特許第6389050号(P6389050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6389050定着部付鉄筋の被膜製造方法及び被膜製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389050
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】定着部付鉄筋の被膜製造方法及び被膜製造装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/02 20060101AFI20180903BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20180903BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20180903BHJP
   B05C 19/02 20060101ALI20180903BHJP
   B05C 13/00 20060101ALI20180903BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   B05D3/02 B
   B05D3/00 E
   B05D7/14 Z
   B05C19/02
   B05C13/00
   B05C9/14
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-66191(P2014-66191)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-188784(P2015-188784A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】梅田 勇
(72)【発明者】
【氏名】松熊 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 登志生
(72)【発明者】
【氏名】福岡 養祐
(72)【発明者】
【氏名】水野 喜允
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−014971(JP,A)
【文献】 実開平04−000411(JP,U)
【文献】 特開平05−269519(JP,A)
【文献】 特開平02−163213(JP,A)
【文献】 特開平08−281162(JP,A)
【文献】 特開2000−257209(JP,A)
【文献】 特開平09−174754(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0022980(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00− 21/00
B05D 1/00− 7/26
C23F 11/00−11/18
C23F 14/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端又は両端に定着部が設けられた鉄筋を、加熱工程でその鉄筋の両端部を鉄筋の加熱を行う加熱位置から下げることが可能な鉄筋保持部材により下方から支持して所定温度に加熱し、加熱された前記鉄筋をその鉄筋の向きに交叉する下流側に配した加熱鉄筋用ガイド上で自重により転動させて前記加熱工程から被覆工程へ移動させ、該被覆工程で移動してきた前記鉄筋をその両端部を粉末層の形成と溶融を行う被覆位置より下げることが可能な鉄筋保持部材により下方から支持して当該鉄筋の外表面へ熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を付着させて形成する粉末層を溶融し、粉末層が溶融された前記鉄筋をその鉄筋の向きに交叉する下流側に配した粉末層溶融鉄筋用ガイド上で自重により転動させて前記被覆工程から冷却工程へ移動させそこで冷却することを特徴とする定着部付鉄筋の被膜製造方法。
【請求項2】
一端又は両端に定着部が設けられた鉄筋を、加熱工程でその鉄筋の両端部を鉄筋の加熱を行う加熱位置から下げることが可能な鉄筋保持部材により下方から支持して所定温度に加熱し、加熱された前記鉄筋をその鉄筋の向きに交叉する下流側に配した加熱鉄筋用ガイド上で自重により転動させて前記加熱工程から粉末層形成工程へ移動させ、該粉末層形成工程で移動してきた前記鉄筋の両端部を粉末層の形成と溶融を行う被覆位置より下げることが可能な鉄筋保持部材により下方から支持し当該鉄筋の外表面へ熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を付着させて粉末層を形成し、この粉末層を形成した前記鉄筋をその鉄筋の向きに交叉する下流側に配した粉末層形成鉄筋用ガイド上で自重により転動させて前記粉末層形成工程から溶融工程へ移動させ、該溶融工程で前記粉末層を溶融し前記粉末層が溶融された前記鉄筋をその鉄筋の向きに交叉する下流側に配した粉末層溶融鉄筋用ガイド上で自重により転動させて前記溶融工程から冷却工程へ移動させそこで冷却することを特徴とする定着部付鉄筋の被膜製造方法。
【請求項3】
一端又は両端に定着部が設けられた鉄筋の外周面に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂被膜を形成する被膜製造装置であって、
前記鉄筋を前記樹脂の融点以上に加熱するとともに、前記鉄筋の加熱を行う加熱位置から下げることが可能な鉄筋保持部材で前記鉄筋の両端部を下方から支持する加熱手段と、
