特許第6389433号(P6389433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6389433
(24)【登録日】2018年8月24日
(45)【発行日】2018年9月12日
(54)【発明の名称】気管支内チューブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/04 20060101AFI20180903BHJP
   A61B 1/267 20060101ALI20180903BHJP
   A61B 1/273 20060101ALI20180903BHJP
【FI】
   A61M16/04 A
   A61B1/26
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-519648(P2014-519648)
(86)(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公表番号】特表2014-523326(P2014-523326A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】IB2012052077
(87)【国際公開番号】WO2013008106
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年4月13日
【審判番号】不服2017-5223(P2017-5223/J1)
【審判請求日】2017年4月12日
(31)【優先権主張番号】61/506,210
(32)【優先日】2011年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511140507
【氏名又は名称】アンブ・エ/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ダハー,エリヤ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,マティーアス ベネディクト
【合議体】
【審判長】 高木 彰
【審判官】 内藤 真徳
【審判官】 熊倉 強
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−10685(JP,A)
【文献】 特表2009−505721(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/011781(WO,A2)
【文献】 特表2006−501011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/04
A61B 1/267
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への装着時に気管竜骨に対する相対位置が異なる少なくとも2つの場所に選択的に固定されるよう、少なくとも2つの異なる長さのルーメンを含む気管支内チューブであって、
a.第1の膨張式カフにより気管内の気管竜骨の近位で固定される、遠位解放端を備えた第1のルーメン;
b.気管竜骨を越えて遠位に伸長し、第2の膨張式カフにより左気管支および右気管支のいずれか一方の内部で固定される、遠位解放端を備えた第2のルーメン;
c.前記第1のルーメンと同じ長さを有し、前記第1のルーメンの遠位端に隣接して配置されるイメージセンサおよび第1のルーメンの遠位端に隣接して配置される光源を含み、該イメージセンサおよび光源が、気管竜骨のある気管分岐部、左気管支の開口部および右気管支の開口部を示す画像を提供するよう構成されている、第1のルーメンと第2のルーメンとの間に配置されるイメージセンサ専用ルーメン;および
d.前記気管支内チューブの長さ方向に沿って設けられた、前記イメージセンサ専用ルーメンと平行する少なくとも1つの洗浄専用ルーメン
を含み、
前記洗浄専用ルーメンが、前記イメージセンサの視野を吸引するためまたは洗い流すためのものであり、
前記洗浄専用ルーメンの遠位端が2以上の洗浄ノズルを形成するよう構成され、前記2以上の洗浄ノズルが前記イメージセンサ専用ルーメンの遠位端の方向を向いており、前記2以上の洗浄ノズルが互いに連携して作動し、前記2以上の洗浄ノズルは、洗浄用の溶液、液体、気体またはその他の流動性流体をイメージセンサへと導くために湾曲していることを特徴とする気管支内チューブ。
【請求項2】
前記洗浄ノズルの直径が0.1〜2mmであることを特徴とする請求項1の気管支内チューブ。
【請求項3】
前記洗浄ノズルの直径が0.6mmであることを特徴とする請求項2の気管支内チューブ。
【請求項4】
前記第2のルーメンが、右気管支または左気管支の画像を提供する第2のイメージセンサを含むことを特徴とする請求項1の気管支内チューブ。
【請求項5】
