特許第6389375号(P6389375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ HOYA株式会社の特許一覧

特許6389375マスクブランクおよび転写用マスク並びにそれらの製造方法
<>
  • 特許6389375-マスクブランクおよび転写用マスク並びにそれらの製造方法 図000003
  • 特許6389375-マスクブランクおよび転写用マスク並びにそれらの製造方法 図000004
  • 特許6389375-マスクブランクおよび転写用マスク並びにそれらの製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389375
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】マスクブランクおよび転写用マスク並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/32 20120101AFI20180903BHJP
【FI】
   G03F1/32
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-101446(P2014-101446)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-4969(P2015-4969A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2017年2月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-109386(P2013-109386)
(32)【優先日】2013年5月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 博明
(72)【発明者】
【氏名】野澤 順
(72)【発明者】
【氏名】大久保 亮
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−241065(JP,A)
【文献】 特開2008−209873(JP,A)
【文献】 特開2006−317665(JP,A)
【文献】 特開2009−244793(JP,A)
【文献】 特開2006−078825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00〜1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板の主表面上に光半透過膜と遮光膜とが積層した構造を有するマスクブランクであって、
前記光半透過膜は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料で形成され、
前記遮光膜は、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、かつその表層を除いて酸素を含有しない材料で形成され、
前記光半透過膜と前記遮光膜との間にエッチングストッパー膜が設けられ、
前記エッチングストッパー膜は、クロムを含有し、かつ酸素の含有量が20原子%以下である材料で形成され
前記遮光膜の上に、ケイ素と酸素を含有する材料からなるハードマスク膜が設けられていることを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記遮光膜は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料であり、かつフッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングに対して前記光半透過膜との間でエッチング選択性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
【請求項3】
前記遮光膜は、非金属元素を含有しない材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記エッチングストッパー膜は、クロムの含有量が55原子%以上である材料で形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記光半透過膜、前記エッチングストッパー膜および前記遮光膜の積層構造における露光光に対する光学濃度が2.8以上であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記エッチングストッパー膜は、厚さが8nm以下であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記光半透過膜は、ケイ素と窒素とを含有する材料からなることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記光半透過膜は、前記透光性基板から最も離れた位置にケイ素および酸素を含有する材料で形成された最上層を備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のマスクブランク。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記ハードマスク膜上に形成された光半透過パターンを有する第1のレジスト膜をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記ハードマスク膜に光半透過パターンを形成する工程と、
前記光半透過パターンを有する前記ハードマスク膜をマスクとし、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって前記遮光膜に光半透過パターンを形成する工程と、
記光半透過パターンを有する前記遮光膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記エッチングストッパー膜に前記光半透過パターンを形成する工程と、
前記光半透過パターンを有する前記エッチングストッパー膜をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記光半透過膜に前記光半透過パターンを形成しつつ、前記ハードマスク膜を除去する工程と、
前記遮光膜上に形成された遮光帯パターンを有する第2のレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって前記遮光膜に遮光帯パターンを形成する工程と、
前記遮光帯パターンを有する前記遮光膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記エッチングストッパー膜に前記遮光帯パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項10】
前記遮光膜に前記遮光帯パターンを形成する際に行われるドライエッチングは、前記遮光膜に前記光半透過パターンを形成する際に行われるドライエッチングよりも高バイアス状態で行われることを特徴とする請求項記載の転写用マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク、転写用マスク、転写用マスクの製造方法、および半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。この微細パターンの形成には、通常何枚もの転写用マスクと呼ばれている基板が使用される。この転写用マスクは、一般に透光性のガラス基板上に、金属薄膜等からなる微細パターンを設けたものである。この転写用マスクの製造においてもフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0003】
半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際に用いられる露光光源は、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
【0004】
