特許第6389029号(P6389029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389029
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】毛髪洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20180903BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20180903BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20180903BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/49
   A61K8/60
   A61Q5/02
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-115072(P2013-115072)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-234350(P2014-234350A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植田 真三久
(72)【発明者】
【氏名】原田 智広
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−071924(JP,A)
【文献】 特開2005−112946(JP,A)
【文献】 特開2002−012538(JP,A)
【文献】 特開2010−285392(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/038496(WO,A1)
【文献】 Playback Mineral Moist(Database accession no. 1905692),DATABASE GNPD [ONLINE],MINTEL,2012年10月
【文献】 Orzene Beer(Database accession no. 760747),DATABASE GNPD [ONLINE],MINTEL,2007年 8月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/86
A61K 8/49
A61K 8/60
A61Q 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)から成分(C)を含有する毛髪洗浄剤組成物(但し、(a)泡立てネット又はタオルで泡立てて毛髪に用いるもの、(b)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル−10、テトラデカン二酸ポリグリセリル−10、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールから選択される1種以上の水溶性エステル類を含有するもの、(c)エデト酸二ナトリウム、香料、安息香酸Na及びクエン酸を併せ含有するもの、(d)海藻エキス及び加水分解コンキオリンを含有するもの及び(e)ビールを含有するもの、を除く)。
成分(A):エーテルカルボン酸型界面活性剤及びその塩から選ばれる1種以上。
成分(B):2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる1種以上。
成分(C):ポリグリセリンモノアルコールエーテル、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、及び脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドから選ばれる1種以上。
【請求項2】
前記成分(B)がココアンホ酢酸Naである請求項1に記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記成分(C)としてポリオキシエチレンジオレイン酸メチルグルコシドを含有するものを除く請求項1又は請求項2に記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記成分(A)の含有量が2〜8質量%の範囲内である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の毛髪洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記成分(C)に対する成分(B)の質量比(B)/(C)が1〜30である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の毛髪洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は毛髪洗浄剤組成物に関する。詳しくは、良好な泡立ちと軽い洗い心地とを実現する毛髪洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛髪洗浄剤組成物は、毛髪及び頭皮の汚れを洗い流すために使用される。また、一般に、毛髪洗浄剤組成物は、頭皮のフケ、かゆみを防止し、毛髪及び頭皮を清潔に保つために使用される。
