(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389250
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 75/30 20060101AFI20180903BHJP
F02B 75/28 20060101ALI20180903BHJP
F01B 7/20 20060101ALI20180903BHJP
F01B 7/04 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
F02B75/30
F02B75/28 C
F02B75/28 E
F01B7/20
F01B7/04
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-523970(P2016-523970)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公表番号】特表2016-533449(P2016-533449A)
(43)【公表日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】GB2014053103
(87)【国際公開番号】WO2015056015
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年10月11日
(31)【優先権主張番号】1318376.9
(32)【優先日】2013年10月17日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1408534.4
(32)【優先日】2014年5月14日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513295397
【氏名又は名称】コックス パワートレイン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】バックセー,クリスチャン
【審査官】
金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】
特許第089111(JP,C2)
【文献】
特許第043587(JP,C1)
【文献】
特許第020815(JP,C1)
【文献】
米国特許第01363547(US,A)
【文献】
国際公開第2012/160378(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/28−75/30
F01B 7/04− 7/12,
7/20
F01L 5/04− 5/06,
5/18− 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の対向する往復動ピストンであって、当該一対のピストンの間に燃焼室が形成されるピストンと、
個別のドライブリンクを介して前記ピストンにより駆動されるクランクシャフトとを有する内燃機関であって、
前記クランクシャフトに対して最遠側の外側ピストンは、当該外側ピストン周縁部から前記クランクシャフトに向かって延びるスカートを有し、当該スカートは、他方の内側ピストンが内部で往復動するシリンダを形成しており、
前記外側ピストンの前記スカートは、1つ以上の吸気ポートと1つ以上の排気ポートとを備え、ピストンの往復動に伴い前記燃焼室へのガスの吸入及び前記燃焼室からのガスの排出を可能にする摺動弁として機能し、
前記外側ピストンは、前記内側ピストンへの接近及び離間の往復動を行うことで、その中心軸線周りに回転運動される、内燃機関。
【請求項2】
前記外側ピストンのスカートは、前記外側ピストンと前記クランクシャフトとの間のドライブリンクの少なくとも一部として機能する、請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記内側ピストンによる前記クランクシャフトの駆動に用いられる少なくとも1つのスコッチヨークと、前記クランクシャフトに沿って間隔を開けて設けられ、前記外側ピストンによる、前記外側ピストンのスカートを介した前記クランクシャフトの駆動に用いられる少なくとも2つのスコッチヨークとを備える、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記内側ピストンによる前記クランクシャフトの駆動に用いられる少なくとも1つのクランクと、前記クランクシャフトに沿って前記内側ピストンのクランクの両側に間隔を開けて設けられ、前記外側ピストンによる前記クランクシャフトの駆動に用いられる少なくとも2つのクランクとを備える、請求項2に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記回転運動は、往復回転運動である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項6】
