特許第6388973号(P6388973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6388973コンクリートの温度調節装置及びコンクリートの温度調節方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6388973
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】コンクリートの温度調節装置及びコンクリートの温度調節方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20180903BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   E04G21/02 104
   F28D15/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-30133(P2017-30133)
(22)【出願日】2017年2月21日
(65)【公開番号】特開2017-180080(P2017-180080A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-63966(P2016-63966)
(32)【優先日】2016年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000245852
【氏名又は名称】矢作建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】織田 裕
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】桐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】長沼 明彦
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−004186(JP,A)
【文献】 特開2013−159905(JP,A)
【文献】 特開平04−044507(JP,A)
【文献】 米国特許第05707179(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築するコンクリートに穴を形成する穴形成部材と、
前記穴に注入される液体と、
前記穴に一部が挿入される熱伝導体と、
前記熱伝導体が前記穴の内底部から離れた位置に配置されるように前記熱伝導体を保持する保持部と、
を備えることを特徴とするコンクリートの温度調節装置。
【請求項2】
基盤上に構築するコンクリートの温度調節装置であって、
前記穴形成部材は、前記コンクリートに埋設された下端部が前記基盤に接する中空管である
ことを特徴とする請求項1に記載のコンクリートの温度調節装置。
【請求項3】
前記穴の深さをLs、前記穴への前記熱伝導体の挿入長さをLhとしたときに、Ls/2≦Lh<Lsである
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリートの温度調節装置。
【請求項4】
前記保持部は、前記穴の開口を覆うフランジであり、前記熱伝導体が前記穴形成部材から離れた位置に配置されるように前記熱伝導体を保持する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のコンクリートの温度調節装置。
【請求項5】
構築するコンクリートに穴を形成する形成工程と、
前記穴に液体を注入する注入工程と、
前記穴に熱伝導体の一部を挿入する挿入工程と、
を含み、
前記挿入工程において、前記熱伝導体を前記穴の内底部から離れた位置に配置する