前記イメージセンサがCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサであることを特徴とする請求項1の気管支内チューブ。
【請求項6】
前記光源がLED、光導波路およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項1の気管支内チューブ。
【請求項7】
口腔または鼻腔からの非侵襲的な挿入に適した請求項1の気管支内チューブ。
【請求項8】
外部ポートまたは切開部からの挿入に適した請求項1の気管支内チューブ。
【請求項9】
外科手術またはその他の侵襲的処置による挿入に適した請求項1の気管支内チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上気道チューブに関し、詳細には、イメージセンサと光源とを内蔵した気管支内チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
気管支内チューブ、気管内チューブ、気管切開チューブなどの呼吸用チューブは、対象の呼吸器すなわち肺の少なくとも一部を換気するために用いられる。このような呼吸用チューブは、様々な方法で挿入することが可能で、非侵襲的な方法では口腔や鼻腔などの穴や空隙から挿入される。また、このようなチューブは、挿管用ポートを設けるための、侵襲を最小限に抑えた外部切開により体内に導入することもできる。例えば、気管切開にて気管にチューブを挿入する場合がこれにあたる。
【0003】
呼吸器の一部を選択的に換気する目的で使用されるこのような呼吸用チューブは、ダブルルーメンチューブまたはシングルルーメンチューブとして提供されうる。例えば、気管支内チューブは、ダブルルーメンチューブであるかシングルルーメンチューブであるかを問わず、一側肺換気法、すなわち、左右いずれかの気管支を通して選択的に片肺を換気する肺換気に使用することができる。
【0004】
合併症を発生させずに一側肺換気法を実施するためには、左右いずれかの気管支内および気管内に留置された呼吸用チューブの位置を注意深くモニタリングするか、少なくとも処置を施す前にチューブの位置を確認する必要がある。チューブの配置確認には、カプノグラフ、聴診、気管支鏡およびX線などの様々な技術を利用することができる。
【0005】
しかし、これらの手段は実施に時間、技術および技能を要するため、このような手段によってチューブの配置を継続的にモニタリングすることは実現可能でない。特に処置中に対象を動かす場合には、チューブの位置が変わることがあり、それによって、チューブが対象を窒息させる恐れのある危険な位置にずれるといった事態や、例えば呼吸器の正しい部位で換気が行われないなど、患者に対して適切な換気が施されないといった事態が生じる可能性がある。
【0006】
現在、気管支鏡を用いてチューブの位置確認を行う方法がゴールドスタンダードであるが、上述の確認方法では、いずれを用いても、気管竜骨の継続的なモニタリングやチューブの適正な位置調整を行うことはできない。さらに、気管支鏡の設計上および感度上の問題から、気管支鏡の洗浄方法は複雑で、往々にして非効率でコストがかかり、対象間の交差感染を招く恐れもある。
【0007】
気管竜骨に対する気管支チューブの相対位置および挿管を継続的に間断なく確認できる気管支内チューブが求められており、そのような気管支内チューブがあれば非常に有用であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、イメージセンサとそれに対応する光源とを内蔵した気管支内チューブを提供することにより、背景技術の欠点を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一実施形態によれば、口または鼻から挿入して気管を経て肺へと到達するよう設計されたチューブであって、気道開存性の維持および/または吸入麻酔剤もしくはその他の医療用ガスの送達、ならびに換気の確実な実施を目的とした呼吸用チューブおよび気管支内チューブが提供される。
【0010】
本発明の気管支内チューブは、医療用グレードの材料で作製されていることが最も好ましく、そのような材料としては、例えばプラスチック、ゴム、ポリマー、シリコーンなどの当技術分野で公知の材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
本発明の気管支内チューブは、気管竜骨(本明細書において「TC」と表記する)を継続的にモニタリングできるものであることが最も好ましく、それによって使用者、医師、看護師または介護士は気管支内チューブが正しく配置されているか確認することが可能になる。
【0012】
本発明の気管支内チューブは、気管竜骨を描出するためのイメージセンサを内蔵していることが最も好ましく、それにより気管内および気管支内にチューブが正しく配置されているか確認することが可能になるので、例えば一側肺換気(これに限定されない)などの処置中、適正な換気が保証される。前記内蔵イメージセンサは、CCDカメラまたはCMOSカメラの形態であってよく、そうであることが好ましい。