複数対の対向する往復動するピストンを備え、各対では、各ピストンの間に燃焼室が形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記外側ピストンの前記スカートにより形成されている前記シリンダの中心軸線上に又は当該中心軸線と平行に配置された少なくとも1つの燃料噴射器を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記燃料噴射器は、前記ピストンのうちの1つを貫通して前記シリンダの一端から突出し、前記ピストンは、前記燃料噴射器に沿って摺動して往復動する、請求項7に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関に関する。本発明は、特に、対向ピストン構成を有する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2008/149061号パンフレット(Cox Powertrain)は2気筒2ストローク直噴式内燃機関について記載している。2つのシリンダは水平に対向し、各シリンダ内には対向する往復動ピストンがあり、それらの間に燃焼室が形成される。ピストンは2つのシリンダの間の中央クランクシャフトを駆動する。各シリンダ内の内側ピストン(すなわちクランクシャフトにより近いピストン)が一対の並列のスコッチヨーク機構を介してクランクシャフトを駆動する。各シリンダの外側ピストンが、内側ピストンの2つのスコッチヨーク機構の間に入れ子状になっている第3のスコッチヨークを介して、クランクシャフトを、内側ピストンの中心を通るドライブロッドによって駆動する。ドライブロッドは中空管状形態を有し、ドライブロッド内に収容される燃料噴射器によって燃料が燃焼室に噴射される。ドライブロッドの壁は一連の周方向に離間した孔を有し、それを通じて、側方に外側に向かって燃焼室内に燃料が放出される。
【0003】
国際公開2012/160378号パンフレット(Cox Powertrain)は、国際公開第2008/149061号パンフレットに記載された内燃機関の構成を発展させたものについて記載している。この文献に記載された内燃機関では、対向するピストンの各ペアのうちの外側ピストンは、内部でピストンが往復運動するシリンダの外部にある1つのドライブリンクを介して、クランクシャフトを駆動する。これにより、燃焼室及び内側ピストンを通過するドライブロッドが必要とならず、また、燃料噴射器を、支障なく、ピストンに対して中央に(またはピストンの中央近傍に)配置することができることを意味する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、国際公開第2008/149061号パンフレット及び国際公開2012/160378号パンフレットに記載された内燃機関の構成を発展させたものである。
【0005】
本発明は、少なくとも一対の対向する往復動ピストンであって、当該一対のピストンの間に燃焼室が形成されるピストンと、個別のドライブリンクを介して前記ピストンにより駆動されるクランクシャフトとを有し、前記クランクシャフトに対して最遠側のピストン(「外側」ピストン)は、当該外側ピストン周縁部から前記クランクシャフトに向かって延びるスカートを有し、当該スカートは、他方のピストン(クランクシャフトに最も近い「内側」ピストン)が内部で往復動するシリンダを形成している、内燃機関を提供する。
【0006】
外側ピストン自体は、シリンダの内部で、又は、ピストンの動きを保ち案内するのに適合した他の支持部材の内部で、往復動することができる。
【0007】
外側ピストンのスカートは、外側ピストンとクランクシャフトとの間のドライブリンクの少なくとも一部として機能することができる。例えば、スカートの内側端部には、スコッチヨークドライブのヨーク部材を接続したり、一体的に形成することができる。スカートの内側端部を分岐させ、スカートの内側端部に直径方向に対向するアームを形成することができる。各アームは、クランクシャフトに沿って間隔を開けて配置されたそれぞれのスコッチヨークドライブのヨークに接続されたり、一体的に形成される。
【0008】
