特許第6389033号(P6389033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6389033オブジェクトの円形ジグザグ・パターンの設計
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389033
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】オブジェクトの円形ジグザグ・パターンの設計
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   G06F17/50 620C
   G06F17/50 622B
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-236132(P2013-236132)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-99177(P2014-99177A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】12306427.1
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アメヤ ディベカール
(72)【発明者】
【氏名】サミール クルカルニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ルイ デルヴォルドレ
【審査官】 松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02523131(EP,A1)
【文献】 特開平08−235284(JP,A)
【文献】 特開平03−011468(JP,A)
【文献】 Constructing procedural features [online],Siemens Product Lifecycle Management Software Inc.,2010年,pp. 4-30〜4-32,[平成29年10月26日検索],インターネット,URL,http://support.industrysoftware.automation.siemens.com/training/se/en/ST3/pdf/spse01535.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06T 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ支援型設計システムにおけるオブジェクトのジグザグ・パターンを設計するためのコンピュータ行する方法であって、
2つまたは複数の同心円の原点である回転軸を提供するステップ(100)と、
マルチインスタンス化する参照オブジェクトを提供するステップ(104)と、
各同心円上の前記参照オブジェクトからインスタンス化するオブジェクトの数を定義するステップ(106)と、
角度シフトを定義するステップ(110)と、
各同心円上の前記参照オブジェクトからオブジェクトの数をインスタンス化するステップ(122)であって、インスタンス化されたオブジェクトが、所与の同心円上の2つの連続する前記インスタンス化されたオブジェクトの間の角度変位に従って離間するステップと、
2つの同心円ごとの1つの同心円において、前記インスタンス化されたオブジェクトを前記角度シフトに従ってシフトするステップ(126)と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
同心円の数を定義するステップ(114)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つの連続する同心円の間の間隔を定義するステップ(116)をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2つまたは複数の同心円は同一平面に位置することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記インスタンス化するステップはさらに、
第1のインスタンス化されたオブジェクトを前記2つまたは複数の同心円のうち1つに配置するステップ(118)と、
前記回転軸から前記第1のインスタンス化されたオブジェクトへ通る放射軸を計算するステップ(120)と、
残りのオブジェクトを各同心円上にインスタンス化するステップであって、残りのインスタンス化されたオブジェクトが、前記放射軸から測定された前記角度変位に従って離間するステップとを含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
2つの同心円ごとの1つの同心円において、前記インスタンス化されたオブジェクトを前記角度シフトに従ってシフトするステップは、前記第1のインスタンス化されたオブジェクトを備える円に対しては実行されないことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のインスタンス化されたオブジェクトは、最小半径を有する同心円上に配置されることを特徴とする、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記角度シフトに対向する第2の角度シフトに従って、以前にシフトしたインスタンス化されたオブジェクトをシフトするステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ユーザの動作により、2つの連続するインスタンス化されたオブジェクトの間の角度変位を、所与の同心円に定義するステップ(108)をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記シフトするステップの前に、前記2つまたは複数の同心円を表示するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータによる実行のための命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令は、コンピュータに、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法のステップを実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の前記コンピュータプログラムを格納したコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