転写用マスクの種類としては、従来の透光性基板上にクロム系材料からなる遮光膜パターンを備えたバイナリマスクの他に、ハーフトーン型位相シフトマスクが知られている。このハーフトーン型位相シフトマスクは、透光性基板上に光半透過膜パターンを備えたものである。この光半透過膜(ハーフトーン型位相シフト膜)は、実質的に露光に寄与しない強度で光を透過させ、かつその光半透過膜を透過した光に、同じ距離だけ空気中を通過した光に対して所定の位相差を生じさせる機能を有しており、これにより、いわゆる位相シフト効果を生じさせている。
【0005】
一般に、転写用マスクにおける転写パターンが形成される領域の外周領域は、露光装置を用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写した際に、外周領域を透過した露光光による影響をレジスト膜が受けないように、所定値以上の光学濃度(OD)を確保することが求められている。通常、転写用マスクの外周領域では、ODが3以上あると望ましいとされており、少なくとも2.8程度は必要とされている。しかし、ハーフトーン型位相シフトマスクの光半透過膜は、露光光を所定の透過率で透過させる機能を有しており、この光半透過膜だけでは、転写用マスクの外周領域に求められている光学濃度を確保することが困難である。このため、特許文献1に開示されている位相シフトマスクブランクのように、露光光に対して所定の位相シフト量および透過率を有する半透明膜の上に遮光膜(遮光性膜)を積層し、半透明膜と遮光膜との積層構造で所定の光学濃度を確保することが行われている。
【0006】
一方、特許文献2に開示されているようなフォトマスクブランクも存在する。このフォトマスクブランクの半透明積層膜は、その膜中を透過する露光光の位相が空気中を同じ距離だけ通過した露光光の位相よりも進む特性を有する位相進行膜と、逆に、その膜中を透過する露光光の位相が遅れる特性を有する位相遅延膜とが積層したものである。このような構成にすることによって、半透明積層膜を透過する露光光は、空気中を同じ距離だけ通過した露光光との間で位相差が生じないようにすることができる。このような特性を有する半透明積層膜も、単独では転写用マスクの外周領域に求められている光学濃度を確保することが困難である。このため、特許文献2に開示されているフォトマスクブランクにおいても、半透明積層膜の上に遮光膜を積層し、半透明積層膜と遮光膜との積層構造で所定の光学濃度を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−033469号公報
【特許文献2】特開2006−215297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2で開示されているような露光光を所定の透過率で透過させるような薄膜(光半透過膜)で転写パターンを形成するタイプの転写用マスクは、光半透過膜の上に遮光膜を積層したマスクブランクを用いて作製される。このマスクブランクから作製される転写用マスクでは、基板上の転写パターンが形成される領域には、遮光パッチ等を形成する必要のある特定領域を除いては、光半透過膜のパターンのみが存在する。一方、所定の光学濃度が必要な外周領域(ブラインドエリア)には、光半透過膜と遮光膜とが積層した状態の層(遮光帯)が存在する。このような構成の転写用マスクを作製する必要があるため、光半透過膜と遮光膜とがそれらの膜の間に他の膜を介さずに積層する構造の場合には、光半透過膜と遮光膜とは互いにエッチング特性の異なる材料で形成する必要がある。
【0009】
前記のようなマスクブランクから転写用マスクを作製する手順としては、以下のとおりである。最初に、遮光膜上に光半透過膜に形成すべきパターンを有する第1のレジストパターンを設ける。次に、第1のレジストパターンをマスクとして、遮光膜をエッチングしてパターンを形成する。次に、第1のレジストパターンを除去する。次に、遮光膜のパターンをマスクとして、光半透過膜をエッチングして光半透過膜パターンを形成する。次に、遮光膜上に、遮光膜に形成すべきパターンを有する第2のレジストパターンを設ける。次に、第2のレジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングして遮光膜パターン(遮光帯)を形成する。最後に第2のレジストパターンを除去し、所定の洗浄工程を経て、転写用マスクが出来上がる。
【0010】
光半透過膜に形成すべきパターンは、半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写するものであるため、非常に微細なパターンである。しかし、マスクブランクにおける光半透過膜の上には遮光膜が積層しているため、遮光膜に一度、光半透過膜に形成すべきパターンを形成しなければならない。前記のとおり、光半透過膜に対しては、露光光を所定の透過率で透過させること以外の機能を兼ね備えさせる場合が多い。そして、このような特性を光半透過膜に持たせるために、ケイ素を含有する材料や、ケイ素と遷移金属とを含有する材料を適用することが多い。これらの材料からなる光半透過膜に微細パターンを形成する場合、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングでパターニングすることが望ましい。
【0011】
光半透過膜を、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングでパターニングすることを前提として、前記の転写用マスクの作製プロセスを実現するには、遮光膜はフッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングに対して耐性を有する材料である必要がある。それに加え、フッ素系ガス以外のエッチングガスで、光半透過膜に形成すべき微細パターンを遮光膜に形成できることも必要である。また、前記のとおり、光半透過膜パターンが形成された領域は、遮光パッチ等を形成する必要のある特定領域を除いて、その直上の遮光膜は全て除去される。このため、遮光膜を除去する際のドライエッチングで用いられるエッチングガスに対して、光半透過膜が十分なエッチング選択性を有するようにすることが望まれる。これらの条件を同時に満たす遮光膜の材料としては、クロムを含有する材料が挙げられ、以前より用いられてきている。クロムを含有する材料からなる遮光膜に微細パターンを形成するために用いられるエッチングガスは、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスである。
【0012】
しかし、一般に使用される有機系材料で形成されるレジスト膜は、酸素ガスのプラズマに対する耐性が、他のガスのプラズマに対する耐性に比べて大幅に低い。このため、クロム系材料の遮光膜を塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでドライエッチングした場合、レジスト膜の消費量(エッチング中に生じるレジスト膜の減膜量)が多くなる。ドライエッチングによって遮光膜に微細パターンを高い精度で形成するには、遮光膜のパターニング完了時に、所定以上の厚さでレジスト膜が残存している必要がある。しかし、最初にパターンを形成するレジスト膜の膜厚を厚くすると、レジストパターンの断面アスペクト比(パターン線幅に対する膜厚の比率)が大きくなり過ぎるために、レジストパターンが倒壊する現象が発生しやすくなる。
【0013】
クロム系材料以外の材料でもフッ素系ガスを含有するエッチングガスに対して耐性を有する材料は存在する。例えば、タンタル−ハフニウム合金、タンタル−ジルコニウム合金、タンタル―ハフニウム―ジルコニウム合金等(以下、これらをタンタル−ハフニウム合金等という。)の材料で形成された薄膜は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングに対して耐性を有し、酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングでパターニングが可能である。光半透過膜を形成するケイ素を含有する材料や、ケイ素と遷移金属とを含有する材料は、酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングに対して比較的耐性がある。しかし、タンタル−ハフニウム合金やタンタル−ジルコニウム合金等の材料は酸化しやすく、酸化が進んでしまうと酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングのエッチングレートが大きく低下するという問題がある。