ドライブリンクの一部として外側ピストンスカートを使用することにより、国際公開2012/160378号と同様に、内側シリンダを通過するドライブロッドが必要なくなり、国際公開2008/149061号の外部ドライブリンクを伴うエンジンと同様に多くの利点を提供する。その利点は、例えば、燃焼室をより簡潔で一般的なデザインにできること、クランクケースからブローバイ通路を取り除くことができること、そして、燃料噴射器をピストンに対して中央(又はピストンの中央近傍)に、支障無く、自由に配置できることである。また、クランクシャフトを駆動するためにこのようなピストンスカートを用いることにより、国際公開2012/160378号の外側ドライブリンクが不要となる。このことは、潜在的に製造コストを低減させ、より容易に内燃機関のバランスをとらせ、内燃機関の重量及び大きさの低減を可能にする。また、この構成により、燃焼圧力によって発生する力のすべて(または実質的にすべて)が、ピストンと、そのピストンとクランクシャフトとの接続部材とを介して、直接クランクシャフトへ伝達される。より標準的な内燃機関とは異なり、クランクケースへ伝達される燃焼圧力は、殆ど無いか、全く無い。クランクケースが燃焼圧力に耐える必要が無いため、これは、翻って、クランクケースが軽量構造(例えば、一般的なクランクケースよりも薄い壁、及び/又は軽量な材料)を有することができることを意味する。
【0009】
対向するピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換するために、任意の適切なドライブリンクを使用してもよい。上記で提案されたスコッチヨーク機構が使用される実施形態もある。スコッチヨーク機構が使用される場合、内側ピストン(すなわち、クランクシャフトに最も近いピストン)がクランクシャフトを駆動できる少なくとも1つのスコッチヨークと、外側ピストンがクランクシャフトを駆動できる少なくとも1つのスコッチヨークとを、最低限有している必要がある。しかしながら、望ましくない不均衡な力が外側ピストンにかかることを避けるため、シリンダを貫通する中央ドライブロッドを不要とする一方、外側ピストンが、一対のスコッチヨークにより、クランクシャフトを駆動することがより好ましい。この一対のスコッチヨークは、外側ピストンのスカートの反対側に、直接、又は各連結部材によって接続されている。連結部材は、例えば、1又は複数のドライブロッドである。
【0010】
他の実施形態では、ドライブリンクはスコッチヨーク機構を有する必要はなく、代わりに、より一般的なクランク機構を採用してもよい。このクランク機構は、クランクシャフトに一体的に形成されたクランクを備えており、クランクシャフトは、例えば、1又は複数の連結ロッドか他の連結リンクを介しピストンによって駆動され、クランク機構は、ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する。一例では、内側ピストンは、内側ピストンに旋回可能に接続された標準的な接続ロッドを介して、クランクシャフトのクランクを駆動する。この例では、外側ピストンは、内側ピストンのクランクの両側に間隔を開けて設けられた一対のクランクを駆動する。外側ピストンは、これらクランクを、内側ピストンの内側端部に回転可能に接続された各リンクを介して駆動する。これら2つのリンクは、ピストン上で直径方向に互いに対向する。
【0011】
往復動する外側ピストンのスカート(内部で内側ピストンが往復動するシリンダとなる)は、スリーブバルブとしても機能することができる。具体的には、吸気ポート及び排気ポートをスカート内に形成することができる。これにより、外側ピストンは、これら吸排気ポートを、周囲の構造物の対応する吸排気ポート又はチャンバに、周期的に同調させる。ポートの位置、形状、及び大きさは、シリンダに所望の吸排気パターンを付与するよう構成することができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、外側ピストンは、例えばその中心(縦)軸周りに往復する態様で(すなわち、時計回りの回転と反時計回りの回転との交互で)、回転駆動される。外側ピストンのこの回転を利用して、非対称の大きな角度で、吸気孔と排気孔を開閉することができる。また、外側ピストンの回転は、外側ピストンのスカートの外壁と、外側ピストンスカートが内部で摺動する周囲の構造物との間の潤滑油膜、ならびに、外側ピストンスカートの内壁と、そのスカートの内側で摺動する内側ピストンの側壁との間の潤滑油膜の維持に役立つ。
【0013】
単気筒構成(すなわち、内側ピストンのシリンダとなる外側ピストンスカートを有する、対向して往復動する一対のピストン)も可能ではあるが、本発明の実施形態による好適なエンジンは、例えば、2つのシリンダ、4つのシリンダ、6つのシリンダ、8つのシリンダ又はそれを超える複数のシリンダ(すなわち、対向して往復動する複数対のピストン)を備える。以下では、「シリンダ」という文言は、内側ピストンのシリンダとなる外側ピストンのスカートを有し、対向して往復動する対のピストンを指すために用いられる。
【0014】
