(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
設計データから描画データを生成する一連の処理を定義するジョブチケットを更新する際に使用するパターン描画装置用のGUI装置が備えるコンピュータが読み取り可能なプログラムであって、
前記GUI装置が備える表示部の画面に、更新された更新設計データに関する情報を入力するための設計データ情報入力部を表示する設計データ情報入力部表示機能と、
前記GUI装置が備える操作部により前記設計データ情報入力部に入力された情報に関係するジョブチケットに関する情報を前記画面に表示するジョブチケット情報表示機能と、
前記ジョブチケット情報表示機能により前記画面に表示されたジョブチケットに関する情報の中から、前記操作部により選択された設計データを前記更新設計データに置き換えるべきジョブチケットとして前記操作部により選択されたジョブチケットに関する情報を前記画面上で強調表示するジョブチケット強調表示機能と、
前記ジョブチケット強調表示機能により前記画面上で強調表示された情報と対応するジョブチケットに対して前記設計データを前記更新設計データに置き換える指示を入力するための入力部を前記画面に表示する置換え指示入力表示機能と、
をコンピュータに発揮させることを特徴とするプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
<システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態であるパターン描画システム4を含む図形描画システム400を示す図である。この図形描画システム400は、例えば円形状の半導体基板(以下、単に「基板」と称す)上のフォトレジスト膜を選択的に露光することにより、フォトレジスト膜に回路パターンに相当する図形を直接描画するシステムである。
【0019】
図形描画システム400は、LANなどのネットワークNを介して相互に接続された設計データ作成装置1、画像処理装置3および直接描画装置100を備える。画像処理装置3はGUI装置2を備える。
【0020】
設計データ作成装置1は、描画対象物である基板に描画すべきパターン領域を記述したデータの作成および編集を行う装置である。具体的に、データはCAD(Computer Aided Design)によってベクトル形式で記述された図形データとして作成される。設計データ作成装置1で作成された設計データD0は、画像処理装置3および直接描画装置100にネットワークNを介してそれぞれ送信される。また、設計データ作成装置1は初期の設計データD0が示すパターンの形状や線幅寸法を変更して更新設計データD1(D2・・・)を作成する。設計データ作成装置1は既に更新履歴のある更新設計データをさらに更新して更新設計データを作成する場合もある。なお、本明細書において設計データD0または更新設計データD1等を単に「設計データ」と総称する場合もある。設計データ作成装置1で作成された設計データD0,D1等は画像処理装置3および直接描画装置100にネットワークNを介してそれぞれ送信される。
【0021】
画像処理装置3は、ネットワークNを介して送信された設計データD0や更新設計データD1等に対してジョブチケットJTを作成する。ジョブチケットJTとは、設計データD0や更新設計データD1等をRIP(Raster Image Processing)展開して描画データであるラスターデータを生成するための一連の動作を定義するものである。例えば、RIP展開時にパターンの線幅等の寸法を太らせ処理や細らせ処理して変更し、描画データを生成する場合、処理に応じて異なるRIP展開処理が複数、存在する。この複数のRIP展開処理のいずれのRIP展開処理により、設計データD0や更新設計データD1等をRIP展開するかを関連付けて定義したものがジョブチケットJTである。画像処理装置3により作成されたジョブチケットJTはネットワークNを介して直接描画装置100に送信される。
【0022】
<GUI装置の構成>
GUI装置2は画像処理装置3に設けられ、操作者に対するグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface)として機能する。
図2はGUI装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0023】
GUI装置2は例えばコンピュータ5であって、CPU230、ROM231、メモリ232、メディアドライブ233、表示部200、操作部234などを備える。これらのハードウェアは、それぞれバスライン235によって電気的に接続されている。
【0024】
CPU230は、ROM231に記憶されたプログラム(または、メディアドライブ233によって読み込まれたプログラム)Pに基づいて、上記ハードウェア各部を制御し、コンピュータ5(GUI装置2)の機能を実現する。プログラムPはコンピュータ5により読み取り可能であり、各機能をコンピュータ5に発揮させるものである。
【0025】
ROM231は、GUI装置2の制御に必要なプログラムPやデータを予め格納した読み出し専用の記憶装置である。メモリ232は、読み出しと書き込みとが可能な記憶装置であり、CPU230による演算処理の際に発生するデータなどを一時的に記憶する。メモリ232は、SRAM、DRAMなどで構成される。メモリ232には設計データD0、更新設計データD1等およびジョブチケットJTに関する情報が保存されている。
【0026】
メディアドライブ233は、記録媒体Mに記憶されている情報を読み出す機能を有する。部である。記録媒体Mは、例えば、CD−ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスクなどの可搬性記録媒体である。
【0027】
表示部200は、カラーLCDのようなディスプレイ等を備え、その画面にGUI操作用の画像、各種のデータおよび動作状態などを可変表示する。
【0028】
操作部234は、キーボードおよびマウスを有する入力デバイスであり、コマンドや各種データの入力といったユーザ操作を受け付ける。この操作部234を用いて、操作者は表示部200に表示されたGUI操作画面に対して各種の情報を入力して、表示部200の画面を操作する。
