(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0020】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
本実施形態に係る押出成形用金型は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設され、上記セル壁の厚さが0.21mm以下であるハニカム成形体を作製するために用いられ、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型であって、上記第二の面から見た上記第二貫通孔の形状は、上記ハニカム成形体の最外周壁を成形するための最外周スリットと、上記ハニカム成形体の最外周部に配置された最外周セル間のセル壁を成形するための外周スリットと、上記最外周セルより内側に配置された内部セルのセル壁を成形するための内部スリットとから構成された格子形状であり、上記第二の面から見た、上記内部スリットに囲まれた内部格子の形状は、同一の略矩形であり、上記第二の面から見た、上記内部格子の外側で、かつ、角部以外に配置された外周格子の形状は、上記内部格子の形状から2つの角部が面取りされた形状であり、かつ、上記面取りされた角部が上記最外周スリット側に配置されており、上記第二の面から見た上記外周格子の各面積が、上記内部格子の各面積の60〜80%であり、上記最外周スリット及び上記外周スリットの内壁面には原料通過抑制面が形成されていることを特徴とする。
【0022】
図1は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型の一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す断面図は、成形原料を押し出す方向に平行な方向における押出成形用金型の断面図である。ここで、成形原料を押し出す方向は、
図1中に矢印aで示す。
【0023】
図1に示すように、押出成形用金型100は、第一の面10aと、第一の面10aの反対側に形成された第二の面10bと、第一の面10aから第二の面10bに向かって形成された円筒形状の第一貫通孔111を有する原料供給部11と、第二の面10bから第一の面10aに向かって、第一貫通孔111と連通するように形成された第二貫通孔121を有する成形部12とを備える。成形部12は、複数の第二貫通孔121がつながって格子状に形成されたスリットである。
ここで、原料供給部11には、成形原料組成物を供給し、通過させるために、第一貫通孔111が形成されている。また、成形部12には、原料供給部11を通過した成形原料組成物をハニカム成形体の形状に成形するために、第二貫通孔121が形成されている。
なお、押出成形用金型100を固定するため、押出成形用金型100の周囲に形成された外枠20は、必要に応じて備えられていればよい。
【0024】
原料供給部11の厚さXは、5〜10mmであることが好ましい。原料供給部11の厚さXが5〜10mmであると、成形圧力を適切な範囲に維持することができ、押出成形用金型の寿命が長くなる。
原料供給部11の厚さXが5mm未満であると、原料供給部11の厚さXが薄くなりすぎるため、成形部12への負荷が大きくなり、押出成形用金型の寿命が短くなる場合がある。一方、原料供給部11の厚さXが10mmを超えると、成形圧力を高く設定しなければならず、成形速度を上げることが困難となる場合がある。無理に成形速度を上げようとすると、押出成形用金型100への負担が大きくなり、種々の不都合が発生しやすくなる場合がある。
【0025】
成形部12の厚さYは、1〜4mmであることが好ましい。成形部12の厚さが1〜4mmであると、成形圧力を適切な範囲に維持することができ、成形体の形状をほぼ設定通りとすることができる。
成形部12の厚さYが1mm未満であると、成形部12の厚さが薄くなりすぎるため、成形体の形状をほぼ設定通りとすることが困難となり、不良品が発生し易くなる場合がある。一方、成形部12の厚さYが4mmを超えると、成形圧力を高く設定しなければならず、成形速度を上げるのが困難となる場合がある。無理に成形速度を上げようとすると、押出成形用金型100への負担が大きくなり、種々の不都合が発生し易くなる場合がある。
【0026】
原料供給部11の厚さXに対する成形部12の厚さY(Y/X)は、0.1〜0.5であることが好ましい。原料供給部11の厚さXに対する成形部12の厚さY(Y/X)が0.1〜0.5であると、成形圧力を適切な範囲に維持することができ、成形体の形状をほぼ設定通りとすることができる。また、押出成形用金型の寿命を長く保つことができる。
原料供給部11の厚さXに対する成形部12の厚さY(Y/X)が0.1未満であると、成形部12の厚さYが小さすぎて(薄すぎて)、成形体の形状が設計から外れる場合がある。また、原料供給部11の厚さXが大きすぎて(厚すぎて)、成形圧力を高く設定しなければならず、成形速度を上げることが困難となる場合がある。
原料供給部11の厚さXに対する成形部12の厚さY(Y/X)が0.5を超えると、成形部12の厚さYが大きすぎて(厚すぎて)、成形圧力を高く設定しなければならず、成形速度を上げることが困難となる場合がある。また、原料供給部11の厚さXが小さすぎて(薄すぎて)、成形部12への負荷が大きくなり、押出成形用金型の寿命が短くなる場合がある。
【0027】
図2(a)は、
図1に示す押出成形用金型を第二の面から見たときの平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す押出成形用金型の一部拡大図である。
