(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389267
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】臓器を位置調整するための拡張可能デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20180903BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20180903BHJP
【FI】
A61B17/02
A61M25/10
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-554609(P2016-554609)
(86)(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公表番号】特表2017-506563(P2017-506563A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】US2015018283
(87)【国際公開番号】WO2015131181
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】61/946,392
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516256168
【氏名又は名称】マニュアル・サージカル・サイエンスィズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】フォジティク,ショーン・ピー
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0082488(US,A1)
【文献】
米国特許第5558665(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 18/28
A61M 25/10
A61M 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器の内面に対して導入されるように構成される位置調整デバイスであって、
長手方向軸を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位端に配置される拡張可能要素と、を備えており、
前記拡張可能要素は、
非拡張状態では実質的に弛緩され、拡張状態では実質的に硬直し、
前記拡張状態では前記長手方向軸の周りで非対称であり、これにより、前記拡張状態の前記位置調整デバイスが前記臓器の位置を変え、
前記拡張可能要素は、
前記拡張可能要素の前記拡張状態において、前記長手方向軸から鈍角をなして離れる方向に延在する発散要素と、
前記拡張可能要素の前記拡張状態において、前記発散要素の遠位に、前記発散要素と連続して配置され、前記発散要素に対して鈍角をなすように向けられるスペーシング要素であって、その長さの少なくとも一部が前記長手方向軸に実質的に平行に向けられる、スペーシング要素と、
前記拡張可能要素の前記拡張状態において、前記スペーシング要素の遠位に、前記スペーシング要素と連続して配置され、前記スペーシング要素に対して鈍角をなすように向けられ、前記長手方向軸の方に向かって延在する、収束要素と、を含み、
前記発散要素と前記スペーシング要素の間の角度及び前記スペーシング要素と前記収束要素の間の角度を画定するように、前記発散要素と前記スペーシング要素の間及び前記スペーシング要素と前記収束要素の間に、それぞれ、角部が設けられている、位置調整デバイス。
【請求項2】
前記シャフトが、前記拡張可能要素を前記非拡張状態から前記拡張状態に移行させるように膨張媒体を前記拡張可能要素のキャビティに連通させるための穴を含む、請求項1に記載の位置調整デバイス。
【請求項3】
前記拡張可能要素の位置、向きおよび形態のうちの少なくとも1つを変えるための位置調整要素をさらに含む、請求項1に記載の位置調整デバイス。
【請求項4】
前記位置調整要素が、使用者によって制御可能なワイヤを含む、請求項3に記載の位置調整デバイス。
【請求項5】
