(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板を前記第2面からエッチングし、前記第3陥没部の周囲に、前記第2面から前記第1面に向けて陥没したトレンチを形成する段階をさらに具備することを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載のインクジェット・プリンティング装置のノズル形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、均一な微細液滴を吐出することができるインクジェット・プリンティング装置及びそのノズル形成方法を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題はまた、出口の形状と直径とが均一なノズルを具備するインクジェット・プリンティング装置及びそのノズル形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の一側面によるインクジェット・プリンティング装置は、ノズルと、インクを前記ノズルを介して吐出するための駆動力を提供するアクチュエータと、を含み、前記ノズルは、テーパ形状の第1ノズル部と、前記第1ノズル部から延長された第2ノズル部と、前記第2ノズル部から延長されたテーパ状の第3ノズル部と、を含む。
【0008】
前記第2ノズル部は、前記ノズルの延長方向に対して、鋭角にテーパ状でもある。
【0009】
前記第2ノズル部のテーパ角度は、前記第1ノズル部と前記第3ノズル部とのテーパ角度より小さくもある。
【0010】
前記第1ノズル部と前記第3ノズル部とのテーパ角度は、同一でもある。
【0011】
前記装置は、前記ノズルの周囲に位置するトレンチをさらに含んでもよい。
【0012】
前記トレンチは、前記ノズルの周囲に全体的に形成されてもよい。
【0013】
前記トレンチは、前記ノズルの一方向の両側部に、前記一方向と直交する方向に延設されてもよい。
【0014】
前記ノズルの出口は、前記トレンチの内部に延長されてもよい。
【0015】
前記ノズルは、多角錐状でもある。
【0016】
前記ノズルは、単結晶シリコン基板に形成されてもよい。
【0017】
前記ノズルは、四角錐状でもある。
【0018】
前記装置は、圧力チャンバをさらに含み、前記アクチュエータは、前記圧力チャンバ内のインクに、吐出のための圧力変化を提供する圧電アクチェエータを含んでもよい。
【0019】
前記アクチュエータは、前記ノズル内のインクに、静電駆動力を提供する静電アクチュエータを含んでもよい。
【0020】
前記課題を解決するために、本発明の他の側面によるインクジェット・プリンティング装置のノズル形成方法は、基板を第1面からエッチングし、テーパ状の第1陥没部を形成する段階と、前記基板の前記第1面の反対面である第2面からエッチングし、前記第1陥没部の頂点と連通された貫通部を形成する段階と、前記第1陥没部と前記貫通部とをエッチングし、前記第1陥没部と前記貫通部との境界に、前記第1陥没部と異なるテーパ角度を有した第2陥没部を形成し、前記貫通部に、前記第2陥没部と異なるテーパ角度を有した第3陥没部を形成する段階と、を含む。
【0021】
前記第1陥没部、前記第2陥没部及び第3陥没部は、湿式エッチング工程によって形成することができる。
【0022】
前記貫通部は、乾式エッチング工程によって形成することができる。
【0023】
前記第2陥没部のテーパ角度は、前記第1陥没部、第3陥没部のテーパ角度より小さくもある。
【0024】
前記第1陥没部と前記第3陥没部とのテーパ角度は、同一でもある。
【0025】
前記方法は、前記基板を第2面からエッチングし、前記第3陥没部の周囲に、前記第2面から前記第1面に向けて陥没されたトレンチを形成する段階をさらに具備することができる。
【0026】
前記トレンチは、前記ノズルの周囲に全体的に形成されてもよい。
【0027】
前記トレンチは、前記ノズルの一方向の両側部に、前記一方向と直交する方向に延設されてもよい。
【0028】
前記トレンチを形成する段階は、湿式エッチング工程によって遂行されてもよい。
【0029】
前記トレンチを形成する段階を遂行する前に、前記第1陥没部、第2陥没部、第3陥没部に保護層を形成する段階をさらに具備することができる。
【0030】
前記基板は、単結晶基板でもある。
【0031】
前記基板は、単結晶シリコン基板でもある。
【0032】
前記湿式エッチング工程は、異方性湿式エッチング工程でもある。
【0033】
前記第1陥没部、第2陥没部及び第3陥没部は、全体的に四角錐状でもある。
【0034】
前記方法は、前記貫通部を形成する前に、前記基板を前記第2面から研磨し、前記基板の厚みを薄くする段階をさらに具備することができる。
【発明の効果】
【0035】
ノズルが、第1ノズル部、第2ノズル部及び第3ノズル部によって形成される。かような構成によれば、第1ノズル部、第2ノズル部及び第3ノズル部が、個別的な工程によって形成されるので、個別工程でのエッチング時間を短縮させることができる。従って、基板の結晶欠陥、気泡などによる影響を少なく受ける。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】インクジェット・プリンティング装置の一実施形態を概略的に図示した断面図である。
【
図2】インクジェット・プリンティング装置の他の実施形態を概略的に図示した断面図である。
【
図3】インクジェット・プリンティング装置のさらに他の実施形態を概略的に図示した断面図である。
【
図4B】ノズルのテーパ部と貫通部とに整列誤差が生じた状態を示す断面図である。
【
図4C】
図4Aに図示されたノズルによって、整列誤差によるノズルの非対称性が緩和された状態を示す断面図である。
【
図5A】トレンチを具備するインクジェット・プリンティング装置の一実施形態を図示した部分断面図である。