図2(a)に示すように、第二の面10bから見た第二貫通孔121の形状は、ハニカム成形体の最外周壁を成形するための最外周スリット121aと、ハニカム成形体の最外周部に配置された最外周セル間のセル壁を成形するための外周スリット121bと、最外周セルより内側に配置された内部セルのセル壁を成形するための内部スリット121cとから構成された格子形状である。
【0028】
ここで、最外周スリット121a、外周スリット121b及び内部スリット121cについて、
図2(a)及び(b)を用いて詳しく説明する。
最外周スリット121aは、ハニカム成形体の最外周壁を成形するためのスリットである。すなわち、
図2(b)に示すように、外周格子132及び角部外周格子133より外側に配置されたスリット、及び、外周格子132と、隣り合う外周格子132又は角部外周格子133との間に配置されたスリットのうち、スリット幅がこれらの格子間に向かって徐々に大きくなるスリットが、最外周スリット121aである。
外周スリット121bは、ハニカム成形体の最外周部に配置された最外周セル間のセル壁を成形するためのスリットである。ここで、ハニカム成形体の最外周部に配置された最外周セル間のセル壁とは、最外周セルより内側に配置された内部セルのセル壁と同一の厚さを有するセル壁をいう。すなわち、
図2(b)に示すように、外周格子132と隣り合う外周格子132との間に配置されたスリットのうち、内部スリット121cと同一のスリット幅を有するスリットが、外周スリット121bである。また、内部格子131の外側で、かつ、角部には、角部外周格子133が配置されているが、この角部外周格子133と隣り合う外周格子132との間に配置されたスリットのうち、内部スリット121cと同一のスリット幅を有するスリットも、外周スリット121bである。
内部スリット121cは、最外周セルより内側に配置された内部セルのセル壁を成形するためのスリットである。すなわち、
図2(b)に示すように、外周格子132より内側に配置されたすべてのスリットが、内部スリット121cである。例えば、内部格子131と隣り合う内部格子131との間に配置されたスリットは、内部スリット121cである。また、内部格子131と隣り合う外周格子132との間に配置されたスリットも、内部スリット121cである。
【0029】
最外周スリット幅(
図2(a)中、pで示す長さ)の最小値は、0.1〜0.6mmであることが好ましく、外周スリット幅(
図2(a)中、qで示す長さ)は、0.07〜0.30mmであることが好ましく、内部スリット幅(
図2(a)中、rで示す長さ)は、0.07〜0.21mmであることが好ましい。
最外周スリット121aのスリット幅の最小値は、内部スリット121cのスリット幅の1.5〜4倍の値である。
【0030】
第二の面10bから見た、内部スリット121cに囲まれた内部格子131の形状は、同一の略矩形αである。好ましくは、同一の正方形である。
ここで、内部スリット121cに囲まれた内部格子131とは、第二の面10bから見たとき、内部スリット121cの最も内側のラインで構成される格子をいう。
【0031】
第二の面10bから見た、内部格子131の外側で、かつ、角部以外に配置された外周格子132の形状は、内部格子131の形状から2つの角部が面取りされた形状であり、かつ、上記面取りされた角部が最外周スリット121a側に配置されている。そのため、最外周スリット121aのスリット幅pは、外周格子132と隣り合う外周格子132との間に向かうにつれて徐々に大きくなる。最外周スリット幅がこのように形成されていると、押出成形されたハニカム成形体の最外周壁が部分的に分厚くなるため、セル壁の厚さが0.21mm以下であっても、機械的に頑丈な構造となり、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、脱脂、焼成工程を行ったハニカム焼成体の熱容量の低下を抑制することができる。
【0032】
ここで、内部格子131の外側で、かつ、角部以外に配置された外周格子132とは、最外周スリット121a、外周スリット121b、及び、一部の内部スリット121cの最も内側のラインで構成される格子をいう。
なお、本明細書において、「角部が面取りされた形状」とは、略矩形の内部格子から、略矩形の角部を直線又は曲線で切り取った形状を意味する。
【0033】
第二の面10bから見た、外周格子132の形状は、
図3(a)〜(e)に示すような形状であってもよい。
図3(a)〜(e)は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型における、第二の面から見た外周格子の形状の一例を示す平面図である。ここで、
図3(a)〜(e)中に示す破線は、内部格子の形状を示す。
【0034】
図3(a)は、略矩形αの隣り合う2つの角部が2つの線分A及びBにより、それぞれ切り取られた6角形である外周格子132aの断面形状を示している。線分A及びBは直接接しておらず、線分A及びBを延長すると略矩形αの外側でこれらが交わることになる。また、切り取られた2つの角部の間にある略矩形αの辺の一部は、上記6角形の一辺を形成している。
図3(a)中、V
1及びV
2で示す長さは、同じ長さであることが好ましい。また、線分AとBとは、同じ長さであることが好ましい。
【0035】
図3(b)は、略矩形αの隣り合う2つの角部が2つの線分C及びDにより、それぞれ切り取られた5角形である外周格子132bの断面形状を示している。線分Cと線分Dとは略矩形αを形成する辺において交差している。なお、線分Cと線分Dとは略矩形αの内部で交差していてもよい。すなわち、切り取られる2つの角部の間には、上記5角形を構成する辺が存在していない。
