決策を提供する。別の可能性として、いくつかの商用車両タンクから順次排出を行い、商用車両での作業が完了した後に、一時的な冷却タンクからの燃料でそれらを補充することもあり得る。
【0039】
また、例えば走行している場合に車両タンクを排出及び補充できると便利である場合がある。そのような状況では、本明細書に記載するツールが、燃料を充填した冷却タンクを有し、対象の商用車両に付随し、この商用車両が一時的に停止したときに補充を行うことができる。このように商用車両に配置されたスペアのタンクを有することで、環境に優しい燃料供給源を備えた順応性のある車両を提供する。携帯型冷却タンクを有するツールは、車両タンクに関連付けられた車両に取り付けるための手段を備えることができる。
【0040】
極低温燃料を排出及び補充するためのツールを、例えば商用車両を点検する場合に点検技術者等のユーザの近くに配置すると、作業が容易になり、時間とリソースの節約となる。従って、別の可能性として、工場作業での使用に適した、作業場に一時的な冷却タンクを配置することができる。
【0041】
前述のように、極低温燃料は低い沸点によって特徴付けられ、様々なエネルギガス混合物から成る可能性がある。車両の推進に極低温燃料を用いるための必要条件は様々なものであり得る。例えば、給油所の利用可能性は異なる地理的エリアでは異なる場合がある。更に、例えば、車両は絶えず発展しているので古いモデルの車両は新しい車両とは技術的に異なることから、異なる車両では燃料装備が異なることがある。また、燃料が満杯に収容された車両の燃料消費は当然大きくなる。
【0042】
1つの一般的に用いられる極低温燃料はメタンであり、これは天然ガス又は生物ガスから得られる。天然ガスは地上又は海中の堆積物から回収され、70%〜99%のメタン含有量を有し得る。生物ガスは消化された再生可能有機物質から生成され、95%〜99%という極めて高いメタン含有量を有する。
【0043】
メタンの燃焼は主に二酸化炭素と水を生成する。生物ガス又はBLG(Bio Liquid Gas)内のメタンは、光合成によって植物内に蓄えられた空気中の二酸化炭素から生じるので、大気への温室効果ガス二酸化炭素の正味の寄与はない。液体状態に変わった天然ガスは通常、圧縮天然ガス(CNG)と呼ばれる。化石燃料であるCNGの燃焼は、確かにガソリン及びディーゼルよりもクリアな代替燃料であるが、生成される二酸化炭素は大気中の温室効果ガスに寄与する。むろん、車両燃料としてBLG及びCNGの混合物を用いることも可能である。
【0044】
気体が液体に変化すると、体積は大幅に縮小する。例えば1mのCNGは約1.6dmのLNGに相当する。このため、燃料は液体状態で移送することが有利である。従って、液体状態の燃料を移送する1台のトラックは、気体状態の燃料を移送する多数のトラックに相当し得る。更に、商用車両の燃料タンクに液体状態の極低温燃料を有するとスペース節約となる。そのようなタンクは既定の体積を有し、燃料を移送する商用車両の保管タンクも同様であるので、車両内の燃料の量を明らかにすることができる。これは、トラックがそのタンクでどのくらいの距離を走行できるか前もってわかるということであり、次の給油所に遅れずに到着するためのプランニングが可能となる。更に、タンク体積がわかるので、コストのプランニングも可能となる。
【0045】
本明細書に記載するツールの冷却タンクは、既定量の燃料(LNG)を収容することができる。この燃料を気体状態に変化させて使用して、車両のタンクに送出することができ、ここで気体燃料が過圧の確立のために用いられる。この過圧が、車両タンクからツールの冷却タンクへ液体燃料を吐出する。あるいは、少なくとも初期段階では液体燃料が車両タンクから取得され、ツールの熱交換器で気体状態に変化し、気体となった燃料を車両タンクに戻し、これが車両タンク内に過圧を生成することで、車両タンク内の液体燃料の大部分をツールの冷却タンクに吐出するように、ツールを車両タンクに接続することができる。車両タンクからツールの冷却タンクへ液体燃料を移送する間、ツールの冷却タンクの圧力は車両タンク内の圧力よりも低くなければならない。車両タンク内の適切な作業圧力は2〜7バールとすることができ、例えば3〜5バール、例えば約3バールである。受容タンク内の圧力は車両タンク内の圧力よりも少なくとも1バール低くなければならず、例えば少なくとも2バール低い。
【0046】