複数のシリンダが使用される場合、力の均衡、エンジン全体の形状及びサイズ等の点において種々の利点を提供しうる種々の構成が可能である。例示的な構成には、同軸対向シリンダの対(例えば、「水平対向2気筒」、「水平対向4気筒」等)、シリンダの全てが並んだ「直列」型、2つの直列するシリンダバンクが並列する「U」型(例えば「スクエア4」)、「V」型及び「W」型(すなわち「V」を構成するシリンダバンクが2つ隣接する)、及びラジアル型を含む(しかしながら、それらに限定されない)。型に応じて、複数のシリンダが、単一のクランクシャフト又は複数のクランクシャフトを駆動してもよい。通常、「水平」型、「直列」型、「V」型及びラジアル型が1つのクランクシャフトを有する一方で、「U」型及び「W」型は2つのクランクシャフト(シリンダの各バンクには1つ)を有してもよい。本発明の実施形態の中には、べベルギアボックスを介して共有出力軸を駆動する逆回転クランクシャフトを有する、2つのエンジンユニット(それぞれが1または複数のシリンダを備える)を利用できるものもある。この構成は、トルクの反動の影響が平衡するという利点を有する。
【0015】
外側ピストンスカートを外側ピストンのドライブリンクの一部として使用することで、国際公開2008/149061号パンフレットに記載の構成で使用されているような、外側ピストンのための中央ドライブロッドは要らなくなる。したがって、本発明の実施形態は、国際公開2012/160376号パンフレットに記載されているような、シリンダの中心軸線上にまたは中心軸線の近傍に配置された燃料噴射器を含むことができ、国際公開2012/160376号パンフレットの全内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0016】
国際公開2012/160376号パンフレットで説明したように、燃料噴射器は適所に固定され外側ピストンの中心を通って延び、外側ピストンは噴射器のハウジングに沿って往復動するように構成されてもよい。また、燃料噴射器は、ピストンの行程の一部又は全部で、外側ピストンと共に移動してもよい。後者の場合には、噴射器はピストンに固定されてもよい。
【0017】
噴射器は、任意の適切な継手により、エンジン構造の外側部分に固定してもよい。噴射器が、シリンダの中央と並行になるよう自己調整し、協働するピストンの耐性と熱変形とに順応することができるような継手を使用することが好ましいケースがある。例えば、オルダム継手(このタイプの継手は、噴射器が自己の軸に垂直な面内で移動することを可能とし、自己の軸に沿った移動を防止しながら所望の位置合わせを可能とする。)を使用することができる。
【0018】
ここで、本発明の実施形態を例として添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態による水平対向4気筒エンジン構成の断面図である。
【
図2】本発明の別の実施形態による単気筒の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すれば、本発明を例示するためにここで使用する実施形態は2ストローク、直噴式かつ4気筒のエンジンである。エンジンは2つの水平に対向するシリンダの対を備えて構成されている。シリンダの1つの対が、もう一方の対に並んで配置されており、「水平対向4気筒」構成を形成する。この構成は、例えば、船舶用船外エンジンとしての使用等、いくつかの用途において、エンジンに有利な全体として低背高の筐体を提供する。本発明の実施形態によるエンジンは、他の海洋用途並びに陸上用車両及び航空機用の推進ユニット又は発電ユニットとしても使用することができる。
【0021】
より詳細には、エンジン10は、中央クランクシャフト14の周りに配置された4つのシリンダ12を備えている。クランクシャフトの一方の側にあり
図1の左側の2つのシリンダは、一方の対向シリンダ対であり、
図1の右側の他の2つのシリンダは、他方の対向シリンダ対である。
【0022】
各シリンダ内には内側ピストン16及び外側ピストン18の2つのピストンがある。各シリンダ内の2つのピストンは互いに対向し、この例では180度の位相ずれで反対方向に往復運動する。
【0023】
各ピストンはクラウン20,22を有し、2つのピストンのクラウンは互いに面している。この例では、外側ピストンのクラウン22は概ね平坦であり、一方、内側ピストンのクラウン20は、全体的に涙滴形状の断面を有する、環状の窪みを有している。上死点において、ピストンクラウンが互いに最も接近する(かつほぼ接触しそうな)とき、対向するクラウン20,22は、燃料がその中へと噴射される燃焼室28(この例では、環状の燃焼室)を形成する。
【0024】
各外側ピストン18は、外側ピストンクラウン22の周縁部から延びる円筒状のスカート30を有している。このスカート30は、内部で内側ピストンが往復動し、内部へ充填空気と燃料が届けられるシリンダとなる。
【0025】