【0013】
前記内蔵カメラと光源により、気管支内チューブが正しく配置されているか継続的に確認できることが最も好ましい。チューブの配置を継続的に確認することで、介護士は例えばカフが外れるなどの危険な状況を発見できる可能性があり、そのような状況に対応するための必要な時間も与えられる。さらに、手術中に起こる血液や分泌物の貯留またはその他の突発的事象など、患者を危険にさらす恐れのある事象も発見できる可能性がある。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態によれば、イメージセンサとそれに対応する光源とを内蔵し、十分な通気性能が得られるよう内腔の開存性が最適化された気管支内チューブが提供される。前記内蔵イメージセンサとしては、例えばCCDカメラまたはCMOSカメラが挙げられるが、これらに限定されない。前記光源としては、例えば発光ダイオード(LED)が挙げられるが、これに限定されない。前記イメージセンサおよびそれに対応する光源は、気管支内チューブの長さ方向に沿って配置される専用ルーメン内に設けられていることが最も好ましい。前記イメージセンサから遠位の視野が明瞭に保たれるよう、前記イメージセンサが洗浄ノズルをさらに備えていることが最も好ましい。イメージセンサ専用ルーメンの長さが気管用ルーメンの長さと平行で、気管用ルーメンの長さとイメージセンサルーメンの長さが本質的に同じであることが最も好ましい。前記イメージセンサ専用ルーメンの長さは、気管支用ルーメンの長さに一致していてもよい。
【0015】
前記気管支内チューブには、イメージセンサ専用ルーメンが2つ設けられていてもよい。第1のイメージセンサ専用ルーメンの長さが気管用ルーメンの長さに一致し、第2のイメージセンサ専用ルーメンの長さが気管支用ルーメンの長さに一致していてもよい。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態によれば、気管竜骨、左気管支、右気管支、気管支用カフおよび気管支分岐部に光を照射して、これらを同一視野内で継続的かつ明瞭に描出できるイメージセンサと光源とを内蔵した気管支内チューブが提供される。
【0017】
本発明の任意の一実施形態においては、少なくとも1以上の気管支用カフが使用される。気管支を十分に密閉するために、少なくとも2以上の気管支用カフが使用されてもよい。
【0018】
気管支用カフは、気管支にうまく適合するように様々な形状のものが用意されていてもよく、形状としては、例えば球状、楕円形、螺旋形、砂時計形、台形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
気管支用カフは、解剖学的構造および配置場所に応じて様々な構成および形状を有していてもよく、例えば、解剖学的構造に基づいて、左気管支に配置するためのカフまたは右気管支に配置するためのカフが用意されていてもよい。
【0020】
本願において、「気管支内チューブ」は、気管気管支チューブ、ダブルルーメンチューブ、ダブルルーメン気管支内チューブおよびダブルルーメン気管内チューブのいずれとも区別なく用いられ、これらはすべて、対象の両肺、片肺または両肺もしくは片肺の一部を選択的に換気するために用いられるチューブおよび/またはカテーテルを意味する。
【0021】
患者への装着時に気管竜骨に対する相対位置が異なる少なくとも2つの場所に選択的に固定されるよう、少なくとも2つの異なる長さのルーメンを含む気管支内チューブであって、
a.第1の膨張式カフにより気管内の気管竜骨の近位で固定される、遠位解放端を備えた第1のルーメン;
b.気管竜骨を越えて遠位に伸長し、第2の膨張式カフにより左気管支および右気管支のいずれか一方の内部で固定される、遠位解放端を備えた第2のルーメン;
c.前記第1のルーメンと同じ長さを有し、前記第1のルーメンの遠位端に隣接して配置されるイメージセンサおよび光源を含み、該イメージセンサおよび光源が、気管竜骨のある気管分岐部、左気管支の開口部および右気管支の開口部を示す画像を提供するよう構成されているイメージセンサ専用ルーメン;および
d.前記気管支内チューブの長さ方向に沿って設けられた、前記イメージセンサ専用ルーメンと平行する少なくとも1つの洗浄専用ルーメン
を含み、
前記洗浄ルーメンの遠位端が洗浄ノズルを形成するよう構成され、前記洗浄ノズルが前記イメージセンサルーメンの遠位端の方向を向いていることを特徴とする気管支内チューブ。
【0022】
前記洗浄ノズルの直径は、0.1〜2mmであってもよい。
【0023】
前記洗浄ノズルの直径は、0.6mmであってもよい。
【0024】
前記洗浄ルーメンは、前記イメージセンサの両側近傍に配置され、2以上の洗浄ノズルを備えていてもよい。