ことを特徴とするコンクリートの温度調節方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの温度調節装置及びコンクリートの温度調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの温度調節方法として、構築するコンクリートにボイド(穴)を設けて、このボイドにヒートパイプの下端を挿入し、ボイドから露出したヒートパイプの上端側からコンクリートの硬化に伴って生じる水和熱を放熱することで、温度変化に起因するコンクリートのひび割れを抑制する方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−4186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の方法において、ヒートパイプの下端はボイドの内底部に載置されるため、内底部に接触するヒートパイプの下端には、ボイドを形成するシースを介して、コンクリートから直接熱が伝わる。これに対して、ヒートパイプの途中部分は、ボイドとの間に充填された間隙水に接しているので、コンクリートの熱が間隙水を介して伝達される。
【0005】
ここで、コンクリートからヒートパイプへの熱の移動については、接触する物質同士の温度勾配によって熱伝導するよりも、対流する液体を介して熱伝達する方が、熱の移動量が多い。そのため、シースに接触しているヒートパイプの下端の温度が、間隙水に接する途中部分の温度よりも相対的に低くなることがある。このような場合には、ヒートパイプを介した放熱が進行しにくいので、温度を適切に調節できない、という課題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、構築するコンクリートの温度調節を適切に行うことができるコンクリートの温度調節装置及びコンクリートの温度調節方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するコンクリートの温度調節装置は、構築するコンクリートに穴を形成する穴形成部材と、前記穴に注入される液体と、前記穴に一部が挿入される熱伝導体と、前記熱伝導体が前記穴の内底部から離れた位置に配置されるように前記熱伝導体を保持する保持部と、を備える。
【0008】
この構成によれば、熱伝導体は、保持部によって穴の内底部から離れた位置に配置されるので、内底部と熱伝導体の間に形成される空間内で液体が対流する。そのため、熱伝導体の穴に挿入された部分には、コンクリートから生じる熱が液体を介して速やかに伝達される。これにより、熱伝導体の穴に挿入された部分から、熱伝導体の穴の外にある部分に速やかに熱が伝達されて、熱伝導体の穴の外にある部分から効率よく放熱することができる。これにより、構築するコンクリートの温度調節を適切に行うことができる。
【0009】
上記コンクリートの温度調節装置において、基盤上に構築するコンクリートの温度調節装置であって、前記穴形成部材は、前記コンクリートに埋設された下端部が前記基盤に接する中空管であることが好ましい。
【0010】
基盤上に構築するコンクリートから発生する熱の一部は、基盤に伝導することで放熱されるが、コンクリートから基盤に対して伝導する熱量よりも、穴に注入された液体が対流することによる対流熱伝達により基盤に伝達する熱量の方が大きい。その点、上記構成によれば、下端部が基盤に接する態様で中空管をコンクリートに埋設することにより、中空管が形成する穴の中で対流する液体を介して、基盤に対して効率よく熱を伝達することができる。したがって、基盤上に構築するコンクリートの温度調節を速やかに行うことができる。
【0011】
上記コンクリートの温度調節装置において、前記穴の深さをLs、前記穴への前記熱伝導体の挿入長さをLhとしたときに、Ls/2≦Lh<Lsであることが好ましい。
この構成によれば、Ls/2≦Lhとすることにより、熱伝導体の挿入長さを十分に確保して、穴の中で対流する液体から熱伝導体に熱を伝達することができる。
【0012】
上記コンクリートの温度調節装置において、前記保持部は、前記穴の開口を覆うフランジであり、前記熱伝導体が前記穴形成部材から離れた位置に配置されるように前記熱伝導体を保持することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、穴の開口を覆うフランジを保持部とすることにより、液体の対流を妨げることなく、熱伝導体を穴の内底部から離れた位置に保持することができる。また、保持部が内底部だけでなく、穴形成部材全体から離れた位置に熱伝導体を配置することにより、熱伝導体の周囲で液体を対流させて、コンクリートの熱を効率よく熱伝導体に伝達することができる。
【0014】
