特許第6389431号(P6389431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389431
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】微小アルミノシリケート中空粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/26 20060101AFI20180903BHJP
   C04B 14/02 20060101ALN20180903BHJP
【FI】
   C01B33/26
   !C04B14/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-260026(P2014-260026)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-121026(P2016-121026A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 広樹
(72)【発明者】
【氏名】一坪 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢太
(72)【発明者】
【氏名】荻原 隆
(72)【発明者】
【氏名】小寺 喬之
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−087831(JP,A)
【文献】 特開2002−037645(JP,A)
【文献】 特開2010−260755(JP,A)
【文献】 特開2005−206436(JP,A)
【文献】 特開2013−133231(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/121703(WO,A1)
【文献】 特開2006−062902(JP,A)
【文献】 特開2004−099429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
C01B 33/20−39/54
C03C 1/00−14/00
C03B 7/00−7/22
C03B 9/00−17/06
C03B 19/00−19/10
C03B 21/00−21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空室を区画する殻を有する微小アルミノシリケート中空粒子であって、構成組成がSiO2含有量70〜90質量%、Al23含有量10〜30質量%、Fe23含有量が1質量%以下であり、アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の含有量の合計が、2質量%以下であり、平均円形度が0.85以上、平均粒径が1μm〜20μm、前記殻の厚みが500nm以下であり、軟化開始温度が1100℃以上であることを特徴とする微小アルミノシリケート中空粒子。
【請求項2】
熱伝率が0.01〜0.1W/m・Kである請求項1記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
【請求項3】
かさ密度が0.01〜1.0g/cm3である請求項1又は2記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
【請求項4】
圧縮強度が0.5〜800MPaである請求項1〜のいずれか1項記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項記載の微小アルミノシリケート中空粒子を含有する断熱又は遮熱性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小アルミノシリケート中空粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物中空粒子や酸化物多孔質材料は、断熱性材料、遮熱性材料、触媒担体、建築材料等の分野で使用されている。例えば、火山ガラス質堆積物微粉体(シラス)を用いた中空粒子であるシラスバルーン(特許文献1)やフライアッシュ中空粒子(特許文献2、非特許文献1、2)は、セメント系断熱体の成分として用いられている。しかし、シラスバルーン及びフライアッシュ中空粒子は、粒子径が大きく、有色であることから、薄膜を必要とする断熱性材料、プラスチックフィラー、増感剤等の分野では応用されるに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−73232号公報
【特許文献2】特表2005−536333号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】石炭灰ハンドブック(第4版)、II−83〜II−85(環境技術協会、日本フライアッシュ協会編)
【非特許文献2】機能性フィラーの開発技術、209−212頁(株式会社シーエムシー発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フライアッシュ中空粒子は熱伝導率が高く、断熱性に劣る。また、シラスバルーンは1100℃を超えると軟化する。
従って、本発明の課題は、粒子径が小さく、断熱性、遮熱性に優れ、かつ耐熱性に優れる無機酸化物中空粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、噴霧熱分解法により種々の中空粒子を製造し、その粒子径、厚み、殻の特性、耐熱性等について種々検討してきたところ、SiO2とAl23の含有量を一定の範囲とし、かつ酸化鉄の含有量を特定量以下に制御することにより、粒子径が小さく、殻の厚みが一定の範囲であって、軟化開始温度の高い微小アルミノシリケート中空粒子が得られ、当該中空粒子が耐熱性、断熱性、遮熱性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔8〕を提供するものである。