加熱されている前記鉄筋に樹脂粉末を付着させて粉末層を形成するとともに当該粉末層を溶融させ、前記粉末層の形成と溶融を行う被覆位置より下げることが可能な鉄筋保持部材で前記鉄筋の両端部を下方から支持する被覆手段と、
前記粉末層を溶融させた前記鉄筋を冷却する冷却手段と、
上流側である一端が前記加熱手段に配置されるとともに下流側である他端が前記被覆手段に配置される前記鉄筋の向きに交叉する下流側に向けて傾斜した加熱鉄筋用ガイドと、
上流側である一端が前記被覆手段に配置されるとともに下流側である他端が前記冷却手段に配置される前記鉄筋の向きに交叉する下流側に向けて傾斜した粉末層溶融鉄筋用ガイドとを備え、
前記加熱手段の鉄筋保持部材を前記加熱位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている前記鉄筋が前記加熱鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して前記被覆手段に移動され、
前記被覆手段の鉄筋保持部材を前記被覆位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている前記鉄筋が前記粉末層溶融鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して前記冷却手段に移動されるようにしたことを特徴とする定着部付鉄筋の被膜製造装置。
【請求項4】
前記加熱鉄筋用ガイド及び粉末層溶融鉄筋用ガイドは、前記鉄筋の樹脂被膜が形成される箇所より両側の2箇所の無被覆箇所で前記鉄筋が転動するように間隔をあけた一対のレール部材で形成されている請求項3に記載の定着部付鉄筋の被膜製造装置。
【請求項5】
前記定着部は、前記鉄筋の両端を径方向外方に膨出させて成形され、
前記一対のレール部材は、前記鉄筋の両端の定着部の鉄筋の外表面から立ち上がるネック部にそれぞれ接触するように配置されている請求項4に記載の定着部付鉄筋の被膜製造装置。
【請求項6】
前記加熱手段及び被覆手段の鉄筋保持部材は、それぞれ一対の回転ローラーで形成され、該一対の回転ローラーは、両方又は下流側の回転ローラーが昇降可能に支持され、
前記冷却手段は、前記鉄筋を水冷する水槽を備えた請求項4又は5に記載の定着部付鉄筋の被膜製造装置。
【請求項7】
一端又は両端に定着部が設けられた鉄筋の外周面に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂被膜を形成する被膜製造装置であって、
前記鉄筋を前記樹脂の融点以上に加熱するとともに、鉄筋の加熱を行う加熱位置より下げることが可能な鉄筋保持部材で鉄筋の両端部を下方から支持する加熱手段と、
加熱されている前記鉄筋に樹脂粉末を付着させて粉末層を形成するとともに、粉末層の形成を行う粉末層形成位置より下げることが可能な鉄筋保持部材で前記鉄筋の両端部を下方から支持する粉末層形成手段と、
前記粉末層を溶融させるとともに、粉末層の溶融を行う粉末層溶融位置より下げることが可能な鉄筋保持部材で前記鉄筋を下方から支持する溶融手段と、
前記粉末層を溶融させた鉄筋を冷却する冷却手段と、
上流側である一端が前記加熱手段に配置されるとともに下流側である他端が前記粉末層形成手段に配置された前記鉄筋に交叉する下流側に向けて傾斜した加熱鉄筋用ガイドと、
上流側である一端が前記粉末層形成手段に配置されるとともに下流側である他端が前記溶融手段に配置された前記鉄筋に交叉する下流側に向けて傾斜した粉末層形成鉄筋用ガイドとを備え、
上流側である一端が前記溶融手段に配置されるとともに下流側である他端が前記冷却手段に配置された前記鉄筋に交叉する下流側に向けて傾斜した粉末層溶融鉄筋用ガイドとを備え、
前記加熱手段の鉄筋保持部材を前記加熱位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている前記鉄筋が前記加熱鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して前記粉末層形成手段に移動され、
前記粉末層形成手段の鉄筋保持部材を前記粉末層形成位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている前記鉄筋が前記粉末層形成鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して前記溶融手段に移動され、
前記溶融手段の鉄筋保持部材を前記溶融位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている前記鉄筋が前記粉末層溶融鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して前記冷却手段に移動されるようにしたことを特徴とする定着部付鉄筋の被膜製造装置。
【請求項8】
前記加熱鉄筋用ガイド、粉末層形成鉄筋用ガイド及び粉末層溶融鉄筋用ガイドは、前記鉄筋の樹脂被膜が形成される箇所より両側の2箇所の無被覆箇所で前記鉄筋が転動するように間隔をあけた一対のレール部材で形成されている請求項7に記載の定着部付鉄筋の被膜製造装置。
【請求項9】
前記定着部は、前記鉄筋の両端を径方向外方に膨出させて成形され、
前記一対のレール部材は、前記鉄筋の両端の定着部の鉄筋の外表面から立ち上がるネック部にそれぞれ接触するように配置されている請求項8に記載の定着部付鉄筋の被膜製造装置。
【請求項10】
前記加熱手段、粉末層形成手段及び溶融手段の鉄筋保持部材は、それぞれ一対の回転ローラーで形成され、該一対の回転ローラーは、両方又は下流側の回転ローラーが昇降可能に支持され、