マルチインスタンス化される参照オブジェクトを格納するためのストレージシステムと、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するための演算装置とを備えることを特徴とする、コンピュータ支援型設計システム。
【請求項14】
ユーザのからの入力指示によって、前記オブジェクトの数、前記角度変位の値、または前記角度シフトの値を得ることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラムおよびシステム分野に関し、より詳細には、オブジェクトの円形ジグザグ・パターンを設計するための方法、システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかのシステムやプログラムが、オブジェクトの設計、エンジニアリング、および製造の市場で提供されている。CADとはComputer Aided Designの頭字語であり、例えば、オブジェクトを設計するためのソフトウェアソリューションに関する。CAEとはComputer−Aided Engineeringの頭字語であり、例えば、将来の製品の物理的な挙動をシミュレートするためのソフトウェアソリューションに関する。CAMとはComputer−Aided Manufacturingの頭字語であり、例えば、製造プロセスおよび動作を定義するためのソフトウェアソリューションに関する。これらのようなコンピュータ支援型設計システムにおいては、グラフィカル・ユーザ・インタフェースが、当該技術の効率性に関して重要な役割を果たす。これらの技術は、PLM(Product Lifecycle Management)システムに組み込まれることもある。PLMとは、拡張された企業の概念を越えて、企業が、概念段階から製品寿命にわたる製品開発のために、製品データを共有し、共通プロセスを適用し、そして企業の共有知を利用することを支援する事業戦略を指す。
【0003】
(CATIA、ENOVIAおよびDELMIAの登録商標の下)ダッソー・システムズが提供するPLMソリューションではエンジニアリングハブ、製造ハブ、およびエンタープライズハブを提供している。エンジニアリングハブは、製品エンジニアリングの知識を系統だてる。製造ハブは、製造エンジニアリングの知識を管理する。エンタープライズハブは、エンジニアリングハブと製造ハブの両方への事業統合および接続を可能とする。それらが一体となって、システムが、製品、プロセス、リソースを結び付けるオープン・オブジェクト・モデルをもたらし、最適化された製品の定義、製造の準備、生産およびサービスを推進する、動的な、知識に基づいた製品の創造および意思決定のサポートを可能とする。
【0004】
CADシステムは、アセンブリの状態から反復的な詳細設計まで概略図を描く、正確な3D機械部品を設計するための、直感的で柔軟なユーザ・インタフェースを提供する。このようなソリューションは、機能に基づいた設計能力と、ブール・アプローチの柔軟性を組み合せる、CATIA Part Design(登録商標)アプリケーションによって提供されており、当該アプリケーションは、ポスト・デザインおよびローカル3Dパラメータ化などの、複数の設計方法論を伴う、高度に生産的で直感的な設計環境を提供する。
【0005】
機械部品の設計のプロセスの間、設計者は幾つかの同一のフィーチャ(feature)を既存のものから作成し、同時にそれらを部品に配置する必要があるかもしれない。この目的のため、設計者は一般に、設計者が選択した部品の場所で、元のフィーチャを複製可能なパターンを使用する。一般的なパターンは、長方形パターンおよび円形パターンである。設計者はまた、設計者の手によって作成される特定のパターン(ユーザパターンとも記す)を必要とすることもある。例えば、設計者は、元のフィーチャが複製される1組の点を選択する。
【0006】
オブジェクトの円形ジグザグ・パターンを作成するには、図2から図4に示されるように、幾つかのステップを実行する必要がある。まず、設計者は、参照オブジェクトおよび複製の参照オブジェクトを備える初期部品を作成する。例えば、図2で、円形パッド200は、参照オブジェクトである第1の穴202と、複製の参照オブジェクト204である第2の穴とを含む。複製の参照オブジェクトは、参照オブジェクトから角度シフトθを有するパッドに置かれ、参照オブジェクトとパッドの中心0との間の距離d1より大きい、パッドの中心0から距離d2に置かれる。次に、図3に示されるように、設計者が円形パターンに従って、参照フィーチャを複製することによって第1のパターンを作成する。次に、設計者は円形パターンに従って複製参照フィーチャを複製するための第2のパターンを生成する。最後に、図4に示されるように、第1のパターンと第2のパターンとを組合せるか、またはマージして、必要なジグザグ・パターンを得る。
【0007】
オブジェクトのジグザグ・パターンの作成を、ユーザパターンを用いて実行することもできる。これは、複製参照フィーチャの各位置を表すポイントのスケッチを作成し、参照フィーチャを選択することによってパターンを作成し、ポイントのスケッチを複製することから構成される。ここでも、幾つかのステップが必要である。
【0008】
同様に、パターンを修正するには、設計者が幾つかのステップを実行する必要がある。例えば、図4に示されるもののように、オブジェクトの円形ジグザグ・パターンから開始して、設計者は、複製参照フィーチャの角度シフト(図2の複製参照フィーチャ204など)を、参照フィーチャ(図2の参照フィーチャ200など)との関係において修正しなければならない。次に、設計者は、第1のパターンと第2のパターンとを編集して、参照フィーチャのインスタンスの数を減らさなければならない。最後に、修正された部品が得られる。
【0009】
オブジェクトの円形ジグザグ・パターンの生成と修正とには、このように、設計者が幾つかのステップを実行する必要がある。これには、ジオメトリを作成するための追加動作(例えば、角度シフトの生成、2つのパターンの生成、またはスケッチの生成)が必要であり、これは面倒な作業であり、時間も浪費する作業でもある。
【0010】
この状況では、コンピュータ支援型設計システムにおける、オブジェクトの円形ジグザグ・パターンを設計するための改善された方法に対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0011】
