(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記還元糖は、ブドウ糖、マルトース、フルクトース、ラクトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ルチノース及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるものである請求項1に記載の水性熱硬化性バインダー組成物。
前記アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、セリン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ジヨードチロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン、グルタミン及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるものである請求項1に記載の水性熱硬化性バインダー組成物。
MICが1%以下である前記アルデヒド化合物は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、グリオキサール及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるものである請求項1に記載の水性熱硬化性バインダー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
フランスの化学者であるメイラード(Louis−Camille Maillard)は、1912年に食品中に存在する糖類とアミノ酸との高温における非酵素褐変反応(同様にメイラード反応と呼ぶ)を説明した(“Action of Amino Acids on Sugards.Formation of Melanoidins in a Methodical Way”,Compt. Rend.,154:66)。またアメリカの化学者であるホッジ(John E. Hodge)は、1953年に反応機構の進行の詳細を研究論文に示した(“Chemistry of Browning Reactions in Model Systems”,J. Agric.Food Chem.,1953,1,928−943)。即ち、反応性アルデヒド基を有するアルドース形態の糖がアミノ酸と高温で反応して、N−置換されたグルコシルアミンの中間体が形成される。アマドリ転位によって種々の経路で反応が起きて種々の低分子量の揮発性有機物が分解する。その結果、メラノイジンと呼ばれる褐色の窒素含有高分子と、これらの共重合体が形成される。特に、ルーニー(Lloyd W. Rooney)とセイラム(Ali Salem)は、1966年に彼らの博士学位論文で、還元糖とアミノ酸水溶液を高温(水溶液状態では95℃で12時間、デンプンを混合した後は268℃で30分)で反応させてメイラード反応の進行程度を、色の変化及び分解した低分子量の有機化合物(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、イソブチルアルデヒド、イソバレルアルデヒド)の量を測定する方法で決定する場合、グルコースやキシロースのような還元糖が、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、リシン、ヒスチジン、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンのようなアミノ酸と活発に反応することを報告した(“Studies of the Carbonyl Compounds Produced by Sugar−Amino Acid Reactions.”I. Model Systems,Ph. D Thesis,the Graduate Faculty of Kansas State University,1966,No.559,539−550)。
【0014】
メイラード反応は、食品の香りと味を向上するために食品の分野では広く応用されており、これらの特性のためよく知られている。しかしバインダーの分野では、メイラード反応は十分に解釈されていなかった。例えば、糖類とアミノ酸を高温で反応させることにより形成されるメラノイジンと呼ばれる褐色の窒素含有高分子は、有機結合剤として広く用いられている糖蜜を高温で加熱することにより簡単に得られる。糖蜜は、糖類を精製するときに得られる副産物であり、還元糖を含む糖類を質量比で約50%、及び窒素元素を含む化合物(タンパク質、アミノ酸類、オリゴマー類)を約5〜10%含む混合物である。高温において糖蜜の還元糖とタンパク質/アミノ酸とが反応してメラノイジンを形成する。
【0015】