前記冷却手段は、前記鉄筋を水冷する水槽を備えた請求項8又は9に記載の定着部付鉄筋の被膜製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端若しくは両端に定着部が設けられた鉄筋の外表面にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂で樹脂被膜を形成する定着部付鉄筋の被膜製造方法及び被膜製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、景観、周辺環境の向上を目的として、新規の高速道路を地下に構築する工事が増加しており、例えば、コンクリート構造物を連結してなるトンネルが開削工法により構築されている。コンクリート構造物の連結手段としては、例えば、PC鋼線の周りにシースを被せたアンボンドPC鋼材を用いたアンボンド工法が知られている。アンボンド工法は、シースの内側でPC鋼線を滑らせるものであるが、PC鋼材である鉄筋の外表面にアスファルト材を被覆し、そのアスファルト被膜と鉄筋との間に滑りを生じさせることで、シースを省略する工法も知られている。アンボンド工法に用いられる鉄筋としては、コンクリート構造物同士の荷重伝達を図るためのスリップバーのキャップを省略することができることから、端部に例えば拡径された定着部が設けられたものを用いることが知られている。
【0003】
アスファルト材の付着力は、鉄筋よりコンクリートの方が強いので、地震時等でコンクリート構造物同士が近接離反すると、鉄筋に被覆されたアスファルト被膜に切れ目が入って被覆状態の健全性が維持されないこともあり得り、その結果、鉄筋の防食性能が低下することにもなる。このため、コンクリートより鉄筋への付着力が強いポリエチレンなどの熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂で被膜を形成することが提案されている。樹脂例えばポリエチレンを鉄筋の外表面に被覆する手段としては、加熱した鉄筋をポリエチレンの粉末が流動する流動層内に入れて鉄筋の外表面に樹脂の粉末層を形成し、その粉末層を溶融させてから冷却することで、鉄筋の外表面にポリエチレンの被膜が形成される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、鉄筋を加熱する加熱工程から被膜の形成を行う被覆工程へ移動させるには、例えば、鉄筋を持ち上げて行う。なお、加熱工程と被覆工程を1つの工程で行うことも提案されているが、加熱工程と被覆工程を別の工程で行う場合に比べて生産効率が悪く工業的には適さない。また、鉄筋は、鋼材が中実されているために冷却に時間がかかるので、冷却工程が別途必要になる。このため、鉄筋を被膜形成工程から冷却工程へ移動させるには、加熱工程から被膜形成工程へと同様に、例えば、鉄筋を持ち上げて行う。このように、鉄筋を次の工程に移動させるには、鉄筋を持ち上げて行うための大型の移動手段が必要になり、全体として大型化するとともに、構成が複雑になってしまう。
なお、鉄筋を軸方向に移動させながら加熱、樹脂の被覆、冷却を行う、すなわちインラインで行う手段もあるが、鉄筋の端部に定着部が設けられていると、鉄筋を軸方向に移動させることができないので、インラインでの被覆を行えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−112645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、装置の小型化及び簡素化を図れる定着部付鉄筋の被膜製造方法及び被膜製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明に係る定着部付鉄筋の被膜製造方法は、一端又は両端に定着部が設けられた鉄筋を加熱工程で加熱し、この加熱されている鉄筋を高低差を有する加熱鉄筋用ガイド上で自重により転動させて前記加熱工程から被覆工程へ移動させ、該被覆工程で鉄筋の外表面への熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の粉末層の形成と粉末層の溶融を行い、該粉末層が溶融された鉄筋を高低差を有する粉末層溶融鉄筋用ガイド上で自重により転動させて前記被覆工程から冷却工程へ移動させて冷却することを特徴とする。
【0008】
このように、鉄筋をガイド上で自重により転動させて加熱工程から被覆工程へ移動させるとともに被覆工程から冷却工程へ移動させることで、鉄筋を持ち上げて搬送する大型の搬送手段が必要ないので、装置の小型化及び簡素化を図れる。
【0009】
この発明では、鉄筋の外表面への樹脂の粉末層の形成と粉末層の溶融を別の工程で行うようにしてもよい。
【0010】
