特許第6389039号(P6389039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6389039スラブ設定装置、磁気共鳴装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389039
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】スラブ設定装置、磁気共鳴装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   A61B5/055 370
   A61B5/055 382
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-16049(P2014-16049)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-139679(P2015-139679A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】池崎 吉和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢二
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 正則
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−182988(JP,A)
【文献】 再公表特許第2006/132104(JP,A1)
【文献】 特開2003−290172(JP,A)
【文献】 特開2011−172915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/48−33/483
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスラブを設定するスラブ設定装置であって、
前記複数のスラブの各々に含まれる複数のスライスの枚数と、前記スライスのスライス厚とに基づいて、前記複数のスラブを設定する設定手段を有し、
前記設定手段は、
オペレータによって操作される操作部から、前記複数のスライスの枚数変更するための情報が入力された場合、前記スラブのスラブ厚が変化せず、且つ前記複数のスラブのうちの第1のスラブと第2のスラブとのオーバーラップする領域に含まれるスライスの枚数と前記複数のスライスの枚数との比が変化しないように前記スライス厚を変更する、スラブ設定装置。
【請求項2】
請求項に記載のスラブ設定装置を有する磁気共鳴装置。
【請求項3】
複数のスラブを設定するスラブ設定装置に適用されるプログラムであって、
前記複数のスラブの各々に含まれる複数のスライスの枚数と、前記スライスのスライス厚とに基づいて、前記複数のスラブを設定する設定処理であって、オペレータによって操作される操作部から、前記複数のスライスの枚数変更するための情報が入力された場合、前記スラブのスラブ厚が変化せず、且つ前記複数のスラブのうちの第1のスラブと第2のスラブとのオーバーラップする領域に含まれるスライスの枚数と前記複数のスライスの枚数との比が変化しないように前記スライス厚を変更する設定処理、
を計算機に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブを設定するスラブ設定装置、当該スラブ設定装置を有する磁気共鳴装置、および当該スラブ設定装置に適用されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
造影剤を用いずに血流を撮影するMRA(MR angiography)法として、血液の流入効果を利用したTOF(time-of-flight)法が知られている。
【0003】
TOF法には、2次元法(2D−TOF法)と、3次元法(3D−TOF法)とがある。2D−TOF法は、流速が比較的遅い血液を描出するのに適しているが、スライス方向の分解能が低いという問題がある。これに対し、3D−TOF法は、スラブを設定し、スラブを3Dイメージング法で撮影するので、スライス方向の分解能を高くすることができるというメリットがあり、頭部の血管の撮影に主に使用されている。
【0004】
しかし、3D−TOF法では、スラブをある程度の厚さに設定する必要があるので、血流信号が飽和しやすいという欠点がある。この欠点を解消する方法として、マルチスラブを用いた3D−TOF法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−253527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチスラブ3D−TOF法では、オペレータは、複数のスラブを設定するために必要な情報(例えば、1個のスラブに含まれるスライスの枚数、スライス厚、スラブの個数)を入力する。
【0007】
