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特許6389078心電図成分検出システム、心電図成分検出方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389078
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】心電図成分検出システム、心電図成分検出方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0402 20060101AFI20180903BHJP
   A61B 5/0456 20060101ALI20180903BHJP
   A61B 5/0452 20060101ALI20180903BHJP
   A61B 5/04 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   A61B5/04 310M
   A61B5/04 312R
   A61B5/04 312C
   A61B5/04ZDM
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-148229(P2014-148229)
(22)【出願日】2014年7月18日
(65)【公開番号】特開2016-22165(P2016-22165A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 力
(72)【発明者】
【氏名】小島 圭子
【審査官】 佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−104641(JP,A)
【文献】 特開2008−093220(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/023995(WO,A1)
【文献】 特開2008−301984(JP,A)
【文献】 特開平6−205847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの心電のデータを取得する取得部と、
過去に取得された前記心電のデータにおけるR波とT波とに基づいて、R波を検出するための閾値を取得する閾値取得部と、
取得された閾値に基づいて心電のデータからR波を検出する検出部と、
を備え
前記閾値取得部は、前記閾値を取得するテストモードで動作している場合に、過去に取得された前記心電のデータから前記ユーザによって選択されたR波とT波とに基づいて、前記閾値を取得する心電図成分検出システム。
【請求項2】
前記閾値取得部は、R波の最小値とT波の最大値との間の値を前記閾値として取得する、請求項1に記載の心電図成分検出システム。
【請求項3】
前記検出部は、前記心電のデータにおいて、前記閾値以上の値を示すデータをR波として検出する、請求項1又は2に記載の心電図成分検出システム。
【請求項4】
前記検出部は、R波を検出してからある時間経過するまでの間に検出された前記閾値以上の値を示すデータをR波としては検出しない、請求項1から3のいずれか1項に記載の心電図成分検出システム。
【請求項5】
前記心電のデータをユーザ毎に記憶する情報記憶部と、
前記心電のデータの各タイミングの値に対して、所定の条件に従いフラグを付与するフラグ付与部と、
ユーザの要求に応じて、記憶されている前記心電のデータのうち、前記フラグが付与されているタイミングの値における心電のデータを前記ユーザに送信する送信部と、
をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の心電図成分検出システム。
【請求項6】
前記フラグ付与部は、前記心電のデータの使用目的別に予め設定されたタイミングで、前記心電のデータの各タイミングの値に対してフラグを付与し、
前記送信部は、前記心電のデータの取得元のユーザとは異なる第三者から指定された使用目的のフラグが付与されているタイミングの値における心電のデータを前記第三者に送信する、請求項5に記載の心電図成分検出システム。
【請求項7】
前記検出部によって検出された前記R波に基づいて前記ユーザがリラックスしている割合を表すリラックス度を算出するリラックス度算出部、
をさらに備え、
前記リラックス度算出部は、前記検出部によって検出された前記R波の検出回数と、前記検出部によって検出されたR波の検出時刻の差が所定の時間以上となった回数とに基づいて前記リラックス度を算出する、請求項1から4のいずれか1項に記載の心電図成分検出システム。
【請求項8】
ユーザの心電のデータを取得する取得ステップと、
過去に取得された前記心電のデータにおけるR波とT波とに基づいて、R波を検出するための閾値を取得する閾値取得ステップと、
取得された閾値に基づいて心電のデータからR波を検出する検出ステップと、
を有し、
前記閾値取得ステップにおいて、前記閾値を取得するテストモードで動作している場合に、過去に取得された前記心電のデータから前記ユーザによって選択されたR波とT波とに基づいて、前記閾値を取得する心電図成分検出方法。
【請求項9】
ユーザの心電のデータを取得する取得ステップと、
過去に取得された前記心電のデータにおけるR波とT波とに基づいて、R波を検出するための閾値を取得する閾値取得ステップと、
取得された閾値に基づいて心電のデータからR波を検出する検出ステップと、
をコンピュータに実行させ
前記閾値取得ステップにおいて、前記閾値を取得するテストモードで動作している場合に、過去に取得された前記心電のデータから前記ユーザによって選択されたR波とT波とに基づいて、前記閾値を取得するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報の解析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心拍や心電のデータを含む生体情報をより簡易に取得できるようになってきている。例えば、繊維表面にコーティングを行うことで電極素材を生成する技術を用いて、着るだけで生体情報を取得することができるウェアラブルな技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。このような技術を用いることで、従来においては医療機器でしか取得できなかった生体情報を、日常生活においてリアルタイムに取得できるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】http://www.ntt.co.jp/journal/1402/files/jn201402015.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、取得した生体情報は医学的な専門データであるため、一般ユーザが活用するためには分かりやすい指標への変換が必要である。そこで、取得した生体情報から簡易でかつ高精度に活用しやすいデータに変換して提供するために、ユーザの緊張や興奮などの度合いを示す指標となるR波を精度よく検出する技術が要求されている。