上記課題を解決するコンクリートの温度調節方法は、構築するコンクリートに穴を形成する形成工程と、前記穴に液体を注入する注入工程と、前記穴に熱伝導体の一部を挿入する挿入工程と、を備え、前記挿入工程において、前記熱伝導体を前記穴の内底部から離れた位置に配置する。
【0015】
この構成によれば、上記コンクリートの温度調節装置と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構築するコンクリートの温度調節を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】温度調節装置の一実施形態の構成を示す断面図。
図2】熱抵抗値の変化を示すグラフ。
図3】温度調節装置の第1変更例及び第2変更例を示す断面図。
図4】温度調節装置の第3変更例を示す断面図。
図5】温度調節装置の別の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、コンクリートの温度調節装置及びコンクリートの温度調節方法の実施形態について、図面に従って説明する。
図1に示すように、基盤100上に構築するコンクリート10の温度調節装置11は、コンクリート10に穴12を形成する穴形成部材13と、穴12に下端側の一部が挿入される熱伝導体20と、穴12に注入される液体14と、熱伝導体20を保持する保持部15と、を備える。基盤100は、例えば既設のコンクリート体、岩盤または地盤などである。コンクリート10は、例えば、いわゆるマスコンクリートと呼ばれる大型のコンクリート構造物を構成する。
【0019】
穴形成部材13は、例えば、長手方向の基端側に穴12の内底部12aを形成する底部13aを有するとともに、長手方向の先端側に開口部13bを有する中空部材である。穴形成部材13としては、例えばシース管などの中空管を採用することができるが、複数の板状の型枠を組み合わせて穴形成部材13とすることもできる。穴形成部材13は、基盤100上にコンクリート10を構築する場合に、下端部が基盤100に接するように配置することが好ましい。
【0020】
なお、特に穴形成部材13を下端部が基盤100に接するように配置する場合には、穴形成部材13は底部13aを有さず、両端が開口する(開放された)中空管であってもよい。この場合にも、中空管の下端側の開口が基盤100に接触することでふさがれば、コンクリート打設時に流動するコンクリートが下端側の開口から流入することを抑制することができるので、穴12の内底部12aを形成することができる。
【0021】
穴12は、コンクリート10の表面に開口し、熱伝導体20の一部を挿入可能な深さがあって、内奥に内底部12aを有していれば、穴形成部材13の形状(中空部材の内部空間の形状)に応じて、その断面形状及び大きさは任意に変更してもよい。例えば、複数の熱伝導体20を挿入可能な断面形状及び大きさの穴12としてもよい。
【0022】
本実施形態の熱伝導体20は、銅製のパイプ21の内壁に毛細管構造のウイック22を備えて、内部に作動液としての水を脱気封入したヒートパイプである。なお、熱伝導体20をヒートパイプにする場合、パイプ21の材料や作動液の種類は任意に変更することができるが、パイプ21が銅製の場合、例えばステンレス製のパイプと比較して、熱伝導率が高いので、好ましい。また、作動液としては、HFC−134a等を用いることもできるが、大気中に放出された場合の環境影響を考慮すると、水の方が好ましい。
【0023】
保持部15は、熱伝導体20の長手方向の一端(本実施形態では下端)が穴12の内底部12aから離れた位置に配置されるように、熱伝導体20を保持する。なお、穴12の深さをLs、穴12への熱伝導体20の挿入長さをLhとしたときに、Ls/2≦Lh<Lsとなるように、保持部15が熱伝導体20を保持することが好ましい。
【0024】
ヒートパイプである熱伝導体20の下端側の一部を穴12に挿入すると、熱伝導体20において、穴12の中に位置する下端側の部分が採熱部23となり、穴12の外に露出する上端側の部分が放熱部24となる。なお、熱伝導体20において採熱部23と放熱部24の間の中間部分に、外面側に断熱構造を備える断熱部を設けてもよい。
【0025】
コンクリート10は、硬化する過程でセメントと水が化学反応(水和反応)を起こして水和熱が生じ、その内部の最高温度は30〜80度程度にもなる。その結果、コンクリート10は上面などが接する大気及び下面などが接する基盤100よりも高温になるため、コンクリート10から大気中に熱Haが放熱されるとともに、コンクリート10から基盤100に熱Hbが伝達される。