【0003】
マイルドな毛髪洗浄剤組成物を実現するために、従来、アニオン性界面活性剤としてアミノ酸系界面活性剤に両性界面活性剤を組み合わせる手法が採られてきた。しかしながらこれらの界面活性剤の組み合わせに着目した毛髪洗浄剤組成物とした場合、「泡立ちが悪い」、「泡がベタついて重く洗いづらい」、等の問題があった。
【0004】
下記特許文献1に開示されるように、起泡性に優れるアニオン性界面活性剤を使用し、クリーミーな泡質とする試みがなされている。
【0005】
下記特許文献2段落0003では、下記特許文献1に開示された洗浄剤組成物では低刺激性、及びコンディショナーの仕上がり感が十分ではなかったと記載されている。その上で、エーテルカルボン酸塩型界面活性剤、エーテル硫酸塩型界面活性剤、及び特定のカチオン性ポリマーの組合せ使用が有効であるとしている(特許文献2段落0012,0035)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−336387
【特許文献2】特開2008−285437
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来提供されてきた毛髪洗浄剤組成物は、「泡立ちが悪い」、「泡がベタついて重く洗いづらい」等の問題を十分に解決するものではなかった。更に進んで、良好な泡立ちと軽い洗い心地とを実現した毛髪洗浄剤組成物が求められている。
【0008】
上記特許文献1及び特許文献2に開示された洗浄剤組成物は、いずれも特定のアニオン性界面活性剤と特定のカチオン性ポリマーを必須成分として配合している。
【0009】
一般に、アニオン性界面活性剤は起泡力に優れるものが多い。また、一般に、カチオン性界面活性剤及びカチオン性ポリマーは毛髪の感触の向上に寄与する成分である。そして、これらを同一の組成物に配合してコンプレックスを形成させ、当該コンプレックスを利用する技術が存在する。しかし、本願発明者は、当該コンプレックスの利用に頼る前提では、良好な泡立ちと軽い洗い心地とを実現することは困難であると考えるに至った。
【0010】
よって、本願発明者は組成を見直し、アニオン性界面活性剤と、カチオン性界面活性剤やカチオン性ポリマーとを必須成分として併用する手法に頼らないこととした。そして、良好な泡立ちと軽い洗い心地とを実現する毛髪洗浄剤組成物を完成するため鋭意研究を重ねた。
【0011】
その結果、意外にも、エーテルカルボン酸型界面活性剤及びその塩から選ばれる1種以上(成分(A))、両性界面活性剤から選ばれる1種以上(成分(B))、並びに、ポリグリセリンモノアルコールエーテル、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、及び脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドから選ばれる1種以上(成分(C))を併用することが有用であることを見出した。
【0012】
(i)起泡性が良好であること、(ii)キメが細かく滑らかな泡質であって、かつ、毛髪の指通りが良好であること(操作性が良好であること)、並びに、(iii)起泡後において消泡しにくく、毛髪及び頭皮と指との間の泡によるクッション性が維持され指通り性が継続すること(洗髪中の泡持ちが良好であること)。これら(i)〜(iii)の効果のバランス良い組み合わせが、軽い洗い心地の実現に重要だと本願発明者は考えている。反対に、例えば、起泡性が不足すると泡がべたついて重いと感じやすく、操作性や洗髪中の泡持ちが不足すると重い洗い心地となってしまいやすい。
【0013】
以上から、良好な泡立ちと軽い洗い心地とを実現する毛髪洗浄剤組成物を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、
下記成分(A)から成分(C)を含有する毛髪洗浄剤組成物である。
成分(A):エーテルカルボン酸型界面活性剤及びその塩から選ばれる1種以上。
成分(B):両性界面活性剤から選ばれる1種以上。
成分(C):ポリグリセリンモノアルコールエーテル、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、及び脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドから選ばれる1種以上。
【0015】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、
前記成分(C)に対する成分(B)の質量比(B)/(C)が1〜30である第1発明に記載の毛髪洗浄剤組成物である。
【0016】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、
前記両性界面活性剤がイミダゾリニウム型両性界面活性剤である第1発明又は第2発明に記載の毛髪洗浄剤組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本願が開示する発明は、良好な泡立ちと軽い洗い心地とを実現する。
上記第2発明は起泡性が更に優れる。
上記第3発明は操作性(泡質(キメが細かく滑らか)・指通り)が更に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本願が開示する発明の実施形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0019】
