特許第6389370号(P6389370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389370
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】魚釣用スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   A01K89/01 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-69468(P2014-69468)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-188409(P2015-188409A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年9月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 わたる
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−262729(JP,A)
【文献】 特開2013−226109(JP,A)
【文献】 米国特許第06857588(US,B1)
【文献】 特開2012−44945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00−89/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、前記リール本体の後部に設けられたカバー装着部と、前記カバー装着部に装着され前記リール本体の後部を覆うカバー部材と、を備えた魚釣用スピニングリールであって、
前記カバー部材は、
前記カバー装着部に後方から当て付けられる第1当て付け部と、前記カバー装着部に左右両側方から当て付けられる第2当て付け部と、を備えており、
前記第1当て付け部および前記第2当て付け部を介して前記カバー装着部に前記カバー部材が装着された状態で、ハンドル軸の軸方向から視て、前記カバー部材の左右側縁部の上下方向の全体が前記カバー装着部に被さっており、かつ、前記リール本体の左右側面における前記カバー装着部の境界部分と前記カバー部材の左右側縁部との間には、溝状の隙間部が形成されており、
前記第2当て付け部には、左右一対の段部が設けられており、
前記左右一対の段部は、前記カバー装着部の左右の縁部をなす角部に対して左右両側方から当て付けられることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
【請求項2】
前記第1当て付け部は、前記カバー部材の上下方向の少なくとも2箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項3】
前記第2当て付け部は、前記カバー部材の上下方向の略中間部分に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の魚釣用スピニングリール。
【請求項4】
前記カバー部材の左右側縁部は、面取りされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の魚釣用スピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用スピニングリールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、リール本体の後部を保護する目的で、リール本体の後部をカバー部材で覆った魚釣用スピニングリールが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の魚釣用スピニングリールでは、リール本体の後部に設けられたカバー装着部にカバー部材が装着されている。リール本体の下部には、フック状の係合部が設けられており、この係合部にカバー部材の前端部が支持されるように構成されている。カバー部材には、係合部との接触でカバー部材をリール本体の境界部分に偏倚させる案内面が形成されている。
【0003】
この魚釣用スピニングリールでは、カバー部材を固定する際に、カバー部材の前端部を係合部に係合させてねじで締め付ける。そうすると、案内面が係合部に押されて、カバー部がリール本体の左右側面におけるカバー装着部の境界部分に向けて偏倚する。これによって、カバー部材の側縁部がリール本体の境界部分に近付き、側縁部と境界部分との間隙が低減された状態でカバー部材がリール本体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−13471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の魚釣用スピニングリールでは、カバー部材の側縁部の大部分が境界部分(リール本体)に沿ってリール本体に合わさる構造であるため、境界部分に対してカバー部材の側縁部を精度よく突き合わせることが難しかった。このため、突き合わせ部分に段差や隙間が生じ易く、リール本体に対してカバー部材がガタつくおそれがあった。