【0029】
図3はGUI装置2の機能構成を示すブロック図である。この
図3は上記
図2に示されるプログラムPによりGUI装置2のハードウェア構成が発揮する各機能をブロック図で示しているが、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0030】
図3に示すようにGUI装置2は表示制御部240を備える。この表示制御部240は、表示部200の画面表示を制御するものであって、設計データ情報入力部241、ジョブチケット情報表示部242、ジョブチケット強調表示部243、置換え指示入力表示部244、更新候補表示部245、絞込み情報入力表示部246およびレイアウト表示部247を有する。表示制御部2は操作者による表示部200に対する操作部234による操作によって各部の機能を実現させるが、その詳細は動作の説明において後述する。
【0031】
<設計データ更新からの全体フロー>
図4は設計データ更新から描画実行までの流れを示すフロー図である。まず、ステップS10にて、操作者は設計データD0を更新する際に、設計データ作成装置1を用いて設計データD0を修正して、更新設計データD1等を作成する(設計データ更新工程)。上述のように更新設計データをさらに更新して更新設計データを作成する場合もある。作成された更新設計データD1等はネットワークNを介して、設計データ作成装置1から画像処理装置3および直接描画装置100にそれぞれ送信される。
【0032】
次にステップS20のジョブチケット更新工程にて、操作者はGUI装置2を用いて画像処理装置3に送信された更新設計データD1等を適用するジョブチケットJTを選択して、ジョブチケット中の設計データを更新設計データD1等に置き換えてジョブチケットJTを更新する。このジョブチケット更新工程の詳細は後述する。更新されたジョブチケットJTはネットワークNを介して画像処理装置3から直接描画装置100に送信される。
【0033】
次にステップS30の描画データ生成工程にて、直接描画装置100は更新設計データD1等に対してジョブチケットJTで定義されたRIP展開処理等を実行して描画データを生成する。この描画データを用いて直接描画装置100は描画対象物である基板に対する描画動作を実行する(ステップS40 描画実行工程)。直接描画装置100の構成および動作については後述する。なお、ステップS30の描画データ生成工程を、直接描画装置100ではなく、画像処理装置3にて実行しても良い。この場合、画像処理装置3で生成された描画データが直接描画装置100にネットワークNを介して送信される。
【0034】
<ジョブチケットの更新作業>
上述の
図4に示すジョブチケット更新工程(ステップS20)の詳細について
図5を参照して説明する。
図5はジョブチケットの更新作業の流れを示すフロー図である。
【0035】
まず、
図5に示すステップS210にて、GUI装置2は、表示部200の画面に初期画面を表示する(初期画面表示工程)。初期画面は例えば
図6に示す画面である。
図6に示すように初期画面は、タイプ入力部81、データ名入力部82、チケットリスト表示部83、After入力部84、Before入力部85、Upper入力部86、Under入力部87、Searchボタン88、タイプ変更部89、履歴表示部90、更新ボタン91、確認表示部92、OKボタン93およびCancelボタン94などを含む。
【0036】
初期画面は、
図3に示す表示制御部240の各機能部により表示され、例えば、設計データ情報入力部241の機能により、
図6のタイプ入力部81およびデータ名入力部82が画面に表示される。また、ジョブチケット情報表示部242の機能によりチケットリスト表示部83が画面に表示される。
【0037】
また、置換え指示入力表示部244の機能により入力部である更新ボタン91、OKボタン93およびCancelボタン94が画面に表示され、更新候補表示部245により履歴表示部90が画面に表示される。さらに、絞込み情報入力表示部246の機能により入力部であるAfter入力部84、Before入力部85、Upper入力部86、Under入力部87およびSearchボタン88が画面に表示され、レイアウト表示部247の機能により確認表示部92が画面に表示される。
【0038】
図5に戻り次の工程であるステップS220の更新設計データ入力工程について説明する。この工程では、操作者が操作部234を用いて初期画面のタイプ入力部81に更新される前の設計データD0または更新設計データD1等が属するタイプ(CAD Data Type)を入力する。なお、このタイプの入力は省略しても良い。次に操作者は操作部234を用いてデータ名入力部82に設計データD0または設計更新データD1等のデータ名(CAD Data Name)を入力する。この際、タイプ入力部81にタイプが入力されている場合は、データ名入力部82に連動するプルダウンメニューに、入力されたタイプに属するデータ名の一覧が表示されるので、この一覧から所望のデータ名を選択して入力しても良い。上記データ名は更新された更新設計データD1等に関する情報の一種である。
【0039】
図7はタイプ入力部81にタイプ「A」が入力され、データ名入力部82にデータ名「AAA.gds」が入力されている状態を示している。データ名入力部82にデータ名「AAA.gds」が入力されると、チケットリスト表示部83に当該データ名に関係するジョブチケットJTの一覧(Ticket (Referenced CAD Data) List)がジョブチケット情報表示部242の機能により表示される。換言すれば、チケットリスト表示部83には上記データ名が付された設計データをRIP展開等する一連の動作を定義したジョブチケットJTの一覧が表示される。
【0040】
図7では3個のジョブチケット「AA1」、「AA2」、「AA3」が表示されている。一覧中の1行が1個のジョブチケットJTを示す。一覧の1列目はチケット名(Ticket Name)を示している。2列目のチップレイアウト(Chip Layout)は画像処理装置3によりチップ内のパターン形状や線幅を変更するなどのレイアウト作業を行ったか否か示し、
