【文献】
中南 直樹 Naoki Nakaminami,石井 望 Nozomu Ishii,伊藤 精彦 Kiyohiko Itoh,“タイムドメイン測定法を利用したイメージNRDガイドアンテナの特性測定 Measurement of Image NRD gui,電子情報通信学会技術研究報告,社団法人電子情報通信学会,1996年 7月22日,Vol.96, No.168,p.21-28
【文献】
秋山 章 Akira AKIYAMA,桜井 仁夫 Kimio SAKURAI,広川 二郎 Jiro HIROKAWA,安藤 真 Makoto ANDO,“ミリ波帯用近傍界測定装置の試作と評価 Near-Field Measurement System for Millimeter Wave”,電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集,社団法人電子情報通信学会,1997年 8月13日,1997年, 通信(1),p.127
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のアンテナ素子(T1〜TN)を含む被測定アンテナ(110)から送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出する電界強度分布測定装置(1)であって、
所定の走査範囲に含まれる複数の測定位置において、前記無線信号を測定信号として受信する測定用アンテナ(11)と、
前記複数の測定位置に前記測定用アンテナを移動させる移動装置(12)と、
基準信号を出力する発振器(14)と、
前記基準信号が入力されローカル信号を発生させるローカル信号発生器(15)と、
前記測定用アンテナにより受信された測定信号を前記ローカル信号と混合することにより周波数変換する測定用周波数変換手段(17)と、
前記測定用周波数変換手段により周波数変換された測定信号をデジタイズして測定用デジタル信号を生成する測定用A/D変換部(27)と、
前記基準信号が入力され参照信号を発生させる参照信号発生部(16)と、
各前記測定位置について、前記測定用デジタル信号の振幅を算出し、それとともに、前記測定用デジタル信号の位相と前記参照信号がデジタイズされた参照用デジタル信号の位相との位相差を算出する位相差・振幅算出部(20)と、
前記位相差・振幅算出部により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出部(21)と、を有し、
前記参照信号発生部は、前記参照信号を前記被測定アンテナに出力することにより、前記参照信号の周波数と等しい周波数の前記無線信号を前記被測定アンテナから送信させ、
前記測定用周波数変換手段は、前記測定用アンテナのコネクタ(11a)に直結して接続される測定用ダウンコンバータ(17)を含むことを特徴とする電界強度分布測定装置。
送信装置(100)に備えられた複数のアンテナ素子(T1〜TN)を含む被測定アンテナ(110)から送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出する電界強度分布測定装置(1)であって、
所定の走査範囲に含まれる複数の測定位置において、前記無線信号を測定信号として受信する測定用アンテナ(11)と、
前記複数の測定位置に前記測定用アンテナを移動させる移動装置(12)と、
基準信号を出力する発振器(14)と、
前記基準信号が入力されローカル信号を発生させるローカル信号発生器(15)と、
前記測定用アンテナにより受信された測定信号を前記ローカル信号と混合することにより周波数変換する測定用周波数変換手段(17)と、
前記測定用周波数変換手段により周波数変換された測定信号をデジタイズして測定用デジタル信号を生成する測定用A/D変換部(27)と、
各前記測定位置について、前記測定用デジタル信号の振幅を算出し、それとともに、前記測定用デジタル信号の位相と前記発振器より出力された基準信号の位相との位相差を算出する位相差・振幅算出部(20)と、
前記位相差・振幅算出部により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出部(21)と、を有し、
前記送信装置に備えられた参照信号発生部(42,43)から発生される参照信号を前記被測定アンテナに出力することにより、前記参照信号の周波数と等しい周波数の前記無線信号を前記被測定アンテナから送信させ、
前記測定用周波数変換手段は、前記測定用アンテナのコネクタ(11a)に直結して接続される測定用ダウンコンバータ(17)を含むことを特徴とする電界強度分布測定装置。
前記参照信号発生部は、前記発振器から入力される基準信号の位相に同期した無変調波の参照信号を発生させることを特徴とする請求項2に記載の電界強度分布測定装置。
前記参照信号発生部は、前記送信装置内の中間周波数の信号を前記ローカル信号発生器で発生されたローカル信号にて周波数変換させて前記参照信号を発生させることを特徴とする請求項2に記載の電界強度分布測定装置。
前記ローカル信号発生器、前記測定用A/D変換部、前記参照信号発生部、前記参照用周波数変換手段、前記参照用A/D変換部、及び前記位相差・振幅算出部が、いずれもベクトルネットワークアナライザ(10)で構成されることを特徴とする請求項3に記載の電界強度分布測定装置。
複数のアンテナ素子(T1〜TN)を含む被測定アンテナ(110)から送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出する電界強度分布測定装置(2,3)であって、
所定の走査範囲に含まれる複数の測定位置において、前記無線信号を測定信号として受信する測定用アンテナ(11)と、
前記無線信号を参照信号として受信する参照用アンテナ(31)と、
前記複数の測定位置に前記測定用アンテナを移動させる移動装置(12)と、
前記測定用アンテナにより受信された測定信号を周波数変換する測定用周波数変換手段(17)と、
前記測定用周波数変換手段により周波数変換された測定信号をデジタイズして測定用デジタル信号を生成する測定用A/D変換部(27)と、
前記参照用アンテナにより受信された参照信号を周波数変換する参照用周波数変換手段(32,41)と、
前記参照用周波数変換手段により周波数変換された参照信号をデジタイズして参照用デジタル信号を生成する参照用A/D変換部(37)と、
