【文献】
Martin J. Fettman et al.,Effect of dietary cysteine on blood sulfur amino acid,glutathione, and malondialdehyde concentration,American Journal of Veterinary Research,1999年,Vol.60, No.3,p.328-333
【文献】
TEETER, R.G. et al.,Methionine and Cystine Requirements of the Cat,Journal of Nutrition,1978年,p.291-295
【文献】
鳥居 邦夫 Kunio TORI,うま味の脳内機序 Intracerebral mechanism of umami taste,医学のあゆみ IGAKU NO AYUMI,三浦 裕士 医歯薬出版株式会社,1999年,第190巻13号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【0004】
したがって本発明者らは、イオウ含有酸化防止剤(特にイオウ含有アミノ酸)を含んだ食
餌組成物を与えることで、血中酸化防止剤のレベルを増大させることにより酸化的ストレ
スを減少させる、ということを発見することに成功した。
【0005】
したがって種々の実施態様において、本発明は、コンパニオンアニマルにおける血中酸
化防止剤のレベルを増大させるための方法を含む。コンパニオンアニマルは、子猫や子犬
のような幼若コンパニオンアニマルであっても、あるいはネコやイヌのような成体のコン
パニオンアニマルであってもよい。“ネコ”および“ネコ科の動物”という言葉は、本明
細書では区別なく使用されている。本発明の方法は、少なくとも1種のイオウ含有酸化防
止剤を含んだ有効量の食餌をコンパニオンアニマル(特にネコ科の動物)に与えることを含
んでよい。イオウ含有酸化防止剤は、特にイオウ含有アミノ酸であってよい。種々の実施
態様において、イオウ含有酸化防止剤は、リポ酸以外のイオウ含有酸化防止剤であってよ
い。種々の実施態様において、ネコ科の動物は幼若なネコ科動物であってよい。
【0006】
本発明はさらに、種々の実施態様において、幼若コンパニオンアニマルに与えるのに適
した食餌組成物を含んでよい。本発明の食餌組成物は、イオウ含有酸化防止剤(特にイオ
ウ含有アミノ酸)を、血中酸化防止剤のレベルを増大させる上で効果的な量にて含んでよ
い。イオウ含有酸化防止剤は、リポ酸以外のイオウ含有酸化防止剤であってよい。
【0007】
種々の実施態様において、コンパニオンアニマルはネコ科の動物であってよく、ネコ科
の動物は幼若なネコ科動物であってよい。種々の実施態様において、コンパニオンアニマ
ルはイヌであってよく、特に子犬であってよい。
【0008】
種々の実施態様において、イオウ含有酸化防止剤は、システイン、メチオニン、タウリ
ン、グルタチオン、s-アデノシルメチオニン、n-アセチルシステイン、シスタチオニン、
システイン酸、システインスルフィン酸、シスチン、メチオニンスルホン、メチオニンス
ルホキシド、ベタイン、メチオニンのメチルヒドロキシ類縁体、およびこれらの混合物を
含めたイオウ含有アミノ酸、または前記イオウ含有アミノ酸のメチルエステル(たとえば
メチオニンメチルエステル)を含んでよい。特に、ネコに関係した組成物と方法の場合、
イオウ含有酸化防止剤は、たとえば約0.8重量%〜約1.5重量%の濃度でのメチオニン;たと
えば約0.2重量%〜約0.7重量%の濃度でのシステイン;または、たとえば約1.0重量%〜約2.2
重量%の合計濃度での、システインとメチオニンとの混合物;であってよい。イヌに関係し
た組成物と方法の場合、イオウ含有酸化防止剤は、たとえば約0.3重量%〜約0.6重量%の濃
度でのメチオニン;たとえば約0.15重量%〜約0.4重量%の濃度でのシステイン;または、た
とえば約0.45重量%〜約1重量%の合計濃度での、システインとメチオニンとの混合物;であ
ってよい。
【0009】
