(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記刃部は、前記管状体から前記表層部を取り除いたときの前記内管の長さ方向の露出量が当該内管を接続する接続部材との接続量と等しくなるように配置されている、切断工具。
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記腕部は、少なくとも前記刃部による前記表層部の切断時において、前記管状体に向かって弾性変形可能なものである、切断工具。
請求項1乃至4のいずれか1項において、前記刃部は、少なくとも前記刃部による前記表層部の切断時において、前記管状体に向かってスライド可能なものである、切断工具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のカッターは、前記積層パイプの前記表層部に切り込みを入れるだけのため、当該切り込みを入れた前記表層部を部分的に取り除いて使用する場合、前記筒状発泡体を前記カッターに挿入して軸方向に切込部を形成する工程と、当該切込部を形成した前記筒状発泡体を前記カッターから取り出す工程と、当該切込部のある前記表層部の部分のみを別途の手段によって周方向に切断する工程とが必要になる。
【0007】
また、非特許文献1に記載の表皮カッターを用いて前記表層部を部分的に取り除くには、当該表層部の周方向にマーキング(標線描き)を行う工程と、前記表皮カッターを用いることで前記表層部を軸方向に沿って前記マーキングの位置まで切込部を形成する工程と、前記表皮カッターを用いることで前記マーキングに沿って当該切込部のある前記表層部を周方向に切断する工程とが必要になる。
【0008】
このように従来の切断工具はいずれも、積層パイプから表層部の一部を取り除くための作業工程が煩雑で改善の余地があった。
【0009】
本発明の目的は、作業工数を削減しつつ当該管状体の表層部を部分的に取り除くことができる、切断工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の切断工具は、内管と当該内管を覆う表層部とを有する管状体の前記表層部を切断可能な切断工具であって、前記管状体の長さ方向端面が接触可能な基部と、前記基部から前方に伸びる腕部と、前記腕部に配置され、前記管状体の周方向に回転させたとき、当該管状体の前記表層部を切断可能な刃部と、を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、前記管状体の周方向に回転させるだけで前記表層部のみを切断することができる。
【0011】
本発明では、前記刃部は、前記管状体から前記表層部を取り除いたときの前記内管の長さ方向の露出量が当該内管を接続する接続部材との接続量と等しくなるように配置されていることが好ましい。
この場合、前記基部から前記刃部までの距離と前記接続部材の接続代とを揃えることで、標線描きの作業が不要になる。
【0012】
本発明では、前記刃部は、切断方向に伸びる稜線の形状が円弧状であることが好ましい。
この場合、前記表層部を切断するときに前記刃部に生じる抵抗を軽減できる。
【0013】
本発明では、前記基部から前方に伸び、少なくとも前記刃部による前記表層部の切断時において、前記管状体の前記内管を前記刃部に対して保護するガード部を有することが好ましい。
この場合、前記表層部を切断するときに、前記内管の外表面が傷付いてしまうことを防止することができる。
【0014】
本発明では、前記腕部は、少なくとも前記刃部による前記表層部の切断時において、前記管状体に向かって弾性変形可能なものとすることができる。また、本発明では、前記刃部は、少なくとも前記刃部による前記表層部の切断時において、前記管状体に向かってスライド可能なものとすることもできる。
これらの場合、前記刃部を前記表層部に対して容易に押圧させることができる。
【0015】
本発明では、前記切断工具に、前記基部から前方に伸びる他の腕部を有することが好ましい。
この場合、前記他の腕部を把持することで、前記切断工具を容易かつ確実に保持できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業工数を削減しつつ当該管状体の表層部を部分的に取り除くことができる、切断工具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の切断工具の一実施形態である、カッターを詳細に説明する。