各前記測定位置について、前記測定用デジタル信号の位相と、前記参照用デジタル信号の位相との位相差を算出するともに、前記測定用デジタル信号の振幅を算出する位相差・振幅算出部(20)と、
前記位相差・振幅算出部により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出部(21)と、を有し、
前記測定用周波数変換手段は、前記測定用アンテナのコネクタ(11a)に直結して接続される測定用ダウンコンバータ(17)を含むことを特徴とする電界強度分布測定装置。
前記測定用アンテナにより受信された測定信号のスペクトラムを解析するスペクトラム解析部(50)を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電界強度分布測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のVNAにおいてはダウンコンバータがVNA内の受信部にあり、受信プローブとしての測定用アンテナから受信部までの間を接続する同軸ケーブルなどの配線を高周波帯の無線信号が伝播する。このため、この配線のねじれや撓み等の影響により、伝播損等が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、測定用アンテナから受信部までの間を接続する配線のねじれや撓み等の影響を低減して、遠方界の電界強度分布を精度良く算出することができる電界強度分布測定装置及び電界強度分布測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の電界強度分布測定装置は、複数のアンテナ素子を含む被測定アンテナから送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出する電界強度分布測定装置であって、所定の走査範囲に含まれる複数の測定位置において、前記無線信号を測定信号として受信する測定用アンテナと、前記複数の測定位置に前記測定用アンテナを移動させる移動装置と、基準信号を出力する発振器と、前記基準信号が入力されローカル信号を発生させるローカル信号発生器と、前記測定用アンテナにより受信された測定信号を前記ローカル信号と混合することにより周波数変換する測定用周波数変換手段と、前記測定用周波数変換手段により周波数変換された測定信号をデジタイズして測定用デジタル信号を生成する測定用A/D変換部と、前記基準信号が入力され参照信号を発生させる参照信号発生部と、各前記測定位置について、前記測定用デジタル信号の振幅を算出し、それとともに、前記測定用デジタル信号の位相と前記参照信号がデジタイズされた参照用デジタル信号の位相との位相差を算出する位相差・振幅算出部と、前記位相差・振幅算出部により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出部と、を有し、前記参照信号発生部は、前記参照信号を前記被測定アンテナに出力することにより、前記参照信号の周波数と等しい周波数の前記無線信号を前記被測定アンテナから送信させ、前記測定用周波数変換手段は、前記測定用アンテナのコネクタに
直結して接続される測定用ダウンコンバータを含む構成である。
【0009】
ミリ波など高周波での測定時には、測定用アンテナを走査させることにより、測定用A/D変換部を含む受信部と測定用アンテナ間を接続する同軸ケーブルなどの配線の曲げ半径が変動したり、ねじれが発生したりする。これにより、配線内を伝播する無線信号の位相が変動し、測定結果に影響を与えることとなる。これに対して、ダウンコンバータを測定用アンテナと一体化することで、測定用アンテナと一体化したダウンコンバータから受信部までの間を接続する配線を伝播する無線信号の周波数を低くして、この配線のねじれや撓み等の影響を低減することができる。これにより、近傍界での位相誤差を減らせるため遠方界の電界強度分布を精度良く算出することができる。
【0010】
また、本発明の請求項2の電界強度分布測定装置は、送信装置に備えられた複数のアンテナ素子を含む被測定アンテナから送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出する電界強度分布測定装置であって、所定の走査範囲に含まれる複数の測定位置において、前記無線信号を測定信号として受信する測定用アンテナと、前記複数の測定位置に前記測定用アンテナを移動させる移動装置と、基準信号を出力する発振器と、前記基準信号が入力されローカル信号を発生させるローカル信号発生器と、前記測定用アンテナにより受信された測定信号を前記ローカル信号と混合することにより周波数変換する測定用周波数変換手段と、前記測定用周波数変換手段により周波数変換された測定信号をデジタイズして測定用デジタル信号を生成する測定用A/D変換部と、各前記測定位置について、前記測定用デジタル信号の振幅を算出し、それとともに、前記測定用デジタル信号の位相と前記発振器より出力された基準信号の位相との位相差を算出する位相差・振幅算出部と、前記位相差・振幅算出部により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出部と、を有し、前記送信装置に備えられた参照信号発生部から発生される参照信号を前記被測定アンテナに出力することにより、前記参照信号の周波数と等しい周波数の前記無線信号を前記被測定アンテナから送信させ、前記測定用周波数変換手段は、前記測定用アンテナのコネクタ(11a)に
直結して接続される測定用ダウンコンバータを含む構成である。
【0011】
また、本発明の請求項3の電界強度分布測定装置は、前記参照信号を周波数変換する参照用周波数変換手段と、前記参照用周波数変換手段により周波数変換された参照信号をデジタイズして前記参照用デジタル信号を生成する参照用A/D変換部と、を更に備え、前記参照信号発生部は、前記発振器から入力される基準信号の位相に同期した無変調波の参照信号を発生させる構成であってもよい。
【0012】
また、本発明の請求項4の電界強度分布測定装置においては、前記参照信号発生部は、前記発振器から入力される基準信号の位相に同期した無変調波の参照信号を発生させる構成であってもよい。
【0013】
また、本発明の請求項5の電界強度分布測定装置においては、前記参照信号発生部は、前記送信装置内の中間周波数の信号を前記ローカル信号発生器で発生されたローカル信号にて周波数変換させて前記参照信号を発生させる構成であってもよい。