図7のように「True」と表示されている場合はレイアウト作業を行ったことを示している。レイアウト作業を行っていない場合は「False」と表示される。
【0041】
同様に、3列目の基板レイアウト(Wafer Layout)は、画像処理装置3により描画対象物である基板に対する複数のチップの配置位置を決めるレイアウト作業を行ったか否か示し、
図7のように「True」と表示されている場合はレイアウト作業を行ったことを示している。レイアウト作業を行っていない場合は「False」と表示される。
【0042】
4列目のRIP名(Rip Name)が表示される。RIP名はRIP展開処理の種類に応じて付されている。
図7の例では1行目のチケット名が「AA1」のジョブチケットJTではRIP名が「AA1.gds−123」と付されたRIP展開処理が設計データD0または更新設計データD1等に対して実行されることが定義されている。同様に2行目の「AA2」のジョブチケットJTでは「AA2.gds−345」のRIP展開処理が実行されるように定義され、3行目の「AA3」のジョブチケットJTでは「AA3.gds−6785」のRIP展開処理が実行されるように定義されている。
【0043】
上述の複数のRIP展開処理は、例えば、パターン線幅の太らせ処理や細らせ処理がそれぞれ異なるRIP展開処理である。換言すれば、複数のジョブチケットJT(AA1,AA2,AA3)は同一の設計データD0または更新設計データD1等に対して、それぞれ異なるRIP展開処理を施すことを定義している。
【0044】
4列目の更新日(Modified Day)はジョブチケットJTが更新された日を表示している。なお、ジョブチケットJTにて定義される項目は
図7に示される項目に限定されず、例えば、更新作業を行った作業者の氏名を項目として含めても良い。
【0045】
図7に示すように、チケットリスト表示部83に更新された更新設計データD1等に関する情報であるデータ名に関係するジョブチケットJTの一覧がジョブチケット情報表示部242により表示されるので、設計データの更新に伴って更新する必要のある所望のジョブチケットJTを簡易に選択することができる。
【0046】
図5に戻りステップS230のジョブチケット選択工程では、画面に表示されたジョブチケットの一覧から更新すべきジョブチケットを操作者が選択する。
図7ではチケットリスト表示部83に表示された3個のジョブチケットJTの中から操作者が操作部234により2行目のジョブチケットJTである「AA2」を更新対象のジョブチケットJTとして選択した状態を示している。
図7では2行目にハッチングを施しているが、実際の画面ではジョブチケット強調表示部243の機能により、例えば、他の行よりも濃く表現するなど濃淡を付して選択されたジョブチケットJTを表現して強調表示を実現している。なお、強調表示の手法は、選択されたジョブチケットと選択されていないジョブチケットJTとの区別が画面上で視認できる手法であれば、どのような手法でも良い。
【0047】
更新対象のジョブチケットJTが選択されると、この選択動作に連動して更新候補表示部245の機能により、
図7の履歴表示部90に選択されたジョブチケットJTの設計データの履歴が更新可能な更新設計データである更新候補設計データとして更新候補表示部245の機能により画面に表示される。
図7の例では4個の更新履歴(更新候補設計データ)が4行で示されているが、データ名が「AAA.gds」である設計データが当該ジョブチケットJTにおいて、更新日(Date)に示される日に、4回、更新され、それぞれシリアル番号(Serial No.)が付されている。
【0048】
ここで、初期の設計データD0をシリアル番号が「1」の設計データ「AAA.gds」とし、最初に更新された後の更新設計データD1をシリアル番号が「2」の設計データ「AAA.gds」とし、順次、更新設計データD2のシリアル番号は「3」、更新設計データD3のシリアル番号は「4」とする。
【0049】
チケットリスト表示部83でのジョブチケットJTの選択動作に連動して、選択されたジョブチケットJTにおける現状の設計データが更新候補表示部245の機能により履歴表示部90にて強調表示される。
図7の例では選択されたジョブチケットJTにおける現状の設計データが履歴表示部90に表示された2行目のシリアル番号が「2」の更新設計データD1であることが強調表示されて示されている。
図7では2行目にハッチングを施しているが、実際の画面では例えば、他の行よりも濃く表現するなど濃淡を付して現状の設計データを強調表示する。このように現状の設計データが更新候補表示部245の機能により強調表示されるので、操作者は現状の設計データを容易に把握することができる。
【0050】
上述のようにジョブチケットJTにおける現状の設計データ(更新前設計データ)が、シリアル番号が「2」の更新設計データD1であるから、更新候補設計データは他の設計データであるシリアル番号が「1」の設計データD0、シリアル番号が「3」の更新設計データD2、シリアル番号が「4」の更新設計データD3のいずれかである。
【0051】
また、チケットリスト表示部83でのジョブチケットJTの選択動作に連動して、
図7に示すように確認表示部92に当該ジョブチケットJTに従ってパターン描画されるチップレイアウトの画像がレイアウト表示部247の機能により表示される。このレイアウト画像は、描画対象物である円形状の基板外形95と、基板内にレイアウトされた複数のチップ(ブロック)96を含む。
【0052】
図7では基板内に完全に複数のチップ96が含まれる領域97内にチップ96がレイアウトされている状態が表示されている。また、レイアウト表示部247の機能によりチップ96を拡大表示してチップ96内のパターンを表示することも可能である。操作者は確認表示部92に表示された画像を確認することにより、当該ジョブチケットJTに従ってパターン描画されるチップ96内のパターン形状やチップ96のレイアウトを容易に把握することができる。
【0053】
次に
図5に示すステップS240の置換え工程について説明する。