前記拡張可能要素が、複数のチャンバを含む、請求項1に記載の位置調整デバイス。
【請求項6】
前記複数のチャンバが、
前記拡張可能要素の近位端に配置される第1のチャンバと、
前記拡張可能要素の遠位端に配置される第2のチャンバと
を含み、前記第1のチャンバが前記第2のチャンバとは別に拡張可能である、
請求項5に記載の位置調整デバイス。
【請求項7】
前記拡張可能要素が、実質的に非可撓性の材料を含む、請求項1に記載の位置調整デバイス。
【請求項8】
前記拡張可能要素が、拡張可能なメッシュを含む、請求項1に記載の位置調整デバイス。
【請求項9】
前記拡張可能なメッシュが、ステンレス鋼またはニチノールを含む、請求項8に記載の位置調整デバイス。
【請求項10】
中空臓器の内面に対して導入されるように構成される位置調整デバイスであって、
長手方向軸を有するシャフトと、
前記シャフトの遠位端に配置される拡張可能要素と、を備えており、
前記拡張可能要素は、
拡張状態にあるとき、前記長手方向軸に対して鈍角をなす角部を形成し、前記長手方向軸から離れる方向に延在する発散要素と、
前記発散要素の遠位に配置されるスペーシング要素であって、拡張状態にあるとき、前記発散要素に対して鈍角をなす角部を形成し、その長さの少なくとも一部が前記長手方向軸に実質的に平行に向けられるスペーシング要素と、
前記スペーシング要素の遠位に配置され、拡張状態にあるとき、前記スペーシング要素に対して鈍角をなす角部を形成し、前記長手方向軸の方に向かって延在する、収束要素と、を含み、
前記発散要素、前記スペーシング要素及び前記収束要素が拡張状態にあるとき、前記発散要素、前記スペーシング要素および前記収束要素の断面形状および寸法が実質的に同じであり、前記発散要素、前記スペーシング要素及び前記収束要素の長さに沿って実質的に一定である、位置調整デバイス。
【請求項11】
前記拡張可能要素が、収縮形態と膨張形態とを有する膨張可能バルーンを含む、請求項10に記載の位置調整デバイス。
【請求項12】
前記拡張可能要素が、前記収縮形態では弛緩され、前記膨張形態では実質的に硬直する、請求項11に記載の位置調整デバイス。
【請求項13】
前記発散要素、前記スペーシング要素及び前記収束要素が、別々に膨張可能なチャンバを含む、請求項11または12に記載の位置調整デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本明細書により、2014年2月28日出願の米国仮特許出願第61/946,392号、題名EXPANDABLE DEVICES FOR POSITIONING ORGANS(「’392仮出願」)の優先権の利益が主張される。’392仮出願の開示全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般的に、対象体内の臓器(例えば、中空臓器、内部体腔(internal body cavity)に近接する臓器、等)を、選択的に位置調整するまたは別のやり方で操作するためのデバイスに関する。本開示による位置調整デバイスは、食道のような中空臓器を所望のやり方で位置調整する形状の拡張可能要素を含むことができる。臓器を位置調整する方法と同様、臓器を位置調整するデバイスを含むシステムも開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示による位置調整デバイスは、中空臓器内または内部体腔内および臓器の表面近くに導入されるように構成され得る。位置調整デバイスは、シャフトと、拡張可能要素とを含むことができる。シャフトは、位置調整デバイスの長手方向軸であってよい、長手方向軸を有する。シャフトは、位置調整デバイス、より具体的にはその拡張可能要素が、対象体内に導入され、さらに位置が変えられるべきまたは別のやり方で操作されるべき中空臓器内に導入され得るようにするように構成され得る。あるいは、シャフトは、対象体内の、位置が変えられるべきまたは別のやり方で操作されるべき少なくとも1つの臓器に近接する内部腔(internal cavity)内に導入され得る。
【0004】
拡張可能要素は、シャフトの長さに沿って位置調整される。拡張可能要素は、シャフトの諸部分が拡張可能要素の近位および遠位に配置されるかたちで、シャフトの長さに沿って中間部分に配置されてよい。あるいは、拡張可能要素は、シャフトの遠位端に配置されてもよい。