【0025】
前記2以上の洗浄ノズルは、互いに連携して作動してもよい。
【0026】
前記洗浄ルーメンは、前記イメージセンサの視野を吸引するためまたは洗い流すためのものであってよい。
【0027】
前記イメージセンサ専用ルーメンは、前記チューブの壁内部の前記第1ルーメンと前記第2ルーメンとの間の前部または後部に配置されていてもよい。
【0028】
前記第2ルーメンは、右気管支または左気管支の画像を提供する第2イメージセンサを含んでいてもよい。
【0029】
前記イメージセンサは、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサであってもよい。
【0030】
前記第1ルーメンは、その遠位端近傍に前記イメージセンサに隣接して配置される光源をさらに含んでいてもよい。
【0031】
前記光源は、LED、光ファイバー、導波管、光導波路およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択してもよい。
【0032】
前記イメージセンサは、前記第1ルーメンの壁内部に設置された専用の管内に配置されていてもよい。
【0033】
前記イメージセンサは、1本の専用コネクタを介してチューブの近位端、最も好ましくは第1ルーメンの近位端で補助装置に接続されていることが最も好ましく、該補助装置としては、以下に限定されないが、例えばディスプレイおよび電源が挙げられる。前記専用コネクタとしては、以下に限定されないが、例えばUSBコネクタが挙げられる。
【0034】
本発明の気管内チューブは、口腔または鼻腔からの非侵襲的な挿入に適したものであってもよい。
【0035】
本発明の気管内チューブは、外部ポートまたは切開部からの挿入に適したものであってもよい。
【0036】
本発明の気管内チューブは、外科的処置またはその他の侵襲的処置による挿入に適したものであってもよい。
【0037】
別段の定めのない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野で通常の技能を有する者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において提示される材料、方法および具体例は例示的なものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明について、単なる例示としての添付図面を参照しながら説明する。添付図面の詳細を具体的に参照するに当たって、図中の詳細部分はほんの一例であり、本発明の好ましい実施形態を例示的に説明するために記載しているに過ぎず、本発明の本質および概念的な態様を捉える上で最も有用でありかつ理解しやすいと思われる説明を提供するために提示していることを強調しておく。この点に関して、本発明の構造的な詳細部分を、本発明の基本的な理解に必要な程度を越えて詳細に示すつもりはないが、添付図面および説明から、複数示した本発明の形態をどのように具体化して実施するかは当業者には明らかであろう。
【0039】
図1】AおよびBは、本発明の任意の一実施形態による例示的な気管支内チューブを模式的に示したものである。図1Aは、右気管支内に配置された気管支内チューブを示したものであり、図1Bは、左気管支内に配置された気管支内チューブを示したものである。
図2】本発明の任意の一実施形態による気管支内チューブから見た気管竜骨の模式断面図である。
図3】本発明の任意の一実施形態による例示的な気管支内チューブの透視図である。
図4】Aは、本発明の任意の一実施形態による例示的な気管支内チューブの透視図であり、Bは、本発明によるイメージセンサコネクタへの切込出口点の拡大図である。
図5】本発明の任意の一実施形態による例示的な気管支内チューブの透視図である。
図6】本発明の任意の一実施形態による例示的な気管支内チューブの透視図であり、チューブの湾曲部を示したものである。
図7】A〜Fは、本発明の任意の複数の実施形態による気管支内チューブの遠位端の様々な拡大図である。
図8】AおよびBは、本発明の任意の複数の実施形態による気管支内チューブの様々な部分の断面図である。
図9】本発明の任意の一実施形態による気管支内チューブの壁内部の専用ルーメン内に設けられた光源内蔵イメージセンサの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面およびその説明を参照することにより、本発明の本質および作用についての理解を深めることができるだろう。以下に列挙した参照符号は、図面全般において、同様の機能、意味、役割または目的を有するものを表すために用いられる。
【0041】
10 スタイレット
12 Y型コネクタ
14 エアバランスキャップ
20 気管支内チューブコネクタアセンブリ
22 気管支内チューブコネクタ近位端
24 気管用ルーメンコネクタ部