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、カバー部材をリール本体にガタつきなく装着することができる魚釣用スピニングリールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明の魚釣用スピニングリールは、リール本体と、前記リール本体の後部に設けられたカバー装着部と、前記カバー装着部に装着され前記リール本体の後部を覆うカバー部材と、を備えた魚釣用スピニングリールであって、前記カバー部材は、前記カバー装着部に後方から当て付けられる第1当て付け部と、前記カバー装着部に左右両側方から当て付けられる第2当て付け部と、を備えており、前記第1当て付け部および前記第2当て付け部を介して前記カバー装着部に前記カバー部材が装着された状態で、ハンドル軸の軸方向から視て、前記カバー部材の左右側縁部の上下方向の全体が前記カバー装着部に被さっており、かつ、前記リール本体の左右側面における前記カバー装着部の境界部分と前記カバー部材の左右側縁部との間には、溝状の隙間部が形成されており、前記第2当て付け部には、左右一対の段部が設けられており、前記左右一対の段部は、前記カバー装着部の左右の縁部をなす角部に対して左右両側方から当て付けられることを特徴とする。
【0008】
この魚釣用スピニングリールによれば、カバー部材は、第1当て付け部および第2当て付け部によって、リール本体の後部に2つの方向から当て付けられて位置決めされる。そして、カバー部材は、カバー装着部の境界部分に対してカバー部材の左右側縁部が溝状の隙間部を空けた状態で装着される。
【0009】
また、本発明は、「前記第1当て付け部は、前記カバー部材の上下方向の少なくとも2箇所に設けられている」ことを特徴とする。
【0010】
この魚釣用スピニングリールによれば、カバー部材の上下方向の少なくとも2箇所をカバー装着部に後方から当て付けて装着することができる。
【0011】
また、本発明は、「前記第2当て付け部は、前記カバー部材の上下方向の略中間部分に設けられている」ことを特徴とする。
【0012】
この魚釣用スピニングリールによれば、カバー部材の上下方向の略中間部分をカバー装着部に左右両側方から当て付けて装着することができる。
【0013】
また、本発明は、「前記カバー部材の左右側縁部は、面取りされている」ことを特徴とする。
【0014】
この魚釣用スピニングリールによれば、カバー部材に釣糸が接触した際の糸絡みのリスクを低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1当て付け部および第2当て付け部をカバー装着部に当て付けることでカバー部材が位置決めされるので、カバー部材の組付性に優れる。
また、カバー部材は、リール本体の後部に2つの方向から当て付けられて位置決めされるので、ガタつきが好適に抑制された状態でリール本体に装着される。
さらに、カバー装着部の境界部分に対してカバー部材の左右側縁部が溝状の隙間部を空けた状態で装着されるので、境界部分に対してカバー部材の左右側縁部が突き合わされることがない。したがって、カバー部材をリール本体にガタつきなく装着することができる。
【0016】
また、第1当て付け部によって、カバー部材の上下方向の少なくとも2箇所をカバー装着部に位置決めすることができるので、安定した状態でカバー部材を装着することができる。
【0017】
また、第2当て付け部によって、カバー部材の上下方向の略中間部分をカバー装着部に左右両側方から当て付けて装着することができるので、左右方向のガタつきを好適に抑えつつ、安定した状態でカバー部材を装着することができる。
【0018】
また、カバー部材の左右側縁部の面取りによって、カバー部材に釣糸が接触した際の糸絡みのリスクを低減することができるので、糸絡みによる操作のロスを低減することができる。したがって、魚釣操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す図である。
図2】リール本体の後部の構造を示す構造図である、
図3】(a)はリール本体の後部からカバー部材を取り外した状態を示す側面図、(b)は同じくリール本体の後部にカバー部材を装着した状態を示す側面図である。
図4】(a)はリール本体の後部からカバー部材を取り外した状態を示す後面図、(b)は同じくリール本体の後部にカバー部材を装着した状態を示す後面図である。
図5】カバー部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は後面図、(d)は下面図である。
図6】(a)はカバー部材の装着状態を断面で示した説明図、(b)はカバー部材の縦断面図である。
図7】(a)は図6(a)のA−A線拡大断面図、(b)は図6(a)のB−B線拡大断面図である。
図8】(a)は図6(a)のC−C線拡大断面図、(b)は図6(a)のD−D線断面図である。