【0036】
図3(c)は、略矩形αの隣り合う2つの角部のうち一方の角部が線分E及びFにより切り取られ、もう一方の角部が線分G及びHにより切り取られた8角形である外周格子132cの断面形状を示している。線分Eと線分Fとは、略矩形αの内部で互い交差している。さらに、線分Gと線分Hとも、略矩形αの内部で互い交差している。また、切り取られた2つの角部の間にある矩形αの辺の一部は、上記8角形の一辺を形成している。
【0037】
図3(d)は、略矩形αの隣り合う2つの角部が2つの曲線A´及びB´により、それぞれ切り取られた外周格子132dの断面形状を示している。曲線A´及びB´は、略矩形αの角部がR面取りされるように線分A及びBを折り曲げた曲線である。切り取られた2つの角部の間にある略矩形αの辺の一部は、外周格子132dの断面形状の輪郭を形成している。
【0038】
図3(e)は、略矩形αの隣り合う2つの角部が2つの曲線C´及びD´により、それぞれ切り取られた外周格子132eの断面形状を示している。曲線C´及びD´は、略矩形αの角部がR面取りされるように線分C及びDを折り曲げた曲線である。曲線C´と曲線D´とは、略矩形を形成する辺において交差している。なお、曲線C´と曲線D´とは、略矩形αの内部で交差していてもよい。
【0039】
図3(a)〜(e)に示す外周格子132の形状のうち、特に、
図3(d)又は(e)に示す形状であることが好ましい。外周格子132の形状が
図3(d)又は(e)に示す形状であると、製造されるハニカム構造体の最外周壁が滑らかな曲線から構成されるため、クラックの起点となりにくくなる。そのため、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有するハニカム構造体を製造することができる。
【0040】
外周格子132の各面積は、内部格子131の各面積の60〜80%である。外周格子132の各面積が、内部格子131の各面積の60〜80%であると、押出成形されたハニカム成形体の最外周壁の厚さが厚くなる。その結果、脱脂、焼成、接着工程を行うことにより、圧力損失が低く、熱容量の高いハニカム構造体を製造することができる。
【0041】
内部格子131の外側で、かつ、角部には、角部外周格子133が配置されている。角部外周格子133の形状は、特に限定されないが、内部格子131の形状から少なくとも1つの角部が面取りされた形状であることが好ましい。角部外周格子133がこのような形状であると、押出成形されたハニカム成形体の最外周壁近傍の体積が大きくなる。そのため、ハニカム成形体は、セル壁の厚さが0.21mm以下であっても、機械的に頑丈な構造となり、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有する。また、脱脂、焼成工程を行ったハニカム焼成体の熱容量の低下を抑制することができる。
【0042】
第二の面10bから見た、角部外周格子133の形状は、
図4(a)〜(d)に示すような形状であってもよい。
図4(a)〜(d)は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型における、第二の面から見た角部外周格子の形状の一例を示す平面図である。ここで、
図4(a)〜(d)中に示す破線は、内部格子の形状を示す。
【0043】
図4(a)は、略矩形αの角部のうち最も押出成形用金型の内側になる角部を除く3つの角部が、線分I、J及びKにより、それぞれ切り取られた7角形である角部外周格子133aの断面形状を示している。線分I及びJは直接接しておらず、線分I及びJを延長すると略矩形αの外側でこれらが交わることになる。また、線分I及びKは直接接しておらず、線分I及びKを延長すると略矩形αの外側でこれらが交わることになる。切り取られた3つの角部の間にそれぞれある略矩形αの辺の一部は、角部外周格子133aの断面形状である7角形の一辺をそれぞれ形成している。
図4(a)中、V
3及びV
4で示す長さは、同じ長さであることが好ましい。また、W
2及びW
3で示す長さは、同じ長さであることが好ましい。さらに、線分I及びJ、並びに、線分I及びKは、それぞれの線分を延長すると略矩形αの外側で直角に交わることが好ましい。
【0044】
図4(b)は、略矩形αの角部のうち最も押出成形用金型の内側になる角部が線分Lにより切り取られた5角形である角部外周格子133bの断面形状を示している。
【0045】
図4(c)は、略矩形αの角部のうち最も押出成形用金型の内側になる角部を除く3つの角部が、曲線I´、J´及びK´により、それぞれ切り取られた角部外周格子133cの断面形状を示している。曲線I´、J´及びK´は、略矩形αの角部がR面取りされるように線分I、J及びKを折り曲げた曲線である。切り取られた3つの角部の間にそれぞれある略矩形αの辺の一部は、角部外周格子133cの断面形状の輪郭を形成している。
【0046】
図4(d)は、略矩形αの角部のうち最も押出成形用金型の内側になる角部が曲線L´により切り取られた角部外周格子133dの断面形状を示している。曲線L´は、略矩形αの角部がR面取りされるように線分Lを折り曲げた曲線である。
【0047】
図4(a)〜(d)に示す角部外周格子133の形状のうち、特に、
図4(a)又は(c)に示す形状であると、押出成形後、脱脂、焼成工程を行って得られたハニカム焼成体に、圧縮応力がかかりにくくなる。そのため、外部からの衝撃等に対し充分に高い強度を有するハニカム焼成体を得ることができる。
【0048】
次に、最外周スリット121a及び外周スリット121bの内壁面に形成された原料通過抑制面16について説明する。ここで、原料通過抑制面とは、原料が通過しにくくなるよう、表面を加工した面のことをいう。