【0014】
また、本発明の請求項6の電界強度分布測定装置においては、前記ローカル信号発生器、前記測定用A/D変換部、前記参照信号発生部、前記参照用周波数変換手段、前記参照用A/D変換部、及び前記位相差・振幅算出部が、いずれもベクトルネットワークアナライザ(10)で構成されていてもよい。
【0015】
また、本発明の請求項7の電界強度分布測定装置においては、前記測定用ダウンコンバータは、前記ローカル信号発生器により発生された前記ローカル信号を周波数逓倍する逓倍器と、前記測定用アンテナにより受信された測定信号を、前記逓倍器により周波数逓倍されたローカル信号と混合するミキサと、前記ミキサの出力信号から不要な周波数成分を除去するフィルタと、を有する構成であってもよい。
【0016】
この構成により、ローカル信号発生器から出力されたローカル信号と、測定用アンテナにより受信された測定信号を、周波数が低い状態で配線を伝送させることができるため、測定系での位相の変化を抑制して、遠方界の電界強度分布を精度良く算出することができる。
【0017】
また、本発明の請求項8の電界強度分布測定装置においては、前記測定用ダウンコンバータは、前記ローカル信号発生器により発生された前記ローカル信号の逓倍の周波数成分により、前記測定用アンテナにより受信された測定信号を周波数変換するハーモニックミキサと、前記ハーモニックミキサの出力信号から不要な周波数成分を除去するフィルタと、を有する構成であってもよい。
【0018】
また、本発明の請求項9の電界強度分布測定装置は、複数のアンテナ素子を含む被測定アンテナから送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出する電界強度分布測定装置であって、所定の走査範囲に含まれる複数の測定位置において、前記無線信号を測定信号として受信する測定用アンテナと、前記無線信号を参照信号として受信する参照用アンテナと、前記複数の測定位置に前記測定用アンテナを移動させる移動装置と、前記測定用アンテナにより受信された測定信号を周波数変換する測定用周波数変換手段と、前記測定用周波数変換手段により周波数変換された測定信号をデジタイズして測定用デジタル信号を生成する測定用A/D変換部と、前記参照用アンテナにより受信された参照信号を周波数変換する参照用周波数変換手段と、前記参照用周波数変換手段により周波数変換された参照信号をデジタイズして参照用デジタル信号を生成する参照用A/D変換部と、各前記測定位置について、前記測定用デジタル信号の位相と、前記参照用デジタル信号の位相との位相差を算出するともに、前記測定用デジタル信号の振幅を算出する位相差・振幅算出部と、前記位相差・振幅算出部により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出部と、を有し、前記測定用周波数変換手段は、前記測定用アンテナのコネクタに
直結して接続される測定用ダウンコンバータを含む構成である。
【0019】
この構成により、測定用アンテナで受信された無線信号の周波数を早い段階で低下させることにより、測定系での位相の変化を抑制して、遠方界の電界強度分布を精度良く算出することができる。
【0020】
また、本発明の請求項10の電界強度分布測定装置においては、前記参照用周波数変換手段は、前記参照用アンテナのコネクタに
直結して接続される参照用ダウンコンバータを含む構成であってもよい。
【0021】
この構成により、参照用アンテナで受信された無線信号の周波数を早い段階で低下させることにより、測定系での位相の変化を抑制して、遠方界の電界強度分布を精度良く算出することができる。
【0022】
また、本発明の請求項11の電界強度分布測定装置は、前記測定用周波数変換手段と前記参照用周波数変換手段との間で周波数同期を取る周波数同期手段と、前記測定用デジタル信号と前記参照用デジタル信号の前記位相差・振幅算出部へのデータ取り込みの開始のタイミングを同期する位相差・振幅算出処理タイミング同期手段と、前記測定用A/D変換部及び前記参照用A/D変換部のサンプリングクロックを同期するA/D変換クロック同期手段と、を更に有する構成であってもよい。
【0023】
また、本発明の請求項12の電界強度分布測定装置は、前記測定用アンテナにより受信された測定信号のスペクトラムを解析するスペクトラム解析部を更に備える構成であってもよい。
【0024】
この構成により、1台の送信装置に対して、電界強度分布の測定と、無線信号の品質を評価するための測定とを行いたい場合に、測定のたびに被測定アンテナと測定システムのつなぎ替えを行う必要を無くすことができる。よって、電界強度分布の測定と、周波数、占有帯域幅、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射等の無線信号の品質を評価するための測定とを、1台の送信装置に対して順次実行することができる。
【0025】
また、本発明の請求項13の電界強度分布測定方法は、上記のいずれかの電界強度分布測定装置を用いる電界強度分布測定方法であって、前記被測定アンテナに無変調波の参照信号を出力する参照信号出力ステップと、前記被測定アンテナから前記参照信号の周波数と等しい周波数の無線信号を送信する無線信号送信ステップと、前記測定用ダウンコンバータと一体化した測定用アンテナを測定位置に移動させる移動ステップと、所定の走査範囲に含まれる複数の測定位置において、前記無線信号を測定信号として前記測定用アンテナにより受信する信号受信ステップと、前記信号受信ステップで受信された測定信号を前記測定用周波数変換手段により周波数変換するとともに、前記参照信号発生部で発生された参照信号を前記参照用周波数変換手段により周波数変換する周波数変換ステップと、前記周波数変換ステップで周波数変換された測定信号及び参照信号を、前記測定用A/D変換部及び前記参照用A/D変換部によりデジタイズして測定用デジタル信号及び参照用デジタル信号を生成するA/D変換ステップと、各前記測定位置について、前記測定用デジタル信号の位相と、前記参照用デジタル信号の位相との位相差を算出するともに、前記測定用デジタル信号の振幅を算出する位相差・振幅算出ステップと、前記位相差・振幅算出ステップで算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する遠方界電界強度分布算出ステップと、を含む構成である。
【0026】