〔毛髪洗浄剤組成物〕
下記成分(A)から成分(C)を含有する毛髪洗浄剤組成物を本願は開示する。
成分(A):エーテルカルボン酸型界面活性剤及びその塩から選ばれる1種以上。
成分(B):両性界面活性剤から選ばれる1種以上。
成分(C):ポリグリセリンモノアルコールエーテル、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、及び脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドから選ばれる1種以上。
【0020】
〔成分(A)〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物は、エーテルカルボン酸型界面活性剤及びその塩から選ばれる1種以上を含む。成分(A)はアニオン性界面活性剤に該当する。
【0021】
上記エーテルカルボン酸型界面活性剤は、その基本構造として、オキシエチレン基またはその重合体であるポリオキシエチレン(POEとも称する)鎖を介して、疎水基とカルボキシル基とを有する。好ましくは、ポリオキシエチレン鎖を介して疎水基とカルボキシル基とを有する。
【0022】
上記エーテルカルボン酸型界面活性剤は、好ましくは、下記「化1」の一般式で表されるものである。
【0023】
【化1】
(上記化1に示す一般式において、Rは炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、Aは−O−又は−CO−NH−を示し、nは1〜12であり、Bは炭素数1から3のアルキレン基を示す。)
【0024】
上記化1に示す一般式において、Rは、好ましくは直鎖状又は分岐鎖状であり、より好ましくは直鎖状である。また、Rは、好ましくは炭素数12〜14のアルキル基又はアルケニル基である。上記化1に示す一般式において、Aは好ましくは−O−である。上記化1に示す一般式において、nは、好ましくは1〜5である。Bは、好ましくは炭素数1のアルキレン基(−CH−)である。
【0025】
上記エーテルカルボン酸型界面活性剤がその塩である場合、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、又はアルカノールアミンを用いた塩であることが好ましい。アルカリ金属イオンを用いた塩であることがより好ましい。上記アルカリ金属イオンとして、ナトリウムイオン又はカリウムイオンを用いることが好ましい。上記アルカリ土類金属イオンとして、マグネシウムイオンを用いることが好ましい。上記アルカノールアミンとして、炭素数2〜9のアルカノールアミンを用いることが好ましい。
【0026】
毛髪洗浄剤組成物における成分(A)の含有量は、その上限は10質量%であることが好ましく、8質量%であることがより好ましく、6質量%であることが更に好ましい。一方、毛髪洗浄剤組成物における成分(A)の含有量の下限は0.5質量%とすることが好ましく、1質量%であることがより好ましく、2質量%であることがより好ましく、3質量%であることが更に好ましい。これらの好ましい上限値及び下限値は、それぞれ一つずつを組み合わせて特定範囲の好ましい配合量にできる。起泡性向上の観点から、これら好ましい配合量としてよい。
【0027】
〔成分(B)〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物は、両性界面活性剤から選ばれる1種以上を含む。
上記両性界面活性剤として、イミダゾリニウム型(イミダゾリン型と称される場合もある。)両性界面活性剤、アルキルベタイン型両性界面活性剤、アミドベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、ホスホベタイン型両性界面活性剤、アミノカルボン酸塩型両性界面活性剤、アミドアミンオキシド型両性界面活性剤等がある。上記両性界面活性剤として、好ましくは、イミダゾリニウム型両性界面活性剤、アルキルベタイン型両性界面活性剤、及びアミドベタイン型両性界面活性剤である。更に好ましくは、操作性(泡質・指通り)向上の観点から、イミダゾリニウム型両性界面活性剤である。
【0028】
上記イミダゾリニウム型両性界面活性剤の具体例を例示すると、ココアンホ酢酸Na等の2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム液、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等挙げられる。好ましい具体例は2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインである。
【0029】
上記アルキルベタイン型両性界面活性剤の具体例を例示すると、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ミリスチルベタイン、パルミチルベタイン、オレイルベタイン、ヤシ油アルキルベタイン、ヒドロキシアルキル(C12−14)ヒドロキシエチルサルコシン等が挙げられる。好ましい具体例は、ラウリルベタイン、ヒドロキシアルキル(C12−14)ヒドロキシエチルサルコシンである。
【0030】