26 気管支用ルーメンコネクタ部
28 気管支内チューブコネクタ遠位端
50 気管支内チューブシステム
100 気管支内チューブ
101 断面図
102 チューブ近位端
104 チューブ遠位端
104a 遠位湾曲部
106 チューブ中間部
106a 中間湾曲部
108 正中隔壁
110 気管用ルーメン
111 気管用ルーメンコネクタ
112 気管用カフ
112n 気管用カフ用切込
114 気管用ルーメン遠位端
116 気管用ルーメン近位端
118 気管用カフコネクタ
120 気管支用ルーメン
122 気管支用カフ
124 気管支用ルーメン遠位端
126 気管支用ルーメン近位端
128 気管支用カフコネクタ
130 注入用チューブコネクタ
150 照明内蔵イメージセンサ
150c イメージセンサ
150I 光源
150L イメージセンサルーメン
152 イメージセンサ用切込
154 イメージセンサ導体
156 イメージセンサ洗浄ノズル
158 イメージセンサコネクタ
160 洗浄ルーメン
TR 気管
TC 気管竜骨
BR 右気管支
BL 左気管支
【0042】
図1Aは、右気管支(BR)内に配置された、本発明の任意の一実施形態による例示的な気管支内チューブ100を模式的に示したものである。図1Bは、左気管支(LB)内に配置された気管支内チューブ100を模式的に示したものである。
【0043】
気管支内チューブ100は、第1の気管用ルーメン110および第2の気管支用ルーメン120を含むダブルルーメンチューブである。正中隔壁108により気管用ルーメン110と気管支用ルーメン120のそれぞれに分離されていることが最も好ましい。気管用ルーメン110の先端が気管内に位置し、気管支用ルーメン120の先端が左右いずれかの気管支内に位置することが最も好ましい。気管用ルーメン110および気管支用ルーメン120は、それぞれの長さが異なるように構成されており、気管支用ルーメン120は、気管用ルーメン110の先端を越えて、かつ/または気管用ルーメン110より遠位に伸長している。
【0044】
各ルーメンは膨張式のカフを含み、これらはそれぞれ気管用カフ112および気管支用カフ122として示されている。チューブ100は、カフ112によって気管用ルーメン110が気管内の気管竜骨の上部かつ近位に位置するよう配置される。気管竜骨はイメージセンサおよび光源150によって継続的に描出されることが最も好ましい。イメージセンサおよび光源150は、気管用ルーメン110の遠位端114近傍に内蔵されていてもよい。また、イメージセンサおよび光源150は、気管用ルーメン110の壁内部の専用の管または周辺ルーメン150Lに内蔵されていてもよく、そうであることが最も好ましい。イメージセンサ150により図2に示す断面図101が提供されることが最も好ましい。
【0045】
イメージセンサおよび光源150が少なくとも1以上の発光ダイオード(LED)150Iおよびイメージセンサ150cの形態で設けられ(図9)、気管支の状態を示す図101図2)を提供することが最も好ましい。イメージセンサ150cとしては、以下に限定されないが、例えばCCDまたはCMOSが挙げられる。
【0046】
図2は、気管支内チューブ100から見た気管竜骨の模式断面図であり、左気管支(BL)内に配置された気管支用カフ122、左気管支の開存性、右気管支の開存性、気管竜骨および気管支分岐部を同一視野101内に描出できるイメージセンサおよび光源150により提供されたものである。図1Aに示すようにチューブ100が右気管支(BR)に配置される場合にも、イメージセンサ150により同様の描出が行われてもよい。
【0047】
図3は、気管支内チューブ100と、任意の様々な補助装置とを含む気管支内ダブルルーメンチューブシステム50を示したものである。前記補助装置は、気管支内チューブ100と組み合わせて使用されるものであってよく、かつ/または気管支内チューブ100の使用を容易にするものであってよい。
【0048】
前記補助装置は以下に限定されないが、例えば、スタイレット10、Y型コネクタ12、エアバランスキャップ14、気管支内チューブコネクタアセンブリ20などの、チューブ100の使用を容易にするために用いられる当技術分野で公知の付属装置であってよい。
【0049】
当技術分野で周知かつ認容されているように、スタイレット10は、チューブ100の配置を容易にする目的で使用されることが最も好ましい。
【0050】
Y型コネクタ12は、1つの換気用空気源にダブルルーメンチューブ100の2つのルーメンを同時に連結するためのものであることが最も好ましい。
【0051】
気管支内チューブコネクタアセンブリ20は、気管用ルーメン110と気管支用ルーメン120のそれぞれとの連結を提供するものである。前記コネクタアセンブリ20は、近位端22、遠位端28、気管用ルーメンコネクタ部24および気管支用コネクタ部26を含む。
【0052】