原料通過抑制面としては、例えば、放電加工により形成された粗化面が挙げられる。一般的に、押出成形用金型は、ブレード加工により所定の形状に加工される。そこで、本発明では、第一貫通孔111及び内部スリット121cをブレード加工により形成した後、最外周スリット121a及び外周スリット121bを放電加工により形成することで、最外周スリット121a及び外周スリット121bの内壁面に粗化面を形成する。最外周スリット121a及び外周スリット121bの内壁面に粗化面が形成されていると、粗化面が抵抗となって、成形原料組成物が通りにくくなる。その結果、内部スリット121cから押し出される成形原料組成物が、最外周スリット121a及び外周スリット121bから押し出される成形原料組成物に引っ張られにくくなり、切れにくくなる。また、最外周スリット121a及び外周スリット121bから押し出される成形原料組成物が、内部スリット121cから押し出される成形原料組成物に引っ張られにくくなり、撚れにくくなる。
【0049】
原料通過抑制面16が粗化面で ある場合、表面粗さRaは、0.1〜0.6μmである。
なお、表面粗さRaは、JIS B 0601(1994)に準拠した中心線平均粗さであり、例えば、触針式表面粗さ測定器等により測定することができる。
【0050】
内部スリット121cの内壁面の表面粗さRaは、0.01〜0.07μmであることが好ましい。内部スリット121cの内壁面の表面粗さRaが0.01〜0.07μmであると、好適な排出速度で成形原料を押し出すことができる。
上記内部スリット121cの内壁面の表面粗さRaが0.01μm未満であると、上記内部スリットから押し出される成形原料の排出速度に比べて、上記最外周スリット及び上記外周スリットから押し出される成形原料の排出速度が遅くなり、成形原料が切れたり、撚れたりすることがある。
上記内部スリット121cの内壁面の表面粗さRaが0.07μmを超えると、上記内部スリットから押し出される成形原料の排出速度に比べて、上記最外周スリット及び上記外周スリットから押し出される成形原料の排出速度が速くなり、成形原料が切れたり、撚れたりすることがある。
【0051】
図5は、
図1に示す押出成形用金型を第二の面から見たときの拡大図である。
図5に示すように、内部スリット121c(第二貫通孔121)は、原料供給部11の第一貫通孔111と連通するように格子状に設けられている。
上記各スリット同士が交わる箇所を交点15としたとき、交点15の数は、100〜500個/inch
2であることが望ましく、200〜400個/inch
2であることがより望ましい。
【0052】
原料供給部11の第一貫通孔111は、通常、スリットが交差する位置に対応して設けられている。
具体的には、
図5に示すように、スリット121c同士の交点のうち隣接する交点をそれぞれ15a及び15bとしたとき、第一貫通孔111は交点15a上に設けられている。
【0053】
成形原料組成物は、作製するハニカム成形体(ハニカム構造体)の構成材料に応じて選択すればよい。成形原料組成物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、又は、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、又は、炭化タングステン等の炭化物セラミック粉末、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、シリカ、又は、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック粉末等を挙げることができる。その中でも特に、炭化ケイ素粉末であることが好ましい。
【0054】
押出成形用金型の素材は、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金、炭化タングステンとコバルトとその他微量粒子(例えば、TiC、TiN等)とを混合して焼結した超硬合金、工具鋼、ステンレス鋼、又は、アルミニウム合金等であることが好ましく、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金であることがより好ましい。
ここで、炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金の硬度は、一般に、1000〜1500Hvである。
【0055】
次に、本実施形態に係る押出成形用金型の製造方法について説明する。
本実施形態に係る押出成形用金型は、金型素材に第一貫通孔111及び内部スリット121cを形成する第一加工工程と、上記第一加工工程により得られた金型に最外周スリット121a及び外周スリット121bを形成する第二加工工程とを行うことにより製造することができる。
【0056】
まず、金型素材に第一貫通孔111及び内部スリット121cを形成する第一加工工程を行う。
具体的には、
図1に示すように、まず、第一の面10aから第二の面10bに向かって第一貫通孔111を形成し、その後、第二の面10bから第一の面10aに向かって、第一貫通孔111と連通するように内部スリット121cを形成する。
第一貫通孔111及び内部スリット121cの形状等については、既に説明したため、その詳細な説明は省略する。
【0057】
第一貫通孔111及び内部スリット121cを形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ブレード加工等が挙げられる。
【0058】
次に、最外周スリット121a及び外周スリット121bを形成する第二加工工程を行う。