米国特許第3961081号では、家畜の飼料に糖蜜をバインダーとして用いている。ここでは真空を加えて(applying vacuum)縮合生成物を除去することにより、メラノイジンを含む硬い粉末が得られることが示されている。
【0016】
米国特許第5416139号では、建築構造材の製造において糖蜜をバインダーとして用いている。ここでは糖蜜を含む組成物を150〜180℃の高温で放出して、メラノイジンを含む硬化複合材料を製造することが示されている。
【0017】
韓国特許出願第1987−0005710号では、フェノールホルムアルデヒド樹脂(PFR)又はアミノホルムアルデヒド樹脂の一部、糖類(糖蜜、デキストリン、グルコース、フルクトース、及びスクロース等)、及びリグノスルホネートの混合物を用いて、アミノ及びフェノール樹脂のホルムアルデヒドの放出量を低減できることが示されている。ここで、還元糖とアミノ基を含有する成分とを含む組成物は、高温でメラノイジンを形成することができる。
【0018】
韓国特許出願公開第10−2008−0049012号では、ポリカルボン酸のアンモニウム塩と還元糖はメイラード反応を介して、バインダーとして用いることができることが示されている。
【0019】
米国特許第4524164号には、おがくず等のようなリグノセルロース材料用熱硬化性バインダー、及びその応用方法が示されている。ここでは還元糖を含む糖類(ラクトース、マルトース、グルコース、ガラクトース、スクロース、アミロース、アミロペクチン、デキストリン、糖蜜、及び乳清)と、尿素等の硬化剤と、アンモニウム塩とを、金属触媒の存在下において、水溶液の状態で50〜200℃で30分〜18時間反応させている。次に有機無水酸とおがくず等のリグノセルロース原料とを反応混合物に投入し、高温で混合物を加工している。還元糖と尿素、アンモニウム塩と有機無水酸は、高温でメラノイジンを形成することができる。
【0020】
フランス特許第2924719号には、単糖類、多糖類(デキストリンや糖蜜等)、ポリカルボン酸、及び触媒からなる水性バインダー組成物を用いて、岩綿やガラス綿をインシュレーター(insulator)にすることが可能であることが示されている。上記バインダー組成物も、高温でメラノイジンを形成し、繊維をバインディングすることができる。
【0021】
本発明では、前述したように、この技術分野で良く知られている、還元糖とアミノ酸との高温でのメイラード反応により形成されたメラノイジンを用いる。また、本発明は、防腐力を付与することによって、製造工程で発生するバインダー成分を含む工程水をリサイクルさせ、及びメラノイジンのバインダーの性能を向上させるために、最小発育阻止濃度(MIC)が1%以下であるアルデヒド化合物をバインダー組成物に用いる。
【0022】
微生物の最小発育阻止濃度(MIC)が1%以下であるアルデヒド化合物は、以下の方法により選別することができる。
【0023】
本発明で用いられる還元糖とアミノ酸を重量比1/1で使用して5%水溶液を調製し、室温で1週間放置して腐敗させた。腐敗した試料の汚染菌株を試験菌株として用いた。それぞれの選別用のアルデヒド希釈液に試験菌株を接種(vaccinated)しながら、35℃インキュベーターで培養して、微生物の増殖及び死滅を観察し、MICが1%以下であるホルムアルデヒド化合物を選別した。
【0024】
本発明で用いられるMICが1%以下であるアルデヒド化合物は、微生物の細胞壁や細胞質に作用して、それらの役割を妨害するか、又はチオール、アミノ基、メルカプト基等の特性基と化学反応を起こして微生物を破壊することで、微生物の増殖を抑制するか又は死滅させることができる。
【0025】
一方、上記アルデヒド化合物は、水性バインダー組成物に防腐力を付与する役割に加えて、高温硬化時に本発明で用いるアミノ酸のアミノ基と結合することにより、3次元的に架橋された高分子ネットワークを形成することができる。
【0026】
従って、本発明の水性バインダー組成物は、繊維化された鉱物に噴霧してオーブン内にて高温で硬化する前には、有毒性アルデヒド化合物(例えば、ホルムアルデヒド)を含む場合があるが、高温硬化後に得られた最終インシュレーターは、硬化反応が不十分であるか又は硬化反応時に分解した場合に形成される有毒性アルデヒド化合物を実質的に含まない。
【0027】
即ち、本発明の水性バインダー組成物を用いて製造されたインシュレーターは、小型チャンバー法(KSM ISO 16000、及びKSM 1998)によって測定されたホルムアルデヒドの放出量が0〜0.005mg/m
3・時間であり、ゼロ又はほぼゼロ化されている。
【0028】
更に本発明で用いられるホルムアルデヒド化合物は、他の防腐剤とは異なり、金属腐食を誘発しないか又はハロゲン元素やフェノールのような化合物を製品に残存させない長所がある。
【0029】