【0005】
拡張可能要素は、非拡張状態と、拡張状態を有することができる。拡張可能要素の非拡張状態、すなわち折り畳まれた状態は、対象体内および中空臓器内または内部腔内への導入を容易にすることができ、さらに、中空臓器または内部腔および身体からの除去を容易にすることができる。拡張可能要素は、非拡張状態にある間、弛緩されるまたは実質的に弛緩され、したがって簡単に操作される(例えば、曲げる、所望の形状に別のやり方で合わせる、等)。
【0006】
拡張可能要素の拡張状態では、拡張可能要素は所望の形状を呈することができ、それによって位置調整デバイスが非対称構造になり得る。いくつかの実施形態では、拡張可能要素は、発散セクションと、スペーシングセクションと、適宜、収束セクションとを含むことができる。拡張可能要素の発散セクションは、拡張状態にある間、シャフトおよび位置調整デバイスの長手方向軸から少なくとも部分的に外れることができる。発散セクションの遠位に配置される、拡張可能要素のスペーシングセクションは、拡張可能要素が内部に配置される中空臓器または拡張可能要素が近くに配置される臓器の組織を動かす、伸ばす、または別のやり方で操作し、したがってその臓器の位置および/または形状を変更するように構成され得る。位置調整デバイスが収束セクションを含む実施形態では、収束セクションは、スペーシングセクションによって少なくとも一部が画成されるような、拡張可能セクションが内部にあるまたは拡張可能セクションが近くに配置されている中空臓器の部分の新しい位置および/または形状を補強することができる。いくつかの実施形態では、臓器またはその一部を動かす、形を変更するまたは別のやり方で操作する発散セクション、スペーシングセクションおよび任意の適宜の収束セクションの能力は、(例えば、(例えば、約810.6kPa(約8atm)から約1519.9kPa(約15atm)の圧力まで、等の)気体膨張要素もしくは流体膨張要素等によってもたらされる剛性である)実質的な剛性、または拡張状態にある間の拡張可能要素の剛性から生じる。
【0007】
使用において、位置調整デバイスの拡張可能要素は、非拡張状態にある間に対象体内に導入され、さらには体内の中空臓器内または内部腔内に導入され得る。いくつかの実施形態では、拡張可能要素は、中空臓器内または内部腔内の特定の場所および特定の向きに配置され得る。拡張可能要素が中空臓器内または内部腔内の所定の位置についたら、拡張可能要素は拡張され得る。拡張可能要素の拡張は、中空臓器または内部腔の一部または全体を動かす、伸ばすまたは別のやり方で操作することができる。臓器が所望のやり方で動かされるまたは別のやり方で操作される状態で、他の処置が実施され得る。これらの処置が完了した後、拡張可能要素は、その非拡張状態へと戻され、臓器の一部または全体の移動の別の操作を繰り返すこともできる。次いで、拡張可能要素は、中空臓器または内部腔から除去され、拡張可能要素および位置調整デバイスは、対象体から除去され得る。
【0008】
開示される主題の他の態様、ならびに様々な態様の特徴および利点は、当業者には、説明、添付の図面および添付の特許請求の範囲の確保を考慮することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】シャフトとシャフトの中間部分の上に配置される拡張可能要素とを含む位置調整デバイスの、拡張要素が非拡張状態にある、一実施形態の図である。
【
図2】拡張可能要素が拡張状態にある、
図1に示される位置調整デバイスの実施形態の図である。
【
図3】シャフトとシャフトの遠位部分の上に配置される拡張可能要素とを含む位置調整デバイスの、拡張可能要素が非拡張状態にある、他の実施形態の図である。
【
図4】拡張可能要素が拡張状態にある、
図3に示される位置調整デバイスの実施形態の図である。
【
図5】シャフトとシャフトの上にある拡張可能要素の他の実施形態とを含む位置調整デバイスの、拡張可能要素が非拡張状態にある、さらに他の実施形態の図である。
【
図6】拡張可能要素が非拡張状態にある、
図5に示される位置調整デバイスの実施形態の図である。
【
図7】ヒト食道内に本開示による位置調整デバイスの一実施形態を使用した放射線画像である。