上記事情に鑑み、本発明は、R波を精度よく検出することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ユーザの心電のデータを取得する取得部と、過去に取得された前記心電のデータにおけるR波とT波とに基づいて、R波を検出するための閾値を取得する閾値取得部と、取得された閾値に基づいて心電のデータからR波を検出する検出部と、を備える心電図成分検出システムである。
【0006】
本発明の一態様は、上記の心電図成分検出システムであって、前記閾値取得部は、R波の最小値とT波の最大値との間の値を前記閾値として取得する。
【0007】
本発明の一態様は、上記の心電図成分検出システムであって、前記検出部は、前記心電のデータにおいて、前記閾値以上の値を示すデータをR波として検出する。
【0008】
本発明の一態様は、上記の心電図成分検出システムであって、前記検出部は、R波を検出してからある時間経過するまでの間に検出された前記閾値以上の値を示すデータをR波としては検出しない。
【0009】
本発明の一態様は、上記の心電図成分検出システムであって、前記心電のデータをユーザ毎に記憶する情報記憶部と、前記心電のデータの各タイミングの値に対して、所定の条件に従いフラグを付与するフラグ付与部と、ユーザの要求に応じて、記憶されている前記心電のデータのうち、前記フラグが付与されているタイミングの値における心電のデータを前記ユーザに送信する送信部と、をさらに備える。
【0010】
本発明の一態様は、上記の心電図成分検出システムであって、前記フラグ付与部は、前記心電のデータの使用目的別に予め設定されたタイミングで、前記心電のデータの各タイミングの値に対してフラグを付与し、前記送信部は、前記心電のデータの取得元のユーザとは異なる第三者から指定された使用目的のフラグが付与されているタイミングの値における心電のデータを前記第三者に送信する。
【0011】
本発明の一態様は、ユーザの心電のデータを取得する取得ステップと、過去に取得された前記心電のデータにおけるR波とT波とに基づいて、R波を検出するための閾値を取得する閾値取得ステップと、取得された閾値に基づいて心電のデータからR波を検出する検出ステップと、を有する心電図成分検出方法である。
【0012】
本発明の一態様は、ユーザの心電のデータを取得する取得ステップと、過去に取得された前記心電のデータにおけるR波とT波とに基づいて、R波を検出するための閾値を取得する閾値取得ステップと、取得された閾値に基づいて心電のデータからR波を検出する検出ステップと、をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、R波を精度よく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態における心電図成分検出システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
図2】閾値の算出方法を説明するための図である。
図3】閾値に基づくR波の検出方法を説明するための図である。
図4】リラックス度の算出結果を示す図である。
図5】通信端末10の閾値算出処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図6】通信端末10のリラックス度算出処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態における心電図成分検出システム100aのシステム構成を示す概略ブロック図である。
図8】クラウドサーバ30aの機能構成を表す概略ブロック図である。
図9】クラウドサーバ30aが記憶している生体情報テーブルの具体例を示す図である。
図10】本発明の第2実施形態における心電図成分検出システム100aの処理の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な構成例(第1実施形態及び第2実施形態)について、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態における心電図成分検出システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。第1実施形態における心電図成分検出システム100は、通信端末10及び生体情報センサ20を備える。通信端末10及び生体情報センサ20は、短距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標))により通信を行う。なお、通信端末10及び生体情報センサ20の通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。
【0016】
通信端末10は、例えばスマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器等を用いて構成される。通信端末10は、生体情報センサ20から無線通信又は有線通信によって生体情報を取得する。通信端末10は、テストモードと推定モードとの2種類のモードを有する。テストモードとは、推定モードにより検出対象となるR波を生体情報から検出するための閾値を算出するモードである。推定モードとは、テストモードで算出された閾値に基づいて、周期的(例えば、1ミリ秒)に生体情報センサ20から取得する生体情報からR波を検出し、検出したR波に基づいてユーザの身体状態の割合を推定するモードである。ユーザの身体状態とは、例えばユーザの揺らぎのある状態、すなわち、リラックスしている状態である。本実施形態では、通信端末10は、ユーザがリラックスしている割合(以下、「リラックス度」という。)をユーザの身体状態の割合として推定する。
【0017】
生体情報センサ20は、ユーザの生体情報を取得する。生体情報は、例えば心拍数、心臓の活動電位、体温、音声の出力レベル、血圧等の値である。本実施形態では、生体情報センサ20は、ユーザの心拍数及び心臓の活動電位(心電のデータ)を生体情報として取得する。生体情報センサ20は、取得された生体情報に、生体情報が取得された日時を対応付けて無線通信又は有線通信によって通信端末10に送信する。
【0018】