図7に示す例では、チケットリスト表示部83で選択された2行目の「AA2」のジョブチケットJTにおいて、現状の設計データは履歴表示部90にて強調表示されているシリアル番号が「2」の「AAA.gds」であり、この設計データは上述のように更新設計データD1に相当する。
【0054】
上記更新設計データD1を更新設計データD3に相当するシリアル番号が「4」の「AAA.gds」に置き換える場合、
図8に示すように操作者は操作部234を用いて、履歴表示部90の4行目のシリアル番号が「4」の「AAA.gds」を選択する。選択された4行目は
図8においてハッチングを施しているが、実際の画面では更新候補表示部245の機能により、例えば、他の行よりも濃く表現するなど濃淡を付して強調表示される。
【0055】
この状態で操作者は操作部234のマウス等により更新ボタン91(Replace CAD Data)をクリックして、置換え指示入力表示部244の機能により入力指示を行う。この結果、「AA2」のジョブチケットJTにおける設計データが更新設計データD1から更新設計データD2に置き換わる。この置換え動作に連動して、確認表示部92に表示される内容が更新設計データD2に基づく内容に切り替わり、例えば、チップ96内の表示内容が変更される。
【0056】
操作者は確認表示部92の内容などを確認した後、設計データの置換えを決定する場合は、操作部234のマウス等によりOKボタン93をクリックして入力指示を行い、置換え工程を完了し、ジョブチケットJTの更新作業が終了する。設計データの置換えを決定せずに、他の設計データへの置き換えを検討する場合は、操作者は操作部234のマウス等によりCancelボタン94をクリックして入力指示を行った後、履歴表示部90に表示されている他のシリアル番号の設計データ(AAA.gds)を選択する作業に戻る。
【0057】
図3に示す絞込み情報入力表示部246の機能により画面に表示される入力部であるAfter入力部84、Before入力部85、Upper入力部86、Under入力部87およびSearchボタン88は、履歴表示部90に表示される更新候補の設計データを絞り込む際に用いられる。例えば、After入力部84のチェックボックスをチェックして、日付を入力した後、Searchボタン88をクリックすると、当該日付以降に更新された更新設計データのみが履歴表示部90に表示される。同様に、Before入力部85に日付を入力すると当該日付以前に更新された更新設計データのみが、履歴表示部90に表示される。After入力部84およびBefore入力部85の両方に日付が入力された場合は所定期間内に更新された更新設計データのみが、履歴表示部90に表示される。
【0058】
また、例えば、Upper入力部86のチェックボックスをチェックして、シリアル番号を入力した後、Searchボタン88すると、当該シリアル番号以上のシリアル番号を有する更新設計データのみが履歴表示部90に表示される。同様に、Under入力部87にシリアル番号を入力すると当該シリアル番号以下のシリアル番号を有する更新設計データのみが履歴表示部90に表示される。Upper入力部86およびUnder入力部87の両方にシリアル番号が入力された場合は、所定番号内のシリアル番号を有する更新設計データのみが、履歴表示部90に表示される。このような絞込み情報入力表示部246の機能があれば、置換え可能な更新設計データが多数ある場合に、その数を絞り込んで減らすことができるので、更新作業を効率的に行うことができる。
【0059】
図6等に示されるタイプ変更部89はデータ名入力部82に入力された設計データD0または更新設計データD1が属するタイプを変更する場合やタイプ名が設定されていない場合にタイプ名を設定する場合などに利用され、変更後のタイプ名や初期のタイプ名が入力される。
【0060】
<直接描画装置の構成>
次に直接描画装置100の構成について
図9および
図10を参照して説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る直接描画装置100の側面図であり、
図10は
図9に示す直接描画装置100の平面図である。直接描画装置100はフォトマスクを用いない露光装置であるため、様々なパターン描画に好適に対応できる。また、直接描画装置100を有するパターン描画システム4では、様々なパターンに対応するために設計データが頻繁に更新されるので、上記GUI装置2が好適に用いられる。
【0061】
この直接描画装置100は、フォトレジスト膜(感光性材料)が表面に付与された半導体基板やガラス基板等の基板Wの表面に空間変調された光ビームを走査して露光パターンを描画する装置である。具体的には、マルチチップモジュールの製造工程において、描画対象物である支持基板(以下、単に「基板」という。)Wの表面に形成された感光性を有するフォトレジスト膜に、配線パターンを描画するための装置である。基板Wは円形状であり、その外周縁の一部にノッチと呼ばれる切り欠きが形成されている。ノッチに替えて基板Wの外周縁の一部にオリエンテーションフラットが設けられている場合もある。また、直接描画装置100は基板W内を区画するブロック(チップ)単位でパターン描画処理を施すパターン描画装置である。なお、直接描画装置100の描画動作は上述のジョブチケットJTを用いて実行される。
【0062】
図9および
図10に示したように、直接描画装置100は、主として、基板Wを保持するステージ10と、ステージ10を移動させるステージ移動機構20と、ステージ10の位置に対応した位置パラメータを計測する位置パラメータ計測機構30と、基板Wの表面にパルス光を照射する光学ヘッド部50と、1つのアライメントカメラ60と、制御部70とを備えている。
【0063】
また、この直接描画装置100では、本体フレーム101に対してカバー102が取り付けられて形成される本体内部に装置各部が配置されて本体部が構成されるとともに、本体部の外側(本実施形態では、
図9に示すように本体部の右手側)に基板収納カセット110が配置されている。この基板収納カセット110には、露光処理を受けるべき未処理基板Wが収納されており、本体内部に配置される搬送ロボット120によって本体部にローディングされる。また、未処理基板Wに対して露光処理(パターン描画処理)が施された後、当該基板Wが搬送ロボット120によって本体部からアンローディングされて基板収納カセット110に戻される。このように、搬送ロボット120が搬送部として機能している。
