(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、喫煙期間中に電子タバコ中の加熱要素によって蒸気化される基質の量を概算する方法に関する。
【0007】
この文書中では、「蒸気化」の概念は広義に解釈される。すなわち、「蒸気化」とは、基質がガスに変換されることを意味し、100℃より低い温度での変換を含む。
【0008】
本方法は、
・喫煙期間中における加熱要素の両端子間における電圧の特性の近似を測定するステップであって、該近似は、回路の両端子間において測定され、該回路のいかなるコンポーネントも、吸入によって干渉される内在的な特性を示さない、ステップと、
・喫煙期間中において吸入のないときの加熱要素の両端子間における電圧の特性の近似を概算するステップと、
・喫煙期間中における複数の該近似間の差の積分から、喫煙期間中における吸入を表す強度を計算するステップと、
・該強度から、及び、場合により他のパラメータから、該加熱要素により蒸気化される該基質の量を概算するステップと
を含む。
【0009】
これに対応して、本発明は、喫煙期間中に基質を蒸気化するのに適した加熱要素を含む電子タバコであって、
・喫煙期間中における加熱要素の両端子間における電圧の特性の近似を測定する手段であって、該近似は、回路の両端子間において測定され、該回路のいかなるコンポーネントも、吸入によって干渉される内在的な特性を示さない、手段と、
・喫煙期間中において吸入のないときの加熱要素の両端子間における電圧の特性の近似を概算する手段と、
・喫煙期間中における複数の該近似間の差の積分から、喫煙期間中における吸入を表す強度を計算する手段と、
・該強度から、及び、場合により他のパラメータから、該加熱要素により蒸気化される基質の量を概算する手段と
を含むことを特徴とする電子タバコに関する。
【0010】
したがって、全般的には、本発明は、加熱要素の両端子間における電圧の特性を、吸入のないときの該特性と比較することによって、喫煙期間中に蒸気化される基質の量を概算することを提示する。しかしながら、非常に有利には、本発明はこれらの特性を直接測定せず、吸入によって内在的な特性が干渉されない回路の両端子間における概算を測定する。
【0011】
この特に有利な特性により、本発明は、これらの吸入の強度の概算を非常に高い信頼性で行うことができ、それにより、蒸気化される基質の量の概算を大きく改善することができる。
【0012】
非常に有利には、上述の回路は、その両端子間において、加熱要素の両端子間における電圧の特性を概算するための測定が行われるが、それ自体は加熱要素を有していない。この特徴は、蒸気化される基質の量を検出するために消費される電力を制限することができるという点で有利であり、それによって、電子タバコが消費する総電力のほとんどが基質を蒸気化するために使用されるようになる。したがって、電子タバコにより蒸気化される基質の量を測定するための本発明のデバイスは、EP 2 143 346に記載されたデバイスの欠点を有していない。
【0013】
本発明の一実施形態では、蒸気化される基質の所定量は、ユーザにより吸入される成分の量又は質を概算するために使用され、例えば、ニコチンの量を概算するために使用される。
【0014】
本発明の第1の変形実施形態では、加熱要素の両端子間における電圧の変化が概算される。
【0015】
該第1変形実施形態の第1の形態では、該加熱要素の両端子間における該電圧の変化の該近似が、少なくとも2つの要素の両端子間において測定される電圧から計算され、それぞれの該要素の両端子間における該電圧が、わずかに時間のずれた複数の時刻での該加熱要素の両端子間における該電圧の近似を提供する。
【0016】
本発明の該実施形態では、本発明に係るタバコは、
・少なくとも2つの要素であって、それぞれの該要素の両端子間における該電圧が、わずかに時間のずれた複数の時刻での該加熱要素の両端子間における該電圧の近似を提供する、少なくとも2つの要素と、
・少なくとも2つの要素の両端子間において測定される電圧から該加熱要素の両端子間における該電圧の変化の該近似を測定する手段と
を含む。
【0017】
本発明は、電圧をリアルタイムで正確かつ直接に追跡する器具を用いるのではなく、電子タバコの2つの要素間の人為的な遅延デルタを作成することによって、加熱要素の両端子間における電圧の特性の経時変化を追跡することができる。この遅延により、加熱要素の両端子間における電圧の、時刻tデルタと時刻tとの間での変化の概算を、時刻tにて得ることが可能になる。