【
図5B】ノズル出口周辺の等電位線を図示した図面である。
【
図5C】ノズルの周囲にトレンチが形成されたインクジェット・プリンティング装置の一実施形態の斜視図である。
【
図6A】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6B】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6C】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6D】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6E】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6F】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6G】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6H】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6I】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6J】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6K】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6L】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6M】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図6N】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図7A】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図7B】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図7C】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図7D】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図7E】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図7F】ノズルを形成する方法の一実施形態を示す図面である。
【
図8】基板を1回の工程によって貫通してテーパ状の多数のノズルを形成する場合、基板上の1つのチップ(chip)に形成された多数のノズルの直径を測定した結果を図示したグラフである。
【
図9】一実施形態によるノズル形成方法によって、基板の1つのチップに形成された多数のノズルの直径を測定した結果を図示したグラフである。
【
図10】基板を1回の工程によって貫通してテーパ状の多数のノズルを形成する場合、基板上のチップの位置によるノズルの直径を測定した結果を図示したグラフである。
【
図11】一実施形態によるノズル形成方法によって、基板上のチップの位置によるノズルの直径を測定した結果を図示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付された図面を参照し、インクジェット・プリンティング装置及びノズル形成方法の実施形態について詳細に説明する。図面で、同一の参照符号は、同一の構成要素を指し、図面上で、各構成要素の大きさや厚みは、説明の明瞭性のために誇張されてもいる。
【0038】
図1は、インクジェット・プリンティング装置の一実施形態の構成図である。
図1を参照すれば、流路プレート110と、インク吐出のための駆動力を提供するアクチュエータとが開示されている。本実施形態のアクチュエータは、圧力駆動力を提供する圧電アクチュエータ130を含む。
【0039】
流路プレート110には、インク流路と、インク液滴を吐出させるための複数のノズル200とが形成される。インク流路は、インクが流入されるインク・インレット121と、流入されたインクを収めている複数の圧力チャンバ125とを含んでもよい。インク・インレット121は、流路プレート110の上面側に形成されてもよく、図示されていないインクタンクと連結される。インクタンクから供給されたインクは、インク・インレット121を介して、流路プレート110の内部に流入される。複数の圧力チャンバ125は、流路プレート110の内部に形成され、インク・インレット121を介して流入されたインクが保存される。流路プレート110の内部には、インク・インレット121と、複数の圧力チャンバ125を連結するマニホールド122,123と、リストリクタ124とが形成されてもよい。複数のノズル200は、複数の圧力チャンバ125それぞれに対して、一つずつ対応して連結される。複数の圧力チャンバ125に充填されたインクは、複数のノズル200を介して、液滴の形態に吐出される。複数のノズル200は、流路プレート110の下面側に形成されてもよく、1列または2列以上に配列されてもよい。流路プレート110には、複数の圧力チャンバ125と、複数のノズル200とをそれぞれ連結する複数のダンパ126が設けられてもよい。
【0040】