車両タンクから液体燃料(LNG)を完全に排出することができるが、タンク内への空気の流入を防ぐため、タンク内にガスを残さなければならない。空気が低温の車両タンク内に入ると、空気は水分を含むので問題が生じ得る。タンク内の低温では、水の結晶が形成され、システムを破壊してしまう。従って、タンクの洗浄中、又はタンクからの完全な排出中に、不活性の窒素でタンクを充填する。
【0047】
極低温燃料のための冷却タンクを使用及び保管する場合、安全性の観点からその位置を検討しなければならない。空気よりも重い圧縮極低温液体ガスを配置する際は、排水路、地下室、及びパイプライン等の低い場所にガスが蓄積することに伴う危険に留意しなければならない。ガスは、−107度までは空気よりも重い。これより高い温度では、ガスは空気よりも軽く、上昇して空気と混合するので、発火の危険が増大する。
【0048】
スペース節約の目的のため、また、記載するツールは常時使用されるわけではないため、かさばらないサイズでなければならない。1つ又はいくつかの相補的な冷却タンクを設ける場合、そのような追加の冷却タンクの使用頻度は高くないことが想定できるので、追加の冷却タンクは体積が小さく、従って保管中にあまりスペースをとらないことが適切であり得る。このため、この少なくとも1つの追加の冷却タンクはツールの第1の冷却タンクよりも小型とすることができる。
【0049】
以下で、添付図面を参照して本発明について更に詳しく説明する。図面において、同一又は同様の細部は同一の参照番号で示す。図面は概略的な表現に過ぎず、本発明の精密な細部を示すことは意図していない。図面は、本発明の典型的な実施形態を例示することだけを意図し、従って本発明の限定として見なされないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明に従ったツールの概略図を示す。
図2】本発明に従ったシステムの概略図を示す。図2ではシステムは排出モードで示されている。
図3】本発明に従ったシステムの概略図を示す。図3ではシステムは補充モードで示されている。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、極低温燃料33のための車両タンク15を排出及び補充するためのツール100を示す。ツール100は熱交換器13及び冷却タンク1を備えている。この冷却タンク1は、少なくとも1つの出口弁2を有する燃料出口導管35’への出口35を提示し、この燃料出口35は、出口弁2及び接続デバイス3を介して第1の燃料導管及び第2の燃料導管に接続可能である。冷却タンク1は燃料入口38を備え、これは逆止弁4を介して燃料入口導管39に接続されている。燃料入口導管39は、図示する排出モードにおいて燃料入口38を接続するための接続デバイス5を提示する。このモードでは、燃料導管40は接続手段28を介して熱交換器13に接続されている。燃料導管40は、接続手段5を介して冷却タンク1の入口38にも接続するように適合されている。
【0052】
タンク1、15の一方に送られる燃料は、例えばタンク内に延出する導管に沿って配置された複数のスプレー孔を有するスプレーデバイス50によってタンクの上部に注入されて、タンクの壁を急速に冷却する。従ってこれは、タンク内に液体状態33と気体状態34の双方の燃料が存在することを意味する。出口導管41’は、絞り弁16を介し、接続手段5を介して入口導管39に、また絞り弁32を介して燃料導管45に接続可能であり、燃料導管45は接続手段27を介して熱交換器13の入口に接続されている。
【0053】
従って、燃料は適切に冷却タンク1内に注入され、冷却タンク1内部の気体燃料のために冷却タンクの入口38にスプレーデバイス50が接続されているので、スプレーデバイスは冷却タンク1の上部に燃料をスプレーするように適合されている。
【0054】
従って、ツール100において、熱交換器13には、熱交換器13の入口を車両タンク15の液体燃料用の出口41に接続するための手段27が設けられている。冷却タンク1のガス出口44は、図に示し本明細書で説明するように、余分なガスを放出するための安全システムにつながり、適切な弁及び接続デバイスを介して1つ又はいくつかのガス出口導管44’に接続されている。
【0055】
図面に示すように、ツール100における出口デバイス2は、冷却タンク1からの液体燃料用の燃料出口導管35’上に配置することができる。燃料出口導管35’は、冷却タンク1の出口35から見た場合に出口弁2の下流で、第1の燃料導管と第2の燃料導管とに分かれている。