【0064】
この本体部では、
図10に示すように、カバー102に囲まれた本体内部の右手端部に搬送ロボット120が配置されている。また、この搬送ロボット120の左手側には基台130が配置されている。この基台130の一方端側領域(
図9および
図10の右手側領域)が、搬送ロボット120との間で基板Wの受け渡しを行う基板受渡領域となっているのに対し、他方端側領域(
図9および
図10の左手側領域)が基板Wへのパターン描画を行うパターン描画領域となっている。この基台130上では、基板受渡領域とパターン描画領域の境界位置にヘッド支持部140が設けられている。このヘッド支持部140では、
図10に示すように、基台130から上方に2本の脚部材141、142が立設されるとともに、それらの脚部材141、142の頂部を橋渡しするように梁部材143が横設されている。そして、
図9に示すように、梁部材143のパターン描画領域側の反対側にアライメントカメラ(撮像部)60が固定されて、後述するようにステージ10に保持された基板Wの表面(被描画面、被露光面)上の複数のアライメントマークや下層パターンを撮像可能となっている。
【0065】
基板Wを支持する支持部であるステージ10は基台130上でステージ移動機構20によりX方向、Y方向ならびにθ方向に移動される。すなわち、ステージ移動機構20は、ステージ10を水平面内で2次元的に移動させて位置決めするとともに、θ軸(鉛直軸)周りに回転させて後述する光学ヘッド部50に対する相対角度を調整して位置決めする。
【0066】
また、このように構成されたヘッド支持部140に対して光学ヘッド部50が上下方向に移動自在に取り付けられている。このようにヘッド支持部140に対し、アライメントカメラ60と光学ヘッド部50とが取り付けられており、XY平面内での両者の位置関係は固定化されている。また、この光学ヘッド部50は、基板Wへのパターン描画を行うもので、ヘッド移動機構(図示省略)により上下方向に移動される。そして、ヘッド移動機構が作動することで、光学ヘッド部50が上下方向に移動し、光学ヘッド部50とステージ10に保持される基板Wとの距離を高精度に調整可能となっている。このように、光学ヘッド部50が描画ヘッドとして機能している。
【0067】
また、基台130の基板受渡側と反対側の端部(
図9および
図10の左手側端部)においても、2本の脚部材141,142が立設されている。そして、梁部材143と2本の脚部材141,142の頂部とを橋渡しするように光学ヘッド部50の光学系を収納したボックス172が設けられており、基台130のパターン描画領域を上方から覆っている。
【0068】
ステージ10は、円筒状の外形を有し、その上面に基板Wを水平姿勢に載置して保持するための保持部である。ステージ10の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されている。このため、ステージ10上に基板Wが載置されると、基板Wは、複数の吸引孔の吸引圧によりステージ10の上面に吸着固定される。なお、本実施形態において描画処理の対象となる基板Wの表面(主面)には、フォトレジスト(感光性材料)膜がスピンコート法(回転式塗布方法)などにより予め形成されている。
【0069】
ステージ移動機構20は、直接描画装置100の基台130に対してステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、および回転方向(Z軸周りの回転方向)に移動させるための機構である。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転させる回転機構21と、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート22と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23と、副走査機構23を介して支持プレート22を支持するベースプレート24と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25と、を有している。
【0070】
回転機構21は、ステージ10の内部に取り付けられた回転子により構成されたモータを有している。また、ステージ10の中央部下面側と支持プレート22との間には回転軸受機構が設けられている。このため、モータを動作させると、回転子がθ方向に移動し、回転軸受機構の回転軸を中心としてステージ10が所定角度の範囲内で回転する。
【0071】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子とベースプレート24の上面に敷設された固定子とにより副走査方向の推進力を発生させるリニアモータ23aを有している。また、副走査機構23は、ベースプレート24に対して支持プレート22を副走査方向に沿って案内する一対のガイドレール23bを有している。このため、リニアモータ23aを動作させると、ベースプレート24上のガイドレール23bに沿って支持プレート22およびステージ10が副走査方向に移動する。
【0072】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子とヘッド支持部140の上面に敷設された固定子とにより主走査方向の推進力を発生させるリニアモータ25aを有している。また、主走査機構25は、ヘッド支持部140に対してベースプレート24を主走査方向に沿って案内する一対のガイドレール25bを有している。このため、リニアモータ25aを動作させると、基台130上のガイドレール25bに沿ってベースプレート24、支持プレート22、およびステージ10が主走査方向に移動する。なお、このようなステージ移動機構20としては、従来から多用されているX−Y−θ軸移動機構を用いることができる。
【0073】