次に、通信端末10の具体的な機能構成について説明する。通信端末10は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、心電成分検出プログラムを実行する。心電成分検出プログラムの実行によって、通信端末10は、通信部101、取得部102、生体情報記憶部103、表示制御部104、表示部105、入力部106、切替制御部107、閾値算出部108、検出部109、時間間隔算出部110、リラックス度算出部111を備える装置として機能する。なお、通信端末10の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、心電成分検出プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、心電成分検出プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0019】
通信部101は、ネットワークインターフェースを用いて構成される。通信部101は、生体情報センサ20との間でデータを送受信する。
取得部102は、通信部101によって受信されたデータから生体情報を取得する。取得部102は、取得した生体情報を生体情報記憶部103に書き込む。
生体情報記憶部103は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。生体情報記憶部103は、生体情報及び生体情報が取得された日時の情報を対応付けて記憶する。
【0020】
表示制御部104は、表示部105の表示を制御する。例えば表示制御部104は、生体情報記憶部103に記憶されている生体情報に含まれる心臓の活動電位をグラフで描画することによって心電図データを生成し、生成した心電図データを表示部105に表示させる。なお、表示制御部104は、生体情報記憶部103に記憶されている生体情報のうち、所定の間隔(例えば、14/1000秒間隔)で取得された生体情報に含まれる心臓の活動電位に基づく心電図データを表示させる。表示制御部104は、心電図データとともに心拍数の値を表示部105に表示させてもよい。
【0021】
表示部105は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置である。表示部105は、表示制御部104の制御に応じた表示を行う。例えば、表示部105は、心電図データを表示する。表示部105は、画像表示装置を通信端末10に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、表示部105は、心電図データを表示するための映像信号を生成し、自身に接続されている画像表示装置に映像信号を出力する。
【0022】
入力部106は、タッチパネル、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部106は、ユーザの指示を通信端末10に入力する際にユーザによって操作される。例えば、入力部106は、モード切替の指示入力を受け付ける。入力部106は、入力装置を通信端末10に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部106は、入力装置においてユーザの操作に応じて生成された入力信号を通信端末10に入力する。
【0023】
切替制御部107は、入力部106に入力された指示に応じて、自装置のモードの切り替えを制御する。
閾値算出部108は、自装置がテストモードで動作している場合に機能する機能部である。閾値算出部108は、所定の期間の間に取得された生体情報における心臓の活動電位の値から生成された心電図データに含まれる心電図成分のうち、ユーザが入力部106を介して選択したR波の値とT波の値とに基づいてR波を検出するための閾値を算出する。より具体的には、閾値算出部108は、R波の最小値とT波の最大値との中間の値を閾値として算出する。閾値は、上述の値に限定される必要はない。例えば、閾値は、ユーザに選択されたR波の最小値とT波の最大値との間の値であればどのような値であってもよい。なお、閾値算出部108は、過去に取得された生体情報における心臓の活動電位の値から生成された心電図データに含まれる心電図成分のうち、ユーザが入力部106を介して選択したR波の値とT波の値とに基づいて閾値を算出してもよい。
【0024】
検出部109は、自装置が推定モードで動作している場合に機能する機能部である。検出部109は、閾値算出部108によって算出された閾値に基づいて、取得部102によって取得された生体情報に含まれる心臓の活動電位の値からR波を検出する。なお、検出部109は、R波を検出する度、R波を検出した回数(以下、「R波検出回数」という。)をカウントする。例えば、検出部109は、R波検出回数を1ずつインクリメントする。
【0025】
時間間隔算出部110は、R波が検出された時刻と次にR波が検出された時刻との時刻差(以下、「R−R間隔」という。)を算出する。なお、R−R間隔に50(ミリ秒)以上の差がみられる場合、時間間隔算出部110はR−R間隔に50(ミリ秒)以上の差がみられる度、R−R間隔に50(ミリ秒)以上の差がみられた回数(以下、「RR50検出回数」という。)をカウントする。例えば、時間間隔算出部110は、RR50検出回数を1ずつインクリメントする。
リラックス度算出部111は、R波検出回数と、RR50検出回数と、予め設定された固定値とに基づいてリラックス度を算出する。
【0026】
図2は、閾値の算出方法を説明するための図である。
図2の例では、心電図データ11と、時刻表示領域12とが表示部105に表示されている。図2において、心電図データ11の縦軸は心臓の活動電位(mV)を表し、横軸は時間Tを表す。また、時刻表示領域12の内側には、計測時間が表示される。時刻表示領域12に示される計測時間は、テストモードが開始されてからユーザの生体情報が取得された時間を表す。
以下、閾値算出部108による閾値算出の具体的な処理について図2を用いて説明する。
【0027】
まず、ユーザは、通信端末10を操作して、表示部105に表示されている心電図データ11のR波とT波とを選択する。図2の例では、ユーザは、矢印13で示されるいずれかのR波と、矢印14で示されるいずれかのT波とを選択する。ここで、ユーザによるR波とT波の選択は以下のように行われてもよい。まず、表示制御部104は、R波を選択させる旨の表示(例えば、ポップアップ表示)を表示部105の画面上に表示させる。そして、表示制御部104は、ユーザからR波の選択があった後にT波を選択させる旨の表示(例えば、ポップアップ表示)を表示部105の画面上に表示させる。このように、ユーザからR波とT波の選択を受け付けてもよい。
【0028】