具体的には、
図2(a)に示すように、第二の面10bから第一の面10aに向かって、第一貫通孔111と連通するように最外周スリット121a及び外周スリット121bを形成する。上記第二加工工程により、最外周スリット121a及び外周スリット121bの内壁面には、原料通過抑制面16が形成される。
原料通過抑制面16が粗化面である場合、最外周スリット121a及び外周スリット121bを形成する方法としては、例えば、放電加工等が挙げられる。
【0059】
最後に、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム構造体の製造方法の一例について説明する。
ハニカム構造体の製造方法は、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて成形原料を押出成形することにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製する工程と、上記ハニカム成形体を焼成することにより、ハニカム焼成体を作製する工程と、少なくとも1つのハニカム焼成体を用いてセラミックブロックを作製する工程とを含む。
【0060】
(1)まず、セラミック粉末とバインダとを含む湿潤混合物(成形原料)を調製する。
具体的には、まず、セラミック粉末と、有機バインダと、液状の可塑剤と、潤滑剤と、水とを混合することにより、ハニカム成形体製造用の湿潤混合物を調製する。
【0061】
上記セラミック粉末は、作製するハニカム成形体(ハニカム構造体)の構成材料に応じて選択すればよい。
ハニカム成形体の構成材料の主成分としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミック、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミック、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、シリカ、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック等を挙げることができる。
ハニカム成形体の構成材料の主成分の中では、非酸化物セラミックが好ましく、炭化ケイ素が特に好ましい。耐熱性、機械強度、熱伝導率等に優れるからである。
本明細書において、「主成分が炭化ケイ素である」とは、セラミック粉末が炭化ケイ素を60重量%以上含有することをいう。主成分が炭化ケイ素である場合、炭化ケイ素のみならず、ケイ素結合炭化ケイ素も含まれる。また、炭化ケイ素以外の構成材料の主成分についても同様である。
【0062】
(2)次に、上記湿潤混合物(成形原料)を押出成形し、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等を用いて乾燥させることにより、所定の形状のハニカム成形体を作製する。
この際、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて押出成形を行う。
【0063】
図6は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型を用いて押出成形されたハニカム成形体の一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示すハニカム成形体500には、多数のセル501がセル壁502を隔てて長手方向(
図6中、両矢印fの方向)に並設されるとともに、その周囲に最外周壁503が形成されている。
【0064】
(3)その後、ハニカム成形体を、所定の条件で脱脂処理(例えば、200〜500℃)、及び、焼成処理(例えば、1400〜2300℃)を行う。
上記の工程を経ることにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設され、周囲に外周壁が形成されたハニカム焼成体を作製することができる。
なお、上記ハニカム成形体の乾燥体の脱脂処理及び焼成処理の条件は、従来からハニカム焼成体を作製する際に用いられている条件を適用することができる。
【0065】
本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム構造体の製造方法においては、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼成体を作製することもできる。この場合、上記(3)の工程において、乾燥後、ハニカム成形体の乾燥体が有するセルの所定の端部に、封止材となる封止材ペーストを所定量充填してセルを封止する。その後、上述した脱脂処理及び焼成処理を行うことにより、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼成体を作製することができる。なお、セルを封止する処理は、焼成処理以降に行うこともできる。
ここで、封止材ペーストとしては、上記湿潤混合物を用いることができる。
【0066】
図7(a)は、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム焼成体の一例を模式的に示す斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示すハニカム焼成体のM−M線断面図である。
図7(a)及び
図7(b)に示すハニカム焼成体600には、多数のセル601がセル壁602を隔てて長手方向(
図7(a)中、矢印gの方向)に並設されるとともに、その周囲に外周壁603が形成されている。そして、セル601のいずれかの端部は、封止材604で封止されている。