この構成により、ダウンコンバータを測定用アンテナと一体化することで、測定用アンテナと一体化したダウンコンバータから受信部までの間を接続する配線を伝播する無線信号の周波数を低くして、この配線のねじれや撓み等の影響を低減することができる。これにより、遠方界の電界強度分布を精度良く算出することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、測定用アンテナから受信部までの間を接続する配線のねじれや撓み等の影響を低減して、遠方界の電界強度分布を精度良く算出することができる電界強度分布測定装置及び電界強度分布測定方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る電界強度分布測定装置及び電界強度分布測定方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る電界強度分布測定装置1は、送信装置100が備える複数のアンテナ素子T1〜TNを含む被測定アンテナ110から送信される無線信号を近傍界で測定し、遠方界での電界強度分布を算出するものである。被測定アンテナ110は、例えばMassive−MIMOアンテナを含むアレーアンテナなどである。被測定アンテナ110は、送信装置100と一体化したものであっても、送信装置100から取り外し可能なものであってもよい。
【0031】
電界強度分布測定装置1は、測定用アンテナ11、移動装置12、測定用受信機としての測定信号受信部13、発振器14、ローカル信号発生器15、参照信号発生部16、測定用ダウンコンバータ17、参照用ダウンコンバータ18、A/D変換部19、位相差・振幅算出部20、遠方界電界強度分布算出部21、同期部22、表示部23、操作部24、及び制御部25,26を主に備える。
【0032】
これらのうち、測定信号受信部13、発振器14、ローカル信号発生器15、参照信号発生部16、参照用ダウンコンバータ18、A/D変換部19、位相差・振幅算出部20、及び同期部22は、いずれもVNA10で構成することが可能である。
【0033】
測定用アンテナ11は、送信装置100の複数のアンテナ素子T1〜TNを含む被測定アンテナ110から放射された電波を近傍界において受信するアンテナであり、例えば、所定周波数範囲の電磁波を伝播させる導波路を有し、先端が開放された導波管で構成される。測定用アンテナ11は、近傍界領域の所定の走査範囲に含まれる複数の走査点(以下、「測定位置」ともいう)において、送信装置100の被測定アンテナ110から送信される無線信号を測定信号として受信するようになっている。これらの測定位置は、例えば平面上に設定される。
【0034】
図2に示すように、移動装置12は、所定の走査範囲Pに含まれる複数の測定位置に、測定用ダウンコンバータ17と一体化した測定用アンテナ11を移動させるものである。移動装置12は、測定用アンテナ11と測定用ダウンコンバータ17とを被測定アンテナ110の電磁波放射面110aに対向する近傍の走査範囲P内でX,Y方向に移動させる。
【0035】
図1に示すように、測定信号受信部13は、測定用A/D変換部としてのA/D変換部27を含む。A/D変換部27は、測定用ダウンコンバータ17により周波数変換された測定信号をデジタイズするようになっている。具体的には、A/D変換部27は、周波数変換後の測定信号を所定のサンプリングクロックでサンプリングして、時系列のデジタルデータとしての測定用デジタル信号を生成する。
【0036】
発振器14はローカル信号、後述する参照信号及び参照用デジタル信号の基準信号源としての機能を有する。発振器14は、例えば基準信号として10MHzの無変調波の信号もしくはクロック信号を発生させ、発生させた基準信号をローカル信号発生器15と参照信号発生部16に出力するようになっている。
【0037】
ローカル信号発生器15は、例えばPLL回路を含み、発振器14から入力される基準信号の位相に同期したローカル信号を、例えば5GHz〜10GHzの範囲で周波数可変に発生させるようになっている。
【0038】
参照信号発生部16は、例えばPLL回路を含み、発振器14から入力される基準信号の位相に同期した無変調波の参照信号を発生させ、発生させた参照信号を送信装置100の被測定アンテナ110と、VNA10の参照用ダウンコンバータ18に出力するようになっている。参照信号の周波数は例えば25GHz〜145GHzである。参照信号発生部16は、参照信号を被測定アンテナ110に出力することにより、参照信号の周波数と等しい周波数の無線信号を被測定アンテナ110から送信させる。
【0039】
本実施形態では、測定用アンテナ11を測定用ダウンコンバータ17に直結させ、測定信号がケーブルを伝送される前に測定信号の周波数を低下させる構成としている。つまり、
図1に示すように、測定用アンテナ11のコネクタ11aには、同軸ケーブルなどの配線を介さずに、測定用周波数変換手段としての測定用ダウンコンバータ17が近接して接続される。
【0040】
測定用ダウンコンバータ17は、ケーブル28aによって後段の測定信号受信部13に接続されるとともに、ケーブル28bによってローカル信号発生器15に接続される。ケーブル28a,28bは、例えば同軸ケーブルからなる。測定用ダウンコンバータ17は、測定用アンテナ11により受信された測定信号をローカル信号と混合することにより中間周波数信号に周波数変換(ダウンコンバート)して、測定信号受信部13に出力するようになっている。
【0041】
測定用アンテナ11の走査時には、ケーブル28a,28bが撓んだり向きが変わったりするため、ミリ波帯などの高周波信号がケーブル28a,28bを伝送される場合には、その位相が変化してしまう場合がある。そこで、本実施形態では、ケーブル28a,28bにミリ波帯の高周波信号を伝送させないように、測定用ダウンコンバータ17の構成を
図3(a)に示すようなものとした。
【0042】
すなわち、測定用ダウンコンバータ17は、ローカル信号発生器15により発生されたローカル信号を周波数逓倍する逓倍器17aと、測定用アンテナ11により受信された測定信号を、逓倍器17aにより周波数逓倍されたローカル信号と混合するミキサ17bと、ミキサ17bの後段に設けられたフィルタ17cと、を有する。フィルタ17cは、ミキサ17bの出力信号から不要な周波数成分を除去するために設けられており、バンドパスフィルタでもローパスフィルタでもよい。