【
図8】ヒト食道内に本開示による位置調整デバイスの一実施形態を使用した放射線画像である。
【
図9】ヒト食道内に本開示による位置調整デバイスの一実施形態を使用した放射線画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1、2を参照すると、図面には、本開示の教示を組み込んだ位置調整デバイス10の一実施形態が示されている。位置調整デバイス10は、中空臓器の、内部に位置調整デバイス10が配置される部分を動かすおよび/または操作するように構成され、シャフト20と、拡張可能要素30とを含む。
【0011】
位置調整デバイス10のシャフト20は、細長い要素を含み、位置調整デバイス10の長手方向軸を画成することができる長手方向軸Lを含むことができる。シャフト20は、対象体内への拡張可能要素30の導入、および、例えば体内の中空臓器内である、体内における所望の場所および所望の向きでの拡張可能要素30の配置を可能にするように構成される。シャフト20は、対象体内の曲がった経路、たとえ曲がりくねった経路でも、それに沿って動くことができるように、その内部もしくは近くにシャフトが配置される構造(例えば、臓器、等)の形状に合うことができるように、および/または拡張可能要素30の形状に少なくとも部分的に合うことができるように、十分な可撓性を有することができる。
【0012】
制限なく、シャフト20は、カテーテルを含むことができる。より詳細には、シャフト20は、ガイドワイヤの上に配置されそれに沿って対象体内に導入されるように構成され得る、オーバー・ザ・ワイヤ(OTW)カテーテルを含むことができる。さらにより詳細には、シャフト20は、約0.965ミリメートル(約0.038インチ)までの外径の60PPIから90PPIのラージブレードガイドワイヤ(large braid guide wire)上に導入されるように構成される6から9フレンチ(F)カテーテルを含むことができる。
【0013】
シャフト20は、拡張可能要素30を遠隔で拡張および縮小させることができるように構成され得る。シャフト20がカテーテルを含む実施形態では、シャフト20は、ルーメン(換言すれば、穴)を含むことができる。ルーメンによって、気体、または気体、空気もしくは液体の混合物のような膨張媒体が拡張可能要素30に導入されるおよび/または拡張可能要素30から抜き取られることが可能になる。他の実施形態では、シャフト20は、拡張可能要素30の機械的な拡張および/または縮小を可能にする1つまたは複数の要素(例えば、制御ワイヤ、等)を収容するように構成され得る。
【0014】
図1、2にそれぞれ示されるように、位置調整デバイス10の拡張可能要素30は、非拡張状態と拡張状態を有する。
図1に示される非拡張状態では、拡張可能要素30は、シャフト20の外面22上にあり、外面22を大幅に越えて延在する。
図2に示されるように、拡張状態では、拡張可能要素30は、シャフト20の外面22を越えて延在することができる。それに加えて、拡張可能要素30は、拡張されると、シャフト20および位置調整デバイス10の長手方向軸Lから外れることができる。
【0015】
図1、2によって示される実施形態では、拡張可能要素30は、その近位側から遠位側までに、発散(divergent)セクション32と、スペーシングセクション34と、収束(convergent)セクション36とを含む。発散セクション32は、中空臓器の、発散セクション32が内部にある部分を、通常の場所から外れるように、または細長い臓器(例えば、食道、大腸、尿道、等)の場合、その細長い臓器の通常経路から外れるように動かすように構成され得る。発散セクション32の遠位にあるスペーシングセクション34は、臓器の、スペーシングセクション34が内部にある部分を、特定の位置および/または特定の形状に保つように構成される。スペーシングセクション34の遠位側に近接する収束セクション36は、スペーシングセクション34の遠位側を所定位置に保持するように構成され得る。適宜、収束セクション36は、対象体内の臓器または他の構造に適応するように構成され得る。
【0016】