種々の実施態様において、酸化防止剤レベルの増大は、血中タウリン濃度の増大、血中
酸素ラジカル吸収能力の増大、血中ビタミンE濃度の増大、またはこれらの組み合わせを
測定することによって示すことができる。酸化防止剤のレベルを増大させると、認知機能
の向上、脳老化の減少、DNA損傷の減少、運動からの酸化的ストレスの減少、免疫機能の
向上、糖尿病の統御の向上、心疾患の統御の向上、胃腸疾患の統御の向上、幼若動物にお
ける成長能力の増大、ネコ科の成体動物における寿命の増大、またはこれらの組み合わせ
をもたらすことができる。
【0010】
本発明は、コンパニオンアニマル(特にネコ科の動物)において血中酸化防止剤のレベル
を増大させるための組成物と方法を提供する。本発明の組成物と方法は、少なくとも1種
のイオウ含有酸化防止剤(特にイオウ含有アミノ酸)を、コンパニオンアニマルにおける血
中酸化防止剤のレベルおよび/または酸素ラジカル吸収能力を増大させる上で効果的な濃
度にて含む食餌を含んでよい。
【0011】
種々の実施態様において、本発明の組成物と方法は、あらゆる年齢のネコやイヌ等のコ
ンパニオンアニマルに対して使用することができる。子猫や子犬等の幼若コンパニオンア
ニマルは約1歳までの動物であってよく;成体の動物は、品種に応じて、約1歳〜約7歳の
ネコおよび約1歳〜約5歳のイヌであってよく;そして高齢の動物は、約7歳より多い年齢の
ネコやイヌであってよい。種々の実施態様において、本発明の組成物と方法は、生まれて
から約1歳までの幼若コンパニオンアニマル(たとえば、子猫や子犬)に対して使用するこ
とができる。
【0012】
食物の酸化防止剤またはその前駆体は、“反応性の酸素化学種や窒素化学種等の反応性
化学種が、ヒトの通常の生理学的機能に対して及ぼす悪影響を大幅に減少させる食物中の
物質”と定義することができる。(Dietary Reference Intakes of Vitamin C,Vitamin E,
Selenium,and Carotenoids, Food and Nutrition Board Institute of Medicine, ナシヨ
ナル・アカデミー・プレス,ワシントン,D.C.,2000年4月,p.42,該文献の全内容を参照によ
り本明細書に含める)
【0013】
多くの種類の酸化防止剤を自然界に見出すことができ、このような酸化防止剤の多くが
イオウ含有酸化防止剤である。理論的な作用メカニズムで拘束されるつもりはないが、た
とえばイオウ含有アミノ酸であるメチオニンは、酸化可能であるイオウを含有するだけで
なくキレート能力をもつことから、フリーラジカル捕捉作用を有すると考えられる。メチ
オニンはさらに、他の酸化防止剤化合物(たとえばシステイン)の前駆体として作用するこ
ともできる。他の例として、イオウ含有アミノ酸であるシステインも酸化可能なイオウを
含有し、このアミノ酸は、酸化防止剤であるグルタチオンの前駆体として作用することが
できる。イオウ含有酸化防止剤のさらに他の例において、スルホン基含有アミノ酸(sulfo
nic amino acid)であるタウリンは、ファゴサイトーシスのプロセスにおいて生成される
過剰の次亜塩素酸塩と反応してN-クロロタウリンを形成することによって、酸化防止剤と
して作用すると考えられる。イオウ含有酸化防止剤の特定の例としては、システイン、メ
チオニン、タウリン、グルタチオン、s-アデノシルメチオニン、n-アセチルシステイン、
シスタチオン、システイン酸、システインスルフィン酸、シスチン、メチオニンスルホン
、メチオニンスルホキシド、ベタイン、メチオニンのメチルヒドロキシ類縁体、上記のほ
かのイオウ含有アミノ酸、アミノ酸のメチルエステル(たとえばメチオニンメチルエステ
ル)、および前述の特性を示す他のイオウ含有物質を含んだイオウ含有アミノ酸、を含む
イオウ含有アミノ酸があるが、これらに限定されない。
【0014】
本発明のイオウ含有酸化防止剤またはイオウ含有アミノ酸は、天然に産する物質であっ
ても、合成物質であってもよい。種々の実施態様においては、本発明のイオウ含有酸化防
止剤はリポ酸以外の酸化防止剤を含む。
【0015】
