(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389077
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20060101AFI20180903BHJP
A62C 31/12 20060101ALI20180903BHJP
A62C 35/62 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
C02F1/00 W
A62C31/12
!A62C35/62
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-146532(P2014-146532)
(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-22407(P2016-22407A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100152249
【弁理士】
【氏名又は名称】川島 晃一
(72)【発明者】
【氏名】大木 健二
【審査官】
菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−105720(JP,A)
【文献】
特開昭62−007489(JP,A)
【文献】
特開平05−253598(JP,A)
【文献】
特開昭56−111084(JP,A)
【文献】
特開2002−001385(JP,A)
【文献】
米国特許第07438820(US,B1)
【文献】
実開昭54−111398(JP,U)
【文献】
Distribution Restriction Statement,Construction:Constractor Submittal Procedures,米国,1997年 5月23日
【文献】
Sonia Colville et al,ENVIRONMENTAL ISSUES ASSOCIATED WITH DEFENCE USE OF AQUEOUS FILM FORMING FOAM(AFFF),Environmental Stewardship, Environment, Heritage and Risk Branch,2003年 5月,p.21-40,URL,http://www.defence.gov.au/FOI/Docs/Disclosures/387_1415_Document.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
A62C 31/12
A62C 35/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡消火設備を設置した駐車場の地上に開口する開口部と、
前記駐車場の地下に埋設され、前記開口部を通じて、前記泡消火設備から消火区画に放出された消火液を回収し、回収された前記消火液を下水流下可能濃度まで希釈する希釈用水槽と、
希釈された前記消火液を下水に放流する排出手段と、を備え、
前記希釈用水槽の容積が、前記消火設備からの放出可能な前記消火液の上限量と、放出された前記消火液を下水流下可能濃度まで希釈するのに必要な希釈水の量とに基づいて設定され、且つ前記希釈水が、日常的に前記希釈用水槽内に貯水されたことを特徴とする泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システム。
【請求項2】
前記希釈用水槽で希釈された前記消火液を導入し曝気処理する曝気槽を備え、前記排出手段が、前記曝気槽で曝気処理された前記消火液を下水に放流する請求項1に記載の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システム。
【請求項3】
前記希釈用水槽が、該希釈用水槽内の水質を検査する水質検査用取水装置を備えた請求項1または2に記載の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システム。
【請求項4】
前記希釈用水槽が、雨水貯槽を兼ねている請求項1〜3のいずれか1項に記載の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場など油火災のおそれのある施設に設置されている泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駐車場など油火災のおそれのある施設では泡消火設備が設置されている。泡消火設備としては、一般に、泡消火薬剤の原液を収容した泡消火薬剤原液タンクと、水源水槽と、水源水槽内の水を汲み上げ送水するポンプと、泡消火薬剤原液と水とを混合する混合装置と、混合装置で混合された消火液の通過を検知することにより火災の発生を知らせる流水検知装置と、流水検知装置の一次側配管に一定の圧力を加える圧力タンクと火災時や設備検査時に弁の開閉を行う一斉開放弁と、火災を検知して一斉開放弁を開放する火災感知用ヘッドと、流水検知装置の二次側配管に設けられ消火液を泡状にして放出する泡ヘッド等で構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このように構成された泡消火設備では、火災感知用ヘッドによる火災の検知により、或いは設備検査により一斉開放弁が開放すると、二次側配管に消火液が流れ泡ヘッドから泡状となって放出される。そして消火液の流出により一次側配管内の圧力低下を圧力タンクに備えられている圧力スイッチが検知すると、ポンプが起動して水源水槽内の水が汲み上げられ、水と泡消火薬剤原液タンクの泡消火薬剤原液が混合装置により所定の比率で混合されて消火液となり、泡ヘッドへ供給され泡状となって放出される。