【0043】
つまり、測定用ダウンコンバータ17は、ローカル信号を逓倍器17aにより高周波信号に変換して、測定用アンテナ11により受信された測定信号と混合する。これにより、例えば25GHz〜145GHzの測定信号に対して、ケーブル28bを伝播するローカル信号の周波数を5GHz〜10GHzに抑えつつ、ケーブル28aを伝播する中間周波数信号の周波数を10GHz程度にすることができる。
【0044】
なお、
図3(b)のように、測定用ダウンコンバータ17は、ハーモニックミキサ17dと、ハーモニックミキサ17dの後段に設けられたフィルタ17cと、を有する構成でもよい。ハーモニックミキサ17dは、ローカル信号発生器15により発生されたローカル信号の逓倍の周波数成分により、測定用アンテナ11により受信された測定信号を周波数変換することができる。ここでは、フィルタ17cは、ハーモニックミキサ17dの出力信号から不要な周波数成分を除去するために設けられており、バンドパスフィルタでもローパスフィルタでもよい。
【0045】
制御部25は、中間周波数信号の周波数が一定になるようにローカル信号の周波数や逓倍器17aにおける逓倍率を変化させる制御を、参照信号の周波数に応じてローカル信号発生器15と測定用ダウンコンバータ17に対して行う。
【0046】
参照用周波数変換手段としての参照用ダウンコンバータ18は、参照信号発生部16により発生された参照信号を周波数変換するようになっている。
【0047】
参照用A/D変換部としてのA/D変換部19は、参照用ダウンコンバータ18により周波数変換された参照信号をデジタイズするようになっている。具体的には、A/D変換部19は、周波数変換後の参照信号を所定のサンプリングクロックでサンプリングして、時系列のデジタルデータとしての参照用デジタル信号を生成する。
【0048】
位相差・振幅算出部20は、測定用アンテナ11の走査範囲内の各測定位置について、測定用デジタル信号の位相と参照用デジタル信号の位相を高速フーリエ変換(FFT)等の手法を用いて算出する処理を行うようになっている。さらに、位相差・振幅算出部20は、測定用デジタル信号の位相と、参照用デジタル信号の位相との位相差を算出するともに、測定用デジタル信号の振幅を算出する処理を行うようになっている。
【0049】
送信装置100の被測定アンテナ110から送信される無線信号は無変調波であるため、例えば位相差・振幅算出部20において相互相関関数を利用するなど処理量を抑えた位相差の検出も可能である。
【0050】
さらに、位相差・振幅算出部20は、算出した位相差、振幅の情報(以下、「位相差情報」、「振幅情報」ともいう)を遠方界電界強度分布算出部21に出力するようになっている。なお、各測定位置における位相差情報は、走査範囲内の特定の測定位置での位相差を基準(位相ゼロ)とした値に変換されたものであってもよい。
【0051】
遠方界電界強度分布算出部21は、後述する走査制御部30から出力された測定用アンテナ11の位置情報と、位相差・振幅算出部20により算出された位相差及び振幅の情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出するようになっている。ここでは、公知の近傍界/遠方界変換法の数値計算を行うことにより遠方界の電界強度分布を推定して、送信装置100の被測定アンテナ110の指向性を求めることができる。
【0052】
同期部22は、測定用ダウンコンバータ17と参照用ダウンコンバータ18との間で周波数同期を取り、これらのダウンコンバータによる周波数変換量を同一とする。また、同期部22は、A/D変換部27及びA/D変換部19のサンプリングクロックを同期する。さらに、同期部22は、位相差・振幅算出部20による位相差及び振幅の算出処理の開始及び終了のタイミングを同期する。
【0053】
このようにして、測定用デジタル信号と参照用デジタル信号がA/D変換部27,19によるサンプリングクロックの同期が取れたものとなり、かつ位相差・振幅算出部20での演算開始と終了のタイミング同期が取れる。このようにして、測定用プローブとしての測定用アンテナ11が存在する測定位置における位相差(又は位相差の相対値)を高精度に算出することができ、この位相差及び振幅を用いて遠方界での電界強度分布を得ることができる。
【0054】
表示部23は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、制御部26からの制御信号に応じて各種表示内容を表示するようになっている。この表示内容には、被測定アンテナ110の近傍界における電界強度分布の測定結果や、遠方界における電界強度分布の算出結果などが含まれる。さらに、表示部23は、測定条件などを設定するためのソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象を表示するものであってもよい。
【0055】
操作部24は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、キーボード、タッチパネル、又はマウスのような入力デバイスを含んで構成される。あるいは前述のように、操作部24は、ボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象が表示部23に表示される構成であってもよい。
【0056】
制御部25は、例えばCPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータ等で構成され、VNA10を構成する上記各部の動作を制御する。さらに、制御部25は、所定のプログラムを実行することにより、位相差・振幅算出部20をソフトウェア的に構成するようになっている。
【0057】
制御部26は、例えばCPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、電界強度分布測定装置1を構成する上記各部の動作を制御する。さらに、制御部26は、所定のプログラムを実行することにより、遠方界電界強度分布算出部21をソフトウェア的に構成するようになっている。
【0058】
走査制御部30は、移動装置12に対して、走査範囲P内の全ての測定位置に測定用アンテナ11を所定順に移動させる制御を行うようになっている。例えば、これらの測定位置は、走査範囲Pにおいて正方格子の各格子点に対応する位置に配置されている。また、走査制御部30は、測定用アンテナ11が存在する測定位置の位置情報を遠方界電界強度分布算出部21に送出するようになっている。