流路プレート110は、微細加工性が良好な材質の基板、例えば、シリコン基板からなってもよい。例えば、流路プレート110は、インク流路が形成される流路形成基板と、ノズル200が形成されるノズル基板111と、を含んでもよい。流路形成基板は、第1流路基板113及び第2流路形成基板112を含んでもよい。インク・インレット121は、最上部に位置した第1流路形成基板113を貫通するように形成されてもよく、複数の圧力チャンバ125は、第1流路形成基板113に、その下面から所定深みに形成される。複数のノズル200は、最下部に位置した基板、すなわち、ノズル基板111を貫通するように形成される。マニホールド122,123は、第1流路形成基板113と、第2流路形成基板112とにそれぞれ形成される。複数のダンパ126は、第2流路形成基板112を貫通するように形成される。順次積層された3枚の基板、すなわち、第1流路基板113並びに第2流路形成基板112、及びノズル基板111は、SDB(silicon direct bonding)によって接合されてもよい。流路プレート110の内部に形成されるインク流路は、
図1に図示された形態に限定されるものではなく、多様な構成で多様に配置されてもよい。
【0041】
圧電アクチュエータ130は、インク吐出のための圧電駆動力、すなわち、複数の圧力チャンバ125に、圧力変化を提供する役割を行うものであり、流路プレート110の上面に、複数の圧力チャンバ125に対応する位置に形成される。圧電アクチュエータ130は、流路プレート110の上面に順次積層される下部電極131、圧電膜132及び上部電極133を含んでもよい。下部電極131は、共通電極の役割を行い、上部電極133は、圧電膜132に電圧を印加する駆動電極の役割を行う。圧電電圧印加手段135は、下部電極131と上部電極133とに圧電駆動電圧を印加する。圧電膜132は、圧電電圧印加手段135から印加される圧電駆動電圧によって変形されることにより、圧力チャンバ125の上部壁をなす第1流路形成基板113を変形させる役割を行う。圧電膜132は、所定の圧電物質、例えば、PZT(lead zirconate titanate)セラミックス材料から形成される。
【0042】
図2は、インクジェット・プリンティング装置の他の実施形態の構成図である。
図2を参照すれば、アクチュエータは、静電駆動力を提供する静電アクチュエータ140を含むという点で、
図1に図示されたインクジェット・プリンティング装置の実施形態と違いがある。静電アクチュエータ140は、ノズル200内部のインクに、静電駆動力を提供するものであり、互いに対向するように配置された第1静電電極141及び第2静電電極142を含んでもよい。静電電圧印加手段145は、第1静電電極141と、第2静電電極142との間に静電駆動電圧を印加する。
【0043】
例えば、第1静電電極141は、流路プレート110に設けられてもよい。第1静電電極141は、流路プレート110の上面、すなわち、第1流路形成基板113の上面に、インク・インレット121が形成された領域に配置される。第2静電電極142は、流路プレート110の下面と所定間隔離隔されるように配置されてもよく、第2静電電極142上には、流路プレート110のノズル200から吐出されるインク液滴が印刷される印刷媒体Pが配置される。
【0044】
静電電圧印加手段145は、パルス形態の静電駆動電圧を印加することができる。
図1では、第2静電電極142が接地されるが、第1静電電極141が接地される。静電電圧印加手段145は、直流電圧形態の静電駆動電圧を印加することもできる。その場合、第1静電電極141が設置されてもよく、第2静電電極142が接地されてもよい。第1静電電極141の位置は、
図2に図示された位置に限定されるものではない。図面に図示されていないが、第1静電電極141が、流路プレート110の内部に形成されてもよい。例えば、第1静電電極141は、圧力チャンバ125、リストリクタ124及びマニホールド123の底面に形成される。しかし、それに限定されるのではなく、第1静電電極141は、流路プレート110の内部の多様な位置に設けられてもよい。
【0045】
図1及び
図2では、それぞれ圧電アクチュエータ130と、静電アクチュエータ140とを具備するインクジェット・プリンティング装置の実施形態について説明したが、それらによって限定されるものではない。
図3に図示されているように、アクチュエータは、圧電駆動力と静電駆動力とを提供する圧電アクチュエータ130と、静電アクチュエータ140とを含んでもよい。その場合、第1静電電極141は、前記下部電極131と一体に形成されることも可能である。
【0046】
インクジェット技術は、伝統的なグラフィック印刷からその領域を拡大し、産業用のプリンタブル・エレクトロニクス(printable electronics)、ディスプレイ(display)、バイオ技術(biotechnoligy)、バイオ科学(bioscience)など多様な分野に活用される。それは、インクジェット技術のダイレクト・パターニング(direct patterning)特性に起因するが、フォトリソグラフィ(photolithography)工程が数回の段階を経て所望のパターンを形成するのに対して、インクジェット技術を利用すれば、さらに少ない段階、ひいては1段階の工程で、所望のパターンを形成することができ、コストを劇的に下げることができる可能性を有しているからである。また、電子回路を製作するにあたり、インクジェットを利用する場合には、平面ではなかったり、あるいは柔軟な基板を使用することができるが、かような特徴も、フォトリソグラフィ技術では具現し難い。
【0047】
前述のように、インクジェット技術をディスプレイ分野や印刷電子工学分野に活発に適用するための技術的課題のうち一つが、超精密及び高解像度の印刷技術確保である。数ピコリットル(pL)あるいは数フェムトリットル(fL)の微細液滴を吐出するために、直径が数μmまたはそれ以下のノズルが必要である。かような微細なノズルを製作するには、製作均一性を確保することができる技術と、ノズルの形態を出口側に徐々に収斂する形態に正確に形成する技術が要求される。それは、ノズルの大きさが微細であるために、小量の大きさ変化も、均一度に影響を与え、ノズルが微細になるにつれ、ノズルの出口で生じる圧力降下量が増大し、所望の大きさの液滴を所望の方向に吐出することができなかったり、あるいはアクチュエータの性能限界を外れる場合には、液滴が吐出されなかったりすることもあるからである。