【0014】
光半透過膜の上に他の膜を介さずにタンタル−ハフニウム合金等の材料で遮光膜を積層したマスクブランクとした場合、遮光膜に光半透過膜に形成すべきパターンを形成する段階では、遮光膜の酸化が比較的進んでいないため、酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングで十分にパターニング可能である。しかし、光半透過膜パターン上の遮光膜を除去する段階になると、遮光膜の酸化が進んでおり、遮光膜の酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングに対するエッチングレートが大きく低下している。このような酸化が進んだタンタル−ハフニウム合金等の材料の遮光膜を除去するには、通常よりも高いバイアスを掛けた塩素系ガスによるドライエッチングを行うことが有効である。しかし、物理的な作用が大きいドライエッチングであるため、遮光膜が除去されたときに露出する光半透過膜パターンの表層にダメージを与える恐れがあるという問題がある。光半透過膜が、露光光を所定の透過率で透過させる機能だけでなく、その光半透過膜を透過した露光光に対してその光半透過膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間に所定の位相差を生じさせる機能も兼ね備えた位相シフト膜である場合、表層がダメージを受けることによる影響は特に大きい。
【0015】
このような問題を解決する手段として、光半透過膜と遮光膜との間にクロムを含有する材料からなるエッチングストッパー膜を設けることが考えられる。しかし、エッチングストッパー膜は、クロムを含有する材料で形成すれば、酸素を含有しない塩素系ガスに対する耐性が常に高いとは限らない。特に、遮光膜を除去する段階でのドライエッチングは高バイアスの条件で行われるため、エッチングストッパー膜には酸素を含有しない塩素系ガスに対してより高い耐性が求められる。
【0016】
そこで、本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光半透過膜上に遮光膜が積層したマスクブランクにおいて、光半透過膜に微細パターンを高い精度で形成でき、かつ、光半透過膜のパターン上の遮光膜を除去するドライエッチングによって生じる光半透過膜へのダメージを抑制することが可能なマスクブランクを提供することである。また、このマスクブランクを用いて製造される転写用マスクおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、本発明を完成させたものである。すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
透光性基板の主表面上に光半透過膜と遮光膜とが積層した構造を有するマスクブランクであって、前記光半透過膜は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料で形成され、前記遮光膜は、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有し、かつその表層を除いて酸素を含有しない材料で形成され、前記光半透過膜と前記遮光膜との間にエッチングストッパー膜が設けられ、前記エッチングストッパー膜は、クロムを含有し、かつ酸素の含有量が20原子%以下である材料で形成されていることを特徴とするマスクブランクである。
【0018】
(構成2)
前記遮光膜は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料であり、かつフッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングに対して前記光半透過膜との間でエッチング選択性を有する材料で形成されていることを特徴とする構成1記載のマスクブランクである。
(構成3)
前記遮光膜は、非金属元素を含有しない材料からなることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランクである。
【0019】
(構成4)
前記遮光膜に接して有機系材料からなる薄膜が設けられていることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランクである。
(構成5)
前記エッチングストッパー膜は、クロムの含有量が55原子%以上である材料で形成されていることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランクである。
【0020】
(構成6)
前記光半透過膜、前記エッチングストッパー膜および前記遮光膜の積層構造における露光光に対する光学濃度が2.8以上であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランクである。
(構成7)
前記エッチングストッパー膜は、厚さが8nm以下であることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
【0021】
(構成8)
前記光半透過膜は、ケイ素と窒素とを含有する材料からなることを特徴とする構成1から7のいずれかに記載のマスクブランクである。
(構成9)
前記光半透過膜は、前記透光性基板から最も離れた位置にケイ素および酸素を含有する材料で形成された最上層を備えることを特徴とする構成1から8のいずれかに記載のマスクブランクである。
【0022】
(構成10)
構成1から9のいずれかに記載のマスクブランクの前記光半透過膜に光半透過パターンが形成され、前記エッチングストッパー膜および前記遮光膜に遮光帯パターンが形成されていることを特徴とする転写用マスクである。
【0023】
(構成11)
構成1から9のいずれかに記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、前記遮光膜上に形成された転写パターンを有する第1のレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって前記遮光膜に光半透過パターンを形成する工程と、前記第1のレジスト膜を除去した後、前記光半透過パターンを有する前記遮光膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記エッチングストッパー膜に前記光半透過パターンを形成する工程と、前記光半透過パターンを有する前記エッチングストッパー膜をマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記光半透過膜に前記光半透過パターンを形成する工程と、前記遮光膜上に形成された遮光帯パターンを有する第2のレジスト膜をマスクとし、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって前記遮光膜に遮光帯パターンを形成する工程と、前記遮光帯パターンを有する前記遮光膜をマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスとを含有するエッチングガスでのドライエッチングによって前記エッチングストッパー膜に前記遮光帯パターンを形成する工程とを有することを特徴とする転写用マスクの製造方法である。
【0024】
(構成12)