図1の右上のシリンダに示すように、それぞれのピストンのクラウンが互いに最も離れて配置され、シリンダ内の最大収容容積(「下死点」)を画定するサイクルの位置にある場合、内側ピストンのクラウンは外側ピストンの円筒形のスカートの内側端部及び外側端部のそれぞれに向かって、十分に引き寄せられて、吸気ポート及び排気ポートを開き、その位置では、外側ピストンスカートのポートは、例えばシリンダブロック内の、ピストンスカート側壁の外側の対応する吸気室及び排気室に対して、位置合わせされている。この吸気室は、シリンダからの逆流を防ぐための弁を備えていてもよい。
【0026】
サイクルの圧縮行程においてピストン16,18が互いに近づく方向に動くと、外側ピストンスカートは、吸気室及び排気室に位置合わせされた状態から外れる。外側ピストンスカートのポートの大きさと位置は、ポートの「開放」と「閉鎖」の適切なタイミングが取れるように選択することができる。排気ポートは軸方向の長さ(すなわち、シリンダの長手方向の軸線の方向における寸法)が吸気ポートよりも長いため、排気ポートは吸気ポートよりも早く開き、吸気ポートよりも長く開いたままとなり、シリンダの掃気を助ける。
【0027】
各シリンダ12には燃料噴射器34が取り付けられている。燃料噴射器34は、一端に噴射ノズル38を備える円筒形のハウジング36を有している。燃料は、従来の方法により、ノズルに圧力がかけられた状態で噴射ハウジングへ供給される。ノズル38は、噴射ハウジング36の一端から突出しており、燃料が半径方向に全体的に噴射されるように、ノズルの周囲には、均等な間隔を開けた一群の開口が設けられている。そのノズルは、ニードルバルブ(図示せず)によって、開閉が行われる。ニードルバルブが開いているとき、燃料は、圧力がかけられた状態で開口から噴射される。ニードルバルブの開閉は、従来の方法で制御することができる。使用時に、噴射ハウジングを、燃料自体又はエンジンの冷却水等の冷却液の供給により冷却してもよい(ただし、これが必要とされないケースもあるだろう)。
【0028】
燃料噴射器34は、シリンダ12の中心軸線に沿って取り付けられている。この例では、噴射器34の外側の一端はシリンダの外側端部(すなわち、クランクシャフト14と逆側のシリンダの端部)の構成要素40に固定されている。噴射器34は、外側ピストンクラウン22の中心開口部42を貫いて延び、ノズル38が突出した内側端部が、シリンダ12内の中心に配置される。より具体的には、
図1の右下のシリンダにおいて見られるように、ピストン16,18が上死点にある場合、燃料噴射器34のノズル38は、直接燃焼室28内に位置し、燃料を、ノズル38から燃焼室28内へ横方向に噴射させることができる。
【0029】
ここで示されるように噴射器が中心にある配置では、噴射器34は所定の位置に固定されており、エンジン10の動作中、外側ピストン18は噴射ハウジング36の外側に沿って移動する。外側ピストンクラウン22の開口部42の周縁部の周りに適切なシールが設けられ、ピストン18が噴射ハウジング36に沿って前後に往復運動するときに、ピストンクラウン22と噴射ハウジング36との間をシールして、シリンダ内部からの加圧ガスの漏洩を防止又は少なくとも最小限に抑えたり、燃焼室へのオイルの移入を防止したりする。
【0030】
その燃料噴射器34自体は、噴射ハウジングの外表面がピストン18と摺動可能となる構成のような従来の構造とすることができる。一般的には、燃料の噴霧は、インジェクタのノズルの周りで間隔を開けられた複数のラジアルジェットの形態をとり、単一の弁装置(1つのニードルと、そのニードルが係合して弁を閉じるシートとを備えるニードルバルブ装置)によって制御される。
【0031】
この例では、ピストン16,18はクランクシャフト14上の各々の偏心輪に取り付けられた6つのスコッチヨーク配置50を介して、クランクシャフト14を駆動する。
【0032】
対向するシリンダの各ペアでは、2つの内側ピストン16が1つのスコッチヨークを共用し、2つの外側ピストンが、内側ピストンのヨークの両側の(クランクシャフトに沿って)スコッチヨークのペアを共用している。内側ピストンは、それぞれの中央ドライブロッド52を介して、それらのスコッチヨークを駆動する。外側ピストンは、外側ピストンスカート30の内側(クランクシャフト側)の端部から延びるアーム54,56を介して、スコッチヨークを駆動する。この例では、アームはクランクシャフトに向かって外側に広がっており、それにより、外側ピストンのスコッチヨークは、クランクシャフトに沿って往復動するピストンの両側で、外側へと離間している。
【0033】
図2及び
図3は、本発明の実施形態に係るエンジンの別例の、単一のシリンダアッセンブリ110を示している。ここに示したシリンダアッセンブリは、単気筒の構成で使用でき、又は、図示された構成の複数のシリンダアッセンブリは、多気筒エンジン(例えば、水平対向「ボクサー」構成、インライン「ストレート」構成、「V」構成等で)で使用することができる。