位置パラメータ計測機構30は、レーザ光の干渉を利用してステージ10についての位置パラメータを計測するための機構である。位置パラメータ計測機構30は、主として、レーザ光出射部31、ビームスプリッタ32、ビームベンダ33、第1の干渉計34および第2の干渉計35を有する。
【0074】
レーザ光出射部31は、計測用のレーザ光を出射するための光源装置である。レーザ光出射部31は、固定位置、すなわち本装置の基台130や光学ヘッド部50に対して固定された位置に設置されている。レーザ光出射部31から出射されたレーザ光は、まず、ビームスプリッタ32に入射し、ビームスプリッタ32からビームベンダ33へ向かう第1の分岐光と、ビームスプリッタ32から第2の干渉計35へ向かう第2の分岐光とに分岐される。
【0075】
第1の分岐光は、ビームベンダ33により反射され、第1の干渉計34に入射するとともに、第1の干渉計34からステージ10の−Y側の端辺の第1の部位(ここでは、−Y側の端辺の中央部)10aに照射される。そして、第1の部位10aにおいて反射した第1の分岐光が、再び第1の干渉計34へ入射する。第1の干渉計34は、ステージ10へ向かう第1の分岐光とステージ10から反射した第1の分岐光との干渉に基づき、ステージ10の第1の部位10aの位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0076】
一方、第2の分岐光は、第2の干渉計35に入射するとともに、第2の干渉計35からステージ10の−Y側の端辺の第2の部位(第1の部位10aとは異なる部位)10bに照射される。そして、第2の部位10bにおいて反射した第2の分岐光が、再び第2の干渉計35へ入射する。第2の干渉計35は、ステージ10へ向かう第2の分岐光とステージ10から反射した第2の分岐光との干渉に基づき、ステージ10の第2の部位10bの位置に対応した位置パラメータを計測する。第1の干渉計34および第2の干渉計35は、それぞれの計測により取得された位置パラメータを、制御部70へ送信する。
【0077】
光学ヘッド部50は、ステージ10上に保持された基板Wの表面に向けてパルス光を照射する光照射部である。光学ヘッド部50は、ステージ10およびステージ移動機構20を跨ぐようにして基台130上に架設された梁部材143と、梁部材143上に副走査方向の略中央に設けられた1つの光学ヘッド部50とを有する。光学ヘッド部50は、照明光学系53を介して1つのレーザ発振器54に接続されている。また、光源であるレーザ発振器54には、レーザ発振器54の駆動を行うレーザ駆動部55が接続されている。レーザ駆動部55を動作させると、レーザ発振器54からパルス光が出射され、当該パルス光が照明光学系53を介して光学ヘッド部50の内部に導入される。
【0078】
光学ヘッド部50の内部には、照明光学系53から光学ヘッド部50の内部にパルス光を導入部から導入し、導入されたパルス光は、所定のパターン形状に成形された光束としてパルス光が基板Wの表面に照射され、基板W上のフォトレジスト膜(感光層)を露光することにより、基板Wの表面にパターンが描画される。
【0079】
図9の直接描画装置100では、光源であるレーザ発振器54がボックス172内に設けられ、照明光学系53を介してレーザ発振器54からの光が光学ヘッド部50の内部へと導入される。本実施の形態における基板Wの主面上には紫外線の照射により感光するフォトレジスト(感光性材料)膜が予め形成されており、レーザ発振器54は、波長λが約365nmの紫外線(i線)を出射するレーザ光源である。もちろん、レーザ発振器54は基板Wの感光性材料が感光する波長帯に含まれる他の波長の光を出射するものであってもよい。
【0080】
図11は直接描画装置100の照明光学系53および投影光学系517を示す図である。
図9に示すレーザ発振器54からの光は、
図11に示す照明光学系53およびミラー516を介して、光変調ユニット512の空間光変調器511に照射される。空間光変調器511にて空間変調された光は投影光学系517を介して、ステージ10に支持された基板W上に照射される。
【0081】
照明光学系53は、テレスコープ540、コンデンサレンズ541、アッテネータ542およびフォーカシングレンズ543を備える。テレスコープ540は、光(レーザビーム)のビーム径(断面形状)をXおよびZ方向に広げる機能を有し、3枚のレンズから構成される。コンデンサレンズ541は、レーザビームをX方向に広げる機能を有する。アッテネータ542は、通過するレーザビームのエネルギー量(透過量)を調整する。フォーカシングレンズ543は、レーザビームの断面寸法をZ方向において縮小させる機能を有する。フォーカシングレンズ543から出射した光(レーザビーム)は、ミラー516を介して、X方向に延びるとともに、Y方向には縮小された線状の照明光として空間光変調器511に照射される。なお、照明光学系53は必ずしも
図11に示されるように構成される必要はなく、他の光学素子が追加されてもよい。
【0082】
照明光学系53から空間変調器511に照射される光は、空間光変調器511から反射した正反射光(0次光)が後述する投影光学系の遮蔽板521の開口を通過し、空間光変調器511から発生した(±1)次回折光が遮蔽板521にて遮蔽されるために、平行光に近い方が好ましい。このため、照明光学系53の開口数NA1が0(ゼロ)よりも大きく、かつ、0.06以下に設定されている。なお、開口数NA1は、X方向に延びる線状の照明光が貫く、YZ平面における照明光の光軸に対する最大角度をθ1とすると、NA1=n・sinθ1により求められる。但し、nは媒質の屈折率であり、本実施形態の場合、媒質は空気であるので、屈折率nは1である。
【0083】
投影光学系517は、4枚のレンズ518,519,520,522と、遮蔽板(絞り部材)521、ズームレンズ523およびフォーカシングレンズ524を備える。投影光学系517のレンズ518,519,520,522および遮蔽板521は両側テレセントリックとなるシュリーレン(Schrieren)光学系を構築しており、レンズ520を通過した光は開口を有する遮蔽板521へと導かれ、一部の光(正反射光(0次光))は開口を通過してレンズ522へと導かれ、残りの光((±1)次回折光)は遮蔽板521にて遮蔽される。レンズ522を通過した光はズームレンズ523へと導かれ、フォーカシングレンズ524を介して所定の倍率にて基板W上のフォトレジスト膜(感光性材料)へと導かれる。なお、投影光学系517は必ずしも