従って、一方の端面が開口したセル601に流入した排ガス(
図7(b)中、排ガスの流れを矢印で示す)は、必ずセル601を隔てるセル壁602を通過した後、他方の端面が開口した他のセル601から流出するようになっている。排ガスがセル壁602を通過する際に、排ガス中のPM等が捕集されるため、セル壁602は、フィルタとして機能する。
【0067】
このように、セルのいずれか一方の端部が封止されたハニカム焼成体を含むハニカム構造体は、セラミックフィルタとして好適に使用することができる。また、セルのいずれの端部も封止されていないハニカム焼成体を含むハニカム構造体は、触媒担持体として好適に使用することができる。
【0068】
(4)続いて、少なくとも1つのハニカム焼成体を用いてセラミックブロックを作製する。
一例として、複数のハニカム焼成体が接着材層を介して結束されてなるセラミックブロックを作製する方法について説明する。
まず、上記ハニカム焼成体のそれぞれの所定の側面に、接着材層となる接着材ペーストを塗布して接着材ペースト層を形成し、この接着材ペースト層の上に、順次他のハニカム焼成体を積層する工程を繰り返し、ハニカム焼成体の集合体を作製する。
次に、ハニカム焼成体の集合体を加熱して接着材ペースト層を乾燥、固化させて接着材層とすることにより、セラミックブロックを作製する。
ここで、接着材ペーストとしては、例えば、無機バインダと有機バインダと無機粒子とからなるものを使用する。また、上記接着材ペーストは、さらに無機繊維及び/又はウィスカを含んでいてもよい。
【0069】
(5)その後、セラミックブロックに切削加工を施す。
具体的には、ダイヤモンドカッター等を用いてセラミックブロックの外周を切削することにより、外周が円柱状に加工されたセラミックブロックを作製する。
【0070】
(6)さらに、円柱状のセラミックブロックの外周面に、外周コート材ペーストを塗布し、乾燥固化して外周コート層を形成する。
ここで、外周コート材ペーストとしては、上記接着材ペーストを使用することができる。なお、外周コート材ペーストして、上記接着材ペーストと異なる組成のペーストを使用してもよい。
また、外周コート層は必ずしも設ける必要はなく、必要に応じて設ければよい。
以上の工程によって、ハニカム構造体を製造することができる。
【0071】
図8は、本実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造するハニカム構造体の一例を模式的に示す斜視図である。
図8に示すハニカム構造体700では、ハニカム焼成体600が複数個ずつ接着材層701を介して結束されてセラミックブロック703を構成し、さらに、このセラミックブロック703の外周に外周コート層702が形成されている。なお、外周コート層は、必要に応じて形成されていればよい。
このような、ハニカム焼成体が複数個結束されてなるハニカム構造体は、集合型ハニカム構造体ともいう。
【0072】
以下、本実施形態に係る押出成形用金型の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態に係る押出成形用金型では、最外周スリット及び外周スリットの内壁面に原料通過抑制面が形成されている。最外周スリット及び外周スリットの内壁面に原料通過抑制面が形成されていると、原料通過抑制面が抵抗となり、上記最外周スリット及び上記外周スリットから成形原料が排出されにくくなる。その結果、上記最外周スリット及び上記外周スリットから押し出される成形原料の排出速度が遅くなり、上記最外周スリット、上記外周スリット及び上記内部スリットから押し出される成形原料の排出速度のバラツキが小さくなる。
このように、上記最外周スリット、上記外周スリット及び上記内部スリットから押し出される成形原料の排出速度のバラツキが小さくなると、上記内部スリットから押し出される成形原料組成物が、上記最外周スリット及び上記外周スリットから押し出される成形原料組成物に引っ張られにくくなり、切れにくくなる。また、上記最外周スリット及び上記外周スリットから押し出される成形原料組成物が、上記内部スリットから押し出される成形原料組成物に引っ張られにくくなり、撚れにくくなる。その結果、セル壁の厚さが0.21mm以下であるハニカム成形体を問題なく製造することができる。
さらに、このようなハニカム成形体を脱脂、焼成してハニカム焼成体を作製し、得られたハニカム焼成体を接着材層を介して複数個結束することにより、圧力損失が低く、かつ、熱容量が高いハニカム構造体を製造することができる。
(2)本実施形態に係る押出成形用金型では、上記原料通過抑制面の表面粗さRaは、上記内部スリットの内壁面の表面粗さRaより大きいことが望ましい。
上記原料通過抑制面の表面粗さRaが、上記内部スリットの内壁面の表面粗さRaより大きいと、上記最外周スリット及び上記外周スリットから成形原料がより排出されにくくなる。その結果、上記最外周スリット及び上記外周スリットから押し出される成形原料の排出速度が遅くなり、上記最外周スリット、上記外周スリット及び上記内部スリットから押し出される成形原料の排出速度のバラツキがより小さくなる。
(3)本実施形態に係る押出成形用金型では、原料通過抑制面は、放電加工により形成された粗化面であることが望ましい。
原料通過抑制面が放電加工により形成されていると、好適な抵抗を有する原料通過抑制面を形成することができる。
また、放電加工を用いると、硬度の高い金型の素材であっても、所定形状に好適に加工することができる。さらに、放電加工を用いると、原料通過抑制面を形成するスリット内壁面の形状が複雑であっても、好適に加工することができる。