【0019】
図1中、符号10は、例えば、住宅用給水・給湯パイプとして用いられる積層パイプ(管状体)である。積層パイプ10は、長さ方向Lに沿って伸びる。本実施形態では、積層パイプ10の長さ方向端面10eは平坦面として形成されている。
【0020】
本実施形態では、積層パイプ10は、内管11と、この内管11の外側を覆う表層部12とを有する。本実施形態では、内管11と表層部12は、非接着状態にある。さらに詳細には、表層部12は、内管11の外側を覆う中間層12aと、この中間層12aの外側を覆う被覆層12bとで構成されている。
【0021】
本実施形態では、内管11は、例えば、ポリブテンを含む樹脂で構成されている。中間層12aは、例えば、発泡ウレタン樹脂等の樹脂で構成されている。また、被覆層12bは、例えば、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート等を含む樹脂またはエラストマで構成されている。本実施形態では、中間層12aと被覆層12bとが含浸や接着などにより固定されることで、表層部12を構成する。ただし、表層部12はこの構成に限定されるものではない。例えば、表層部12は、中間層12aを省略することで、被覆層12bのみの単層に構成することができる。また、表層部12の中間層12aは、2層以上の多層構造にできる。さらに、内管11は、樹脂やエラストマ以外の金属製のパイプであってもよい。すなわち、積層パイプ10の構成材料は特に限定されない。
【0022】
次いで
図1中、符号1は、本発明の切断工具の一実施形態である、カッターである。符号2は、積層パイプ10の長さ方向端面10eが接触可能な基部である。本実施形態では、基部2は、
図2(a)に示すように、中心軸Oの円形の外縁に、当該外縁に沿って間隔を置いて複数(本実施形態では、4つ)の切り欠きCを形成した歯車状の平板である。本実施形態では、基部2の中心軸Oは、カッター1の中心軸(以下、「カッター1の中心軸O」ともいう)と一致する。また積層パイプ10が接触する基部2の接触面2aは平坦な面として形成されている。
【0023】
符号3および4は、基部2から前方に伸びる腕部と、他の腕部である。ここで、前方とは、基部2の接触面2aから突出する方向をいい、本実施形態では、カッター1の中心軸Oに沿って伸びている。さらに詳細には、
図1に示すように、腕部3および4は、積層パイプ10の長さ方向Lに伸びる。
【0024】
本実施形態では、腕部3は、基部2に形成された2つの切り欠きCの相互間に形作られた接触面2aの1箇所の外縁に配置されている。また、本実施形態では、腕部4はそれぞれ、基部2に形成された2つの切り欠きCの相互間に形作られた残り3箇所の接触面2aの外縁に配置されている。これにより、基部2の接触面2a側(前側)には、1つの腕部3と、3つの腕部4との計4つの腕部で取り囲まれた積層パイプ10の収容部Sが形成される。収容部Sでは、積層パイプ10の長さ方向端面10eを基部2の接触面2aに接触させた状態で、積層パイプ10の周方向Rにカッター1を回転させることができる。また、本実施形態では、腕部3および4は、
図1に示すように、平板状の形状である。詳細には、
図2(a)に示すように、腕部3および4はそれぞれ、その縦断面形状(本実施形態では、カッター1の中心軸Oと直交する断面形状)が基部2の外縁側に向かって突出する円弧状の形状である。
【0025】
符号5は、腕部3に配置される刃部である。刃部5は、カッター1の中心軸O側に配置されている。言い換えれば、刃部5は、腕部3の内側(積層パイプ10が収容部Sに収容されたときに積層パイプ10の表層部12と向かい合う側)に配置されている。また本実施形態では、刃部5は、腕部3に固定されている。さらに本実施形態では、刃部5は、
図2(b)に示すように、接触面2aから、後述する刃部5の稜線5aまでの寸法がΔXとなる位置に配置されている。寸法ΔXは、積層パイプ10から取り除かれた表層部12の、長さ方向Lに沿った最大取り除き量、言い換えれば、積層パイプ10から露出する内管11の最大露出量となる。
【0026】
また、本実施形態では、刃部5は、切断方向に伸びる稜線5aの形状が、