上記アミドベタイン型両性界面活性剤の具体例を例示すると、ラウラミドプロピルベタイン(ラウリン酸アミドプロピルベタイン)、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等がある。好ましい具体例はラウラミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインである。
【0031】
上記スルホベタイン型両性界面活性剤の具体例を例示すると、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウリルプロピルスルホベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン、ヤシ油アルキルプロピルスルホベタイン、ミリスチルジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン等がある。
【0032】
上記ホスホベタイン型両性界面活性剤の具体例を例示すると、2−(ジメチルオクチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ジメチルドデシルアンモニオ)プロピルホスフェート、2−(ジメチルドデシルアンモニオ)−2−ヒドロキシプロピルホスフェート等がある。
【0033】
上記アミノカルボン酸塩型両性界面活性剤の具体例を例示すると、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム等がある。
【0034】
上記アミドアミンオキシド型両性界面活性剤の具体例を例示すると、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド液、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド液、ミリスタミドプロピルアミンオキシド等がある。
【0035】
毛髪洗浄剤組成物における成分(B)の含有量は、その上限は8質量%であることが好ましく、7.5質量%であることがより好ましく、7質量%であることが更に好ましい。一方、毛髪洗浄剤組成物における(B)成分の含有量は、その下限は0.1質量%であることが好ましく、1質量%であることがより好ましく、2質量%であることが更に好ましい。これらの好ましい上限値及び下限値は、それぞれ一つずつを組み合わせて特定範囲の好ましい配合量にできる。操作性(泡質・指通り)向上の観点から、これら好ましい配合量としてよい。
【0036】
〔成分(C)〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物は、ポリグリセリンモノアルコールエーテル、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、及び脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドから選ばれる1種以上を含む。成分(C)は非イオン性界面活性剤に該当する。
【0037】
成分(C)は、ポリグリセリンモノアルコールエーテル、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル及び脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0038】
成分(C)は、ポリグリセリンモノアルコールエーテルから選ばれる1種以上としても良いし、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルから選ばれる1種以上としても良いし、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルから選ばれる1種以上としても良いし、アルキルグルコシドから選ばれる1種以上としても良いし、脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドから選ばれる1種以上としても良い。また、適宜これらを組み合わせてよい。
【0039】
上記ポリグリセリンモノアルコールエーテルは、1つのポリグリセリン部分と1つの1価アルコール部分とがエーテル結合したものである。ポリグリセリンモノアルコールエーテルを構成するポリグリセリン部分は、グリセリン単位が2以上重合したものである。当該ポリグリセリン部分について、好ましくはグリセリン単位の平均重合度が2以上であり、より好ましくはグリセリン単位の平均重合度が2〜8である。一方、ポリグリセリンモノアルコールエーテルを構成する1価アルコール部分は、好ましくは炭素数が8〜14であり、より好ましくは炭素数が10〜12である。当該1価アルコール部分は直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。当該1価アルコール部分は飽和であることが好ましい。
【0040】
上記ポリグリセリンモノアルコールエーテルの具体例を例示すると、ポリグリセリル−4ラウリルエーテル等のポリグリセリンモノラウリルエーテル、ポリグリセリンモノオクチルエーテル、ポリグリセリンモノデシルエーテル、ポリグリセリンモノミリスチルエーテルがある。