また、前記課題を解決するため本発明に係る蛇行管の製造装置は、一端又は両端に定着部が設けられた鉄筋の外周面に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂被膜を形成する被膜製造装置であって、前記鉄筋を前記樹脂の融点以上に加熱するとともに、鉄筋の加熱を行う加熱位置から下げることが可能な鉄筋保持部材で鉄筋を下方から支持する加熱手段と、加熱されている鉄筋に樹脂粉末を付着させて粉末層を形成するとともに当該粉末層を溶融させ、前記粉末層の形成と溶融を行う被覆位置より下げることが可能な鉄筋保持部材で鉄筋を下方から支持する被覆手段と、前記粉末層を溶融させた鉄筋を冷却する冷却手段と、上流側である一端が前記加熱手段に配置されるとともに下流側である他端が前記被覆手段に配置された傾斜した加熱鉄筋用ガイドと、上流側である一端が前記被覆手段に配置されるとともに下流側である他端が前記冷却手段に配置された傾斜した粉末層溶融鉄筋用ガイドとを備え、前記加熱手段の鉄筋保持部材を前記加熱位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている鉄筋が前記加熱鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して前記被覆手段に移動され、前記被覆手段の鉄筋保持部材を前記被覆位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている鉄筋が前記粉末層溶融鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して前記冷却手段に移動されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
このように、加熱手段の鉄筋保持部材を加熱位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている鉄筋が加熱鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して被覆手段に移動され、かつ、被覆手段の鉄筋保持部材を被覆位置から下げると、当該鉄筋保持部材に支えられている鉄筋が粉末層溶融鉄筋用ガイド上を上流側から下流側に自重により転動して冷却手段に移動されることで、鉄筋を持ち上げて搬送する大型の搬送手段が必要ないので、装置の小型化及び簡素化を図れる。
【0012】
この発明では、鉄筋の外表面への樹脂の粉末層の形成と粉末層の溶融を別の手段で行うようにしてもよい。また、鉄筋を次の手段に移動させるガイドを、鉄筋の樹脂被膜が形成される箇所より両側の2箇所の無被覆箇所で鉄筋が転動するように間隔をあけた一対のレール部材で形成することができる。この場合、定着部を、鉄筋の両端を径方向外方に膨出させて成形し、一対のレール部材を、鉄筋の両端の定着部の鉄筋の外表面から立ち上がるネック部にそれぞれ接触するように配置することができる。さらに、加熱手段及び被覆手段の鉄筋保持部材を、それぞれ一対の回転ローラーで形成し、一対の回転ローラーを、両方又は下流側の回転ローラーが昇降可能に支持し、冷却手段を、鉄筋を水冷する水槽を備えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装置の小型化及び簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施形態の定着部付鉄筋の被膜製造装置の第1の例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態の定着部付鉄筋の被膜製造装置の第2の例を示す概略構成図である。
図3】樹脂被膜が形成された定着部付鉄筋の一例を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態の定着部付鉄筋の被膜製造装置を添付図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の第1の定着部付鉄筋の被膜製造装置1(以下、単に「被膜製造装置1」という。)は、一端又は両端に定着部11(図3参照。)が設けられた鉄筋10の外周面に熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の樹脂被膜12を形成するものである。鉄筋10は、コンクリート構造物の連結手段や鉄筋コンクリートに用いられるものであれば特に限定されず、例えば、異形鉄筋等が挙げられる。鉄筋10は、例えば、長さ2000〜3000mm、直径22〜50mmのものが挙げられる。
【0016】
鉄筋10の一端又は両端には、図3に示すように、定着部11が形成されている。定着部11としては、鉄筋10より拡径されていればその形状は特に限定されないが、例えば、熱間据込み加工によって鉄筋10の端部を軸方向に加圧圧縮して塑性変形させ径方向外方に膨出させて円盤状に成形された拡径部等が好ましい。本実施形態では、定着部11として円盤状に成形された拡径部である場合について説明するが、これに限定されるものではない。定着部11の鉄筋10の外表面から立ち上がる部分がネック部11aである。また、本実施形態では、鉄筋10の両端に定着部11が設けられている場合について説明するが、一端にのみ定着部11が設けられていてもよい。鉄筋10の樹脂被膜12が形成される被覆箇所は、例えば、両端面から100±20mmまでの無被覆箇所(定着部11を含む)を除いた箇所である。
【0017】
被膜製造装置1は、図1に示すように、鉄筋10を樹脂の融点以上に加熱する加熱手段2と、加熱されている鉄筋10に樹脂の粉末層12aを形成するとともに当該粉末層12aを溶融させる被覆手段3と、粉末層12aを溶融させた鉄筋10を冷却する冷却手段6と、鉄筋10を加熱手段2から被覆手段3に移動させる加熱鉄筋用ガイド7と、鉄筋10を被覆手段3から冷却手段6に移動させる粉末層溶融鉄筋用ガイド8とを備えている。
【0018】
加熱手段2は、鉄筋10を外周面に被覆する樹脂の融点以上の温度に加熱するとともに、鉄筋10を鉄筋保持部材で下方から支持するものである。鉄筋保持部材は、例えば、水平方向に間隔をあけて回転可能に取り付けられて鉄筋10を回転可能に支持する一対の回転ローラー21で形成されている。一対の回転ローラー21は、鉄筋10の両側の2箇所の無被覆箇所、例えば、定着部11以外の無被覆箇所にそれぞれ配置されている。すなわち、鉄筋10は、無被覆箇所の2箇所の外周面がそれぞれ一対の回転ローラー21に載置された状態で支えられ、一対の回転ローラー21が同一方向に回転駆動されることで、回転するようになっている。