【0008】
〔1〕中空室を区画する殻を有する微小アルミノシリケート中空粒子であって、構成組成がSiO2含有量70〜90質量%、Al23含有量10〜30質量%、Fe含有量1質量%以下であり、平均円形度が0.85以上、平均粒径が1μm〜20μm、前記殻の厚みが500nm以下であり、軟化開始温度が1100℃以上であることを特徴とする微小アルミノシリケート中空粒子。
〔2〕アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の含有量の合計が、2質量%以下である〔1〕記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
〔3〕熱伝導率が0.01〜0.1W/m・Kである〔1〕又は〔2〕記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
〔4〕かさ密度が0.01〜1.0g/cm3である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
〔5〕圧縮強度が0.5〜800MPaである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
〔6〕アルミニウムとケイ素の混合水溶液を噴霧する噴霧熱分解法で製造されるものである〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
〔7〕噴霧熱分解法で得られた中空粒子を加熱処理することにより得られるものである〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の微小アルミノシリケート中空粒子。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の微小アルミノシリケート中空粒子を含有する断熱又は遮熱性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子は、熱伝導率が小さく、熱安定性にも優れるため、薄膜を必要とする断熱材料用フィラー、遮熱材料用フィラー等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の微小アルミノシリケート中空粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
図2】実施例1の微小アルミノシリケート中空粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す図である。
図3】比較例1のアルミナ中空粒子のTEM像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子は、中空室を区画する殻を有する微小アルミノシリケート中空粒子であって、構成組成がSiO2含有量70〜90質量%、Al23含有量10〜30質量%、Fe含有量が1質量%以下であり、平均円形度が0.85以上、平均粒径が1μm〜20μm、前記殻の厚みが500nm以下であり、軟化開始温度が1100℃以上であることを特徴とする。
【0012】
微小アルミノシリケート中空粒子の構成組成は、SiO2含有量が70〜90質量%、Al23含有量が10〜30質量%であり、かつFe23含有量が1質量%以下である。これらの構成組成を有することが、中空粒子の耐熱性を向上させるうえで重要である。すなわち、Fe含有量が1質量%を超えると、1100℃以下の温度で軟化する。また、Feは実質的に含有しないのが好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下がさらに好ましい。本発明においてはFe含有量が0の場合が含まれる。
【0013】
また、SiO2含有量は、75〜85質量%が好ましく、約80質量%がより好ましい。Al23含有量は15〜25質量%が好ましく、約20質量%がより好ましい。
【0014】
また、本発明の微小アルミノシリケート中空粒子のアルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の含有量の合計は、耐熱性の点から、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。本発明においては、アルカリ金属酸化物及びアルカリ土類金属酸化物の含有量が0の場合が含まれる。
【0015】
本発明において微小アルミノシリケート中空粒子とは、中空室を区画する殻を有する粒子であることをいい、単なる多孔質とは相違する。本発明の粒子が、このような構造を有することは、図1図2のTEM像及びSEM像から明らかである。
また、本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の殻は無気孔であり、硝酸アルミニウム水溶液を噴霧熱分解によるアルミナ中空粒子とは明確に相違する(図3参照)。本発明の中空粒子の殻が無気孔であることは、透過型電子顕微鏡(TEM)像により確認できる。本発明の微小アルミノシリケート中空粒子は、殻が無気孔であることにより、優れた断熱性、遮熱性を有する。
【0016】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の殻の厚みは、500nm以下であり、50〜500nmが好ましく、50〜450nmがより好ましく、50〜400nmがさらに好ましい。殻の厚みが500nmを超えると、中空室が十分でなく、熱伝導率が十分に小さい粒子とならない。また、殻の厚みが小さすぎる場合には、粒子の強度が十分でない可能性がある。殻の厚みは透過型電子顕微鏡(TEM)像から測定できる。