前記遮光膜に前記遮光帯パターンを形成する際に行われるドライエッチングは、前記遮光膜に前記光半透過パターンを形成する際に行われるドライエッチングよりも高バイアス状態で行われることを特徴とする構成11記載の転写用マスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料で形成された光半透過膜と、クロムを含有する材料からなるエッチングストッパー膜と、ハフニウムおよびジルコニウムのうち、少なくとも一方の元素とタンタルを含有する材料で形成された遮光膜とが、順に積層された構造を有するマスクブランクを用いて転写用マスクを作製する場合においても、光半透過膜に転写パターンを形成した後に、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスによるドライエッチングで遮光膜を除去する際に、エッチングストッパー膜が消失する恐れがなく、光半透過膜の表層がダメージを受けることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係るマスクブランクの層構成を示す断面図である。
図2】エッチングストッパー膜中のクロム含有量および酸素含有量と、塩素系ガスに対するエッチングレートとの関係を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る基板掘り込みタイプの位相シフトマスクの製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の第1の実施形態を詳述する。
本発明は、透光性基板の主表面上に光半透過膜と遮光膜とが積層した構造を有するマスクブランクであり、具体的には、上記構成1にあるように、光半透過膜は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料で形成され、遮光膜は、ハフニウムおよびジルコニウムのうちの少なくとも一方の元素とタンタルとを含有し、かつその表層を除いて酸素を含有しない材料で形成され、光半透過膜と遮光膜との間にエッチングストッパー膜が設けられ、エッチングストッパー膜は、クロムを含有し、かつ酸素の含有量が20原子%以下である材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
図1は、本発明に係るマスクブランクの層構成を示す断面図である。図1に示す本発明のマスクブランク100は、透光性基板1上に、光半透過膜2、エッチングストッパー膜3および遮光膜4が順に積層された構造である。
【0029】
上記透光性基板1としては、使用する露光波長に対して透明性を有するものであれば特に制限されない。本発明では、合成石英ガラス基板、その他各種のガラス基板(例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等)を用いることができる。半導体装置のパターンを微細化するに当たっては、光半透過膜に形成されるマスクパターンの微細化に加え、半導体装置製造の際のフォトリソグラフィーで使用される露光光源波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。各種ガラス基板の中でも特に合成石英ガラス基板は、ArFエキシマレーザーまたはそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、高精細の転写パターン形成に用いられる本発明のマスクブランクの基板として好適である。
【0030】
上記光半透過膜2は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングが可能な材料で形成される。光半透過膜2は、露光光を所定の透過率で透過させる機能を有する膜である。光半透過膜は、露光光に対する透過率が1%以上であることが好ましい。光半透過膜2は、ハーフトーン型位相シフトマスクに用いられる位相シフト膜やエンハンサー型位相シフトマスクに用いられる光半透過膜であることが好ましい。
【0031】
ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜(位相シフト膜)2は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差(例えば180度)を有するものである。この光半透過膜2をパターニングした光半透過部と、光半透過膜が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0032】
一方、エンハンサー型位相シフトマスク用のマスクブランクの光半透過膜2は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものではあるが、透過する露光光に生じさせる位相差が小さい膜(例えば、位相差が30度以下。好ましくは0度。)であり、この点が、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜とは異なる。
【0033】
光半透過膜2は、ケイ素と窒素とを含有する材料からなることが好ましい。また、光半透過膜2は、ケイ素、遷移金属および窒素を含有する材料からなることが好ましい。この場合の遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)およびパラジウム(Pd)等のうちいずれか1つ以上の金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。光半透過膜2の材料には、前記の元素に加え、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)およびホウ素(B)等の元素が含まれてもよい。また、光半透過膜2の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の不活性ガスが含まれてもよい。
【0034】
これらの材料は、フッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングに対するエッチングレートが速く、光半透過膜に求められる諸特性を得られやすい。特に、これらの材料は、光半透過膜を透過する露光光の位相を厳密に制御する必要がある位相シフト膜や、位相遅延膜と位相進行膜が積層した構造を有するエンハンサー型位相シフトマスク用の光半透過膜を形成する材料として望ましい。光半透過膜2がハーフトーン型位相シフト膜や半透明積層膜の場合、膜中の遷移金属(M)の含有量[at%(原子%)]を、遷移金属(M)とケイ素(Si)との合計含有量[at%]で除して算出した百分率[%](以下、M/[M+Si]比率という。)が、35%以下であることが好ましく、25%以下であるとより好ましく、20%以下であるとさらに好ましい。遷移金属は、ケイ素に比べて消衰係数は高いが、屈折率も高い元素である。第1の膜を形成する材料の屈折率が高すぎると、膜厚変動による位相の変化量が大きくなり、位相と透過率との両方を制御することが難しくなる。
【0035】
光半透過膜2は、透光性基板1から最も離れた位置にケイ素および酸素を含有する材料で形成された最上層を備えた構成であることが好ましい。後述のエッチングストッパー膜を除去する際に行われるドライエッチングに対する光半透過膜2の耐性をより高められるからである。この最上層は、光半透過膜2を形成後に表層を酸化させる処理を行うことによって形成してもよく、また、スパッタリング法等によって最上層を積層することで形成してもよい。
【0036】
遮光膜4は、ハフニウム(Hf)およびジルコニウム(Zr)から選ばれる1以上の元素とタンタル(Ta)とを含有し、かつその表層を除いて酸素を含有しない材料で形成される。また、遮光膜4は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングが可能な材料であり、かつフッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチングに対して前記光半透過膜との間でエッチング選択性を有する材料で形成されていることが好ましい。このような特性を満たす材料としては、タンタル−ハフニウム合金、タンタル−ジルコニウム合金、タンタル−ハフニウム−ジルコニウム合金、またはこれらの合金の酸素以外の元素を含有する化合物が挙げられる。遮光膜4の材料には、窒素(N)、炭素(C)、水素(H)およびホウ素(B)等の元素が含まれてもよい。また、遮光膜4の材料には、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)等の不活性ガスが含まれてもよい。
【0037】
