特許第6389103号(P6389103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389103
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20180903BHJP
   H02M 7/797 20060101ALI20180903BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
   H02M7/797
   H02J7/00 P
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-224083(P2014-224083)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-92945(P2016-92945A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】高橋 芳光
(72)【発明者】
【氏名】脇本 亨
(72)【発明者】
【氏名】野村 由利夫
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−171362(JP,A)
【文献】 特開2004−320872(JP,A)
【文献】 特開2002−325378(JP,A)
【文献】 特開2005−033984(JP,A)
【文献】 特開2009−274677(JP,A)
【文献】 特開2010−238530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12、
7/00−13/00、
15/00−15/42
H02J7/00−7/12、
7/34−7/36
H02M7/42−7/98
H02P21/00−25/03、
25/04、
25/10−27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線(11、12、13)を有するモータジェネレータ(15)の電力を変換する電力変換装置(1)であって、
前記巻線の一端(111、121、131)および第1電圧源(41、45、46)と接続される第1インバータ(20)と、
前記巻線の他端(112、122、132)および第2電圧源(42、47)と接続される第2インバータ(30)と、
前記モータジェネレータの発電量に応じて前記第1インバータおよび前記第2インバータを制御し、前記第1電圧源および前記第2電圧源の充電量を可変とする制御部(60)と、
を備え
前記モータジェネレータは、駆動源(16)により駆動され、
前記制御部は、前記モータジェネレータの回生制動により生じる回生電力を前記第1電圧源に優先的に充電させ、前記駆動源により前記モータジェネレータが駆動されて生じる発電電力を前記第2電圧源に優先的に充電させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記第1電圧源は、前記第2電圧源より内部抵抗が小さいことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1電圧源は、前記第2電圧源より高出力であり、
前記第2電圧源は、前記第1電圧源より高容量であることを特徴とする請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1電圧源は、キャパシタであることを特徴とする請求項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1電圧源および前記第2電圧源の少なくとも一方には、負荷(50)が接続されることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのインバータによりモータの電力を変換するインバータ駆動システムが知られている。例えば特許文献1では、高電圧時において、第1のインバータシステムと第2のインバータシステムのパルス幅変調信号(以下、パルス幅変調を「PWM」という。)の基本波成分の位相を180[°]ずらすことで2つの電源が電気的に直列接続され、2つの電源電圧の和によりモータを駆動する。また、特許文献1では、低電圧時において、第1のインバータシステムまたは第2のインバータシステムの一方の上アームまたは下アームのいずれかを3相同時オンし、他方をPWM駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−238686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、回転機から生じた電力の回生制御については、何ら言及されていない。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、1つの回転電機に2つのインバータを設ける構成において、モータジェネレータにより生じる電力を電圧源に適切に充電可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、巻線を有するモータジェネレータの電力を変換する電力変換装置であって、第1インバータと、第2インバータと、制御部と、を備える。
第1インバータは、巻線の一端と第1電圧源とに接続される。
第2インバータは、巻線の他端と第2電圧源とに接続される。
制御部は、モータジェネレータの発電量に応じて第1インバータおよび第2インバータを制御し、第1電圧源および第2電圧源の充電量を可変とする。
モータジェネレータは、駆動源により駆動される。制御部は、モータジェネレータの回生制動により生じる回生電力を第1電圧源に優先的に充電させ、駆動源によりモータジェネレータが駆動されて生じる発電電力を第2電圧源に優先的に充電させる。
【0006】
これにより、モータジェネレータにより生じる電力を第1電圧源および第2電圧源に適切に充電させることができる。また、例えばモータジェネレータを電動車両の主機モータに適用する場合、第1電圧源および第2電圧源の充電状態を適切に制御することで、電圧源の容量に対する航続距離(いわゆる「電費」)の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態の電力変換装置の構成を示す概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態による片側駆動動作を説明する説明図である。