【0041】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルは、1つのポリグリセリン部分と1つの1価脂肪酸部分とがエステル結合したものである。ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを構成するポリグリセリン部分は、グリセリン単位が2以上重合したものである。当該ポリグリセリン部分について、好ましくはグリセリン単位の平均重合度が2以上であり、より好ましくはグリセリン単位の平均重合度が2〜10である。一方、ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルを構成する1価脂肪酸部分は、好ましくは炭素数が10〜18であり、より好ましくは炭素数が12〜14である。当該1価脂肪酸部分は水酸基で修飾されても良いが、好ましくは、このような修飾がなされていない。当該1価脂肪酸部分は直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。当該1価脂肪酸部分は飽和であることが好ましい。
【0042】
上記ポリグリセリンモノ脂肪酸エステルの具体例を例示すると、カプリン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル−10等のラウリン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、パルミチン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル、ベヘン酸ポリグリセリル等がある。
【0043】
上記ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸部分は1価脂肪酸である。当該1価脂肪酸部分は、好ましくは炭素数が8〜22であり、より好ましくは炭素数が10〜18である。当該1価脂肪酸部分は水酸基で修飾されても良いが、好ましくは、このような修飾がなされていない。当該1価脂肪酸部分は直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。当該1価脂肪酸部分は飽和であることが好ましい。
【0044】
ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルを構成するエチレンオキシドの付加モル数は好ましくは6以上であり、より好ましくは20〜100である。
【0045】
上記ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステルの具体例を例示すると、ラウリン酸PEG−80ソルビタン等のモノラウリン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン等がある。
【0046】
上記アルキルグルコシドは、グリコシド結合又はチオグリコシド結合を介して1つの糖部分と炭化水素鎖部分とを有する。アルキルグルコシドにおいて、好ましい結合はグリコシド結合である。糖部分は糖残基が1つ又は2つ以上結合したものからなり、好ましくは糖残基数が1〜3であり、より好ましくは糖残基が1つである。糖残基の炭素数は5又は6であり、好ましくは炭素数6である。更に、好ましい糖残基はグルコースである。炭化水素鎖部分の炭素数は8〜16であることが好ましく、10〜14であることがより好ましい。炭化水素鎖部分は直鎖状であることが好ましい。グルコシドの平均重合度は、好ましくは1〜2であり、糖部分に対して炭化水素鎖部分が1つであることがより好ましい。
【0047】
上記アルキルグルコシドの具体例を例示すると、オクチルグルコシド、ノニルグルコシド、デシルグルコシド、オクチルマルトシド、オクチルチオグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、セトステアリルグルコシド等がある。
【0048】
上記脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドは、1価脂肪酸とポリオキシエチレン鎖とのエステルがメチルグルコシドに付加されているものである。更に、糖部分にはポリオキシエチレン鎖が付加されていてもよい。
【0049】
脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドを構成する1価脂肪酸とポリオキシエチレン鎖とのエステルの数は1〜3であることが好ましく、3つであることがより好ましい。当該1価脂肪酸とポリオキシエチレン鎖とのエステルが2つ以上の場合は、1価脂肪酸は互いに同一でも異なっていても良いが、互いに同一であることが好ましい。当該1価脂肪酸の炭素数は8〜22であることが好ましく、10〜18であることがより好ましい。当該1価脂肪酸は直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、分岐鎖状であることがより好ましい。当該1価脂肪酸部分は飽和であることが好ましい。
【0050】
脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドを構成するエチレンオキシドの付加モル数は好ましくは10以上であり、より好ましくは80〜140である。
【0051】
上記脂肪酸ポリオキシエチレンメチルグルコシドの具体例を例示すると、トリイソステアリン酸PEG−120メチルグルコース等のトリイソステアリン酸POEメチルグルコシド等がある。