全イオウ含有酸化防止剤は、イオウ含有アミノ酸(たとえば、メチオニン、システイン
、シスチン、ベタイン、および、メチオニンのメチルヒドロキシ類縁体)としてイヌやネ
コに与えることができる。これらのアミノ酸および他のアミノ酸は、d-異性体やl-異性体
として純粋な形で供給することもできるし、あるいはイオウ含有アミノ酸を多く含有した
物品(たとえば、家禽副産物ミール、大豆ミール、およびトウモロコシ・グルテン・ミー
ルなど)として供給することもできる。下記の表1は、メチオニン、システイン、および全
イオウ含有アミノ酸(Total Sulfur-containing Amino Acids)(TSAA)(すなわち、メチオニ
ンの濃度とシステインの濃度との合計)の許容されうるレベルを示している。
【表1】
【0016】
本発明は、哺乳類(特にコンパニオンアニマル)に対して使用するための、特にイヌやネ
コに対して使用するための、イオウ含有酸化防止剤(たとえばアミノ酸メチオニン)のレベ
ルを増大させた食物組成物を提供する。ネコやイヌの食物にイオウ含有アミノ酸を加える
と、体内の酸化防止剤のレベルが増大することがあり、幼若動物の成長促進と成体動物の
長寿化をもたらすことがあり、そして高齢の動物における加齢に関連した問題を統御する
上で役立つことがある。
【0017】
明細書と特許請求の範囲の全体にわたって使用されている“重量%”という用語は、乾
燥状態の物質を基準として算出した重量%を表わしている。
【0018】
上記の組成物と方法は、コンパニオンアニマルの酸化的状態が、酸化防止剤のレベルを
増大させることで恩恵を受ける場合〔たとえば、成長段階の幼若動物、酸化的ストレスに
関係した病状の発症に対する予防策として酸化防止剤を必要とする成体動物、および酸化
的ストレスに関係した健康問題(たとえば認識能力の低下)を既に示している老齢動物〕に
特に有用である。
【0019】
こうした追加のイオウ含有アミノ酸を含有するベースフード組成物は、コンパニオンア
ニマルに対して一般的に使用される栄養的に完全ないかなる食餌であってもよく、動物の
食餌のニーズに適っている。必要に応じて、健康上の利益をもたらすような栄養向上用の
薬剤化合物を含めて、追加の栄養素を加えることもできる。
【0020】
缶詰フードやドライフードも使用することができる。湿った状態のキャットフードやド
ッグフードは、一般には約65%以上の水分を含有する。やや湿った状態のキャットフード
やドッグフードは、一般には約20%〜約65%の水分を含有し、保湿剤、ソルビン酸カリウム
、および微生物(細菌やカビ)の増殖を防ぐための他の成分を含んでよい。乾燥状態のキャ
ットフードやドッグフード(キブル)は、一般には約10%未満の水分を含有し、その加工は
一般に、押出、乾燥、および/または加熱ベーキングを含む。
【0021】
イオウ含有アミノ酸のレベルは、当業界に公知の適切な方法によって測定することがで
きる。できるだけ高いレベルの全イオウ含有アミノ酸(メチオニンのレベルとシステイン
のレベルとの合計)を、前記アミノ酸の毒性レベルまでの量にて飼料に加えることができ
る。イオウ含有アミノ酸の毒性レベルとは、存在する他のアミノ酸のレベルとの全体的な
アンバランスを引き起こすようなアミノ酸のレベルである、と定義することができる。イ
ヌやネコに対するイオウ含有アミノ酸の毒性レベルは、当業界においてよく知られている
。たとえば、キャットフード中のメチオニンのレベルは、アメリカ飼料検査官協会によれ
ば、1.5重量%を超えてはならない。
【0022】
現在の飼料組成物中に配合されているイオウ含有アミノ酸(たとえば、メチオニン、シ
ステイン、およびこれらの混合物など)は約0.15重量%〜約2.2重量%である。イオウ含有ア
ミノ酸の適切な最小濃度としては、約0.15重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.45重量%
、約0.8重量%、約1重量%、約1.2重量%、および約1.4重量%がある。イオウ含有アミノ酸の
適切な最大濃度としては、約0.5重量%、約0.7重量%、約1重量%、約1.5重量%、および約2.