【0059】
図1に示すように、電界強度分布測定装置1は、測定用アンテナ11により受信された測定信号のスペクトラムを解析するスペクトラムアナライザとして機能するスペクトラム解析部50を更に備えていてもよい。
【0060】
なお、
図4,5のように、参照信号発生部は送信装置100内に設けられてもよい。送信装置100に備えられた参照信号発生部42,43は、参照信号発生部16と同様に、参照信号を被測定アンテナ110に出力することにより、参照信号の周波数と等しい周波数の無線信号を被測定アンテナ110から送信させる。
【0061】
図4に示した構成では、発振器14から出力された基準信号は、送信装置100内の参照信号発生部42に入力され、送信装置100内にて参照信号を発生させる。ここで、参照信号発生部42は、参照信号発生部16と同様に、発振器14から入力される基準信号の位相に同期した無変調波の参照信号を発生させるようになっている。また、発振器14から出力された基準信号は位相差・振幅算出部20に入力され、測定用デジタル信号の位相と発振器14から出力された基準信号(参照用デジタル信号に相当)の位相との位相差と振幅が算出される。
【0062】
また、
図5に示した構成では、参照信号発生部43は、ローカル信号発生器15で発生されたローカル信号を、送信装置100内の中間周波数の信号S
IFと周波数変換させ、送信装置100内にて参照信号を発生させるようになっている。
図5の構成においても、位相差・振幅算出部20は、測定用デジタル信号の位相と、発振器14より出力された基準信号の位相との位相差を算出するようになっている。
【0063】
図4と
図5の構成では、発振器14から出力されたクロック信号を参照用デジタル信号として使用することができるため、参照用ダウンコンバータ18及びA/D変換部19を省略した構成とすることができる。この場合は、参照用デジタル信号と測定用デジタル信号との周波数が異なるため、発振器14から出力されたクロック信号と測定用デジタル信号との遅延時間を算出することにより、位相差を求めることになる。
【0064】
以下、本実施形態の電界強度分布測定装置1を用いる電界強度分布測定方法について、
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0065】
まず、参照信号発生部16が、送信装置100の被測定アンテナ110と参照用ダウンコンバータ18に無変調波の参照信号を出力する(参照信号出力ステップS1)。
【0066】
次に、送信装置100が、参照信号の周波数と等しい周波数の無線信号を被測定アンテナ110から送信する(無線信号送信ステップS2)。次に、走査制御部30は、移動装置12によって、測定用ダウンコンバータ17と一体化した測定用アンテナ11を走査範囲内の測定位置に移動させる(移動ステップS3)。
【0067】
次に、被測定アンテナ110から出力された無変調波の無線信号を、測定用アンテナ11が測定信号として受信する(信号受信ステップS4)。
【0068】
次に、測定用ダウンコンバータ17は、ステップS4で受信された測定信号を周波数変換し、参照用ダウンコンバータ18は、ステップS1で出力された参照信号を周波数変換する(周波数変換ステップS5)。
【0069】
次に、2つのA/D変換部27,19は、ステップS5で周波数変換された測定信号及び参照信号を同時にデジタイズして測定用デジタル信号及び参照用デジタル信号を生成する(A/D変換ステップS6)。
【0070】
次に、位相差・振幅算出部20は、ステップS6でデジタイズされた測定信号(測定用デジタル信号)の位相と、ステップS6でデジタイズされた参照信号(参照用デジタル信号)の位相との位相差、及び、測定用デジタル信号の振幅の算出を開始する(位相差・振幅算出ステップS7)。
【0071】
次に、制御部26は、走査範囲内の全ての測定位置に対して、位置情報、位相差情報、及び振幅情報が得られたか否かを判断する(ステップS8)。否定判断の場合にはステップS3に戻る。肯定判断の場合にはステップS9に進む。
【0072】
次に、遠方界電界強度分布算出部21は、全ての測定位置に関する、位置情報、位相差情報、及び振幅情報を用いて、遠方界の電界強度分布を算出する(遠方界電界強度分布算出ステップS9)。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る電界強度分布測定装置1は、測定用ダウンコンバータ17を測定用アンテナ11と一体化することで、測定用アンテナ11から測定信号受信部13までの間を接続するケーブル28aを伝播する無線信号の周波数を低くして、ケーブル28aのねじれや撓み等の影響を低減することができる。これにより、遠方界の電界強度分布を精度良く算出することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る電界強度分布測定装置1は、ローカル信号発生器15により発生されたローカル信号を周波数逓倍する逓倍器17aにより、ローカル信号と、測定用アンテナ11により受信された測定信号が、周波数が低い状態でケーブル28a,28bを伝播するため、測定系での位相の変化を抑制することができる。
【0075】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る電界強度分布測定装置2について図面を参照しながら説明する。第1の実施形態に係る電界強度分布測定装置1の構成と同一の構成については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0076】
本実施形態においては、電界強度分布測定装置2による電界強度分布の測定時に送信装置100の被測定アンテナ110から送信させる無線信号として、無変調波信号や広帯域信号(例えばOFDM信号)などを用いることができる。
【0077】
図7に示すように、電界強度分布測定装置2は、測定用アンテナ11、移動装置12、測定用ダウンコンバータ17、参照用アンテナ31、参照用ダウンコンバータ32、測定用受信機としての測定信号受信部33、リファレンス受信機としての参照信号受信部34、位相差・振幅算出部20、遠方界電界強度分布算出部21、表示部23、操作部24、及び制御部35を主に備える。測定用ダウンコンバータ17は、測定用アンテナ11により受信された測定信号を周波数変換するようになっている。