図2(a)に示すようにカッター1を正面(接触面2a側)から見たときに、腕部3の内側に向かって円弧状に突出する形状である。ここで、切断方向とは、積層パイプ10の表層部12を周方向Rに切断するときに刃部5が移動する方向である。このように刃部5の稜線5aの形状が、積層パイプ10の表層部12に向かって円弧状に突出する形状である場合、表層部12を積層パイプ10の周方向Rに沿って切断するときに刃部5に生じる抵抗を軽減できる。ただし、稜線5aの形状はこれに限定されるものではない。例えば、稜線5aの形状は、カッター1を正面から見たときに、腕部3の内側に向かって先細りに突出する三角形状とすることができる。或いは、稜線5aの形状は、カッター1を正面から見たときに、
図2(a)とは反対に、腕部3に向かって円弧状に窪む形状とすることもできる。さらに稜線5aの形状は、直線状にすることもできる。すなわち、刃部5の、切断方向に伸びる稜線5aの形状は適宜、変更可能である。
【0027】
符号6は、少なくとも刃部5による表層部12の切断時において、積層パイプ10の内管11を刃部5に対して保護するガード部である。本実施形態では、
図2(a)に示すように、ガード部6は、4つの切り欠きCの相互間に形成された基部2の接触面2aのうち、腕部3が設けられた1箇所の内縁側に、刃部5に対して間隔を置いて配置されている。またガード部6は、
図2(b)に示すように、接触面2aから刃部5の稜線5aを越える位置まで伸びている。ガード部6は、
図2(b)に示すように、接触面2aから腕部3および4と平行に伸び、積層パイプ10が収容部Sに押し込まれるとき、積層パイプ10の内管11と表層部12との間を掻き分けて挿入され、表層部12の内側に配置される。本実施形態では、
図2(b)に示すように、ガード部6の先端部には、先端に向かって先細りする傾斜面6aが形成されている。この場合、ガード部6を積層パイプ10の内管11と表層部12との間に、容易に挿入することができる。
【0028】
また、本実施形態では、ガード部6は、基部2から伸びる平板形状であって、その縦断面形状は、
図2(a)に示すように、基部2の外縁側に向かって突出する円弧状の形状である。この場合、カッター1を積層パイプ10の周方向Rに回転させたときに、ガード部6が積層パイプ10の内管11と表層部12との間で回転し易くなる。ただし、ガード部6の縦断面形状はこれに限定されるものではない。例えば、ガード部6は、円形の縦断面形状を有した丸棒形状のものや楕円形の縦断面形状を有した平板形状のもの等とすることができる。すなわち、ガード部6の形状は適宜、変更可能である。
【0029】
次に、カッター1を用いて積層パイプ10から表層部12の一部を取り除く方法を説明する。
【0030】
図1を参照すれば、第1の工程は、カッター1を積層パイプ10に押し込んで刃部5を表層部12に合わせる工程である。詳細には、
図1の矢印に示すように、積層パイプ10の内管11と表層部12との間にカッター1のガード部6を合わせてカッター1を積層パイプ10の長さ方向端面10eに向かって押し込む。このとき、カッター1のガード部6が積層パイプ10の内管11と表層部12との間を掻き分けて挿入されることで、カッター1の収容部Sへの押し込みが可能になる。カッター1の押し込みは、
図3(a)に示すように、カッター1の基部2が積層パイプ10の長さ方向端面10eに接触するまで行うことができる。なお、本実施形態では、刃部5を配置した腕部3の内縁と、この腕部3と中心軸Oを挟んで反対側の腕部4の内縁との間は、
図3(a)に示すように、積層パイプ10の直径よりもわずかに大きい寸法に設定されている。
【0031】
第2の工程は、積層パイプ10の表層部12の一部を周方向Rに切断する工程である。詳細には、
図3(b)に示すように、カッター1の腕部3を刃部5付近で積層パイプ10の表層部12に向かって押し込んで、表層部12の一部を切断して切れ目を入れたのち、カッター1を積層パイプ10の周方向Rに回転させる。
【0032】
詳細には、まずカッター1の腕部3を積層パイプ10の表層部12に向かって押し込んで、腕部3を基部2との連結部付近を基点に撓み変形させる。これにより、
図3(b)に示すように、カッター1の刃部5は、積層パイプ10の表層部12の一部を切断して切り込みを入れることができる。本実施形態では、表層部12を切断するときに、刃部5が深く入り込んでもガード部6に接触するため、内管11の外表面が傷付いてしまうことを防止することができる。次いで、切り込みを入れた状態からカッター1を回転させると、表層部12のみが積層パイプ10の長さ方向端面10eからほぼ寸法ΔXの位置で、積層パイプ10の周方向Rに沿って筒状に切断される。本実施形態では、刃部5の稜線5aの形状を円弧状としたことで、刃部5に生じる抵抗が軽減できるため、容易に表層部12を積層パイプ10の周方向Rに沿って切断することができる。そして、表層部12の一部が管状に切断されたのちは、腕部3を押し込んだまま積層パイプ10からカッター1を引き抜くことで、