【0019】
一対の回転ローラー21で回転可能に支持されている鉄筋10の上方には、回転する鉄筋10を加熱する加熱体22が設けられている。なお、加熱体22の位置は、鉄筋10の加熱を行えるならば特に限定されず、例えば、上方以外の両側でも一方の側でもよい。加熱体22は、例えば、誘導加熱又はバーナー加熱等により鉄筋10の被覆箇所全体を被覆する樹脂の融点以上の温度に加熱するように形成されている。この加熱温度は、粉末層の形成及び粉末層の溶融中の温度降下を考量して、例えば、樹脂の融点よりも100〜300℃高い温度であることが好ましい。鉄筋10の加熱は、鉄筋10を回転させないで行ってもよいが、鉄筋10を回転させながら行うことが好ましい。これにより、鉄筋10の被覆箇所全体を均一に加熱することができる。
【0020】
回転ローラー21は、鉄筋10の加熱が行われる加熱位置とその下方の鉄筋10の支持を解除する解除位置までの間で昇降可能に支持されている。この昇降可能な回転ローラー21は、一対の回転ローラー21の両方でも被覆手段3側(下流側)の回転ローラー21のみでもよい。なお図1及び図2は分かり易いように下流側の回転ローラー21のみを昇降可能に示している。加熱位置に位置されている回転ローラー21の鉄筋10の下方を支持する第1位置と解除位置に位置されている回転ローラー21の鉄筋10の下方を支持する第2位置との間には、加熱鉄筋用ガイド7の上流側である一端が配置されている。
【0021】
加熱鉄筋用ガイド7は、高低差により鉄筋10を自重により転動させて加熱手段2から被覆手段3に移動させるものであり、例えば、傾斜したレール部材等で形成されている。レール部材の傾斜角度は、鉄筋10が自重により転動するならば特に限定されないが、鉄筋10が自重により転動する速度が速くなり過ぎず確実に次の手段への移動を行える範囲から任意に設定することが好ましく、1度以下でも1度前後でもよい。レール部材は、鉄筋10を自重により転動させることができれば、断面が平板状、三角状、矩形状、多角形状、円形状、楕円形状等、特に平板状、円形状の棒状に形成されていてもよいし、レール部材は、上面に鉄筋10の定着部11が走行する断面V字状、断面U字状、断面半円状等の走行溝を有する長尺部材等で形成されていてもよい。
【0022】
加熱鉄筋用ガイド7は、鉄筋10の無被覆箇所であって回転ローラー21の昇降に干渉しない箇所に対応して一対設けられている。一対の加熱鉄筋用ガイド7(レール部材)は、棒状に形成されている場合、鉄筋10の両端の定着部11のネック部11aにそれぞれ接触するように配置されていることが好ましい。この場合、一対の加熱鉄筋用ガイド7(レール部材)は、断面平板状に形成されている場合、ハの字に傾斜されて、鉄筋10の両端の定着部11のネック部11aにそれぞれ接触するようにすることが好ましい。一対の加熱鉄筋用ガイド7の下流側である他端が被覆手段3に配置されている。これにより、加熱手段2において回転ローラー21を加熱位置から下方に下げる(下降させる)と、当該鉄筋10が加熱鉄筋用ガイド7の上流側である一端上に載置されて該加熱鉄筋用ガイド7上を上流側から下流側へ自重により転動して被覆手段3に移動するようになっている。
【0023】
被覆手段3は、加熱されている鉄筋10に樹脂粉末を付着させて粉末層12aを形成するとともに当該粉末層12aを溶融させ、鉄筋10を鉄筋保持部材で下方から支持するものである。鉄筋保持部材は、例えば、水平方向に間隔をあけて回転可能に取り付けられて鉄筋10を回転可能に支持する一対の回転ローラー31で形成されている。一対の回転ローラー31は、鉄筋10の両側の2箇所の無被覆箇所、例えば、定着部11以外の無被覆箇所にそれぞれ配置されている。
【0024】
一対の回転ローラー31の間には、鉄筋10の外表面の被覆箇所に樹脂粉末を付着させて粉末層12aを形成するための粉末層形成部32が設けられている。粉末層形成部32としては、鉄筋10の外表面の被覆箇所に樹脂の粉末層12aを形成することができれば特に限定されず、例えば、回転する鉄筋10の外表面に樹脂粉末を吹き付けたりホッパー等から落としたりして付着させるようにしてもよいし、樹脂粉末の流動層33を形成してこの流動層33内で鉄筋10を回転させて外表面に樹脂粉末を付着させるようにしてもよい。本実施形態では粉末層形成部32として流動層33により粉末層12aを形成する場合について説明する。
【0025】
樹脂被膜12を形成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等が挙げられ、これらの中でも防食性に優れていることからポリエチレンが好ましい。この樹脂の粉末(樹脂粉末)が、例えば、粉末層形成部32を構成する上方が開放された矩形状の容器34内の分散板35上に収容されている。容器34内の分散板35下の空気室36に圧縮空気等が供給されることで、空気が分散板35を通って分散板35上に噴出されて樹脂粉末の流動層33が形成されるようになっている。容器34の両側壁の内側面間の長さが鉄筋10の被覆箇所より若干長い寸法で形成されている。容器34の両側壁の上端面のほぼ中央部には、例えば、流動層33に確実に鉄筋10の外表面が接触して粉末層12aが形成されるように鉄筋10の直径より大きな幅の凹部が形成されている。なお、凹部がなくても流動層33により鉄筋10の外表面に粉末層12aを形成することができる場合には凹部を不要としてもよい。