本発明の実行形態によれば、コンピュータ支援型設計システムにおけるオブジェクトのジグザグ・パターンを設計するためのコンピュータ実装方法を提供する。当該方法は、2つまたは複数の同心円の原点である回転軸を提供するステップと、マルチインスタンス化する参照オブジェクトを提供するステップと、各同心円上の参照オブジェクトからインスタンス化するオブジェクトの数を定義するステップと、角度シフトを定義するステップと、各同心円上の参照オブジェクトからオブジェクトの数をインスタンス化するステップであって、インスタンス化されたオブジェクトが、所与の同心円上の2つの連続するインスタンス化されたオブジェクトの間の角度変位に従って離間するステップと、2つの同心円ごとの1つの同心円において、インスタンス化されたオブジェクトを角度シフトに従ってシフトするステップとを含むことを特徴とする。当該方法は、以下のうち1つまたは複数を含んでもよい。
【0012】
同心円の数を定義するステップと、
2つの連続する同心円の間の間隔を定義するステップと、
2つまたは複数の同心円は同一平面に位置し、
第1のインスタンス化されたオブジェクトを2つまたは複数の同心円のうち1つに配置するステップと、
回転軸から第1のインスタンス化されたオブジェクトへ通る放射軸を計算するステップと、
残りのオブジェクトを各同心円上にインスタンス化するステップであって、残りのインスタンス化されたオブジェクトが、放射軸から測定された角度変位に従って離間するステップと、
2つの同心円ごとの1つの同心円において、インスタンス化されたオブジェクトを角度シフトに従ってシフトするステップは、第1のインスタンス化されたオブジェクトを備える円に対しては実行されず、
第1のインスタンス化されたオブジェクトは、最小半径を有する同心円上に配置される、
角度シフトに対向する第2の角度シフトに従って、以前にシフトしたインスタンス化されたオブジェクトをシフトするステップをさらに含み、
ユーザの動作により、2つの連続するインスタンス化されたオブジェクトの間の角度変位を、所与の同心円に定義するステップと、
シフトするステップの前に、2つまたは複数の同心円を表示するステップ。
【0013】
本発明はさらに、コンピュータによる実行のための命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令は上記のコンピュータ実装方法のステップを実行するための手段を提供する。
【0014】
本発明はさらに、上記のコンピュータプログラムを格納したコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0015】
本発明はさらに、マルチインスタンス化される参照オブジェクトを格納するためのストレージシステムと、上記のコンピュータ実装方法のステップを実行するための演算装置とを備えるシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
次に、本発明の実施形態を、非限定的な例として添付図面を参照して説明する。
図1】実施形態におけるフローチャートの一例を示す図である。
図2】従来技術におけるオブジェクトの円形ジグザグ・パターンを生成する例を示す図である。
図3】従来技術におけるオブジェクトの円形ジグザグ・パターンを生成する例を示す図である。
図4】従来技術におけるオブジェクトの円形ジグザグ・パターンを生成する例を示す図である。
図5】実施形態におけるオブジェクトのジグザグ・パターンの構成を作成する一例を示す図である。
図6】実施形態におけるオブジェクトのジグザグ・パターンを構成しかつ/または作成するためのツールの例を示す図である。
図7】実施形態における作成したオブジェクトのパターンの例を示す図である。
図8】実施形態における作成したオブジェクトのパターンの例を示す図である。
図9】実施形態におけるグラフィカル・ユーザ・インタフェースの一例を示す図である。
図10】実施形態におけるクライアントコンピュータシステムの1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
コンピュータ支援型設計(CAD)システムにおいて、オブジェクトのジグザグ・パターンを設計するための、コンピュータ実装方法を提供する。本方法は、2つまたは複数の同心円の原点である回転軸を提供するステップを備える。回転軸とは、オブジェクトがその周りを回転する線を意味する。原点とは、回転軸が円の中心の役割を果たすことを意味する。当該2つまたは複数の円は同心であり、これは、片方が一方の内部で同じ回転軸(中心または原点とも記す)を共有することを意味する。本方法はさらに、マルチインスタンス化すべき参照オブジェクトを提供するステップを備える。当該参照オブジェクトは、3次元(3D)モデル化されたオブジェクトであってもよく、以下では、モデル化されたオブジェクトまたはオブジェクトと区別なく記すこともある。本方法はさらに、各同心円上の参照オブジェクトから、インスタンス化すべきオブジェクトの数を定義するステップを含む。オブジェクトの数を定義するとは、例えば、数の選択がシステムまたはユーザによって実行されることを意味する。本方法はさらに、角度シフトを定義するステップを備える。角度シフトとは、回転軸周りの回転の回転角を意味する。本方法はさらに、参照オブジェクトから幾つかのオブジェクトを各同心円上にインスタンス化するステップであって、当該インスタンス化されたオブジェクトが、所与の同心円上の2つの連続するインスタンス化されたオブジェクトの間の、角度変位に従って離間するステップを備える。オブジェクトのインスタンス化は当業者にとって公知の態様で実行される。当該インスタンス化では、参照オブジェクトの1つの特定の変形を定義することによって、インスタンスを作成する。典型的には、参照オブジェクトは、モデル化されたオブジェクトを表現するデータを備えるファイルであり、インスタンス化された参照オブジェクトとは、例えば、モデル化されたオブジェクトの表現を表示するために、CADシステムが使用することができる実行可能ファイルである。インスタンス化された参照オブジェクトをメモリに格納してもよく、CADシステムがアクセスして使用することができる。インスタンス化された参照オブジェクトは、角度変位に従って離間している。これは、同心円上の2つの連続するオブジェクトが同じ位置に配置されていないことを意味する。本方法はさらに、2つの同心円ごとの1つの同心円において、角度シフトに従ってインスタンス化されたオブジェクトをシフトするステップを備える。インスタンス化されたオブジェクトのシフトとは、それらが第1の位置から第2の位置へ1つの同心円に沿って移動し、参照オブジェクトのインスタンスの間の間隔が保持されていることを意味する。
【0018】