図9】(a)は図6(a)のE−E線拡大断面図、(b)は図6(a)のF−F線断面図、(c)は図6(a)のG−G線断面図である。
図10】カバー部材の変形例を示すリール本体の後部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る魚釣用スピニングリールの実施形態について図面を参照して説明する。実施形態において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の説明において、「前後」「上下」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。また、図3図4図6(a)において、ハンドル軸およびその支持構造は省略している。
【0021】
図1に示すように、主として、魚釣用スピニングリールは、リール本体1と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ3と、このロータ3の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール4とを有している。リール本体1の後部には、リール本体1の下端から後端に亘って広く覆うように、所定の肉厚を有するカバー部材10が取り付けられている。
【0022】
リール本体1は、軽量化が図れる材料、例えば、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金等の金属や、ABS樹脂、PA樹脂等の高強度樹脂や、CFRP、GFRP等の繊維強化樹脂等で剛性構造に形成されている。リール本体1には、必要に応じて、その表面に外観を向上するための装飾層が施されている。リール本体1は、一側に開口する内部空間SP(図2参照)が形成されるリールボディ1aと、この内部空間SPを閉じる蓋体1bとを有している。
【0023】
リールボディ1aには、上方へ延出する脚部1cが設けられている。脚部1cの先端部(上端部)には、図示しない釣竿に固定される竿取付部1dが前後一体に形成されている。
蓋体1bは、リールボディ1aの開口端に配置された適宜の位置決め部材を介して正確に位置決めされる。本実施形態では、3本のねじ1e(図1参照)を締付けることにより蓋体1bがリールボディ1aに固定される。リールボディ1aおよび蓋体1bには、図示しない軸受部材がそれぞれ配置されており、これらの軸受部材を介してハンドル軸2a(図2参照)が回転可能に支持されている。ハンドル軸2aの突出端部には、ハンドル2が取り付けられている。
【0024】
内部空間SP内には、図2に示すように、ハンドル軸2aに一体的に形成されたドライブギヤ2bが配置されている。ドライブギヤ2bにより、図示しない巻取駆動機構のピニオンギヤを介してロータ3が回転駆動される。また、これに同期して、スプール往復動装置を構成している連動歯車5aが回転され、この連動歯車5aの偏心位置に設けたピン(図示しない)が摺動体5bのカム溝(図示しない)内を移動しつつ摺動体5bおよびスプール軸5を往復動する。このスプール軸5は、リールボディ1aに一体的に形成されて内部空間SP内に配置される支持部材5c,5dで案内されつつ、先端に配置したスプール4(図1参照)とともに前後動する。各部材は、剛性構造のリールボディ1aおよび蓋体1bにより、滑らかな動作が確保される。
【0025】
このような魚釣用スピニングリールにおいて、ハンドル2を回転操作すると、ハンドル軸2aが回転され、スプール往復動装置を介してスプール4が前後に往復動するとともに、巻取駆動機構を介してロータ3が回転駆動される。これにより、スプール4の巻回胴部4aには、釣糸案内部を介して、釣糸が均等に巻回される。ハンドル2は、図に示す左側位置から、必要に応じて反対側に付け替えることができる。
【0026】
リール本体1の後部には、図3(a)に示すように、カバー装着部20が設けられている。カバー装着部20には、図3(b)に示すように、カバー部材10が着脱可能に取り付けられる。
カバー部材10は、全体的に略L字形状を呈している。カバー部材10は、リール本体1の後部下部に装着される基部11と、基部11の後端からリール本体1の後端部に沿って斜め前方上方へ延在する立上り部12と、を備えている。カバー部材10は、基部11に設けられたねじ孔110(図2参照)を介して挿通される止めねじ111(図2参照)により、カバー装着部20に取り付けられる。
【0027】
基部11は、図3(a)(b)に示すように、リール本体1の後部下面の前後方向に沿って下方へ湾曲している。また、基部11は、図5各図に示すように、扁平に形成されている。図3(a)(b)に示すように、基部11の前端部10bは、カバー装着部20の下部前壁22(図3(a)参照)に対応する形状とされており、カバー部材10の装着時に下部前壁22に対して後方(後方斜め下方)から当て付けられるようになっている。前端部10bには、前方斜め上方へ向けて突出する係合突起10cが形成されている。係合突起10cは、図2に示すように、下部前壁22(図3(a)参照)に設けられた係合穴22aに係合可能である。