図4(a)に示すように、積層パイプ10に内管11を残したまま、筒状の表層部12のみを取り除くことができる。
【0033】
このように、本実施形態のカッター1を用いれば、積層パイプ10の長さ方向端面10eをカッター1の基部2に接触させて、カッター1を積層パイプ10の周方向Rに回転させるだけで、積層パイプ10の内管11を残したまま、表層部12のみを周方向Rに切断することができる。従って、カッター1によれば、作業工数を削減しつつ積層パイプ10の表層部12を部分的に取り除くことができる。
【0034】
また、従来の表皮カッターでは、積層パイプ10の表層部12を周方向に切断する場合、マーキングに沿って切断する必要があるが、本実施形態では、積層パイプ10の長さ方向端面10eをカッター1の基部2に接触させることで、切断寸法が規定されるため、マーキングを行う必要がない。ただし、本実施形態のカッター1は、積層パイプ10の長さ方向端面10eをカッター1の基部2に接触させることなく使用することもできる。また、従来のように、積層パイプ10の表層部12に軸方向に沿って切込部を形成した後、切込部のある表層部12を取り除く場合、切込部の軸方向長さと刃部との位置とを完全に一致させないと、積層パイプ10に残った表層部12に切り込み跡が残ることがある。これに対し、本実施形態のカッター1を用いれば、カッター1の中心軸Oに沿った切込部を形成する必要がないため、表層部12の一部を取り除いた後の、積層パイプ10の表層部12は美観に優れる。
【0035】
さらに、本実施形態のカッター1では、
図4(a)に示すように、積層パイプ10から表層部12の一部を取り除いたときの内管11の長さ方向の露出量ΔXが内管11を接続する接続部材20との接続量と等しくなるように、腕部3に対して刃部5が配置されている。この場合、基部2から刃部5までの距離ΔXと接続部材20の接続代とを揃えることで、標線描きの作業が不要になる。これにより、
図4(b)に示すように、積層パイプ10は、しわを生じることなく、接続部材20に接続することができる。
【0036】
また、本実施形態のカッター1は、
図3(a),(b)に示すように、腕部3に加えて、基部2から前方に伸びる他の腕部4を有し、これら他の腕部4が腕部3とともに、積層パイプ10の表層部12の外側に配置される。この場合、他の腕部4を把持することで、カッター1を容易かつ確実に保持できることから、表層部12を容易に切断することができる。なお、他の腕部4は、少なくとも1つでよい。基部2に設けた他の腕部4が1つである場合、当該腕部4は、中心軸Oを挟んで腕部3と反対側の位置に配置することができる。あるいは、カッター1は、腕部4やガード部6を省略することもできる。すなわち、本発明のカッター1は、少なくとも基部2、腕部3および刃部5で構成されるものであればよい。
【0037】
また、腕部3は、上述のとおり、少なくとも刃部5による表層部12の切断時において、積層パイプ10に向かって弾性変形可能なものとすることが好ましい。この場合、腕部3を積層パイプ10の表層部12に向かって容易に押し込むことができる。詳細には、例えば、カッター1を例えば、ポリエチレン (PE)、ポリプロピレン (PP)、ポリスチレン (PS)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ABS樹脂 (ABS)、ポリエチレンテレフタラート (PET) 等の汎用樹脂やその他のエンジニアリングプラスチック等の合成樹脂で構成すれば、腕部3に可撓性を持たせることができる。あるいは、カッター1を金属等で構成したときも、腕部3を薄肉に構成すれば、腕部3を積層パイプ10の表層部12に向かって容易に押し込むことができる。
【0038】
さらに、カッター1の腕部3には、弾性変形部を設けることができる。
図5(a)〜(c)のカッター1は、腕部3に、基部2から外側に向かって傾斜する平板ばね部3aを設け、腕部3を積層パイプ10の表層部12に向かって容易に押し込めるようにしたものである。さらに
図6(a)〜(c)のカッター1は、腕部3に、腕部3の長さ方向に連続する波板ばね部3bを設け、腕部3を積層パイプ10の表層部12に向かって容易に押し込めるようにしたものである。腕部3に、平板ばね部3aや波板ばね部3bのような幾何学形状で構成された弾性変形部を設けても、刃部5を表層部12に対して容易に押圧させることで、表層部12の切断が容易になる。なお、