これらの情報を入力することにより、複数のスラブが設定される。オペレータは、複数のスラブを設定した後、スラブの設定条件を変更する必要があるか否かを判断する。スラブの設定条件を変更する必要がないと判断した場合、マルチスラブ3D−TOF法によるスキャンが実行される。
【0008】
しかし、オペレータは、マルチスラブ3D−TOF法によるスキャンを実行する前に、スラブの設定条件を変更したいと考える場合がある。例えば、オペレータが、マルチスラブ3D−TOF法によるスキャンを実行する前にスキャン時間を確認したところ、スキャン時間が予想以上に長い場合は、スキャン時間を短くするために、スライス枚数を減らしたいと考えることがある。しかし、スライス枚数を変更すると、それに応じてスラブ厚が変化してしまい、オペレータが当初考えていた撮影領域の範囲で撮影をすることができないという問題がある。したがって、撮影領域の範囲を変化させたくない場合、オペレータは、スライス枚数だけでなく、スライス厚などの他のパラメータも調整する必要があり、パラメータの調整に時間が掛かるという問題がある。
【0009】
このような理由から、スラブを設定するためのパラメータを変更しても、撮影領域の範囲ができるだけ変化しないようにする技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、複数のスラブを設定するスラブ設定装置であって、
前記複数のスラブの各々に含まれる複数のスライスの枚数と、前記スライスのスライス厚とに基づいて、前記複数のスラブを設定する設定手段を有し、
前記設定手段は、
前記複数のスライスの枚数が変更された場合、前記スラブのスラブ厚が変化しないように前記スライス厚を変更する、スラブ設定装置である。
【0011】
本発明の第2の観点は、上記のスラブ設定装置を有する磁気共鳴装置である。
【0012】
本発明の第3の観点は、複数のスラブを設定するスラブ設定装置に適用されるプログラムであって、
前記複数のスラブの各々に含まれる複数のスライスの枚数と、前記スライスのスライス厚とに基づいて、前記複数のスラブを設定する設定処理であって、前記複数のスライスの枚数が変更された場合、前記スラブのスラブ厚が変化しないように前記スライス厚を変更する設定処理、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
複数のスライスの枚数が変更された場合、スラブ厚が変化しないようにスライス厚が変更されるので、撮影領域の範囲が変化しないようにする(又は撮影領域の範囲ができるだけ変化しないようにする)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の本形態の磁気共鳴装置の概略図である。
図2】プロセッサ8が実行する処理の説明図である。
図3】本形態で実行されるスキャンを示す図である。
図4図3のスキャンを実行するときのフローを示す図である。
図5】サジタル画像SAを概略的に示す図である。
図6】複数のスラブの一例を示す図である。
図7】スラブaおよびbの説明図である。
図8】スライス枚数をNS=10枚からNS=5枚に減らした場合に、スラブがどのように変化するかを示す一例を説明するための図である。
図9】再設定されたスラブa´およびb´を示す図である。
図10】スライス枚数NSを10枚から8枚に変更した場合のスラブa´およびb´を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0016】
図1は、本発明の本形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信コイル4などを有している。
【0017】
マグネット2は、被検体12が収容されるボア21を有している。また、マグネット2は、超伝導コイル、勾配コイル、およびRFコイルなどが内蔵されている。
【0018】
テーブル3は、被検体12を支持するクレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体12はボア21に搬送される。
【0019】
受信コイル4は、被検体12の頭部に取り付けられている。受信コイル4は、被検体12からの磁気共鳴信号を受信する。
【0020】
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、プロセッサ8、メモリ9、操作部10、および表示部11などを有している。
【0021】
送信器5はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源6は勾配コイルに電流を供給する。
受信器7は、受信コイル4から受け取った信号に対して、検波などの信号処理を実行する。
【0022】