近位端22は、チューブ100の近位端102で気管用ルーメン110および気管支用ルーメン120をそれぞれ別々に補助装置に連結および/または他の方法で接続するためのものであることが最も好ましく、該補助装置としては、例えば換気用空気源が挙げられるが、これに限定されない。
【0053】
遠位端24は、チューブ100と連結および/または他の方法で接続するためのものであることが最も好ましい。
【0054】
また図3は、好ましいダブルルーメン気管支内チューブ100の透視図でもあり、該気管支内チューブ100は、気管用ルーメン遠位端114を有する気管用ルーメン110、および気管支用ルーメン遠位端124を有する気管支用ルーメン120を含む。
【0055】
チューブ100は、気管用ルーメン110を通して肺換気を行う際にチューブ100が気管内に安全に配置および/または固定されるよう設けられた気管用カフ112をさらに含み、気管用カフ112は図中にて拡張した状態で示されている。
【0056】
チューブ100は、チューブ100を左右いずれかの気管支内に安全に配置および/または固定するために設けられた気管支用カフ122をさらに含み、気管支用カフ122は図中にて拡張および/または膨張した状態で示されている。カフ122は、該カフが配置されている(左右いずれかの)気管支アーチ(bronchial arch)に対して選択的に換気が行われるよう制御するためのものであることが最も好ましい。例えば、左右いずれか一方の気管支に対する換気を完全に遮断することによって、対応する肺(例えば右)に処置を施しながら、もう一方の肺(例えば左)を気管用ルーメン110によって換気することができる。
【0057】
気管用カフ112は、気管用カフコネクタ118によって膨張および/または収縮させることが最も好ましい。
【0058】
気管支用カフ122は、気管支用カフコネクタ128によって膨張および/または収縮させることが最も好ましい。
【0059】
注入用チューブコネクタ130は、気管用チューブ110および気管支用チューブ120のそれぞれの周囲に位置する専用ルーメンへの接続点を提供するものであることが最も好ましい。この専用ルーメンは、薬剤の送達や、気管用ルーメン遠位端114近傍および/または気管支用ルーメン遠位端124近傍の液体の吸引を目的としたものであることが好ましい。
【0060】
図4Aは、イメージセンサコネクタ158を示した、気管支内チューブ100の別の透視図である。イメージセンサコネクタ158は、画像の転送と、専用ルーメン内で遠位端114近傍に配置されたイメージセンサ150への電源供給とを行うUSBコネクタの形態であることが最も好ましい。イメージセンサおよび照明(光源)150は、コネクタ158を介したディスプレイおよび電源(図示せず)への接続により機能するものであってよく、そうであることが好ましい。
【0061】
図4Bは、イメージセンサ導線154のための出口点として、イメージセンサルーメン150Lの近位端近傍に設けられたイメージセンサ用切込152の拡大図である。イメージセンサ導線154は、画像の転送と、イメージセンサおよび光源150への電源供給とを目的としたものであることが最も好ましい。
【0062】
図5は、正面から見たチューブ100の別の透視図であり、チューブ100の遠位端104における気管用ルーメン110と気管支用ルーメン120の分離を示したものである。
【0063】
図6は、チューブ100の別の模式図であり、気管支用カフ122および気管用カフ112を除いたチューブ100の透視図である。図6Aは、中間部106および遠位端104に設けられた湾曲部を示したものであり、それぞれ中間湾曲部106aおよび遠位湾曲部104aと定義される。湾曲部104aおよび106aは、上気道内の解剖学的構造にチューブ100が適合するように設けられている。
【0064】
中間湾曲部106aは、口腔および咽頭を経由して気管内へとチューブ100を導入することが容易になるよう設けられていることが最も好ましい。湾曲部106aは、約100〜160°の角度で設けられていることが最も好ましい。
【0065】
遠位湾曲部104aは、遠位端104を片方の気管支内、すなわち左右いずれかの気管支内へと導入することが容易になるよう設けられていることが最も好ましい。遠位湾曲部104aは、左用または右用の気管支内チューブのそれぞれに特徴的なものであってもよく、そうであることが好ましい。遠位湾曲部は、約25〜70°の角度で設けられていてもよい。遠位湾曲部は、図中に示すように約35°の角度で設けられていてもよく、そうであることが好ましい。
【0066】
チューブ100の長さは、約200〜550mmの範囲であってよい。チューブ100の長さは、使用対象者の解剖学的構造に合わせて選択してもよく、そうであることが好ましい。
【0067】