図3】本発明の第1実施形態による反転駆動動作を説明する説明図である。
図4】本発明の第1実施形態による電流値および電圧値を説明する説明図である。
図5】本発明の第1実施形態による両側充電動作を説明する説明図である。
図6】本発明の第1実施形態による両側充電動作を説明する説明図である。
図7】本発明の第1実施形態による両側充電動作を説明する説明図である。
図8】本発明の第1実施形態による片側充電動作と両側充電動作との切り替えを説明する説明図である。
図9】本発明の第1実施形態による充電制御処理を説明するフローチャートである。
図10】本発明の第2実施形態による電力変換装置を示す概略構成図である。
図11】本発明の第3実施形態による電力変換装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明による電力変換装置を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による電力変換装置を図1図9に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図1に示すように、本実施形態の電力変換装置1は、モータジェネレータ10の電力を変換するものである。
モータジェネレータ10は、例えば電気自動車やハイブリッド車両等の電動自動車に適用され、図示しない駆動輪を駆動するためのトルクを発生する、いわゆる「主機モータ」である。モータジェネレータ10は、駆動輪を駆動するための電動機としての機能、および、図示しないエンジンや駆動輪から伝わる運動エネルギによって駆動されて発電する発電機としての機能を有する。
【0009】
モータジェネレータ10は、3相交流の回転機であって、U相コイル11、V相コイル12、および、W相コイル13を有する。U相コイル11、V相コイル12およびW相コイル13が「巻線」に対応し、以下適宜、U相コイル11、V相コイル12およびW相コイル13を「コイル11〜13」という。また、U相コイル11に通電される電流をU相電流Iu、V相コイル12に通電される電流をV相電流Iv、W相コイル13に通電される電流をW相電流Iwという。また、モータジェネレータ10の最大回転数をNmaxとする。
モータジェネレータ10のロータ近傍には、ロータの回転角θを検出する回転角センサ14が設けられる。
【0010】
電力変換装置1は、第1インバータ20、第2インバータ30、および、制御部60等を備える。
第1インバータ20は、コイル11〜13への通電を切り替える3相インバータであり、6つのスイッチング素子であるU1上アーム素子21、V1上アーム素子22、W1上アーム素子23、U1下アーム素子24、V1下アーム素子25、および、W1下アーム素子26を有する。以下適宜、U1上アーム素子21、V1上アーム素子22、W1上アーム素子23、U1下アーム素子24、V1下アーム素子25、および、W1下アーム素子26を「(第1)スイッチング素子21〜26」という。
【0011】
U1上アーム素子21はU1下アーム素子24の高電位側に接続され、V1上アーム素子はV1下アーム素子25の高電位側に接続され、W1上アーム素子23は、W1下アーム素子26の高電位側に接続される。以下適宜、U1上アーム素子21、V1上アーム素子22、および、W1上アーム素子23を「(第1)上アーム素子21〜23」、U1下アーム素子24、V1下アーム素子25、および、W1下アーム素子26を「(第1)下アーム素子24〜26」という。
【0012】
第1インバータ20は、コイル11、12、13の一端111、121、131と第1電圧源としての第1バッテリ41との間に接続される。具体的には、U1上アーム素子21とU1下アーム素子24との接続点27がU相コイル11の一端111に接続され、V1上アーム素子22とV1下アーム素子25の接続点28がV相コイル12の一端121に接続され、W1上アーム素子23とW1下アーム素子26との接続点29がW相コイル13の一端131に接続される。また、第1上アーム素子21〜23の高電位側を接続する高電位側配線が第1バッテリ41の正極と接続され、第1下アーム素子24〜26の低電位側を接続する低電位側配線が第1バッテリ41の負極と接続される。
【0013】
第2インバータ30は、コイル11〜13への通電を切り替える3相インバータであり、6つのスイッチング素子であるU2上アーム素子31、V2上アーム素子32、W2上アーム素子33、U2下アーム素子34、V2下アーム素子35、および、W2下アーム素子36を有する。以下適宜、U2上アーム素子31、V2上アーム素子32、W2上アーム素子33、U2下アーム素子34、V2下アーム素子35、および、W2下アーム素子36を「(第2)スイッチング素子31〜36」という。
【0014】
U2上アーム素子31はU2下アーム素子34の高電位側に接続され、V2上アーム素子32はV2下アーム素子35の高電位側に接続され、W2上アーム素子33はW2下アーム素子36の高電位側に接続される。以下適宜、U2上アーム素子31、V2上アーム素子32およびW2上アーム素子を「(第2)上アーム素子31〜33」、U2下アーム素子34、V2下アーム素子35およびW2下アーム素子36を「(第2)下アーム素子34〜36」という。
【0015】
第2インバータ30は、コイル11、12、13の他端112、122、132と第2電圧源としての第2バッテリ42との間に接続される。具体的には、U2上アーム素子31とU2下アーム素子34との接続点37がU相コイル11の他端112に接続され、V2上アーム素子32とV2下アーム素子35との接続点38がV相コイル12の他端122に接続され、W2上アーム素子33とW2下アーム素子36との接続点39がW相コイル13の他端132に接続される。また、第2上アーム素子31〜33の高電位側を接続する高電位側配線が第2バッテリ42の正極と接続され、第2下アーム素子34〜36の低電位側を接続する低電位側配線が第2バッテリ42の負極と接続される。
このように、本実施形態では、第1インバータ20および第2インバータ30がコイル11〜13の両側に接続される。以下適宜、図中において、第1インバータ20を「INV1」、第2インバータ30を「INV2」と記載する。