【0018】
一実施形態では、これらの要素は直列に接続された直列RC回路である。
【0019】
該第1変形実施形態の第2形態では、該加熱要素の両端子間における該電圧の変化の該近似が、該加熱要素に直列に接続された測定抵抗の両端子間において測定される電位差の時間微分である。
【0020】
本発明の第2変形実施形態では、該加熱要素の両端子間における該電圧が概算される。
【0021】
該第2変形実施形態の第1形態では、該加熱要素の両端子間における該電圧の該近似が、該加熱要素に直列に接続された測定抵抗の両端子間において測定される電圧である。
【0022】
本実施形態では、該電子タバコは、該加熱要素に直列に接続された測定抵抗の両端子間において測定される電位差を測定するのに適した手段と、該加熱要素の両端子間における該電圧の該変化の近似を、該電位差から測定する手段とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1実施形態についての詳細な説明
以下、
図1を参照して、本発明に係る電子タバコ1の第1実施形態について説明する。
図1には、本実施形態の理解に役立つ電子コンポーネントのみが示されている。
【0026】
電子タバコ1は、基質を蒸気化するのに適した加熱要素10を含んでいる。加熱要素10の抵抗値R10(t)は、加熱要素10の温度の関数として変化することができる。
【0027】
本実施形態では、加熱要素10は、グランドに接続された基準でない第1端子と、第2端子Aとを含む。これにより、該端子の電位U10は、加熱要素10の両端子間における電圧に対応する。
【0028】
本発明によれば、電子タバコ1は、電圧U0を供給するのに適したバッテリー3と、該バッテリーの端子Pに接続されたスイッチ5であって、使用者がボタン(図示しない)を押した時にのみバッテリー3から加熱要素10に電力供給するためのスイッチ5とを含む。
【0029】
ここに説明される本実施形態では、電圧U0は、約3.7Vの公称電圧及び[4.2V,0V]の範囲の放電曲線を示す。
【0030】
スイッチ5が閉位置にあるとき、該スイッチに強度iの電流が流れ、加熱要素10に強度i10の電流が流れる。
【0031】
加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の変化を測定することを可能にするため、本実施形態では、電子タバコ1は、スイッチ5の端子Qと加熱要素10の端子Aとの間に直列に配置された測定抵抗Rを備える。スイッチ5が閉位置にある時、該測定抵抗には強度iの電流が流れる。測定抵抗Rの内在的な特性は、吸入によって干渉されない。
この特定の構成によって、またスイッチ5が完全なスイッチ(すなわち、損失がなく、その結果U5=U0であるスイッチ)であるとみなすと、既知の方法により、以下が得られる。
U10(t)=U0.R10(t)/(R+R10(t)) (1)
【0032】
したがって、加熱要素10の抵抗値R10(t)の変化は、該加熱要素の両端子間における電圧U10(t)の変化を伴う。
【0033】
図2は、加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)を時間の関数として縦軸上に示す。
図2では、以下に示される時刻t1〜t4にて発生する4つのイベントが示されている:
【0034】
・t1:ボタンを押して、スイッチ5を閉じる。ゼロであった加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)は、ほぼ瞬時にバッテリー3の電圧U0に非常に近い電圧に到達する。この時刻t1から使用者が吸入をしない限り、加熱要素10の温度が限界温度に到達するまで増加し、加熱要素10の抵抗R10(t)が増加し、電圧U10(t)が増加する。
【0035】
・t2及びt3:吸入を開始及び停止する。吸入は、加熱要素10上に冷気の流れをもたらし、加熱要素10の温度の低下、加熱要素10の抵抗R10(t)の低減、及びそれによる加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の低下という効果を有する。逆に、吸入が終わると、スイッチ5が閉じたままである場合には、該加熱要素が再加熱されて、該加熱要素の両端子間における電圧が増加する。
【0036】
・t4:ボタンを放してスイッチ5を開く:加熱要素10は、バッテリー3によって電力供給されなくなり、ほぼ瞬時に、加熱要素10の両端子間の電圧U10(t)が再びゼロになる。