【0078】
参照用アンテナ31は、送信装置100の複数のアンテナ素子T1〜TNを含む被測定アンテナ110から放射された電波を近傍界において受信するアンテナであり、例えば、所定周波数範囲の電磁波を伝播させる導波路を有し、先端が開放された導波管で構成される。また、参照用アンテナ31は、送信装置100の被測定アンテナ110から送信される無線信号を参照信号として受信するようになっている。
【0079】
測定信号受信部33は、測定用A/D変換部としてのA/D変換部27、及び位相差・振幅算出処理タイミング同期手段としてのスイッチ36aを含む。
【0080】
スイッチ36aは、後述する同期用信号源38bから出力される同期信号に従って、測定用デジタル信号の位相差・振幅算出部20での位相差・振幅算出開始のタイミングを決定する。例えば、同期用信号源38bからのゲート信号にて位相差・振幅算出部20の取り込みが制御される。
【0081】
本実施形態では、参照用アンテナ31を参照用ダウンコンバータ32に直結させ、参照信号がケーブルを伝送される前に参照信号の周波数を低下させる構成としている。つまり、
図7に示すように、参照用アンテナ31のコネクタ11bには、同軸ケーブルなどの配線を介さずに、参照用周波数変換手段としての参照用ダウンコンバータ32が近接して接続される。
【0082】
参照用ダウンコンバータ32は、ケーブル28cによって後段の参照信号受信部34に接続されるとともに、ケーブル28dによって後述するローカル信号源38aに接続される。ケーブル28c,28dは、例えば同軸ケーブルからなる。参照用ダウンコンバータ32は、参照用アンテナ31により受信された参照信号を中間周波数信号に周波数変換(ダウンコンバート)して参照信号受信部34に出力するようになっている。
【0083】
参照信号受信部34は、参照用A/D変換部としてのA/D変換部37、及び位相差・振幅算出処理タイミング同期手段としてのスイッチ36bを含む。
【0084】
A/D変換部37は、参照用ダウンコンバータ32により周波数変換された参照信号をデジタイズするようになっている。具体的には、A/D変換部37は、周波数変換後の参照信号を所定のサンプリングクロックでサンプリングして、時系列のデジタルデータとしての参照用デジタル信号を生成する。スイッチ36bは、後述する同期用信号源38bから出力される同期信号に従って、参照用デジタル信号の位相差・振幅算出部20での位相差・振幅算出開始のタイミングを決定する。例えば、同期用信号源38bからのゲート信号にて位相差・振幅算出部20の取り込みが制御される。
【0085】
なお、測定用ダウンコンバータ17と一体化した測定用アンテナ11は、移動装置12によって走査範囲内で移動される。参照用ダウンコンバータ32と一体化した参照用アンテナ31は、固定されていてもよく、あるいは、移動装置12によって走査範囲内で移動されてもよい。
【0086】
さらに、電界強度分布測定装置2は、測定信号受信部33と参照信号受信部34との間で同期を取るための構成として、ローカル信号源38a(第1の実施形態のローカル信号発生器15に相当)と、同期用信号源38bと、クロック信号源38cと、リファレンス信号源39とを備える。
【0087】
周波数同期手段としてのローカル信号源38aは、測定用ダウンコンバータ17と参照用ダウンコンバータ32間で周波数同期を取るための同期信号を測定用ダウンコンバータ17及び参照用ダウンコンバータ32に出力するようになっている。これにより、測定用ダウンコンバータ17及び参照用ダウンコンバータ32の周波数変換量が同一となる。
【0088】
仮に
図8に示すように、位相差・振幅算出部20により測定用デジタル信号と参照用デジタル信号が時間差Δtを持って取り込まれた場合、演算結果に大きな誤差が含まれることとなってしまう。このような事態を避けるために、位相差・振幅算出処理タイミング同期手段としての同期用信号源38bは、位相差・振幅算出部20による位相差及び振幅の算出処理の開始及び終了のタイミングを同期するための同期信号をスイッチ36a,36bに出力するようになっている。具体的には、位相差及び振幅の算出処理の開始時には、同期用信号源38bは、スイッチ36a,36bを同時にオンにする同期の取れたゲート信号を出力する。これにより、測定用デジタル信号と参照用デジタル信号の位相差・振幅算出部20へのデータ取り込みの開始のタイミングが同期される。
【0089】
A/D変換クロック同期手段としてのクロック信号源38cは、A/D変換部27及びA/D変換部37のサンプリングクロックを同期するための同期信号をA/D変換部27,37に出力するようになっている。
【0090】
リファレンス信号源39は、ローカル信号源38aと、同期用信号源38bと、クロック信号源38cとの間で同期を取るためのリファレンス信号をローカル信号源38a、同期用信号源38b、及びクロック信号源38cに出力するようになっている。
【0091】
このようにして、測定用デジタル信号と参照用デジタル信号がA/D変換部27,37によるサンプリングクロックの同期が取れたものとなり、かつ位相差・振幅算出部20での演算開始と終了のタイミング同期が取れる。このようにして、測定用プローブとしての測定用アンテナ11が存在する測定位置における位相差(又は位相差の相対値)を高精度に算出することができ、この位相差及び振幅を用いて遠方界での電界強度分布を得ることができる。
【0092】
制御部35は、例えばCPU、ROM、RAMなどを含むマイクロコンピュータ等で構成され、電界強度分布測定装置2を構成する上記各部の動作を制御する。また、制御部35は同期用信号源38bを備えている。さらに、制御部35は、所定のプログラムを実行することにより、位相差・振幅算出部20及び遠方界電界強度分布算出部21をソフトウェア的に構成するようになっている。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係る電界強度分布測定装置2は、測定用アンテナ11を測定用ダウンコンバータ17に直結させることにより、後段のA/D変換部27に無線信号がケーブル28aで伝送される際の位相の変化を抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態に係る電界強度分布測定装置2は、