プロセッサ8は、表示部11に必要な情報を伝送したり、受信コイル4から受け取ったデータに基づいて画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。メモリ9には、プロセッサ8により実行されるプログラムなどが記憶されている。プロセッサ8は、メモリ9に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行する。図2に、プロセッサ8が実行する処理を示す。プログラムには、後述する操作部10から入力される情報に基づいて複数のスラブを設定する設定処理などが記述されている。プロセッサ8は、プログラムを読み出すことにより、プログラムに記述されている設定処理を実行するための設定手段81を構成する。この設定処理については、後で詳しく説明する。
【0023】
操作部10は、オペレータにより操作され、種々の情報をプロセッサ8に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0024】
図3は本形態で実行されるスキャンを示す図である。
本形態では、ローカライザスキャンLSと本スキャンMSなどが実行される。
【0025】
ローカライザスキャンLSは、スラブを設定するときに使用される画像を取得するためのスキャンである。
本スキャンMSはマルチスラブ3D−TOF法により血流画像を取得するスキャンである。
以下、図3のスキャンを実行するときのフローについて説明する。
【0026】
図4は、図3のスキャンを実行するときのフローを示す図である。
ステップS1では、ローカライザスキャンLSが実行される。ローカライザスキャンLSを実行することにより、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像が取得される。図5に、ローカライザスキャンLSにより取得された画像の一例として、サジタル画像SAが概略的に示されている。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップS2に進む。
【0027】
ステップS2では、オペレータは、ローカライザスキャンLSにより取得された画像を参考にして、被検体の頭部にスラブを設定するために必要な情報を入力する。例えば、以下の情報を入力する。
(1)1個のスラブに含まれるスライス枚数NS
(2)スライス厚ST
(3)スラブの個数V
(4)隣り合うスラブ間でオーバーラップするスライス枚数(オーバーラップ数)NO
(5)スラブの位置
【0028】
これらの情報は、例えば、グラフィックツールを用いて入力することができる。設定手段81は、上記の情報(1)〜(5)に基づいてスラブを設定する。図6に、設定された複数のスラブの一例を示す図である。図6には、2個のスラブaおよびbが設定された例が示されている。
【0029】
図6の上側には、頭部に設定されたスラブaおよびbが示されており、図6の下側にはスラブaおよびbの拡大図が示されている。尚、図6の上側のスラブaおよびbは縦長で示されているが、図6の下側のスラブaおよびbは、説明の便宜上、略正方形で示してある。
【0030】
スラブaおよびbは、スラブの繋ぎ目における信号強度の段差を小さくするため、一部の領域R0がオーバーラップするように設定されている。
【0031】
図7は、スラブaおよびbの詳細説明図である。図7の上側には、スラブaおよびbが一部重なった状態で示されており、図7の下側には、スラブaおよびbがAP(Anterior-Posterior)方向にずらした状態で示されている。
【0032】
図7では、1個のスラブに含まれるスライス枚数NS=10枚、スライス厚ST=5mm、スラブの個数V=2に設定されている。また、スラブaおよびbのオーバーラップ領域R0のオーバーラップ数NOは、NO=4に設定されている。
上記の情報を入力した後、ステップS3に進む。
【0033】
ステップS3では、オペレータは、スラブの設定条件を変更する必要があるか否かを判断する。スラブの設定条件を変更する必要がないと判断した場合、ステップS6に進み、図7に示すスラブaおよびbに従って本スキャンMSが実行される。
【0034】
しかし、オペレータは、本スキャンMSを実行する前に、スラブの設定条件を変更したいと考える場合がある。例えば、オペレータが、本スキャンMSを実行する前にスキャン時間を確認したところ、スキャン時間が予想以上に長い場合は、スキャン時間を短くするために、スライス枚数NSを減らしたいと考えることがある。この場合、ステップS4に進む。
【0035】
ステップS4では、オペレータは、ステップS2で入力した条件を変更する。ここでは、オペレータは、スキャン時間を短くするために、スライス枚数NSを、NS=10枚からNS=5枚に変更するとする。オペレータは、操作部10を操作し、スライス枚数NSを、NS=10枚からNS=5枚に変更するための情報を入力する。この情報が入力されることにより、スライス枚数NSを、NS=10枚からNS=5枚に変更することができる。図8は、スライス枚数をNS=10枚からNS=5枚に減らした場合に、スラブがどのように変化するかを示す一例を説明するための図である。
【0036】
図8(a)は、NS=10枚のときのスラブaおよびbを示し、図8(b)は、NS=5枚のときのスラブa´およびb´を示している。
【0037】
