(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389417
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】循環式索道装置
(51)【国際特許分類】
B61B 12/00 20060101AFI20180903BHJP
B61B 12/02 20060101ALI20180903BHJP
B66B 21/10 20060101ALI20180903BHJP
B66B 23/10 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
B61B12/00 A
B61B12/02 C
B66B21/10 Z
B66B23/10
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-217958(P2014-217958)
(22)【出願日】2014年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-84018(P2016-84018A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】赤壁 毅彦
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0282121(US,A1)
【文献】
特開平09−132135(JP,A)
【文献】
特開平07−323838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 12/00
B61B 1/00
B61B 11/00
B66B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に架設された索条と、索条に吊下げられた状態で移動する箱型で移動方向と直交する方向を向く側面に乗降口を有する搬器と、乗降場所となるプラットホームとを備え、プラットホームで搬器を所定速度で移動させつつ乗降口から搬器に乗客が乗降するようにした循環式索道装置であって、
プラットホームに、搬器と同じ所定速度で搬器の移動方向に移動する動く歩道を設けるものにおいて、
動く歩道は、その歩道面が搬器の乗降口の床面と同等高さになるように、且つ、搬器が正規の吊下げ姿勢であるときは搬器の乗降口側の側面下部と動く歩道の側端部との間に隙間が空くように設置され、搬器がプラットホームの所定区間を移動する際、搬器を正規の吊下げ姿勢から動く歩道側に揺動させて、搬器の乗降口側の側面下部を動く歩道の側端部に密着させる密着手段を設けると共に、搬器の乗降口側の側面下部と動く歩道の側端部との何れか一方に緩衝材を設けることを特徴とする循環式索道装置。
【請求項2】
前記密着手段は、前記搬器の床下に設けられる案内輪と、案内輪が係合するように前記動く歩道の側方に敷設される案内軌条とで構成され、案内軌条により案内輪を介して搬器が正規の吊下げ姿勢から動く歩道側に揺動されることを特徴とする請求項1記載の循環式索道装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中に架設された索条と、索条に吊下げられた状態で移動する箱型で移動方向と直交する方向を向く側面に乗降口を有する搬器と、乗降場所となるプラットホームとを備える循環式索道装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の循環式索道装置では、プラットホームで搬器を所定速度で移動させつつ乗降口から搬器に乗客が乗降するようにしている。ここで、乗降時には、搬器の側面の乗降口に対する乗降方向と直交する搬器の移動方向の力が慣性力として乗客に作用するため、上記所定速度を低速に設定しても、足腰の弱い人は乗降時によろめきやすく安心して乗降することができない。
【0003】
また、従来、軌条に沿って移動する搬器を備える装置であるが、特許文献1により、搬器と同じ所定速度で搬器の移動方向に移動する動く歩道をプラットホームに設けるものが知られている。これによれば、搬器と動く歩道との間の相対速度差が零になって、乗降時に乗客に乗降方向と直交する方向の力が働かなくなり、安心して乗降できるようになる。
【0004】
そこで、上記技術を循環式索道装置に適用することが考えられる。この場合、バリアフリー性を向上するため、動く歩道をその歩道面が搬器の乗降口の床面と同等高さになるように設置することが望まれる。但し、循環式索道装置では、搬器の揺れを考慮しなければならず、搬器がプラットホームに進入する際に搬器が揺れても動く歩道に搬器が当たらないようにするため、搬器が正規の吊下げ姿勢であるときは搬器の乗降口側の側面下部と動く歩道の側端部との間に隙間が空くように動く歩道を設置する必要がある。
【0005】