【0026】
しかし、特にマスコンクリートでは、こうした自然の放熱によるのみでは温度が十分に低下せず、温度変化に伴うコンクリート10の膨張及び収縮変形が基盤100等に拘束されて、引張応力(温度応力)による温度ひび割れが発生することがある。
【0027】
そこで、温度調節装置11により、以下に記載するように、コンクリート10内部の熱Hcを積極的に放熱する。
まず、コンクリート10内部の熱Hcは、液体14を介して熱伝導体20の採熱部23に伝達される。熱伝導体20であるヒートパイプにおいて、採熱部23に熱Hcが伝わると、その熱Hcで加熱された採熱部23の作動液(水)が蒸発し(潜熱吸収)、上端側となる放熱部24との蒸気圧差により、図1に上向きの破線で示すように、蒸気と共に熱が放熱部24の方に移動する。
【0028】
放熱部24においては、蒸気が凝縮して熱Hcが放熱される(潜熱放出)。そして、凝縮した作動液(水)は、ウイック22の毛細管力によって、図1に下向きの破線で示すように、採熱部23に還流する。このような作動液の蒸発、蒸気の移動、凝縮、及び作動液の還流という作動液の相変化を伴うサイクルがヒートパイプ内で繰り返されることにより、熱伝導体20を介して大気中に熱Hcが放熱される。
【0029】
このようにヒートパイプである熱伝導体20を介する熱Hcの放熱量は、コンクリート10から大気中に直接放熱される熱Ha及びコンクリート10から基盤100に直接伝達される熱Hbよりも多い。そして、コンクリート10から熱Ha,Hbが自然に放熱されるのに加えて、温度調節装置11を用いて積極的に多量の熱Hcを放熱することにより、コンクリートの温度ひび割れが抑制される。
【0030】
ところで、ヒートパイプにおいて放熱が進行するときには、採熱部23と放熱部24との間に温度差が生じることにより、熱抵抗が発生する。この熱抵抗の値が小さいほど、熱は採熱部23から放熱部24に向けて移動しやすくなり、効率よく放熱が進行する。
【0031】
図2に示すように、採熱部23と放熱部24の熱抵抗値の和Rhp(単位はK/W)は、採熱部23の長さをLh(図1参照)、放熱部24の長さをLd(図1参照)とした場合に、それら長さの比Lh/Ldに応じて変化する。
【0032】
例えば、銅製のパイプ21に作動液として水を封入したヒートパイプにおいて、採熱部23における蒸発熱伝達率をTh、放熱部24における凝縮熱伝達率をTdとすると、Th,Tdは10000〜20000(単位はW/mK)が一般的な値である。そこで、第1例G1ではTh=11800、Td=14200とし、第2例G2ではTh=Td=13000とし、第3例G3ではTh=14200、Td=11800とする。すると、第1例G1、第2例G2及び第3例G3において、熱抵抗値の和Rhpは、Lh/Ldに対して、図2に示すグラフのように変化する。
【0033】
ヒートパイプにおいては、熱抵抗値の和Rhpが小さいほど、熱が効率よく移動するため、熱抵抗値の和Rhpを概ね「最小値SvからSv+10%」程度の範囲にすることが好ましい。すなわち、熱抵抗値の和Rhpを「最小値SvからSv+10%」にするために、0.5≦Lh/Ld≦2とすることが好ましい(図2参照)。これに対して、0.5>Lh/LdまたはLh/Ld>2となると、熱抵抗が大きくなり、採熱部23から放熱部24への熱の移動効率が悪くなる。
【0034】
保持部15は、穴12の開口(中空管の開口部13b)を覆うフランジであることが好ましい。特に、保持部15としてのフランジが穴12の開口を塞ぐようにすると、穴12に注入された液体14の蒸発を抑制することができるので、好ましい。その他、保持部15は、穴12の中(内底部12a付近または内側壁に沿う位置)で熱伝導体20を保持するものであってもよいし、コンクリート10及び穴形成部材13から離れた位置で熱伝導体20を保持するものであってもよい。例えば、穴12の外で、1または複数の熱伝導体20の上端付近を保持する保持部15を採用することもできるし、熱伝導体20の上端付近に鉤状の保持部15を設けて、棒またはロープなどに引っかけて吊すようにしてもよい。その他、熱伝導体20の下端を穴12の内底部12aから離すための保持部15と、熱伝導体20の外周面を穴12の内側面から離すための保持部とを別々に設けてもよい。