このようして放出された消火液は、火災時にはそのまま下水に放流され、また、設備設置時の試験や定期点検といった設備検査時にはタンクに回収され産業廃棄物処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−89594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の泡消火設備では、火災時に放出された消火液はそのまま放流されるため、環境負荷の少ない生分解性の高い泡消火薬剤が好ましい。しかし、生分解性の高い泡消火薬剤でも、消火剤として十分な性能を発揮させようとすると、水と混合する泡消火薬剤の混合濃度を上げなければならない場合があり、泡消火薬剤の混合濃度を上げるとBOD値が高くなり、環境などへの負荷が多くなるといった問題がある。
また、設備設置時の試験や定期点検といった設備検査時には、放出した消火液をタンクに回収し、産業廃棄物処理業者に搬送して廃棄処理を行っているが、産業廃棄物処理には多大な手間と費用が掛かるといった問題がある。
【0006】
本発明の目的は、火災時や設備検査時に泡消火設備から放出された消火液の環境負荷を低減させ、下水への放流を可能とする、泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、泡消火設備を設置した施設に、泡消火設備から消火区画に放出された消火液を回収し下水流下可能濃度まで希釈する希釈用水槽と、希釈用水槽で希釈された消火液を下水に放流する排出手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、泡消火設備を設置した施設に、泡消火設備から消火区画に放出された消火液を回収し下水流下可能濃度まで希釈する希釈用水槽と、希釈用水槽で希釈された消火液を導入し曝気処理する曝気槽と、曝気槽で曝気処理された消火液を下水に放流する排出手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の、前記希釈用水槽は、雨水貯槽を兼ねていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムによれば、泡消火設備を設置した施設に、泡消火設備から消火区画に放出された消火液を回収し下水流下可能濃度まで希釈する希釈用水槽と、希釈用水槽で希釈された消火液を下水に放流する排出手段を備えたので、放出された消火液を希釈用水槽に回収し、希釈用水槽に回収した消火液を下水流下可能濃度まで希釈することにより環境負荷を低減した環境にやさしい消火液として排出手段により下水に放流することができる。
これにより、水と混合する泡消火薬剤の混合濃度の混合濃度を上げても環境負荷を低減できるので、消火剤として十分な性能を発揮できる混合濃度としても環境にやさしい消火液として下水に放流することができる。
また、設備検査時に泡消火設備から放出された消火液も希釈用水槽で下水流下可能濃度まで希釈し環境負荷を低減した環境にやさしい消火液として下水に放流することができるので、消火液をタンクに回収して産業廃棄物処理を行うといった面倒な手間や費用が掛からなくなる。
また、希釈用水槽に回収され希釈された消火液は、下水に放流せずそのまま貯水しておくことにより、泡消火設備が防護する消火区画以外の火災における消火活動用の用水として活用することもできる。
【0011】
請求項2に記載の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムによれば、泡消火設備を設置した施設に、泡消火設備から消火区画に放出された消火液を回収し下水流下可能濃度まで希釈する希釈用水槽と、希釈用水槽で希釈された消火液を導入し曝気処理する曝気槽と、曝気槽で曝気処理された消火液を下水に放流する排出手段を備えたので、放出された消火液を希釈用水槽に回収し、希釈用水槽に回収した消火液を下水流下可能濃度まで希釈し、さらに、希釈用水槽で希釈された消火液を曝気槽で曝気処理することにより、一層環境負荷を低減した環境にやさしい消火液として排出手段により下水に放流することができる。
これにより、水と混合する泡消火薬剤の混合濃度の混合濃度を上げても環境負荷を低減できるので、消火剤として十分な性能を発揮できる混合濃度としても環境にやさしい消火液として下水に放流することができる。
また、設備検査時に泡消火設備から放出された消火液も希釈用水槽で下水流下可能濃度まで希釈し環境負荷を低減した環境にやさしい消火液として下水に放流することができるので、消火液をタンクに回収して産業廃棄物処理を行うといった面倒な手間や費用が掛からなくなる。
また、希釈用水槽に回収され希釈された消火液は、下水に放流せずそのまま貯水しておくことにより、泡消火設備が防護する消火区画以外の火災における消火活動用の用水として活用することもできる。
【0012】
請求項3に記載の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムによれば、請求項1または2のいずれか1項に記載の、前記希釈用水槽は、雨水貯槽を兼ねているので、希釈用水槽に溜まった雨水を希釈水として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムの実施の形態の第1例を示す概略構成説明図である。
【
図2】本発明に係る泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムの実施の形態の第2例を示す概略構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムを実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムの実施の形態の第1例を示す概略構成説明図である。
【0015】
本例の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムは、泡消火設備1を設置した施設2に、泡消火設備1から消火区画に放出された消火液を回収し下水流下可能濃度まで希釈する希釈用水槽3と、希釈用水槽3で希釈された消火液を下水に放流する排出手段4を備えている。
下水流下可能濃度とは、国や各地方自治体等で定められている下水流下可能なBOD値になる濃度をいう。
【0016】
泡消火設備1にあっては、従来実施されている泡消火設備が全て対象となり、特に限定されない。