【0052】
毛髪洗浄剤組成物における成分(C)の含有量は、その上限は8.5質量%であることが好ましく、3質量%であることがより好ましく、1.5質量%であることが更に好ましい。一方、毛髪洗浄剤組成物における成分(C)の含有量は、その下限は0.15質量%であることが好ましく、0.3質量%であることがより好ましく、0.5質量%であることが更に好ましい。これらの好ましい上限値及び下限値は、それぞれ一つずつを組み合わせて特定範囲の好ましい配合量にできる。起泡性と洗髪中の泡持ち向上の観点から、これら好ましい配合量としてよい。
【0053】
〔(B)/(C)比〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物において、起泡性向上の観点から、前記成分(C)に対する成分(B)の質量比(B)/(C)は特定の範囲内であることが好ましい。(B)/(C)は好ましくは1〜30であり、より好ましくは2〜25であり、更に好ましくは、(B)/(C)は3〜20である。
【0054】
〔(A)/(C)〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物において、洗髪中の泡持ちの観点から、前記成分(C)に対する成分(A)の質量比(A)/(C)は特定の範囲内であることが好ましい。(A)/(C)は好ましくは0.1〜60であり、より好ましくは0.5〜50であり、更に好ましくは1〜40である。
【0055】
〔任意成分〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物は、上記成分(A)〜成分(C)以外の任意の成分を適宜配合して良い。当該任意の成分として、例えば、精製水、イオン交換水、蒸留水等の水を含む溶媒、カチオン性界面活性剤、硫酸型、リン酸型等を含む上記成分(A)に該当しないアニオン性界面活性剤、POEアルキルエーテル、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等の上記成分(C)に該当しない非イオン性界面活性剤、油脂、ロウ、高級アルコール、高級脂肪酸、グリセリンやグリコール等の多価アルコール、糖、炭化水素、モノオレイルグリセリルエーテル等のグリセリンと高級アルコールとからなるグリセリルエーテル、高級脂肪酸と高級アルコール、コレステロール、もしくは糖とからなるポリオキシエチレン鎖が付加されていないエステル、グリセリンと脂肪酸とからなるグリセリン脂肪酸エステル、シリコーン、塩化−O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン性ポリマー、両性ポリマー、及びアニオン性ポリマーを含む水溶性ポリマー、pH調整剤、防腐剤、キレート剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、無機塩、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、染料、顔料等の着色剤等がある。
【0056】
上述の通り、本願が開示する毛髪洗浄剤組成物は、アニオン性界面活性剤と、カチオン性界面活性剤やカチオン性ポリマーとを必須成分として併用する手法に頼らない。よって、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーの配合量を一定量以下としてもよい。また、カチオン性界面活性剤及び/又はカチオン性ポリマーを配合しなくてもよい。
【0057】
毛髪洗浄剤組成物におけるカチオン性界面活性剤の配合量は、0.8質量%以下とすることが好ましく、0.6質量%以下とすることがより好ましく、0.4質量%以下とすることが更に好ましい。
【0058】
毛髪洗浄剤組成物におけるカチオン性ポリマーの配合量は、1質量%以下とすることが好ましく、0.7質量%以下とすることがより好ましく、0.5質量%以下とすることが更に好ましい。
【0059】
〔剤型等〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物の剤型は特に限定されない。例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状等が挙げられる。毛髪洗浄剤組成物は常法により調製可能である。毛髪洗浄剤組成物の具体例として、シャンプー等がある。
【0060】
〔pH〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物のpHは限定されないが、pHは5〜8が好ましい。
【0061】
〔適用対象となる毛髪〕
本願が開示する毛髪洗浄剤組成物は、通常、ヒトの毛髪の洗浄に使用される。毛髪洗浄剤組成物は、酸化染毛処理、脱色処理、脱染処理、パーマ処理等されたダメージ毛においても効果を発揮する。もちろん、これらの処理を受けていない毛髪においても効果を発揮する。
【実施例】
【0062】
以下、実施例について述べる。本願が開示する発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されない。
【0063】
下記表1〜表3に示す実施例1〜15、及び、比較例1〜4について、以下の試験及び評価を行った。
【0064】