図5および
図6のカッター1では、腕部3および4の縦断面形状は、
図5(a)および
図6(a)に示すように、腕部3の内側に向かって円弧状に突出する形状である。
【0039】
さらに、刃部5は、少なくとも刃部5による表層部12の切断時において、積層パイプ10に向かってスライド可能にすることで、積層パイプ10の表層部12に向かって容易に押し込むことができる。
図7(a),(b)には、腕部3にスライダ7を設け、このスライダ7に刃部5を配置したカッター1´を示す。カッター1´において、スライダ7は、
図7(a)に示す状態から
図7(b)に示す状態にスライドさせることにより、刃部5を積層パイプ10(図示せず)に向かって移動させることができる。
【0040】
詳細には、カッター1´は、本体Bに、刃部5を有するスライダ7を別体に組み付けたものである。本体Bは、例えば、打ち抜きの金属プレートを折り曲げて形成される。詳細には、基部2、腕部3および4は、矩形の金属プレートを、当該金属プレートの長手方向に順次、ほぼ直角に折り曲げることで形作られている。さらに詳細には、矩形の金属プレートの一端部を折り曲げることで腕部4を形成し、この腕部4に繋がる部分から所定の長さだけ離れた部分を、腕部4と平行に折り曲げることで、基部2および腕部3を形成する。また、ガード部6は、基部2の一部を当該基部2から腕部3および4と平行に折り曲げることで形成する。特に、本実施形態では、腕部3の両側にそれぞれ、腕部3および4とともに積層パイプ10を収容する張り出し部8が形成されている。本実施形態では、張り出し部8はそれぞれ、腕部3からの折り曲げによって、腕部3および4とともに積層パイプ10の収容部Sを形成する。これにより、積層パイプ10の長さ方向端面10eを基部2の接触面2aに接触させたとき、積層パイプ10は、腕部3および4並びに2つの張り出し部8に取り囲まれた積層パイプ10の収容部Sに収容される。本実施形態のような張り出し部8を設けた場合、回転時に刃部5と積層パイプ10との位置関係にずれが生じないため、回転し易くなることで切断も容易になる。
【0041】
また、腕部3には、スライダ7を載せ置く台座部9aが設けられている。また台座部9aの両側にはそれぞれ、スライダ7の側面をスライド可能に案内する案内部9bが設けられている。詳細には、台座部9aは、矩形の金属プレートの他端部を腕部3に対して基部2側とは反対側に折り曲げることで形成する。本実施形態では、台座部9aは、腕部3に対してほぼ直角に折り曲げられた平坦部として形成される。また、案内部9bは、台座部9aの両側からの折り曲げによって形成する。本実施形態では、案内部9bは、台座部9aに対してほぼ直角に折り曲げられた平坦部として形成される。これにより、台座部9a上のスライダ7は、2つの案内部9bの相互間でスライド可能に案内される。なお、本実施形態では、一枚の金属プレートを曲げ加工することによって本体Bを形成しているが、本体Bの形成方法はこれに限定されるものではない。
【0042】
この実施形態の場合も、
図7(a)の状態からカッター1´を積層パイプ10の長さ方向端面10eに向かって押し込むと、その押し込みは、
図3(a)にて、第1の工程として説明したのと同様、カッター1´の基部2が積層パイプ10の長さ方向端面10eに接触するまで行うことができる。
【0043】
積層パイプ10の表層部12の一部を周方向Rに切断する第2の工程では、
図7(b)に示すように、スライダ7を積層パイプ10の収容部S側に向かって押し込んで、表層部12の一部を切断して切れ目を入れたのち、
図3(b)にて説明したのと同様、カッター1´を積層パイプ10の周方向Rに回転させることで、容易に表層部12を積層パイプ10の周方向に切断することができる。次いで、スライダ7を押し込んだまま積層パイプ10からカッター1´を引き抜けば、
図4(a)に示すように、積層パイプ10の内管11を残したまま、筒状の表層部12のみを取り除くことができる。
【0044】
さらに、
図7に示すカッター1´には、基部2に対して積層パイプ10を挿入可能なシャフト部(軸部)を設けることができる。
図8(a),(b)に、
図7に示すカッター1´の変形例として、円柱形状のシャフト部30を有するカッター1´を示す。
図8(a)に示すように、シャフト部30は基部2の接触面2aから腕部3および4と平行に伸びている。シャフト部30の外径寸法は、