【0026】
容器34の両凹部の外側には、それぞれ一対の回転ローラー31が配置されており、凹部に入り込んだ鉄筋10の両無被覆箇所がそれぞれ一対の回転ローラー31上に載置されて、一対の回転ローラー31が同一方向に回転駆動されることで、鉄筋10が回転するようになっている。一対の回転ローラー31は、樹脂粉末の流動層33が形成されていない場合には、鉄筋10が樹脂粉末の上方に位置され、樹脂粉末の流動層33が形成されている場合には、一対の回転ローラー31により回転する鉄筋10の外周面の被覆箇所が樹脂粉末の流動層33内に位置されてその流動層33により粉末層12aが被覆箇所に形成されるように配置されている。容器34の両側壁の加熱手段2側の端部近傍の上方には、一対の加熱鉄筋用ガイド7の下流側である他端が配置されており、加熱鉄筋用ガイド7上を自重により転動してきた鉄筋10が一対の加熱鉄筋用ガイド7の他端から容器34の上端面に至り凹部に入り込んで一対の回転ローラー31上に載置されるようになっている。
【0027】
回転ローラー31及び容器34は、鉄筋10に樹脂粉末を付着させて粉末層12aを形成してから当該粉末層12aを溶融させる被覆位置とその下方の鉄筋10の支持を解除する解除位置までの間で昇降可能に支持されている。被覆位置に位置されている回転ローラー31の鉄筋10の下方を支持する第1位置と解除位置に位置されている回転ローラー31の鉄筋10の下方を支持する第2位置との間には、粉末層溶融鉄筋用ガイド8の上流側である一端が配置されている。
【0028】
粉末層溶融鉄筋用ガイド8は、高低差により鉄筋10を自重により転動させて被覆手段3から冷却手段6に移動させるものであり、例えば、傾斜したレール部材で形成されている。レール部材の傾斜角度は、鉄筋10が自重により転動するならば特に限定されないが、鉄筋10が自重により転動する速度が速くなり過ぎず確実に次の手段への移動を行える範囲から任意に設定することが好ましく、1度以下でも1度前後でもよい。レール部材は、鉄筋10を自重により転動させることができれば、断面が平板状、三角状、矩形状、多角形状、円形状、楕円形状等、特に平板状、円形状の棒状に形成されていてもよいし、レール部材は、上面に鉄筋10の定着部11が走行する断面V字状、断面U字状、断面半円状等の走行溝を有する長尺部材等で形成されていてもよい。
【0029】
粉末層溶融鉄筋用ガイド8は、鉄筋10の無被覆箇所であって回転ローラー31及び容器34の昇降に干渉しない箇所に対応して一対設けられている。一対の粉末層溶融鉄筋用ガイド8(レール部材)は、棒状に形成されている場合、鉄筋10の両端の定着部11のネック部11aにそれぞれ接触するように配置されていることが好ましい。この場合、一対の粉末層溶融鉄筋用ガイド8(レール部材)は、断面平板状に形成されている場合、ハの字に傾斜されて、鉄筋10の両端の定着部11のネック部11aにそれぞれ接触するようにすることが好ましい。一対の粉末層溶融鉄筋用ガイド8の下流側である他端が冷却手段6に配置されている。これにより、被覆手段3において回転ローラー31及び容器34を被覆位置から下方に下げる(下降させる)と、当該鉄筋10が粉末層溶融鉄筋用ガイド8の上流側である一端上に載置されて該粉末層溶融鉄筋用ガイド8上を上流側から下流側へ自重により転動して冷却手段6に移動するようになっている。なお、本実施形態では構成上一対の回転ローラー31とともに容器34を昇降可能に支持して被覆位置からその下方に下降させて、鉄筋10を粉末層溶融鉄筋用ガイド8上で自重により転動させたが、これに限定されず、容器34すなわち粉末層形成部32の構成によっては回転ローラー31のみを昇降可能に支持して鉄筋10を粉末層溶融鉄筋用ガイド8上で自重により転動させるようにしてもよい。この場合、昇降可能な回転ローラー31は、一対の回転ローラー31の両方でも冷却手段6側(下流側)の回転ローラー21のみでもよい。なお図1及び図2は分かり易いように下流側の回転ローラー31のみを昇降可能に示している。
【0030】
冷却手段6は、被覆手段3で形成された粉末層12aを溶融させた鉄筋10を冷却するものである。冷却手段6は、放冷や、ブロアー等による空気の吹き付けによるものでもよいが、水冷によるものが好ましい。冷却手段6は、例えば、上方が開放されて水が貯められている矩形状の水槽61を備えている。水槽61の開口部の上方には、一対の粉末層溶融鉄筋用ガイド8の下流側である他端が配置されており、粉末層溶融鉄筋用ガイド8上を自重により転動してきた鉄筋10が水槽61内に貯留されている水に落下して水冷されるようになっている。なお、冷却手段6による水冷は、水槽61を用いることなく他の手段でもよく例えば水を吹き付けたりしてもよい。
【0031】
次に、上記のように構成した本実施形態の第1の被膜製造装置1を用いて本発明に係る定着部付鉄筋の被膜製造方法をもとに鉄筋10の外表面に樹脂被膜12を形成する場合について説明する。鉄筋10を加熱手段2の加熱位置に位置されている一対の回転ローラー21に載置させた後に一対の回転ローラー21を回転駆動させて鉄筋10を回転させる。鉄筋10を回転させながら加熱体22で被覆する樹脂例えばポリエチレンの融点以上の温度例えば約300℃の温度に加熱する(加熱工程)。このように、鉄筋10を回転させながら加熱するので、鉄筋10の被覆箇所全体を均一に加熱することができる。加熱後、回転ローラー21の回転を停止させてから回転ローラー21を加熱位置から下降させる。すると、一対の回転ローラー21に載置されている鉄筋10が加熱されたまま加熱鉄筋用ガイド7の上流側である一端上に載置されて加熱鉄筋用ガイド7上を上流側から下流側へと自重により転動して被覆手段3に移動する。