タンタル−ハフニウム合金等の材料からなる遮光膜4は、酸素を含有していない場合、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングによって微細なパターンを形成することが可能となるだけのエッチングレートを得ることができる。タンタル−ハフニウム合金等の材料は、材料中の酸素含有量が多くなるにつれ、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスに対するエッチングレートが大幅に低下していく特性を有する。遮光膜4の表層(膜の表面から5nm以下程度の深さまでの範囲)で酸化が進んでいたとしても、表層に対しては物理的なエッチング作用を利用することで遮光膜4に微細パターンを形成することは可能である。しかし、遮光膜4の全体で酸化が進んでしまっていると、微細パターンを形成することが困難になる。このため、遮光膜4は、酸化することが避けがたい表層を除いて酸素を含有しない材料で形成することが好ましい。ここでいう、酸素を含有しない材料とは、酸素を全く含有しない材料だけに限らず、遮光膜4のスパッタ成膜時にコンタミの影響等で混入してしまう程度の酸素が含有された材料(酸素含有量が5at%以下の材料)までは含まれるものとする。
【0038】
遮光膜4を形成する材料は、前記のエッチング特性を有する必要がある。タンタル−ハフニウム合金等の材料がこのようなエッチング特性を有するようにするには、材料中のハフニウムおよびジルコニウムの合計含有量[原子%]を、タンタル、ハフニウムおよびジルコニウムの合計含有量[原子%]で除した比率の百分率(以下、[Hf+Zr]/[Ta+Hf+Zr]比率という。)が10%以上である材料とすることが望まれる。タンタルは、酸素を含有しない塩素系ガスに対してドライエッチング可能なだけでなく、フッ素系ガスを含有するエッチングガスに対してもドライエッチング可能であり、タンタルのみでは、フッ素系ガスを含有するエッチングガスに対するエッチング耐性が確保できない。[Hf+Zr]/[Ta+Hf+Zr]比率が10%未満であると、フッ素系ガスを含有するエッチングガスに対する耐性が低下し、光半透過膜2に転写パターンを形成するときのフッ素系ガスを含有するエッチングガスによるドライエッチングの際にエッチングマスクとして機能することが困難になる。一方、転写用マスクを洗浄する際の洗浄液に対する耐性の点を考慮すると、タンタルの含有比率を高めた方がよく、遮光膜4の[Hf+Zr]/[Ta+Hf+Zr]比率は50%以下であることが好ましい。
【0039】
本発明のマスクブランクは、光半透過膜2、エッチングストッパー膜3および遮光膜4の積層構造における露光光に対する光学濃度(OD)が2.8以上であることが必要とされており、3.0以上であると好ましい。また、この露光光には、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)が適用されることが好ましい。上記の積層構造(積層膜)における各膜に求められる機能を考慮すると、遮光膜4がより高い光学濃度を有することが望まれる。遮光膜4に高い光学濃度を持たせる最も単純な方法は、膜厚を厚くすることである。一方、遮光膜4は、光半透過膜に微細な転写パターンを形成するドライエッチング時に、エッチングマスクとして機能することが求められている。微細な転写パターンを光半透過膜に精度よく形成するために、遮光膜4の厚さは極力薄いことが望まれている。遮光膜4がこのような2つの要求を同時に満たすためには、遮光膜4を形成する材料の光学濃度を高めることが望まれる。このため、遮光膜4は、光学濃度を低下させる非金属元素を含有しない材料で形成することが好ましい。この観点においては、遮光膜4を形成する材料として、タンタル−ハフニウム合金、タンタル−ジルコニウム合金、タンタル−ハフニウム−ジルコニウム合金から選ばれる材料を適用することが好ましい。遮光膜4は、厚さが40nm以下であることが好ましく、35nm以下であるとより好ましい。
【0040】
遮光膜4は、露光光に対する反射率を低減するために、光半透過膜側から遮光層と反射防止層とが順に積層する構造としてもよい。本発明のマスクブランクでは、遮光膜4が高い光学濃度を有しつつ、厚さができる限り薄いことが望まれる。遮光層に関しては、前記の反射防止層を備えない遮光膜の場合と同様である。反射防止層は、求められる機能を満たすために、一般に光学濃度が低い材料が適用される。遮光膜4の全体の厚さを40nm以下にするためには、反射防止層の厚さは5nm以下であることが望まれる。反射防止層は、少なくともフッ素系ガスを含有するエッチングガスに対して耐性を有する材料で形成する必要がある。また、エッチングストッパー膜3には、クロムを含有する材料が適用され、このエッチングストッパー膜3に対してドライエッチングでパターニングする際に、反射防止層はエッチングマスクとして機能しなければならない。これらの点を考慮すると、反射防止層には、前記の遮光膜4に適用可能な材料に、酸素および窒素のうち少なくとも1以上の元素を含有する材料を適用することが好ましい。
【0041】
エッチングストッパー膜3は、転写用マスクの製造工程(詳しくは後で説明する)において、転写用マスクが出来上がった段階に光半透過パターンに残る遮光パターン(遮光帯等のパターン)を形成するために行われる酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチング時に、光半透過膜2がエッチングされてしまうことを防止する機能を有する必要がある。また、同時に、エッチングストッパー膜3は、遮光膜4が除去された領域については最終的に除去される必要があるため、エッチングストッパー膜3に対して行われるドライエッチングに用いられるエッチングガスは、光半透過膜2がエッチング耐性を有するものである必要がある。このため、エッチングストッパー膜3には、クロムを主成分とする材料が適用される。
【0042】
転写用マスクの製造工程において、遮光膜4はドライエッチングで2回パターニングされる。1回目のドライエッチングは、光半透過膜に形成すべき転写パターン(光半透過パターン)を遮光膜4に形成する際に行われる。2回目のドライエッチングは、遮光膜4に形成すべきパターン(遮光帯等のパターン)を遮光膜4に形成する際に行われる。いずれのドライエッチングも、塩素系ガスを含有し、酸素ガスを含有しないエッチングガスが用いられる。1回目のドライエッチングの段階では、遮光膜4は表層以外では酸化がほとんど進行しておらず、物理的な作用がさほど強くない傾向である通常のエッチングバイアスで、遮光膜4にパターンを形成することが十分に可能である。しかし、2回目のドライエッチングの段階では、その前段階のプロセスで行われる洗浄等の各処理によって、遮光膜4の酸化が進んでしまっており、物理的な作用が強い傾向である高いエッチングバイアス(高バイアス状態)でドライエッチングを行わなければ、遮光膜4にパターンを形成することが難しい。
【0043】
本発明者は、エッチングストッパー膜3が同じクロムを含有する材料を適用しても、酸化が進んでしまったタンタル−ハフニウム合金等の材料からなる遮光膜4に対して高バイアス状態での酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングでパターニングを行った場合、エッチングストッパー膜3が消失してしまうことがあり得ると考えた。そこで、表1に示すクロム系材料のサンプル膜7種類について、塩素系ガス(Cl)をエッチングガスに用いた高バイアス状態でのドライエッチングを行い、各サンプル膜のエッチングレートを確認する実験を行った。各サンプル膜の塩素系ガス(Cl)に対するエッチングレートを図2に示す。なお、この実験でのエッチングバイアスは、50Wとした。
【0044】
【表1】
【0045】
図2では、各サンプル膜の酸素含有量と、塩素系ガスに対するエッチングレートとの関係を■のプロットで、各サンプル膜のクロム含有量と、塩素系ガスに対するエッチングレートとの関係を▲のプロットでそれぞれ示している。なお、図2中の■および▲の各プロットに付与されている記号は、サンプル膜の記号に対応している。この結果を見ると、酸素含有量と塩素系ガスに対するエッチングレートとの間には相関性が見られることがわかる。また、サンプル膜中の窒素や炭素を含有することの影響も低いこともわかる。他方、クロム含有量と塩素系ガスに対するエッチングレートとの間の相関性があまり高くないことがわかる。