このような方法は、円形パターンからの円形のジグザグ・パターンの生成を改善し、その逆もそうである。円形パターンとは、回転軸の周りにオブジェクトを回転することによって得られるパターンである。当該回転軸は、中心または原点としてもよい。円形のジグザグ・パターンとは、パターンの幾つかのオブジェクトが特定の角度だけずれている円形パターン構成である。本発明によると、設計者が円形のジグザグ・パターンを生成するために、パターンを構築し組み立てる必要がないので、円形のジグザグ・パターンの生成が改善される。ユーザとCADシステムとの間の対話の数は、背景技術と比較して減少する。例えば、先行技術のように、2つのパターンを生成する必要はない。その結果、本方法では、オブジェクトの円形ジグザグ・パターンを生成するのに必要な時間が減少する。さらに、CADシステムが実行する動作が少ないので、CADシステムのメモリまたは中央演算装置(CPU)のようなリソースはあまり必要としない。さらに、本方法により、複製すべき参照オブジェクトの使用が、インスタンス化されたオブジェクトにより継承されるので、複製されるオブジェクトの仕様を維持することが可能である。例えば、支持体(例えば、円形パッド)上にある通り穴のインスタンスは、複製される通り穴の支持体が、他の位置では厚くても、通り穴として維持される。
【0019】
本方法はコンピュータ実装型である。これは、本方法のステップ(または実質的に全てのステップ)が、少なくとも1つのコンピュータにより実行されることを意味する。種々の例では、本方法のステップの少なくとも一部のトリガを、ユーザとコンピュータとの対話を通じて実行してもよい。ユーザとコンピュータとの必要な対話のレベルは、将来の自動化のレベルに依存してもよく、ユーザの希望を実現する必要性とバランスを持たせてもよい。種々の例では、このレベルがユーザ定義および/または事前に定義されているものであってもよい。
【0020】
例えば、各同心円上の参照オブジェクトからインスタンス化すべきオブジェクトの数を定義するステップ、所与の同心円上の2つの連続するインスタンス化されたオブジェクトの間の角度変位を定義するステップ、角度シフトを定義するステップを、ユーザの動作で実行してもよい。例えば、ユーザは、オブジェクトの数または角度変位と角度シフトの値をそれぞれ表す情報を入力してもよい。
【0021】
本方法のコンピュータ実装の典型的な例は、本目的に適したグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を備えるCADシステムで本方法を実行することである。GUIは、ストレージシステムと、プロセッサとを接続する。ストレージシステムは、少なくとも1つのオブジェクト(例えば、参照オブジェクト)を格納し、単に、このような記憶処理に適した任意のハードウェアであってもよい。ストレージシステムは、データベースまたはメモリであってもよい。このようなCADシステムにより、オブジェクトのジグザグ・パターンの設計が改善される。即ち、先行技術と比較して、オブジェクトのジグザグ・パターンを設計するのに必要な、時間とハードウェアのリソースは少なくなる。
【0022】
「データベース」とは、検索と取出しのために編成されたデータ(即ち、情報)の任意の集合を意味する。メモリ上に格納されたとき、データベースはコンピュータによる高速な検索と取出しを可能とする。データベースは実際、様々なデータ処理動作と併せて、データの格納、データの取出し、データの修正、およびデータの削除を促進するように構成される。データベースは、その各々が1つまたは複数のフィールドから成るレコードに分解可能なファイルまたは1組のファイルから構成されてもよい。フィールドとは、データストレージの基本単位である。ユーザは、主にクエリを介してデータを取り出すことができる。キーボードを使用してコマンドをソートして、ユーザは、取り出すべき多数のレコードにおけるフィールドを高速に検索し、再配置し、グループ化し、選択することができ、または、使用されているデータベース管理システムの規則に従って、特定のデータ集約に関するレポートを作成することができる。
【0023】
本方法の場合において、データベースはマルチインスタンス化する参照オブジェクトを備える(または格納)することができる。
【0024】
CADシステムのグラフィカル・ユーザ・インタフェースは、ユーザ対話的なグラフィカル・ツールを備えていてもよい。ユーザ対話的なグラフィカル・ツールは、ユーザの動作に応じて、本方法に従ってオブジェクトのジグザグ・パターンの設計の契機となるように適合されている。GUIの一例を、図9を参照して示す。
【0025】
本方法は一般に、モデル化されたオブジェクトを操作する。モデル化されたオブジェクトとは、データベースに格納されたデータによって定義される任意のオブジェクトである。ひいては、「モデル化されたオブジェクト」という表現は、データ自体を示す。システムのタイプに応じて、モデル化されたオブジェクトを様々な種類のデータによって定義してもよい。システムが、実際に、CADシステム、CAEシステム、CAMシステム、および/またはPLMシステムの任意の組合せであってもよい。これらの様々なシステムでは、モデル化されたオブジェクトは、対応するデータによって定義される。それに応じて、CADオブジェクト、PLMオブジェクト、CAEオブジェクト、CAMオブジェクト、CADデータ、PLMデータ、CAMデータ、CAEデータについて言及してもよい。しかし、これらのシステムは他方に対して排他的なものではない。なぜならば、モデル化されたオブジェクトを、これらのシステムの任意の組合せに対応するデータよって定義してもよいからである。したがって、以下で提供されるシステムなどの定義から明らかであるように、システムはCADシステムおよびPLMシステムの両方であってもよい。
【0026】
CADシステムとは、CATIAのような、モデル化されたオブジェクトのグラフィカル表現に基づいて、モデル化されたオブジェクトを少なくとも設計するのに適した任意のシステムを意味する。この場合、モデル化されたオブジェクトを定義するデータは、モデル化されたオブジェクトの表現を可能とするデータを備える。CADシステムは例えば、エッジまたは線を用いて、特定の場合においては面や表面と共に、CADモデル化オブジェクトの表現を提供する。線、エッジ、または表面は、例えばNURBS(Non−Uniform Rational B−Splines)のように様々な態様で表現することができる。具体的には、CADファイルは仕様を含み、仕様からジオメトリを生成することができ、ジオメトリによって順番に表現を生成することができる。モデル化されたオブジェクトの仕様を、単一のCADファイルまたは複数のCADファイルに格納してもよい。CADシステムにおけるモデル化されたオブジェクトを表すファイルの典型的なサイズは、1部品あたり1メガバイトの範囲である。モデル化されたオブジェクトは一般に、無数の部品の集合でありうる。