本実施形態では、スイッチング素子21〜26、31〜36は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)であるが、MOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)やサイリスタ等としてもよい。
【0016】
第1バッテリ41は、リチウムイオン電池等の充放電可能な直流電源であり、第1インバータ20と接続され、第1インバータ20を経由してモータジェネレータ10と電力を授受可能に設けられる。第1バッテリ41は、SOC(State Of Charge)が第1下限値SL1以上、第1上限値SH1以下となるように制御される。
【0017】
第2バッテリ42は、リチウムイオン電池等の充放電可能な直流電源であり、第2インバータ30と接続され、第2インバータ30を経由してモータジェネレータ10と電力を授受可能に設けられる。第2バッテリ42は、SOCが第2下限値SL2以上、第2上限値SH2以下となるように制御される。第1下限値SL1と第2下限値SL2とは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。同様に、第1上限値SH1と第2上限値SH2とは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0018】
本実施形態では、第1バッテリ41の内部抵抗は、第2バッテリ42の内部抵抗より小さい。また、第1バッテリ41は、第2バッテリ42より高出力とする。第2バッテリ42は、第1バッテリ41より高容量とする。また本実施形態では、第1バッテリ41の電圧である第1バッテリ電圧Vb1と、第2バッテリ42の電圧である第2バッテリ電圧Vb2とは等しいものとする。
【0019】
第1コンデンサ43は、第1バッテリ41から第1インバータ20側への電流、または、第1インバータ20から第1バッテリ41側への電流を平滑化する平滑コンデンサである。
第2コンデンサ44は、第2バッテリ42から第2インバータ30側への電流、または、第2インバータ30側から第2バッテリ42側への電流を平滑化する平滑コンデンサである。
【0020】
制御部60は、通常のコンピュータとして構成されており、内部にはCPU、ROM、RAM、I/O、および、これらの構成を接続するバスライン等を備える。制御部60における各処理は、予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。
【0021】
制御部60は、回転角センサ14から回転角θに係る検出値を取得し、当該検出値に基づき、回転数Nを演算する。
制御部60は、第1制御信号生成部61および第2制御信号生成部62を有する。第1制御信号生成部61は、第1スイッチング素子21〜26のオンオフ作動を制御する制御信号を生成する。第2制御信号生成部62は、第2スイッチング素子31〜36のオンオフ作動を制御する制御信号を生成する。
【0022】
モータジェネレータ10を電動機として機能させる場合の第1インバータ20および第2インバータ30の駆動動作を図2および図3に基づいて説明する。なお、図2および図3では、回転角センサ14、および制御部60の記載を省略した。図4についても同様である。
(1−1)片側駆動動作
第1バッテリ41または第2バッテリ42の電力によりモータジェネレータ10を駆動するときの第1インバータ20および第2インバータ30の動作を片側駆動動作とする。片側駆動動作は、1電源駆動動作と捉えることもできる。
第1バッテリ41の電力によりモータジェネレータ10を駆動する第1片側駆動動作では、第2上アーム素子31〜33の全相、または、第2下アーム素子34〜36の全相の一方をオン、他方をオフすることにより、第2インバータ30を中性点化する。また、モータジェネレータ10の駆動要求に応じ、第1インバータ20をPWM制御により制御する。
【0023】
図2(a)に示す例では、第2上アーム素子31〜33の全相がオン、第2下アーム素子34〜36の全相がオフされることにより、第2インバータ30が中性点化される。また、第1インバータ20において、U1上アーム素子21、V1下アーム素子25、および、W1下アーム素子26がオンされると、図2(a)中の矢印Y1で示す経路の電流が流れる。図2では、オンである素子を実線、オフである素子を破線で示す。後述の図3も同様である。
【0024】
第2バッテリ42の電力によりモータジェネレータ10を駆動する第2片側駆動動作では、第1上アーム素子21〜23の全相、または、第1下アーム素子24〜26の全相の一方をオン、他方をオフすることにより、第1インバータ20を中性点化する。また、モータジェネレータ10の駆動要求に応じ、第2インバータ30をPWM制御により制御する。
【0025】
図2(b)に示す例では、第1上アーム素子21〜23の全相がオン、第1下アーム素子24〜26の全相がオフされることにより、第1インバータ20が中性点化される。また、第2インバータ30において、U2上アーム素子31、V2下アーム素子35、および、W2下アーム素子36がオンされると、図2(b)中の矢印Y2で示す経路の電流が流れる。
【0026】
第2スイッチング素子31〜36の熱劣化等に応じ、第2上アーム素子31〜33がオンされる状態と、第2下アーム素子34〜36がオンされる状態とを適宜切り替えてもよい。第1インバータ20を中性点化する場合も同様である。
また、第1バッテリ電圧Vb1と第2バッテリ電圧Vb2とが等しいので、モータジェネレータ10に印加される電圧は、第1片側駆動動作と第2片側駆動動作とで等しい。そのため、スイッチング素子21〜26、31〜36の熱劣化等に応じ、第1片側駆動動作と第2片側駆動動作とを適宜切り替えてもよい。
なお、第1バッテリ電圧Vb1と第2バッテリ電圧Vb2とが異なる場合、電圧が低い方で駆動要求を満たせるときには、高電圧側を中性点化し、低電圧側で駆動する。これにより、スイッチング損失を低減することができる。
【0027】
(1−2)反転駆動動作
第1バッテリ41および第2バッテリ42の電力によりモータジェネレータ10を駆動する場合、第1インバータ20および第2インバータ30を反転駆動動作とする。反転駆動動作は、2電源駆動動作と捉えることもできる。
反転駆動動作では、モータジェネレータ10の駆動要求に応じた第1基本波F1に基づいて第1インバータ20の駆動を制御し、駆動要求に応じた第2基本波F2に基づいて第2インバータ30の駆動を制御する。