【0017】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の平均粒径は、1μm〜20μmであり、好ましくは2μm〜20μmであり、より好ましくは2μm〜15μmである。20μmを超える場合は、一部が球状でなくなることがあり、好ましくない。なお、平均粒径の調整は、噴霧に使用するスプレーノズルのノズル径あるいは霧化方式を変えることによって行うことができ、2流体ノズル、4流体ノズル、超音波霧化方式などが利用できる。ここで粒子径は、電子顕微鏡の解析によって測定でき、その平均は、JIS R 1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」、レーザー回折・散乱法による粒径分布測定装置として、例えばマイクロトラック(日機装株式会社製)などによって計算できる。
【0018】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の粒径分布(粒度分布)は、せまい程好ましく、粒子の80%以上が平均粒径の±5.0μmにあるのが好ましく、粒子の80%以上が平均粒径の±4.5μmにあるのがより好ましく、粒子の80%以上が平均粒径の±4.0μmにあるのがさらに好ましい。
【0019】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の形状は、図1図2から明らかなように、球状であり、平均円形度は0.85以上である。このような形状は、噴霧熱分解法により製造することにより達成される。
ここで、円形度は、走査型電子顕微鏡写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)
を測定し、周囲長(PM)に対する真円の面積を(B)とすると、その粒子の円形度はA/Bとして表される。そこで、試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長を持つ真円を想定すると、周囲長はPM=2πr、面積はB=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、この粒子の円形度は、円形度=A/B=A×4π/(PM)2として算出される。100個の粒子について円形度を測定し、その平均値でもって平均円形度とする。なお、本発明の微小アルミノシリケート中空粒子は、各種フィラーとして混合したときの分散性、混合性など点から、平均円形度は、0.85以上、好ましくは0.90以上である。
【0020】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の軟化開始温度(耐熱性)は1100℃以上であり、1100℃〜1700℃であるのが好ましい。
【0021】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の熱伝導率は、0.005〜0.1W/m・Kが好ましく、0.005〜0.08W/m・Kがより好ましく、0.01〜0.06W/m・Kがさらに好ましい。本発明の微小アルミノシリケート中空粒子は熱伝導率が小さいため、断熱材料、遮熱材料として優れている。ここで、熱伝導率は、迅速熱伝導率計QTM−500(京都電子工業社製)を用いた非定常熱線法により測定できる。
【0022】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子のかさ密度は、0.01〜1.0g/cm3であるのが好ましく、0.01〜0.4g/cm3であるのがより好ましく、0.02〜0.4g/cm3であるのがさらに好ましく、0.03〜0.4g/cm3であるのがさらに好ましい。かさ密度は、JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」の測定方法、パウダテスタ(ホソカワミクロン社製)などの粉体力学特性測定装置により測定できる。
【0023】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の粒子強度は、0.3〜480(90%生存時)MPaであるのが好ましく、0.3〜320MPaであるのがより好ましく、0.3〜100MPaであるのがさらに好ましい。粒子強度は、ASTM D 3102−78に準拠した水銀圧入ポロシメーターにより測定できる。
【0024】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の圧縮強度は、1〜800MPaであるのが好ましく、1〜700MPaであるのがより好ましく、1〜500MPaであるのがさらに好ましい。ここで圧縮強度は、微小圧縮試験機 MCT−510(株式会社島津製作所製)により測定できる。
【0025】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子の安息角は、30〜70°であるのが好ましく、40〜60°であるのがより好ましく、45〜55°であるのがさらに好ましい。
ここで、安息角は、中空粒子を薄膜状の断熱材料用フィラー又は、遮熱材料用フィラーとして利用する際の、基材への均一な分散性の点で重要である。安息角は、JIS R 9301−2−2「アルミナ粉末−第2部:物性測定方法−2:安息角」の測定方法、パウダテスタ(ホソカワミクロン社製)などの粉体力学特性測定装置により測定できる。
【0026】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子は、例えば噴霧熱分解法により製造することができる。具体的には、2流体ノズルや4流体ノズル等の流体ノズルで原料化合物含有溶液を噴霧する噴霧熱分解法により製造することができる。