図8では、スライス枚数が減った分だけスラブ厚が薄くなっている。具体的には、NS=10枚では(図8(a)参照)、スラブaおよびbのスラブ厚Tは、T=5(mm)×10(枚)=50mmであるが、NS=5枚では(図8(b)参照)、スラブa´およびb´のスラブ厚T´は、T´=5(mm)×5(枚)=25mmに変更されている。したがって、スラブ厚は半分になるので、図8(b)のスラブa´およびb´により規定される撮影領域の範囲R2は、図8(a)における撮影領域の範囲R1よりも狭くなる。このため、図8(b)のスラブa´およびb´では、オペレータが当初考えていた撮影領域の範囲R1で撮影をすることができないという問題がある。
【0038】
また、図8(a)では、1個のスラブに含まれるスライス枚数NS=10枚に対して、オーバーラップ数NO=4枚であるので、NOとNSとの比NO/NSは、以下の値となる。
NO/NS=4/10=2/5 ・・・(1)
【0039】
一方、図8(b)では、1個のスラブに含まれるスライス枚数NS=5に対して、オーバーラップ数NO=4枚であるので、比NO/NSは、以下の値となる。
NO/NS=4/5 ・・・(2)
【0040】
したがって、式(1)および(2)から、スライス枚数を変更することにより、比NO/NSの値が2倍になることがわかる。比NO/NSの値は画質に影響を与えるので、比NO/NSの値が2倍になってしまうと、画質が劣化することも考えられる。
【0041】
そこで、本形態では、ステップS4においてスライス枚数が変更された場合、撮影領域の範囲の変化や画質の劣化ができるだけ生じないようにするため、ステップS5が設けられている。以下に、ステップS5について説明する。
【0042】
ステップS5では、設定手段81が、スライス厚およびオーバーラップ数を変更する。以下に、スライス厚およびオーバーラップ数をどのようにして変更するかについて説明する。
【0043】
設定手段81は、先ず、以下の式(3)を用いてスライス厚を変更する。
ST2=ST1*(NS1/NS2) ・・・(3)
ここで、NS1:変更前のスライス枚数
NS2:変更後のスライス枚数
ST1:スライス枚数を変更する前のスライス厚
ST2:スライス枚数を変更した後のスライス厚
【0044】
本形態では、変更前のスライス枚数はNS1=10枚であり、変更後のスライス枚数はNS2=5枚である。また、スライス枚数を変更する前のスライス厚はST1=5mmである。したがって、スライス枚数を変更した後のスライス厚ST2は以下の値となる。
ST2=5*(10/5)
=10(mm) ・・・(4)
【0045】
スライス厚を変更した後、設定手段81は、以下の式(5)を用いてオーバーラップ数を変更する。
NO2=NO1*(ST1/ST2) ・・・(5)
ここで、ST1:スライス枚数を変更する前のスライス厚
ST2:スライス枚数を変更した後のスライス厚
NO1:スライス枚数を変更する前のオーバーラップ数
NO2:スライス枚数を変更した後のオーバーラップ数
【0046】
本形態では、スライス枚数を変更する前のスライス厚はST1=5mmである。また、スライス枚数を変更した後のスライス厚はST2=10(mm)である(式(4)参照)。更に、スライス枚数を変更する前のオーバーラップ数はNO1=4である。したがって、スライス枚数を変更した後のオーバーラップ数NO2は、以下の値となる。
NO2=4*(5/10)
=2 ・・・(6)
【0047】
したがって、スライス枚数を変更することによって、スライス厚はST1=5mmからST2=10mmに変更され、オーバーラップ数はNO1=4からNO2=2に変更される。設定手段81は、変更された値(スライス枚数5枚、スライス厚10mm、およびオーバーラップ数2枚)に基づいて、スラブaおよびbを再設定する。図9に再設定されたスラブa´およびb´を示す。
【0048】
図9(a)は、スライス枚数、スライス厚、およびオーバーラップ数を変更する前のスラブaおよびbを示し、図9(b)はスライス枚数、スライス厚、およびオーバーラップ数を変更することにより再設定されたスラブa´およびb´を示す。
【0049】
図9(a)では、スラブ厚Tは、T=5(mm)×10(枚)=50mmであり、一方、図9(b)では、スラブ厚T´は、T´=10(mm)×5(枚)=50mmである。したがって、スライス枚数を減らしても、式(3)を用いてスライス厚を変更することによりスラブ厚を保持することができる。
【0050】
また、図9(a)では、1個のスラブに含まれるスライス枚数NS=10に対して、オーバーラップ数N0=4であるので、NOとNSとの比N0/Nは、以下の値となる。
NO/NS=4/10=2/5 ・・・(7)
【0051】
一方、図9(b)では、1個のスラブに含まれるスライス枚数NS=5に対して、オーバーラップ数NO=2であるので、比NO/NSは、以下の値となる。
NO/NS=2/5 ・・・(8)
【0052】
式(7)および(8)を比較すると、スライス枚数を変化しても、比NO/NSは保持されることがわかる。
【0053】