【0048】
図4Aは、
図1、
図2及び
図3の「A」部を詳細に図示した図面である。
図4Aないし
図4Cを参照すれば、ノズル200は、ノズル基板111を貫通して形成される。ノズル200は、全体的に、ノズル基板111の上面111aから下面111bに向けて、その断面積が縮小するテーパ状である。
【0049】
ノズル200は、第1ノズル部210、第2ノズル部220及び第3ノズル部230を含む。第1ノズル部210は、圧力チャンバ125と連通され、ノズル基板111の上面111aから下面111bに向けて、断面積が縮小するテーパ状である。第2ノズル部220は、第1ノズル部210から下面111bに向けて延長される。第2ノズル部220は、下面111bに向けて断面積が縮小するテーパ状であってもよく、または断面積が同一である円筒状であってもよい。第3ノズル部230は、第2ノズル部220から、ノズル基板111の下面111bまで延長され、下面111bに向けて断面積が縮小するテーパ状である。かような構成によって、ノズル200は、出口240の直径が非常に小さく、全体的にテーパ状になる。
【0050】
ノズル200は、例えば、円錐状または多角錐状でもある。ノズル基板200として、表面の結晶方向が<100>である単結晶シリコン基板が適用され、湿式異方性エッチング工程が適用される場合、ノズル200は、全体的に逆さまになった四角錐状にもなる。ノズル200の断面形状が円形ではない場合、出口240の直径は、等価円の直径で表示されてもよい。均一サイズの微細液滴を吐出するためには、出口240の直径が均一でなければならない。また、ノズル200を通過する間の圧力降下が小さいほど、インク液滴の大きさを精緻に制御することができる。
【0051】
1回のエッチング工程によって、ノズル基板111を貫通させて断面積が縮小するテーパ状の多数のノズルを形成する場合、ノズル基板111の厚み均一度が、出口240の直径の均一度に影響を及ぼすことがある。言い換えれば、ノズル基板111の厚い領域に形成されたノズルの出口の直径が、薄い領域に形成されたノズルの出口の直径より小さくもある。また、単結晶シリコン基板に、テーパ状のノズルを形成するために、異方性エッチング工程を適用する場合、基板全体を貫通するためには、非常に長いエッチング時間が必要となる。シリコン基板の内部には、結晶欠陥が存在することがあるが、その結晶欠陥は、エッチング速度の局所的な違いを誘発し、ノズル形状と、大きさの均一度とを落としてしまう。また、エッチング工程で生じる水素気泡が、一時的に基板の表面に吸着され、ノズル均一度を悪化させることがある。
【0052】
他の例として、単結晶シリコン基板の表面から、異方性エッチング工程を利用して、基板の下面まで貫通しないテーパ部を形成し、後工程によって、基板の下面からテーパ部まで貫通孔を形成する方式が適用されてもよい。しかし、かような形態は、例えば、
図4Bに図示されているように、ノズル1のテーパ部11の頂点(apex)12と、貫通孔2とが正確に整列されない場合、すなわち、テーパ部11の頂点12と、貫通孔2との整列誤差(misalignment)が生じた場合、インクを吐出する過程で、大きい圧力降下を引き起こすことがある。言い換えれば、整列誤差が生じた場合には、テーパ部11と連結された貫通孔2の長さが整列誤差がない場合(点線で図示)に比べて長くなってインクを吐出する過程で圧力降下が相対的に大きくなる。そのために、圧力降下を考慮して、大きい駆動力を提供するアクチュエータが必要である。また、整列誤差が生じる場合、テーパ部11が吐出方向に対して非対称になるので、吐出されるインクの直進性が低下する。非対称性がインクの直進性に及ぼす影響は、ノズルの直径が小さいほど大きくなる。従って、微細液滴を吐出するために、数μm、例えば、3μmほどの直径を有するノズルを形成する場合、整列誤差は、インクの直進性に大きい影響を及ぼすことがある。
【0053】
図4Aに図示されているように、本実施形態によれば、ノズル200が、第1ノズル部210、第2ノズル部220及び第3ノズル部230によって形成される。かような構成によれば、第1ノズル部210、第2ノズル部220及び第3ノズル部230が、個別的な工程によって形成されるので、個別工程でのエッチング時間を短縮させることができる。従って、基板111の結晶欠陥、気泡などによる影響を少なく受ける。
【0054】
また、ノズル200の出口240の直径が、個別工程によって形成されるテーパ状の第3ノズル部230に依存するので、基板111の厚みによる直径の変化を減らし、出口240の直径が均一であるノズル200が具現される。
【0055】
また、本実施形態のノズル200によれば、ノズル200の非対称性を緩和し、ノズル200内での圧力降下を減らすことができ、吐出されるインクの直進性を向上させることができる。
図4Bを参照すれば、ノズル1の直径d0が、例えば、3μmであり、整列誤差d1が1.5μmであるならば、整列誤差d1は、ノズル1の直径d0のほぼ50%になる。
図4Cを参照すれば、本実施形態のノズル200は、第1ノズル部210と、第3ノズル部230とが第2ノズル部220によって連結されるので、ノズル200が全体的に均一にテーパ状になる。
【0056】
図4Cを参照すれば、整列誤差によって、第3ノズル部230が、第1ノズル部210の頂点211に対して、d1ほど位置ずれしているとしても、非対称性に影響を及ぼすのは、第2ノズル部220の直径d2に対してである。第2ノズル部220の直径d2は、第3ノズル部230の直径d0より大きい。例えば、第3ノズル部230の直径d0が3μmほどである場合、第2ノズル部220の直径は、例えば、30μmほどになる。そのため、位置ずれ量d1による非対称性は、実質的に、第2ノズル部220の直径d2の5%ほどになって、それは、