図11に示されるように構成される必要はなく、他の光学素子が追加されてもよい。
【0084】
焦点位置(フォーカス位置)に応じた基板W上に照射される光の径(幅)の変化を小さくするために、投影光学系517の被写界深度を長く(深く)設定する必要がある。このため、投影光学系517の開口数NA2は小さい方が好ましく、例えば0.1に設定されている。なお、開口数NA2は、X方向に延びる線状の投影光が貫く、YZ平面における投影光の光軸に対する最大角度をθ2とすると、NA2=n・sinθ2により求められる。但し、nは媒質の屈折率であり、本実施形態の場合、媒質は空気であるので、屈折率nは1である。
【0085】
照明光学系53の開口数NA1を投影光学系517の開口数NA2で除した値(σ値)は、上述のように、空間光変調器511で反射された正反射光を所望の形状で基板W上に照射するために、0に近い方が好ましく、例えば、0より大きく、かつ、0.6以下に設定されている。
【0086】
空間光変調器511には光変調ユニット512の変調制御を行う描画制御部515が電気的に接続されている。描画制御部515および投影光学系517は光学ヘッド部50に内蔵されている。描画制御部515には、露光制御部514と描画信号処理部513がそれぞれ電気的に接続されている。露光制御部514には、描画信号処理部513とステージ移動機構20が電気的に接続されている。露光制御部514および描画信号処理部513は
図13の制御ユニット70内に設けられている。
【0087】
図12は、空間光変調器511を拡大して示す図である。
図12に示す空間光変調器511は半導体装置製造技術を利用して製造され、格子の深さを変更することができる回折格子となっている。空間光変調器511には複数の可動リボン530aおよび固定リボン531bが交互に平行に配列形成され、後述するように、可動リボン530aは背後の基準面に対して個別に昇降移動可能とされ、固定リボン531bは基準面に対して固定される。回折格子型の空間光変調器としては、例えば、GLV(Grating Light Valve:グレーチング・ライト・バルブ)(シリコン・ライト・マシーンズ(サンノゼ、カリフォルニア)の登録商標)が知られている。
【0088】
固定リボン531bの上面には固定反射面が設けられ、可動リボン530aの上面には可動反射面が設けられている。複数の可動リボン530aおよび固定リボン531b上には、光束断面が配列方向に長い線状の光が照射される。空間光変調器511では、隣接する各1本の可動リボン530aおよび固定リボン531bを1つのリボン対を格子要素とすると、互いに隣接する3個以上の格子要素が描画されるパターンの1つの画素に対応する。本実施の形態では、互いに隣接する4個の格子要素の集合が1つの画素に対応する変調素子とされ、
図12では1つの変調素子を構成するリボン対の集合を符号535が付せられた太線の矩形にて囲んでいる。
【0089】
ドライバ回路ユニット536は、可動リボン530aと基準面の間に電圧(電位差)を与えることにより、可動リボン530aを基準面側に撓ませる。この結果、可動リボン530aは基準面から離間した初期位置と、基準面に接触した位置との間で昇降移動して、可動リボン530aの高さ位置が設定される。
【0090】
図9に示す制御部70は、種々の演算処理を実行しつつ、直接描画装置100内の各部の動作を制御するための情報処理部である。
図13は、直接描画装置100の上記各部と制御部70との間の接続構成を示したブロック図である。
図13に示すように、制御部70は、上記の回転機構21、リニアモータ23a,25a、レーザ光出射部31、第1の干渉計34、第2の干渉計35、照明光学系53、レーザ駆動部55、投影光学系517およびアライメントカメラ60と電気的に接続されている。制御部70は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータにより構成され、コンピュータにインストールされたプログラムに従ってコンピュータが動作することにより、上記各部の動作制御を行う。
【0091】
また、上記のように構成された制御部70は描画動作を制御するために
図14に示すように制御部70としてのコンピュータ71はCPUやメモリ72等を有しており、露光制御部514とともに電装ラック(図示省略)内に配置されている。
図14は、描画動作を制御する制御部を示すブロック図である。コンピュータ71内のCPUが所定のプログラムに従って演算処理することにより、ラスタライズ部73およびデータ生成部75が実現される。
【0092】
例えば1つの半導体パッケージに相当するパターンのデータは外部のCAD等により生成されたパターンデータであり、予め配線パターンデータ76としてメモリ72に準備されており、当該配線パターンデータ76とデータ生成部75に基づき後述するようにして半導体パッケージの描画パターンが基板W上に描画される。なお、ここでは、コンピュータ71が
図11に示す描画信号処理部513の役割を担っている。
【0093】
上記配線パターンデータ76は、
図1に示す設計データ作成装置1からネットワークNを介して直接描画装置100に送信された上述の設計データD0または更新設計データD1等に相当する。また、メモリ72には画僧処理装置2からネットワークNを介して直接描画装置100に送信された上述のジョブチケットJTも保存されている。
【0094】
ラスタライズ部73は、データ生成部75によって生成された描画データが示す単位領域を分割してラスタライズし、ラスターデータ77を生成しメモリ72に保存する。こうしてラスターデータ77の準備後、または、ラスターデータ77の準備と並行して、未処理の基板Wが描画される。上述のラスタライズは上記ジョブチケットJTで定義されたRIP展開処理等に従って実行され、本願発明の描画データに相当するラスターデータ77が生成される。
【0095】