【0028】
例えば、制御部60は、第1基本波F1とキャリア波との比較によるPWM制御により第1制御信号を生成し、第2基本波F2とキャリア波との比較によるPWM制御により第2制御信号を生成する。PWM制御には、基本波F1、F2の振幅がキャリア波の振幅より小さい「正弦波PWM制御」、および、基本波F1、F2の振幅がキャリア波より大きい「過変調PWM制御」を含むものとする。
【0029】
反転駆動動作において、第1基本波F1と第2基本波F2とは、位相が反転されている。換言すると、第1基本波F1と第2基本波F2とは、位相が略180[°]ずれている。これにより、第1バッテリ41と第2バッテリ42とが直列接続されている状態とみなすことができ、第1バッテリ電圧Vb1と第2バッテリ電圧Vb2との和に相当する電圧をモータジェネレータ10に印加可能である。
なお、第1基本波F1と第2基本波F2との位相差は、180[°]とするが、第1バッテリ電圧Vb1および第2バッテリ電圧Vb2の和に相当する電圧をモータジェネレータ10に印加可能な程度のずれは許容される。
【0030】
第1基本波F1の振幅と第2基本波F2の振幅とは、等しくてもよいし、異なっていてもよい。第1基本波F1の振幅と第2基本波F2の振幅とが等しい場合、各相にてオンされる素子が第1インバータ20と第2インバータ30とで上下反対となる。
図3に示す例では、U1上アーム素子21、V1下アーム素子25、W1下アーム素子26、V2上アーム素子32、W2上アーム素子33、および、U2下アーム素子34がオンされ、このとき、矢印Y3で示す経路の電流が流れる。
【0031】
また、第1基本波F1と第2基本波F2とは、ともに正弦波である場合のように同様の波形であってもよいし、例えば第1インバータ20または第2インバータ30の一方を正弦波PWM制御し、他方を過変調PWM制御するといった場合のように、異なる波形であってもよい。また、振幅を無限大とみなし、基本波の半周期ごとにオンオフが切り替えられる矩形波制御としてもよい。矩形波制御は、180度通電制御ともいえる。また、矩形波制御に替えて、基本波に基づき、120度通電制御としてもよい。
なお、反転駆動動作にて、振幅や波形が異なる場合、各相にてオンされる素子は、第1インバータ20と第2インバータ30とで、必ずしも上下反対にならない。
【0032】
次に、車両減速時にモータジェネレータ10を回生駆動することによる第1バッテリ41および第2バッテリ42の充電について説明する。
本実施形態では、モータジェネレータ10は、電動車両に適用されている。そのため、第1バッテリ41および第2バッテリ42の容量に対する航続距離(いわゆる「電費」)を向上させるためには、第1バッテリ41および第2バッテリ42の入出力電力を適切に制御することが重要である。
【0033】
モータジェネレータ10が発電機として機能することで生じる電力を第1バッテリ41および第2バッテリ42に充電する際の第1インバータ20および第2インバータ30の動作を説明する。本実施形態では、モータジェネレータ10の回生制動による発電を中心に説明する。この場合、モータジェネレータ10の回生量(以下単に「回生量」という。)Pが「モータジェネレータの発電量」に対応する。「モータジェネレータの発電量」は、回生量Pに替えて、エンジン等の駆動源によりモータジェネレータ10が駆動されて発電する場合の発電量であってもよい。
【0034】
(2−1)片側充電動作
片側充電動作では、第2インバータ30を中性点化し、第1インバータ20を回生量Pに応じて駆動させることにより、第1バッテリ41が充電される。また、第1インバータ20を中性点化し、第2インバータ30を回生量Pに応じて駆動させることにより、第2バッテリ42が充電される。
片側充電動作では、第1インバータ20または第2インバータ30が中性点化されるため、後述する両側充電動作と比較してスイッチング損失が小さいので有利である。本実施形態では、第1バッテリ41の方が第2バッテリ42よりも内部抵抗が小さいので、第1バッテリ41を優先的に充電する。
【0035】
(2−2)両側充電動作
回生により生じる電力が第1バッテリ41または第1インバータ20の少なくとも一方、もしくは、第2バッテリ42または第2インバータ30の少なくとも一方の許容入力電力を上回る場合、両側充電動作により、第1バッテリ41および第2バッテリ42を同時に充電する。両側充電動作では、反転駆動動作のように、第1基本波F1の位相と第2基本波F2の位相とを反転させることにより、第1バッテリ41および第2バッテリ42を同時に充電する。
本実施形態では、第1基本波F1の振幅および第2基本波F2の振幅を可変とし、第1インバータ20のデューティおよび第2インバータ30のデューティを可変とすることにより、第1バッテリ41および第2バッテリ42の充電量を適切に制御する。
【0036】
ここで、図5図7に基づく両側充電動作の説明に先立ち、電流値および電圧値について、図4に基づいて説明しておく。
図4に示すように、コイル11〜13において、第1インバータ20側から第2インバータ30側へ流れる電流を正、第2インバータ30から第1インバータ20側へ流れる電流を負とする。また、第1バッテリ41から第1インバータ20側への電流を第1バッテリ電流I1とし、第2バッテリ42から第2インバータ30側への電流を第2バッテリ電流I2とする。本実施形態では、第1バッテリ電流I1が負のとき、第1バッテリ41が充電され、第2バッテリ電流I2が負のとき、第2バッテリ42が充電される。
また、コイル11〜13の第1インバータ20側における相間電圧を第1相間電圧V1とし、コイル11〜13の第2インバータ30側における相間電圧を第2相間電圧V2とする。図5図7においては、W相基準のU相電圧(U−W間電圧)を相間電圧V1、V2とする。
【0037】
図5図7に基づいて両側充電動作について説明する。図5図7において、(a)が相電流、(b)が第1基本波F1、(c)が第2基本波F2、(d)が第1相間電圧V1、(e)が第2相間電圧V2、(f)が第1バッテリ電流I1、(g)が第2バッテリ電流I2である。また、(b)、(c)における「k」は、キャリア波の振幅を示し、図7(b)における第1基本波F1の振幅αkは、キャリア波の振幅kよりも十分に大きいことを意味する。