【0035】
液体14は、水とすることが好ましい。水であれば、穴12への注入作業等に伴って液体14が周囲に漏出した場合にも、周辺環境の汚染を抑制することができるためである。また、水和熱によりコンクリートの温度が30〜80度程度になった場合にも、その温度域において水は液体の状態で安定しているため、効率よく熱の伝達を行うことができる。さらに、液体14と、ヒートパイプ内に収容する作動液とを比熱等の物性値が同じ液体にすることで、液体14を介した熱の伝達を円滑に行うことができる。
【0036】
ここで、穴12内の液体14の流れについてみると、穴12の内側面と熱伝導体20の外周面との距離Dsが10mm以上あると、煙突効果によって液体14が穴形成部材13の内側面に沿って上昇し、熱伝導体20に沿って下降する鉛直方向の循環流が生じやすくなる。さらに、穴12の内側面と熱伝導体20の外周面との距離Dsが20mm以上あると、液体14の水平方向の流れが生じ、その流れに鉛直方向の流れが干渉することにより、穴形成部材13と熱伝導体20の間で液体14が渦運動(対流)しやすくなる。そして、液体14が渦運動することにより、液体14の流速が増して、液体14を介した熱の伝達が促進される。
【0037】
そのため、液体14の流速を上げて熱の伝達を促進するために、穴形成部材13と熱伝導体20の距離Dsは、Ds≧10mmとすることが好ましく、Ds≧20mmとすることがより好ましい。なお、穴12の内径と熱伝導体20の外径と差をDiとすると、Di≧20mmとすることで、概ね距離Ds≧10mmとすることができる。同様に、Di≧40mmとすることで、概ね距離Ds≧20mmとすることができる。
【0038】
また、穴12の内底部12a付近においても、熱伝導体20の下端と内底部12aとの間に適切に空間が形成されていると、液体14の鉛直方向の流れを効率よく渦運動にすることができる。これに対して、熱伝導体20の下端が内底部12aに接していると、穴12の中が熱伝導体20で仕切られて液体14の対流が妨げられる。したがって、穴12への熱伝導体20の挿入長さをLhは、穴12の深さLsに対して、Lh≦Ls−Ds(Ds>0)とすることが好ましい。
【0039】
次に、コンクリート10の温度調節方法について説明する。
まず、コンクリート10を構築する前に、基盤100に下端(底部13aがある場合は、その底部13aのある端部)が接するように、穴形成部材13を配置する(配置工程)。穴形成部材13は、コンクリート10の打設範囲に応じて、所定の間隔(例えば0.5〜2m間隔)で複数配置するとよい。
【0040】
次に、穴形成部材13を配置した範囲にコンクリート10を打設する(打設工程)。これにより、穴形成部材13がコンクリート10内に埋め込まれる態様となり、コンクリート10内に内底部12aを有する穴12が形成される(形成工程)。
【0041】
コンクリート10の打設後、穴12に液体14を注入する(注入工程)。また、穴12に熱伝導体20の一部を挿入する(挿入工程)。なお、注入工程と挿入工程の順序は入れ替わってもよいし、両工程を同時に行ってもよい。
【0042】
挿入工程において、保持部15で熱伝導体20の位置決めをすることにより、熱伝導体20を穴12の内底部12aから離れた位置に配置する。このとき、熱伝導体20の端部(下端)だけでなく、熱伝導体20の全体が穴形成部材13から離れた位置に配置するように、保持部15で熱伝導体20の位置決めをすることが好ましい。
【0043】
挿入工程の後には、穴12の中などの温度を測定して、十分に温度が低下するまで、コンクリート10の温度を調節する。この間に液体14が蒸発した場合には、液体14を注ぎ足すとよい。そして、コンクリート10の温度が十分に低下したタイミングで、穴12から熱伝導体20を抜き出し、穴12の中の液体14を除去する。その後、穴12をモルタルまたはコンクリートで埋める。
【0044】
次に、コンクリート10の温度調節装置11及びコンクリート10の温度調節方法の作用について説明する。