【0037】
この文書中では、「喫煙期間」は、時刻t1とt4との間の期間、すなわち、使用者がボタンを押してスイッチ5を閉位置に操作している期間をいう。この期間中において、使用者は、必要に応じて、吸入しないことができ、又は、1回若しくは複数回の喫煙動作(bouffee)にて吸入することができる。
【0038】
本発明の実施形態の該特定の第1形態では、喫煙期間中に蒸気化される基質の量は、喫煙期間中の加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の変化の近似の測定値ΔU10
MES(t)と、喫煙期間中の吸入のないときの電圧の該変化の該近似の理論的な概算値ΔU10
TH(t)とを比較することにより、概算される。
【0039】
より詳細には、本発明の該実施形態では、加熱要素10の両端子間における時刻tでの電圧の変化の近似として、2つの電圧U11(t)とU12(t)との差が選択される。該2つの電圧U11(t)とU12(t)との差は、2つの別々かつ同種のサブ回路11,12を備えた回路500の端子B1,B2において測定される。該回路500の両端子間における電圧U11(t)及びU12(t)は、わずかに時間のずれた2つの時刻での加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の近似である。
【0040】
回路500のコンポーネントのいずれも、吸入によって干渉される内在的な特性を有していないことが重要である。
【0041】
ここに説明される実施形態では、2つの直列サブ回路11,12が用いられる。これらの直列サブ回路11,12は、加熱要素10と、電圧U11(t)と電圧U12(t)との間の差を計算するのに適した計算手段30との間に位置している。
【0042】
ここに説明される実施形態では、電圧U11(t)及びU12(t)は、
図1に示される点B及びCの電位である。
【0043】
第2のRC回路12の時定数T12は、第1のRC回路11の時定数T11よりも非常に大きくなるように選択され、例えば、その100倍となるように選択される。
【0044】
ここに説明される実施形態では、U11(t)とU12(t)との差ΔU10(t)を増幅するために、ゲインGの増幅器20が用いられる。
【0045】
ここに説明される実施形態では、RCサブ回路11及び12の抵抗R11及びR12は、増幅器20のインピーダンスに対して無視できる。
【0046】
したがって、
ΔU10(t)=G.(U12(t)−U11(t))
ここに説明される実施形態では、
・ゲインGは、[100;10000]の範囲で選択され、例えば、500に等しく、
・差U12(t)−U11(t)は、およそ数十マイクロボルトであり、
・ΔU10(t)は、およそ数十又は数百マイクロボルトでさえあり、計算手段30により測定可能である。
【0047】
図2には、直列RCサブ回路11及び12の出力電圧U11(t)及びU12(t)もまた示されている。
【0048】
上述のように、使用者が時刻t1にてボタンを押すと、加熱要素10が電源供給されて、加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)が増加する。サブRC回路11,12の2つの静電容量C11,C12が充電されるが、第2の比較的大きい値の静電容量C12は、第1の比較的小さい値の静電容量C11に比べて遅れる。したがって、ボタンを押す(t1)と吸入を開始する(t2)との間には、U12(t)<U11(t)<U10(t)が観察される。
【0049】
使用者が時刻t2にて吸入を開始すると、加熱要素10が冷却されて、加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)が減少する。第2の比較的大きい値の静電容量C12は、第1の比較的小さい値の静電容量C11に比べて遅れる。吸入の持続時間全体にわたって、すなわちt2とt3との間には、U12(t)>U11(t)>U10(t)が観察される。
【0050】
使用者が時刻t3にて吸入を停止すると、加熱要素10が再び加熱されて、加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)が増加する。その後、U12(t)<U11(t)<U10(t)の状況に戻る。
【0051】