【0027】
CADの背景において、モデル化されたオブジェクトは一般に、例えば、部品、部品のアセンブリ、または場合によっては製品のアセンブリなどの製品を表す、3Dモデル化されたオブジェクトであってもよい。「3Dモデル化されたオブジェクト」とは、その3D表現を可能とするデータによりモデル化される任意のオブジェクトを意味する。3D表現は、全ての角度から部品を参照することを可能とする。例えば、3Dモデル化されたオブジェクトは、3Dで表現されると、任意の軸の周りで、または当該表現を表示する画面内の任意の軸の周りで処理し回転することができる。これには、3Dモデル化されない2次元のアイコンは除かれている。3D表現の表示により、設計を促進する(即ち、統計的に、設計者がその作業を実行する速度が高まる)。これにより、業界における製造プロセスがスピードアップされる。なぜならば、製品の設計は製造プロセスの一部だからである。
【0028】
CADシステムは、ヒストリベースであってもよい。この場合、モデル化されたオブジェクトはさらに、ジオメトリ機能のヒストリを備えるデータによって定義される。モデル化されたオブジェクトを、標準的なモデル化機能(例えば、押出し、回転、切取り、および/または丸め等)および/または標準的なサーフェス機能(例えば、スイープ、ブレンド、ロフト、埋込み、変形、スムージング等)を用いて、物理的な人(即ち、設計者/ユーザ)により設計してもよい。このようなモデル化機能をサポートする多くのCADシステムは、ヒストリベースのシステムである。これは、設計機能の作成ヒストリが一般に、入力および出力のリンクを介して当該ジオメトリ機能をリンクする非循環的なデータフローを通じて保存されることを意味する。ヒストリベースのモデル化のパラダイムは、80年代初頭から広く知られている。モデル化されたオブジェクトは、2つの一貫したデータ表現によって記述される。即ち、ヒストリおよびB−rep(即ち、境界表現)によって記述される。B−repとは、ヒストリで定義された計算の結果である。モデル化されたオブジェクトを表現するときに、コンピュータの画面に表示される部品の形状はB−rep(のテッセレーション)である。部品のヒストリとは、設計の意図である。基本的に、ヒストリは、モデル化されたオブジェクトが受けた動作の情報を収集する。B−repをヒストリとともに保存して、複雑な部品の表示を容易にしてもよい。ヒストリをB−repとともに保存して、設計の意図に従って部品の設計変更を可能としてもよい。
【0029】
PLMシステムとは、物理的に製造された製品を表すモデル化されたオブジェクトの管理に適した任意のシステムを意味する。PLMシステムにおいては、モデル化されたオブジェクトはこのように、物理オブジェクトの製造に適したデータによって定義される。これらは一般に、次元値および/または許容値であってもよい。オブジェクトを正確に製造するために、かかる値を有するのが良い。
【0030】
CAEシステムとは、モデル化されたオブジェクトの物理的な挙動の分析に適した任意のシステムを意味する。CAEシステムにおいては、モデル化されたオブジェクトは、このような挙動の分析に適したデータによって定義される。これは一般に、挙動の機能セットであってもよい。例えば、ドアに対応するモデル化されたオブジェクトを、ドアが軸の周りで回転することを示すデータによって定義してもよい。
【0031】
図9は、システムのGUIの一例であり、システムはCADシステムである。
【0032】
GUI2100は、典型的なCAD風のインタフェースであってもよく、標準的なメニューバー2110、2120、および下方および側面のツールバー2140、2150を有する。このようなメニューバーおよびツールバーは、ユーザ選択可能なアイコンセットを含み、各アイコンは当該技術分野において公知なように、1つまたは複数の動作または機能と関連づけられている。これらのアイコンの一部は、ソフトウェアツールに関連付けられ、GUI2100に表示される3Dモデル化されたオブジェクト2000の編集および/またはオブジェクト2000での作業に適合されている。ソフトウェアツールをワークベンチにグループ化してもよい。各ワークベンチはソフトウェアツールのサブセットを含む。特に、ワークベンチのうち1つは編集ワークベンチであり、モデル化された製品2000のジオメトリ機能の編集に適している。操作において、設計者は例えばオブジェクト2000の一部を事前に選択し、次いで操作(例えば、次元、色を変更する等)を開始し、適切なアイコンを選択することによってジオメトリ制限を編集してもよい。例えば、典型的なCAD操作は、画面に表示された3Dモデル化されたオブジェクトのパンチまたは折畳みのモデル化である。
【0033】
GUIは、例えば、表示された製品2000に関連するデータ2500を表示してもよい。図9の例では、データ2500は、機能ツリーとして表示され、それら3D表現2000は、ブレーキ・キャリパおよびディスクを含むブレーキ・アセンブリに関する。GUIはさらに、例えば、オブジェクトの3D配置を促進し、編集された製品の動作のシミュレーションの契機となるための、様々な種類のグラフィックツール2130、2070、2080を示してもよく、または、表示された製品2000の様々な属性を表示してもよい。カーソル2060を、ハプティック装置により制御して、ユーザがグラフィックツールと対話できるようにしてもよい。
【0034】
図10は、クライアントコンピュータシステム、例えば、ユーザのワークステーションを示す。クライアントコンピュータは、バス1000に接続されたCPU(Central Processing Unit)、バス1000に接続されたRAM(Random Access Memory)1070を備える。クライアントコンピュータにはさらに、バス1000に接続されたビデオ・ランダム・アクセス・メモリ(Video RAM)1100と関連付けられている、GPU(Graphical Processing Unit)1110が設けられている。ビデオRAM1100は、当該技術分野においてフレーム・バッファとしても知られている。大容量記憶装置コントローラ1020は、ハードドライブ1030のような大容量メモリ装置へのアクセスを管理する。コンピュータプログラム命令とデータを有形的に具体化するのに適した大容量メモリ装置には、あらゆる形態の不揮発性メモリが含まれ、例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュ・メモリ装置のような半導体メモリ装置、内部ハード・ディスクおよび取外し可能ディスクのような磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROMディスク1040が含まれる。