特許第6389399号(P6389399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389399
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】ルームシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 3/10 20060101AFI20180903BHJP
【FI】
   A43B3/10 Q
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-177168(P2014-177168)
(22)【出願日】2014年9月1日
(65)【公開番号】特開2016-49337(P2016-49337A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】下野 央子
(72)【発明者】
【氏名】中戸 恵
【審査官】 石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−316601(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3074911(JP,U)
【文献】 2WAYルームシューズ LKN−001,日本,2012年 6月16日,URL,https://www.scrio.co.jp/store/categories/shoes/shoes-indoor/6141.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内用の足被覆具であって、足甲と踵と足底とを被覆するとともに足首を露出するルームシューズであって、
足甲を覆う足甲部、踵を覆う踵部および足底を覆う足底部により形成され、
前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、
前記足甲部がメッシュ生地を含んで形成され、
前記メッシュ生地が、表側の第一メッシュ生地と肌側の第二メッシュ生地の二重メッシュ構造になっている特徴を備え、前記第二メッシュ生地の方が前記第一メッシュ生地よりもメッシュの目が細かい、ルームシューズ。
【請求項2】
室内用の足被覆具であって、足甲と踵と足底とを被覆するとともに足首を露出するルームシューズであって、
足甲を覆う足甲部、踵を覆う踵部および足底を覆う足底部により形成され、
前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、
前記足甲部がメッシュ生地を含んで形成され、
前記メッシュ生地が、表側の第一メッシュ生地と肌側の第二メッシュ生地の二重メッシュ構造になっている特徴を備え、前記第一メッシュ生地の方が前記第二メッシュ生地よりもメッシュ生地の厚みが厚い、ルームシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として室内で使用される室内履きであるルームシューズに関し、特に、履き心地が良く、滑りにくく、蒸れにくいルームシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
室内履きの代表的な足被覆具としてスリッパがある。このスリッパは、足を乗せて足裏に直接当接する中敷部材と、足先および甲部を包み込む形状に形成された甲被部材と、スリッパの下側に位置して、床面と直接当接する底部材と、これら中敷部材、甲被部材および底部材を位置決めして結合させる支持部材等によって構成されている。
このようなスリッパにおいては、足の後部(踵部)が覆われることなく露出するため歩く時に足先に若干力を入れないと脱げ易いといった問題があった。特に、主婦が家庭で炊事をしたり、掃除をするといったような家事で頻繁に動くことが多い場合には、スリッパがしばしば脱げかかったりして不安定になり易く、台所の床面等では滑って転んだりする危険がある。
【0003】
このようなスリッパの脱げやすい問題点を解決するために、足を被覆する部分を増やして足から抜け難い靴の形状に近い室内履き(ルームシューズ)も利用されている。
たとえば、特開平10−5002号公報(特許文献1)は、底部、甲部および側部が一体に形成されるとともに、底に縫い目がなく、さらに、EVA樹脂製の底板が表面に露出しないように形成して、台所の床面または畳の上でも安心して履けるようにした室内履きを開示する。この特許文献1に開示された室内履きは、底部と甲部および側部とが一体で底に縫い目がなく、底板が表面に露出しない保形されたスリップオンタイプ(本来は着脱の簡単なものの意味であって、結びひもや留め具がなく、足をすべり込ませて簡単に履けるタイプを指す)のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−5002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された室内履き(ルームシューズ)は、筒状の甲部、側部および踵部を備えるので、スリッパの脱げやすい問題点を解決できるとしても、以下の問題点がある。