また、図5が第1インバータ20と第2インバータ30とでデューティが等しい場合、図6が第1インバータ20のデューティが第2インバータ30のデューティより大きい場合、図7が第1インバータ20のデューティを最大(本実施形態では、120度通電)とした場合を示している。図5図7では、モータジェネレータ10の回転数Nおよび回生量Pが等しい。また、回生量Pは、第1バッテリ41により充電可能な最大量より、大きいものとする。
【0038】
図5に示すように、第1インバータ20と第2インバータ30とのデューティを等しくする場合、第1基本波F1の振幅と第2基本波F2の振幅とが等しく、第1バッテリ電流I1の平均値(以下、「第1電流平均値」という。)I1_aveと、第2バッテリ電流I2の平均値(以下、「第2電流平均値」という。)I2_aveとは等しい。ここで、ロス等を無視すれば、第1バッテリ41の充電量(以下、「第1充電量」という。)C1、および、第2バッテリ42の充電量(以下、「第2充電量」という。)C2は、式(1)、(2)となる。
C1=−I1×Vb1 ・・・(1)
C2=−I2×Vb2 ・・・(2)
本実施形態では、第1バッテリ電圧Vb1と第2バッテリ電圧Vb2とが等しく、また、図5の例では、第1バッテリ電流I1と第2バッテリ電流I2とが等しいので、第1充電量C1と第2充電量C2とが等しい。
【0039】
図6に示すように、第1インバータ20のデューティを第2インバータ30のデューティより大きくする場合、第1基本波F1の振幅は第2基本波F2の振幅より大きく、第1電流平均値I1_aveの絶対値は第2電流平均値I2_aveの絶対値より大きい。また、第1充電量C1は、第2充電量C2より大きい。
【0040】
図7に示すように、第1インバータ20のデューティを最大とすべく、120度通電制御とする。これにより、第1バッテリ41の充電量が最大化される。また、第1バッテリ41にて充電できない分の電力が第2バッテリ42に充電されるように、第2基本波F2の振幅および第2インバータ30のデューティが設定される。このとき、第1電流平均値I1_aveの絶対値は、第2電流平均値I2_aveの絶対値より大きく、第1充電量C1は第2充電量C2より大きい。また、図6における第1充電量C1と第2充電量C2との差より、図7における第1充電量C1と第2充電量C2との差が大きい。
【0041】
損失について考慮すると、スイッチング回数が少ない方がスイッチングによる損失が小さい。また、本実施形態では、第1バッテリ41の方が、第2バッテリ42よりも内部抵抗が小さいので、損失が小さい。そこで本実施形態では、第1バッテリ41および第2バッテリ42を同時に充電する場合、第1バッテリ41を優先的に充電する。
【0042】
第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満、かつ、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満である場合、図8に示すように、モータジェネレータ10の回転数Nおよび回生量Pが第1閾値L1以下である領域R1において、第2インバータ30を中性点化し、第1インバータ20を回生量Pに応じて制御することにより、第1バッテリ41を充電する。また、モータジェネレータ10の回転数Nおよび回生量Pが第1閾値L1以上、上限値L2以下である領域R2において、図7に示す如く、第1インバータ20のデューティを最大とし(本実施形態では、120度通電制御)、第1バッテリ41の充電量を最大化する。また、第1バッテリ41にて充電しきれない余剰量に応じて第2インバータ30を制御することにより、余剰分を第2バッテリ42に充電する。
【0043】
また、モータジェネレータ10の回転数Nおよび回生量Pが上限値L2より大きい場合、第1インバータ20および第2インバータ30を、ともにデューティを最大とし、第1充電量C1および第2充電量C2が最大となるようにする。また、第1インバータ20側および第2インバータ30側にて回生しきれない分については、図示しない機械式ブレーキを用いる。
なお、図8は、第1インバータ20の最大回生量と、第2インバータ30の最大回生量とが等しい場合の例である。
【0044】
本実施形態における充電制御処理を図9に示すフローチャートに基づいて説明する。図9は、制御部60にて所定の間隔にて実行される処理である。図9中では、第1バッテリ41のSOCを「SOC1」、第2バッテリ42のSOCを「SOC2」と記載する。
最初のステップS101(以下、「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。)では、モータジェネレータ10の回転数Nを取得する。また、当該回転数Nにおける第1インバータ20側での最大回生量(以下、「第1最大回生量」という。)P1、第2インバータ30側での最大回生量(以下、「第2最大回生量」という。)P2、および、第1インバータ20側および第2インバータ30側の両側での最大回生量(以下、「両側最大回生量」)P0を決定する。最大回生量P0、P1、P2を算出するにあたり、モータジェネレータ10の回転数Nに加え、第1インバータ20および第2インバータ30の冷却限界等を考慮してもよい。
【0045】
S102では、モータジェネレータ10での回生量Pが両側最大回生量P0未満か否かを判断する。回生量Pが両側最大回生量P0以上であると判断された場合(S102:NO)、S111へ移行する。回生量Pが両側最大回生量P0未満であると判断された場合(S102:YES)、S103へ移行する。
【0046】
S103では、モータジェネレータ10での回生量Pが第1最大回生量P1未満か否かを判断する。回生量Pが第1最大回生量P1以上であると判断された場合(S103:NO)、S109へ移行する。回生量Pが第1最大回生量P1未満であると判断された場合(S103:YES)、S104へ移行する。
【0047】
S104では、第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満か否かを判断する。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満であれば、第1バッテリ41を充電可能である。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上であると判断された場合(S104:NO)、S106へ移行する。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満であると判断された場合(S104:YES)、S105へ移行する。