本例では、水源水槽5と、水源水槽5内の水を汲み上げ送水するポンプ6と、泡消火薬剤の原液を収容した泡消火薬剤原液タンク7と、泡消火薬剤原液と水とを混合する混合装置8と、混合装置8で混合された消火液の通過を検知することにより火災の発生を知らせる流水検知装置9と、流水検知装置9の一次側配管10に一定の圧力を加える圧力タンク11と火災時や設備検査時に弁の開閉を行う一斉開放弁12と、火災を検知して一斉開放弁12を開放する火災感知用ヘッド13と、流水検知装置9の二次側配管14に設けられ消火液を泡状にして放出する泡ヘッド15等で構成されている。
【0017】
このように構成された泡消火設備1では、火災感知用ヘッド13による火災の検知により、或いは設備検査により一斉開放弁12が開放すると、二次側配管14に消火液が流れ泡ヘッド15から泡状となって放出される。そして消火液の流出により一次側配管10内の圧力低下を圧力タンク11に備えられている圧力スイッチ(図示せず)が検知すると、制御部16に制御されてポンプ6が起動し水源水槽5内の水が汲み上げられ、水と泡消火薬剤原液タンク7の泡消火薬剤原液が混合装置8により所定の比率で混合されて消火液となり、泡ヘッド15へ供給され泡状となって放出される。
【0018】
泡消火設備1を設置した施設2は、駐車場など油火災のおそれのある施設であり、本例では駐車場となっている。
【0019】
泡消火設備1を設置した施設2に備えた希釈用水槽3は、地下に埋設されており、地上には放出された消火液が希釈用水槽3内に流入する開口部(図示せず)が設けられている。希釈用水槽3の容積は、消火設備1からの放出可能な消火液の上限量と、放出された消火液を下水流下可能濃度、即ち下水流下可能なBOD値まで希釈するのに必要な希釈水の量を基に設定される。
また、希釈用水槽3には、希釈用水槽3内の水質を検査する水質検査用取水装置17が備えられている。
希釈用水槽3で希釈された消火液を下水に放流する排出手段4は、希釈用水槽3と下水18を連結する排水管19と、排水管19に設けられた開閉弁20とで構成されている。
【0020】
このように構成された第1例の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムによれば、次のようにして消火液の廃棄処理が行われる。
【0021】
まず、日常的に希釈用水槽3内に希釈水を貯水しておく。希釈水は、消火設備1から放出された消火液を下水流下可能濃度まで希釈するのに必要な希釈水の量を貯水する。
そして、火災の発生或いは設備設置時の試験や定期点検といった設備検査時に消火設備1から消火液が放出されたとき、放出された消火液は地上に開口する開口部から希釈用水槽3内に流入し、希釈用水槽3内の希釈水により下水流下可能濃度に希釈される。
【0022】
火災が消火し或いは設備検査が終了し、消火液の放出が停止したら、希釈用水槽3内で希釈された消火液は、水質検査用取水装置17で取り出し、水質検査をして下水流下可能濃度まで希釈されていることを確認し、排出手段4を構成する希釈用水槽3と下水18を連結する排水管19に設けられた開閉弁20を開き、希釈された消火液を下水18に放流する。
水質検査の結果、下水流下可能濃度まで希釈されていない場合は、希釈用水槽3内に希釈水を入れ、下水流下可能濃度まで希釈してから下水18に放流する。
【0023】
図2は本発明に係る泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムの実施の形態の第2例を示す概略構成説明図である。
【0024】
本例の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムは、第1例の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムに、更に曝気槽21を備えたものであり、他の構成は第1例と同様なので、第1例と同様の構成については同一の符号を付して説明する。
【0025】
本例では、希釈用水槽3に曝気槽21が併設され、希釈用水槽3と曝気槽21は導入管22で連結されており、希釈用水槽3で希釈された消火液が導入管22を通して曝気槽21に導入され曝気処理されるようになっている。曝気槽21には曝気処理された消火液を下水に放流する排出手段23が備えられている。排出手段23は、曝気槽21と下水18を連結する排水管24と、排水管24に設けられた開閉弁25とで構成されている。
その他の構成は第1例と同一の構成なので、第1例の説明を援用し、その説明を省略する。
【0026】
このように構成された第2例の泡消火設備から放出された消火液の廃棄処理システムによれば、次のようにして消火液の廃棄処理が行われる。
第1例と同様に、まず、日常的に希釈用水槽3内に希釈水を貯水しておく。希釈水は、消火設備1から放出された消火液を下水流下可能濃度まで希釈するのに必要な希釈水の量を貯水する。
そして、火災の発生或いは設備設置時の試験や定期点検といった設備検査時に消火設備1から消火液が放出されたとき、放出された消火液は地上に開口する開口部から希釈用水槽3内に流入し、希釈用水槽3内の希釈水により下水流下可能濃度に希釈される。
火災が消火し或いは設備検査が終了し、消火液の放出が停止したら、希釈用水槽3内で希釈された消火液は、水質検査用取水装置17で取り出し、水質検査をして下水流下可能濃度まで希釈されていることを確認し、下水流下可能濃度まで希釈されていない場合は、希釈用水槽3内に希釈水を入れ、下水流下可能濃度まで希釈する。
【0027】
希釈用水槽3で希釈された消火液が導入管22を通して曝気槽21に導入されたら、曝気槽21で曝気処理し、所定時間経過後、排出手段23を構成する曝気槽21と下水18を連結する排水管24に設けられた開閉弁25を開き、希釈された消火液を下水18に放流する。
【符号の説明】
【0028】
1 泡消火設備
2 施設
3 希釈用水槽
4 排出手段
5 水源水槽
6 ポンプ
7 泡消火薬剤原液タンク
8 混合装置
9 流水検知装置
10 一次側配管
11 圧力タンク
12 一斉開放弁
13 火災感知用ヘッド
14 二次側配管
15 泡ヘッド
16 制御部
17 水質検査用取水装置
18 下水
19 排水管
20 開閉弁
21 曝気槽
22 導入管
23 排出手段
24 排水管
25 開閉弁