図4Bに図示された例に比べ、非対称性が約1/10に小さくなるということを意味する。そのように、本実施形態のノズル200は、微細な出口240の直径d0を有しながらも、ノズル200が全体的にほぼ均一(非対称性が非常に小さい)であるテーパ状であるので、非対称性に起因する圧力降下を減らすことができるということはもとより、インクの直進性も、向上させることができる。
【0057】
第1ノズル部210、第2ノズル部220及び第3ノズル部230は、それぞれ第1テーパ角度G1、第2テーパ角度G2及び第3テーパ角度G3を有する。第1ノズル部210、第2ノズル部220及び第3ノズル部230のテーパ方向は、同一である。言い換えれば、第1ノズル部210、第2ノズル部220及び第3ノズル部230は、ノズル基板111の下面111bに向けて、断面積が縮小する形状である。第2テーパ角度G2は、ノズル200の延長方向に対して鋭角である。すなわち、第2テーパ角度G2は、90°より小さい。第2テーパ角度G2は、第1テーパ角度G1及び第3テーパ角度G3より小さい。また、第1テーパ角度G1と第3テーパ角度G2は、同一であってもよい。
【0058】
図5Aは、インクジェット・プリントヘッドの他の実施形態を図示した断面図である。
図5Aを参照すれば、ノズル200の周囲には、ノズル基板111の下面111bから段差面111cまで陥没したトレンチ160が形成される。それにより、全体的に、ノズル200の形状は、下面111bに向けて尖った形状になる。
【0059】
一般的に、電荷は、尖った部分に集中する傾向がある。
図5Bを参照すれば、トレンチ160によって、静電駆動電圧による等電位線が、ノズル200の出口240付近に集中し、ノズル200の出口240付近に非常に大きい電場が形成され、ノズル200の出口240での静電駆動力を増大させることができる。従って、液滴を非常に効果的に加速させることができ、与えられた静電駆動電圧の大きさ下で、液滴の大きさをさらに小さくすることができる。また、数ピコリットル、ひいては数フェムトリットルの超微細インク液滴を、印刷媒体Pまで安定して吐出することができる。
【0060】
図5Cは、ノズル周囲にトレンチが形成されたインクジェット・プリントヘッドの実施形態を図示した斜視図である。
図5Cを参照すれば、ノズル基板111には、第1方向Xに延長されたノズルブロック170が設けられ、トレンチ160は、ノズルブロック170に対して、第1方向Xと直交する第2方向Yに位置し、第1方向Xに延長される。それにより、ノズル基板111は、ノズルブロック170とトレンチ160とが、第2方向Yに相互に配列された形態になり、ノズルブロック170の第2方向Yの両側に、トレンチ160が位置する。ノズル200は、ノズル基板111のノズルブロック170を貫通して形成される。
【0061】
インクジェット・プリンティング装置を使用して印刷作業を遂行する場合、ノズル200周囲には、インク、ほこりなどが付着することがある。かような異物は、ノズル200を介して吐出されるインク液滴の形態及び量を変形させたり、あるいはインク液滴の吐出方向を歪曲させることがある。そのために、ノズル200を介して、インクを吐出する前、またはインクを規定された回数ほど吐出した後、周期的に、または印刷を完了した後、ノズル200周囲に付着したインクを除去するためのワイピング(wiping)作業が遂行されてもよい。ワイピング作業は、例えば、ゴム材質、フェルト(felt)材質などからなるブレード、ローラのようなワイピング手段を利用して、ノズル基板111の下面を、第1方向Xまたは第2方向Yに拭き取ることによって行われる。
【0062】
図5Cに図示された実施形態のインクジェット・プリンティング装置によれば、第1方向Xに延長された形態のノズルブロック170に、ノズル200を形成され、ノズルブロック170の第2方向Y側にだけトレンチ160が形成される。そのために、ノズルブロック170が、全体的に第1方向Xに延長された形態であるので、ノズルブロック170自体が相当な剛性を有する。そのために、ワイピング過程で、ノズル200の損傷危険性を下げることができる。併せて、ノズル200の第2方向Yの断面は、尖った形態を維持するので、静電駆動力を増大させることができる。
【0063】
複合方式のインクジェット・プリンティング装置は、インクに、圧電駆動力と静電駆動力とを提供し、微細な液滴のインクを吐出する装置であり、圧電アクチェエータ130に印加される圧電駆動電圧と、静電アクチュエータ140に印加される静電駆動電圧との印加順序、大きさ及び持続時間を制御することにより、インク液滴を互いに異なる大きさと形態とで吐出する多数の駆動モードで駆動される。例えば、ノズルの大きさに比べて、小サイズを有した微細液滴を吐出するドリッピング・モード(dripping mode)、ドリッピング・モードよりさらに小サイズの微細液滴を吐出するコーンジェット・モード(cone-jet mode)、インク液滴をジェットストリーム状に吐出するスプレー・モード(spray mode)で駆動される。
【0064】
そのように、圧電駆動方式と静電駆動方式とを混用するので、DOD(drop on demand)方式でインクを吐出することができ、プリンティング作業を制御しやすい。また、出口240に向けて断面積が徐々に縮小し、周辺にトレンチ160が形成され、全体的に尖った形態のノズル200を採用することにより、超微細液滴を具現しやすく、吐出されたインク液滴の直進性を向上させ、精密印刷を具現することができる。
【0065】
以下、
図6Aないし
図6Nを参照しながら、ノズル形成方法の実施形態について説明する。
【0066】
[第1陥没部410の形成]
基板300の一面に、エッチングマスクを形成する。例えば、