使用者が時刻t4にてボタンを解放するとすぐに、電圧U10(t)は再びゼロになり、静電容量C11,C12が放電されて、出力電圧U11(t),U12(t)は再びゼロになる。
【0052】
既知の方法では、キャパシタの両端子間において一定の電圧が印加される際には、キャパシタの静電容量の値に応じた充電限界に到達するまで徐々に充電されている期間である過渡状態と、該一定の電圧がキャパシタに印加され続けている限りその静電容量の充電がその充電限界に保たれている期間である定常状態とが区別される。
【0053】
図2は、使用者が定常状態にて吸入を開始する状況(時刻t2)に対応する。当業者は、過渡状態の間に使用者が吸入を開始する場合、容量の大きいキャパシタC12が完全に充電されていないため、第2のキャパシタの出力電圧U12(t)は、必ずしも第1のキャパシタの出力電圧U11(t)よりも高くならないことを理解するであろう。
【0054】
ここに説明される本実施形態では、2つのサブ回路11及び12によって形成されたシステムは、使用者がボタンを押す時刻t1の後、約800ms間の過渡状態にある。
【0055】
図3は、吸入のないときの2つのRCサブ回路11,12の出力電圧U11(t)とU12(t)との理論的な差ΔU10
TH(t)を表し、換言すれば、時刻tにおける加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の変化の理論的な近似を表しており、
図3はこれら別々の状態を示している。
【0056】
過渡状態の間、U12(t)はU11(t)よりも常に小さいが、
図2に示されるように、これら2つの電圧の差の絶対値は増加した後、定常状態にて定数値αに到達するまで減少する。
【0057】
ここに説明される本実施形態では、この定数αは無視することができ、以後ゼロであると仮定することができる。
【0058】
過渡状態では、
・R11 第1の直列RCサブ回路11の抵抗、
・C11 第1の直列RCサブ回路11の静電容量、
・R12 第2の直列RCサブ回路12の抵抗、
・C12 第2の直列RCサブ回路12の静電容量、
・T11 第1の直列RCサブ回路11の時定数R1.C1、
・T12 第2の直列RCサブ回路12の時定数R2.C2、
の符号にて、以下が理論的に得られる:
U11
TH(t)=U10(t).(1−exp(−t/T11))
U12
TH(t)=U11
TH(t).(1−exp(−t/T12))
すなわち、U12
TH(t)=U10(t).(1−exp(−t/T11)).(1−exp(−t/T12))
【0059】
したがって、加熱要素10の両端子間における電圧の理論的な変化ΔU10
TH(t)は、以下のように表される。
ΔU10
TH(t)=G.(U11
TH(t)−U12
TH(t))
すなわち、ΔU10
TH(t)=G.U10(t).(1−exp(−t/T11)).(exp(−t/T12))
又は、(1)と併せて、
ΔU10
TH(t)=G.[U0.R10(t)/(R+R10(t))].(1−exp(−t/T11)).(exp(−t/T12))
【0060】
R10(t)が喫煙期間中にて一定でR10(t1)に等しいという近似を行うことにより、以下のΔU10
TH(t)に係る式が最終的に得られる:
・過渡状態では、
ΔU10
TH(t)=G.[U0.R10(t1)/(R+R10(t1))].(1−exp(−t/T11)).(exp(−t/T12)) (2)
・定常状態では、
ΔU10
TH(t)=α=0
【0061】
図1の実施形態では、加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の変化の近似ΔU10
MES(t)は、増幅手段20の出力電圧、すなわち、端子9の電位である。
【0062】
ここに説明される実施形態では、喫煙期間中に蒸気化される基質の量は、喫煙期間中における上記差、すなわち、喫煙期間中における加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の変化の近似ΔU10
MES(t)と、喫煙期間中において吸入のないときの電圧の該変化の該近似の理論的な概算値ΔU10
TH(t)との差を積分することにより計算される吸入の強度Fから概算される。
【0063】
吸入の該強度Fは、ここに説明される実施形態の例では、
図4の斜線部に対応する。この領域は特に、時刻t2とt4との間における20ms間隔でのリーマン和により計算することができる。
【0064】