拡張可能要素30の様々な方向に向けられるセクション間にある様々な移行部または屈曲部(例えば、発散セクション32とスペーシングセクション34との間の移行部、スペーシングセクション34と収束セクション36との間の移行部、等)は、滑らかであり得る。1つまたは複数の移行部の滑らかさは、拡張可能要素30がその拡張状態に配置される間およびその後における外傷の可能性を減少させるまたはなくすように構成され得る(すなわち、移行部は、非外傷性であり得る)。いくつかの実施形態では、移行部または屈曲部は、湾曲部を含むことができる。他の実施形態では、移行部または屈曲部は、丸みがつけられた外側の角を含むことができる。
【0017】
位置調整デバイス10およびその拡張可能要素30がヒト食道に挿入されヒト食道を操作するように構成される、特定の一実施形態では、拡張可能要素30は、約14cmから約16cmの長さを有することができ、拡張可能要素30の長さに沿って中央に配置されるスペーシングセクション34は、約10cmの長さを有することができる。発散セクション32および収束セクション36は、スペーシングセクション34を、長手方向軸Lに実質的に平行であるがスペーシングセクション34の長手方向軸L
34が長手方向軸Lから約15mmオフセットする位置まで、横方向(
図1、2によって示される向き)に動かすように構成され得る。拡張可能要素30は、拡張状態に配置されると、約8mmから約12mmの外径を有することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、拡張可能要素30は、1つまたは複数の放射線不透過性機能40を含むことができ、それによって、臨床家は、対象体の中空臓器内における拡張可能要素30の位置、および、適宜その向きを判定することができる。他の実施形態では、拡張可能要素30は、(例えば、拡張可能要素30がメッシュを含む実施形態等では)放射線不透過性材料を含むことができる。
【0019】
本明細書において先に示唆されるように、拡張可能要素30は、気体、または気体、空気もしくは液体の混合物等の膨張媒体により膨張されるように構成され得る。膨張するように構成される拡張可能要素30は、シャフト20に対してシールされる端31
P、31
Dを含むことができる。膨張可能な拡張可能要素30を含む位置調整デバイス10のシャフト20は、膨張/収縮ルーメン24を含むことができる。ルーメン24は、拡張可能要素30の内側と連通し、したがって、シャフト20の膨張/収縮ルーメン24からシャフト20の外側へとシャフト20の壁を貫通して延在する1つまたは複数の開口部(図示せず)によって、膨張媒体を拡張可能要素30に導入する、およびそこから除去する。
【0020】
図1、2に示されるように、膨張可能な拡張可能要素30は、所望のやり方で形作られ得る。膨張可能要素30は、断面的に、円形、楕円形もしくは先細形状を有する、または拡張可能要素30の拡張の間およびその後で外傷をわずかしか引き起こさないもしくはまったく引き起こさないあらゆる他の形状を有することができる。したがって、拡張可能要素30は、所望通りに形作ることが可能な材料から形成され得る。制限なく、膨張可能な拡張可能要素30の材料は、成形可能、熱もしくは超音波による溶接可能、または別のやり方で所望の形状に形成可能であってよい。さらに、拡張可能要素30が形成される材料は、拡張可能要素30がその拡張状態にあるとき、可撓性(compliant)、半可撓性または実質的に非可撓性であってよい。拡張可能要素30として使用される適当な材料の例は、それらに限定されるわけではないが、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリウレタンを含む。
【0021】
本明細書において先に示されるように、拡張可能要素30の膨張可能な実施形態を拡張するのに適当な媒体は、気体、気体混合物および空気を含む。あるいは、膨張可能な拡張可能要素30の膨張に使用される媒体は、食塩水を含むこともできる。いくつかの実施形態では、食塩水は、バリウムまたはバリウム塩等のX線不透過性の材料を含むこともできる。
【0022】