気管支内チューブ100は、当技術分野で周知かつ認容されているような様々な大きさ、長さおよび直径のものが用意されていてもよい。チューブ100の太さとしては、約26〜44Frの範囲が挙げられる。例えば、チューブ100の外径は、28Fr、32Fr、35Fr、37Fr、39Frまたは41Frであってもよく、これらに限定されることなく様々な太さおよび/または大きさのチューブを用意することができる。本願において「Fr」という単位は、当技術分野で汎用されている単位「フレンチ」で表示したチューブ100の太さを表す。また、チューブ100の太さおよび/または大きさをSI単位であるミリメートル(mm)で表示してもよい。本発明によるチューブ100の外径は、約9.3、10.7、11.7、13または13.7mmであってもよい。
【0068】
チューブ100の長さおよび直径(太さとも表記する)は相関していてもよく、そうであることが好ましい。
【0069】
図7Aは、図6に示したチューブ100の遠位端104の拡大図である。また図7Aは、気管用ルーメンから気管支用ルーメン120の側面部にかけての遠位端104の広がりを示した湾曲部104aの拡大図である。
【0070】
図7A〜Eは、湾曲部104aに特徴のある遠位端104の様々な拡大図であり、気管用ルーメンから気管支用ルーメン120の側面部にかけての遠位端104の広がりおよび先細りを示したものである。
【0071】
図7D〜Eは、イメージセンサルーメン150Lの遠位端および洗浄ノズル156をさらに拡大した図であり、洗浄ノズル156はイメージセンサを洗浄するために設けられていることが最も好ましい。洗浄ノズル156は、直径約0.1〜2mmの開口部を有していてもよく、そうであることが好ましい。洗浄ノズル156の直径は、約0.6mmであってもよく、そうであることが好ましい。
【0072】
イメージセンサ150は、チューブ100と同じ長さの専用ルーメン150L内に設けられていることが最も好ましい。ルーメン150は、気管用ルーメン110と気管支用ルーメン120との間に配置されていることが最も好ましい。
【0073】
ルーメン150Lの遠位端は、気管竜骨および気管支用カフ122を、例えば図2のように描出できるものであることが最も好ましい。
【0074】
イメージセンサルーメン150Lの直径は、チューブ100の長さ方向に沿って変化していることが最も好ましい。イメージセンサルーメン150は、近位端102で最小であり、遠位端104で最大であることが最も好ましい。センサルーメン150Lは、近位端102の断面が楕円形になるように形成されていてもよく、そうであることが好ましい。センサルーメン150Lは、遠位端の断面が円形になるように形成されていてもよく、そうであることが好ましい。
【0075】
イメージセンサルーメン150Lに沿って洗浄専用ルーメン160が配置され、洗浄専用ルーメン160が図中に示されるような洗浄ノズル156と定義される遠位端を有し、かつ洗浄ノズル156が洗浄専用ルーメン160の遠位端近傍のイメージセンサ150を洗浄するためのものであることが最も好ましい。洗浄ノズル156には、洗浄用の溶液、液体、気体またはその他の流動性流体を内蔵イメージセンサ150(より好ましくはイメージセンサ150c)へと導くために、かつ/または内蔵イメージセンサ150(より好ましくはイメージセンサ150c)から離れる方向へと導くために湾曲部および/または角度が設けられていてもよく、そうであることが好ましい。例えば、洗浄ルーメン160を利用して、洗浄ルーメン160の近位端から、洗浄ノズル156を形成するその遠位端へと流動性流体(例えば液体または気体)を勢いよく流すことにより、内蔵イメージセンサ150の前面にある粘液などの生物学的な障害物を取り除くことが可能である。また、洗浄ルーメン160を用いて、吸引という方法を利用して視野前面を吸引洗浄することにより、内蔵イメージセンサ150の視野を明瞭化することも可能である。
【0076】
図7Fは、ルーメン150Lの遠位端近傍にあるイメージセンサ150の方向を向いた洗浄ノズル156の拡大図である。洗浄ノズル156は、気管竜骨を描出する内蔵イメージセンサ150の視野を明瞭に保つためのものとして構成されていてもよく、そうであることが好ましい。
【0077】
洗浄ルーメン160の遠位端は、イメージセンサルーメン150Lの遠位端の方向に向かって湾曲し、少なくとも1以上の洗浄ノズル156を形成していてもよく、そうであることが好ましい。この洗浄ノズル156は、例えば図7Eに示すようにイメージセンサ150の方向を向いていてもよく、そうであることが好ましい。
【0078】