閾値算出部108は、表示がなされてから最初に選択された心電図データ付近のR波の最小値を取得する。閾値算出部108は、R波の値を取得した後にユーザに選択された心電図データ付近のT波の最大値を取得する。その後、閾値算出部108は、取得したR波の最小値と、T波の最大値との中間の値を閾値として算出する。
以上で、閾値算出部108による閾値算出の具体的な処理についての説明を終了する。
【0029】
図3は、閾値に基づくR波の検出方法を説明するための図である。
図3には、所定の時間における心電図データが示されている。図3において、心電図データの縦軸は心臓の活動電位を表し、横軸は時間を表す。
図3に示されるように、心電図データには複数の心電図成分(P波、Q波、R波、S波、T波)が存在する。検出部109は、心電図データと、閾値算出部108によって算出された閾値とに基づいてR波を検出する。以下、R波の検出方法について図3を用いて具体的に説明する。
【0030】
検出部109は、周期的に取得される生体情報に含まれる心臓の活動電位の値が閾値と略同じになると、閾値と略同じになった心臓の活動電位のデータをR波として検出する。この際、検出部109は、R波が検出された時点における時刻も検出する。図3では、点15−1、15−2及び15−3で示される時刻にR波が検出される。また、点15−1、15−2及び15−3で示される時刻にR波が検出された後、点16−1、16−2及び16−3で示される時刻に閾値と略同じになった心臓の活動電位のデータが検出される。ただし、本実施形態における検出部109は、R波が検出されてからある時間(例えば、200ミリ秒)が経過するまでの間に検出された、閾値と略同じになった心臓の活動電位のデータをR波としては検出しない。すなわち、点16−1、16−2及び16−3で示される時刻に閾値と略同じになった心臓の活動電位のデータは、R波として検出されない。
【0031】
一般的に、R−R間隔は約500ミリ秒と言われているため、ある時間(例えば、200ミリ秒)が経過するまでの間に検出されたデータにおいてはノイズである可能性が高い。そのため、上述した処理により、閾値と略同じになった心臓の活動電位のデータを全てR波として検出しないようにすることで精度を悪くする原因となるノイズを除外することができる。その結果、R波を精度よく検出することができる。なお、以下の説明では、1つのR−R間隔(例えば、点15−1の時刻から点15−2の時刻の間隔)を心拍の値が1拍としてカウントする。また、以下の説明では、R−R間隔における、前に検出されたデータ(例えば、点15−1と点15−2の場合、点15−1で示されるデータ)を前検出データと称し、後に検出されたデータ(例えば、点15−1と点15−2の場合、点15−2で示されるデータ)を後検出データと称する。
以上で、R波の検出方法についての説明を終了する。
【0032】
時間間隔算出部110は、上述した処理により生体情報からR波を検出し、検出したR波に基づいてR−R間隔を算出する。その後、時間間隔算出部110は、算出したR−R間隔の値が、以下の式1を満たすか否か判定する。
【0033】
【数1】
【0034】
式1のRR(n+1)はR−R間隔における後検出データの検出時刻であり、RR(n)はR−R間隔における前検出データの検出時刻を表す。算出したR−R間隔の値が、上記式1を満たす場合、時間間隔算出部110はRR50検出回数をカウントする。なお、以下の説明では、上記式1を満たすR−R間隔がある場合にはRR検出条件を満たすと称する。
【0035】
図4は、リラックス度の算出結果を示す図である。
図4の例では、リラックス度算出部111によって算出されたリラックス度の推移を示す折れ線17と、時刻表示領域18と、リラックス度表示領域19とが表示部105に表示されている。図4において、折れ線17の縦軸はリラックス度(%)を表し、横軸は時間Tを表す。また、時刻表示領域18の内側には、計測時間が表示される。時刻表示領域18に示される計測時間は、推定モードが開始されてからユーザのリラックス度が算出された時間を表す。リラックス度表示領域19の内側には、リラックス度算出部111によって算出されたリラックス度が表示される。
以下、リラックス度算出部111によるリラックス度の算出方法について具体的に説明する。
【0036】
リラックス度算出部111は、所定の時間(例えば、心拍の値のカウント100回分の時間)が経過すると、所定の時間が経過するまでにカウントされたRR50検出回数と、所定の時間が経過するまでにカウントされたR波検出回数とを用いて、以下の式2に基づいてリラックス度を算出する。
【0037】
【数2】
【0038】
式2の固定値は予め設定された値であり、例えば0.13である。固定値は、適宜変更されてもよい。
以上で、リラックス度の算出方法についての説明を終了する。
【0039】
図5は、通信端末10の閾値算出処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、図5の説明では、通信端末10がテストモードで動作している場合を例に説明する。
取得部102は、通信部101を介して周期的に生体情報を取得する(ステップS101)。取得部102は、取得した生体情報を生体情報記憶部103に記憶させる(ステップS102)。表示制御部104は、生体情報記憶部103に記憶されている生体情報を表示部105に表示させる(ステップS103)。具体的には、表示制御部104は、生体情報に含まれる心臓の活動電位の値に基づいて生成される心電図データを表示部105に表示させる。表示部105は、表示制御部104の制御に従って心電図データを表示する。
【0040】
閾値算出部108は、R波とT波の選択があったか否か判定する(ステップS104)。R波とT波の選択があった場合(ステップS104−YES)、閾値算出部108は閾値を算出する(ステップS105)。具体的には、閾値算出部108は、R波の最小値と、T波の最大値との中間の値を閾値として算出する。閾値算出部108は、算出した閾値を自装置に設定する(ステップS106)。
【0041】
一方、R波とT波の選択がなかった場合(ステップS104−NO)、切替制御部107は所定の時間が経過したか否か判定する(ステップS107)。
所定の時間が経過した場合(ステップS107−YES)、切替制御部107はテストモードを終了する。
一方、所定の時間が経過していない場合(ステップS107−NO)、ステップS104以降の処理が繰り返し実行される。
【0042】
図6は、通信端末10のリラックス度算出処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、図6の説明では、通信端末10が推定モードで動作している場合を例に説明する。