S105では、第2インバータ30を中性点化し、回生量Pに応じて第1インバータ20を回生制御し、第1バッテリ41を充電する片側充電動作とする。
【0048】
第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上であると判断された場合(S104:NO)に移行するS106では、回生量Pが第2最大回生量P2未満か否かを判断する。回生量Pが第2最大回生量P2以上であると判断された場合(S106:NO)、S115へ移行する。回生量Pが第2最大回生量P2未満であると判断された場合(S106:YES)、S107へ移行する。
【0049】
S107では、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満か否かを判断する。第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満であれば、第2バッテリ42を充電可能である。第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2以上であると判断された場合(S107:NO)、S117へ移行する。第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満であると判断された場合(S107:YES)、S108へ移行する。
S108では、第1インバータ20を中性点化し、回生量Pに応じて第2インバータ30を回生制御し、第2バッテリ42を充電する片側充電動作とする。
【0050】
回生量Pが第1最大回生量P1以上であると判断された場合(S103:NO)に移行するS109では、第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満であり、かつ、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満であるか否かを判断する。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上、または、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2以上であると判断された場合(S109:NO)、S113へ移行する。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満、かつ、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満であると判断された場合(S109:YES)、S110へ移行する。
【0051】
S110では、回生量Pに応じて第1インバータ20および第2インバータ30を回生制御し、第1バッテリ41および第2バッテリ42を充電する両側充電動作とする。本実施形態では、第1バッテリ41の充電量が最大となるように第1インバータ20を制御し、余剰分が第2バッテリ42に充電されるように第2インバータ30を制御する。
【0052】
回生量Pが両側最大回生量P0以上であると判断された場合(S102:NO)に移行するS111では、S109と同様、第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満であり、かつ、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満であるか否かを判断する。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上、または、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2以上であると判断された場合(S111:NO)、S113へ移行する。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満、かつ、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満であると判断された場合(S111:YES)、S112へ移行する。
【0053】
S112では、第1バッテリ41の充電量が最大となるように第1インバータ20を回生制御し、第2バッテリ42の充電量が最大となるように第2インバータ30を回生制御し、第1バッテリ41および第2バッテリ42を充電する両側充電動作とする。また、第1インバータ20側および第2インバータ30側にて回生しきれない分については、機械式ブレーキを用いる。
【0054】
第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上、または、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2以上であると判断された場合(S109:NO、または、S111:NO)に移行するS113では、第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満か否かを判断する。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上であると判断された場合(S113:NO)、S115へ移行する。第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満であると判断された場合(S113:YES)、S114へ移行する。
なお、S113は、第1バッテリ41のSOCおよび第2バッテリ42のSOCの少なくとも一方が上限値SH1、SH2以上である場合に移行するステップであるので、S113にて否定判断される場合(すなわち、第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1未満である場合)、第2バッテリ42のSOCは第2上限値SH2以上である。
【0055】
S114では、第2インバータ30を中性点化し、第1バッテリ41の充電量が最大となるように第1インバータ20を回生制御する片側充電動作とする。また、第1インバータ20側にて回生しきれない分については、機械式ブレーキを用いる。
【0056】