チューブ100には、少なくとも2以上の洗浄ルーメン160が設けられていてもよい。第1の洗浄ルーメンは、生物学的な障害物を洗い流すために設けられ、第2の洗浄ルーメンは、生物学的な障害物を吸引して遠位端114から取り除くために設けられていてもよい。複数の洗浄ルーメン160が、内蔵イメージセンサ150の両側に配置されていてもよい。複数の洗浄ルーメン160が、互いに連携して作動するような構成であってもよく、例えば、第1のルーメンが生物学的な障害物を第2の洗浄ルーメンに向けて洗い流し、第2の洗浄ルーメンがその障害物を吸引除去するという構成であってもよい。また、少なくとも2以上の洗浄ルーメンを共に用いて、内蔵イメージセンサ150の遠位にある障害物を吸引または洗い流してもよく、それによって明瞭な視野が確保されることが最も好ましい。複数の洗浄ルーメンが、異なる直径および/または大きさを有していてもよい。
【0079】
図8Aは、正中隔壁108で隔てられた気管用ルーメン110および気管支用ルーメン120を有するチューブ100の近位端102近傍の断面図である。チューブ100は、その内側および/または壁の内部に複数の周辺ルーメンを含むことが最も好ましい。複数の周辺ルーメンは、チューブ100の周囲を囲むように配置され、チューブ100と本質的に同じ長さ、すなわち気管用ルーメン110および/または気管支用ルーメン120と同じ長さであることが最も好ましい。周辺ルーメンは、例えば吸引ルーメン、カフ膨張ルーメン、電子ルーメン、イメージセンサルーメン、洗浄ルーメン、または注入用チューブルーメンなどであってよく、そのようなものであることが好ましいが、これらに限定されない。
【0080】
チューブ100は、イメージセンサおよび内蔵光源150用に設けられた専用ルーメン150Lを含むことが最も好ましい。ルーメン150Lは、その遠位端にイメージセンサ150を収容する(図7E〜F)とともに、ルーメン150Lの長さ方向に沿って配置されるイメージセンサ導体を例えば導線154の形態で収容し、かつルーメン150Lの近位端近傍に、イメージセンサ導体154およびコネクタ158をチューブ100の外部に配置するためのイメージセンサ用切込152を備えていることが最も好ましい。
【0081】
ルーメン150Lは、チューブ100の前部において、断面の中央付近に配置されていてもよく、そうであることが好ましい。ルーメン150Lは、隔壁108の前方に配置されていることが最も好ましい。ルーメン150Lは、チューブ108の後部において隔壁108の後方に配置されていてもよい。
【0082】
ルーメン150Lの両側に、チューブ100の長さ方向に沿って、最も好ましくはルーメン150Lと平行して専用ルーメンが設けられていることが最も好ましい。少なくとも1以上のルーメンが、洗浄専用ルーメン160として設けられていてもよく、そうであることが好ましい。ルーメン150Lの両側に位置する2つのルーメンが洗浄専用ルーメン160であってもよい。
【0083】
チューブ壁は、ルーメン112Lおよびルーメン122Lをさらに含むことが最も好ましく、これらはそれぞれ気管用ルーメン110および気管支用ルーメン120に対応している。ルーメン112Lおよびルーメン122Lは、それぞれカフ112およびカフ122を膨張および/または収縮させるために設けられていてもよく、そうであることが好ましい。
【0084】
図8Bは、図8Aと同じチューブ100の気管用ルーメン遠位端114近傍の断面図である。気管用ルーメン遠位端114におけるイメージセンサルーメン150Lの半径が、図8Aに示す近位端102におけるイメージセンサルーメン150Lの半径より大きいことが最も好ましい。チューブ100は、内蔵イメージセンサ150を収容できるよう遠位端104のルーメン150L近傍で広がっていることが最も好ましい。イメージセンサルーメン150はチューブ110の外周面において気管用ルーメン110の遠位端114から外側へ1.5〜5mm膨らんだり張り出したりしていてもよい。
【0085】
イメージセンサ専用ルーメン150Lは、チューブ100の近位端102から22.5mmの位置にある切込150nと、直径約1.5mmの出口切込とを備えていてもよい。
【0086】
図9は、気管支内チューブ100の壁内部の電子専用ルーメン150L内に設けられた内蔵イメージセンサ150を下から見た拡大図である。図9にはイメージセンサ150cおよび光源150Iが示されており、イメージセンサ150cはCCDまたはCMOSの形態で設けられていてもよく、そうであることが好ましい。また、光源150Iは少なくとも1以上、より好ましくは図中に示すように少なくとも2以上のLEDの形態で設けられていることが最も好ましい。
【0087】
本発明については、主に左気管支用気管支内チューブに関して説明してきたが、本発明が左気管支用気管支内チューブに限定されるものでなく、進歩性および新規性を有する本発明の態様が右気管支用気管支内チューブも包含することは十分に理解されるだろう。
【0088】
本発明について限られた数の実施形態に関して説明してきたが、本発明において多くの変更、修正および別の適用が可能であることは十分に理解されるだろう。
図1A
図1B
図2
図3
図4A-4B】
図5
図6-7A】
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図9