図6Aを参照すれば、基板300として、上面301の結晶方向が<100>方向であるシリコン単結晶基板を準備する。その後、マスク層311を形成する。マスク層311は、例えば、SiO
2層である。SiO
2層は、基板300を酸化させて形成される。次に、マスク層311上に、フォトレジスト層312を形成し、それを、例えば、リソグラフィ法によってパターニングし、マスク層311の一部313を露出させる。フォトレジスト層312をマスクにし、マスク層311をパターニングしてフォトレジスト層312を除去すれば、
図6Bに図示されているように、開口314が形成されたマスク層311が形成される。マスク層311をパターニングする工程は、例えば、HF溶液(buffered hydrogen fluoride acid)を利用した湿式エッチング工程、またはプラズマ乾式エッチング(plasma dry etching)工程によって遂行される。
【0067】
開口314の形状は、例えば、円形である。開口314の直径は、最終的に形成されるノズル200の直径を勘案して選定される。円形の開口314が形成されたマスク層311を採用すれば、後述する異方性湿式エッチング工程で、基板300の結晶方向と、マスクパターンとの整列が不要である。従って、正方形または長方形の開口が形成されたマスク層を使用する場合に発生しうる基板300の結晶方向との整列誤差に起因するノズル200形状の不均一問題を解消することができる。
【0068】
マスク層311をエッチングマスクにして、基板300を上面(第1面)301からエッチングする。その工程は、例えば、90℃、20%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を利用する異方性湿式エッチング工程によって遂行される。その場合のエッチング速度は、ほぼ0.8〜0.9μm/分ほどである。
図6Cを参照すれば、基板300の上面の結晶方向は、<100>方向であり、エッチングが進められた面の結晶方向は、<111>方向である。<100>方向と<111>方向とのエッチング速度の差によって、エッチングは下方へ速く、横には遅く遂行される。それにより、
図6C及び
図6Dに図示されているように、基板300には、下方へ行くほど断面積が縮小されるテーパ状の第1陥没部410が形成される。第1陥没部410は、断面が四角形である四角錐状(逆ピラミッド形状)になる。厳密に言えば、開口314の外側に向かい、若干のアンダーエッチング(under etching)が生じるので、四角錐状の第1陥没部410の上端部は、円形の開口314に完全に内接する形態ではないことがある。第1陥没部410の傾斜角度Eは、湿式異方性エッチング工程によれば、例えば、約54.7°程度である。
【0069】
第1陥没部410は、基板300の下面(第2面)302まで貫通されない。エッチング時間を調節することにより、第1陥没部410の深さd410を調節することができる。必要によって、
図6Eに図示されているように、エッチング、研磨(polishing)などによって、基板300の下面302から研磨する薄化(thinning)工程が遂行される。
【0070】
[貫通部440の形成]
図6Fに図示されているように、基板300の下面302に、第1陥没部410の頂点411と整列された開口322が形成されたマスク層321を形成する。マスク層321は、例えば、SiO
2またはSi
2N
4などから形成される。基板300の下面302に、SiO
2またはSi
2N
4などを蒸着(deposit)した後、リソグラフィ法によって、第1陥没部410の頂点411と整列された位置に対応する部分のSiO
2またはSi
2N
4などを除去することにより、開口322を形成することができる。
【0071】
マスク層321をエッチングマスクにして、基板300を下面302から、例えば、乾式エッチングし、
図6Gに図示されているように、第1陥没部410と連通された貫通部440を形成する。
【0072】
図6Hは、
図6Gの「B」部の詳細図である。
図6Hを参照すれば、点線で図示されているように、貫通部440と第1陥没部410とが正確に整列されることが理想的である。しかし、実質的には、整列誤差が発生することもあり、実線で図示されているように、貫通部440が、第1陥没部410の頂点441に対してずれて形成される場合もある。理想的な場合、貫通部440と第1陥没部410は、点線に図示されているように、貫通方向に対して対称になる。しかし、整列誤差が発生すれば、実線で図示されているように、貫通部440の貫通方向の長さが不均一になり、第1陥没部410も貫通方向に対して、非対称的な形状になる。それは、前述のように、インク吐出過程での大きい圧力降下と直進性低下とを引き起こす要因にもなる。
【0073】
[第2陥没部420及び第3陥没部430の形成]
前述のような整列誤差を解消するために、第1陥没部410と貫通部440とをエッチングする工程が遂行される。
図6Gで、マスク層311とマスク層321とがエッチングマスクとして利用される。エッチングは、例えば、第1陥没部410を形成する工程と同一の湿式異方性エッチング工程によって遂行される。ただし、エッチング量が少ないので、工程時間は、第1陥没部410を形成する工程に比べて短く設定される。工程時間は、条件によって異なるが、例えば、10分ほど設定される。
【0074】
図6Iを参照すれば、貫通部440の壁面のエッチングが始まることにより、基板300の下面302から、<111>方向のエッチング面451が形成され、エッチング面451と、第1陥没部410とを連結する連結面452が形成される。エッチングが進行すれば、