取得部102は、通信部101を介して周期的に生体情報を取得する(ステップS201)。検出部109は、取得された生体情報に含まれる心臓の活動電位の値が閾値以上であるか否か判定する(ステップS202)。心臓の活動電位の値が閾値以上ではない場合(ステップS202−NO)、ステップS201以降の処理が繰り返し実行される。
一方、心臓の活動電位の値が閾値以上である場合(ステップS202−YES)、検出部109は生体情報から時刻情報を取得する。そして、検出部109は、前回のR波の検出時刻からある時間(例えば、200ミリ秒)経過しているか否か判定する(ステップS203)。
【0043】
ある時間(例えば、200ミリ秒)経過していない場合(ステップS203−NO)、検出部109は検出したデータをR波としては検出しない(ステップS204)。その後、ステップS201以降の処理が実行される。
一方、ある時間(例えば、200ミリ秒)経過している場合(ステップS203−YES)、検出部109は検出したデータをR波として検出する。この際、検出部109は、生体情報から時刻情報を取得する(ステップS205)。また、検出部109は、R波検出回数を1だけインクリメントする。
【0044】
時間間隔算出部110は、R−R間隔を算出する(ステップS206)。その後、時間間隔算出部110は、RR50検出条件を満たすか否か判定する(ステップS207)。RR50検出条件を満たさない場合(ステップS207−NO)、ステップS201以降の処理が繰り返し実行される。
一方、RR50検出条件を満たす場合(ステップS207−YES)、時間間隔算出部110はRR50検出回数を1だけインクリメントする(ステップS208)。その後、時間間隔算出部110は、R波検出回数を取得する(ステップS209)。
【0045】
その後、時間間隔算出部110は所定の時間(例えば、心拍の値のカウント数100回分の時間)経過したか否か判定する(ステップS210)。所定の時間が経過していない場合(ステップS210−NO)、通信端末10はステップS201以降の処理を繰り返し実行する。
一方、所定の時間が経過した場合(ステップS210−YES)、リラックス度算出部111はRR50検出回数と、R波検出回数とに基づいてリラックス度を算出する(ステップS211)。
表示制御部104は、リラックス度算出部111によって算出されたリラックス度を表示部105に表示させる。表示部105は、表示制御部104の制御に従ってリラックス度を表示する(ステップS212)。
【0046】
以上のように構成された心電図成分検出システム100によれば、テストモードにて算出された閾値に基づいてR波を精度よく検出することが可能になる。具体的には、通信端末10が、周期的に取得されるユーザの生体情報に含まれる心電の活動電位の値が閾値と略同じになると、R波を検出したと判定する。ただし、前回R波を検出してからある時間が経過していない場合には、通信端末10は心電の活動電位の値が閾値と略同じになったデータをノイズとして検出結果から除く。したがって、R波検出におけるノイズを簡易に除去することができる。そのため、R波を精度よく検出することが可能になる。
【0047】
また、ユーザ毎に取得される生体情報が異なる。つまり、取得される心拍数や心臓の活動電位の値は、ユーザ毎に異なる。そのため、全てのユーザで共通の閾値を用いた場合、ユーザによってはR波を精度よく検出できない場合もある。それに対して、本発明における閾値は、共通の閾値を用いるのではなくユーザ個々に算出される。そのため、ユーザ毎に、個々に算出された閾値を用いることでユーザに合わせた高精度な検出が可能になる。
【0048】
また、本発明では、R波の検出結果を用いてリラックス度が算出される。ユーザは、算出されたリラックス度を見ることによって客観的に自身の状態を把握することができる。例えば、面接や発表などといった緊張を伴うシーンにおけるリラックス度と、友人や家族と一緒にいてリラックスしているシーンにおけるリラックス度と比較することで状況に応じてどのくらい精神状態が変化するのかを把握することができる。
【0049】
<変形例>
本実施形態では、閾値が演算により得られる構成を示したが、これに限定される必要はない。すなわち、閾値がユーザに選択されたR波の最小値とT波の最大値との間の値から取得される値であればどのような手段で実現されてもよい。例えば、R波の最小値とT波の最大値との間の値から所定の条件に従って閾値が取得されてもよい。この場合、閾値算出部108は、ユーザに選択されたR波とT波とに基づいて、閾値を取得する取得閾値取得部として機能する。
時間間隔算出部110及びリラックス度算出部111は、他の装置に備えられるように構成されてもよい。このように構成される場合、通信端末10は、検出部109によって検出されたR波に関する情報(例えば、R波の検出時刻及びR波検出回数)を他の装置に送信する。他の装置の時間間隔算出部110は、通信端末10から受信したR波に関する情報からR−R間隔を算出し、RR検出条件を満たすか否か判定する。時間間隔算出部110は、この処理を所定の時間(例えば、心拍の値のカウント数100回分の時間)経過するまで繰り返し実行する。所定の時間が経過すると、リラックス度算出部111は、所定の時間が経過するまでにカウントされたR波検出回数と、所定の時間が経過するまでにカウントされたRR50検出回数と、予め設定された固定値とに基づいてリラックス度を算出する。
【0050】
本実施形態では、検出部109が検出したR波に関する情報をリラックス度の算出処理に使用する一実施例で示したが、それに限定される必要はなく、他の処理に使用されてもよい。例えば、検出部109が検出したR波に関する情報は、ユーザのレム睡眠、ノンレム睡眠の判定に用いられてもよい。
R波の最小値及びT波の最大値の取得方法は、上述の方法に限定される必要はない。例えば、ユーザによって表示部105の画面上に表示されている心電図データから2箇所選択されると、閾値算出部108は選択された各箇所における心臓の活動電位の値をそれぞれ取得する。次に、閾値算出部108は、取得した各心臓の活動電位の値を比較し、値が大きい箇所をR波、値が小さい箇所をT波として判断する。そして、閾値算出部108は、R波として判断した箇所における心電図データ付近の最小値をR波の最小値として取得する。また、閾値算出部108は、T波として判断した箇所における心電図データ付近の最大値をT波の最大値として取得する。
【0051】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態における心電図成分検出システム100aのシステム構成を示す概略ブロック図である。第2実施形態における心電図成分検出システム100aは、通信端末10a、生体情報センサ20a及びクラウドサーバ30aを備える。通信端末10a及び生体情報センサ20aは、短距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標))により通信を行う。なお、通信端末10a及び生体情報センサ20aの通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。通信端末10a及びクラウドサーバ30aは、ネットワーク40aを介して通信可能に接続される。
【0052】
心電図成分検出システム100aは、心電図成分検出システム100における生体情報の利用方法(1次利用方法)の他に、生体情報の2次利用方法に適用することができる。以下の説明では、生体情報の2次利用方法について説明する。心電図成分検出システム100aでは、生体情報センサ20aによって取得された生体情報を取得した通信端末10aは、取得した生体情報をネットワーク40aを介してクラウドサーバ30aに記憶させる。クラウドサーバ30aは、記憶している生体情報のうち、所定の条件を満たす生体情報にフラグを付与し、通信端末10aからの要求に応じてフラグが付与された生体情報を通信端末10aに送信する。なお、以下、通信端末10a、生体情報センサ20a、クラウドサーバ30a及びネットワーク40aについて詳細に説明する。
【0053】
通信端末10aは、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、心電成分検出プログラムを実行する。心電成分検出プログラムの実行によって、通信端末10aは、通信部101a、取得部102、生体情報記憶部103、表示制御部104、表示部105、入力部106a、切替制御部107、閾値算出部108、検出部109、時間間隔算出部110、リラックス度算出部111を備える装置として機能する。なお、通信端末10aの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、心電成分検出プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、心電成分検出プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0054】
第2実施形態における通信端末10aは、通信部101及び入力部106に代えて通信部101a及び入力部106aを備える点で通信端末10と構成が異なる。通信端末10aは、他の構成については通信端末10と同様である。そのため、通信端末10a全体の説明は省略し、通信部101a及び入力部106aについて説明する。
【0055】
通信部101aは、ネットワークインターフェースを用いて構成される。通信部101aは、生体情報センサ20aとの間で通信を行う。通信部101aは、クラウドサーバ30aとの間で通信を行う。例えば、通信部101aは、生体情報の取得要求をクラウドサーバ30aに送信する。生体情報取得要求には、ユーザID及びパスワードが含まれる。ユーザIDは、例えば生体情報の要求元であるユーザが予め設定した特定の情報(例えば、ニックネーム)であってもよいし、通信端末10aのMACアドレスであってもよい。
入力部106aは、タッチパネル、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部106aは、ユーザの指示を通信端末10aに入力する際にユーザによって操作される。例えば、入力部106aは、モード切替の指示入力を受け付ける。また、例えば、入力部106aは、生体情報の取得要求の指示入力を受け付ける。入力部106aは、入力装置を通信端末10aに接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、入力部106aは、入力装置においてユーザの操作に応じ生成された入力信号を通信端末10aに入力する。
【0056】
生体情報センサ20aは、ユーザの生体情報を取得する。生体情報センサ20aは、取得された生体情報と、生体情報が取得された日時と、を無線通信又は有線通信によって通信端末10aに送信する。
クラウドサーバ30aは、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成される。クラウドサーバ30aは、クラウド上に設けられる。クラウドサーバ30aは、通信端末10aから送信された生体情報を保存し、通信端末10aからの要求に応じて生体情報を通信端末10aに送信する。
ネットワーク40aは、どのように構成されたネットワークでもよい。ネットワーク40aは、例えばインターネットを用いて構成されてもよい。
【0057】
図8は、クラウドサーバ30aの機能構成を表す概略ブロック図である。クラウドサーバ30aは、バスで接続されたCPUやメモリや補助記憶装置などを備え、抽出プログラムを実行する。抽出プログラムの実行によって、クラウドサーバ30aは、通信部301、通信制御部302、フラグ付与部303、ユーザ別生体情報記憶部304、抽出部305を備える装置として機能する。なお、クラウドサーバ30aの各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、抽出プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、抽出プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0058】
通信部301は、ネットワークインターフェースを用いて構成される。通信部301は、ネットワーク40aを介して通信端末10aとの間で通信を行う。
通信制御部302は、通信部301によって受信されたデータに応じた制御を行う。例えば、通信部301によって生体情報が受信されると、通信制御部302は生体情報をフラグ付与部303に出力する。また、例えば、通信部301によって生体情報取得要求が受信されると、通信制御部302は生体情報取得要求を抽出部305に出力する。
【0059】
フラグ付与部303は、所定の条件を満たす生体情報にフラグを付与する。所定の条件とは、例えば、予め定められた間隔で受信された生体情報である。例えば、予め定められた間隔が14である場合、フラグ付与部303は生体情報が14回受信される度に14回目に受信された生体情報にフラグを付与する。このように、フラグ付与部303は、各タイミング(1ミリ秒のタイミング)で受信された生体情報のうち、所定の条件を満たす生体情報にフラグを付与する。なお、間隔のカウントは、ユーザ毎に行われる。つまり、フラグ付与部303は、あるユーザの生体情報が所定の回数分受信される度に、あるユーザの生体情報にフラグを付与する。所定の条件における間隔は、ユーザ毎に異なってもよいし、全てのユーザで共通であってもよい。
【0060】
ユーザ別生体情報記憶部304は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。ユーザ別生体情報記憶部304は、ユーザ別生体情報テーブルを記憶する。ユーザ別生体情報テーブルは、各タイミングで取得された生体情報を含むレコード(以下、「生体情報レコード」という。)によって構成される。
抽出部305は、生体情報の取得要求に応じて、ユーザ別生体情報記憶部304に記憶されているユーザ別生体情報テーブルからフラグが付与されている生体情報を抽出する。例えば、抽出部305は、生体情報の取得要求の送信元である通信端末10aから送信された生体情報が記録されているユーザ別生体情報テーブルからフラグが付与されている生体情報を抽出する。
【0061】
図9は、クラウドサーバ30aが記憶している生体情報テーブルの具体例を示す図である。
生体情報テーブルは、ユーザ別に複数の生体情報レコードを有する。生体情報レコードは、フラグ、生体情報及び保存日時の各値を有する。フラグの値は、フラグ付与部303によって付与されたフラグを表す。フラグの具体例として“0”又は“1”がある。“0”の値は、同じ生体情報レコードの生体情報にフラグが付与されていないことを示す。“1”の値は、同じ生体情報レコードの生体情報に対してフラグが付与されていることを示す。生体情報の値は、生体情報センサ20aによって所定のタイミング(1ミリ秒)で取得された生体情報を表す。保存日時の値は、同じ生体情報レコードの生体情報がユーザ別生体情報テーブルに記憶された日時を表す。
図9に示される例では、2m(mは1以上の整数)番目に記録されている生体情報にフラグが付与されており、(2m−1)番目に記録されている生体情報にはフラグが付与されていないことが示されている。
【0062】
図10は、本発明の第2実施形態における心電図成分検出システム100aの処理の動作を示すシーケンス図である。
生体情報センサ20aは、ユーザの生体情報を取得する(ステップS301)。生体情報センサ20aは、取得した生体情報を通信端末10aに送信する(ステップS302)。生体情報センサ20aは、ステップS301及び302の処理を周期的(例えば、1ミリ秒毎)に実行する。
通信端末10aの通信部101aは、生体情報センサ20aから送信された生体情報を受信する。通信部101aは、ネットワーク40aを介して生体情報をクラウドサーバ30aに送信する(ステップS303)。
【0063】
クラウドサーバ30aの通信部301は、通信端末10aから送信された生体情報を受信する。通信制御部302は、受信されたデータが生体情報であるため、受信された生体情報をフラグ付与部303に出力する。フラグ付与部303は、生体情報にフラグを付与する必要があるか否か判定する(ステップS304)。生体情報にフラグを付与する必要がある場合、フラグ付与部303は生体情報にフラグを付与する。一方、生体情報にフラグを付与する必要がない場合、フラグ付与部303は生体情報にフラグを付与しない。その後、フラグ付与部303は、生体情報をユーザ別生体情報記憶部304に記憶させる(ステップS305)。この際、フラグ付与部303は、生体情報を記憶させた時刻を生体情報に対応付けて記憶させる。
その後、ステップS301からステップS305までの処理が繰り返し実行される。
【0064】
ユーザから通信端末10aの入力部106aを介してユーザID及びパスワードの入力がなされると、通信部301はユーザID及びパスワードを含む生体情報取得要求を生成し、生成した生体情報取得要求をクラウドサーバ30aに送信する(ステップS306)。
クラウドサーバ30aの通信部301は、通信端末10aから送信された生体情報取得要求を受信する。通信制御部302は、受信されたデータが生体情報取得要求であるため、受信された生体情報取得要求に含まれるユーザID及びパスワードと、予め記憶しているユーザID及びパスワードとが一致するか否か判定する。ユーザID及びパスワードが一致しない場合、通信制御部302は生体情報を送信すべき対象ではないと判定する。この場合、通信制御部302は、エラー通知を生成し、通信部301を介して生体情報取得要求の送信元の通信端末10aに送信する。一方、ユーザID及びパスワードが一致する場合、通信制御部302は生体情報を送信すべき対象であると判定する。この場合、通信制御部302は受信された生体情報取得要求を抽出部305に出力する。
【0065】
抽出部305は、ユーザ別生体情報記憶部304を参照し、生体情報取得要求に応じた生体情報を抽出する(ステップS307)。具体的には、抽出部305は、生体情報取得要求の送信元である通信端末10aのユーザに対応する生体情報のうち、フラグが付与されている生体情報をユーザ別生体情報テーブルから抽出する。抽出部305は、抽出した生体情報を、通信部301を介して通信端末10aに送信する(ステップS308)。
通信端末10aの通信部101aは、クラウドサーバ30aから送信された生体情報を受信する。通信部101aは、受信した生体情報を取得部102を介して生体情報記憶部103に記憶させる。表示制御部104は、生体情報記憶部103に記憶されている生体情報を心電図データで表示部105に表示させる。表示部105は、表示制御部104の制御に従って心電図データを表示する(ステップS309)。
【0066】
以上のように構成された心電図成分検出システム100aによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、心電図成分検出システム100aでは、生体情報が全てクラウドサーバ30aに保存される。そして、ユーザからの要求があった場合には、所定の条件を満たす生体情報が通信端末10aに送信される。したがって、通信端末10aが生体情報を全て記憶しておく必要がないため、通信端末10aのメモリの消費量を抑えることができる。さらに、クラウドサーバ30aにユーザ毎の生体情報が保存されているため、医療データとして利用する場合などには病院などに設けられている他の装置からも容易にユーザの生体情報を取得することができる。そのため、ユーザは、生体情報を元に自身の身体状態を容易に診断してもらうことが可能になる。
【0067】
<変形例>
第2実施形態は、第1実施形態と同様に変形されてもよい。
フラグ付与部303は、他の装置(例えば、通信端末10aや他のサーバ)に備えられてもよい。他のサーバは、通信端末10a及びクラウドサーバ30aと通信可能なパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。以下、他の装置が通信端末10aである場合と、他のサーバである場合とそれぞれの場合について説明する。
【0068】