図8(b)に示すように、積層パイプ10の内管11に形成された貫通穴(積層パイプ10の内部通路)A
10に収納されるように規定されている。具体例としては、シャフト部30の外径寸法は、貫通穴A
10の内径寸法と同一またはこれよりも小径であることが好ましい。これにより、カッター1´を積層パイプ10に押し込んだときに、シャフト部30が積層パイプ10のガイドとして機能することで
図7の場合と同様、積層パイプ10の長さ方向端面10eを基部2の接触面2aに接触させることができる。すなわち、カッター1´にシャフト部30を設けたことで、回転時に刃部5と積層パイプ10との位置関係にずれが生じるのをより確実に防止できる。このため、カッター1´と積層パイプ10との相対回転がより容易になることで切断作業もさらに容易になる。
【0045】
なお、本実施形態では、円柱形状のシャフト部30が、刃部5の稜線5a同一または当該稜線5aを越える軸方向の位置まで伸びている。この場合、積層パイプ10が切断時に刃部5から受ける力を保持することができるため、切断作業がさらに容易になる。ただし、シャフト部30の長さは、カッター1´の仕様等により、適宜変更することができる。
【0046】
また、本実施形態では、シャフト部30を接触面2aに対してスライドさせることができる。具体的には、シャフト部30は、基部2に形成した開口部A
1に沿って腕部3と腕部4との間をスライドさせることができる。
【0047】
本実施形態では、
図8(a),(b)に示すように、基部2には、接触面2aの部分に、この接触面2aの部分を貫通する開口部A
1が腕部3と腕部4との間に長穴(スリット)状に形成されている。一方、シャフト部30には、
図8(b)に示すように、基部2に形成した開口部A
1に沿ってスライド可能なスライド部材31が設けられている。本実施形態では、スライド部材31は、ヘッド31aと、ねじ部が形成された軸(図示せず)からなる、ねじ部材で構成されている。スライド部材31は、前記軸によってシャフト部30の一端にねじ止めされており、当該軸が開口部A
1を貫通する。これにより、シャフト部30は、スライド部材31を介して開口部A
1に沿ってスライドさせることができる。また、シャフト部30の取付位置を積層パイプ10の肉厚に応じて変更可能とされているので、基部2に設けたガード6を、積層パイプ10の内管11と表層部12との間に容易に挿入することができる。
【0048】
また本実施形態において、ヘッド31aは、シャフト部30が開口部A
1から抜け落ちないための抜け止め部材として機能する。特に本実施形態では、スライド部材31をねじ部材で構成しているため、
図8(b)に示すように、ドライバー等の工具Tを用いることにより、シャフト部30を好適な位置にスライドさせた後に固定することができる。また、本実施形態は、スライド部材31がねじ部材で構成されていることにより、シャフト部30を取り外して使用することも可能である。
【0049】
また、シャフト部30の外観形状は、適宜選択することが可能であるが、この例では、シャフト部30は、円柱形状に形成されている。この場合、カッター1´と積層パイプ10との間でのスムースな相対回転も実現できる。ただし、シャフト部30の外観形状は円柱形状に限られるものではなく、たとえば多角形の角柱形状とすることができる。なお、本実施形態では、シャフト部30は、積層パイプ10の内径寸法に対応した大小様々な寸法のものに付け替えることができる。この場合、作業者が複数のカッターを持ち運ぶ必要性がなくなる。
【0050】
また、シャフト部30は上述の構成に限られるものではなく、例えば、カッター1´と一体に設けてもよいし、ビス止め等により別体で設けてもよい。さらに、シャフト部30は、基部2に対して積層パイプ10の周方向Rに回転可能に設けられてもよい。
【0051】
上述したところは、本発明の一実施形態を例示したにすぎず、特許請求の範囲において、様々な変更等が可能である。基部2の形状には、様々な形状を採用することができる。また、
図1の実施形態では、刃部5を除いた部分を一体に成形したが、刃部5を含めてカッター1全体を一体に成形することができる。カッター1の本体および刃部5の材質は樹脂、エラストマ、金属等、切断工具としての機能が発揮できるものであれば、特に限定されない。また、
図6の変形例に示す腕部3のように、腕部3等をそれぞれ、適宜、別体に組み付けることもできる。上述した実施形態およびその変形例の構成はそれぞれ、適宜、互いに置き換えて、或いは、組み合わせることができる。