ここに説明される実施形態の例では、t2は、ΔU10
MES(t)とΔU10
TH(t)との差の絶対値が既定の閾値S
T2より大きくなる時刻として決定される。
|ΔU10
MES(t2)−ΔU10
TH(t2)|>S
T2
【0065】
時刻t4は、使用者がボタンを放す時刻である。
【0066】
リーマン法により吸入の強度Fを計算するため、ΔU10
MES(t)及びΔU10
TH(t)は、t1とt4との間の種々の時刻にて、例えば20ms毎に概算及び記憶される。この実施形態では、
1.ΔU10
MES(t)は、時刻tでの端子9の電位の測定である。
2.t1とt1+800msとの間(過渡状態)におけるΔU10
MES(t)は、実験室での予備試験中に構築された第1データベースBD1の記録から読み取られて電子タバコ1に記憶され、該記録は、等式(2)におけるパラメータの関数として選択される。
3.t1+800msとt4との間(定常状態)では、ΔU10
MES(t)=0である。
【0067】
等式(2)に戻ると、定常状態でのΔU10
TH(t)に係る式は、6つのパラメータに依存している。具体的には、該パラメータは、以下の通りである。
・増幅器20のゲインG。
・バッテリー3から供給される電圧U0。
・加熱要素の抵抗値R10(t1)。一定であると推定される。
・測定抵抗Rの値。
・RCサブ回路11及び12の時定数T11及びT12。
【0068】
ここに説明される実施形態では、
図1に戻ると、計算手段30は、バッテリー3の端子Pにおける電圧U0を、電圧プローブ6を用いて測定するのに適している。
【0069】
ここに説明される実施形態では、計算手段30はまた、加熱要素の抵抗値R10(t1)を概算するのにも適している。このため、計算手段30は、時刻t1において、電圧プローブ7を用いてスイッチ5の端子Qにおける電圧U5を、及び、電圧プローブ8を用いて加熱要素10の端子Aにおける電圧U10を測定する。
【0070】
抵抗Rを流れる電流の強度をiで示し、端子Aにてキルヒホッフの電流則を適用し、抵抗Rにオームの法則を適用することにより、i1+i10=(U5−U10)/Rが得られる。
【0071】
しかしながら、ここに説明される実施形態では、i1は、i10に対して無視できる。したがって、加熱要素10にオームの法則を適用することにより、以下が得られる:
R10=R.U10/(U5−U10) (3)
【0072】
ここに説明される実施形態では、第1のデータベースBD1は、6つのパラメータ{G,U0,R10,R,T11,T12}に対応する6つ組の複数について、吸入のないときの理論的な電圧ΔU10
TH(t)の値、及び、t1とt1+800msとの間でカウントされる種々の時刻tにおける過渡状態での理論的な電圧ΔU10
TH(t)の値を記憶する。
【0073】
そのため、該計算手段は、リーマン法により吸入の強度Fを計算することができる。
【0074】
ここに説明される実施形態では、計算手段30は、喫煙期間中に蒸気化される基質の量を、以下の4つのパラメータの関数として決定するために、電子タバコ1の第2のデータベースBD2に問い合わせる:
・喫煙期間の期間t4−t1。
・バッテリー3の電圧U0。計算手段30によって測定される。
・加熱要素10の抵抗R10(t1)。喫煙期間中にて一定であると仮定され、計算手段30により測定される。
・吸入の強度F。リーマン法によりここで計算される。
【0075】
変形例として、他のパラメータもまた使用することができ、特に、t1での加熱要素10の温度、基質の粘度、基質の蒸気化速度、加熱要素10の冷却を特徴付ける加熱要素10の伝達関数、吸入の強度Fの関数としての蒸気化された基質の液滴密度などを使用することができる。
【0076】
ここに説明される実施形態では、バッテリー3の電圧U0は、計算手段30により測定される。変形例として、該電圧は一定であり、該バッテリーの公称値に等しいとみなされ得る。
【0077】
本発明の第2実施形態についての説明
図1の実施形態では、加熱要素10の両端子間の電圧の変化ΔU10(t)を概算するために、直列である2つの直列RCサブ回路11,12と、増幅器20とが用いられている。
【0078】
変形例として、
図5に示されるように、例えば、3つのRCサブ回路と、2つの増幅器20
1,20
2とを備えた回路500を用いることができる。
【0079】
該実施形態では、
・第1のサブ回路RC(R11/C11)は、加熱要素R10の両端子間における電圧に密接に追従し、測定の時刻tにおける加熱要素R10(t)の両端子間における電圧の概算値を表す。