【0032】
被覆手段3に移動した鉄筋10は、加熱鉄筋用ガイド7の下流側である他端から容器34の上端面に至り上端面上を転動して凹部に入り込み被覆手段3の一対の回転ローラー31上に載置される。樹脂の融点以上の温度に加熱された状態のまま、その一対の回転ローラー31を回転駆動させて鉄筋10を回転させながら容器34に空気を供給して樹脂粉末の流動層33を形成する。これにより、鉄筋10の外表面の被覆箇所に樹脂粉末が付着して樹脂粉末の粉末層12aが形成される。粉末層形成後、容器34への空気の供給を停止して樹脂粉末の流動層33の形成を止め、粉末層12aの溶融を行う(被覆工程)。この粉末層の溶融は、母材である鉄筋10の熱によって紛末樹脂が完全に溶融するのを待って行う。また、粉末層12aの溶融は、鉄筋10の回転を停止して行うようにしてもよいが、鉄筋10を回転させながら行うことが好ましい。これにより、樹脂被膜12の膜厚のバラつきを防止することができる。
【0033】
溶融後、回転ローラー31の回転を停止させてから回転ローラー31及び容器34を溶融位置から下降させる。すると、一対の回転ローラー31に載置されている鉄筋10が粉末層溶融鉄筋用ガイド8の上流側である一端上に載置されて粉末層溶融鉄筋用ガイド8上を上流側から下流側へと自重により転動して冷却手段6に移動する。
【0034】
冷却手段6に移動した鉄筋10は、粉末層溶融鉄筋用ガイド8の下流側である他端から水槽61内の水に落下して水冷される(冷却工程)。これにより、溶融された樹脂が固化して鉄筋10の外表面に例えば厚さ1.0mm以上の樹脂被膜12が形成される。また、鉄筋10の冷却を水冷により行うことで、除熱し難い鉄筋10を短時間で冷却することができる。
【0035】
以上により、鉄筋10をガイド7,8上で自重により転動させて加熱工程から被覆工程へ移動させるとともに被覆工程から冷却工程へ移動させることで、鉄筋10を持ち上げて搬送する大型の搬送手段が必要ないので、装置1の小型化及び簡素化を図れる。
【0036】
加熱鉄筋用ガイド7及び粉末層溶融鉄筋用ガイド8を傾斜した一対のレール部材で形成することで、簡単な構造及び低コストで鉄筋10の加熱工程から被覆工程への移動及び被覆工程から冷却工程への移動を行える。
加熱鉄筋用ガイド7及び粉末層溶融鉄筋用ガイド8である一対のレール部材が鉄筋10の両端の定着部11のネック部11aにそれぞれ接触することで、鉄筋10を確実に加熱工程から被覆工程に移動させることができるとともに被覆工程から冷却工程に移動させることができる。
【0037】
図2は、本実施形態の定着部付鉄筋の被膜製造装置の第2の例を示す概略構成図である。本実施形態の第2の定着部付鉄筋の被膜製造装置(以下、単に「第2の被膜製造装置100」という。)と第1の被膜製造装置1と異なる点は、図2に示すように、鉄筋10の外表面への樹脂の粉末層12aの形成と粉末層12aの溶融を別の手段(工程)で行う点である。第2の被膜製造装置100において第1の被膜製造装置1と同一部分には同一符号を付しその説明を省略することがある。
【0038】
第2の被膜製造装置100は、鉄筋10を被覆する樹脂の融点以上に加熱する加熱手段2と、加熱されている鉄筋10に樹脂粉末を付着させて粉末層12aを形成する粉末層形成手段4と、粉末層12aを溶融させる溶融手段5と、粉末層12aを溶融させた鉄筋10を冷却する冷却手段6と、鉄筋10を加熱手段2から粉末層形成手段4に移動させる加熱鉄筋用ガイド7と、鉄筋10を粉末層形成手段4から溶融手段5に搬送する粉末層形成鉄筋用ガイド9と、鉄筋10を溶融手段5から冷却手段6に移動させる粉末層溶融鉄筋用ガイド8とを備えている。
【0039】
粉末層形成手段4は、加熱されている鉄筋10に樹脂粉末を付着させて粉末層12aを形成することができればどのように構成してもよく、例えば、第1の被膜製造装置1の被覆手段3と同じに構成してもよい。粉末層形成手段4の回転ローラー31の粉末層形成位置(第1の被膜製造装置1における被覆位置)に位置されている回転ローラー31の鉄筋10の下方を支持する第1位置と解除位置に位置されている回転ローラー31の鉄筋10の下方を支持する第2位置との間には、粉末層形成鉄筋用ガイド9の上流側である一端が配置されている。
【0040】
粉末層形成鉄筋用ガイド9は、高低差により鉄筋10を自重により転動させて粉末層形成手段4から溶融手段5に移動させるものであり、例えば、傾斜したレール部材で形成されている。レール部材の傾斜角度は、鉄筋10が自重により転動するならば特に限定されないが、鉄筋10が自重により転動する速度が速くなり過ぎず確実に次の手段への移動を行える範囲から任意に設定することが好ましく、1度以下でも1度前後でもよい。レール部材は、鉄筋10を自重により転動させることができれば、断面が平板状、三角状、矩形状、多角形状、円形状、楕円形状等、特に平板状、円形状の棒状に形成されていてもよいし、上面に鉄筋10の定着部11が走行する断面V字状、断面U字状、断面半円状等の走行溝を有する長尺部材等で形成されていてもよい。
【0041】