本発明のバインダー組成物は、炭素数が3以上の還元糖を一つ以上含む。本発明において、還元糖は、アルデヒド又は異性化によるアルデヒド構造を有していても良いアルドース又はケトースの糖類を意味する。具体的には、ブドウ糖、マルトース、フルクトース、ガラクトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ルチノース、及びグリセルアルデヒドなどの単糖類又は二糖類を単独又は組み合わせて使用しても良いが、還元糖はこれらに限定されない。
【0030】
本発明のバインダー組成物に含まれる還元糖の量は、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、好ましくは40〜95重量部、より好ましくは60〜90重量部、更に好ましくは70〜90重量部である。バインダー組成物内の還元糖含量が、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、40重量部未満のときにはバインダー組成物から形成された硬化物の硬度が低下する場合があり、95重量部を超えると、硬化物の安定性及び架橋密度が低下する場合がある。
【0031】
本発明のバインダー組成物は、一つ以上のアミノ酸を含む。本発明において、アミノ酸は、1個以上のアミノ基と、特に1個以上のカルボキシ基を有している化合物であり、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、セリン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ジヨードチロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン、及びグルタミンを単独又は組み合わせて使用してもよいが、アミノ酸はこれらに限定されない。
【0032】
本発明のバインダー組成物に含まれるアミノ酸の含量は、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、好ましくは5〜60重量部、より好ましくは10〜40重量部、更に好ましくは10〜30重量部である。バインダー組成物内のアミノ酸含量が、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、5重量部未満のときには硬化物の安定性及び架橋密度が低下する場合があり、60重量部を超えると、バインダー組成物から形成された硬化物の硬度が低下する場合がある。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、アミノ酸の水に対する溶解度を高めるために、アミノ基の一部又は全部(例えば、アミノ酸に含まれるアミノ基の20〜100当量%、好ましくは30〜100当量%)が酸で中和されたアミノ酸を好ましくは使用する。アミノ酸の中和に使用される酸の例として、硫酸、リン酸、カルボン酸、有機スルホン酸などが挙げられ、単分子、二量体、三量体、オリゴマー又は高分子化合物等のいかなる形態の酸性化合物も使用することができる。ある場合において、アミン化合物やアンモニアで中和されても良い。好ましくは、室温及び常圧(25℃、1気圧)条件で沸点が300℃超(例えば、300〜500℃)の酸性化合物を使用できる。
【0034】
本発明のバインダー組成物は、MICが1%以下である一つ以上のアルデヒド化合物を含む。本発明において、MICが1%以下であるアルデヒド化合物として、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、又はグリオキサールを単独又は組み合わせて使用することができるが、アルデヒド化合物はこれらに限定されない。
【0035】
本発明のバインダー組成物内のMICが1%以下であるアルデヒド化合物の含量は、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。バインダー組成物に含まれるアルデヒド化合物の含量が、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、0.01重量部未満のときには、バインダー成分を含む工程水が腐敗によって容易に変質し、防腐力の不足による悪臭を誘発する場合があり、10重量部を超えると過硬化により硬化物の膜が容易に壊れる場合がある。
【0036】
本発明の主成分である還元糖とアミノ酸は、植物由来のデンプン又は糖蜜を加水分解又は発酵工程を経て得られる。そのため、天然資源の減少の問題が無く、製品の製造時と廃棄時に発生する二酸化炭素の量を最小限にすることができる。更に、最終製品はフェノール、ホルムアルデヒド等の有毒物質をほとんど含まない(これは、ホルムアルデヒドの場合、小型チャンバー法で放出量を測定したときに0〜0.005mg/m
3・時間の範囲で、ゼロ又はほぼゼロ化した値を示すことを意味する。)。
【0037】