すなわち、底板が表面に露出されていないために室内履き本体の底部がフラットとなるために使用中にひっかかったりして転倒することがないとの発明の効果が第0009段落に記載されているが、底部がフラットとなるために、却って、引っ掛かりが全くないので滑りやすくなる場合もある。また、内外に表出する外側布地および内側布地がいずれもタオル地等の伸縮性布地により形成されているために全体的にソフトな感触が得られるとともに使用に際して足にフィットして履き心地がよいとの発明の効果が第0009段落に記載されているが、足甲の大部分をタオル地等の伸縮性布地で覆うために夏季は蒸し暑く履き心地がよくない場合もある。
【0006】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、履き心地が良く、滑りにくく、蒸れにくいルームシューズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るルームシューズは以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るルームシューズは、室内用の足被覆具であって、足甲と踵と足底とを被覆するとともに足首を露出する。このルームシューズは、足甲を覆う足甲部、踵を覆う踵部および足底を覆う足底部により形成され、前記足底部に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部を設け、前記足甲部がメッシュ生地を含んで形成されている
特徴、および、前記足底部がキルティング生地を含んで形成されている特徴の少なくともいずれかの特徴を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、履き心地が良く、滑りにくく、蒸れにくいルームシューズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るルームシューズの着用状態を示す全体斜視図である。
図2図1のルームシューズの側面図である。
図3図1のルームシューズの非着用状態の平面図である。
図4図1のルームシューズの非着用状態の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るルームシューズ100を、図面に基づき詳しく説明する。なお、ルームシューズの構造には様々なものがあり、本発明は特定の構造に限定されるものではなく、後述する2つの特徴(第1の特徴および第2の特徴)を備えたものであれば、どのようなルームシューズの構造であっても、ルームシューズを構成する生地の型紙およびその縫製がどのようなものであっても構わない。そのため、以下に示すこのルームシューズ100の構造自体は単なる例示でしかない。
【0011】
図1に本実施の形態に係るルームシューズ100の着用状態を示す全体斜視図を、図2にその側面図を、図3図1のルームシューズの非着用状態の平面図を、図4にその裏面図を、それぞれ示す。
これらの図に示すように、このルームシューズ100は、大きくは、ユーザの足Fの足甲と踵と足底とを被覆するとともに足首を露出するように、足甲を覆う足甲部102、踵を覆う踵部108および足底を覆う足底部104により形成されている。なお、このルームシューズ100においては、足甲部102から踵部108へ向けて、足甲部102と一体化された足側部106を備える。そして、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が設けられ、開口部縫着線110により開口部の周囲が形成されている。開口部は、足甲部102の上部、足側部106の上部および踵部108の上部で形成されることになる。
【0012】
このようなルームシューズ100においては、第1の特徴として足甲部102がメッシュ生地を含んで形成されている特徴、および/または、第2の特徴として足底部104がキルティング生地を含んで形成されている特徴、を備える。これらの特徴についての詳細は後述する。
このルームシューズ100は、たとえば、足甲部102および足側部106を形成するメッシュ生地(後述するように二重メッシュ生地)と踵部108を形成する1枚の伸縮性生地とを側部縫着線120で縫い合わせて、さらに、これらの足底側と足底部104を形成する1枚のキルティング生地(表裏で生地組成が異なる)とを底部縫着線130で足底の1周分を縫い合わせすることにより、ルームシューズ100を立体的に形成している。そして、足甲部102の上部と足側部106の上部と踵部108の上部とを開口部縫着線110で縫製して一体化している。
【0013】