【0056】
図に示すように、ガス出口導管には安全弁が設けられ、これらは24バールの出口圧力で自動的に開くように適合されている。
【0057】
また、ガス出口導管には絞り弁2、16も設けられ、これらは手動で開閉するように適合されている。
【0058】
図1に示すように、ガス出口44は冷却タンク1の上部に配置されている。これに対応して、気体燃料のための出口42が車両タンク15の上部に配置され、余分なガスを排出するための安全システムにつながっている。冷却タンク1のガス出口44には、導管を介して絞り弁8及びリリーフ弁9が設けられ、放出開口12に至る。出口44に接続された別の導管は、バルブパイプ10に接続されたリリーフ弁11を提示する。ガス出口44に接続された追加のパイプは、安全弁6及び圧力ゲージ7に接続されている。
【0059】
これに対応して、車両タンクでは、出口42が導管を介してリリーフ弁24及びアドミッションパイプ23に接続されて出口開口14に到達し、また、出口42に接続された導管が圧力ゲージ20及び安全弁29に接続されている。
【0060】
図2に、車両タンク15から極低温燃料33を排出するように構成された図1のシステムが示されている。このシステムは、図1で上述したものに基づいている。車両タンク15から燃料33を排出するため、排出を可能とするように導管が接続されている。基本的な考えは、車両タンク15内の燃料33を熱交換器13に送出し、ここで燃料33を気体状態34に変化させ、車両タンク15に戻し、これによって加圧するということである。この圧力増大により、車両タンク15から燃料導管37を介して冷却タンク1へ燃料33を移送することが可能となる。システムを排出モードで動作可能とするため、冷却タンク1の燃料入口38は接続手段5を介して燃料入口導管39、燃料導管37に接続され、燃料導管37は接続手段17を介して車両タンク15からの出口導管41’に接続されている。更に、出口導管41’は、接続手段27、31を介し、燃料導管45を介して熱交換器13に、更には接続手段28、19及び燃料導管40を介し、逆止弁18を介して入口43に接続されている。出口導管41’は、絞り弁16を介して入口導管39に、絞り弁32を介して燃料導管45に接続可能であり、燃料導管45は接続手段27を介して熱交換器13の入口に接続されている。これらの接続を用いて、熱交換器13における気化で生じた圧力増大により、燃料33の一部が車両タンク15から熱交換器13を経由して気体状態で戻って車両タンクの入口43を通って車両タンク15に注入されることによって、液体極低温燃料33を車両タンク15から燃料導管37を介して冷却タンク1に送ることができる。また、入口43は、車両の通常の補充用の入口でもある。
【0061】
冷却タンク1の入口38は、ツールの垂直方向において冷却タンクの燃料出口35よりも上方に配置され、前述のように、冷却タンク1内で燃料をスプレーするスプレーデバイス50がある。
【0062】
冷却タンクは、円筒形や矩形のような様々な形状をとり、横型又は縦型とすることができ、様々な体積であり得る。冷却タンクのサイズ範囲は、例えば100〜1200リットルとすることができ、450リットル〜498リットルが好適なサイズであり、600リットルが特に好適なサイズである。タンクは、低温を維持できるように、例えばポリウレタンフォームによって適切に断熱されている。
【0063】
従って、熱交換器13は液体燃料33をガスに変化させるように適合されている。このガスは車両タンク15に移送されると膨張して車両タンク15内で圧力を生成し、これによって液体状態の燃料33を車両タンク15から燃料導管37を介して冷却タンク1へ吐出することが可能となる。従って、タンク間の液体の移送を可能とするのは、熱交換器13で液体が気体状態に変化することから生じる圧力である。燃料の良好な吐出を達成するための圧力は、通常の作業圧力の約4〜7バールであることがわかっている。
【0064】