【0027】
用いられるアルミノシリケートの原料としては、中空粒子を形成したときの組成が前記アルミノシリケートの組成になるアルミニウム塩及びケイ酸塩やアルミナやシリカの分散液及びゾル溶液であればよい。
【0028】
原料化合物含有溶液は、前記原料化合物を、水あるいはエタノール等の有機溶媒と混合して、調製できる。溶媒としては、水と有機溶媒を混合したものも用いることができる。例えば、アルミニウム化合物としては、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム酸化物、アルミニウム酸化物のゾルなどの化合物を用いることができる。ケイ素化合物としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、オルトケイ酸テトラエチル、ケイ素酸化物、シリカゾルなどを用いることができる。原料化合物含有溶液の濃度は、各元素の総量として、0.01mol/L〜2.0mol/Lが好ましく、0.1mol/L〜1.0mol/Lがより好ましい。なお、原料化合物含有溶液中には、リンゴ酸、クエン酸や乳酸などの有機酸を添加してもよい。
【0029】
原料化合物含有溶液は、超音波式の噴霧装置、流体ノズルによる噴霧装置など一般的な液滴を形成する装置を使用することができる。生産性の観点から、流体ノズルによる噴霧装置を使用するのが好ましく、具体的には、2流体ノズルや4流体ノズルで噴霧するのが、粒子径の調整、生産性の点で好ましい。ここで流体ノズルの方式には、空気と原料化合物含有溶液とをノズル内部で混合する内部混合方式と、ノズル外部で空気と原料化合物含有水溶液を混合する外部混合方式があるが、いずれも採用できる。
【0030】
噴霧されたミストは、100〜600℃の乾燥ゾーン、次いで600〜1650℃の熱分解ゾーンを通過させることにより、熱分解され、中空粒子となる。乾燥ゾーンの温度は、中空性を保つための点から350〜550℃が好ましく、400〜500℃がより好ましい。この乾燥ゾーンによりミストの外側が、乾燥されて無機化合物の膜を形成し、それを起点に内部液が乾燥されるため、粒子が中空形状に形成される。
熱分解ゾーンの温度は、生産コストの点から700〜1650℃が好ましく、800〜1500℃がより好ましい。この熱分解ゾーンでは、高温で急激に熱分解反応を進めることで、乾燥ゾーンにて形成された中空構造を強固にすることにより、中空室を区画する殻を有する中空粒子であって、殻の厚さの一定な中空粒子が得られる。
【0031】
得られたアルミノシリケート中空粒子は、フィルターを通過させるなど分級して、粒子径の調整をしてもよい。得られた中空粒子は、組成や熱分解ゾーンの温度などにより無気孔化が不十分となる場合があるので、無気孔化をするために、必要に応じて中空粒子を1000℃以上、好ましくは1150〜1650℃に加熱してもよい。この加熱処理をすることにより、殻の表面の酸化物が溶融して孔が閉塞し、前記組成からなる無気孔の殻を有する中空粒子が得られる。
【0032】
本発明の微小アルミノシリケート中空粒子は、前記のように無気孔の殻を有する中空構造を有し、熱伝導率が低く、かつ耐熱性に優れていることから、断熱材料用フィラー、遮熱材料用フィラーとして有用である。また、平均粒径1μm〜20μmという微細な粒子であることから、薄膜状の断熱材料用フィラー、遮熱材料用フィラーとして特に有用である。従って、断熱性、遮熱性が要求される各種容器、隔壁、床、屋根等に薄膜状の断熱材、遮熱材を形成するのに有利である。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0034】
実施例1
蒸留水1リットルに硝酸アルミニウムを0.04mol、オルトケイ酸テトラエチルを0.16mol溶解したアルミニウム及びケイ素の混合水溶液を噴霧熱分解装置の溶液タンクに投入した。投入された水溶液は送液ポンプにより、2流体ノズルを介してミスト状に噴霧され、乾燥ゾーン(約400℃)、次いで熱分解ゾーン(800℃)を通過させた。バグフィルターを用いて中空粒子を回収した。得られた中空粒子を約1000℃で焼成し、目的とするアルミノシリケート中空粒子を得た。
得られたアルミノシリケート中空粒子のTEM像を図1に、SEM象を図2、諸特性を表1に示す。また、アルミナ中空粒子のTEM像を図3に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
比較例1(鉄の含有量が多い場合の比較例)
得られる中空粒子の組成のFe含有量が1質量%よりも多くなるように、実施例1の溶液に硝酸鉄を溶解した混合水溶液を噴霧熱分解装置の溶液タンクに投入した。投入された水溶液は送液ポンプにより、2流体ノズルを介してミスト状に噴霧され、乾燥ゾーン(約400℃)、次いで熱分解ゾーン(800℃)を通過させた。バグフィルターを用いて中空粒子を回収した。得られた中空粒子の軟化開始温度をTG−DTAにより測定したところ、1000℃であった(表1)。
【0037】
比較例2(鉄とアルカリ金属の含有量が多い場合の比較例)
得られる中空粒子の組成のFe含有量が1質量%、アルカリ金属酸化物含有量の合計が2質量%よりも多くなるように、実施例1の溶液に硝酸鉄、硝酸カリウム、硝酸ナトリウムを溶解した混合水溶液を噴霧熱分解装置の溶液タンクに投入した。投入された水溶液は送液ポンプにより、2流体ノズルを介してミスト状に噴霧され、乾燥ゾーン(約400℃)、次いで熱分解ゾーン(800℃)を通過させた。バグフィルターを用いて中空粒子を回収した。得られた中空粒子の軟化開始温度をTG−DTAにより測定したところ、920℃であった(表1)。
図1
図2
図3