本発明のバインダー組成物は、好ましくは、室温及び常圧下(即ち、25℃、1気圧)で沸点が300℃以上(例えば、300〜500℃)の酸性化合物を更に含んでいても良い。沸点(a boiling point)の酸性化合物は、アミノ酸の水に対する溶解度を高めるものであり、繊維状集合体に噴霧後、高温の焼付工程での硬化反応速度を高めるために使用しても良い。高温硬化反応時の揮発を抑制するために、室温及び常圧条件で沸点が300℃超であることが好ましい。沸点の酸性化合物の具体的な例として、硫酸、リン酸、カルボン酸、有機スルホン酸等が挙げられ、単分子、二量体、三量体、オリゴマー、又は高分子形態等のいかなる形態の酸性化合物も使用することができる。ある場合において、アミノ酸はアミン化合物やアンモニアで中和されていても良い。
【0038】
本発明のバインダー組成物に沸点の酸性化合物が含まれる場合、その量は、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部である。バインダー組成物内の酸性化合物の含量は、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、0.1重量部未満であれば、十分な硬化が起きず硬化物の物性が低下する場合があり、10重量部を超えると壊れやすい硬化物が発生する場合がある。
【0039】
本発明のバインダー組成物は、前述した成分以外に本発明の目的を達成できる範囲内で必要に応じて選択的に一つ以上の添加剤を更に含んでも良い。有用な添加剤として、繊維状集合体の耐水性を高めるための撥水剤、設備の腐食を防止するための防錆剤、製品の粉塵発生率を低くするための防塵油(dust oil)、pHを制御するための緩衝剤、粘着力向上のためのカップリング剤、又は機械的物性向上のための硬化剤を用いることができる。しかし、添加剤はこれらに限定されず、この技術分野で広く使用されているいかなる添加剤も使用することができる。このような追加の添加剤にも特別な制限がなく、例えば、還元糖とアミノ酸の合計100重量部に対して、それぞれの添加剤を0.1〜10重量部の範囲で用いることができるが、これに限定されない。
【0040】
更に本発明では、製造工程中に発生する有機バインダー成分を少量含む工程水の腐敗を防止するために、更に防腐剤を含んでも良い。このような防腐剤は、バインダーの製造時に混合タンクに投入するか又は工程水の集水槽、移送配管、水処理設備等のいかなる設備にも投入することができ、この分野で一般に用いられるものであれば種類にかかわらず使用することができる。防腐剤の添加量は、発生した工程水の重量に対して、好ましくは500〜5000ppm、更に好ましくは1000〜3000ppmの範囲で使用することができる。ある場合には、微生物を死滅させるためにバインダー混合タンクを55℃〜100℃の温度範囲で常圧下にて一定時間以上加熱してもよい。微生物の死滅や微生物濃度は、この分野で一般に用いられている診断キットと微生物の培養設備によって容易に確認することができる。
【0041】
本発明のバインダー組成物は、上記成分を繊維状材料に均一に噴霧するために、水(工業用水、地下水、廃水等)等の希釈剤を使用し、その固形分含量を2〜50重量%、好ましくは5〜20重量%(即ち、組成物全100重量%に対して、水の含量を50〜98重量%、好ましくは80〜95重量%)に制御することができる。希釈剤として水の量が多すぎると、水を揮発させるためのエネルギーが過度に消費されるが、少なすぎるとバインダー組成物を繊維状材料上に十分に噴霧できなくなる場合があり、その結果、最終製品内のバインダー含量が必要以上に高くなって好ましくない。
【0042】
本発明のバインダー組成物を例えば120℃以上の温度で熱処理すれば、還元糖のアルデヒド基とアミノ酸のアミン基とのアマドリ中間体で起こるメイラード反応、アミノ酸のカルボキシ酸基とアミン基とのアミド反応、還元糖のヒドロキシ基とアミノ酸のカルボキシ酸基とのエステル反応、金属イオンと還元糖又はアミノ酸性化合物に存在する窒素、酸素、硫黄、及びハロゲン原子との配位結合などの多様な硬化反応が起こり、その結果、水不溶性の高分子が形成され、耐水性等の物性に非常に優れた有用なバインダーとなる。
【0043】
従って、本発明の他の態様として、本発明の水性熱硬化性バインダー組成物を繊維状材料に噴霧する工程、及び噴霧したバインダー組成物を熱硬化する工程、を含む繊維状材料のバインディング方法、及び本発明の水性熱硬化性バインダー組成物を用いてバインディングされた繊維状材料が提供される。
【0044】
本発明の繊維状材料をバインディングする方法において、上記水性熱硬化性バインダー組成物は、硬化されていない水溶液又は水分散液として繊維状材料に噴霧される。上記繊維状材料の例として、無機繊維(例えば、岩綿、ガラス綿、セラミック繊維)又は天然及び合成樹脂から得られる単繊維集合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
更に、バインダー組成物が噴霧された繊維状材料集合体を熱処理して熱硬化させる。硬化のための熱処理温度は120℃以上(例えば、120〜300℃、好ましくは150〜250℃)である。熱処理温度が低すぎると硬化が不十分となるが、温度が高過ぎると硬化し過ぎて、粉塵発生の問題を引き起こす可能性がある。