【0046】
また、図2の結果では、クロム系材料膜中の酸素含有量が20%よりも大きくなると、高バイアス状態での塩素系ガスに対するエッチングレートの上昇度合いが高くなり、また、エッチングレート自体も6.0nm/分以上と高くなることがわかる。酸化が進んでしまったタンタル−ハフニウム合金等の材料からなる遮光膜4に対してドライエッチングを行う際、面内において早期に遮光膜4が除去されてエッチングストッパー膜3が露出した領域は、遮光膜4のパターニングが完了するまで高バイアス状態の、酸素を含有しない塩素系ガスに晒され続ける。酸素を含有しない塩素系ガスを用いた高バイアス状態でのドライエッチングに対する耐性が低いと、その領域のエッチングストッパー膜3が消失してしまう。その結果、その直下の光半透過膜2の表層が高バイアス状態の酸素を含有しない塩素系ガスに晒されてダメージを受けてしまう。図2の実験結果等を検討した結果、エッチングストッパー膜3を形成するクロム系材料膜中の酸素含有量は20原子%以下である必要があるという結論に至った。
【0047】
また、クロム系材料膜中の酸素含有量ほど顕著ではないが、高バイアス状態のドライエッチングは物理的な作用の傾向が強いため、クロム系材料膜中の金属成分であるクロム含有量によって、酸素を含有しない塩素系ガスを用いた高バイアス状態でのドライエッチングに対する耐性が変わる。図2の結果等を考慮すると、エッチングストッパー膜3を形成するクロム系材料膜中のクロム含有量は55原子%以上であることが好ましい。
【0048】
エッチングストッパー膜3を形成するクロムを含有する材料は、遮光膜4を形成するタンタル−ハフニウム合金等の材料に比べて、露光光に対する光学濃度が低い傾向がある。エッチングストッパー膜3と遮光膜4との積層構造で所定の光学濃度をより薄い合計膜厚で実現するには、エッチングストッパー膜3の厚さは極力薄くすることが望まれる。他方、塩素を含有しない塩素系ガスを用いた高バイアス状態でのドライエッチングに対して光半透過膜2を保護する観点を考慮すると、エッチングストッパー膜3の膜厚は厚いほど望ましいといえる。これらの点を総合的に考慮すると、エッチングストッパー膜3の厚さは、8nm以下であることが好ましい。また、エッチングストッパー膜3の厚さは、3nm以上であることがより好ましい。エッチングストッパー膜3の厚さは、5nm以上7nm以下であるとさらに好ましい。
【0049】
遮光膜4は、光半透過膜2とは反対側の表層に接して最上層を設けた構成としてもよい。この最上層は、タンタルを含有し、ハフニウムおよびジルコニウムを実質的に含有しない材料で形成されていることが好ましい。最上層を設けることによって、遮光膜4の表層の酸化を抑制できる。最上層の厚さは、遮光膜4の表層の酸化を抑制するためには少なくとも3nm以上であることが求められ、4nm以上であると好ましい。また、最上層の厚さは、10nm以下であることが好ましく、8nm以下であるとより好ましい。
【0050】
最上層は、遮光膜4の最表面側の層となるため、最上層をスパッタ成膜法等で形成する段階では、酸素を含有させないことが好ましい。最上層は、その形成時に酸素を含有させない方法で形成しても、大気中に出すとその表層側から酸化が進んでいく。このため、最上層を含む遮光膜4に微細な転写パターンを形成するドライエッチングに酸素ガスを含有しない塩素系ガスを適用する場合、少なくとも最上層に対しては高バイアスの条件で行う必要がある。よって、最上層を設けた場合であっても、遮光膜4の表層が酸化している場合と同様のエッチングストッパー膜等の条件を満たすことが望まれる。
【0051】
遮光膜4に最上層が設けられる場合、遮光膜4の表層は酸化していないことが好ましい。例えば、遮光膜4、最上層の順にスパッタ成膜し、その間、透光性基板1を一度も大気中に出さないようにすることで遮光膜4の表層の酸化を抑制することができる。
【0052】
遮光膜4の上に、ケイ素と酸素を含有する材料からなるハードマスク膜を設けた構成としてもよい。このハードマスク膜は、フッ素系ガスによるドライエッチングによってパターニングが可能な材料であるが、塩素系ガスによるドライエッチングに対しては高い耐性を有する。このハードマスク膜を設けた場合、最初にレジスト膜に形成された微細な転写パターンをマスクとするフッ素系ガスによるドライエッチングでハードマスク膜に微細な転写パターンを形成する。続いて、微細パターンが形成されたハードマスク膜をマスクとし、酸素を含有しない塩素系ガスによるドライエッチングで遮光膜4に微細な転写パターンを形成する。
【0053】
レジスト膜は、酸素を含有しない塩素系ガスやフッ素系ガスによるドライエッチングによっても減膜する。また、その減膜は、レジストパターンの上面からだけでなく、パターン側壁からも進む(これをサイドエッチングという。)。レジスト膜に形成するパターンの幅は、このサイドエッチングによる線幅の減少量を予め見込んで広く形成される。この実際に遮光膜4やハードマスク膜に形成すべきパターンの線幅とレジスト膜に形成するパターンの線幅との差をエッチングバイアスという。遮光膜4よりハードマスク膜の方が厚さを薄くすることができるため、微細な転写パターンを形成するためのドライエッチングの時間が短くできる。すなわち、ケイ素と酸素を含有する材料からなるハードマスク膜を遮光膜4の上に設けることによって、レジスト膜に形成するパターンのエッチングバイアスを小さくすることができる。
【0054】
また、ハードマスク膜を設けることによって、遮光膜4の表層の酸化を抑制できる。ハードマスク膜の厚さは、少なくとも3nm以上であることが求められ、4nm以上であると好ましい。また、ハードマスク膜の厚さは、15nm以下であることが求められ、10nm以下であると好ましく、8nm以下であるとより好ましい。ハードマスク膜は、ケイ素と酸素とを含有するとともに、窒素、炭素、水素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素を含有する材料で形成されることが好ましい。ハードマスク膜は、ケイ素と酸素とからなる材料や、ケイ素と酸素と窒素とからなる材料で形成されると特に好ましい。
【0055】
ハードマスク膜は、光半透過膜2に微細なパターンを形成するときに行われるフッ素系ガスを用いるドライエッチングのときに消失する。このため、光半透過膜2をパターニングした後の洗浄処理等によって遮光膜はその表層側から酸化が進んでいく。このため、遮光膜4に遮光帯のパターンを形成する際に行う酸素ガスを含有しない塩素系ガスによるドライエッチングは、高バイアスの条件で行う必要がある。よって、ハードマスク膜を設けた場合であっても、遮光膜4の表層が酸化している場合と同様のエッチングストッパー膜等の条件を満たすことが望まれる。
【0056】
遮光膜4上にハードマスク膜が設けられる場合、遮光膜4の表層は酸化していないことが好ましい。例えば、遮光膜4、ハードマスク膜の順にスパッタ成膜し、その間、透光性基板1を一度も大気中に出さないようにすることで遮光膜4の表層の酸化を抑制することができる。
【0057】
透光性基板1上に、光半透過膜2、エッチングストッパー膜3、および遮光膜4を成膜する方法としては、例えばスパッタ成膜法が好ましく挙げられるが、本発明ではスパッタ成膜法に限定する必要はない。
【0058】
また、本発明は、前記のマスクブランクの光半透過膜に光半透過パターンが形成され、遮光膜に遮光帯パターンが形成された転写用マスクやその転写用マスクの製造方法についても提供するものである。図3は、本発明に係る転写用マスクの製造工程を示す断面図である。図3に示す製造工程に従って、本発明に係る転写用マスクの製造方法を説明する。本発明に使用するマスクブランク100(図3(a)参照)の構成の詳細は上述したとおりである。
【0059】