・第2のサブ回路RC(R12/C12)は、わずかな遅延dtを伴って加熱要素R10の両端子間における電圧に追従し、測定の時刻tに近い過去の時刻t−dtにおける加熱要素R10の両端子間における電圧R10(t−dt)の概算値を表す。
・第3のサブ回路RC(R13/C13)は、より大きな遅延Dtを伴って加熱要素R10の両端子間における電圧に追従し、測定の時刻tからさらに離れた過去の時刻t−Dtにおける加熱要素R10の両端子間における電圧R10(t−dt)の概算値を表す。
【0080】
このため、3つのRCサブ回路の時定数は、以下の式を満たすように選択される。
R11.C11<R12.C12<R13.C13;
また、より精密な追跡のため、さらに以下の式を満たすことがより適切であり得る。
(R11.C11)/(R12.C12)<(R12.C12)/(R13.C13)
【0081】
回路500のいかなるコンポーネントも、吸入によって干渉される内在的な特性を有していない。
【0082】
本実施形態では、回路500は、4つの端子B1,B2,B3及びB4を示す。
【0083】
第1の実施形態と同様に、喫煙期間中に蒸気化される基質の量は、喫煙期間中における上記差、すなわち、喫煙期間中における加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の変化の近似と、喫煙期間中において吸入のないときの電圧の該変化の該近似の理論的な概算値ΔU10
TH(t)との差を積分することにより計算される吸入の強度Fから概算される。
【0084】
しかしながら、非常に有利なことに、本実施形態では、喫煙期間中における加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の変化の2つの近似ΔU10
1MES(t)及びΔU10
2MES(t)が行われ、第1の近似は回路500の端子B1及びB2にて測定され、第2の近似は回路500の端子B3及びB4にて測定される。
【0085】
該実施形態は、加熱要素10の両端子間における電圧の変化の概算を改善することができ、これは喫煙動作の特性に関わらない。
【0086】
実際に、時定数の選択によって、
・回路500の端子B1及びB2間において測定される電圧は、特定のタイプの吸入、例えば、高速かつ/又は強い吸入や、不規則な吸入のための、加熱要素R10の両端子間における電圧を特に表していると共に、
・回路500の端子B3及びB4間において測定される電圧は、別のタイプの吸入、例えば、低速かつ/又は弱い吸入や、連続的な吸入のための、加熱要素R10の両端子間における電圧を特に表している。
【0087】
よって、該実施形態では、以下の2つの曲線ΔU10
MES(t)及びΔU10
TH(t)が構成される。
・ΔU10
MES(t)=K1 ΔU10
1MES(t)+K2 ΔU10
2MES(t)
・ΔU10
TH(t)=K1 ΔU10
1TH(t)+K2 ΔU10
2TH(t)
ここで、ΔU10
1TH(t)及びΔU10
2TH(t)は、喫煙期間中において吸入のないときの近似ΔU10
1MES(t)及びΔU10
2MES(t)の理論的な概算値である。
【0088】
よって、吸入の強度Fを計算するために、これら2つの曲線ΔU10
MES(t)及びΔU10
TH(t)の間の領域が保持される。
【0089】
係数K1及びK2は、RC回路の時定数(R11.C11,R12.C12及びR13.C13の値)の関数として定められて決定される。
【0090】
限定するものではないが、この係数の組は、以下の4つの例のうち1つに従って選択され得る。
【0092】
例2:
K1=(R11.C11+R12.C12)/(R11.C11+2.R12.C12+R13.C13)
K2=(R12.C12+R13.C13)/(R11.C11+2.R12.C12+R13.C13)
【0093】
例3:
K1=R12.C12/(R11.C11)/((R12.C12)/(R11.C11)+(R13.C13)/(R12.C12))
K2=R13.C13/(R12.C12)/((R12.C12)/(R11.C11)+(R13.C13)/(R12.C12))
【0094】
例4:
K1=(R12.C12−R11.C11)/(R13.C13−R11.C11)
K2=(R13.C13−R12.C12)/(R13.C13−R11.C11)
【0095】