図6Kに図示されているように、第1陥没部410、第2陥没部420及び第3陥没部430が形成される。第3陥没部430は、エッチング面451によって形成され、第2陥没部420は、エッチング面451と、第1陥没部410とを連結する連結面452によって形成される。連結面452は、貫通部440の壁面がエッチングされながら、最初の貫通角度を維持されつつ、シフト(shift)されて形成される。また、横方向のエッチング速度より、上下方向のエッチング速度がさらに速い。そのために、第2陥没部420のテーパ角度g420は、第1陥没部410のテーパ角度g410より小さい。また、第3陥没部430を形成するエッチング面451は、<111>面であるので、第3陥没部430のテーパ角度g430は、第1陥没部410のテーパ角度g410と同一である。
【0075】
貫通部440は、貫通方向と平行であるか、あるいは基板300の下面302に向けて断面積が徐々に縮小されるテーパ状でもある。もし
図6Jに実線で図示されているように、貫通部440が基板300の下面302に向けて断面積が徐々に拡大されるテーパ状に形成された場合には、貫通部440を再エッチングする過程で、
図6Jで点線で図示されているように、連結面452が第1陥没部410及びエッチング面451と反対方向にテーパ状になり、大きい圧力降下を引き起こす形状にもなる。それを防止するためには、エッチング面451が、基板300の上面に到するまでエッチングし、連結面452を除去しなければならないので、長いエッチング時間が必要となり、工程時間の延長をもたらす。本実施形態によれば、貫通部440を、貫通方向と平行な筒型、あるいは第1陥没部410と同一方向のテーパ状に形成することにより、全体的に、第1陥没部410、第2陥没部420及び第3陥没部430が同一の方向にテーパ状になるようにし、エッチング工程時間を短縮させることができる。
【0076】
図6Lに図示されているように、マスク層311,321を除去すれば、基板300の上面301から下面302に向けて断面積が縮小するテーパ状の第1陥没部410と、第1陥没部410から下面302に向けて断面積が縮小するテーパ状の第2陥没部420と、第2陥没部420から下面302に向けて断面積が縮小するテーパ状の第3陥没部430とが形成される。第1陥没部410、第2陥没部420及び第3陥没部430は、それぞれ
図4Aの第1ノズル部210、第2ノズル部220及び第3ノズル部230に対応する。従って、
図4Aに図示されているようなノズル200が形成される。
【0077】
第1陥没部410の部分的なエッチングと、貫通部440の全体的なエッチングとにより、第2陥没部420及び第3陥没部430が形成されるので、第1陥没部410と貫通部440との整列誤差による非対称性が緩和され、
図6Lに図示されているように、均一な正方形と均一な直径の出口240とを有するノズル200が形成される。
【0078】
[トレンチ160の形成]
図6Mに図示されているように、
図6Lに図示された状態で、少なくとも第1陥没部410、第2陥没部420及び第3陥没部430の内側壁面に、保護層331を形成する。保護層331は、例えば、SiO
2層でもある。その場合、保護層331は、基板300を酸化させることによって形成される。その後、基板300の下面302のマスク層321を、例えば、リソグラフィ工程により、一部323を除去し、トレンチ160が形成される部分を定義する。それにより、基板300の下面302が一部露出される。トレンチ160が形成される部分は、トレンチ160の形成範囲によって異なるように定義される。例えば、
図5Aに図示されているように、ノズル200の周囲に、全体的にトレンチ160が形成される場合には、一部323は、第3陥没部430の出口側を囲む形態になる。また、例えば、
図5Cに図示されているように、ノズル200の一方向の両側にだけトレンチ160が形成される場合には、一部323は、第3陥没部430の出口から両側に離隔されたストライプ形状になる。
【0079】
次に、マスク層321をエッチングマスクにして、基板300を下面302から段差面303までエッチングし、
図6Nに図示されているように、トレンチ160を形成し、保護層331と、マスク層311,321とを除去する。それにより、ノズル200の周囲に、全体的にトレンチ160が形成されたインクジェット・プリンティング装置(
図5A)、またはノズル200の一方向(例えば、
図5CのY方向)にだけトレンチ160が形成されたインクジェット・プリンティング装置(
図5C)が製造される。
【0080】
図7Aないし
図7Fを参照しながら、ノズル形成方法の他の実施形態について説明する。
【0081】
[第1陥没部410の形成]
前述の
図6Aないし
図6Eに図示された工程により、第1陥没部410を形成し、必要によって、薄化工程を遂行する。
【0082】
[貫通部440の形成]
図7Aに図示されているように、基板300の下面302に、第1マスク層341を形成する。第1マスク層341は、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)を蒸着して形成される。第1マスク層341には、第1陥没部410の頂点411と整列された開口342が設けられる。第1マスク層341は、基板300の下面302において、開口342周辺の一部領域にだけ形成される。そのために、基板300の下面302において、開口342の周辺領域を除いた領域302aは、露出される。領域302aは、必要によって、後述するように、トレンチ160が形成される領域である。そのために、第1マスク層341は、貫通部440を形成する領域と、トレンチ160を形成する領域とを定義する。かような形態の第1マスク層341は、基板300の下面302に、全体的にTEOS層を蒸着し、例えば、リソグラフィ工程によって、開口342及び領域302aに対応するTEOS層を除去することによって形成される。
【0083】
次に、
図7Bに図示されているように、第2マスク層351を形成する。第2マスク層351は、基板300の下面302の露出された領域302aと開口342とを除いた第1マスク層341を覆う。第2マスク層351は、例えば、フォトレジストを塗布することによって形成される。