【0034】
シリンダアッセンブリ110は、往復動してクランクシャフト114を駆動する一対の対向するピストン、すなわち、1つの内側ピストン116と1つの外側ピストン118とを備えている。
図1の例と同様に、2つのピストンのクラウンは互いに対向し、互いの間に、内部へ燃料が供給される燃焼室128を形成する。
【0035】
図1の例と同様に、外側ピストン118は、内部で内側ピストン116が往復動し、内部へ充填空気と燃料が届けられるシリンダを提供する円筒形のスカート130を有する。また、
図1の例と共通するように、スカートは、スカートの内側端部及び外側端部のそれぞれに向かって内部に形成された吸排気ポート120,122を有し、これらポートは上述と同様の態様で動作する。この例では、しかしながら、以下に記述するように、外側ピストン118は、クランクシャフトに接近したり離れたりして往復動すると共に軸周りに往復して回転するが、その回転方向は、ピストンがクランクシャフトに向かって移動するのに伴う方向と、ピストンがクランクシャフトから離れるように移動するのに伴う逆方向である。この例では、シリンダアッセンブリ110はまた、固定された円筒形のケーシング160を含んでおり、このケーシングは外側ピストン118のスカート130を囲っている。この円筒形のケーシング160は、ケーシングの内側端部及び外側端部の周りにおいて円周方向にそれぞれ間隔が空けられた複数の吸排気ポート162,164を有している。外側ピストン118が往復運動(直線及び回転の両方)することで、外側ピストンスカートのポート120,122は、ケーシング内の対応するポート162,164に周期的に位置合わせされ、燃焼室へのガスの吸入、及び、燃焼室からのガスの排出のために、ポートの開閉が制御される。
【0036】
外側ピストン及び囲みケーシングのポートの位置と大きさ、往復回転運動の度合いは、ポートが所望のパターンで開閉し、そして、シリンダが所望のパターンで吸排気するように、設計することができる。
【0037】
内側ピストンは、コネクティングロッド172を経て、中央クランク170を介して、クランクシャフト114を駆動する。コネクティングロッド172の内側端部は、従来の方法により、回転軸受によってクランク170に接続され、コネクティングロッド172の外側端部は、従来の方法により、別の回転軸受により内側ピストンクラウンの下側に接続されている。
【0038】
外側ピストンは、中央クランク170の両側に等しい間隔を開けたクランク174,176により、クランクシャフト114を駆動する。外側ピストンは、コネクティングロッドと同じように作用する各リンクアーム178を介して、これらクランク174,176を駆動する。2つのリンクアームは、直径方向に互いに対向して、外側ピストンの内側端部に回転軸受によって取り付けられている。
【0039】
外側ピストンの回転運動を可能とするために、この例では、外側ピストンは、内側端部(すなわちクランクシャフトに最も近い位置)に、環状支持体180を備えている。この支持体は、外側ピストンスカート130の内側端部で、回転軸受182となっている。この回転軸受は、スカートを、シリンダの中心軸周りに、環状支持体180に対して回転可能とする。
【0040】
この構成で、リンクアーム178は、外側ピストン118の一部である環状支持部180に取り付けられている。各リンクアーム178の外側端部184は、クランクシャフトから離間して、回転接続部を越えて環状支持部へ延びる。これにより、アーム178がクランクを駆動するために前後に移動することで、外側端部(すなわちクランクシャフトから最も離れた端部)もまた前後に(対向方向に)移動する。各アーム178の外側端部184は、ボールジョイント186によりスカート130の内側端部に接続されており、アーム178が前後に動くことで、そのアームの外側ピストン184は、環状支持体180上の軸受182上で回転運動で前後するようにスカートを駆動する。
【0041】
図2及び3の例では、また、燃料噴射器134を含み、噴射器134は、シリンダアッセンブリ110の中心軸線に沿って取り付けられ、シリンダの外端から外側ピストン118のクラウンを通って延びている。
図1の例と同様に、外側ピストン118は、燃料噴射器134に沿って往復動する。
【0042】
当業者であれば、具体的に記載した実施形態の種々の変形が本発明から逸脱することなく可能であることを理解するであろう。例えば、スコッチヨークの代わりに従来のコネクションロッドを使用することができる。2ストロークスパーク点火エンジンという文脈で示されているが、本発明の実施形態は2ストロークであっても4ストロークであってもよく、圧縮点火であってもスパーク点火であってもよいということを、当業者は理解するであろう。