適切な動作を確保するために、これらの係数は、実験室で試験/検証され得る。
【0096】
本発明の第3実施形態についての説明
図6の実施形態では、概算される加熱要素の両端子間における電圧の変化は、該電圧の変化ΔU10(t)ではなく、該電圧の値U10(t)そのものである。
【0097】
本発明の該実施形態では、該値U10(t)は、この例では測定抵抗Rにより形成される回路500の端子B1及びB2間における、電圧U5−U10を測定することにより概算される。
【0098】
具体的には、等式(3)を修正して:
U10(t)=R10/R.(U5−U10)(t) (4)
【0099】
本実施形態は、U5−U10の変化を正確に測定するために、測定抵抗Rの端子B1及びB2に接続される計算手段30を必要とする。
【0100】
図7は、以下を示す:
・喫煙期間中における加熱要素10の両端子間における電圧U10(t)の近似U10
MES(t)。該近似U10
MES(t)は等式(4)により計算され、(U5−U10)(t)の差は、点B1とB2との間において
図6の計算手段30により測定される電位の差である。
・該喫煙期間中において吸入のないときの加熱要素10の両端子間における電圧U10
TH(t)の近似の概算。
・喫煙期間中におけるU10
MES(t)とU10
TH(t)との差の積分に対応する吸入の強度F。
【0101】
本発明の第4実施形態についての説明
図8に示される第4の実施形態では、加熱要素10の両端子間の電圧の変化ΔU10
MES(t)を概算するため、第1の実施形態と同様に、回路500の端子B1及びB2間における2つの電圧U11(t)とU12(t)との差が実施される。これらの電圧はそれぞれ、わずかに時間のずれた複数の時刻での加熱要素(10)の両端子間における電圧の近似を提供する。
【0102】
本実施形態では、この遅延を発生させるために、電圧U11(t)及びU12(t)の測定点間の遅延ライン90により形成された回路500が使用される。
【0103】
該遅延ラインは、例えば、以下により形成され得る。
・大容量の静電容量。
・デジタル−アナログ変換器に接続されたアナログ−デジタル変換器。
【0104】
遅延ライン90の内在的な特性は、吸入によって干渉されない。
【0105】
本発明の第5実施形態についての説明
本発明の第4実施形態では、加熱要素10の両端子間における電圧の変化ΔU10
MES(t)は、第3実施形態と同様に、
図6の計算手段30を用いて、点B1とB2との間における測定電圧U10
MES(t)の時間微分を計算することにより概算されることもできる。
【0106】
この値は、第1実施形態と同様に、吸入のないときの加熱要素10の両端子間における電圧の理論的な変化ΔU
TH10(t)と比較することができる。
【0107】
図9は、本発明の特定の実施形態に係る、蒸気化される基質の量を概算するための方法をフローチャートの形で示す。
【0108】
該方法は、例えば、
図1の電子タバコの計算手段30により実施することができる。
【0109】
ステップE10中では、計算手段30は、ボタンが押されたことを検出する。このとき、該ボタンが押されることにより、スイッチ5が閉じられる。この検出における時刻t1は、メモリー内に記憶される。
【0110】
ステップE20中では、この検出の直後に、計算手段30は、バッテリー3から供給された電圧U0及び加熱要素の抵抗R10(t)を測定する。
【0111】
ステップE30中では、ボタンが放されたことを検出する時刻t4であって、該ボタンが放されることによりスイッチ5が開かれる時刻t4となるまで、計算手段30は、20ms毎に、
・ΔU10
MES(t)(端子9の電位)を測定し、
・第1のデータベースBD1を読み取ることによって、t1とt1+800msとの間におけるΔU10
TH(t)を概算する。t1+800msとt4との間では、計算手段30はΔU10
TH(t)=0と概算する。
【0112】
ステップE40中では、計算手段30は、喫煙動作の開始時刻t2を概算し、該時刻は、|ΔU10
MES(t2)−ΔU10
TH(t2)|>S
T2のようになるt1後の最初の時刻である。
【0113】
ステップE50中では、計算手段30は、吸入の強度Fを、t2とt4との間におけるΔU10
MES(t)とΔU10
TH(t)との差の積分として計算する。
【0114】
ステップE60中では、計算手段30は、t2とt4との間に蒸気化される基質の量を、第2のデータベースB2に問い合わせることによって概算する。