膨張可能な拡張可能要素の代替として、拡張可能要素30は、シャフト20の少なくとも一部を囲繞する成形メッシュから形成されてもよい。非限定的に、成形メッシュは、ステンレス鋼、ニチノールまたは任意の他の適当な材料から形成され得る。メッシュは、拡張可能要素30が非拡張状態にあるとき、拡張可能要素30がシャフト20上に位置することができるように、シャフト20の形状および寸法に実質的に合うように(例えば、焼きなまし、等)形成され得る。メッシュは、拡張状態にされたときに、拡張可能要素30に所定の形状および寸法を与えるように形成されてもよい。
【0023】
成形メッシュから形成されるまたは別のやり方で成形メッシュを含む拡張可能要素30は、成形メッシュに張力をもたらしてそれを拡張し、その張力が解放されるまたは弛緩されると成形メッシュが折り畳まれるようにする、1つまたは複数の要素のような任意の適当な既知の拡張手段によって機械的に拡張され得る。非限定的な一例として、拡張可能要素は、拡張可能要素30を機械的に拡張するおよび折り畳むように構成される1つまたは複数の制御ワイヤ26を含むことができる。各制御ワイヤ26は、シャフト20のルーメン24の中に延在することができシャフト20の近位端またはその付近から作動され得る(すなわち引っ張られるおよび/または押される)、いくらか剛性を有する要素を含むことができる。位置調整デバイス10が対象体内に導入されるとき、各制御ワイヤ26は、拡張可能要素30をシャフト20の周りまたはその近くにおいて非拡張状態のまま維持する位置まで前方に押され得る。拡張可能要素30が中空臓器内の適切な場所についたら、1つまたは複数の制御ワイヤ26が、拡張可能要素30の1つまたは複数のセクションを所望の程度に拡張するように引っ張られ得る。位置調整デバイス10の使用がもはや必要なくなったら(例えば、それ以上中空臓器の向きを変えるまたは形を変更する必要がなくなったとき、等)、各制御ワイヤ26は、押され、それによって拡張可能要素がその非拡張状態へと折り畳まれ、それによって中空臓器からの拡張可能要素30および位置調整デバイス10の残りの部分の除去が容易になる。
【0024】
拡張可能要素30のいくつかの実施形態は、個別にまたは別々に膨張可能なセクションを含むことができる(例えば、発散セクション32、スペーシングセクション34、収束セクション36等が、互いに対して独立して膨張収縮されるように構成され得る)。拡張可能要素30のセクション32、34、36が個別に膨張可能な実施形態では、各セクション32、34、36は、シャフト20の少なくとも一部を形成するカテーテルの個別の膨張/収縮ルーメン24に連通することができる。他の実施形態では、セクション32、34、36は、専用アクチュエータ(例えば、引張ワイヤ、等)によって個別に拡張可能および/または縮小可能であってよい。
【0025】
別々に拡張可能なセクション32、34、36を含む拡張可能要素30は、臨床家が、拡張可能要素30を2つ以上のシーケンスで選択的に拡張することができるようにする。一例として、
図1、2を引き続き参照すると、スペーシングセクション34がまず拡張され、それによってスペーシングセクション34が中空臓器内の空間を占めるようになる。スペーシングセクション34が少なくとも部分的に拡張された後、発散セクション32および収束セクション36の一方または両方が拡張され、スペーシングセクション34およびスペーシングセクション34が内部にある中空臓器の部分が動かされる。そうした構成は、制限なく、中空臓器がその元の場所からそらされるまたは別のやり方で動かされる距離を含む、中空臓器の一部または全体が操作されるやり方の制御を向上させることができる。
【0026】
次に、
図3、4に移ると、
図1、2に示される拡張可能要素30の実施形態に類似する、拡張可能要素30’を含む位置調整デバイス10’の一実施形態が示されている。しかしながら、位置調整デバイス10’のシャフト20’は、ガイドワイヤの必要なくして、対象体内または対象体の中空臓器内に導入されるように構成される。したがって、シャフト20’は、ガイドワイヤを収容するルーメン22がなくてよいが(
図1、2)、(例えば、膨張/収縮によって、または制御ワイヤもしくは他の制御機構によって、等)拡張可能要素30’の拡張および/または縮小を可能にする1つまたは複数のルーメン24’を含むことができる。したがって、位置調整デバイス10’のシャフト20’は、ガイドワイヤを受けるルーメンがなくてよい(しかし、それは、拡張可能要素30もしくはその諸セクションを膨張/収縮させるための1つもしくは複数のルーメン24、または制御ワイヤ26を収容するための1つもしくは複数のルーメン24、または拡張可能要素30もしくはその諸セクションを拡張縮小する他の要素を含むことができる)。