【0028】
基部11の後端部には、図2図4(b)、図5(a)(c)(d)に示すように、ねじ孔110が形成されている。ねじ孔110は、図2に示すように、カバー部材10の装着時に、カバー装着部20に設けられた有底円筒状のボス部23に対して外嵌される(図7(b)参照)。ねじ孔110の口縁には、ボス部23に螺着される止めねじ111の頭部が当接され、止めねじ111を締め付けることによって、カバー部材10がカバー装着部20に固定される。ねじ孔110の口縁部は、ネジ111の頭部が基部11の外面から突出しない深さに形成されている。
【0029】
基部11の内面には、図5(a)、図8(a)に示すように、一対のリブ11c3,11c3が突設されている。リブ11c3は、基部11の前後方向に沿って延在しており、図6(a)、図8(a)に示すように、カバー装着部20の下面1fに対向配置される。
なお、リブ11c3は、下面1fに対して当接するように設けてもよいし、下面1fに対して当接することなく若干の間隙を有して配置されるようにしてもよい。また、リブ11c3は、下面1fに対して部分的に当接するように設けてもよい。
【0030】
基部11の左右側縁部11c2,11c2は、図3(b)、図8(a)に示すように、カバー装着部20の境界部分20b(段差部分)との間に溝状の隙間部S2を介してそれぞれ対向配置される。つまり、カバー装着部20にカバー部材10を装着した状態で、左右側縁部11c2,11c2が境界部分20bにそれぞれ当接しないようになっている。
【0031】
立上り部12は、図3(a)(b)、図5(b)に示すように、外方に突出した弧を画くように上下方向に沿って外方に湾曲している。立上り部12は、上部12aと下部12bとからなる。
上部12aは、脚部1cに連続してカバー装着部20を覆う部分である。上部12aは、図5(c)に示すように、後方から見て、左右側部12a1,12a1が立上り部12の中間部分に近づくにつれて左右方向(ハンドル軸2a方向)に広がり、その後、幅狭部12c,12cで左右方向に狭まる形状とされている。幅狭部12c,12cは、カバー装着部20にカバー部材10を装着する際に指で摘む部分となる摘み部(把持部)として機能する。
【0032】
上部12aの上端部10aは、カバー装着部20の上部壁21(図3(a)、図6(a)参照)に対応する形状とされており、カバー部材10の装着時に上部壁21に対して後方(後方斜め下方)から当て付けられるようになっている。上端部10aの内側には、図5(a)、図6(b)に示すように、立上り部12の長手方向に沿う凹溝10eが形成されている。凹溝10eは、図6(a)に示すように、カバー装着部20の上部壁21の近傍に設けられた突状部1hに係合可能である。
【0033】
上部12aは、図9(b)(c)に示すように、断面略三角形状を呈している。上部12aの内面には、図5(a)、図9(b)(c)に示すように、一対のリブ12a3,12a3と、この一対のリブ12a3,12a3に連続するリブ12a5,12a5とが突設されている。リブ12a3およびリブ12a5は、上部12aの延在方向に沿って設けられており、カバー装着部20の上部後面1gに対向配置される。
なお、リブ12a3およびリブ12a5は、上部後面1gに対して当接するように設けてもよいし、上部後面1gに対して当接することなく若干の間隙を有して配置されるようにしてもよい。また、リブ12a3およびリブ12a5は、上部後面1gに対して部分的に当接するように設けてもよい。
【0034】
上部12aの左右側縁部12a2,12a2は、図3(b)、図9(b)(c)に示すように、カバー装着部20の境界部分20a(段差部分)との間に溝状の隙間部S1を介してそれぞれ対向配置される。つまり、カバー装着部20にカバー部材10を装着した状態で、左右側縁部12a2,12a2が境界部分20aにそれぞれ当接しないようになっている。また、カバー部材10の左右側部12a1,12a1は、図3(b)に示すように、幅狭部12c,12cを介して、下部12bの左右側部12b1,12b1に連続している。
なお、図5(a)、図9(b)に示すように、リブ12a3,12a3と左右側縁部12a2,12a2との間には、内側リブ12a4,12a4が設けられている。内側リブ12a4,12a4は、図9(b)に示すように、境界部分20aに通じる傾斜部20a1,20a1に対向配置される。
ここで、カバー装着部20の上部後面1gは、図3(a)に示すように、カバー装着部20に凹設されており、下部12bが装着される下部後面1f1より前方に位置している。
また、上部後面1gは、図3(a)に示すように、中間壁24を介して下部後面1f1に連続している。中間壁24は、図3(b)に示すように、左右両側(図では左側のみ図示)から幅狭部12c,12cで覆われる。
【0035】
下部12bは、上部12aに連続してカバー装着部20を覆う部分である。下部12bは、図5(c)に示すように、後方から見て、左右側部12b1,12b1が左右側方に緩やかに膨出するように湾曲している。