(4)本実施形態に係る押出成形用金型では、粗化面の表面粗さRaは、0.1〜0.6μmであることが望ましい。
粗化面の表面粗さRaが0.1〜0.6μmであると、好適な排出速度で成形原料を押し出すことができる。粗化面の表面粗さRaが0.1μm未満であると、内部スリットから押し出される成形原料の排出速度に比べて、最外周スリット及び外周スリットから押し出される成形原料の排出速度が速くなり、成形原料が切れたり、撚れたりすることがある。粗化面の表面粗さRaが0.6μmを超えると、内部スリットから押し出される成形原料の排出速度に比べて、最外周スリット及び外周スリットから押し出される成形原料の排出速度が遅くなり、成形原料が切れたり、撚れたりすることがある。
(5)本実施形態に係る押出成形用金型では、最外周スリットのスリット幅の最小値は、上記内部スリットのスリット幅の1.5〜4倍の値であることが望ましい。
最外周スリットのスリット幅の最小値が、内部スリットのスリット幅の1.5〜4倍の値であると、より熱容量が高いハニカム構造体を製造することができる。最外周スリットのスリット幅の最小値が、内部スリットのスリット幅の1.5倍未満の値であると、製造されるハニカム構造体の熱容量が低い場合がある。また、製造されるハニカム構造体の強度が弱い場合がある。最外周スリットのスリット幅の最小値が、内部スリットのスリット幅の4倍を超える値であると、製造されるハニカム構造体の最外周壁の厚さが厚くなり、圧力損失が高くなる場合がある。
【0073】
(実施例)
以下、本実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
実施例では、外周格子が
図3(a)に示す形状、角部外周格子が
図4(a)に示す形状である場合の本発明の第一実施形態をより具体的に示す。
(実施例1)
(1)押出成形用金型の製造
まず、金型素材として、材質が炭化タングステンとコバルトとを混合して焼結した超硬合金を準備した。ここで、金型素材の硬度は、1200Hvであった。
次に、ブレード加工により、上記金型素材に第一貫通孔及び内部スリットを形成した。具体的には、まず、第二貫通孔を形成する第二の面を周囲よりも突出させるように外周部を切削した。次に、第一の面から第二の面に向かって断面形状が円形の第一貫通孔を形成した。その後、第二の面から第一の面に向かって、第一貫通孔と連通するように、内部スリットを形成した。
第一貫通孔及び内部スリットの内壁面の表面粗さRaは、0.0358μmであった。
【0075】
ブレード加工は、スライサー((株)ナガセインテグレックス製、SPG−150)を用いて行った。なお、加工条件は、ブレード幅:0.23mm、回転数:8150rpm、送り速度:4mm/minとした。
【0076】
続いて、放電加工により、最外周スリット及び外周スリットを形成した。
具体的には、第二の面から第一の面に向かって、第一貫通孔と連通するように最外周スリット及び外周スリットを形成した。これにより、最外周スリット及び外周スリットの内壁面には、表面粗さRaが0.4100μmの粗化面が形成された。
【0077】
放電加工は、形彫放電加工機(三菱電機(株)社製、EA8PV)を用いて、設計した図面に基づいて行った。
【0078】
製造した押出成形用金型は、原料供給部の厚さXが8.5mm、成形部の厚さYが2mm、最外周スリット幅pの最小値が0.3048mm、外周スリット幅qが0.0762mm、内部スリット幅rが0.0762mmであった。つまり、最外周スリット幅pの最小値は、内部スリットのスリット幅の4倍であった。
また、第二の面から見た内部格子の形状は、一辺が1.8mmの正方形であった。第二の面から見た外周格子の形状は、
図3(a)に示す形状であって、
図3(a)中にV
1及びV
2で示す長さは0.33mmであり、W
1で示す長さは0.1mmであった。また、線分AとBとは、同じ長さであった。第二の面から見た角部外周格子の形状は、
図4(a)に示す形状であって、
図4(a)中にV
3及びV
4で示す長さは0.33mmであり、W
2及びW
3で示す長さは0.1mmであった。また、線分I及びJ、並びに、線分I及びKは、それぞれの線分を延長すると略矩形αの外側で直角に交わっていた。
【0079】
スリットを構成する第二貫通孔は、原料供給部を構成する第一貫通孔と連通するように格子状に設けられ、スリット溝同士の交点の数は200個/inch
2であった。
【0080】
(2)ハニカム成形体の製造
(2−1)成形原料組成物準備工程
平均粒子径22μmを有する炭化ケイ素の粗粉末52.8重量%と、平均粒子径0.5μmの炭化ケイ素の微粉末22.6重量%とを混合し、得られた混合物に対して、有機バインダ(メチルセルロース)4.6重量%、潤滑剤(日油社製 ユニルーブ)0.8重量%、グリセリン1.3重量%、造孔材(アクリル樹脂)1.9重量%、オレイン酸2.8重量%、及び、水13.2重量%を加えて混合して成形原料組成物を準備した。
(2−2)押出成形工程
上記(1)で製造した押出成形用金型を押出成形装置に取付け、上記(2−1)で準備した成形原料組成物を押出成形装置内に投入した。その後、成形速度4000mm/minで成形体を連続的に作製した後、切断、及び、乾燥させることにより、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設されたハニカム成形体を作製した。
なお、作製したハニカム成形体の長手方向の長さは12.7cm、長手方向に垂直な断面において、断面形状は正方形で、大きさは34.3mm×34.3mm、最外周壁の厚さの最小値は0.3048mm、内部セルのセル壁の厚さは0.0762mm、セルの数は18セル×18セルであった。