ヒートパイプである熱伝導体20は、保持部15によって穴12の内底部12aから離れた位置に配置されるので、熱伝導体20と底部13aとの間には空間が形成され、この空間において、図1に曲線の矢印で示すように、液体14が対流する。そのため、熱伝導体20の端部(下端)にも、熱伝導体20の中間部分と同様に、液体14を介して熱Hcが伝達される。また、この空間において液体が対流することにより、基盤100にも、効率よく熱Hcが伝達される。
【0045】
ここで、穴形成部材13の下端部が接する基盤100は、通常、硬化に伴って発熱しているコンクリート10よりも温度が低いため、内底部12aに熱伝導体20の端部(下端)が接していると、採熱部23となる端部に熱Hcが伝わりにくく、その端部(下端)の温度が中間部分よりも低くなってしまうことがある。また、穴形成部材13の下端部が基盤100に接していないとしても、熱伝導体20が内底部12aまたは穴形成部材13に接していると、その部分で液体14が対流しにくくなるので、採熱部23に熱Hcが伝わりにくくなる。そうすると、採熱部23における作動液の蒸発及び放熱部24への蒸気の移動が進行しにくくなり、放熱部24からの放熱効率が落ちてしまう。
【0046】
その点、本実施形態では、内底部12a付近に形成された空間内で液体14が十分に対流する。そして、液体14を介した対流熱伝達では、液体14の流速が速いほど効率よく熱伝達が行われるので、液体14が対流する空間を確保することにより、コンクリート10から採熱部23への熱伝達を促進することができる。これにより、温度が低い基盤100に接してコンクリート10を構築する場合にも、ヒートパイプである熱伝導体20を用いた放熱により、コンクリート10の温度調節(冷却)を適切に行うことができる。
【0047】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)熱伝導体20は、保持部15によって穴12の内底部12aから離れた位置に配置されるので、内底部12aと熱伝導体20の間に形成される空間内で液体14が対流する。そのため、熱伝導体20の穴12に挿入された部分には、コンクリート10から生じる熱Hcが液体14を介して速やかに伝達される。これにより、熱伝導体20の穴12に挿入された部分から、熱伝導体20の穴12の外にある部分に速やかに熱が伝達されて、熱伝導体20の穴12の外にある部分から効率よく放熱することができる。これにより、構築するコンクリート10の温度調節を適切に行うことができる。
【0048】
(2)基盤100上に構築するコンクリート10から発生する熱の一部は、基盤100に伝導することで放熱されるが、コンクリート10から基盤100に対して伝導する熱量よりも、穴12に注入された液体14が対流することによる対流熱伝達により基盤100に伝達する熱量の方が大きい。そのため、下端部が基盤100に接する態様で中空管である穴形成部材13をコンクリート10に埋設することにより、中空管が形成する穴12の中で対流する液体14を介して、基盤100に対して効率よく熱を伝達することができる。したがって、基盤100上に構築するコンクリート10の温度調節を速やかに行うことができる。
【0049】
(3)Ls/2≦Lhとすることにより、熱伝導体20の挿入長さを十分に確保して、穴12の中で対流する液体14から熱伝導体20に熱Hcを伝達することができる。
(4)穴12の開口を覆うフランジを保持部15とすることにより、液体14の対流を妨げることなく、熱伝導体20を穴12の内底部12aから離れた位置に保持することができる。また、保持部15が内底部12aだけでなく、穴形成部材13全体から離れた位置に熱伝導体20を配置することにより、熱伝導体20の周囲で液体14を対流させて、コンクリート10の熱Hcを効率よく熱伝導体20に伝達することができる。
【0050】
(変更例)
上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。また、上記実施形態と下記変更例とは、任意に組み合わせることもできる。
【0051】
図3の左側に示す第1変更例の温度調節装置11Aのように、熱伝導体20の放熱部24(穴12の外に露出した部分)に、放熱を促進する放熱フィン25を設けてもよい。特に、放熱部24の長さが十分に確保できず、Lh/Ld>2となる場合には、放熱フィン25を設けることが好ましい。
【0052】