下部12bの下端部は、図5(b)に示すように、基部11の後端部に連続しており、また、下部12bの左右側部12b1,12b1は、図5(c)に示すように、基部11の左右側部11c1,11c1に連続している。
【0036】
下部12bの内面には、図5(a)、図7(a)、図8(b)に示すように、一対のリブ12b3,12b3が突設されている。リブ12b3は、下部12bの延在方向に沿って設けられており、図6(a)に示すように、カバー装着部20の下部後面1f1に対向配置される。
なお、リブ12b3は、下部後面1f1に対して当接するように設けてもよいし、下部後面1f1に対して当接することなく若干の間隙を有して配置されるようにしてもよい。また、リブ12b3は、下部後面1f1に対して部分的に当接するように設けてもよい。
【0037】
下部12bの左右側縁部12b2,12b2は、図3(b)、図7(a)、図8(b)に示すように、カバー装着部20の境界部分20b(段差部分)との間に溝状の隙間部S2を介してそれぞれ対向配置される。つまり、カバー装着部20にカバー部材10を装着した状態で、左右側縁部12b2,12b2が境界部分20bにそれぞれ当接しないようになっている。溝状の隙間部S2は、下部12bから基部11にかけて連続して形成されている。溝状の隙間部S2は、側面視で略L字状を呈している。
【0038】
左右側縁部12b2,12b2の内側には、図7(a)、図8(b)に示すように、段部12b5,12b5が設けられている。段部12b5,12b5は、下部後面1f1の角部20b1,20b1に対向しており、カバー部材10の装着時に角部20b1,20b1に対して左右両側方から当て付けられる(挟持する)ようになっている。
なお、段部12b5は、角部20b1に対して当接することなく若干の間隙を有して配置されるようにしてもよい。また、段部12b5は、角部20b1に対して部分的に当接するように設けてもよい。
段部12b5,12b5は、特許請求の範囲における「第2当て付け部」に相当する。
【0039】
また、下部12bの内面には、図9(a)に示すように、突出部10dが形成されている。突出部10dは、リール本体1の後部に設けられた支持孔5c1に挿通される。支持孔5c1には、スプール軸5の支持部材5c(図2参照)が前側から挿入されている。
図9(a)に示すように、支持孔5c1の側方には、境界部分20bに連続する当接面20b2,20b2が設けられている。この当接面20b2,20b2には、左右側部12b1,12b1の内面が対向している。左右側部12b1,12b1の内面は、カバー部材10の装着時に当接面20b2,20b2に対して左右両側方から当て付けられる(挟持する)ようになっている。つまり、立上り部12の上下方向の略中間部分がカバー装着部20に対して左右両側方から当て付けられて位置決めされるようになっている。
また、境界部分20b,20bには、左右側縁部12b2,12b2が部分的に当接されている。
本実施形態では、左右側部12b1,12b1の前端部がリール本体1の左右側面1kから側方に突出する状態に配置される。つまり、カバー部材10の装着形態にバリエーションをもたせた構成としている。
左右側部12b1,12b1の内面は、特許請求の範囲における「第2当て付け部」に相当する。
【0040】
カバー部材10の前記した左右側縁部12a2,12b2,12c2の角部Rは、各図に示すように面取りされている。本実施形態では、角部Rをアール状に面取りしたが、これに限られることはなく、面状に面取りしてもよい。
【0041】
以上のようなカバー部材10をカバー装着部20に装着する際には、カバー装着部20の後方下方からカバー部材10をカバー装着部20に近づける。そして、カバー部材10の立上り部12の上端部10aをカバー装着部20の上部壁21に後方から当て付けるとともに、基部11の前端部10bをカバー装着部20の下部前壁22に対して後方から当て付ける。そうすると、図7(a)に示すように、立上り部12の段部12b5,12b5が、カバー装着部20の下部後面1f1の角部20b1,20b1に対して左右両側方から当て付けられる。また、図9(a)に示すように、立上り部12の左右側部12b1,12b1の内面がカバー装着部20の当接面20b2,20b2に対して左右両側方から当て付けられる。
これによって、カバー部材10は、リール本体1の後部のカバー装着部20に前記した2つの方向から当て付けられて位置決めされる。
【0042】
そして、このように位置決めされた状態で、カバー装着部20の境界部分20aとカバー部材10の左右側縁部12a2との間には、溝状の隙間部S1が形成される。また、カバー装着部20の境界部分20bとカバー部材10の左右側縁部12b2,11c2との間には、溝状の隙間部S2が形成される。
【0043】
そして、カバー部材10は、溝状の隙間部S1,S2が形成された状態で、基部11のねじ孔110を介して挿通される止めねじ111によって、カバー装着部20に固定される。