第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上、かつ、回生量Pが第2最大回生量P2以上であると判断された場合(S104:NO、かつ、S106:NO)、または、回生量Pが両側最大回生量P0以上、かつ、第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上であると判断された場合(S102:NO、かつ、S113:YES)に移行するS115では、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満であるか否かを判断する。第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2以上であると判断された場合(S115:NO)、S117へ移行する。第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2未満であると判断された場合(S115:NO)、S116へ移行する。
【0057】
S116では、第1インバータ20を中性点化し、第2バッテリ42の充電量が最大となるように第2インバータ30を回生制御する片側充電動作とする。また、第2インバータ30側にて回生しきれない分については、機械式ブレーキを用いる。
第1バッテリ41のSOCが第1上限値SH1以上、かつ、第2バッテリ42のSOCが第2上限値SH2以上である場合(S104:NOかつS107:NO、または、S113:NOかつS115:NO)に移行するS117では、第1バッテリ41および第2バッテリ42を充電することができないので、第1インバータ20および第2インバータ30を回生制御せず、機械式ブレーキを用いる。
【0058】
以上詳述したように、本実施形態の電力変換装置1は、コイル11、12、13を有するモータジェネレータ10の電力を変換するものであって、第1インバータ20と、第2インバータ30と、制御部60と、を備える。
第1インバータ20は、コイル11、12、13の一端111、121、131および第1バッテリ41と接続される。
第2インバータ30は、コイル11、12、13の他端112、122、132および第2バッテリ42と接続される。
【0059】
制御部60は、モータジェネレータ10の発電量に応じて第1インバータ20および第2インバータ30を制御し、第1バッテリ41の充電量および第2バッテリ42の充電量を可変とする。
これにより、モータジェネレータ10により生じる電力を第1バッテリ41および第2バッテリ42に適切に充電させることができる。本実施形態では、モータジェネレータ10は電動車両の主機モータであるので、第1バッテリ41および第2バッテリ42の充電状態であるSOCを適切に制御することで、バッテリ容量に対する航続距離(いわゆる「電費」)の向上に寄与する。
【0060】
制御部60は、発電量が第1バッテリ41にて充電可能な最大量である第1最大回生量P1より大きい場合、第1バッテリ41の充電量を最大とし、余剰分を第2バッテリ42に充電させる。
第1バッテリ41の充電量が最大となるように充電する場合、例えば120度通電制御や180度通電制御とすることにより、第1インバータ20におけるスイッチング損失が低減される。これにより、損失を低減することができ、高効率に第1バッテリ41および第2バッテリ42を充電させることができる。
【0061】
特に、第1バッテリ41が、第2バッテリ42より内部抵抗が小さい場合、より損失を低減することができる。
また、第1バッテリ41は、第2バッテリ42より高出力であり、第2バッテリ42は第1バッテリ41より高容量である。高出力型である第1バッテリ41は、高容量型である第2バッテリより容量が少ない。そのため、第1バッテリ41を優先的に充電することにより、第1バッテリ41および第2バッテリ42のSOCをより適切に制御することができる。
【0062】
また、制御部60は、発電量が第1バッテリ41または第2バッテリ42の一方にて充電可能である場合、第1バッテリ41または第2バッテリ42の一方に充電させる。
第1バッテリ41または第2バッテリ42の一方を充電する片側充電動作では、第1インバータ20または第2インバータ30が中性点化されるので、PWM制御等によって制御される場合と比較して、スイッチング損失が小さい。したがって、両側充電動作とする場合よりも損失を低減することができる。
【0063】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図10に示す。
本実施形態では、第1バッテリ41および第1コンデンサ43に替えて、第1電圧源としてのキャパシタ45が設けられる。第1インバータ20は、コイル11、12、13の一端111、121、131とキャパシタ45との間に接続される。
本実施形態の充電制御処理は上記実施形態と同様であり、第1電圧源であるキャパシタ45を優先的に充電するものとする。
【0064】
本実施形態では、第1電圧源は、キャパシタである。例えばリチウムイオンバッテリである第2バッテリ42と比較し、内部抵抗が小さく、充放電の繰り返しによる劣化が小さい。そのため、キャパシタ45を優先的に充電することにより、第2バッテリ42の劣化を抑制することができる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0065】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図11に示す。
本実施形態のモータジェネレータ15は、駆動源としてのエンジン16と接続され、第1電力源としての第1バッテリ46および第2電力源としての第2バッテリ47の電力によって駆動されて電動機として機能することでエンジン16を始動させるスタータとしての機能、および、エンジン16から伝わる運動エネルギによって駆動されて発電するオルタネータとしての機能を併せ持つISG(Integrated Starter Generator)である。
【0066】
第1バッテリ46は、充放電可能な直流電源であり、第1インバータ20と接続され、第1インバータ20を経由してモータジェネレータ15と電力を授受可能に設けられる。本実施形態では、第1バッテリ46は、高出力型のリチウムイオン電池とする。なお、第2実施形態のように、第1バッテリ46および第1コンデンサ43に替えて、キャパシタ45としてもよい。