【0027】
次に、
図5、6を参照すると、図面には、位置調整デバイス10’’のさらに他の実施形態が示されている。位置調整デバイス10’’は、発散セクション32’’とスペーシングセクション34’’とを含むが、収束セクション36(
図1、2)がない、拡張可能要素30’’の一実施形態を含む。
【0028】
使用において、
図7から9に示されるように、本開示による位置調整デバイス10(または、位置調整デバイスの任意の他の実施形態)は、拡張可能要素30が非拡張状態で(例えば、
図7参照)対象体に挿入され、対象体内の所望の場所(例えば、中空臓器、例えば食道E、大腸および尿道等である長い臓器、または空洞、等)に導入され得る。対象体内における拡張可能要素30の特定の場所、および、適宜、特定の向きは、任意の適当な技術(例えば、放射線写真法、等)によって挿入の間またはその後に判定可能である。必要なら、拡張可能要素30の位置および/または向きは、それが所望の場所につくまたは所望の向きになるまで、調節されてよい。
【0029】
拡張可能要素30は、それが対象体内において適切な場所にある状態で、身体、例えば拡張要素30が内部にある臓器または拡張要素が内部にある空洞に近接する(例えば、食道E、等の)臓器を操作するように、
図8に示されるように拡張され得る。拡張可能要素30が拡張されるやり方(例えば、セクション32、34、36が拡張される順序、拡張可能要素30またはそのセクション32、34、36のうちの1つまたは複数が拡張される程度、等)は、制御可能である。制限なく、拡張可能要素30は、外傷を最低限に抑えるやり方、拡張可能要素30が内部にある臓器を所望通りに動かすまたは形を変えるやり方等のやり方で拡張され得る。いくつかの実施形態では、拡張可能要素30の拡張は、拡張のやり方および/または程度が、1つまたは複数の所望の結果(例えば、外傷の最小化、所望の程度までの変形および/または移動、所望の程度までの変形および/または移動、等)をもたらしたことを確認するために(例えば、放射線写真法等によって)視覚化され得る。拡張可能要素30、および、それが拡張状態に配置されるやり方は、拡張可能要素30の近位および遠位にある長い中空臓器の諸部分を最小限にしか動かさないまたは一切動かさずに、すなわち長い中空臓器を広げることなく、その長い中空臓器の一部を動かすまたは別のやり方で操作するように構成され得る。
【0030】
図9は、
図7に示される(非拡張の)拡張可能要素30の向きと、
図8に示される(拡張された)拡張可能要素30の向きとの間で達成される動きを示している。
図7から
図9に示される実施形態では、食道E(
図7、8)は、食道Eが心臓の左心房に近接する第1の位置E
1から、第1の位置E
1から約32mm離れ心臓の左心房から間隔が置かれる第2の位置E
2まで動かされる。
【0031】
拡張可能要素30が臓器を操作された状態で保持する状態で、他の処置がもたらされ得る。非限定的な一例として、拡張可能要素30は、左心房焼灼処置の間、食道の適当な部分を、心臓の左心房から遠ざけるように偏向することができる。他の非限定的な例として、拡張可能要素30は、前立腺の生研または外科手術の間、大腸または尿道の適当な部分を、前立腺から遠ざけるように偏向することができる。
【0032】
外科手術が完了したら、または臓器の操作がそれ以上必要なくなったら、拡張可能要素30は、位置調整デバイス10のシャフト20の周りに折り畳まれ得る。次いで、拡張可能要素30および位置調整デバイス10の残りの部分は、対象体から除去され得る。
【0033】
前述した開示は、多くの詳述をもたらすが、それらは、特許請求の範囲の保証の範囲を限定するものとしてみなされるべきではない。他の実施形態は、特許請求の範囲から逸脱することなく案出され得る。異なる実施形態からの機能を組み合わせて用いることもできる。したがって、各請求項の範囲は、その平易な用語、およびその要素の利用可能な法的な均等物の全範囲によってのみ指示され制限される。