図3の左側に示す第1変更例の温度調節装置11Aのように、穴12の深さ方向は必ずしも鉛直でなくてもよく、穴12の深さ方向が鉛直に対して傾斜していてもよい。あるいは、図3の右側に示す第2変更例の温度調節装置11Bのように、穴12の深さ方向が水平であってもよい。なお、穴12の深さ方向が鉛直に対して傾いている場合には、穴12から液体14が流出しないように、フランジである保持部15によって穴12の開口(開口部13b)を塞ぐことが好ましい。
【0053】
図3に示す温度調節装置11A,11Bのように、穴形成部材13(穴形成部材13の底部13a)が基盤100から離れていてもよい。
図3の右側に示す第2変更例の温度調節装置11Bのように、穴12の深さ方向が水平である場合には、熱伝導体20のうち穴12に挿入される採熱部23と穴12の外に配置される放熱部24との境界で熱伝導体20が屈曲していてもよい。このようにすると、採熱部23を穴12の中で水平な姿勢にしつつ、放熱部24を穴12の外で垂直な姿勢にすることで、穴12から突出する熱伝導体20の長さを短くすることができるので、作業のじゃまになりにくい。
【0054】
図4に示す第3変更例の温度調節装置11Cのように、コンクリート10を打設する前に複数の穴形成部材13を所定の間隔で配置し、形成工程において複数の穴12を形成してもよい。また、コンクリート10の打設後に、複数の穴12が開口する領域Arを囲む堤防部16を配置して、上記温度調節方法の注入工程に替えて、領域Arに液体14を貯留する貯留工程を行ってもよい。この場合には、挿入工程において、複数の穴12のうちの一部の穴12にのみ熱伝導体20の下端を挿入してもよい。例えば、一方向に並ぶ複数の穴12に対して、1つおきに熱伝導体20の下端を挿入する。
【0055】
このようにすれば、貯留工程において穴12が液体14で満たされるとともに、領域Ar内に貯留された液体14は複数の穴12の中を含めて対流するので、貯留された液体14の液面Fuから効率よく放熱される。また、液体14が複数の穴12を含めて対流するので、コンクリート10の全体で均一に温度調節(冷却)を行うことができる。
【0056】
さらに、領域Arに液体を貯留しておくことで、液体14が蒸発しても、穴12ごとに液体14を注ぎ足すことなく、穴12を液体14で満たしておくことができる。この場合、穴12の中と外とで液体14が出入りするように、フランジである保持部15には、貫通孔15aを設けておくことが好ましい。
【0057】
その他、第3変更例によれば、全ての穴12に熱伝導体20を挿入する場合よりも、温度調節に用いる熱伝導体20の数が少なくてすむので、挿入工程における手間を少なくすることができる。また、使用する熱伝導体20の数が減ることにより、コストダウンにつながる。
【0058】
・穴12に挿入される熱伝導体20の端部(採熱部23の端)は、コンクリート10の高温部(好ましくは最高温度となる部分)に配置することが好ましい。この構成によれば、熱伝導体20の端部が中間部分よりも高温になるので、採熱部23から効率よく熱を移動させることができる。コンクリート10に複数の高温部がある場合には、高温部の位置に合わせて複数の熱伝導体20を配置し、各端部位置を高温部に配置することが好ましい。
【0059】
例えば、コンクリート10の底が基盤100に接していて、表面から放熱される熱Haと基盤100に伝達される熱Hbとが実質的に同等の場合、コンクリート10の中心部が最高温度となる。そのため、厚さLcのコンクリート10の表面から底に向けて穴形成部材13を挿入する場合には、コンクリート10表面からの熱伝導体20の挿入長さLbを、0.3×Lc≦Lb≦0.7×Lcにするとよい。さらに、Lb=0.5×Lcにすると、より好ましい。この場合、穴形成部材13は基盤100に接していてもよいし、穴12内の液体14が高温部に配置されるように、穴形成部材13が基盤100から離れていてもよい。
【0060】
外気温が低い場合などには、コンクリート10の表面から放熱される熱Haが、基盤100に伝達される熱Hbよりも大きくなる。これにより、例えば表面から0.7×Lcの位置が最高温度になるとすると、0.5×Lc≦Lb≦0.8×Lcにすることが好ましく、Lb=0.7×Lcにすると、より好ましい。
【0061】
さらに、上記実施形態及び各変更例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(イ)基盤上に構築するコンクリートの温度調節を行う温度調節装置であって、