粉末層形成鉄筋用ガイド9は、鉄筋10の無被覆箇所であって回転ローラー31及び容器34の昇降に干渉しない箇所に対応して一対設けられている。一対の粉末層形成鉄筋用ガイド9(レール部材)は、棒状に形成されている場合、鉄筋10の両端の定着部11のネック部11aにそれぞれ接触するように配置されていることが好ましい。この場合、一対の粉末層形成鉄筋用ガイド9(レール部材)は、断面平板状に形成されている場合、ハの字に傾斜されて、鉄筋10の両端の定着部11のネック部11aにそれぞれ接触するようにすることが好ましい。一対の粉末層形成鉄筋用ガイド9の下流側である他端が溶融手段5に配置されている。これにより、粉末層形成手段4において回転ローラー31及び容器34を粉末層形成位置から下降させると、当該鉄筋10が粉末層形成鉄筋用ガイド9の上流側である一端上に載置されて該粉末層形成鉄筋用ガイド9上を上流側から下流側へ自重により転動して溶融手段5に移動するようになっている。
【0042】
溶融手段5は、粉末層12aを溶融するとともに、鉄筋10を鉄筋保持部材で下方から支持するものである。鉄筋保持部材は、例えば、水平方向に間隔をあけて回転可能に取り付けられて鉄筋10を回転可能に支持する一対の回転ローラー51で形成されている。一対の回転ローラー51は、鉄筋10の両側の2箇所の無被覆箇所、例えば、定着部11以外の無被覆箇所にそれぞれ配置されている。すなわち、鉄筋10は、無被覆箇所の2箇所の外周面がそれぞれ一対の回転ローラー51に載置された状態で支持され、一対の回転ローラー51が同一方向に回転駆動されることで、回転するようになっている。一対の回転ローラー51の近傍の上方には、一対の粉末層形成鉄筋用ガイド9の下流側である他端が配置されており、粉末層形成鉄筋用ガイド9上を自重により転動してきた鉄筋10が一対の回転ローラー51上に載置されるようになっている。なお、粉末層12aの溶融は、鉄筋10の回転を停止して行うようにしてもよいが、鉄筋10を回転させながら行うことが好ましい。
【0043】
回転ローラー51は、粉末層12aの溶融が行われる溶融位置とその下方の鉄筋10の支持を解除する解除位置までの間で昇降可能に支持されている。この昇降可能に支持される回転ローラー51は、一対の回転ローラー51の両方でも冷却手段6側(下流側)の回転ローラー21のみでもよい。なお図2は分かり易いように下流側の回転ローラー51のみを昇降可能に示している。溶融位置に位置されている回転ローラー51の鉄筋10の下方を支持する第1位置と解除位置に位置されている回転ローラー51の鉄筋10の下方を支持する第2位置との間には、粉末層溶融鉄筋用ガイド8の上流側である一端が配置されている。
【0044】
このように第2の被膜製造装置を構成しても第1の被膜製造装置1と同様の作用効果を奏する。すなわち、鉄筋10は、加熱手段2により被覆する樹脂の融点以上の温度に加熱された後、加熱鉄筋用ガイド7上を自重により転動して粉末層形成手段4に移動する。鉄筋10は、加熱鉄筋用ガイド7の下流側である他端から容器34の上端面に至り上端面上を転動して凹部に入り込み粉末層形成手段4の一対の回転ローラー31上に載置される。加熱された状態のまま、その一対の回転ローラー31を回転駆動させて鉄筋10を回転させながら容器34に空気を供給して樹脂粉末の流動層33を形成する(粉末層形成工程)。これにより、鉄筋10の外表面の被覆箇所に樹脂粉末が付着して樹脂粉末の粉末層12aが形成される。
【0045】
粉末層形成後、容器34への空気の供給を停止して樹脂粉末の流動層33の形成を止めてから、回転ローラー31及び容器34を粉末層12aを形成した粉末層形成位置から下降させる。すると、一対の回転ローラー31に載置されている鉄筋10が粉末層形成鉄筋用ガイド9の上流側である一端上に載置されて粉末層形成鉄筋用ガイド9上を上流側から下流側へと自重により転動して溶融手段5に移動する。
【0046】
鉄筋10は、粉末層形成鉄筋用ガイド9の下流側である他端から溶融手段5の一対の回転ローラー51上に載置され、その一対の回転ローラー51の回転により鉄筋10を回転させながら粉末層12aの溶融が行われる(溶融工程)。溶融後、回転ローラー51の回転を停止させてから回転ローラー51を溶融位置から下降させる。すると、一対の回転ローラー51に載置されている鉄筋10が粉末層溶融鉄筋用ガイド8の上流側である一端上に載置されて粉末層溶融鉄筋用ガイド8上を上流側から下流側へと自重により転動して冷却手段6に移動され、そこで水冷されて、溶融された樹脂が固化して鉄筋10の外表面に樹脂被膜12が形成される。
【0047】
以上により、鉄筋10をガイド7,9,8上で自重により転動させて加熱工程から粉末層形成工程へ移動させるとともに、粉末層形成工程から溶融工程へ移動させ、かつ溶融工程から冷却工程へ移動させることで、鉄筋10を持ち上げて搬送する大型の搬送手段が必要ないので、装置1の小型化及び簡素化を図れる。また、粉末層12aの形成と粉末層12aの溶融を別の手段(工程)で行うことで、生産効率を向上させることができ、生産数を増やすことが可能となる。
【0048】
加熱鉄筋用ガイド7、粉末層形成鉄筋用ガイド9及び粉末層溶融鉄筋用ガイド8を傾斜した一対のレール部材で形成することで、簡単な構造及び低コストで鉄筋10の搬送を行える。
加熱鉄筋用ガイド7、粉末層形成鉄筋用ガイド9及び粉末層溶融鉄筋用ガイド8である一対のレール部材が鉄筋10の両端の定着部11のネック部11aにそれぞれ接触することで、鉄筋10を確実に次の工程へ搬送することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 第1の被膜製造装置
2 加熱手段
3 被覆手段
4 粉末層形成手段
5 溶融手段
6 冷却手段
7 加熱鉄筋用ガイド
8 粉末層溶融鉄筋用ガイド
9 粉末層形成鉄筋用ガイド
10 鉄筋
11 定着部
11a ネック部
12 樹脂被膜
12a 粉末層
21 回転ローラー
22 加熱体
31 回転ローラー
32 粉末層形成部
51 回転ローラー
100 第2の被膜製造装置
図1
図2
図3