図3に、車両タンク15を排出し補充するための本明細書に記載するツール及びシステムが、ツール100から車両タンクに燃料を戻す状況で示されている。大まかに言えば、車両タンク15に燃料を戻す状況では、熱交換器13は燃料導管45を介して冷却タンク1に接続され、液体燃料33を冷却タンク1から取得して熱交換器13で気化し、冷却タンク1内の圧力を増大させるため気化した燃料34を燃料導管40を介して冷却タンク1に戻す。更に詳細には、冷却タンク1の出口35は、接続手段3を介して燃料導管37に接続するため出口弁2に接続されている。燃料導管37は、車両タンク15内に燃料34を注入するため、接続手段19及び逆止弁18を介して車両タンク1の入口43に接続されている。冷却タンク1の出口35は更に、出口弁2及び絞り弁25を介し、接続手段26を介して、燃料導管45に接続されている。この燃料導管45は、熱交換器13に対する接続手段27を介して熱交換器13に液体燃料33を移送する。燃料33は、熱交換器13を通過する間に気化され、熱交換器13に取り付けられた接続手段28を介して、気体になった燃料34のための導管40に送られる。導管40は、接続手段5及び逆止弁4を介して冷却タンクの入口38に接続されている。従って、熱交換器13は気体状態の燃料を冷却タンク1に移送し、ここで圧力が生成され、これによって冷却タンク1から車両タンク15へ燃料を吐出することができる。従って、冷却タンク1内の圧力が増大するので、燃料33は、冷却タンク1と車両タンク15との間の燃料導管37を介して冷却タンク1から車両タンク15へ強制的に送られる。逆止弁4は、冷却タンク1からの背圧が12〜24バールで、例えば14〜18バールで、好ましくは冷却タンク1からの背圧が16バールで、開くように適合されている。
【0065】
適宜、冷却タンク1及び車両タンク15の双方を接地してスパーク形成を防止する。
【0066】
本発明を更に説明するため、車両タンク15内の極低温燃料33、34を排出及び補充するための方法としてこれを考える。この方法は複数のステップを備え、更に具体的には、極低温燃料用の車両タンク15から極低温燃料を排出するための方法として説明することができる。この方法は以下のステップを備える。
A)冷却タンク1及び熱交換器13を備えた、本明細書に記載する種類のツールを提供するステップ。
B)ツールを車両タンク15に接続することによって本明細書に記載する種類のシステムを形成するステップであって、車両タンク15及びツールの冷却タンク1の一方が極低温の加圧燃料33を収容する供給タンクを構成し、これが車両タンク15及びツールの冷却タンク1の他方に移送されることによって受容タンクを構成する、ステップ。
C)液体極低温燃料33をツールの熱交換器13に通過させることによって液体極低温燃料33を気体状態34に変化させるステップ。
D)熱交換器13で変化した燃料33を注入することによって供給タンク1、15内に吐出圧力を発生させるステップ。
E)燃料33を供給タンクから受容タンクへ移送するステップであって、供給タンク内の増大した圧力が供給タンクから受容タンクへの燃料移送を引き起こす、ステップ。
【0067】
上述の方法では、車両タンクが供給タンクとなることができ、ステップC)における液体極低温燃料は車両タンクから車両タンクの出口を介して取得される。
【0068】
あるいは、車両タンクが供給タンクであり、ツールの冷却タンクに少量の液体極低温燃が収容されている場合もあり得る。この場合、ステップC)における液体極低温燃料は、ツールの冷却タンクからツールの冷却タンクの出口を介して取得される。
【0069】
また、ツールの冷却タンクが供給タンクとなることも可能であり、ステップC)における液体極低温燃料はツールの冷却タンクから冷却タンクの出口を介して取得することができる。
【0070】
供給タンク内の作業圧力は2〜7バールとすることができ、例えば3〜5バール、又は3バールである。受容タンク内の圧力は供給タンク内の圧力よりも少なくとも1バール低く、例えば供給タンク内の圧力よりも少なくとも2バール低い。
【0071】
排出モードから補充モードへの切り換えは、いくつかの燃料導管がそれぞれの接続手段を切り換えるかのように、純粋に機械的に説明することができる。これは以下のように例示できる。
燃料導管37を接続手段17から19に切り換える。
燃料導管45を接続手段31から26に切り換える。
燃料導管40を接続手段19から5に切り換える。
【0072】
冷却タンク1内で燃料をスプレーして、霧状の燃料によりタンクを冷却する。システムにおいて、例えば摂氏約−160℃という極低温燃料33、34の充分に低い温度を維持するため、導管は、周囲の相対的な熱に耐えられる材料で形成されている。冷却タンク1及び車両タンク15の入口、出口、弁間の接続部は、断熱可能な構成要素によって構築する。