側部縫着線120および底部縫着線130は、それぞれの生地端部が解けてこないように端部処理され、端部処理が裏側(肌側)に出るように縫着される。開口部縫着線110は、その生地端部が解けてこないように、生地端部が開口部縫着線110の内部に巻き込まれるようにヘム処理されている。
このように、このルームシューズ100においては、足底部104に対して上下反対側に足を出し入れするための開口部が、足甲部102の上部、足側部106の上部および踵部108の上部に形成された開口部縫着線110により形成されている。
【0014】
この開口部を形成する開口部縫着線110は、たとえば、ゴム糸を挿入してダブルウエルトに伸縮性が強くなるように編成されており、伸縮性が強く形成された開口部縫着線110により足Fが強く締め付けられるので、ルームシューズ100が足から脱げにくい。
なお、平ゴム等の伸縮性細幅生地を、ルームシューズ100の開口部の生地に、熱プレス装置で接合するようにしても構わない。
【0015】
いずれにしても、伸縮性の高い開口部を形成することにより、履きやすく脱げにくいルームシューズ100を実現することができる。
そして、このルームシューズ100においては、第1の特徴としての足甲部102がメッシュ生地を含んで形成されている特徴、および、第2の特徴としての足底部104がキルティング生地を含んで形成されている特徴、の少なくともいずれかを備える。以下に、これらの特徴について図1図4を参照して詳しく説明する。
【0016】
第1の特徴については、足甲部102が、表側の第一メッシュ生地102Aと肌側の第二メッシュ生地102Bの二重メッシュ構造になっており、これらの第一メッシュ生地102Aおよび第二メッシュ生地102Bは、ポリエステル、ナイロン等の化学繊維、綿その他の繊維から形成されている。
そして、肌側の第二メッシュ生地102Bの方が第一メッシュ生地102Aよりもメッシュの目が細かく肌触りがよく、表側の第一メッシュ生地102Aの方が第二メッシュ生地102Bよりもメッシュ生地の厚みが厚くクッション性がよい。ただし、本発明がこのような二重メッシュ生地に限定されるものではない。
【0017】
このようにルームシューズ100が足Fを覆う多くの部分をメッシュ生地で形成しているので、夏季であってもルームシューズ100内部が蒸れることなく履き心地がよい。
なお、このルームシューズ100においては足甲部102(足甲部102から踵部108まで延設される足側部106も含めて)の全体がメッシュ生地で形成されているとしたが、足甲部102および足側部106の少なくとも一部がメッシュ生地で形成されていれば構わない。
【0018】
第2の特徴については、足底部104が、表側の第一生地104Aと肌側の第二生地104Bとの間にクッション性がある綿、芯または羽毛などを挟み、ランニング・ステッチで止め付けたキルティング生地で形成されている。
そして、肌側の第二生地104Bが肌触りが良く吸湿性の高い天然繊維(綿等)を含む生地で形成され、表側の第一生地104Aが合成皮革またはラミネート加工された滑りにくい生地等で形成されている。ただし、本発明がこのような生地に限定されるものではない。
【0019】
このようにルームシューズ100の足底部104を、(1)キルティング生地で形成したことにより、(1−1)クッション性がよいので履き心地がよく、(1−2)床面に当接する側にランニング・ステッチのわずかな凹凸があるので滑りにくいために室内で歩きやすく、(2)足底部104の肌側の第二生地104Bが肌触りが良く吸湿性の高いので蒸れることなく、(3)足底部104の外側の第一生地104Aが滑りにくい生地であるのでたとえ床面が水で濡れていても滑りにくいために室内で歩きやすい。
【0020】
なお、このルームシューズ100においては足底部104の全体がキルティング生地で形成されているとしたが、足底部104の少なくとも一部がキルティング生地で形成されていれば構わない。
以上のようにして、本実施の形態に係るルームシューズ100によると、足甲を覆う足甲部102、踵を覆う踵部108および足底を覆う足底部104により形成され、足甲部102がメッシュ生地を含んで形成され、足底部104がキルティング生地を含んで形成されているので、夏季であってもルームシューズ100内部が蒸れることなく履き心地がよく、滑りにくいために室内で歩きやすい。
【0021】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、室内で履くルームシューズ(室内履き)に好適であり、履き心地が良く、滑りにくく、夏季であっても蒸れにくいルームシューズに特に好ましい。
【符号の説明】
【0023】
100 ルームシューズ
102 足甲部
102A 表側足甲部
102B 肌側足甲部
104 底板部
104A 表側底板部
104B 肌側底板部
106 足側部
106A 表側足側部
106B 肌側足側部
108 踵部
110 開口部縫着線
120 側部縫着線
130 底部縫着線
図1
図2
図3
図4