第2バッテリ47は、充放電可能な直流電源であり、第2インバータ30と接続され、第2インバータ30を経由してモータジェネレータ15と電力を授受可能に設けられる。本実施形態では、第2バッテリ47は、高容量型の鉛蓄電池とする。
すなわち、第2バッテリ47の容量は、第1バッテリ46の容量より大きい。また、第1バッテリ46の出力は、第2バッテリ47の出力より大きい。
【0067】
負荷50は、高容量型である第2バッテリ47の電力が供給される定電圧負荷である。負荷50は、例えば図示しないアクセサリ電源を経由して第2バッテリ47の電力が供給される補機類や電装品等が含まれる。少なくとも一部の負荷50のマイナス端子は、図示しない車体に接続されることにより、接地される。
【0068】
本実施形態における片側駆動動作、および、両側駆動動作は、上記実施形態と同様である。
本実施形態のモータジェネレータ15はISGであるので、発電機として機能する場合として、エンジン16に駆動されて発電する「エンジン発電」と、制動時の「MG回生」とがある。また、第2バッテリ47には負荷50が接続されているため、負荷50への給電の観点から、負荷50が接続されない第1バッテリ46と比較して電圧変動が許容されない。
【0069】
そこで本実施形態では、エンジン発電時においては、高容量型である第2バッテリ47を優先的に充電する。すなわち、片側充電可能なときには、第1インバータ20を中性点化し、第2バッテリ47を充電する。また、両側充電動作時においては、第2インバータ30のデューティを第1インバータ20のデューティよりも大きくする。これにより、第2バッテリ47の電圧低下が抑制され、電圧変動を抑制することができる。
【0070】
また、MG回生時において、高出力型である第1バッテリ46を優先的に充電する。すなわち、片側充電可能なときには、第2インバータ30を中性点化し、第1バッテリ46を充電する。また、両側充電動作時においては、第1インバータ20のデューティを第2インバータ30のデューティよりも大きくする。これにより、MG制動により瞬発的に生じる回生エネルギを高効率に回生させることができる。
本実施形態では、エンジン発電により生じる電力が「発電電力」に対応し、MG回生により生じる電力が「回生電力」に対応する。
【0071】
本実施形態のモータジェネレータ15は、エンジン16により駆動される。
制御部60は、モータジェネレータ15の回生により生じる回生電力が第1バッテリ46に優先的に充電され、エンジン16によりモータジェネレータ15が駆動されて生じる発電電力が第2バッテリ47に優先的に充電されるように、第1インバータ20および第2インバータ30を制御する。
特に、第1バッテリ46が高出力型であり、第2バッテリ47が高容量型である場合、回生電力を第1バッテリ46に充電させることにより、回生エネルギを高効率に回収することができる。
【0072】
また、第2バッテリ47には、負荷50が接続される。負荷50が接続される第2バッテリ47は、負荷50への給電の観点から電圧変動が小さいことが望ましいため、高容量型のものが適している。また、発電電力を第2バッテリ47に優先的に充電させることにより、第2バッテリ47の電圧変動を抑制することがきる。
また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0073】
(他の実施形態)
(ア)第1インバータ、第2インバータ
上記実施形態では、第1インバータおよび第2インバータは、PWM制御、または、矩形波制御により制御される。他の実施形態では、PWM制御および矩形波制御以外の制御方法により制御されるようにしてもよい。
また、上記実施形態の充電制御処理では、第1電圧源および第2電圧源が充電可能であるか否か、および、回生量に応じて制御される。他の実施形態では、第1電圧源または第2電圧源の一方を充電する必要がある場合(例えば、SOCが下限値以下である場合)、充電要求がある第1電圧源または第2電圧源を優先的に充電させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、制御部は、両側充電動作において、一方の電圧源の充電量が最大となるようにし、余剰分を他方の電圧源に充電させるように制御する。他の実施形態では、制御部は、電圧源の充電要求等に応じ、第1電圧源と第2電圧源とを均等に充電させるように第1インバータおよび第2インバータを制御してもよいし、第1電圧源の充電量と第2電圧源の充電量とが所定比率にて充電されるように第1インバータおよび第2インバータを制御してもよい。
【0074】
(イ)第1電圧源、第2電圧源
上記実施形態では、第1電圧源の内部抵抗が小さく、高出力型の電源であり、第2電圧源が高容量型の電源である。他の実施形態では、第1電圧源を高容量型の電源とし、第2電圧源を高出力型の電源としてもよい。また、第1電圧源および第2電圧源を、同等の特性のものとしてもよい。
(ウ)負荷
上記実施形態では、負荷は、第2電圧源に接続される。他の実施形態では、第1電圧源に負荷を接続してもよいし、第1電圧源および第2電圧源にそれぞれ負荷を接続するようにしてもよい。
【0075】
(エ)モータジェネレータ
上記実施形態では、モータジェネレータは、3相交流の回転機である。他の実施形態では、モータジェネレータは、例えば4相以上の回転機等、どのようなものであってもよい。また、第1実施形態および第2実施形態のモータジェネレータが、第3実施形態のように駆動源により駆動されるように構成してもよい。
第1実施形態のモータジェネレータは主機モータであり、第3実施形態のモータジェネレータはISGである。他の実施形態では、モータジェネレータは、主機モータおよびISG以外の補機モータ等の他のモータであってもよい。また、モータジェネレータを車両以外に適用してもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・電力変換装置
10・・・モータジェネレータ
11〜13・・・コイル(巻線)
20・・・第1インバータ
30・・・第2インバータ
41、46・・・第1バッテリ(第1電圧源)
42、47・・・第2バッテリ(第2電圧源)
45・・・キャパシタ(第1電圧源)
60・・・制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11