然し、このままでは、搬器の乗降口側の側面下部と動く歩道の側端部との間の隙間に足を挟む恐れがある。尚、動く歩道を、その側端部が搬器の下に潜り込むように搬器より低い位置に設置して、上記隙間が生じないようにすることも考えられるが、これでは搬器の乗降口の床面と動く歩道との間に段差を生じてしまい、バリアフリー性を損なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−229775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、足腰の弱い人でも搬器に安心安全に乗降できるようにしたバリアフリー性に優れた循環式索道装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、空中に架設された索条と、索条に吊下げられた状態で移動する箱型で移動方向と直交する方向を向く側面に乗降口を有する搬器と、乗降場所となるプラットホームとを備え、プラットホームで搬器を所定速度で移動させつつ乗降口から搬器に乗客が乗降するようにした循環式索道装置であって、プラットホームに、搬器と同じ所定速度で搬器の移動方向に移動する動く歩道を設けるものにおいて、動く歩道は、その歩道面が搬器の乗降口の床面と同等高さになるように、且つ、搬器が正規の吊下げ姿勢であるときは搬器の乗降口側の側面下部と動く歩道の側端部との間に隙間が空くように設置され、搬器がプラットホームの所定区間を移動する際、搬器を正規の吊下げ姿勢から動く歩道側に揺動させて、搬器の乗降口側の側面下部を動く歩道の側端部に密着させる密着手段を設ける
と共に、搬器の乗降口側の側面下部と動く歩道の側端部との何れか一方に緩衝材を設けることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、搬器がプラットホームの所定区間を移動する際に、搬器の乗降口側の側面下部が動く歩道の側端部に密着して、両者間に隙間が空かないため、この隙間に足を挟む恐れがなく、動く歩道の歩道面が搬器の乗降口の床面と同等高さに位置することと相俟って、足腰の弱い人でも搬器に安心安全に乗降することができるようになり、バリアフリー性に優れる。
【0010】
また、本発明において、密着手段は、搬器の床下に設けられる案内輪と、案内輪が係合するように動く歩道の側方に敷設される案内軌条とで構成され、案内軌条により案内輪を介して搬器が正規の吊下げ姿勢から動く歩道側に揺動されるようにすることが望ましい。これによれば、密着手段を作動させるためのエネルギーが不要で、ランニングコストが増加することを回避できる。
【0011】
また、本発明に
よれば、上記の如く搬器の乗降口側の側面下部と動く歩道の側端部との何れか一方に緩衝材を設ける
ため、搬器の乗降口側の側面下部が動く歩道の側端部に密着する際に生ずる衝撃を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の循環式索道装置の構成図。
【
図5】他の実施形態の循環式索道装置の要部の平面図。
【
図7】他の実施形態の循環式索道装置の要部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至
図4を参照して、本発明の実施形態の循環式索道装置は、空中に架設されたロープから成る索条1と、索条1に吊下げられた状態で移動する箱型で移動方向と直交する方向を向く側面に乗降口21を有する搬器2と、乗降場所となるプラットホーム3とを備えている。そして、プラットホーム3で搬器2を所定速度(低速に設定)で移動させつつ乗降口21から搬器2に乗客が乗降するようにしている。尚、プラットホーム3は、例えば2つ設けられ、一方のプラットホームで乗客が搬器2に乗り、他方のプラットホームで乗客が搬器2から降りるようにしている。
【0014】
プラットホーム3には、搬器2と同じ所定速度で搬器2の移動方向に移動する動く歩道31を設けられている。動く歩道31は、ベルトコンベア式のものであり、搬器2の移動方向に沿って間隔を存して設けられた複数のローラ31aと、これらのローラ31aの回転で移動する無端状のベルト31bとで構成されている。また、動く歩道31の搬器2とは反対側の側端部に沿って手すり31cが設けられている。
【0015】
本実施形態の如く、動く歩道31が搬器2と同じ所定速度で移動すれば、搬器2と動く歩道31との間の相対速度差が零になる。そして、動く歩道31が無い場合、乗降時に、搬器2の側面の乗降口21に対する乗降方向と直交する搬器2の移動方向の力が慣性力として乗客に作用するが、本実施形態によれば、乗降方向と直交する方向の力が働かず、安心して乗降できる。
【0016】
ここで、バリアフリー性を向上するため、動く歩道31はその歩道面31dが搬器2の乗降口21の床面21aと同等高さになるように設置されている。更に、搬器2の揺れを考慮して、搬器2がプラットホーム3に進入する際に搬器2が揺れても動く歩道31に搬器2が当たらないようにするため、搬器2が自重によるバランスが取れた正規の吊下げ姿勢であるときは、