【0084】
第2マスク層351をエッチングマスクにして、開口342を介して、基板300を、例えば、乾式エッチングし、
図7Cに図示されているように、第1陥没部410と連通された貫通部440を形成する。
【0085】
かような形態の貫通部440は、第1陥没部410と整列誤差が発生することもあるということは、
図6Hを参照して説明した通りである。そのために、その整列誤差を補償するための工程が遂行される。
【0086】
[第2陥没部420及び第3陥没部430の形成]
図7Dに図示されているように、第2マスク層351を除去し、湿式異方性エッチング工程によって、貫通部440をエッチングする。それにより、
図6I、
図6Kを参照して説明したように、エッチング面451と、第1陥没部410とエッチング面451とを連結する連結面452とによって、それぞれ第3陥没部430及び第2陥没部420が形成される。第1陥没部410、第2陥没部420及び第3陥没部430は、それぞれ
図4Aの第1ノズル部210、第2ノズル部220及び第3ノズル部230に対応する。従って、
図4Aに図示されているようなノズル200が形成される。第1陥没部410の部分的なエッチングと、貫通部440の全体的なエッチングとにより、第2陥没部420及び第3陥没部430が形成されるので、第1陥没部410と貫通部440との整列誤差による非対称性が緩和され、均一な正方形と均一な直径の出口240とを有したノズル200が形成される。
【0087】
基板300の下面302の露出した領域302aも、湿式エッチングによって、一部エッチングされ、部分段差面303aが形成される。その状態で、マスク層311及び第1マスク層341を除去すれば、
図4Aに図示されているようなノズル200が形成される。
【0088】
[トレンチ160の形成]
図7Eに図示されているように、第1陥没部410、第2陥没部420及び第3陥没部430の内側壁面に、保護層361を形成する。保護層361は、例えば、TEOS層でもある。保護層361は、後述するトレンチ160を形成するためのエッチング工程で、第1陥没部410、第2陥没部420及び第3陥没部430の損傷を防止するためのものである。基板300の下面302には、トレンチ160が形成される部分を定義する第1マスク層341が形成されている。トレンチ160が形成される部分は、トレンチ160の形成範囲によって異なるように定義される。例えば、
図5Aに図示されているように、ノズル200の周囲に、全体的にトレンチ160が形成される場合には、第1マスク層341は、第3陥没部430の出口側を囲む形態になる。また、例えば、
図5Cに図示されているように、ノズル200の一方向の両側にだけトレンチ160が形成される場合には、第1マスク層341は、第3陥没部430の出口が開口されたストライプ形状になる。
【0089】
第1マスク層341をエッチングマスクにして、基板300を、部分段差面303aから段差面303までエッチングし、
図7Fに図示されているように、トレンチ160を形成する。
【0090】
後工程として、保護層361、マスク層311及び第1マスク層341を除去すれば、ノズル200周囲に、全体的に、トレンチ160が形成されたインクジェット・プリンティング装置(
図5A)、またはノズル200の一方向(例えば、
図5CのY方向)にだけトレンチ160が形成されたインクジェット・プリンティング装置(
図5C)が製造される。
【0091】
図8は、基板を1回の工程によって貫通し、テーパ状の多数のノズルを形成する場合の基板上の1つのチップ(chip)に形成された多数のノズルの直径を測定した結果を図示したグラフである。横軸は、基板のチップに形成されたノズルの番号である。直径の平均値は、約3.5μm、最小値は、約2.3μm、最大値は、約5.5μmであり、直径の不均一度は、約41%である。
【0092】
図9は、一実施形態のノズル形成方法によって、基板の1つのチップに形成された多数のノズル200の直径NIDを測定した結果を図示したグラフである。横軸は、基板のチップに形成されたノズルの番号である。直径の平均値は、約4.5μm、最小値は、約4.4μm、最大値は、約4.6μmであり、直径の不均一度は、約2.3%であり、
図8に図示された例に比べ、非常に均一な直径のノズルを形成することができるということを確認することができる。言い換えれば、エッチング工程の不均一性に起因するノズル径の不均一性が緩和される可能性があるということを確認することができる。
【0093】
図10は、基板を1回の工程によって貫通し、テーパ状の多数のノズルを形成する場合、基板上のチップ位置によるノズルの直径を測定した他の結果を図示したグラフである。横軸は、基板上のチップ番号である。直径の平均値は、約5.0μm、最小値は、約3.8μm、最大値は、約6.0μmであり、直径の不均一度は、約44%である。
【0094】
図11は、一実施形態のノズル形成方法によって、基板上のチップの位置によるノズル200の直径NIDを測定した他の結果を図示したグラフである。横軸は、基板上のチップ番号である。直径の平均値は、約5.8μm、最小値は、約5.5μm、最大値は、約6.0μmであり、直径の不均一度は、約8%であり、
図10に図示された例に比べ、非常に均一な直径のノズルを形成することができるということを確認することができる。すなわち、基板300の厚みの不均一性に起因するノズル径の不均一が緩和される可能性があるということを確認することができる。
【0095】
以上、実施形態について詳細に説明したが、それらは、例示的なものに過ぎず、当分野で当業者であるならば、それらから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解するであろう。従って、真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲によって決められるものである。