(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のエンジンによって同時に駆動される主油圧ポンプ及び副油圧ポンプを装備する車両搭載型クレーンに用いられ、前記クレーンに供給する圧油の供給量を制御する圧油供給量制御装置であって、
前記エンジンの回転数を調整するアクセルシリンダと、前記副油圧ポンプから吐出される圧油の供給量を調整する流量制御弁と、前記アクセルシリンダおよび前記流量制御弁をそれぞれ個別に制御して、前記クレーンへの操作入力に基づくエンジンの回転数と、前記主油圧ポンプから吐出される圧油に前記副油圧ポンプの圧油を合流させて前記クレーンを駆動するためのコントロールバルブへの前記操作入力に基づく圧油量とを制御するコントローラと、前記クレーンが吊り下げている吊荷の荷重を検出する荷重検出器とを備え、
前記コントローラは、前記荷重検出器から取得した吊荷の荷重情報に基づいて荷重の大小を判断し、
荷重が大きいと判断したときは、荷重が小さいと判断するときよりも前記操作入力に応じたクレーン操作量が少ない段階から前記エンジンの回転数の上昇を開始させ、前記エンジンの回転数の上昇開始よりも後に、前記主油圧ポンプから吐出される圧油に前記副油圧ポンプからの圧油の合流を開始させ、
荷重が小さいと判断したときは、荷重が大きいと判断するときよりも前記操作入力に応じたクレーン操作量が少ない段階から前記主油圧ポンプから吐出される圧油に前記副油圧ポンプからの圧油の合流を開始させ、前記副油圧ポンプからの圧油の合流開始以後に、前記エンジンの回転数を上昇させることを特徴とする圧油供給量制御装置。
前記コントローラは、荷重が大きいと判断したときは予め設定されている第一制御マップに基づいて制御を行い、荷重が小さいと判断したときは予め設定されている第二制御マップに基づいて制御を行うとともに、相互の制御の切り換わり目において、制御マップを切換える際の過渡状態においては、スローアップ制御またはスローダウン制御を実行し、過渡応答時の供給流量が変化しないようにマッピングを徐々に変化させて、前記アクセルシリンダのロッドストロークと前記流量制御弁のスプールストロークに応じた開口量のバランスを一定に保つことでクレーン動作速度が変わらないように制御することを特徴とする請求項1に記載の圧油供給量制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この車両搭載型クレーンCは、車両10の荷台12と運転室13との間のシャーシフレーム14上に、ベース15が固定されている。ベース15上には、コラム16が旋回自在に設けられ、このコラム16の上端部に、多段伸縮ブームであるブーム17が起伏自在に支持されている。コラム16には、ウインチ(図示略)が設けられており、このウインチからワイヤロープ18をブーム17の先端部に導いて、ブーム17の先端部の滑車(図示略)を介してフック11に掛け回すことにより、フック11がブーム17の先端部から吊下されている。ブーム17の先端には、ロードセルが荷重検出器19として装備されている。荷重検出器19は、フック11に荷重が加わると、ロードセルのひずみ量が変化するように装着されている(例えば、特開2014−73909号公報に開示されるクレーン用荷重検出装置を参照)。
【0015】
図2に示すように、この車両搭載型クレーンCは、車両10のエンジン6によって同時に駆動される定量型油圧ポンプである、主油圧ポンプ7および副油圧ポンプ8を備えている。つまり、これら主油圧ポンプ7および副油圧ポンプ8は、エンジン6を動力源とし、エンジン6に連結されたPTO(パワーテイクオフ)6aを介して作動するようになっている。主油圧ポンプ7は、主油圧ポンプ7から吐出される圧油が主管路27に供給され、この主管路27はコントロールバルブ3に接続されている。コントロールバルブ3の戻り管路29はタンク9に接続されている。副油圧ポンプ8の吐出側の油路とタンク9側の油路との間には、副油圧ポンプ8が過負荷状態になると、吐出側の圧油をタンク9側の油路へリリーフさせるリリーフ弁26が配設されている。
【0016】
この車両搭載型クレーンCの圧油供給量制御装置は、同図に示すように、作業者が所望の操作を入力するための操作入力装置1を有する。操作入力装置1は、作業者の操作に応じた操作信号を、信号線50を介してコントローラ2に出力可能になっている。
また、この圧油供給量制御装置は流量制御弁5を有し、上記副油圧ポンプ8の吐出側が流量制御弁5を介して主回路27に接続され、主油圧ポンプ7から吐出される圧油に、流量制御弁5で調整された副油圧ポンプ8の圧油を合流させて、コントロールバルブ3に供給するように構成されている。流量制御弁5は、信号線52を介してコントローラ2に接続されている。流量制御弁5は、コントローラ2からの制御信号に基づいて、制御量に応じてスプールストロークが可変し、副油圧ポンプ8から吐出されて合流する圧油の流量を所定の流量に調整可能になっている。さらに、上記荷重検出器19は、信号線54を介してコントローラ2に接続されている。コントローラ2は、荷重検出器19から、ロードセルのひずみ量に応じた信号が吊荷の荷重情報として取得されるようになっている(なお、コントローラ2については後に詳述する)。
【0017】
ここで、上記コントロールバルブ3は、クレーンを駆動するための各油圧アクチュエータ30〜33に、その駆動に必要な圧油を給排する切換弁40〜43が積層されたスタック型のコントロールバルブである。各切換弁40〜43は、信号線53を介してコントローラ2に接続されており、上記操作信号に応じたコントローラ2からの制御信号に基づいて油路の切換動作が実行される。なお、各切換弁40〜43に機械的な操作レバーを付設してその操作に応じて各切換弁40〜43を直接作動させてもよい。
【0018】
また、これら切換弁40〜43には、各切換弁40〜43の操作内容を検出するための操作検出器がそれぞれに設けられている。そして、これらの操作検出器は、上記信号線53を介してコントローラ2に接続されており、各操作検出器で検出した各切換弁40〜43の操作の内容の信号は、コントローラ2に入力されるようになっている。各切換弁40〜43の操作検出器には、例えば、マイクロスイッチや差動トランスなどが用いられる。
【0019】
旋回用油圧モータ31は、その駆動に必要な圧油を給排可能な旋回用切換弁41に接続されており、クレーンCのコラム16は、旋回用油圧モータ31で左右に旋回可能になっている。また、ブーム伸縮用油圧シリンダ30は、その駆動に必要な圧油を給排可能なブーム伸縮用切換弁40に接続され、さらに、ブーム起伏用油圧シリンダ32は、その駆動に必要な圧油を給排可能なブーム起伏用切換弁42に接続されている。これにより、クレーンCのブーム17は、ブーム伸縮用油圧シリンダ30の伸縮によって伸縮され、ブーム起伏用油圧シリンダ32によって起伏されるようになっている。また、ウインチ用油圧モータ33は、その駆動に必要な圧油を給排可能なウインチ用切換弁43に接続されており、クレーンCのフック11は、このウインチ用油圧モータ33によってウインチ操作、つまり、巻上巻下作動がなされるようになっている。
【0020】
さらに、この圧油供給量制御装置は、アクセルシリンダ4を備え、エンジン6のガバナ20とアクセルシリンダ4とは、リンク21で互いに連結されている。そして、このアクセルシリンダ4についても、信号線51を介してコントローラ2に接続されており、アクセルシリンダ4は、コントローラ2からの制御信号に基づいて、制御量に応じてアクセルシリンダ4のロッドストロークが可変し、ガバナ20によってエンジン6への燃料噴射量を調整することでエンジン回転数を所望の回転数に制御可能になっている。つまり、この圧油供給量制御装置は、アクセルシリンダ4の制御によるエンジン6の回転数、および流量制御弁5の制御による副油圧ポンプ8の圧油の合流量を、それぞれ個別に制御可能に構成されている。
【0021】
ここで、上記コントローラ2は、吊荷の荷重情報に基づいて荷重の大小を判断し、荷重の大小それぞれに応じて、主・副二つの油圧ポンプ7,8の合流によるエンジン6、PTO6a等の駆動部へのトルク負荷を軽減する圧油供給量制御処理を実行するようになっている。
詳しくは、コントローラ2は、(以下、いずれも図示しない)所定の制御プログラムに基づいて、圧油の供給量を制御するための圧油供給量制御処理に係る演算およびこの制御装置のシステム全体を制御するCPUと、所定領域にあらかじめCPUの制御プログラム等を格納しているROMと、ROM等から読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAMと、上述した操作入力装置1、コントロールバルブ3、アクセルシリンダ4、流量制御弁5および荷重検出器19等を含めた外部装置に対してデータの入出力を媒介するI/F(インターフェイス)を備えている。
【0022】
コントローラ2のI/Fは、上記各外部装置に対して、データを転送するためのバス等の信号線(
図2に破線で示す符号50〜54)によって相互に操作信号ないし制御信号等のデータを授受可能に接続されており、これにより、上記操作入力装置1から入力された操作信号に応じた制御信号を、コントロールバルブ3、アクセルシリンダ4、および流量制御弁5にそれぞれに出力可能になっている。
【0023】
以下、コントローラ2で実行される圧油供給量制御処理について説明する。なお、
図3は、上記コントローラ2で実行される、圧油供給量制御処理を実行するためのプログラムのフローチャートである。
本実施形態の圧油供給量制御装置では、コントローラ2は、操作入力装置1からのクレーン操作量、つまり操作信号入力の割合によって、アクセルシリンダ4のロッドストロークを制御するとともに流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量を制御し、主油圧ポンプ7の圧油に副油圧ポンプ8からの圧油を合流させる圧油供給量の制御が実行されるが、これと同時に、
図3に示す圧油供給量制御処理が実行される。圧油供給量制御処理が実行されると、
図3(a)に示すように、まず、ステップS1に移行する。
【0024】
ステップS1では、コントローラ2は、荷重検出器19からの吊荷の荷重情報を取得し、取得した吊荷の荷重情報に基づいて荷重の大小を判断する。荷重の大小を判断するに際しては、種々のパラメータに基づいたり、所定の閾値に基づいたりした判断が可能である。
例えば、当該エンジン6にアイドルアップしなければエンストが生じるような負荷に応答する荷重情報を基準値(閾値)とし、その基準値よりも取得した吊荷の荷重情報が小さいときは荷重が小と判定し、その基準値よりも取得した吊荷の荷重情報が大きいときは荷重が大と判定することができる。この荷重情報の基準値は、各車両メーカー毎に異なるエンジンのトルク出力に合わせて自在に調整が可能であり、任意に基準値を決めることが可能である。但し本実施形態では、荷重の大小の判断手段として、より簡単に、吊荷が有るとき(荷重検出器19からの信号が初期値である零以上のとき)を荷重が大と判定し、吊荷が無いとき(荷重検出器19からの信号が初期値である零のとき)を荷重が小と判定する例で説明する。即ち吊荷が無いときとは、荷重が0kgを指す場合である。
【0025】
つまり、本実施形態では、吊荷が有るときは、荷重が「大」と判定してステップS2に移行し、吊荷が無いときは、荷重が「小」と判定してステップS3に移行する。そして、ステップS2では、第一制御マップによる圧油供給量制御を実行して処理を戻す。また、ステップS3では、第二制御マップによる圧油供給量制御を実行して処理を戻す。
【0026】
ここで、上記複数の制御マップ(制御関数)について説明する。
コントローラ2のROMには、複数の制御マップがテーブルデータとして格納されている。コントローラ2は、クレーンが吊荷を吊り上げている荷重の大きさに応じ、複数の制御マップから一つの制御マップを選択可能に設定されており、選択された一つの制御マップが、コントローラ2で実行される所定の圧油供給量制御処理において参照されるようになっている。つまり、選択された一つの制御マップに対応する圧油供給量制御処理よって、操作入力装置1の操作信号に対して、アクセルシリンダ4および流量制御弁5に出力されるコントローラ2からの制御信号が個別に設定されるようになっている。なお、処理速度を向上させる上では、複数の制御マップをRAMに読み込んでおき、荷重の大きさに応じてRAMの制御マップから一つの制御マップを選択するようにしてもよい。
【0027】
本実施形態の圧油供給量制御装置では、コントローラ2のROM所定領域に、上記複数の制御マップとして、第一制御マップ(第一の制御関数)および第二制御マップ(第二の制御関数)に規定された二つの制御関数が、圧油供給量制御処理の演算過程で必要な演算結果を導出可能な形式で適宜参照可能に格納されている。これら複数の制御関数は、上述のように、クレーンが吊荷を吊り上げている荷重の大きさに応じて選択される。
各制御関数は、主油圧ポンプ7と副油圧ポンプ8との合計吐出流量が、クレーンへの操作入力に応じた操作信号に対して複数の設定段階において比例的変化するように設定されているが、第一の制御関数と第二の制御関数とでは、合計吐出流量自体は同じにしつつ、アクセルシリンダ4と流量制御弁5の制御バランスを異ならせている。
【0028】
図4は、第一の制御関数(圧油供給量制御処理に用いられる第一制御マップ)を説明する図である。同図において、横軸がクレーン操作量(クレーンへの操作入力の割合の大きさに応じた操作信号)、縦軸がアクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに対する制御量であり、実線で示すグラフAが、アクセルシリンダ4の制御量を示し、破線で示すグラフBが、流量制御弁5の制御量を示している(後述する第二の制御関数(
図5)において同じ)。
コントローラ2は、荷重検出器19から取得した吊荷の荷重情報に基づいて荷重の有無を判断し、荷重が有る(荷重が大きい)と判断したときは、この第一の制御関数を参照する。
【0029】
同図に示すように、第一の制御関数の場合、吊荷が無く、荷重が小さいと判断するとき(
図5に示す第二の制御関数を参照)に比べて、アクセルシリンダ4のロッドストローク量を、クレーン操作量が少ない段階から大きな変化率にて立ち上げて、エンジン回転数を上げるタイミングを早くしており、その後に、流量制御弁5で調整された圧油が合流するように、副油圧ポンプ8からの圧油を合流させるようになっている。
【0030】
つまり、コントローラ2は、荷重が有り(荷重が小さい)と判断したときは、エンジントルク及び圧油流量を確保するために、第一の制御関数に基づき、アクセルシリンダ4の制御量を早めの段階から立ち上げていく。そして、例えばエンストのおそれがない所定の制御量までアクセルシリンダ4のロッドストロークを上げた時点(エンジントルクを確保したところ)から流量制御弁5で調整された副油圧ポンプ8の圧油の合流を開始する。その後は、副油圧ポンプ8側の合流量も増加させて、合流後は、アクセルシリンダ4のロッドストロークを徐々に大きくしてエンジン回転数を上げていき、クレーン操作量に応じた圧油流量に増加させていく、という一連の制御を実行する。
【0031】
図5は、第二の制御関数(圧油供給量制御処理に用いられる第二の制御マップ)を説明する図である。コントローラ2は、荷重検出器19から取得した吊荷の荷重情報に基づいて荷重の大小を判断し、吊荷が無い(荷重が小)と判断したときは、第二の制御関数を参照する。
同図に示すように、第二の制御関数の場合、荷重が大きい(荷を吊っているとき)と判断するときよりもクレーン操作量が少ない初期段階から流量制御弁5を作動させて、流量制御弁5で調整された副油圧ポンプ8の圧油の合流を早い段階から開始させており、それ以後にエンジンの回転数を徐々に上げる。その後、クレーン操作量が所定よりも大きくなったとき以後は、アクセルシリンダ4のロッドストロークを、より大きな変化率にしてエンジン回転数を上げていき、クレーン操作量に応じた圧油流量に増加させていく。
【0032】
つまり、コントローラ2は、吊荷が無い無荷重と判断した(荷重が無検知)ときは、エンジンにかかる負荷が軽いため、エンジントルクを必要としないので、アクセルシリンダ4のロッドストロークを徐々に上げてはいくものの、それよりも流量制御弁5の作動タイミングを早くし、つまり、荷重が大きいと判断するときよりも操作入力に応じたクレーン操作量が少ない段階から開始し、副油圧ポンプ8の圧油の合流を主として圧油の流量を増加させていく。そして、合流量を十分増加させた後に、今度はアクセルシリンダ4のロッドストロークを主として増加させることによりエンジン回転数を上げて圧油流量を増加させていく、という一連の制御を実行する。
【0033】
このように、本実施形態のコントローラ2は、流量制御弁5とアクセルシリンダ4の制御量を、荷重検出器19から取得した荷重検知の有無で異ならせている。但し、両制御関数とも、クレーン操作量に対応してコントロールバルブへ流入させる圧油流量は同量とされており、クレーン操作量に対する流量変化は、荷重検知の有無で変化しないようになっている。
即ち、選択された制御関数に関わらず、クレーンの作動速度に変化が生じないよう、予め試験等により、アクセルシリンダ4の制御量に応じたエンジン回転数の特性と圧油の合流量とを調整して各制御関数が設定されている。なお、
図4、5に示した各制御関数のグラフは、相互の制御の違いを分かりやすくするようにデフォルメしたイメージを示している。例えば、荷重が無い時には、第二の制御関数での圧油の合流タイミングは、同グラフのようにクレーン操作量の小さい早期の段階から開始するが、第二の制御関数でのアクセルシリンダ4の制御量は図示よりも大きく設定されることが好ましい。
【0034】
ところで、制御マップが切り換わったとき、マッピング(特性関数)を急激に切り換えると、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量のバランスが崩れて供給流量が急激に多くなったり少なくなったりするおそれがある。供給流量が急激に変化すると、クレーン動作速度が急激に変化することになる。
そこで、本実施形態では、マップ切換え時の供給流量の急変を回避するために、
図3(b)および(c)に示すように、制御マップが他のマップに切り換わった場合(又は荷重の変動があった場合)は、マップ相互の目標値(指令値:
図6(b)参照)自体は急激に変わるものの、スローアップ制御またはスローダウン制御により、アクセルシリンダ4のロッドストローク、流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量ともに、それぞれ一定時間一定量ずつ徐々に変化させて目標値に到達させる。
【0035】
すなわち、本実施形態では、ステップS2の圧油供給制御に移行したら、
図3(b)に示す第1の圧油供給制御が実行され、ステップS21において、他のマップからの移行か否かを判定する。そして、他のマップからの移行であれば(Yes)、ステップS22にてスローアップ制御を実行し、そうでなければ(No)ステップS23にて、当該マップでの圧油供給制御処理、つまり、ステップS2に移行時は、上述した、第一制御マップによる圧油供給量制御を実行するようになっている。
【0036】
また、ステップS3の圧油供給制御に移行したら、
図3(c)に示す第2の圧油供給制御が実行され、ステップS31において、他のマップからの移行か否かを判定する。そして、他のマップからの移行であれば(Yes)、ステップS32にてスローダウン制御を実行し、そうでなければ(No)ステップS33にて、当該マップでの圧油供給制御処理、つまり、ステップS3に移行時は、第二制御マップによる圧油供給量制御を実行するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態の圧油供給量制御装置の動作および作用効果について説明する。
上述したように、この車両搭載型クレーンCは、主・副の2連の油圧ポンプ7、8を装備し、エンジン回転数がアイドリングのとき(トルクが小さいとき)は、主油圧ポンプ7からの圧油のみにてクレーンを駆動し、エンジン回転数が上がるにつれて(トルクが大きくなるにつれて)副油圧ポンプ8の圧油を油圧回路に合流させる。これにより、この車両搭載型クレーンCによれば、エンジン回転数を必要以上に上げることなくクレーン作業を行うに十分な圧油を供給ことができ、省エネの効果が得られる。
【0038】
特に、本実施形態の圧油供給量制御装置では、荷重検出器19にて検出された吊荷の質量に応じた荷重信号をコントローラ2に送り、吊荷による負荷の大小をコントローラ2が判断し、副油圧ポンプ8の圧油の合流およびアクセルシリンダ4の各制御量を、低荷重時と高荷重時とでは異なる制御関数に基づいて制御しているので、一層の省エネルギー効果が得られる。
【0039】
すなわち、コントローラ2は、荷重検出器19から取得した吊荷の荷重情報に基づいて、クレーンが吊荷を吊り上げている荷重の大きさに応じて、エンジン回転数と副ポンプからの圧油の合流のタイミングを変化させ、荷重が小さいときは、荷重が大きいときに比べて、圧油の合流のタイミングを早くするとともにエンジン回転数を遅めに上げ、荷重が大きいときは、荷重が小さいときに比べて、エンジン回転数を早めに上げ、その後に、圧油の合流を開始することにより、一層の省エネおよび低騒音化を可能としている。
【0040】
一方、上述した特許文献1ないし2に記載の技術では、エンジン回転数と副ポンプからの圧油の合流のタイミングの制御を荷重検知の有無に応じて区別しておらず、吊荷を吊っていないときも常に荷重が有る状態と同じ制御を行っている。よって、たとえクレーンが吊荷を吊り上げていない無負荷の状態であっても、負荷時同様に、まず、負荷増加にエンジントルクが負けないようにエンジン回転数を十分に確保してから副油圧ポンプの合流を開始し、合流による負荷増加でトルクが負けないようにエンジン回転数をさらに上げていくようにしている。
【0041】
これに対し、本実施形態の圧油供給量制御装置では、吊荷の荷重情報に基づいて荷重の大小を判断し、荷重の大小それぞれに応じて、クレーン操作量に対応するエンジン回転数の制御量と合流の制御量を設定しているので、荷重が検知されたときに対応する第一制御マップは、エンジン回転数を確保するために、アクセルシリンダ4の制御量を上げた後に、副油圧ポンプ8の圧油の合流を開始するマッピングであるが、荷重未検出時に対応する第二制御マップは、作動圧が低くポンプの負荷も小さいため、アクセルシリンダ4の制御量を上げる前の段階から副油圧ポンプ8の合流を開始させることができる。すなわち、本実施形態の圧油供給量制御装置では、無負荷時には、エンジン回転数を上げなくても、荷重検出時と同等のクレーン作動速度を得ることができる。
【0042】
また、本実施形態の圧油供給量制御装置によれば、無負荷時においては、第二制御マップでは、クレーン操作量が増えるにつれ、エンストを防止するために、アクセルシリンダ4の制御量を徐々に上げてエンジン回転数を上げている。つまり、クレーン操作量が増えるにつれ、必要とするエンジントルクを可及的に小さなエンジン回転数にて確保しつつも、可能な限り副油圧ポンプ8の合流を早くして圧油の流量を増やしている。そのため、必要とする圧油流量を確保しつつもエンジン回転数を可及的に上げずに済むため、その分、省エネと低騒音化する上で好適である。
【0043】
例えば、実際の荷役作業の現場での使用として、
図1において、地上(X地点)にある複数の荷を、トラックの荷台上(Y地点)へ積載する作業を想定する。この積載作業においては、クレーンのフック11を、荷のあるX地点にまで移動させるときは無負荷である。そのため、この際には無負荷時に対応する第二制御マップが使用される。次いで、X地点でフック11に荷を吊った後は、Y地点までは荷重有りに対応する第一制御マップを使用すればよい。特に、上述の車両搭載型クレーンCは、主に荷台12への積載に使用されるため、このように荷役作業工程の半分が無負荷であることが多い。そのため、本実施形態の圧油供給量制御装置によれば、通常のクレーンに比べて省エネと低騒音化の効果がより大きいといえる。
【0044】
ここで、第一制御マップ(荷重大)と第二制御マップ(荷重小)相互の制御の切り換わり目において、本実施形態では、マップを切換える際の過渡状態においては、
図3(b)または
図3(c)に示したように、スローアップ制御またはスローダウン制御を実行し、過渡応答時の供給流量が変化しないようにマッピングを徐々に変化させて、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量のバランスを一定に保つことでクレーン動作速度が変わらないように制御する。
【0045】
つまり、第二制御マップ(荷重小)から第一制御マップ(荷重大)に切り換わったときであれば、流量制御弁5のスプールによる流量制御はリニアに反応するものの、アクセルシリンダ4のロッドストロークに対するエンジン回転数は瞬時に応答できずにタイムラグが生じる。そのため、コントローラ2からの信号をアクセルシリンダ4と流量制御弁5に同時に出力し、アクセルシリンダ4のロッドストローク及び流量制御弁5のスプールを同時に、かつ急激に作動させても、エンジン回転数はタイムラグをもって上昇し、これに応じて油圧ポンプの回転も遅れて上昇するので、供給流量が上がるまでには多少なりとも時間がかかる。よって、マップの目標値が急激に変わった場合に、流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量とアクセルシリンダ4のロッドストロークを急激に変化させたときは、アクセルシリンダ4のロッドストローク自体は、流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量の変化に対して応答するものの、供給流量は、流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量の変化に応じた要求流量に対して追い付かず、要求流量と供給流量のバランスがくずれてしまう。
【0046】
例えば、
図6に示すように、クレーン操作量が50%でクレーン操作を行っていた場合、荷重小の時、第二制御マップにおいて、アクセルシリンダ4のロッドストローク、および流量制御弁5のスプールストロークの目標値(指令値)がそれぞれ2mmであるとする。この状態から荷重大になった時に、第一制御マップにおいては、ロッドストロークおよびスプールストロークの目標値(指令値)がそれぞれ7mmに変ったとする。このとき、スローアップ制御が実行され、アクセルシリンダ4のロッドストロークに対する供給流量の応答性を考慮した経過時間に対する目標値が、
図6(b)に示すグラフのように別途設ける関数に設定され、このスローアップ制御用関数に基づいて、スプールストロークを一定時間に一定量ずつ変化させて目標値に到達させる。
【0047】
なお、マップ切換え時の応答遅れについて、アクセルシリンダ4のロッドストローク制御量に応じた、流量制御弁のスプールストローク制御量から得られる供給流量が、フィードバック可能であれば、荷重大と荷重小のマップのみに基づいて、アクセルシリンダ4によるエンジン回転数制御量と合流による供給圧油の制御量のバランスを一定に保てるように監視されていれば、アクセルシリンダ4のロッドストロークと供給流量をフィードバックして制御命令を理論値に近づけることで対処してもよい。
【0048】
本実施形態では、第二制御マップ(荷重小)から第一制御マップ(荷重大)に切り換わったときは、
図7に示すように、要求流量に供給流量が応答できるようにするために、スローアップ制御により、流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量とアクセルシリンダ4のロッドストロークを徐々に変化させ、荷重小の状態から荷重大の状態にマップが切り替わっても供給流量が一定になるように補償している。
【0049】
これにより、例えば、吊荷が地面から離れる瞬間、ワイヤロープの張力が吊荷の質量と等しくなったときにマップが切り替わっても、荷ぶれ等の問題は生じないようになっている。なお、
図7において、実線で示すグラフA1、B1が、第一制御マップでのアクセルシリンダ4の制御量と流量制御弁5の制御量をそれぞれ示し、二点鎖線で示すグラフA2、B2が、第二制御マップでのアクセルシリンダ4の制御量と流量制御弁5の制御量をそれぞれ示している。
【0050】
一方、第一制御マップ(荷重大)から、第二制御マップ(荷重小)に切り換わった場合も同様に、アクセルシリンダ4のロッドストロークに対する供給流量の応答性を考慮し、
図8に示すように、スローダウン制御により、流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量とアクセルシリンダ4のロッドストロークを徐々に変化させ、これにより、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量のバランスを一定に保ち、クレーン動作速度が変わらないように供給流量を一定に補償している。
【0051】
なお、
図8において、二点鎖線で示すグラフA1、B1が、第一制御マップでのアクセルシリンダ4の制御量と流量制御弁5の制御量をそれぞれ示し、実線で示すグラフA2、B2が、第二制御マップでのアクセルシリンダ4の制御量と流量制御弁5の制御量をそれぞれ示している。
具体的な動作としては、例えば上記の積載作業において、オペレータは、吊荷を地面に置いた状態で、フックに吊荷を掛けた状態からフック巻き上げを行う。このとき、荷重小の状態なので、第二制御マップ(荷重小)が適用され、第二制御マップに基づいて、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量が制御される。
【0052】
次いで、オペレータがフック巻き上げ操作を続け、吊荷が地面から離れると荷重大の状態になる。これにより、第一制御マップ(荷重大)が適用されるが、第二制御マップ(荷重小)から第一制御マップ(荷重大)に切り換わったことから、スローアップ制御が行なわれ、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量それぞれ荷重小のマップから徐々に荷重大のマップに切換わる。
次いで、オペレータは、ブーム起伏、ブーム伸縮、旋回、フックの巻上下で吊荷を目的の位置まで移動させる。この間は第一制御マップ(荷重大)が適用される。オペレータは、吊荷を目的の場所の上方まで移動させた後に、フック巻下げ作業を行う。フック巻下げ作業により、吊荷が地面に接地するまでは、第一制御マップ(荷重大)が適用される。
【0053】
次いで、オペレータは、フック巻き下げ操作を続け、吊荷が接地すると荷重が小の状態になるため、第二制御マップ(荷重小)が適用されるが、第一制御マップ(荷重大)から第二制御マップ(荷重小)に切り換わったことから、スローダウン制御が行なわれ、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量それぞれ荷重大のマップから徐々に荷重小のマップに切換わる。なお、荷降ろし時の無負荷側へのマップ切換えにおいては、スローダウン制御を行なわずにマップを切り変えることも可能であるが、無負荷になっても動作速度に変化がない方が望ましいため、本実施形態では、スローダウン制御により徐々にマップ切換えを行っている。
【0054】
なお、本発明に係る車両搭載型クレーンの圧油供給量制御装置およびこれを備える車両搭載型クレーンは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、上記実施形態では、コントローラ2で実行される圧油供給量制御処理において、選択可能な異なる複数の制御関数が二種類の例で説明したが、これに限定されず、例えば3種類以上から選択可能な構成としてもよい。
【0055】
また、例えば上記実施形態では、コントローラ2は、自身が実行する圧油供給量制御処理において荷重の大小を判断する例で説明したが、これに限らず、例えば、荷重検出器19がON/OFF式のリミットスイッチであり、ワイヤロープ張力を検出可能である場合、負荷の有り無しによるON/OFFに応じてコントローラ2が荷重の大小を判断して複数の制御関数を切換え、その切換えによって設定された制御関数により、アクセルシリンダ4の作動開始時と流量制御弁の作動開始時のタイミングを制御するように構成してもよい。
【0056】
また、例えば、第一制御マップ(荷重大)と第二制御マップ(荷重小)相互の切り換わり目の制御方法についても、上記実施形態のスローアップ制御またはスローダウン制御の例に限定されない。例えば他の制御例として、オペレータによるクレーン操作が継続中は、荷重の大小の状態が変ったことのみに基づいては、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量のマッピングを切り換えずに、仮に荷重小の状態から荷重大の状態に切り換わった場合(又は荷重の変動があった場合)は、クレーン操作が一旦止められるまでは荷重小の第二制御マップを適用するように制御してもよい。そして、オペレータが一旦操作を止めて再度クレーン操作が入力されたとき(例えば地切り等で荷ぶれを押さえたあと、再操作時に)に第一制御マップ(荷重大)を適用するようにしてもよい。
【0057】
また、荷重大の状態から荷重小の状態に切り換わった場合であっても、オペレータによるクレーン操作が止められるまでは荷重大の第一制御マップを適用する。その後、一度操作をやめて再度操作したときに荷重小の第二制御マップを適用する。
その理由は、上記実施形態の制御と同様に、急激にアクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量のマッピング(特性関数)を切り換えると、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量のバランスが崩れて供給流量が急激に多くなったり、少なくなったりするおそれがあり、供給流量が急変するとクレーン動作速度が急激に変化することになるからである。この場合は、マップ移行時のスローダウン制御を設ける必要はなく、その分ローコストになる。
【0058】
[他の制御の場合の動作例]
まず、オペレータは、吊荷を地面に置いた状態で、フックに吊荷を掛けた状態からフック巻き上げを行う。このとき、荷重小の状態なので、第二制御マップ(荷重小)が適用され、第二制御マップに基づいて、アクセルシリンダ4のロッドストロークと流量制御弁5のスプールストロークに応じた開口量が制御される。
次いで、オペレータがフック巻き上げ操作を続け、吊荷が地面から離れると荷重大の状態になる。しかし、フック巻き上げ操作を続けると吊荷が地面から離れる(荷重が大の状態)が、この時点ではオペレータのクレーン操作が止められていないので、マッピングは切り換わらない。
【0059】
次いで、オペレータが、フック巻き上げ操作を一旦止めて、再度、巻き上げ操作を行うと、第二制御マップ(荷重小)から第一制御マップ(荷重大)に切り換わり、第一制御マップ(荷重大)に基づいてフック巻き上げ動作が再開される。オペレータは、ブーム起伏、ブーム伸縮、旋回で吊荷を目的の位置まで移動させる。この間は荷重検出器から取得した吊荷の荷重情報により、第一制御マップ(荷重大)が適用される。オペレータは、吊荷を目的の場所の上方まで移動させた後に、フック巻下げ作業を行う。フック巻下げ作業により、吊荷が地面に接地するまでは、第一制御マップ(荷重大)が適用される。
【0060】
次いで、オペレータは、フック巻き下げ操作を続け、吊荷が接地すると荷重が小の状態になる。しかし、この時点では、オペレータによりクレーン操作が止められていないので、荷重小のマッピングには切り換わらない。その後、オペレータが、フック巻き下げ操作を一旦止めて、再度、巻き下げ操作を行うと、第一制御マップ(荷重大)から第二制御マップ(荷重小)に切り換わり、第二制御マップ(荷重小)に基づいてフック巻き下げ動作が再開される。
このように、上記他の制御を採用した場合であっても、吊荷の荷重情報に基づいて荷重の大小を判断し、荷重の大小それぞれに応じて、クレーン操作量に対応するエンジン回転数の制御量と合流の制御量を設定することができる。そのため、一層の省エネルギー効果が得られる。