【0046】
本発明により製造される繊維状材料内の硬化したバインダー含量は、バインディングされた繊維状材料合計100重量部に対して、例えば2〜15重量%であっても良い。
【実施例】
【0047】
以下、下記実施例を通じて本発明を具体的に説明するが、いかなる意味でも本発明の範囲はこれら実施例に限定されると解釈すべきではない。
【0048】
実施例1
グルコース(D−グルコース)(固形分:91重量%)370kg、グルタミン(固形分:98重量%)70kg、硫酸アンモニウム(固形分:98重量%)2.5kg、ホルムアルデヒド(ホルマリン、UNID社製)(固形分:37重量%)1.5kg、防塵油(Govi−Garo217S)3kg、シリコーン撥水剤(シリコーン系撥水剤)(KCC−SI1460Z)2kg、及び蒸留水4050kgを混合容器に投入し、撹拌機で30分間撹拌して、アンモニア水を用いてpH8〜9に調整し、更に10分間容器を撹拌して、バインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物の固形分は9重量%であった。
【0049】
実施例2
グルコース(D−グルコース)(固形分:91重量%)370kg、グルタミン(固形分:98重量%)70kg、硫酸アンモニウム(固形分:98重量%)2.5kg、及び蒸留水660kgを、外部からスチーム及び冷却水により温度を制御することができるジャケットが設けられた反応器に入れ、85℃に昇温した後、反応物の温度を3時間保持した。ここに、室温の蒸留水3390kg、ホルムアルデヒド(ホルマリン、UNID社製)(固形分:37重量%)1.5kg、防塵油(Govi−Garo217S)3kg、及びシリコーン撥水剤(シリコーン系撥水剤)(KCC−SI1460Z)2kgを混合容器に投入し、撹拌機で30分間撹拌した後、アンモニア水を用いてpH8〜9に調整し、更に10分間撹拌して、バインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物の固形分は9重量%であった。
【0050】
実施例3
ホルムアルデヒドの代わりにグリオキサール溶液(固形分:40重量%)1.5kgを用いたことを除いて、実施例1と同様にバインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物の固形分は9重量%であった。
【0051】
実施例4
ホルムアルデヒドの代わりにグルタルアルデヒド(固形分:50重量%)1.5kgを用いたことを除いては、実施例1と同様にバインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物の固形分は9重量%であった。
【0052】
比較例1:フェノール/ホルムアルデヒド樹脂を用いたバインダーの製造
フェノール/ホルムアルデヒド樹脂(KCC社製)404kg、蒸留水3800kg、撥水剤(SI1460Z−KCC)2kg、及び防塵油(Garo217S)3kgを混合容器に投入し、撹拌機で30分間撹拌して、バインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物の固形分は9重量%であった。
【0053】
比較例2:ポリカルボン酸を用いたバインダーの製造(韓国特許出願公開第2008−0049012号の実施例1)
グルコース(D−グルコース)(固形分:91重量%)158kg、クエン酸(固形分:98重量%)44kg、アンモニア水(25%)50kg、蒸留水3750kg、撥水剤(SI1460Z−KCC)2kg、及び防塵油(Garo217S)3kgを混合容器に投入し、撹拌機で30分間撹拌して、バインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物の固形分は約4.5重量%であった。
【0054】
比較例3:MICが1%以下であるアルデヒド化合物を含有しない還元糖/アミノ酸バインダーの製造
グルコース(D−グルコース)(固形分:91重量%)370kg、グルタミン(固形分:98重量%)67kg、硫酸アンモニウム(固形分:98重量%)2.5kg、防塵油(Govi−Garo217S)3kg、シリコーン撥水剤(シリコーン系撥水剤)(KCC−SI1460Z)2kg、及び蒸留水4050kgを混合容器に投入し、撹拌機で30分間撹拌して、バインダー組成物を得た。得られたバインダー組成物の固形分は9%重量であった。
【0055】
実験例:バインダーを用いた繊維状材料のバインディング
高温の溶融したガラスを2100kg/時間の速度で紡績機に通して繊維化し、集綿器(collecting vessel)に達したガラス繊維に、上記実施例1〜4及び比較例1〜3で得られたそれぞれのバインダーを47L/分の割合で噴霧した。その後、乾燥工程を経てガラス綿のインシュレーターを得た。比較例3のバインダーの場合、水酸化カルシウムが沈殿したため、噴霧前にバインダー溶液を150メッシュのステンレスフィルターでろ過しており、残りの工程は他の例と同様に行った。