上記任意のメモリ装置を、特別に設計されたASIC(Application−Specific Integrated Circuit)により補完するか、またはASICに組み込んでもよい。ネットワークアダプタ1050は、ネットワーク1060へのアクセスを管理する。クライアントコンピュータはまた、カーソル制御装置、キーボード等のようなハプティック装置1090を備えてもよい。カーソル制御装置は、図9を参照して述べたように、ユーザがカーソルをディスプレイ1080上の任意の所望の位置に選択的に配置できるようにするために、クライアントコンピュータにおいて使用される。さらに、カーソル制御装置により、ユーザは様々なコマンド、および入力制御信号を選択することができる。カーソル制御装置は、制御信号をシステムに入力するための幾つかの信号生成装置を備える。一般的に、カーソル制御装置は、マウスであってもよく、信号を生成するために使用されているマウスのボタンであってもよい。
【0035】
コンピュータプログラムは、コンピュータによる命令を含んでもよく、命令は、上記のシステムが上記の方法を実行できるようにするための手段を含む。本発明を例えば、デジタル電子回路、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せで実現してもよい。本発明の装置を、プログラム可能プロセッサで実行するための機械可読記憶装置で有形に具体化されたコンピュータプログラム製品で実装してもよく、本発明の方法のステップを、入力データで動作し出力を生成することによって本発明の機能を実行するための命令から成るプログラムを実行する、プログラム可能プロセッサにより実行してもよい。
【0036】
本発明を、データストレージシステム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置に対してデータおよび命令を送受信するように接続された少なくとも1つのプログラム可能プロセッサを含むプログラム可能システムで実行可能な、1つまたは複数のコンピュータプログラムで好適に実装することができる。アプリケーションプログラムを、高レベルの手続きプログラミング言語もしくはオブジェクト指向プログラミング言語、または必要ならばアセンブリ言語もしくは機械語で実装してもよく、何れの場合でも、言語はコンパイル型言語またはインタプリタ言語であってもよい。
【0037】
次に、本方法の一例を示す図1のフローチャートを説明する。
【0038】
ステップ100で、回転軸が提供される。これは、CADシステムが回転軸に対して動作を実行することができるように、CADシステムが回転軸を利用可能であることを意味する。回転軸は、ユーザの動作に応じて提供される。例えば、ユーザが、図9に示されるGUIの専用ツールを用いて回転軸の選択を実行してもよい。ユーザはまた、システムによって回転軸として認識される3Dシーン内の軸を描いてもよい。あるいはまた、CADシステムによって、自動的に軸が選択され、提供されてもよい。回転軸を、例えば図9に示されるGUIで、ユーザに対して表示してもよい。
【0039】
回転軸は2つまたは複数の同心円の原点である。回転軸とは、その周囲を1つまたは複数のオブジェクトが回転する線を意味する。回転軸は、2つまたは複数の同心円に対する原点(中心とも記す)を提供する。同心円は、一方が他方の内部にあり、同一の原点を共有する。2つまたは複数の同心円は、CADシステムによって自動的に提供されてもよい(ステップ102)。例えば、同心円は、回転軸の提供に付随して提供されてもよい。あるいはまた、2つまたは複数の同心円は、ユーザの動作に応じて提供されてもよい。2つまたは複数の同心円を提供することは、それらがCADシステムに対して利用可能であること、CADシステムが同心円に対して動作を実行できることを含む。2つまたは複数の同心円は、GUI上でユーザに表示されてもよく、回転軸とともに表示されることが望ましい。
【0040】
次に、図5を参照すると、4つの同心円508a、508b、508c、および508dの原点である回転軸506が示されている。提供される軸および/または同心円をGUI上に表示することは、必須ではないことは理解されよう。
【0041】
再び図1を参照すると、ステップ104で、マルチインスタンス化すべき参照オブジェクトが提供されるが、これはこの時点でCADシステムが参照オブジェクトを利用可能であることを含む。例えば、CADシステムが、参照オブジェクトをインスタンス化し、インスタンス化された参照オブジェクトをメモリに格納することができる。このステップで、参照オブジェクトが選択され、参照オブジェクトに対して動作を実行可能なCADシステムに転送される。参照オブジェクトの選択は、当該技術分野で公知なように実行することができる。例えば、参照オブジェクトの選択を、図9のツリー構造2500のようなツリー構造を用いて行われてもよい。ユーザが、別の種類のユーザ・インタフェースによって参照オブジェクトを選択することも可能であり、例えば、参照オブジェクトに関する識別情報を入力すること、リスト内の参照オブジェクトを選択すること等により、参照オブジェクトを選択することも可能である。参照オブジェクトを、コンボボックス、アイコン、特殊コマンド等のような任意の種類のユーザ・インタフェースにより選択してもよい。
【0042】
次に、ステップ106で、各同心円上で参照オブジェクトからインスタンス化すべきオブジェクトの数が定義される。従って、数は、どれだけ多くのオブジェクトが各同心円でインスタンス化されるかを定義する。この数は、ユーザの操作に応じて、例えば数値を入力することにより定義してもよい。あるいはまた、参照オブジェクトのインスタンスの数を、計算すべきインスタンスの数のデフォルト値を提供するシステムにより定義してもよい。したがって、このステップ106から、2つまたは複数の同心円は、参照オブジェクトからインスタンス化されるオブジェクトと同じ数を有することとなる。
【0043】
次に、ステップ108で、所与の同心円上の2つの連続するインスタンス化されたオブジェクトの間の角度変位が定義される。角度変位は、円の原点と、参照オブジェクトでありうるインスタンス化されたオブジェクトの位置とに関して決定される。角度変位は図5に図示される。即ち、円508上に位置する2つの連続するインスタンス化されたオブジェクト514、516の間の角度変位510である。連続的という用語は、円を所与の方向に辿るときに、インスタンス化されたオブジェクトが互いに順番となることを意味することは理解されよう。連続的という用語は、継続的という用語と同義である。
【0044】