前記基盤に接するようにコンクリートに埋め込まれる中空部材と、
前記中空部材に注入される液体と、
前記中空部材に一部が挿入される熱伝導体と、
を備えることを特徴とするコンクリートの温度調節装置。
【0062】
(ロ)基盤上に構築するコンクリートの温度調節を行う温度調節方法であって、
前記基盤に接するように中空部材を配置する配置工程と、
前記中空部材を配置した領域にコンクリートを打設する打設工程と、
前記中空部材に液体を注入する注入工程と、
前記中空部材に熱伝導体の一部を挿入する挿入工程と、
を含むことを特徴とするコンクリートの温度調節装置。
【0063】
(イ),(ロ)の中空部材は上記実施形態の穴形成部材13に相当する。そして、(イ)においては、上記実施形態の保持部15を設けなくてもよい。また、(イ),(ロ)の熱伝導体は、ヒートパイプに限らず、銅またはステンレスなどの金属からなる棒部材であってもよい。
【0064】
例えば、図5に示す温度調節装置11Dのように、保持部15で保持することなく、熱伝導体20を穴12の内底部12aに載置してもよい。
ここで、中空部材を基盤から離れた位置に配置しようとすると、コンクリートを打設するときに中空部材を他の部材によって支えておかなければならず、中空部材の配置に手間がかかる、という課題がある。その点、(イ),(ロ)によれば、中空部材を基盤に接するように配置するので、中空部材の配置にかかる手間を減らすことができる。
【0065】
また、基盤上にコンクリートを打設した場合には、硬化に伴って発熱するコンクリートの熱は、相対的に低温となる基盤の方に伝導する。そして、コンクリートから基盤への熱の移動については、接触する物質同士の温度勾配による熱伝導よりも、対流する液体を介する対流熱伝達の方が、熱の移動量が多い。
【0066】
その点、(イ),(ロ)によれば、基盤上に構築するコンクリートから発生する熱の一部は、基盤に伝導することで放熱されるが、コンクリートから基盤に対して直接伝達される熱量よりも、対流する液体を介して基盤にする伝達する熱量の方が大きい。そのため、基盤と接する態様でコンクリートに埋設した中空部材に液体を注入することにより、液体を介して基盤に効率よく熱を伝えることができる。したがって、基盤上に構築するコンクリートの温度調節を速やかに行うことができる。
【0067】
(ハ)構築するコンクリートに穴を形成する複数の穴形成部材と、
複数の前記穴が開口する領域を囲む堤防部と、
前記領域に貯留される液体と、
複数の前記穴のうちの一部に下端が挿入される熱伝導体と、
を備えることを特徴とするコンクリートの温度調節装置。
【0068】
(ニ)構築するコンクリートに複数の穴を形成する形成工程と、
複数の前記穴が開口する領域に液体を貯留する貯留工程と、
複数の前記穴のうちの一部に熱伝導体の下端を挿入する挿入工程と、
を含むことを特徴とするコンクリートの温度調節方法。
【0069】
(ハ)においては、図4に示す第3変更例の保持部15を備えなくてもよい。
例えば、図5に示す温度調節装置11Dのように、保持部15で保持することなく、熱伝導体20を穴12の内底部12aに載置してもよい。また、(イ),(ロ)における熱伝導体は、ヒートパイプに限らず、銅またはステンレスなどの金属からなる棒部材であってもよい。
【0070】
ここで、特にコンクリート10が体積の大きいマスコンクリートである場合などには、複数の穴を設けて温度調節(特に、冷却)を行う必要があるため、各穴への液体の注入、熱伝導体の挿入及び液体の補給など、温度調節作業にかかる手間が多くなる、という課題がある。
【0071】
その点、(ハ),(ニ)によれば、穴が開口する領域に液体を貯留しておくことにより、穴ごとに液体を注入したり補給したりする必要がなく、また、全ての穴に熱伝導体を挿入する必要がないので、温度調節作業にかかる手間を少なくすることができる。また、貯留された液体は複数の穴の中を含めて対流するので、コンクリートの全体で均一に温度調節を行うことができ、また、貯留された液体の液面全体から効率よく放熱を行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
10…コンクリート、11…温度調節装置、12…穴、12a…内底部、13…穴形成部材、14…液体、15…保持部、20…熱伝導体、100…基盤。
図1
図2
図3
図4
図5