なお、溝状の隙間部S1,S2の全長は、境界部分20a,20bの全長の約70%以上とされることが好ましい。
【0044】
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールによれば、前記した第1当て付け部および第2当て付け部をリール本体1の後部のカバー装着部20に当て付けることでカバー部材10が位置決めされるので、カバー部材10の組付性に優れる。
また、カバー部材10は、リール本体1の後部に2つの方向から当て付けられて位置決めされるので、ガタつきが好適に抑制された状態でリール本体1に装着される。
さらに、カバー装着部20の境界部分20a,20bに対して、溝状の隙間部S1,S2を空けた状態でカバー部材10が装着されるので、境界部分20a,20bに対してカバー部材10の左右側縁部12a2,12b2,12c2が突き合わされることがない。したがって、カバー部材10をリール本体1にガタつきなく装着することができる。
また、このような溝状の隙間部S1、S2を有する構成であるので、カバー部材10の成形用の金型やプレス型を新しく起こした際には、合わせのための型修正が必要最小限の型修正で済む。したがって、コストの低減を図ることができる。
【0045】
また、前記した第1当て付け部によって、カバー部材10の上下方向の少なくとも2箇所をカバー装着部20に位置決めすることができるので、カバー装着部20に対して安定した状態でカバー部材10を装着することができる。なお、本実施形態では、カバー部材10の立上り部12の上端部10aと、基部11の前端部10bとの2箇所を第1当て付け部としてカバー装着部20に位置決めするものを示したが、これに限られることはなく、これ以外の部分の2箇所を第1当て付け部として位置決めするように構成してもよい。
【0046】
また、前記した第2当て付け部によって、カバー部材10の上下方向の略中間部分をリール本体1の後部のカバー装着部20に左右両側方から当て付けて装着することができるので、左右方向のガタつきを好適に抑えつつ、カバー装着部20に対して安定した状態でカバー部材10を装着することができる。
【0047】
また、カバー部材10の左右側縁部12a2,12b2,11c2の角部Rが面取りされているので、カバー部材10に図示しない釣糸が接触した際の糸絡みのリスクを低減することができる。したがって、糸絡みによる操作のロスを低減することができ、魚釣操作性に優れる。
【0048】
また、カバー部材10は、リール本体1の後端部の左右側面1kにカバー部材10の左右側縁部12a2,12b2,11c2がそれぞれかかる状態(側面視でオーバーラップする状態)に装着されるので、リール本体1の後部を好適に覆うことができ、後部が傷付くのを好適に防止することができる。したがって、リール本体1の後部の表面処理層が剥離したり、剥離した部分から腐食が発生したりするのを防止することができる。また、落下等によるリール本体1への衝撃をカバー部材10で好適に緩和することができる。
さらにまた、溝状の隙間部S1,S2にゴミや埃が溜まり難く、海水がかった際にも海水を滞留させる要因とならないので、腐食の発生を誘発してしまうおそれもない。
【0049】
(第2実施形態)
図10を参照して第2実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。本実施形態では、リール本体1の後部角部にカバー装着部20Aが設けられている。
カバー装着部20Aには、カバー部材10Aが装着される。カバー部材10Aは、両端部10f,10gをカバー装着部20Aの境界部分20cに突き当てた状態で装着される。装着された状態で、境界部分20cとカバー部材10Aの左右両側縁部10h(片側のみ図示)との間には、溝状の隙間部S3が形成される。
【0050】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、カバー部材10Aをリール本体1にガタつきなく装着することができる魚釣用スピニングリールが得られる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、溝状の隙間部S1,S2,S3は、カバー部材10,10Aの寸法誤差による境界部分との突き合わせの不具合を吸収することのできる大きさであればよく、任意の全長、任意の幅を備えたものを採用することができる。
また、カバー部材10,10Aの上下方向の2箇所を左右両側方から当て付けて位置決めするように構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 リール本体
1k 左右側面
10 カバー部材
10a 上端部(第1当て付け部)
10b 前端部(第2当て付け部)
11c2 左右側縁部
12a2 左右側縁部
12b2 左右側縁部
20 カバー装着部
20a,20b 境界部分
R 角部
S1 隙間部
S2 隙間部
S3 隙間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10