参照用アンテナ31を参照用ダウンコンバータ32に直結させることにより、後段のA/D変換部37に無線信号がケーブル28cで伝送される際の位相の変化を抑制することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る電界強度分布測定装置2においては、送信装置100の被測定アンテナ110から送信された無線信号がOFDM信号である場合には、サブキャリアごとに位相差と振幅が算出されることになる。OFDM等の広帯域信号を用いることにより、広帯域の電界強度信号を一度に測定することができ、高速化に寄与することができる。
【0096】
(第3の実施形態)
続いて、本発明の第3の実施形態に係る電界強度分布測定装置3について図面を参照しながら説明する。第1又は第2の実施形態に係る電界強度分布測定装置1,2の構成と同一の構成については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0097】
図9に示すように、電界強度分布測定装置3は、測定用アンテナ11、移動装置12、測定用ダウンコンバータ17、参照用アンテナ31、測定用受信機としての測定信号受信部33、リファレンス受信機としての参照信号受信部40、位相差・振幅算出部20、遠方界電界強度分布算出部21、表示部23、操作部24、制御部35、及びスペクトラム解析部50を主に備える。
【0098】
参照信号受信部40は、参照用周波数変換手段としてのダウンコンバータ41、参照用A/D変換部としてのA/D変換部37、及び位相差・振幅算出処理タイミング同期手段としてのスイッチ36bを含む。ダウンコンバータ41は、参照用アンテナ31により受信された参照信号を周波数変換するようになっている。
【0099】
A/D変換部37は、ダウンコンバータ41により周波数変換された参照信号をデジタイズするようになっている。なお、参照用アンテナ31は、自身のコネクタ11bに同軸ケーブルなどのケーブル28eが接続されることによりダウンコンバータ41に接続される。
【0100】
スペクトラム解析部50は、測定用アンテナ11により受信された測定信号のスペクトラムを解析するスペクトラムアナライザとして機能するものであり、スペクトラム解析部50は、ダウンコンバータ51と、周波数変換部52と、A/D変換部53と、掃引制御部54と、解析処理部55と、を備える。
【0101】
測定用アンテナ11により受信され、測定用ダウンコンバータ17によりダウンコンバートされた測定信号は、測定信号受信部33のA/D変換部27の前で分岐して、A/D変換部27と、スペクトラム解析部50のダウンコンバータ51とに入力されるようになっている。
【0102】
スペクトラム解析部50のダウンコンバータ51は、測定用ダウンコンバータ17で周波数変換された測定信号を更にダウンコンバートして、周波数変換部52に出力する。ダウンコンバータ51は、ローカル信号源38a'と接続されている。
【0103】
周波数変換部52は、例えば、局部発振器とミキサとバンドパスフィルタとを含み、掃引制御部54によって局部発振器の発振周波数が周波数掃引される構成となっている。周波数変換部52に入力された測定信号は、中間周波数信号に変換されて周波数変換部52から出力される。これにより、測定信号に対して、任意の測定周波数範囲で掃引測定することが可能となる。
【0104】
A/D変換部53は、周波数変換部52から出力された中間周波数信号を、所定のクロックでサンプリングして時系列のデジタルデータに変換するようになっている。
【0105】
解析処理部55は、A/D変換部53から出力された時系列のデジタルデータを測定周波数に対応付けて各種解析を行うようになっている。例えば、解析処理部55は、周波数、占有帯域幅、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射等の解析処理を行う。
【0106】
図9に示した電界強度分布測定装置3においては、例えば、測定用ダウンコンバータ17に接続されたローカル信号源38aを数10GHzのローカル信号源とし、スペクトラム解析部50のダウンコンバータ51のローカル信号源38a'を数GHzのローカル信号源とすることができる。この構成により、本来スペクトラム解析部に設ける高周波用のダウンコンバータをスペクトラム解析部50内に設置する必要がなくなり、測定用ダウンコンバータ17を高周波用のダウンコンバータとして測定信号受信部33とスペクトラム解析部50とで共用できる。このように構成された
図9の電界強度分布測定装置3は、測定用アンテナ11により受信された測定信号の周波数が比較的高い周波数(例えば60GHz程度)である場合に好適である。
【0107】
図10は、電界強度分布測定装置3の他の構成例を示している。
図10に示すように、測定信号受信部33のA/D変換部37によりデジタイズされた測定信号は、スペクトラム解析部50の解析処理部55に直接入力されるようになっている。
【0108】
図10に示した電界強度分布測定装置3は、送信装置100側で周波数を区切って広帯域信号を発生させている場合に適用可能な構成である。この構成では、スペクトラム解析部50内では解析処理部55による演算処理のみを行えばよく、測定用ダウンコンバータ17及びA/D変換部27を共用できる。
【0109】
なお、
図9及び
図10に示した構成においても、第2の実施形態のように、参照用アンテナ31とダウンコンバータ41とを一体化してもよい。また、測定用ダウンコンバータ17と一体化した測定用アンテナ11は、移動装置12によって走査範囲内で移動される。ダウンコンバータ41と一体化した参照用アンテナ31は、固定されていてもよく、あるいは、移動装置12によって走査範囲内で移動されてもよい。
【0110】
以上説明したように、本実施形態に係る電界強度分布測定装置3は、1台の送信装置100に対して、電界強度分布の測定と、無線信号の品質を評価するための測定とを行いたい場合に、測定のたびに被測定アンテナ110と測定システムのつなぎ替えを行う必要を無くすことができる。
【0111】
よって、本実施形態に係る電界強度分布測定装置3は、別途スペクトラムアナライザを用意することなく、電界強度分布の測定と、周波数、占有帯域幅、帯域内周波数特性、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射等の無線信号の品質を評価するための測定とを、1台の送信装置100に対して順次実行することができる。