他の装置が通信端末10aである場合、通信端末10aのフラグ付与部303は生体情報センサ20aから受信した生体情報のうち、所定の条件を満たした生体情報にフラグを付与する。通信端末10aは、受信した生体情報をクラウドサーバ30aに送信する。クラウドサーバ30aは、受信した生体情報をユーザ別生体情報記憶部304に記憶する。
他の装置が他のサーバである場合、通信端末10aは生体情報センサ20aから受信した生体情報を他のサーバに送信する。他のサーバには、ユーザ毎に所定の条件に関する情報が予め設定されている。他のサーバは、通信端末10aから受信した生体情報のうち、所定の条件を満たした生体情報にフラグを付与する。他のサーバは、受信した生体情報をクラウドサーバ30aに送信する。クラウドサーバ30aは、受信した生体情報をユーザ別生体情報記憶部304に記憶する。
【0069】
クラウドサーバ30aは、閾値算出部108、検出部109、時間間隔算出部110及びリラックス度算出部111を備えるように構成されてもよい。このように構成される場合、通信端末10aは、ユーザから選択されたR波とT波の情報をクラウドサーバ30aに送信する。クラウドサーバ30aは、通信端末10aから受信したR波とT波の情報からユーザ毎の閾値を算出する。そして、クラウドサーバ30aは、通信端末10aから周期的に送信されるR波に関する情報からR−R間隔を算出し、RR検出条件を満たすか否か判定する。クラウドサーバ30aは、この処理を所定の時間(例えば、心拍の値のカウント数100回分の時間)経過するまで繰り返し実行する。所定の時間が経過すると、クラウドサーバ30aは、所定の時間が経過するまでにカウントされたR波検出回数と、所定の時間が経過するまでにカウントされたRR50検出回数と、予め設定された固定値とに基づいてリラックス度を算出する。
【0070】
所定の条件は、上記の条件に限定される必要はない。例えば、所定の条件として、使用目的に応じた条件があってもよい。この場合、フラグ付与部303は、使用目的に応じてフラグを付与する。使用目的の具体例として、例えば、医療目的、健康管理目的等がある。フラグ付与部303は、予め、使用目的とフラグを生体情報に付与するタイミングの情報とを使用目的毎に記憶する。例えば、生体情報の使用目的が医療目的、健康管理目的の場合には、より詳細な生体情報を必要とする。そのため、医療目的、健康管理目的の場合には、全ての生体情報にフラグが付与されるようにフラグを生体情報に付与するタイミングが設定されてもよい。なお、使用目的に応じてフラグを付与するタイミングは、使用目的毎に異なってもよいし、同じであってもよい。
このように構成される場合、フラグ付与部303は通信制御部302から出力された生体情報に使用目的別にフラグを付与する。例えば、使用目的が医療目的の場合、フラグ付与部303は生体情報全てにフラグを付与する。そして、フラグ付与部303は、生体情報をユーザ別生体情報記憶部304に記憶させる。この処理は、ユーザ毎に行われる。
【0071】
クラウドサーバ30aに記憶されている生体情報は、生体情報の取得元のユーザとは異なる第三者が取得できるように構成されてもよい。ここで、第三者とは、例えば生体情報の取得元のユーザの生体情報に基づいてユーザの健康状態を解析する医者であってもよいし、生体情報の取得元のユーザに対して身近な人物(例えば、家族や親友)であってもよい。
この場合、以下のような処理が行なわれる。まず、前提条件として、クラウドサーバ30aには、第三者に関する情報(例えば、ユーザID、パスワードなど)が登録されている。第三者は、自身が所持する通信端末を操作して生体情報の使用目的(例えば、医療目的など)の指定、ユーザID及びパスワードを入力して、クラウドサーバ30aに他のユーザ(生体情報の取得元のユーザ)の生体情報を要求する。通信部101aは、第三者に入力された使用目的、ユーザID及びパスワードの情報を含む生体情報取得要求を生成し、生成した生体情報取得要求をクラウドサーバ30aに送信する。
【0072】
クラウドサーバ30aの通信制御部302は、受信された生体情報取得要求に含まれるユーザID及びパスワードと、自装置が記憶しているユーザID及びパスワードとが一致するか否か判定する。ユーザID及びパスワードが一致しない場合、通信制御部302は生体情報を送信すべき対象ではないと判定する。この場合、通信制御部302は、エラー通知を生成し、通信部301を介して生体情報取得要求の送信元に送信する。
一方、ユーザID及びパスワードが一致する場合、通信制御部302は生体情報を送信すべき対象であると判定する。この場合、抽出部305は、ユーザ別生体情報記憶部304を参照し、第三者の通信端末から送信された要求に含まれる使用目的のフラグが付与されている生体情報を抽出する。その後、通信部301は、抽出された生体情報を通信端末に送信する。なお、クラウドサーバ30aの通信制御部302は、パスワードのみで生体情報を送信すべき対象であるか否かを判定してもよい。
【0073】
生体情報は、生体情報の取得元のユーザの個人情報を秘匿もしくは削除した上で、誰でも利用可能なデータとして用いられてもよい。なお、性別や年齢などの情報は、生体情報に対応付けられていてもよい。このように構成される場合、クラウドサーバ30aは、ユーザ別生体情報記憶部とは別の生体情報記憶部を備えるように構成される。生体情報記憶部には、ユーザ別生体情報記憶部に記憶されている生体情報(個人情報を除く)もしくは通信部301を介して受信された生体情報(個人情報を除く)が記憶される。そして、クラウドサーバ30aは、自装置にアクセスしてきたユーザの要求に応じて生体情報記憶部に記憶されている生体情報を提供する。
このように構成されることによって、生体情報を要求したユーザは、自身が求める性別や年齢のユーザの生体情報を取得することができる。これにより、生体情報を要求したユーザは、自身の生体情報と他のユーザの生体情報とを比較することができ、自分で自身の状態を容易に確認することが可能になる。また、多数のデータを取得することで、性別や年齢での傾向を知るための統計データ等として生体情報を用いることも可能になる。
【0074】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0075】
10、10a…通信端末, 20、20a…生体情報センサ, 30a…クラウドサーバ, 40a…ネットワーク, 101、101a…通信部, 102…取得部, 103…生体情報記憶部, 104…表示制御部, 105…表示部, 106、106a…入力部, 107…切替制御部, 108…閾値算出部, 109…検出部, 110…時間間隔算出部, 111…リラックス度算出部, 301…通信部, 302…通信制御部, 303…フラグ付与部, 304…ユーザ別生体情報記憶部, 305…抽出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10