なお、各表において、配合量を示す数値は質量%単位である。上記成分(A)〜成分(C)に該当するものには、表中の「成分名」欄の左に「(A)〜(C)」との符号を示した。表中の「(B)/(C)」欄には、各実施例及び各比較例に係る組成物における成分(B)と成分(C)との質量比を示す。
【0065】
各実施例及び各比較例に係る液状の毛髪洗浄用の組成物は常法に従って調製した。各実施例及び各比較例に係る組成物のpHはいずれもpH5〜8の範囲内であった。
【0066】
−評価用ウィッグ(ダメージ毛)の作製方法−
ストレートなヒト毛髪ウィッグを準備し、その毛髪ウィッグを脱色剤(ホーユー株式会社製、(商品名)プロマスターEX LT)で1回脱色処理し、水洗した後、乾燥させた。この操作により脱色された毛髪ウィッグを評価用ウィッグとした。
【0067】
−試験方法−
各実施例又は各比較例に係る毛髪洗浄用の組成物を適量使用して、評価用毛髪ウィッグを常法に従って洗髪処理した。洗髪処理における起泡性、操作性、及び洗髪中の泡持ちについて下記に示す方法に従い評価を行った。各実施例及び各比較例の評価結果は表中に記載した。
【0068】
−評価方法−
<起泡性(泡立ちの良さ)>
20名のパネラーのうち、起泡性に優れる(泡立ちが良い)と評価したパネラーの数が、17人以上の場合を「非常に優れる:5」とし、13〜16人の場合を「優れる:4」とし、9〜12人の場合を「良好:3」とし、5〜8人の場合を「やや不良:2」とし、4人以下の場合を「不良:1」として評価した。
【0069】
<操作性(キメが細かく滑らかという泡質・指通り)>
キメが細かく滑らかという泡質及び毛髪の指通りの観点から、操作性を評価した。
20名のパネラーのうち、操作性が良いと評価したパネラーの数が、17人以上の場合を「非常に優れる:5」とし、13〜16人の場合を「優れる:4」とし、9〜12人の場合を「良好:3」とし、5〜8人の場合を「やや不良:2」とし、4人以下の場合を「不良:1」として評価した。
【0070】
<洗髪中の泡持ち>
起泡後の消泡し難さ、及び、毛髪と指との間の泡によるクッション性が維持され指通り性が継続するかという観点から洗髪中の泡持ちについて評価した。
20名のパネラーのうち、洗髪中の泡持ちが良いと評価したパネラーの数が、17人以上の場合を「非常に優れる:5」とし、13〜16人の場合を「優れる:4」とし、9〜12人の場合を「良好:3」とし、5〜8人の場合を「やや不良:2」とし、4人以下の場合を「不良:1」として評価した。
【0071】
〔表1〕
【0072】
〔表2〕
【0073】
〔表3〕
【0074】
全実施例に係る毛髪洗浄用の組成物は、起泡性、操作性及び洗髪中の泡持ちの評価がバランス良く良好であり、かつ、軽い洗い心地を実現していた。特に、実施例11〜15では、実施例1〜10に比べてより快適な軽い洗い心地を実現していた。
【0075】
一方、各比較例に係る毛髪洗浄用の組成物は、起泡性、操作性及び洗髪中の泡持ちのいずれか1つ以上の評価が不十分であり、かつ、軽い洗い心地を実現できなかった。起泡性評価が不十分であった比較例1及び比較例2では、操作性及び洗髪中の泡持ち評価は良好であったものの、洗髪開始時の泡立ち自体が不十分(泡量が少ない)であり、泡がべたついて重い洗い心地となってしまった。
【0076】
一方、操作性及び洗髪中の泡持ち評価が不十分であった比較例3及び比較例4については、洗髪開始時は良好な泡立ちを示したものの以下の点が指摘できる。まず、操作性については、洗髪開始時においても各実施例に及ばない不十分な評価となった。更に、起泡後は各実施例に比べて消泡しやすく、洗髪中に泡量が減っていって指通り性が低下していき、より一層重さを感じる洗い心地になってしまった。
【0077】
以上のとおり、起泡性、操作性及び洗髪中の泡持ちの評価のうちいずれか1つ以上が例え良好であっても、各比較例に係る毛髪洗浄用の組成物は軽い洗い心地を実現できなかった。
【0078】
以上、実施例と比較例の対比から、軽い洗い心地の実現には、起泡性、操作性及び洗髪中の泡持ちの評価がバランス良く良好であることが重要と考えられた。
【0079】
実施例11〜12に係る毛髪洗浄用の組成物は、好適な「(B)/(C)」の質量比を採用したことで起泡性がより向上したと考えられる。
【0080】
実施例13〜15は、複数の好適な構成が組み合わさって更に快適な軽い洗い心地を実現したと考えられる。
【0081】
成分(C)にかえてモノオレイルグリセリルエーテル(グリセリン部分がグリセリン重合体でない)を使用した比較例4では軽い洗い心地は実現できなかった。当該比較例4では、成分(B)とモノオレイルグリセリルエーテルとの質量比「(B)/モノオレイルグリセリルエーテル」=5であったが、起泡性評価はモノオレイルグリセリルエーテルを配合しない比較例3と同等であった。
【0082】
−評価用ウィッグ(未ダメージ毛)を使用した試験−
脱色処理をしていない未ダメージ毛である評価用ウィッグを用いた点以外は上記「試験方法」と同様の手順にて、上記各実施例及び各比較例に係る毛髪洗浄用の組成物について試験を行った。その結果、上記ダメージ毛を用いた場合と同様の評価結果を得た。
【0083】
よって、本願が開示する毛髪洗浄剤組成物は、未ダメージ毛及びダメージ毛において良好に効果を発揮すると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本願により、良好な泡立ちと軽い洗い心地とを実現する毛髪洗浄剤組成物が提供される。