こうして生成された描画データは、データ生成部75から露光制御部514へと送られ、露光制御部514が光変調ユニット512、ステージ移動機構20の各部を制御することにより1ストライプ分の描画が行われる。なお、露光制御部514による光変調ユニット512の制御は
図15に示すように描画制御部515を介して実行される。そして、1つのストライプに対する露光記録が終了すると、次の分割領域に対して同様の処理が行われ、ストライプごとに描画が繰り返される。本発明の制御部は、本実施形態では制御部70、描画制御部515、露光制御部514およびドライバ回路ユニット536などにより実現されている。
【0096】
また、直接描画装置100は、ストライプごとの描画動作の際に、
図11に示す描画制御部515を介して実行される露光制御部514による光変調ユニット512の制御により、基板Wを区画する複数のブロック(チップ)ごとに設定された露光条件に基づいてブロック単位で露光動作を実行する。このブロック(チップ)は、
図8に示す確認表示部92に表示されたチップ96に相当する。
【0097】
本実施形態では
図14に示すコンピュータ71が直接描画装置100に設けられているが、このコンピュータ71を
図1に示す画像処理装置3内に設けても良い。この場合、上記ラスタライズ(RIP展開)等が画像処理装置3で実行され、生成されたラスターデータ(描画データ)が、ネットワークNを介して直接描画装置100に送信される。
【0098】
<ステージの位置制御>
この直接描画装置100は、上記の第1の干渉計34、第2の干渉計35の各計測結果に基づいてステージ10の位置を制御する機能を有する。以下では、このようなステージ10の位置制御について説明する。
【0099】
既述の通り、第1の干渉計34および第2の干渉計35は、それぞれ、ステージ10の第1の部位10aおよび第2の部位10bの位置に対応した位置パラメータを計測する。第1の干渉計34および第2の干渉計35は、それぞれの計測により取得された位置パラメータP1,P2を、制御部70へ送信する。
図14に示したように、制御部70は、算出部としてのコンピュータ71を有する。このコンピュータ71の機能は、例えば、コンピュータ71のCPUが所定のプログラムに従って動作することにより実現される。
【0100】
一方、制御部70は、第1の干渉計34および第2の干渉計35から送信された位置パラメータに基づいてステージ10の位置(Y軸方向の位置およびZ軸周りの回転角度)を算出する。次に、制御部70は、算出されたステージ10の位置を参照しつつ、ステージ移動機構20を動作させることにより、ステージ10の位置やステージ10の移動速度を正確に制御する。ここでは、制御部70は、ステージ10をZ軸周りに回転させることにより、主走査方向の移動に伴うステージ10の傾き(Z軸周りの回転角度のずれ)も補正する。また、制御部70は、算出されたステージ10の位置を参照しつつ、レーザ駆動部55を動作させることにより、基板Wの表面に対するパルス光の照射位置を正確に制御する。
【0101】
<直接描画装置の動作>
続いて、上記の直接描画装置100の動作の一例について、
図15のフロー図を参照しつつ説明する。
【0102】
直接描画装置100において基板Wの処理を行うときには、まず、光学ヘッド部50から照射されるパルス光の位置や光量を調整するキャリブレーション処理を行う(ステップS1)。キャリブレーション処理においては、まず、ベースプレート24を移動させることにより、図示しないCCDカメラを光学ヘッド部50の下方に配置する。そして、CCDカメラを副走査方向に移動させつつ、光学ヘッド部50からパルス光を照射し、照射されたパルス光をCCDカメラにより撮影する。制御部70は、取得された画像データに基づいて、光学ヘッド部50の照明光学系53を動作させ、これにより、光学ヘッド部50から照射されるパルス光の位置や光量を調整する。
【0103】
キャリブレーション処理が完了すると、次に、作業者または搬送ロボット120が、基板Wを搬入してステージ10の上面に載置する(ステップS2)。
【0104】
続いて、直接描画装置100は、ステージ10上に載置された基板Wと光学ヘッド部50との相対位置を調整するアライメント処理を行う(ステップS3)。上記のステップS2では、基板Wはステージ10上のほぼ所定の位置に載置されるのであるが、微細なパターンを描画するための位置精度としては十分でない場合が多い。このため、アライメント処理を行うことにより基板Wの位置や傾きを微調整して、後続の描画処理の精度を向上させる。
【0105】
アライメント処理においては、まず、基板Wの上面の四隅に形成されたアライメントマークを、アライメントカメラ60によりそれぞれ撮影する。制御部70は、アライメントカメラ60により取得された画像中の各アライメントマークの位置に基づいて、基板Wの理想位置からのずれ量(X軸方向の位置ずれ量、Y軸方向の位置ずれ量、およびZ軸周りの傾き量)を算出する。そして、算出されたずれ量を低減させる方向にステージ移動機構20を動作させることにより、基板Wの位置を補正する。
【0106】
続いて、直接描画装置100は、アライメント処理後の基板Wに対して描画処理を行う(ステップS4)。すなわち、直接描画装置100は、ステージ10を主走査方向および副走査方向に移動させつつ、光学ヘッド部50から基板Wの上面に向けてパルス光を照射することにより、基板Wの上面に規則性パターンを基板W内を区画する複数のブロックごとに描画する。この描画動作は上記描画データに基づいて実行される。
【0107】
描画処理が完了すると、直接描画装置100は、ステージ移動機構20を動作させてステージ10および基板Wを搬出位置に移動させる。そして、作業者または搬送ロボット120が、ステージ10の上面から基板Wを搬出する(ステップS5)。
【0108】
<変形実施>
上記実施形態の直接描画装置100では光学ヘッド部50等に対して基板Wが移動する構成であるが、固体支持された基板Wに対して光学ヘッド部50等を移動させて、相対移動を実現させてもよい。
【0109】
パターン描画装置は上述のようにチップ等が形成される基板Wに対してパターンを描画する直接描画装置100に限らず、例えば、露光処理に用いられるフォトマスクとすべき基板に対してパターンを描画するパターン描画装置であっても良い。