実際、角度変位は、各同心円上でインスタンス化されるオブジェクトの数に従って計算される。即ち、各同心円上でインスタンス化される全てのオブジェクトが、一旦それらが同心円上でインスタンス化されると、角度変位は、互いから等距離であるように計算される。この場合、偏差角の角度は、360度の角度と各円上でインスタンス化されたオブジェクトの数との比である。したがって、当該比を計算する際に、角度変位をCADシステムにより自動的に定義することができる。
【0045】
あるいはまた、角度変位をユーザの動作に応じて定義してもよい。例えば、ユーザは、オブジェクトの数または角度変位と角度シフトの値をそれぞれ表す情報を入力してもよい。この場合、同心円上でインスタンス化されるオブジェクトは、必ずしも互いから等距離ではない。
【0046】
次に、ステップ110で角度シフトを定義する。角度シフトは、所与の同心円の回転軸に関して回転を実行するための回転角である。これは、要するに、角度シフトが、同心円上のインスタンス化されたオブジェクトの回転軸に関する回転を実行するための回転角であるということである。角度シフトは、ユーザの動作、例えばユーザが数値を入力したことに応じて定義してもよく、システム、例えばデフォルトの数値により定義してもよい。
【0047】
次に、ステップ112で、円形ジグザグ・パターンの定義を特定するための1つまたは複数の値を定義してもよい(ステップ114,116)。これらの値を、ユーザの動作、例えばユーザが数値を入力したことに応じて定義してもよく、システム、例えばデフォルトの数値により定義してもよい。
【0048】
回転軸を原点として有する同心円の数をステップ114で定義してもよい。同心円の最小数は2である。同心円の最大数は限定されないが、または、例えばコンピュータ・リソースを考慮して限定されてもよい。
【0049】
2つの連続する同心円の間の間隔をステップ116で定義してもよい。これは、要するに、2つの連続する同心円の間の距離を定義してもよいとういことである。2つの連続する同心円の間の距離とは、2つの連続する同心円の各々の半径の差異の寸法である。2つの同心円は連続的であり、これは、他のどの同心円も2つの連続する同心円の間には配置されないことを意味する。間隔は、以下に限定されるものではないが、2つの連続する同心円の間のユークリッド距離、画素数により測定してもよい。
【0050】
実際、2つまたは複数の同心円を同一平面に配置してもよい。例えば、図5を参照すると、4つの円508a、508b、508c、および508dは、円形パッド500の面の1つに配置されている。同心円が配置される平面が、回転軸506と直角であってもよい。この構成では、2つの同心円は、他のどの同心円も、当該2つの同心円の各値の間にある値の半径を有さないときに、連続的である。
【0051】
ステップ100乃至ステップ116を、本方法の構成ステップとして考えてもよい。構成とは、本方法を実行するためのオブジェクトやパラメータを意味する。ユーザの動作に応じて、専用ツールをステップ100乃至ステップ116の一部または全部の実行に使用してもよい。
【0052】
次に、図6を参照すると、オブジェクトの円形ジグザグ・パターンを構成および/または作成するためのツール600が示される。ツール600は、GUI、例えば図9のGUI2100に表示できるユーザ対話型のグラフィカル・ツールであってもよい。ツール600は、本発明の方法に従ってオブジェクトの円形ジグザグ・パターンの作成を構成するように適合される。ツール600は、本方法により作成すべきまたは作成される円形ジグザグ・パターンに対する情報を表示および/または入力および/または選択するための、幾つかのフィールドを提供する。これらの1つであるフィールド610によって、ユーザは提供する参照オブジェクトを選択することができる。ユーザ(例えば、設計者)はまた、円の情報を入力するためにフィールドが設けられたタブ620を選択することもできる。即ち、ユーザは、各円上のインスタンス622の数、円上の各2つの連続するインスタンスの間の角度変位624の値などを定義することができる。ユーザはさらに、2つまたは複数の円の、相互の編成に関する情報を入力するためのフィールド(図6において図示されていない)が提供される、タブ640を選択することができる。即ち、ユーザは、2つの連続する同心円の間の間隔、3D空間における位置および/または方位のような回転軸のパラメータを定義することができる。ツール600はさらに、角度シフトの値を定義するためのフィールド630を提供してもよい。角度変位および角度シフトの値は、度、ラジアン、または他の任意の単位の数値であってもよい。ツールは、さらに、オブジェクトのジグザグ・パターンの作成の契機となるグラフィカル手段を提供することができる。例えば、後述するように、フィールド630で定義した角度シフトに従って、2つの同心円ごとに1つの同心円においてインスタンス化されたオブジェクトのシフトが実行されるようにチェックボックス650を選択してもよい。
【0053】
再び図1のフローチャートを参照して、ステップ118からステップ126を説明する。
【0054】
ステップ118で、第1のインスタンス化されたオブジェクトを2つまたは複数の同心円の1つに配置する。これは、要するに、第1のインスタンス化されたオブジェクトが同心円に配置されるということである。第1のインスタンス化されたオブジェクトは、インスタンス化されるオブジェクトの1つである。第1のインスタンス化されたオブジェクトという表現における、「第1の」という用語は、参照オブジェクトからインスタンス化される幾つかのオブジェクトのうち、特定のインスタンス化されたオブジェクトを指定することを意図しているにすぎないことは理解されよう。
【0055】
次に、ステップ120で、回転軸から第1の参照オブジェクトへ通る放射軸を計算する。例えば、図5で、インスタンス化されたオブジェクト514は、第1のインスタンス化されたオブジェクトであり、計算された放射軸518は回転軸から引き出され、参照オブジェクト514を通る。ステップ120の結果として、1組の交点を2つまたは複数の同心円と放射軸の間で定義することができ、各円上の各交点は参照オブジェクトのインスタンスに対する位置を定義する。したがって、第1のインスタンス化されたオブジェクトを通るとは要するに、放射軸が、第1のインスタンス化されたオブジェクトが配置される円と交差するということである。2つまたは複数の同心円を同一平面に配置してもよく、従って、放射軸は各同心円と交差し、同心円と同じだけの交点を定義する。これは例えば、1つの同一面に位置する4つの円との4つの交点(図示せず)を定義する放射軸518を示す図7に示されており、参照オブジェクトの4つのインスタンスが、4つの定義された交点に配置されている。