図2に仮想線で示す如く搬器2の乗降口21側の側面下部と動く歩道31の側端下部との間に隙間a(例えば、10〜20cm)が空くように動く歩道31が設置されている。
【0017】
然し、このままでは、搬器2の乗降口21側の側面下部と動く歩道31の側端部との間の隙間aに足を挟む恐れがある。尚、動く歩道31を、その側端部が搬器2の下に潜り込むように搬器2より低い位置に設置して、上記隙間aが生じないようにすることも考えられるが、これでは搬器2の乗降口21の床面21aと動く歩道31との間に段差を生じてしまい、バリアフリー性を損なう。
【0018】
そこで、本実施形態では、搬器2がプラットホーム3の所定区間を移動する際、搬器2を正規の吊下げ姿勢から動く歩道31側に揺動させて、搬器2の乗降口21側の側面下部を動く歩道31の側端部に密着させる密着手段4を設けている。密着手段4は、搬器2の床下に設けられる一対の案内輪41,41と、案内輪41,41が係合するように動く歩道31の側方に敷設される案内軌条42とで構成されている。そして、案内軌条42の端部を正規の吊下げ姿勢の搬器2の案内輪41,41が係合するように設置し、この端部から案内軌条42を動く歩道31側に湾曲させてから動く歩道31と平行にし、案内軌条42により案内輪41,41を介して搬器2が正規の吊下げ姿勢から動く歩道31側に揺動されるようにしている。更に、動く歩道31の側端部に緩衝材31eを設けている。
【0019】
本実施形態によれば、搬器2がプラットホーム3の所定区間を移動する際に、案内輪41,41が案内軌条42に係合し、案内軌条42により案内輪41,41を介して搬器2が正規の吊下げ姿勢から動く歩道31側に揺動されて、搬器2の乗降口21側の側面下部が動く歩道31の側端部に密着して、両者間に隙間aが空かない。そのため、この隙間aに足を挟む恐れがなく、動く歩道31の歩道面31dが搬器2の乗降口21の床面21aと同等高さに位置することと相俟って、足腰の弱い人でも搬器2に安心安全に乗降することができるようになり、バリアフリー性に優れる。更に、動く歩道31の側端部に緩衝材31eを設けているため、搬器2の乗降口21側の側面下部が動く歩道31の側端部に密着する際に生ずる衝撃を緩和できる。
【0020】
尚、
図5乃至
図7に示す如く、密着手段を、動く歩道31のベルト31bの側端部に移動方向の間隔を存して設けられる複数の電磁石46と、各電磁石46に搭載される一対の集電装置47,47と、集電装置47,47が摺接するようにベルト31bの側端部に沿って設けられる通電架線48とで構成することも可能である。この場合、ベルト31bの移動に伴って集電装置47,47が移動すると共に通電架線48に摺接して、通電架線48から集電装置47,47を介して電磁石46に通電したときに、電磁石46を介して動く歩道31が搬器2を吸着して、搬器2が正規の吊下げ姿勢から動く歩道31側に揺動されるようにすればよい。更に、
図7に示す如く、集電装置47,47が移動区間のうち所定区間だけで摺接するように通電架線48を配置し、他の区間には電気を通さない無通電架線49を配置してもよい。
【0021】
また、密着手段を、搬器2の乗降口21側の側面下部に設けられる電磁石と、搬器2の床下に設けられる一対の集電装置と、集電装置が摺接するように動く歩道31の側方に設けられた通電架線とで構成することも可能である。この場合、動く歩道31の側端部を鉄製にすればよい。そして、搬器2の移動により集電装置が通電架線に摺接して、電磁石に通電したときに、動く歩道31に搬器2が吸着され、搬器2が正規の吊下げ姿勢から動く歩道31側に揺動されるようにすればよい。
【0022】
但し、上記の如く密着手段を電磁石で構成したのでは、電磁石への電力が必要となり、また、作動確認等のメンテナンスをできる限り頻繁に行うことが望ましく、これによるコストアップを招く。
【0023】
これに対し、本実施形態では、案内輪41と案内軌条42とで密着手段4を構成しているため、密着手段4を作動させるためのエネルギーが不要で、ランニングコストが増加することを回避できる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、緩衝材31eを動く歩道31の側端部に設けているが、搬器2の乗降口21側の側面下部に緩衝材を設けてもよく、また、上記の如く密着手段を電磁石で構成する場合にも搬器2の乗降口21側の側面下部と動く歩道31の側端部との何れか一方に緩衝材を設けてもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、動く歩道は、ベルトコンベア式のものを用いているが、複数のパレットが循環するパレット式のものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…索条、2…搬器、21…乗降口、21a…床面、3…プラットホーム、31…動く歩道、31d…歩道面、31e…緩衝材、4…密着手段、41…案内輪、42…案内軌条、a…隙間。