2重量%がある。本発明に対して好ましいイオウ含有アミノ酸濃度は約0.15重量%〜約1.5重
量%である。本発明を実施する上でさらに好ましいイオウ含有アミノ酸濃度は約0.3重量%
〜約1重量%である。本発明を実施する上で特に好ましいイオウ含有アミノ酸濃度は約0.3
重量%〜約0.6重量%である。
【0023】
メチオニンは、少なくとも約0.15重量%、少なくとも約0.3重量%、少なくとも約0.4重量
%、少なくとも約0.6重量%、少なくとも約0.8重量%、少なくとも約0.9重量%、少なくとも
約1重量%、少なくとも約0.1重量%、最大で約1.5重量%、またはそれ以上の濃度にて本発明
の食餌組成物中に存在してよい。システインは、少なくとも約0.15重量%、少なくとも約0
.2重量%、少なくとも約0.3重量%、少なくとも約0.4重量%、少なくとも約0.5重量%、最大
で約0.7重量%、またはそれ以上の濃度にて本発明の食餌組成物中に存在してよい。メチオ
ニンとシステインとの組み合わせ物は、少なくとも約0.3重量%、少なくとも約0.45重量%
、少なくとも約0.6重量%、少なくとも約0.8重量%、少なくとも約1.0重量%、少なくとも約
1.2重量%、少なくとも約1.4重量%、少なくとも約1.5重量%、少なくとも約1.6重量%、また
は最大で約2.2重量%のイオウ含有アミノ酸の合計濃度にて存在してよい。
【0024】
“フード(food)”という用語が使用されている場合、この用語は、コンパニオンアニマ
ルに対する栄養価の全てではないにしても一般には殆どをもたらす食品を表わしているだ
けでなく、スナック、ごちそう、および栄養補助食品等の物品も表わしている。
【0025】
本発明のフード組成物は、改良されたレベルの酸化防止剤を必要とするいかなる哺乳類
(特に、イヌやネコ等のコンパニオンアニマル)にも与えることができ、この結果、成長速
度が向上するか、あるいは加齢によって起こりうる健康問題が緩和される。
【0026】
増大したレベルのメチオニン、システイン、またはこれらの混合物を含んだ本発明の組
成物によってもたらされる恩恵が、成長段階の子猫に関する下記のデータにおいて見られ
るように、体重増加速度の増大として観察された。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
本実施例は、増量のメチオニンを含有するフード組成物が子猫の成長能力に及ぼす影響
について説明する。
【0028】
食餌メチオニンを、子猫を成長させるためのNRC(1986)概算値およびAAFCO(2001)概算値
より増やした。得られた結果から、缶詰キャットフード中のメチオニンのレベルが1.2重
量%〜1.5重量%であると、酸素ラジカル吸収能力および成長しつつある子猫の血液中のビ
タミンE濃度が改良され、したがって成長しつつある子猫における酸化防止剤状態が改良
される、ということがわかる。
【0029】
食餌メチオニンを、成長しつつある子猫に3通りのレベル(0.77重量%、1.14重量%、およ
び1.50重量%)で与えて、メチオニンが成長能力と酸化防止剤活性に及ぼす影響を調べた。
子猫に、離乳後の10週間にわたってミートベースの缶詰食餌を与えた。0.77重量%の食餌
メチオニンが与えられたネコと比較して、1.14重量%と1.50重量%の食餌メチオニンが与え
られたネコにおいては毎週の体重増加分が増大した(表2)。10週間の成長試験の最後にお
いては、より体重のある子猫においてより大きな週成長速度が得られた。これらのデータ
から、幼若子猫の成長に対しては、現在のNRC(1986)概算値より多いメチオニンが必要で
あるということがわかる。したがって、ミートベースの缶詰食餌においてはこれまで、メ
チオニンは成長のための栄養素として量が限定されていた。
【0030】
1.50重量%の食餌メチオニンを含有する食餌を与えた子猫は、0.77重量%の食餌メチオニ
ンを含有する食餌を与えた子猫と比べて、試験の第5週において、より高い血中タウリン
濃度、より高い酸素ラジカル吸収能力(ORAC)、およびより高いビタミンE濃度を有した(表
2)。第10週における全血中タウリン濃度と血清ビタミンE濃度は、1.50重量%の食餌メチオ
ニンを与えた子猫のほうが、0.77重量%の食餌メチオニンを与えた子猫より高かった。酸
素ラジカル吸収能力は、第10週において、食餌メチオニンによっては増大しなかった。
【0031】
これらのデータは、離乳直後の子猫に対して、食餌メチオニンと血中ORAC濃度および血
中ビタミンE濃度との間に関連性があることを示している。より多くの食餌メチオニンを
与えた子猫における、血清酸化防止剤レベル(ビタミンE)とフリーラジカル吸収能力(ORAC
)の増大は、食餌メチオニンと血中酸化防止剤活性との間に関係があることを明確に示し
ている。食餌メチオニンに対する反応は、試験の最初の5週時においてより大きく、試験
の最後の5週よりストレスが多かった。
【0032】
成長しつつある子猫に対し、食餌メチオニンに対するNRC(1986)概算値は0.45重量%であ
り、AAFCO(2001)概算値は0.62重量%である。下記の表2と表3に記載のデータは、酸化防止
剤状態とフリーラジカル吸収能力を改良するためには、湿潤ペットフードを与える子猫に
対するメチオニン必要量は約1.2重量%〜約1.5重量%である、ということを示している。
【表2】
【表3】