【0056】
第1のインスタンス化されたオブジェクトを2つまたは複数の同心円のうちいずれに配置してもよい。実際、第1のインスタンス化されたオブジェクトが最小半径を有する同心円に配置される。これは、ステップ126で実行されるシフト上での円の決定を容易にするのに寄与する。
【0057】
次に、ステップ122で、インスタンス化すべき幾つかのオブジェクトが各同心円上の参照オブジェクトからインスタンス化される。インスタンス化されたオブジェクトは、所与の同心円上の2つの連続するインスタンス化されたオブジェクト間の角度変位に従って離間する。前述の通り、角度変位は、各円上の幾つかのインスタンス化されたオブジェクトに従って、またはユーザの動作に応じて計算されてもよい。例えば、図5で、各同心円上のインスタンス化されたオブジェクトの数は6である。円に配置すべきインスタンス化されたオブジェクトが、等距離であるように角度変位を計算してもよい。これは、2つの連続的なインスタンス化されたオブジェクトの間の角度が360°/6=60°であることを意味する。
【0058】
インスタンス化されたオブジェクトには、それらの各同心円が関連付けられる。この関連付けには、インスタンス化されたオブジェクトが、それらの各同心円上に配置されることを含む。この配置は、2つまたは複数のオブジェクトが、同心円に配置されることを意味する。この配置は、当該技術分野において公知な方法で実行してもよい。即ち、同心円の参照におけるインスタンス化されたオブジェクトの位置を使用することができる。インスタンス化されたオブジェクトの位置は、同心円上の任意の点であってもよい。円上のインスタンス化されたオブジェクトの位置を、参照オブジェクトの位置、回転軸、および角度変位に基づいて決定してもよい。
【0059】
角度変位は、一般的に、ステップ120で計算される放射軸から測定される。放射軸はしたがって、各円上の角度を測定するための印の役割を果たすことができる。実際、前述のように、放射軸が各同心円上の1つの交点を定義してもよく、図7に示される通り、各交点は、参照オブジェクトの1つのインスタンスに対する位置に対応する。この場合、残りのオブジェクトがインスタンス化され、各同心円に配置され、放射軸から測定された2つの連続するインスタンス化されたオブジェクトの間の角度変位に従って離間する。「残りの」という用語は、インスタンス化すべき数のオブジェクトから第1のインスタンス化されたオブジェクトを差し引いたオブジェクトの数を指す。
【0060】
本プロセスのこのステップで、オブジェクトの円形パターンを取得し、当該オブジェクトをステップ124で表示してもよい。これは例えば、オブジェクトの正常な円形パターンを示す図7に示されている。インスタンス化されたオブジェクトは、軸(例えば、放射軸518)について整列され、各円上において等距離で離間している。インスタンス化されたオブジェクトが表示されたとき、または、インスタンス化されたオブジェクトが表示される前であっても、2つまたは複数の同心円を表示してもよい。
【0061】
次に、ステップ126で、2つの同心円ごとに1つの同心円において、インスタンス化されたオブジェクトを、角度シフトに従ってシフトする。「シフト」とは、(2つの同心円ごとに1つの同心円において)インスタンス化されたオブジェクトを、その各円に沿って第1の位置から第2の位置へ移動することを意味し、第2の位置は、角度シフトに従って決定される。シフトは、2つの同心円ごとに1つの同心円において実行される。これは、直径dの円に対してシフトが実行される場合には、直径d(d>d)の前の円に対して、および直径d(d>d)の次の円に対してシフトが実行されず、直径d(d>d)の円に対してシフトが実行されることを意味する。実際に、階数2n+1の全ての円に対してシフトが実行され、階数2nの全ての円に対してシフトが実行されない。このときnは自然数である。シフトが実行される階数に関するこれらの選択は、任意の選択にすぎないことは理解されよう。
【0062】
角度シフトは、インスタンス化するステップでの角度変位と同様に決定してもよい。
【0063】
回転軸からシフトが実行されない円上に配置されたオブジェクトを通る第2の放射軸を計算してもよい。例えば、図5で、同心円508上のインスタンス化されたオブジェクト502を通る、計算された第2の放射軸522が描かれている。次に、第2の放射軸からの角度シフトを測定する。第2の放射軸はこのように、各円上の角度を測定するための印の役割を果たすことができる。さらに図5を参照すると、角度シフト512および、同心円508b、508d上でシフトが実行される、インスタンス化されたオブジェクトがシフトされていることが示されている。
【0064】
一般的に、放射軸と第2の放射軸は同一であってもよい。これは、計算された第2の放射軸が通るオブジェクトが第1のインスタンス化されたオブジェクトであり、2つの同心円ごとに1つの同心円においてインスタンス化されたオブジェクトを角度シフトに従ってシフトするステップは、第1のインスタンス化されたオブジェクトが配置される円に対して実行されないことを含む。これにより、1つの放射軸のみを計算すればよいので、計算リソースの消費を削減することができる。
【0065】
図8において、図7に示す円形パターンから得られるオブジェクトの円形ジグザグ・パターンの表現が示されている。このシフトは、計算された放射軸518が通る第1のインスタンス化されたオブジェクト514を用いて決定した角度シフトに従って実行され、第1のインスタンス化されたオブジェクト514は、4つの同心円のうち半径が最小の同心円に配置されている。
【0066】
興味深いことに、2つの同心円ごとに1つの同心円において、角度シフトに従ってインスタンス化されたオブジェクトをシフトする1つまたは複数の補完的なステップを実行することができる。例えば、補完的なシフトは、インスタンス化されたオブジェクトをシフトするのに過去に使用した角度シフトと対向する第2のシフトに従って実行されてもよい。これにより、以前のシフトと反対のシフトを容易に実行して、インスタンス化されたオブジェクトの以前の構成に戻すことができる。例えば、ユーザは、図8の円形ジグザグ・パターンから図7のジグザグ・パターンを再び得ることができる。したがって、第2の角度シフトは、参照オブジェクトを維持しつつ、ジグザグから初期円形パターンに移ることができる。
【0067】
本発明の好適な実行形態を説明した。本発明の趣旨と技術的思想の範囲から逸脱しない、様々な修正を行い得ることは理解されよう。したがって、他の実行形態は、特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10