【0081】
(実施例2〜4)
製造した押出成形用金型の内部スリット幅rを、実施例2では0.1016mm、実施例3では0.1524mm、実施例4では0.2032mmとした以外は、実施例1と同様にして押出成形用金型を製造し、その後、上記押出成形用金型を用いてハニカム成形体を作製した。
【0082】
(比較例1)
ブレード加工により、最外周スリット及び外周スリットを形成した以外は、実施例1と同様にして押出成形用金型を製造し、その後、上記押出成形用金型を用いてハニカム成形体を作製した。最外周スリット及び外周スリットの内壁面の表面粗さRaは、0.0358μmであった。
【0083】
(比較例2〜4)
製造した押出成形用金型の内部スリット幅rを、比較例2では0.1016mm、比較例3では0.1524mm、比較例4では0.2032mmとした以外は、比較例1と同様にして押出成形用金型を製造し、その後、上記押出成形用金型を用いてハニカム成形体を作製した。
【0084】
(良品率の算出)
実施例1〜4、及び、比較例1〜4のハニカム成形体を、それぞれ20個ずつ作製した。そして、セル壁が切れていない、セル壁に穴が開いていない、かつ、セル壁が波打っていないハニカム成形体を良品であるとして、良品率を下記式(1)に基づき算出した。算出した良品率を表1に示す。
【数1】
【0086】
表1の結果からわかるように、最外周スリット及び外周スリットの内壁面に原料通過抑制面が形成された実施例1では、同じ内部スリット幅を有し、最外周スリット及び外周スリットの内壁面に原料通過抑制面が形成されていない比較例1に比べて、良品率が高いことが分かる。同様に、最外周スリット及び外周スリットの内壁面に原料通過抑制面が形成された実施例2〜4でも、それぞれ同じ内部スリット幅を有し、最外周スリット及び外周スリットの内壁面に原料通過抑制面が形成されていない比較例2〜4に比べて、良品率が高いことが分かる。
【0087】
(その他の実施形態)
本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型を用いて製造されるハニカム構造体は集合型ハニカム構造体であるが、1つのハニカム焼成体からなるハニカム構造体(一体型ハニカム構造体)を製造してもよい。
【0088】
一体型ハニカム構造体を製造する場合には、押出成形により成形するハニカム成形体の大きさが、本発明の第一実施形態において説明したハニカム成形体の大きさに比べて大きく、その外形が異なる他は、本発明の第一実施形態と同様にしてハニカム成形体を作製する。
つまり、得られるハニカム成形体の形状に対応する断面形状を有する他は、本発明の第一実施形態に係る押出成形用金型と同様の構成を有する押出成形用金型を用いてハニカム成形体を作製すればよい。
【0089】
その他の工程は、本発明の第一実施形態で説明したハニカム構造体の製造工程と同様である。ただし、ハニカム構造体が1つのハニカム焼成体からなるため、ハニカム焼成体の集合体を作製する必要はない。また、円柱状のハニカム成形体を作製する場合には、セラミックブロックの外周を切削する必要はない。
【0090】
本発明の実施形態に係る押出成形用金型において、金型本体の原料供給部の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、成形原料を押し出す方向に平行な断面形状が矩形状、テーパー形状、又は、台形状等を挙げることができる。
これらの中では、成形原料の押出しが容易である点で、断面形状がテーパー形状であることが望ましい。
【0091】
同様に、本発明の実施形態に係る押出成形用金型において、金型本体のスリットの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、成形原料を押し出す方向に平行な断面形状が矩形状、又は、テーパー形状等を挙げることができる。
これらの中では、スリットの形成が容易である点で、断面形状が矩形状であることが望ましい。
【0092】
本発明の押出成形用金型は、多数のセルがセル壁を隔てて長手方向に並設され、上記セル壁の厚さが0.21mm以下であるハニカム成形体を作製するために用いられ、第一の面と、上記第一の面の反対側に形成された第二の面と、上記第一の面から上記第二の面に向かって形成された第一貫通孔を有する原料供給部と、上記第二の面から上記第一の面に向かって、上記第一貫通孔と連通するように形成された第二貫通孔を有する成形部とを備える押出成形用金型であって、上記第二の面から見た上記第二貫通孔の形状は、上記ハニカム成形体の最外周壁を成形するための最外周スリットと、上記ハニカム成形体の最外周部に配置された最外周セル間のセル壁を成形するための外周スリットと、上記最外周セルより内側に配置された内部セルのセル壁を成形するための内部スリットとから構成された格子形状であり、上記第二の面から見た、上記内部スリットに囲まれた内部格子の形状は、同一の略矩形であり、上記第二の面から見た、上記内部格子の外側で、かつ、角部以外に配置された外周格子の形状は、上記内部格子の形状から2つの角部が面取りされた形状であり、かつ、上記面取りされた角部が上記最外周スリット側に配置されており、上記第二の面から見た上記外周格子の各面積が、上記内部格子の各面積の60〜80%であり、上記最外周スリット及び上記外周スリットの内壁面には原料通過抑制面が形成されていることが必須の構成要素である。
係る必須の構成要素に、本発明の第一実施形態、及び、本発明のその他の実施形態で詳述した種々の構成(例えば、一体型ハニカム構造体、原料供給部の形状、スリットの形状等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。