まず、上記マスクブランク100上に、例えばポジ型の第1のレジスト膜5を形成する(図3(a)参照)。次に、このマスクブランク100上に形成した第1のレジスト膜5に対して、光半透過膜2に形成すべき所望の光半透過パターン(転写パターン)のパターン描画を行い、描画後、現像処理を行うことにより、所望の光半透過パターンを有する第1のレジストパターン5aを形成する(図3(b)参照)。次いで、この光半透過パターンを有する第1のレジストパターン5aをマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有する遮光膜4aを形成する(図3(c)参照)。本発明のタンタル−ハフニウム合金等の材料からなる遮光膜4に対しては、塩素系ガスを含有し、酸素ガスを含有しないエッチングガスを用い、物理的な作用がさほど強くない傾向である通常のエッチングバイアスでのドライエッチングが行われるのが好適である。遮光膜4のドライエッチングに用いる塩素系ガスとしては、例えば、Cl、SiCl、CHCl、CHCl、CClおよびBClなどが挙げられる。遮光膜4に光半透過パターンを形成した後、残存する第1のレジストパターン5aは除去される。この第1のレジストパターン5aの除去は、酸素プラズマによるアッシング処理で行われる場合が多い。また、アッシング処理後、洗浄処理が行われる。これらの処理によって、遮光膜4の酸化が進むことは避けられない。
【0060】
次に、光半透過パターンが形成された遮光膜4aをマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜3aを形成する(図3(d)参照)。このドライエッチングでは、エッチングガスとして塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いる。塩素系ガスについては、前記の遮光膜4で用いたものが適用可能である。このエッチングストッパー膜3に対するドライエッチング時に、遮光膜4に対しても酸素プラズマが当たるため、この処理によって遮光膜4の酸化がさらに進んでしまう。
【0061】
次いで、光半透過パターンが形成された遮光膜4aをマスクとしたドライエッチングによって、光半透過パターンを有する光半透過膜(光半透過パターン)2aを形成する(図3(e)参照)。このドライエッチングでは、エッチングガスとして、例えば、SF、CHF、CF、C、Cなどのフッ素系ガスを含有するエッチングガスを用いる。フッ素系ガスの中でも、SFは透光性基板1とのエッチング選択性が高く、好ましい。
【0062】
次に、遮光膜4a上に第2のレジスト膜6を形成し、この第2のレジスト膜6に対して、遮光膜4に形成すべき所望の遮光帯パターン(転写パターン)のパターン描画を行い、描画後、現像処理を行うことにより、所望の遮光帯パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成する(図3(f)参照)。次いで、遮光帯パターンを有する第2のレジストパターンをマスクとしたドライエッチングによって、遮光帯パターンを有する遮光膜4bを形成する(図3(g)参照)。
【0063】
このドライエッチングでは、使用されるエッチングガス自体は、遮光膜4に光半透過パターンを形成するときに用いたものと同じく塩素系ガスである。しかし、この段階での遮光膜4aは、材料の酸化が相当進んでおり、遮光膜4に光半透過パターンを形成するときのドライエッチングでのエッチングバイアスではエッチングレートが大幅に遅く、遮光帯パターンを精度よく形成することは難しい。このため、この遮光膜4aに遮光帯パターンを形成するときのドライエッチングでのエッチングバイアスは、遮光膜4に光半透過パターンを形成するときのドライエッチングでのエッチングバイアスよりも大幅に高い状態で行われる。エッチングストッパー膜3aは、酸素を含有しない塩素系ガスを用いた高バイアス状態のドライエッチングに対して耐性の高い材料が用いられているため、このドライエッチングによって、局所的にエッチングストッパー膜3aが消失して光半透過膜2aの表層にダメージを与える恐れはない。なお、遮光膜4aに遮光帯パターンを形成された後、残存する第2のレジストパターン6bは除去される。
【0064】
次に、遮光帯パターンが形成された遮光膜4bをマスクとしたドライエッチングによって、遮光帯パターンを有するエッチングストッパー膜3bを形成する。本発明の転写用マスクでは、エッチングストッパー膜3bと遮光膜4bとの積層構造で遮光帯が形成される。その後、所定の洗浄を施すことで、転写用マスク200が得られる(図3(h)参照)。
【0065】
以上説明したように、本発明の転写用マスクは、本発明のマスクブランクの光半透過膜に光半透過膜が形成され、前記エッチングストッパー膜および遮光膜に遮光帯パターンが形成されていることを特徴とするものである。すなわち、本発明の転写用マスクは、透光性基板の主表面上に光半透過パターンと遮光帯パターンとが積層した構造を有する転写用マスクであって、光半透過パターンは、フッ素系ガスを含有するエッチングガスでのドライエッチング可能な材料で形成され、遮光帯パターンは、遮光帯のパターンを有する遮光膜パターンと、光半透過パターンと遮光膜パターンとの間に設けられ、遮光帯のパターンを有するエッチングストッパー膜パターンの積層構造からなり、遮光膜パターンは、ハフニウムおよびジルコニウムから選ばれる1以上の元素とタンタルとを含有する材料からなり、エッチングストッパー膜パターンは、クロムを含有し、かつ酸素の含有量が20原子%以下である材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0066】
一方、本発明のマスクブランクの変形例として、エッチングストッパー膜3をケイ素および酸素を含有する材料で形成した構成としてもよい。このケイ素および酸素を含有する材料で形成されるエッチングストッパー膜3は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングに対し、遮光膜4との間でエッチング選択性を有する。この変形例のマスクブランクにおけるエッチングストッパー膜3は、このマスクブランクから転写用マスクを作製したときに、光半透過パターンが形成された光半透過膜2上にエッチングストッパー膜3が残される。このケイ素および酸素を含有する材料で形成されるエッチングストッパー膜3は、転写用マスクの完成時に光半透過膜との積層構造で光半透過パターンを構成する。これらのことから、エッチングストッパー膜3を形成する材料は、塩素系ガスを含有し、かつ酸素ガスを含有しないエッチングガスでのドライエッチングに対し、遮光膜4との間でエッチング選択性を有すること、光半透過パターンを構成する1層として機能することの2つの条件を同時に満たすものを選定する必要がある。
【0067】
これらの条件を同時に満たす材料としては、ケイ素と酸素とを含有する材料が挙げられる。ケイ素と酸素とを含有する材料は、露光光に対する透過率が比較的高く、位相シフト量も比較的小さく、光半透過膜との積層構造からなる光半透過パターンの光学特性に与える影響が比較的小さい。エッチングストッパー膜3を形成する材料は、金属を含有していないことが好ましい。金属を含有する材料でエッチングストッパー膜3を形成すると、光半透過パターンの光学特性に与える影響が大きくなるためである。この変形例におけるエッチングストッパー膜3に好適な材料としては、ケイ素と、酸素、窒素、炭素、水素、ホウ素およびフッ素から選ばれる1以上の元素とからなる材料が挙げられる。これらの材料の中でも、ケイ素と酸素とからなる材料や、ケイ素と酸素と窒素とからなる材料が特に好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
【0069】
以下、実施例により、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.25mmの合成石英ガラスからなる透光性基板1を準備した。この透光性基板1は、端面および主表面を所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものであった。