【0056】
それぞれのガラス綿に対して、下記試験を行った。
【0057】
耐水性
100mm(横)×100mm(縦)×50mm(厚さ)のガラス綿試料を準備して、標準48時間の耐水性試験を行った。ビーカー内の純水に試料を浮かして、完全に沈むまでにかかる時間を測定した。耐水性等級は0に近いほど不良であり、5に近いほど優れていることを示す。実施例1、2、3、4と比較例1、2の場合、試料は72時間以上浮いていたが、比較例3の場合、24時間未満の間に沈んだ。試験結果を表1に示す。
【0058】
浸水性
100mm(横)×100mm(縦)×50mm(厚さ)のガラス綿試料を準備して、標準72時間の浸水性試験を行った。純水を満たした2Lビーカー内に試料を完全に浸水させて、色の変化を測定した。濃度に応じた色の変化を客観的に数値化した。浸水性等級は0に近いほど不良であり、5に近いほど優れていることを示す。実施例1〜4の場合、各試料は72時間以上の間、色の変化をほとんど示さなかったが、比較例3の場合、数時間以内に顕著に色の変化を示した。試験結果を表1に示す。
【0059】
ホルムアルデヒドの放出量
小型チャンバー法により、試料を小型チャンバーに入れて、7日後にチャンバー内の空気を集めた。集めた空気をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した。より具体的な方法は、韓国空気清浄協会で規定された方法に従って、7日目にその結果を分析した。試験結果を表1に示す。
【0060】
引張強度
測定試料の3個全てを4cmのサイズに調製した。引張棒を試料の長さより短く設置し、試料をロッドに垂直にしながら、試料を引張棒に垂直に固定した。引張強度の試験機の速度を15mm/分とし、ロッド表示内でスケールをゼロに設定した。次いで、その試験機を作動させた。試験機が自動的に止まった後に表示された最大荷重を測定し、平均値を算出した。試験結果を表1に示す。
【0061】
粉塵率
幅1.5cm、長さ10cmの測定試料を各4個ずつ準備した。測定前の試料を計量した後、試料を粉塵率測定器にセットして、1m/分の速度で縦横に揺らした。合計測定時間は試料当たり10分とし、試験機が自動的に止まった後に、試料を計量した。粉塵率は、粉塵率=[(測定後の重さ/測定前の重さ)−1]×100の計算式で算出して、%で示した。実施例1〜4のバインダーをそれぞれ用いて作製されたガラス綿試料の試験では、比較例のバインダーを用いた場合より粉塵が少ないことが分かった。試験結果を表1に示す。
【0062】
復元率
10m(横)×1m(縦)×0.05m(厚さ)のガラス綿試料を準備し、これをロール状にして、室温で8週間保持した。8週間後に巻かれていない状態にした後、試料の厚さの変化を測定した。試験結果を表1に示す。
【0063】
かび抵抗性
かび抵抗性はASTM G21−09試験法によって測定し、試料のかび成長率を1月間の観察の後に測定した。その結果を表1に示す。
【0064】
工程水の防腐力
各実施例及び比較例のバインダーに用いる工程水の試料は、設備洗浄水を用いて各水性バインダーを希釈し、固形分を2〜3重量%に調節することにより調製した。工程水の試料の防腐力を調べるために、混合細菌に対するチャレンジ試験を行った。
【0065】
細菌の菌株は、グラム陽性菌として枯草菌(ATCC 6633)及び黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)、グラム陰性菌として大腸菌(ATCC 9637)及び緑膿菌(ATCC 9027)を用いた。前培養でニュートリエント寒天培地に上記細菌4種を接種し、33〜37℃で24時間培養した。次に、細菌濃度が1×10
6〜7cfu/g(cfu:コロニー形成単位)となるように生理食塩水を混合して混合菌株液を得た。
【0066】
各実施例及び比較例の工程水の試料100gに対して、上記混合菌株液を接種した。次いで、それぞれの試料を1gずつ集めて9gの緩衝食塩水(PBS緩衝液)溶液で希釈して一連の希釈液を得た。
【0067】
上記希釈液100μLを滅菌棒で寒天培地に接種して均一に広げた。次いで培地を逆さまにひっくり返して33〜37℃で48時間培養した後、計数した。
【0068】
5段階に分けて決定を行った。細菌が死滅した場合を0、重度のコンタミネーションであり、1×10
6〜7cfu/gと深刻な濃度である場合を4とした(0:菌の回収なし、1:微量のコンタミネーション、2:軽度のコンタミネーション、3:中度のコンタミネーション、4:重度のコンタミネーション)。工程水が防腐力を有するためには、好ましくは、接種後1週以内に99.9%以上細菌の数を減少させなければならず、試験期間中に増殖させてはいけない。その結果を表1の工程水の防腐力の欄に示す。
【0069】
【表1】