【0073】
上述のように、温度が上昇して燃料33が気体燃料34に変化した場合、過圧を調節しなければならないことがある。冷却タンク1に収容できるよりも多量の液体燃料33が供給された場合にも、タンク1内で圧力が上昇する可能性がある。車両タンク15からの燃料33の投入を可能とするため、対応する量を安定した速度でタンクから出さなければならない。安定した速度が乱れると、冷却タンク1内で過圧が生じ得る。図示するように、冷却タンク1は、気体燃料34からの過圧を調節するためガス出口44に接続された弁9も備えている。
【0074】
弁9を介して抜いたガス34は、通常は周囲に放出されるが、燃焼する場合もある。
【0075】
図において、異なる種類の複数の弁を見ることができる。これらの弁は、液体状態33及び気体状態34の双方の燃料を受容及び送出できるように設計することができる。また、これらの弁のいくつかは、燃料33、34を双方向に通すように設計することも可能である。別の変形では、下部の弁と上部の弁に異なるタイプの弁が用いられる。図中、上部の弁ではガスがタンク内に送り込まれ、下部の弁では液体状態の燃料が2つのタンクから送り出される。弁8は、オン/オフ位置を有する手動タイプの絞り弁である。更に、弁の接続は、タンク内へのガス注入を可能とするように適合されている。
【0076】
冷却タンク1に接続されている接続手段5及び車両タンク15に接続されている接続手段19は、タンク補充を可能とするための補充弁によって構成されているが、弁11はリリーフ弁によって構成され、例えば16バールで自動的に開閉する。
【0077】
弁6、29、及び30は安全弁によって構成され、これらは圧力によってのみ制御されてシステムの使用時に開く。弁11及び24はリリーフ弁である。
【0078】
作業を容易にするため、冷却タンク1を含むツールは、場合によってはパレットリフターを用いて、携帯型及び可動型とすることができる。好ましくは、要望通りに取り扱えるように、冷却タンクは約500dm以下、好ましくは498dm以下とする。いくつかの用途では、タンクを2つのサブタンクに分割することが有利であり得る。上述のような取り扱いを可能とするため、冷却タンクはパレットサイズの底面寸法を有することができると適切である。
【0079】
更にプロセスを容易にするため、1つの可能性として、携帯型の冷却タンクを商用車両の一部と考えることができる。この場合、携帯型の冷却タンク1は、車両タンク15に関連付けられた車両に取り付けることができる。
【0080】
概して、車両の点検前に冷却タンクを使用することが奨励される。これは、人間工学的な観点から冷却タンクの管理及び取り扱いが容易であると簡単になる。また、冷却タンクは適切な位置に保管することが好ましい。従って冷却タンクは、工場作業での使用に適した作業場に配置することができる。
【0081】
圧縮天然ガス(CNG)は、生成される望ましくない気体(fume)が比較的少なく、空気よりも軽く、換気によって迅速に拡散するので、比較的安全な燃料である。CNGは通常200から248バールの圧力で容器に保管される。上述の特性のため、CNGは車両タンク15内の燃料としての使用に適している。更に、本発明に従ったシステムの冷却タンク1にCNGを移送することも可能である。従って、車両タンク15を排出及び補充するための上述のシステムにおいて、気体状態の燃料はCNGとすることができる。
【0082】
更に、図3では、冷却タンク1が所定の固定の形状を有することがわかる。これにより、タンク内の燃料の量も明らかにすることができる。更に、冷却タンク1は既定量の燃料(LNG)を収容することができる。
【0083】
前述のように、CNGは液体状態で液化天然ガス(LNG)に変わるガスである。
【0084】
更に、少なくとも1つの追加の冷却タンクを用いることができる。状況によっては、例えばタンク内に予想外に大量の燃料が残っていて、これを冷却タンクに移そうとする場合、2つ以上の冷却タンクがあると有利であり得る。その場合、単一の冷却タンクでは、例えば工場作業中に燃料を保管するのに充分でないことがある。本発明は、工場作業のために使用することに加えて、例えば給油所で補充を行う場合、又は2台の車両間でも使用可能である。この少なくとも1つの追加の冷却タンクは冷却タンク1よりも小さい。
図1
図2
図3