【0070】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=12at%:88at%)を用い、アルゴン(Ar)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス雰囲気で反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、基板1上に、モリブデン、ケイ素および窒素からなる光半透過膜2(MoSiN膜 Mo:12at%,Si:39at%,N:49at%)を61nmの膜厚で形成した。なお、MoSiN膜の組成は、オージェ電子分光分析(AES)によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても同様である。
【0071】
次いで、上記MoSiN膜(光半透過膜2)が形成された透光性基板1に対して、光半透過膜2の表層に酸化層を形成する処理を施した。具体的には、加熱炉(電気炉)を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。加熱処理後の光半透過膜2をオージェ電子分光分析(AES)で分析したところ、光半透過膜2の表面から約1.5nm程度の厚さで酸化層が形成されていることが確認され、その酸化層の酸素含有量は42at%であった。加熱処理後のMoSiN膜(光半透過膜2)に対し、位相シフト量測定装置でArFエキシマレーザーの光の波長(約193nm)における透過率および位相差を測定したところ、透過率は6.07%、位相差が177.3度であった。
【0072】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガス雰囲気で反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、光半透過膜2の表面に接して、クロムおよび窒素からなるエッチングストッパー膜3(CrN膜 Cr:81at%,N:19at%)を5nmの膜厚で形成した。
【0073】
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に透光性基板1を設置し、タンタル(Ta)とハフニウム(Hf)との混合ターゲット(Ta:Hf=80at%:20at%)を用い、キセノン(Xe)ガス雰囲気でのスパッタリング(DCスパッタリング)により、エッチングストッパー膜3の表面に接して、タンタルおよびハフニウムからなる遮光膜4(TaHf膜 Ta:86.4at%,Hf:13.5at%)を33nmの膜厚で形成した。さらに所定の洗浄処理を施し、実施例1のマスクブランク100を得た。
【0074】
[転写用マスクの製造]
次に、実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の転写用マスク200を作製した。最初に、スピン塗布法によって遮光膜4の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなる第1のレジスト膜5を膜厚80nmで形成した(図3(a)参照)。次に、第1のレジスト膜5に対して、光半透過膜2に形成すべき光半透過パターンであるDRAM hp32nm世代の転写パターン(線幅40nmのSRAFを含んだ微細パターン)を電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、光半透過パターンを有する第1のレジスト膜5(第1のレジストパターン5a)を形成した(図3(b)参照)。次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、塩素ガス(Cl)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有する遮光膜4aを形成した。このドライエッチングにおけるエッチングバイアスは15Wであり、通常のドライエッチングで行われる範囲のドライエッチング条件であった。続いて第1のレジストパターン5aを除去した(図3(c)参照)。
【0075】
次に、光半透過パターンが形成された遮光膜4aをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜3aを形成した(図3(d)参照)。次いで、光半透過パターンが形成された遮光膜4aをマスクとし、フッ素系ガスを含有するエッチングガス(SF+He)を用いたドライエッチングを行い、光半透過パターンを有する光半透過膜2aを形成した(図3(e)参照)。
【0076】
次に、遮光膜4aに接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなる第2のレジスト膜6を膜厚80nmで形成した。続いて、レジスト膜6に対して、遮光膜4に形成すべき遮光帯パターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、遮光帯パターンを有するレジスト膜6b(第2のレジストパターン6b)を形成した(図3(f)参照)。次に、遮光帯パターンを有する第2のレジストパターンをマスクとし、塩素ガス(Cl)を用いたドライエッチングを行い、遮光帯パターンを有する遮光膜4bを形成した(図3(g)参照)。このドライエッチングにおけるエッチングバイアスは50Wであり、通常のドライエッチングで行われる範囲のドライエッチングよりもエッチングバイアスが大幅に大きい条件といえる。続いて第2のレジストパターン6bを除去した。
【0077】
次に、遮光帯パターンが形成された遮光膜4bをマスクとし、塩素と酸素との混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光帯パターンを有するエッチングストッパー膜3bを形成した。その後、所定の洗浄を施し、転写用マスク200が得られた(図3(h)参照)。
【0078】
[パターン転写性能の評価]
作製した実施例1の転写用マスク200に対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、パターンの短絡や断線はなく、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、この実施例1の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できるといえる。
【0079】
(比較例1)
[マスクブランクの製造]
エッチングストッパー膜3を除き、実施例1の場合と同様の手順で、マスクブランクを製造した。この比較例1のマスクブランクは、実施例1のマスクブランク100とは、エッチングストッパー膜3に、クロム、酸素、炭素および窒素からなるCrOCN膜(Cr:37at%,O:38at%,C:16at%,N:9at%)を10nmの膜厚で形成した点が異なる。
【0080】
[転写用マスクの製造]
次に、実施例1の転写用マスクの製造の手順と同様の手順で、比較例1のマスクブランクを用いて比較例1の転写用マスクを製造した。
【0081】
[パターン転写性能の評価]
作製した比較例1の転写用マスクに対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したときにおける転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、パターンが短絡している箇所や断線している箇所が多く発生しており、設計仕様を満たしていなかった。この結果から、この比較例1の転写用マスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した場合、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンは高精度で形成できないといえる。また、この比較例1の転写用マスクは、パターンの短絡箇所や断線箇所が多数あり、マスク欠陥修正装置での欠陥修正は実務上困難であった。
【符号の説明】
【0082】
1 透光性基板
2 光半透過膜
2a 光半透過パターンを有する光半透過膜
3 エッチングストッパー膜
3a 光半透過パターンを有するエッチングストッパー膜
3b 遮光帯パターンを有するエッチングストッパー膜
4 遮光膜
4a 光半透過パターンを有する遮光膜
4b 遮光帯パターンを有する遮光膜
5,6 レジスト膜
5a 第1のレジストパターン(光半透過パターンを有するレジスト膜)
6b 第2のレジストパターン(遮光帯パターンを有するレジスト膜)
100 マスクブランク
200 転写用マスク
図1
図2
図3