したがって、スライス枚数が変化しても、式(3)および(5)を用いてスライス厚およびオーバーラップ数を変更することによって、撮影領域の範囲R2を撮影領域の範囲R1と同じ範囲に保持することができる。また、比N0/NSも保持されるので、画質の劣化ができるだけ生じないようにすることもできる。
【0054】
スライス厚を10mmに変更し、更にオーバーラップ数を2枚に変更した後、ステップS6に進み、本スキャンを実行する。このようにして、フローが終了する。
【0055】
本形態では、上記のように、オペレータがスライス枚数を変更した場合、設定手段81は、式(3)および(5)を用いてスライス厚およびオーバーラップ数を変更する。したがって、スライス枚数が変更されても、スラブ厚T´はスラブ厚Tと同じ値に保持され、撮影領域の範囲R2を撮影領域の範囲R1と同じ範囲に保持することができる。また、比N0/NSも保持されるので、画質の劣化ができるだけ生じないようにすることもできる。
【0056】
尚、上記の例では、スライス枚数NSを10枚から5枚に変更した場合について説明されているが、以下に、スライス枚数NSを10枚から8枚に変更した場合について考察する。この場合、式(3)のスライス厚ST2は、以下の値となる。
ST2=ST1*(NS1/NS2)
=5*(10/8)
=6.25(mm) ・・・(9)
【0057】
したがって、式(5)のオーバーラップ数NO2は、以下の値となる。
NO2=NO1*(ST1/ST2)
=4*(5/6.25)
=3.2 ・・・(10)
【0058】
したがって、オーバーラップ数は、NO2=3.2と算出される。しかし、オーバーラップ数は整数でなければならないので、式(10)のように、オーバーラップ数が整数の値として算出されなかった場合は、小数第1位以下を四捨五入、切捨て、又は切上げすればよい。例えば、小数第1位以下を四捨五入した場合、NO2=3となる。したがって、設定手段81は、変更された値(スライス枚数8枚、スライス厚6.25mm、およびオーバーラップ数3枚)に基づいて、スラブaおよびbを再設定する。図10に再設定されたスラブa´およびb´を示す。
【0059】
図10(a)は、スライス枚数、スライス厚、およびオーバーラップ数を変更する前のスラブaおよびbを示し、図10(b)はスライス枚数、スライス厚、およびオーバーラップ数を変更することにより再設定されたスラブa´およびb´を示す。
【0060】
図10(a)では、スラブ厚Tは、T=5(mm)×10(枚)=50mmであり、一方、図10(b)では、スラブ厚T´は、T´=6.25(mm)×8(枚)=50mmである。したがって、スライス枚数を減らしても、式(3)を用いてスライス厚を変更することによりスラブ厚を保持することができる。
【0061】
尚、図10では、撮影領域の範囲R2は、撮影領域の範囲R1よりも、ΔRだけ広がっている。しかし、ΔRの値はスライス厚STよりも十分に小さいので、スライス枚数を10枚から8枚に変更しても、撮影領域の範囲R2を撮影領域の範囲R1とほとんど変わらないようにすることができる。
【0062】
また、図10(a)では、1個のスラブに含まれるスライス枚数NS=10に対して、オーバーラップ数N0=4であるので、NOとNSとの比N0/Nは、以下の値となる。
NO/NS=4/10=2/5 ・・・(11)
【0063】
一方、図10(b)では、1個のスラブに含まれるスライス枚数NS=8に対して、オーバーラップ数NO=3であるので、比NO/NSは、以下の値となる。
NO/NS=3/8 ・・・(12)
【0064】
したがって、式(11)と式(12)との間には、以下の式で表される差ΔDが生じている。
ΔD=(2/5)−(3/8)
=0.025 ・・・(13)
【0065】
しかし、ΔDの値(0.025)は十分に小さいと考えることができるので、NO/NSがΔDだけ増加しても、画質の劣化は十分に小さいと考えられる。
【0066】
尚、本形態では、スラブが2個設定された例が示されている。しかし、本発明は、2個のスラブを設定する場合に限定されることはなく、3個以上のスラブを設定する場合にも適用することができる。
【0067】
また、本形態では、スライス枚数を10枚から5枚(8枚)に減らした場合について説明されている。しかし、本発明は、スライス枚数を減らす場合に限定されることはなく、スライス枚数を増やした場合にも適用することができる。スライス枚数を増やした場合は、スラブ厚が変化しないようにスライス厚が小さくなる。したがって、スライス枚数が増えた場合にも、撮影領域の範囲が変化しないようにする(又は撮影領域の範囲ができるだけ変化しないようにする)ことができる。
【0068】
また、本形態では、隣り合うスラブがオーバーラップする場合について説明されている。しかし、本発明は、隣り合うスラブがオーバーラップしない場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
4 受信コイル
5 送信器
6 勾配磁場電源
7 受信器
8 プロセッサ
9 メモリ
10 操作部
11 表示部
12 被検体
21 ボア
100 MR装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10